特許第6981550号(P6981550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981550
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】アンテナモジュール及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 23/00 20060101AFI20211202BHJP
   H01Q 21/30 20060101ALI20211202BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H01Q23/00
   H01Q21/30
   H01Q1/24 Z
   H01L23/14 R
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-528842(P2020-528842)
(86)(22)【出願日】2019年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2019025919
(87)【国際公開番号】WO2020009037
(87)【国際公開日】20200109
【審査請求日】2020年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2018-129515(P2018-129515)
(32)【優先日】2018年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水沼 隆賢
【審査官】 岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−127529(JP,A)
【文献】 特開2001−060823(JP,A)
【文献】 特開2004−040597(JP,A)
【文献】 特開2018−032890(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/015863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1誘電体層と、前記第1誘電体層の誘電率とは異なる誘電率を有する第2誘電体層とを含む基板と、
前記第1誘電体層に設けられ、第1周波数帯の信号を送受信する第1アンテナと、
前記第2誘電体層に設けられ、前記第1周波数帯よりも低い周波数帯である第2周波数帯の信号を送受信する第2アンテナと、
前記基板に設けられ、前記第1アンテナに電気的に接続された高周波回路と、を備え
平面視で、前記第1誘電体層は前記第2誘電体層よりも面積が大きい
アンテナモジュール。
【請求項2】
第1誘電体層と、前記第1誘電体層の誘電率とは異なる誘電率を有する第2誘電体層とを含む基板と、
前記第1誘電体層に設けられ、第1周波数帯の信号を送受信する第1アンテナと、
前記第2誘電体層に設けられ、前記第1周波数帯よりも低い周波数帯である第2周波数帯の信号を送受信する第2アンテナと、
前記基板に設けられ、前記第1アンテナに電気的に接続された高周波回路と、
対向する前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間に設けられたグランド層と、を備え、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとは、平面視で少なくとも一部が重なる
アンテナモジュール。
【請求項3】
前記第1誘電体層に、前記第2アンテナと電気的に接続されるコネクタが設けられる
請求項1又は請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
第1誘電体層と、前記第1誘電体層の誘電率とは異なる誘電率を有する第2誘電体層とを含む基板と、
前記第1誘電体層に設けられ、第1周波数帯の信号を送受信する第1アンテナと、
前記第2誘電体層に設けられ、前記第1周波数帯よりも低い周波数帯である第2周波数帯の信号を送受信する第2アンテナと、
前記基板に設けられ、前記第1アンテナに電気的に接続された高周波回路と、を備え
前記第1誘電体層に、前記第2アンテナと電気的に接続されるコネクタが設けられる
アンテナモジュール。
【請求項5】
前記高周波回路は、樹脂封止されている
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
第1誘電体層と、前記第1誘電体層の誘電率とは異なる誘電率を有する第2誘電体層とを含む基板と、
前記第1誘電体層に設けられ、第1周波数帯の信号を送受信する第1アンテナと、
前記第2誘電体層に設けられ、前記第1周波数帯よりも低い周波数帯である第2周波数帯の信号を送受信する第2アンテナと、
前記基板に設けられ、前記第1アンテナに電気的に接続された高周波回路と、を備え
前記高周波回路は、樹脂封止されている
アンテナモジュール。
【請求項7】
樹脂封止された前記高周波回路にシールド層が設けられている
請求項2、請求項5、請求項6のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記第2誘電体層に、少なくとも前記第1周波数帯の信号を通過させるフィルタ回路が設けられている
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
前記第2誘電体層及び前記高周波回路は、前記第1誘電体層の同じ面に隣り合って設けられており、
前記第1誘電体層及び前記第2誘電体層に設けられ、前記第1アンテナ、前記フィルタ回路及び前記高周波回路を接続する信号経路を有する、
請求項8に記載のアンテナモジュール。
【請求項10】
第1誘電体層と、前記第1誘電体層の誘電率とは異なる誘電率を有する第2誘電体層とを含む基板と、
前記第1誘電体層に設けられ、第1周波数帯の信号を送受信する第1アンテナと、
前記第2誘電体層に設けられ、前記第1周波数帯よりも低い周波数帯である第2周波数帯の信号を送受信する第2アンテナと、
前記基板に設けられ、前記第1アンテナに電気的に接続された高周波回路と、を備え
前記第2誘電体層に、少なくとも前記第1周波数帯の信号を通過させるフィルタ回路が設けられ、
前記第2誘電体層及び前記高周波回路は、前記第1誘電体層の同じ面に隣り合って設けられており、
前記第1誘電体層及び前記第2誘電体層に設けられ、前記第1アンテナ、前記フィルタ回路及び前記高周波回路を接続する信号経路を有する、
アンテナモジュール。
【請求項11】
前記第2誘電体層の誘電率は、前記第1誘電体層の誘電率よりも高い
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項12】
前記高周波回路は、前記第1誘電体層に設けられる
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のアンテナモジュールと、
マザーボードと、
前記マザーボードに設けられ、前記アンテナモジュールと接続されるミリ波回路と、
前記マザーボードに設けられ、前記アンテナモジュールと接続されるマイクロ波回路と、を有する
通信装置。
【請求項14】
平面視で、前記第1誘電体層は前記第2誘電体層よりも面積が大きい
請求項2に記載のアンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナモジュール及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの異なる周波数の信号を送受信するアンテナが記載されている。特許文献1のアンテナは、地導体板の両側に誘電率の異なる誘電体基板が設けられ、大きさの異なるアンテナ素子がそれぞれの誘電体基板上に形成される。地導体板と2つのアンテナ素子を短絡する共通の金属板が設けられ、それぞれの誘電体基板内にアンテナ給電線路が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−289215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンテナモジュールにおいて、アンテナと外部のRFICとを接続する必要がある。しかしながら、特許文献1において、RFICが誘電体基板上に設けられていない。このため、特許文献1の構成で、ミリ波帯及びマイクロ波帯の信号を送受信するアンテナモジュールを実現しようとする場合、ミリ波帯のアンテナと、外部のRFICとを接続する給電線路が長くなる可能性がある。このため、ミリ波帯の信号の送受信において、配線による信号の減衰量が増加する場合がある。
【0005】
本発明は、複数の異なる周波数の信号を送受信するとともに、高周波回路とアンテナとの間で伝送される信号の減衰量の増加を抑制することができるアンテナモジュール及び通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面のアンテナモジュールは、第1誘電体層と、前記第1誘電体層の誘電率とは異なる誘電率を有する第2誘電体層とを含む基板と、前記第1誘電体層に設けられ、第1周波数帯の信号を送受信する第1アンテナと、前記第2誘電体層に設けられ、前記第1周波数帯よりも低い周波数帯である第2周波数帯の信号を送受信する第2アンテナと、前記基板に設けられ、前記第1アンテナに電気的に接続された高周波回路と、を備える。
【0007】
本発明の一側面の通信装置は、上記アンテナモジュールと、マザーボードと、前記マザーボードに設けられ、前記アンテナモジュールと接続されるミリ波回路と、前記マザーボードに設けられ、前記アンテナモジュールと接続されるマイクロ波回路と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアンテナモジュール及び通信装置によれば、複数の異なる周波数の信号を送受信するとともに、高周波回路とアンテナとの間で伝送される信号の減衰量の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るアンテナモジュールの上面図である。
図2図2は、実施形態に係るアンテナモジュールの下面図である。
図3図3は、図1のIII−III’線に沿う断面図である。
図4図4は、第1変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。
図5図5は、第2変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。
図6図6は、第3変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。
図7図7は、第4変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。
図8図8は、第5変形例に係るアンテナモジュールの下面図である。
図9図9は、第5変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。
図10図10は、第6変形例に係るアンテナモジュールの下面図である。
図11図11は、第6変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。
図12図12は、実施形態に係るアンテナモジュールを備える通信装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のアンテナモジュール及び通信装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第1変形例以降では実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るアンテナモジュールの上面図である。図2は、実施形態に係るアンテナモジュールの下面図である。図3は、図1のIII−III’線に沿う断面図である。図1から図3に示すように、アンテナモジュール1は、基板2と、第1アンテナ3と、第2アンテナ4と、高周波回路5と、を備える。
【0012】
本実施形態のアンテナモジュール1は、高周波回路5が実装されたアンテナ付の高周波モジュールである。アンテナモジュール1は、例えば、24GHz以上75GHz以下の準ミリ波帯からミリ波帯の信号の送受信と、10GHz以下のマイクロ波帯の信号の送受信を行う。準ミリ波帯からミリ波帯の信号は、28GHz帯、39GHz帯及び60GHz帯の信号を含み、例えば、第5世代セルラーシステムや60GHz帯のWi−Fi(11adシステム)に使用される。マイクロ波帯の信号は、セルラーシステムや2.4GHz/5GHz帯のWi−FiやBluetooth(登録商標)、GPS、NFC等に使用される。以下の説明では、準ミリ波帯からミリ波帯を含む周波数帯をミリ波帯と表す。
【0013】
図3に示すように、基板2は、第1誘電体層21と、第2誘電体層22とを有する。第1誘電体層21及び第2誘電体層22は、それぞれ多層基板である。第2誘電体層22は、第1誘電体層21の誘電率とは異なる誘電率を有する。具体的には、第2誘電体層22の誘電率は、第1誘電体層21の誘電率よりも高い。第1誘電体層21及び第2誘電体層22の材料として、それぞれ低温同時焼成セラミックス(以下、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)と表す)、ガラスエポキシ樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂等のいずれか1つ以上が用いられる。これらの材料のうち、LTCCが最も高い誘電率を有し、ガラスエポキシ樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂の順に誘電率が小さくなる。
【0014】
基板2は、異なる種類の材料から構成した第1誘電体層21及び第2誘電体層22を組み合わせることができる。例えば、高誘電率の第2誘電体層22の材料としてLTCCが用いられ、低誘電率の第1誘電体層21の材料として液晶ポリマーが用いられる。第1誘電体層21及び第2誘電体層22に用いられる材料の組み合わせは適宜変更できる。このように、第1誘電体層21及び第2誘電体層22をそれぞれ異なる種類の材料から構成することで、第1誘電体層21の誘電率と第2誘電体層22の誘電率とを容易に異ならせることができる。
【0015】
また、第1誘電体層21及び第2誘電体層22は、上記の材料のうち、同じ種類の材料から構成して、組成を異ならせることもできる。例えば、第1誘電体層21の材料として高誘電率LTCCが用いられ、第2誘電体層22の材料として低誘電率LTCCが用いられる。高誘電率LTCC及び低誘電率LTCCは、例えば、セラミックス材料の組成及び含有量が異なる。これにより、第1誘電体層21及び第2誘電体層22として同一の種類の材料が用いられるため、アンテナモジュール1の製造が容易である。
【0016】
図3に示すように、第1誘電体層21と、第2誘電体層22とは、厚さ方向に重なって設けられる。図1及び図2に示すように、平面視で、第1誘電体層21は第2誘電体層22よりも面積が大きい。ここで、基板2は、第1主面S1、第2主面S2及び第3主面S3を有する。第1主面S1は、第1誘電体層21の表面のうち、第2誘電体層22が設けられた面と反対側の面である。第2主面S2は、第2誘電体層22の表面のうち、第1誘電体層21が設けられた面と反対側の面である。第3主面S3は、第1誘電体層21の第1主面S1と反対側の面である。第3主面S3のうち第2誘電体層22が設けられていない部分は、平面視で、第2誘電体層22の端部22eよりも外側に張り出している。
【0017】
第1アンテナ3は、第1誘電体層21の第1主面S1に設けられ、ミリ波帯の信号を送受信する。図1に示すように、第1アンテナ3は、複数の放射素子31が行列状に配列されたアレイアンテナである。複数の放射素子31は、行方向に配置間隔P1を有して配列され、かつ、列方向に配置間隔P2を有して配列される。ここで、配置間隔P1、P2は、隣り合う放射素子31の重心31cの間隔である。放射素子31は、対向する辺31s1及び辺31s2と、辺31s1と辺31s2との間の辺31s3及び辺31s4とを有する。重心31cは、辺31s1の中点と辺31s2の中点とを結ぶ仮想線と、辺31s3の中点と辺31s4の中点とを結ぶ仮想線と、の交点と一致する。配置間隔P1、P2は、放射素子31により送受信される信号の波長λの約1/2である。
【0018】
図3に示すように、第2アンテナ4は、第2誘電体層22の第2主面S2に設けられ、マイクロ波帯の信号を送受信する。第2アンテナ4は、1つの放射素子で構成されたパッチアンテナである。ただし、第2アンテナ4は、パッチアンテナに限定されず、モノポールアンテナや逆Fアンテナであってもよい。また、第2アンテナ4の整合を取るマッチング部材が、第1誘電体層21に実装されていてもよい。
【0019】
第1アンテナ3の複数の放射素子31の配置間隔P1、P2は、信号周波数の波長λの1/2であるため、ミリ波帯の信号を送受信する第1アンテナ3の全体の面積は、放射素子31の数及び配置で規定される。一方、マイクロ波帯の信号を送受信する第2アンテナ4では、アレイアンテナではない。第2アンテナ4は、第1誘電体層21の誘電率よりも高い誘電率を有する第2誘電体層22に設けられている。このため、第2アンテナ4は、波長短縮効果により、第2アンテナ4を第1誘電体層21に設けた場合に比べて面積を小さくできる。
【0020】
また、第1誘電体層21の内層には、グランド層26が設けられる。第2アンテナ4は、1つの放射素子で構成されたパッチアンテナであり、グランド層26と対向して配置される。対向する第1アンテナ3と第2アンテナ4との間にグランド層26が設けられている。アンテナモジュール1は、第1アンテナ3と第2アンテナ4とで1つのグランド層26を共用できる。
【0021】
グランド層26が第1誘電体層21に設けられており、第2アンテナ4とグランド層26との間隔が大きくなる。グランド層26を、第1誘電体層21と第2誘電体層22との境界、又は第2誘電体層22に設けた場合に比べ、信号の広帯域化が図れ、マイクロ波帯の信号を送受信する第2アンテナ4の特性が改善する。また、グランド層26により、第1アンテナ3で送受信されるミリ波帯の信号と、第2アンテナ4で送受信されるマイクロ波帯の信号との干渉を抑制できる。
【0022】
なお、アンテナモジュール1は、第1アンテナ3が第1誘電体層21の第1主面S1に露出し、第2アンテナ4が第2誘電体層22の第2主面S2に露出する構成に限定されない。例えば、第1アンテナ3及び第2アンテナ4は、それぞれ第1誘電体層21及び第2誘電体層22の内層に設けられていてもよく、又は、第1アンテナ3及び第2アンテナ4をそれぞれ覆う保護層が設けられていてもよい。また、複数の放射素子31の形状、数、配置は、図1に示す構成に限定されず、適宜変更できる。
【0023】
高周波回路5、第1コネクタ61及び第2コネクタ62は、第1誘電体層21の第3主面S3に設けられる。高周波回路5は、第1誘電体層21の第3主面S3において露出して設けられる。高周波回路5は、例えばフリップチップ実装により、複数のバンプ51を介して複数の端子211に実装される。高周波回路5は、送信と受信とを切り替えるスイッチ、電力増幅器、低ノイズ増幅器、位相器、分波器、結合器、ミキサ等を含むRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)である。
【0024】
図3に示すように、高周波回路5と第2誘電体層22とは、第1誘電体層21の同じ第3主面S3に設けられる。高周波回路5は、第2誘電体層22の端部22eと隣り合って配置される。第1主面S1に垂直な方向において、高周波回路5と第1アンテナ3(放射素子31)との間にグランド層26が設けられる。また、図2に示すように、平面視で、第1コネクタ61及び第2コネクタ62は、第1誘電体層21の外周側に設けられる。すなわち、高周波回路5は、第1コネクタ61及び第2コネクタ62と、第2誘電体層22の端部22eとの間に配置される。また、図1に示すように、複数の放射素子31の少なくとも一部は、平面視で、高周波回路5及び第2アンテナ4と重なる領域に設けられる。
【0025】
図3に示すように、高周波回路5は、第1アンテナ3及び第1コネクタ61と電気的に接続される。具体的には、第1誘電体層21には複数の第1信号経路23及び接続経路25が設けられる。第1信号経路23の一端は第1主面S1で放射素子31に接続され、第1信号経路23の他端は第3主面S3で高周波回路5に接続される。第1信号経路23が通る部分には、グランド層26に開口(図示せず)が設けられており、第1信号経路23とグランド層26とが電気的に離隔される。また、接続経路25の一端は第3主面S3で第1コネクタ61に接続され、接続経路25の他端は第3主面S3で高周波回路5に接続される。
【0026】
第2アンテナ4は、第2コネクタ62と電気的に接続される。具体的には、第1誘電体層21及び第2誘電体層22に亘って第2信号経路24が設けられる。第2信号経路24の一端は第2主面S2で第2アンテナ4に接続され、第2信号経路24の他端は第3主面S3で第2コネクタ62に接続される。第1コネクタ61及び第2コネクタ62は、例えば同軸ケーブルと接続できる同軸コネクタである。或いは、第1コネクタ61及び第2コネクタ62は、多極コネクタや、フレキシブル基板で構成されたコネクタであってもよい。又、第1コネクタ61及び第2コネクタ62の少なくとも1つは、第1主面S1に設けられていてもよい。この場合、アンテナモジュール1の取り付け自由度が高くなる。
【0027】
第1信号経路23及び接続経路25は、第1誘電体層21の層間を接続する複数のビアや、第1誘電体層21の内層又は表層に設けられた配線を含む。第2信号経路24は、第1誘電体層21の層間を接続する複数のビア、第2誘電体層22の層間を接続する複数のビア及び第1誘電体層21及び第2誘電体層22に設けられた配線を含む。接続経路25及び第2信号経路24の少なくとも一部は、第1誘電体層21の内層に設けられていてもよく、又は、第1誘電体層21の第3主面S3に設けられていてもよい。
【0028】
第1コネクタ61は、ケーブルを介して、ミリ波帯の信号の送受信を行うためのベースバンドIC、IFトランシーバICに接続される。第2コネクタ62は、ケーブルを介して、マイクロ波帯の信号の送受信を行うためのRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)に接続される。
【0029】
ミリ波帯の信号の送信の際には、高周波回路5は、必要に応じてIF又はIQ信号又はミリ波信号をミキサでアップコンバートした後、ミリ波帯の高周波信号を、高周波回路5内の電力増幅器により増幅して第1アンテナ3に供給する。又は、高周波回路5は、ミリ波帯の高周波信号を、高周波回路5内の電力増幅器により増幅して第1アンテナ3に供給する。高周波信号が供給されることで、放射素子31には所定の方向に電流が流れ、電流が流れる方向に平行な偏波が放射される。これにより、第1アンテナ3はミリ波帯の信号を送信する。アンテナモジュール1は、放射素子31の配置や、励振される高周波信号の振幅、位相を制御することにより、所望の放射パターン(指向性)が得られる。また、ミリ波帯の信号の受信の際には、高周波回路5は、第1アンテナ3が受信した高周波信号を、低ノイズ増幅器により増幅して、必要であればダウンコンバートして、ベースバンドIC、IFトランシーバICに供給する。
【0030】
マイクロ波帯の信号の送信の際には、外部回路のRFICは、第2コネクタ62及び第2信号経路24を介して、マイクロ波帯の高周波信号を第2アンテナ4に供給する。これにより、第2アンテナ4はマイクロ波帯の信号を送信する。また、第2アンテナ4が受信した信号は、第2信号経路24及び第2コネクタ62を介して外部回路のRFICに供給される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のアンテナモジュール1は、基板2と、第1アンテナ3と、第2アンテナ4と、高周波回路5とを備える。基板2は、第1誘電体層21と、第1誘電体層21の誘電率とは異なる誘電率を有する第2誘電体層22を含む。第1アンテナ3は第1誘電体層21に設けられ、ミリ波帯(第1周波数帯)の信号を送受信する。第2アンテナ4は、第2誘電体層22に設けられ、ミリ波帯よりも低い周波数帯であるマイクロ波帯(第2周波数帯)の信号を送受信する。高周波回路5は、基板2に設けられ、第1アンテナ3に電気的に接続される。
【0032】
また、本実施形態のアンテナモジュール1において、第2誘電体層22の誘電率は、第1誘電体層21の誘電率よりも高い。
【0033】
これにより、アンテナモジュール1は、ミリ波帯及びマイクロ波帯の複数の異なる周波数の信号を送受信することができる。また、第1アンテナ3を第2誘電体層22に設けた場合に比べて、高周波回路5と第1アンテナ3との間で伝送される信号の減衰量の増加を抑制できる。したがって、アンテナモジュール1は、ミリ波帯及びマイクロ波帯の複数の異なる周波数の信号を送受信するとともに、高周波回路5と第1アンテナ3との間で伝送されるミリ波帯の信号の減衰量の増加を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態のアンテナモジュール1において、平面視で、第1誘電体層21は第2誘電体層22よりも面積が大きい。高周波回路5は、第2誘電体層22から露出する第1誘電体層21の第3主面S3に設けられる。
【0035】
これにより、アンテナモジュール1は、モジュールサイズの増大を抑制しつつ、第1アンテナ3、第2アンテナ4及び高周波回路5を基板2に設けることができる。つまり、ミリ波帯及びマイクロ波帯の複数の異なる周波数の信号を送受信可能なアンテナモジュール1を実現することができる。
【0036】
また、本実施形態のアンテナモジュール1において、高周波回路5は、第1誘電体層21に設けられる。第1アンテナ3と高周波回路5とを接続する第1信号経路23は、第2誘電体層22を経由せず、第1誘電体層21に設けられる。
【0037】
したがって、高周波回路5が第2誘電体層22に設けられた場合に比べて、高周波回路5と第1アンテナ3との間で伝送されるミリ波帯の信号の減衰量の増加を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態のアンテナモジュール1において、第1誘電体層21に、第2アンテナ4と電気的に接続される第2コネクタ62が設けられる。
【0039】
これによれば、外部回路のRFICは、第2コネクタ62及び第2信号経路24を介して、マイクロ波帯の高周波信号を第2アンテナ4に供給することができる。
【0040】
(第1変形例)
図4は、第1変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。第1変形例では、上記実施形態とは異なり、樹脂52及びシールド層53が設けられている構成について説明する。図4に示すように、アンテナモジュール1Aにおいて、樹脂52は、高周波回路5を封止している。樹脂52は、熱硬化性樹脂に無機フィラーが含有された複合樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂として例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シネアート樹脂等が用いられる。無機フィラーとして、酸化アルミニウム、シリカ、二酸化チタン等が用いられる。樹脂52の形成には、例えば、ポッティング技術、トランスファー技術、コンプレッションモールド技術等の樹脂成形技術が用いられる。
【0041】
さらに、シールド層53は樹脂52の表面に設けられている。シールド層53は、導電性を有する金属材料が用いられる。シールド層53は、第2誘電体層22に設けられたグランド電位に接続される。これにより、アンテナモジュール1Aは、高周波回路5を保護するとともに、第2アンテナ4から放射される信号と、高周波回路5との干渉を抑制することができる。なお、シールド層53に換えて、シールドケース構造を採用してもよい。この場合、樹脂52はなくてもよい。シールドケースは金属製である。
【0042】
(第2変形例)
図5は、第2変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。第2変形例では、上記実施形態とは異なり、第2アンテナ4がグランド層26と接続されている構成について説明する。図5に示すように、アンテナモジュール1Bにおいて、第2アンテナ4とグランド層26とを接続するグランド接続経路27が設けられている。グランド接続経路27は、第2アンテナ4とグランド層26との間の第1誘電体層21及び第2誘電体層22を貫通して設けられる。
【0043】
第2アンテナ4がグランド層26と接続されることにより、第2アンテナ4がグランド層26と電気的に離隔している場合に比べて、第2コネクタ62及び第2信号経路24から信号が供給されたときに第2アンテナ4に流れる電流の経路が変化する。これにより、第2アンテナ4から放射される信号の、第2主面S2と平行な方向の放射特性が向上する。
【0044】
(第3変形例)
図6は、第3変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。第3変形例では、上記実施形態とは異なり、第2誘電体層22にフィルタ回路28が設けられている構成について説明する。図6に示すように、アンテナモジュール1Cにおいて、フィルタ回路28は、対向電極29a、29bと、対向電極29a、29bに接続された配線を含む。対向電極29a、29bは、第2誘電体層22の少なくとも1層の誘電体層を介して対向する。対向電極29a、29bで形成される容量成分と、対向電極29a、29bに接続された配線のインダクタ成分とで、フィルタ回路28が構成される。フィルタ回路28は、少なくともミリ波帯の周波数以上の信号を通過させるハイパスフィルタ(HPF:High-pass filter)である。図示されていないが、対向電極29a、29bに接続された配線がインダクタとして機能する。
【0045】
本変形例において、第2誘電体層22及び高周波回路5は、第1誘電体層21の同じ第3主面S3に隣り合って設けられている。第1信号経路23は、第1誘電体層21及び第2誘電体層22に設けられ、放射素子31、フィルタ回路28及び高周波回路5を接続する。具体的には、第1信号経路23は、第1部分信号経路23aと、第2部分信号経路23bとを含む。第1部分信号経路23aは、第1誘電体層21及び第2誘電体層22に亘って設けられ、第1部分信号経路23aの一端は放射素子31に接続され、第1部分信号経路23aの他端は対向電極29aに接続される。第2部分信号経路23bは、第1誘電体層21及び第2誘電体層22に亘って設けられ、第2部分信号経路23bの一端は高周波回路5に接続され、第2部分信号経路23bの他端は対向電極29bに接続される。
【0046】
このような構成により、フィルタ回路28が第1誘電体層21に設けられた場合に比べて、フィルタ回路28は誘電率が大きい第2誘電体層22に形成されているため、フィルタ回路28を小型化できる。また、フィルタ回路28は、高周波回路5と第1アンテナ3との間で伝送される信号のうち、ミリ波帯よりも低い周波数成分の信号を除去することができる。これにより、アンテナモジュール1Cは、第1アンテナ3での信号の送受信と、第2アンテナ4での信号の送受信との間の干渉を抑制することができる。なお、フィルタ回路28は、ハイパスフィルタに限定されず、例えば、バンドパスフィルタであってもよい。
【0047】
(第4変形例)
図7は、第4変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。第4変形例では、上記実施形態とは異なり、高周波回路5が第1誘電体層21の第1主面S1に設けられている構成について説明する。図7に示すように、高周波回路5は、第1主面S1のうち、複数の放射素子31が設けられていない領域に実装される。高周波回路5は、グランド層26に対して、第1コネクタ61及び第2コネクタ62の反対側に設けられる。
【0048】
第1信号経路23は、第1誘電体層21に設けられる。第1信号経路23の一端は第1主面S1で放射素子31に接続され、第1信号経路23の他端は第1主面S1で高周波回路5に接続される。接続経路25は、第1誘電体層21に設けられる。接続経路25の一端は第3主面S3で第1コネクタ61に接続され、接続経路25の他端は第1主面S1で高周波回路5に接続される。
【0049】
第2アンテナ4、第2信号経路24及び第2コネクタ62と、高周波回路5との間にグランド層26が設けられている。これにより、アンテナモジュール1Dは、第2アンテナ4から放射される信号と、高周波回路5との干渉を抑制することができる。つまり、アンテナモジュール1Dは、マイクロ波ノイズの干渉を受けづらい。
【0050】
以上説明した実施形態及び第1変形例から第4変形例の構成は、組み合わせることができる。例えば、第2変形例から第4変形例のアンテナモジュール1B、1C、1Dにおいて、第1変形例と同様に樹脂52及びシールド層53が設けられていない構成を適用できる。また、第3変形例及び第4変形例のアンテナモジュール1C、1Dにおいて、第2変形例と同様に、第2アンテナ4がグランド層26と接続されている構成を適用できる。また、第4変形例のアンテナモジュール1Dにおいて、第3変形例と同様に、第2誘電体層22にフィルタ回路28が設けられている構成を適用できる。
【0051】
(第5変形例)
図8は、第5変形例に係るアンテナモジュールの下面図である。図9は、第5変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。第5変形例では、上記実施形態とは異なり、第2アンテナ4Aがモノポールアンテナである構成について説明する。図8及び図9に示すように、第2アンテナ4Aは、線状であり、端部22eに垂直な方向に延在する。第2アンテナ4Aの、高周波回路5側の端部に給電点41が設けられる。第2信号経路24のビア24aは、第2主面S2に垂直な方向に、第1誘電体層21から第2誘電体層22に亘って設けられ、給電点41に接続される。
【0052】
このような構成により、第5変形例のアンテナモジュール1Eは、上述した実施形態と同様に、ミリ波帯及びマイクロ波帯の複数の異なる周波数の信号を送受信するとともに、高周波回路5と第1アンテナ3との間で伝送されるミリ波帯の信号の減衰量の増加を抑制することができる。
【0053】
(第6変形例)
図10は、第6変形例に係るアンテナモジュールの下面図である。図11は、第6変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。第6変形例では、上記実施形態とは異なり、第2アンテナ4Bが逆Fアンテナである構成について説明する。図10及び図11に示すように、第2アンテナ4Bは、線状であり、端部22eに垂直な方向に延在する。第2アンテナ4の端部に設けられた給電点42に第2信号経路24のビア24aが接続され、第2アンテナ4の中央部に短絡線43が接続される。短絡線43は、第2主面S2に垂直な方向に、第2誘電体層22に設けられる。短絡線43は、ビア24aと平行に、ビア24aよりも短く形成される。
【0054】
このような構成により、第6変形例のアンテナモジュール1Fは、上述した実施形態と同様に、ミリ波帯及びマイクロ波帯の複数の異なる周波数の信号を送受信するとともに、高周波回路5と第1アンテナ3との間で伝送されるミリ波帯の信号の減衰量の増加を抑制することができる。
【0055】
(通信装置)
図12は、実施形態に係るアンテナモジュールを備える通信装置の構成を示すブロック図である。図12に示すように、通信装置100は、アンテナモジュール1と、マザーボード101と、マイクロ波回路102と、CPU(Central Processing Unit)103と、メモリ104と、ミリ波回路105と、を有する。マイクロ波回路102、CPU103、メモリ104及びミリ波回路105は、マザーボード101上に実装される。
【0056】
マイクロ波回路102は、FEM(Front End Module)や、RFトランシーバ、BB/MAC等を備える。マイクロ波回路102は、アンテナモジュール1の第2コネクタ62に接続される。
【0057】
ミリ波回路105は、BB(Base Band)/MAC(Media Access Control)や、コンバータ(アップコンバータ、ダウンコンバータ)等を備える。ミリ波回路105は、アンテナモジュール1の第1コネクタ61に接続される。
【0058】
なお、上記した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1、1A、1B、1C、1D アンテナモジュール
2 基板
3 第1アンテナ
4 第2アンテナ
5 高周波回路
21 第1誘電体層
22 第2誘電体層
23 第1信号経路
24 第2信号経路
25 接続経路
26 グランド層
27 グランド接続経路
28 フィルタ回路
29a、29b 対向電極
31 放射素子
51 バンプ
52 樹脂
53 シールド層
61 第1コネクタ
62 第2コネクタ
S1 第1主面
S2 第2主面
S3 第3主面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12