(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つの前記放射素子及び1つの前記誘電体部材が1つの構成単位となり、複数の前記構成単位が前記基板に設けられてアレイアンテナが構成されており、複数の前記誘電体部材の各々の平断面の幾何中心を高さ方向に連ねる線が、前記アレイアンテナの幾何中心から見て外側に向かって傾斜している請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
前記2つの境界面のうち一方の境界面は、前記放射素子から法線方向に遠ざかるに従って、平面視において前記放射素子の外側から内側に入り込むように傾斜しており、前記一方の境界面の前記放射素子側が、前記高誘電率の領域である請求項7に記載の通信装置。
前記境界面は、前記放射素子から法線方向に遠ざかるに従って、平面視において前記放射素子の外側から内側に入り込むように傾斜しており、前記境界面の前記放射素子側の領域に前記高誘電率部分が配置されている請求項10に記載の通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施例]
図1から
図3までの図面を参照して、第1実施例によるアンテナ装置について説明する。
図1は、第1実施例によるアンテナ装置の斜視図である。誘電体からなる基板10の一方の面である上面に放射素子11が配置されており、内層にグランド導体15が配置されている。放射素子11とグランド導体15とがパッチアンテナを構成する。放射素子11は正方形の平面形状を持つ。放射素子11の上面に平行で、放射素子11の隣り合う2つの辺に平行な方向を、それぞれx軸方向及びy軸方向とし、放射素子11の法線方向をz軸方向とするxyz直交座標系を定義する。また、放射素子11の法線方向を高さ方向と定義する。なお、放射素子11の平面形状を長方形、円形等にしてもよい。
【0010】
平面視において放射素子11と重なるように、基板10の上(放射素子11から見てグランド導体15とは反対側)に誘電体部材20が配置されている。誘電体部材20は接着剤等で放射素子11及び基板10に接着される。基板10の下面に給電線12が配置されている。給電線12は、グランド導体15に設けられたクリアランスホール内のビアホールを通って放射素子11に結合しており、放射素子11からx軸の正の向きに延びている。
【0011】
誘電体部材20は、基板10側を向く底面、及び底面とは反対側を向く上面を有する。底面は、x軸方向及びy軸方向に平行な長さWの辺を持つ正方形であり、底面の中心と放射素子11の中心とが一致する。誘電体部材20の底面は、平面視において放射素子11を内包する。上面は、底面を、x成分及びz成分が正のベクトルの方向に平行移動した位置に配置されている。誘電体部材20は、さらに底面と上面とを接続する4つの側面を有する。すなわち、誘電体部材20の形状は平行六面体である。このとき、誘電体部材20の平断面の幾何中心を連ねる線が、z軸方向に対してx軸の正方向に傾斜する。誘電体部材20の4つの側面のうち2つの側面はy軸方向に対して垂直であり、残りの2つの側面はxy面に対して傾斜しており、その外側を向く法線ベクトルがy軸方向に対して垂直である。
【0012】
誘電体部材20は、例えば低温同時焼成セラミックス(LTCC)等のセラミックス、またはポリイミド等の樹脂で形成することができる。例えば、LTCCの比誘電率εrは約6.4であり、ポリイミドの比誘電率εrは約3である。
【0013】
図2は、第1実施例によるアンテナ装置のxz面に平行な断面図である。基板10の上面に放射素子11が配置されており、内層にグランド導体15が配置されており、下面に給電線12が配置されている。給電線12は、グランド導体15に設けられたクリアランスホールを通るビア導体13を介して放射素子11に結合している。基板10と誘電体部材20との間に接着剤層17が配置されている。
【0014】
誘電体部材20の高さをHで表し、底面の中心から上面の中心までの長さのx成分をdx(以下、水平変位量という。)で表し、傾斜した斜面とz軸の正方向とのなす角度(傾斜角度)をθiで表す。放射素子11の一辺の長さをLで表し、厚さをT1で表す。グランド導体15の厚さをT2で表す。基板10のうち、放射素子11とグランド導体15との間の部分の厚さをT3で表し、グランド導体15よりも下側の部分の厚さをT4で表す。
【0015】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例では、放射素子11の上に配置された誘電体部材20が基板10に対して傾斜している。放射素子11から放射された電波は、相対的に誘電率の高い空間を優先的に伝搬する。誘電体部材20の誘電率は大気の誘電率より高いため、放射素子11から放射された電波は、誘電体部材20の傾斜している方向に偏って伝搬する傾向を示す。このため、放射素子11の正面方向に対して傾いた方向のアンテナゲインを、正面方向のアンテナゲインより高めることができる。
【0016】
次に、上述の優れた効果を確かめるために行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションにおいて、放射素子11の一辺の長さを0.8mmとした。誘電体部材20の底面の一辺の長さW、高さH、及び水平変位量dxの値が異なる3種類のアンテナ装置について、法線方向からx軸の正の方向への傾斜角度θxと、アンテナゲインとの関係を求めた。
【0017】
図3は、シミュレーション結果を示すグラフである。横軸は法線方向からの傾斜角度θxを単位「度」で表し、縦軸はアンテナゲインを単位「dB」で表す。
図3のグラフ中の実線に付されたカッコつきの数字は、左側から順番に、誘電体部材20の底面の一辺の長さW、高さH、水平変位量dx、傾斜角度θiを示している。なお、長さW、高さH、水平変位量dxの単位は「mm」であり、傾斜角度θiの単位は「度」である。参考のために、誘電体部材20の形状を直方体にした場合のアンテナゲインを破線で示す。誘電体部材20が直方体の場合には、傾斜角度θx=0°、すなわち放射素子11の正面方向のアンテナゲインが最大になる。
【0018】
誘電体部材20を傾斜させると、正面方向から傾いた方向でアンテナゲインが最大になっていることがわかる。また、正面方向から傾いた方向でのアンテナゲインの最大値は、誘電体部材20を直方体にした場合の、その方向におけるアンテナゲインより高い。アンテナゲインが最大値をとる傾斜角度θxは、誘電体部材20の傾斜した側面の傾斜角度θiとほぼ等しい。
【0019】
図3に示したシミュレーションにより、誘電体部材20を傾けることによって放射素子11の正面方向から傾いた方向のアンテナゲインを高めることが可能であることが確認された。
【0020】
次に、第1実施例の変形例について説明する。第1実施例では、誘電体部材20の底面を正方形にしたが、その他の四角形、例えばx軸方向及びy軸方向に平行な辺を持つ長方形にしてもよい。さらに、その他の多角形、円形、楕円形等にしてもよい。
【0021】
[第2実施例]
次に、
図4から
図6までの図面を参照して、第2実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、第1実施例によるアンテナ装置(
図1、
図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0022】
図4は、第2実施例によるアンテナ装置の斜視図である。第1実施例では、傾斜した2つの側面の一方の外側を向く法線ベクトルはxy面に平行な方向から上向き(つまり、z軸の正の向き)に傾いており、他方の外側を向く法線ベクトルはxy面に平行な方向から下向き(つまり、z軸の負の向き)に傾いている。これに対し、第2実施例では、第1実施例において外側を向く法線ベクトルが下向きに傾いている側面を、xy面に対して垂直にしている。このため、y軸方向に対して垂直な2つの側面は、一方の脚が下底に対して垂直な台形状になる。
【0023】
このとき、誘電体部材20の底面の形状は長方形になり、その短辺の長さがWである。上面は、一辺の長さがWの正方形である。
【0024】
図5は、第2実施例によるアンテナ装置のxz面に平行な断面図である。誘電体部材20のxz面に平行な断面は、一方の脚が下底に対して垂直な台形状である。傾斜した側面のx軸方向に関する寸法(水平変位量)をdxで表す。
【0025】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第2実施例においては、誘電体部材20のx軸の正の方向を向く側面が底面に対して垂直であるが、x軸の負の方向を向く側面は、第1実施例と同様にxy面に対して傾斜している。このため、放射素子11から上方(z軸の正の方向)を見たとき、誘電体部材20はx軸の正の側に偏って配置されている。その結果、第1実施例の場合と同様に、正面から傾いた方向のアンテナゲインを高めることができる。
【0026】
第1実施例では、誘電体部材20が庇状に張り出した部分(
図2において上面の右側の端部)を有している。これに対し、第2実施例では、誘電体部材20が庇状に張り出した部分を有しない。また、第2実施例の誘電体部材20の底面の方が、第1実施例の誘電体部材20の底面より大きい。このため、第2実施例では、誘電体部材20の機械的な安定性や取り付け強度を高めることができる。
【0027】
第2実施例の優れた効果を確かめるために、第1実施例と同様のシミュレーションを行った。
図6は、第2実施例によるアンテナ装置のシミュレーション結果を示すグラフである。横軸は法線方向からの傾斜角度θxを単位「度」で表し、縦軸はアンテナゲインを単位「dB」で表す。
図6のグラフ中の実線に付されたカッコつきの数字は、左側から順番に、誘電体部材20の底面の短辺の長さW、高さH、水平変位量dx、傾斜角度θiを示している。なお、長さW、高さH、水平変位量dxの単位は「mm」であり、傾斜角度θiの単位は「度」である。参考のために、誘電体部材20の形状を直方体にした場合のアンテナゲインを破線で示す。誘電体部材20が直方体の場合には、傾斜角度θx=0°、すなわち放射素子11の正面方向のアンテナゲインが最大になる。
【0028】
第2実施例においても、正面方向から傾いた方向においてアンテナゲインが最大になっていることが確認された。側面の傾斜角度θiが大きくなるに従って、アンテナゲインが最大となる傾斜角度θxも大きくなっている。
【0029】
[第3実施例]
次に、
図7A及び
図7Bを参照して第3実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、第1実施例によるアンテナ装置(
図1、
図2)及び第2実施例によるアンテナ装置(
図4、
図5)と共通の構成については説明を省略する。
【0030】
図7Aは、第3実施例によるアンテナ装置の誘電体部材20の斜視図である。第1実施例では、誘電体部材20(
図1)がx軸の正の向きに傾いている。これに対し、第3実施例では、誘電体部材20の傾斜方位22がx軸の正の向きからずれている。例えば、x軸の正の向きと傾斜方位22とのなす角度が45°である。このとき、4つの側面のいずれもxy面に対して垂直にならない。2つの側面の外側を向く法線ベクトルが、xy面に平行な方向からz軸の正の向き(上向き)に傾き、残りの2つの側面の外側を向く法線ベクトルが、xy面に平行な方向からz軸の負の向き(下向き)に傾いている。
【0031】
第3実施例においても、放射素子11の法線方向(z軸方向)を高さ方向としたとき、誘電体部材20の平断面の幾何中心を高さ方向に連ねる線が放射素子11の法線方向に対して傾斜している。このため、第1実施例及び第2実施例と同様に、放射素子11の正面方向から傾いた方向において、アンテナゲインが最大になる。傾斜方位22を変化させることにより、アンテナゲインが最大となる方位を任意に調整することができる。
【0032】
図7Bは、第3実施例の変形例によるアンテナ装置の誘電体部材20の斜視図である。本変形例においても、第3実施例(
図7A)と同様に、傾斜方位22がx軸の正の向きからずれている。また、本変形例では、第3実施例の誘電体部材20の側面のうち、外側を向く法線ベクトルが下向きに傾いている2つの側面がxy面に対して垂直に変更されている。誘電体部材20の底面は六角形状になり、誘電体部材20は6つの側面を持つことになる。そのうち2つの側面は傾斜方位22に対して平行であり、その形状は直角三角形になる。
【0033】
本変形例においても、放射素子11の法線方向(z軸方向)を高さ方向としたとき、誘電体部材20の平断面の幾何中心を高さ方向に連ねる線が放射素子11の法線方向に対して傾斜している。このため、第3実施例と同様に、放射素子11の正面方向から傾いた方向において、アンテナゲインが最大になる。傾斜方位22を変化させることにより、アンテナゲインが最大となる方位を任意に調整することができる。
【0034】
[第4実施例]
次に、
図8から
図10Bまでの図面を参照して第4実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、第1実施例から第3実施例までの各実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0035】
図8及び
図9は、それぞれ第4実施例によるアンテナ装置の斜視図及び平面図である。第4実施例では、基板10に9個の放射素子11が3行3列の行列状に配置されている。行方向及び列方向が、それぞれx軸方向及びy軸方向に平行である。9個の放射素子11の各々に対応して誘電体部材20が配置されている。1つの放射素子11及び1つの誘電体部材20が1つの構成単位25となり、複数の構成単位25が基板10に設けられてアレイアンテナを構成している。
【0036】
中心の放射素子11BBに対応する誘電体部材20は円錐台形状を有する。周囲の8個の放射素子11に対応する誘電体部材20は、アレイアンテナの幾何中心(中央の放射素子11の中心)から放射状に延びる仮想直線の方向に傾斜している。具体的には、中心の放射素子11BBに対してx軸の正の側及び負の側に位置する2つの放射素子11BC、11BAに対応する誘電体部材20は、それぞれx軸の正の向き及び負の向きに傾斜している。中心の放射素子11に対してy軸の正の側及び負の側に位置する2つの放射素子11AB、11CBに対応する誘電体部材20は、それぞれy軸の正の向き及び負の向きに傾斜している。放射素子11AB、11BA、11BC、11CBにそれぞれ対応する誘電体部材20の形状は、第1実施例の誘電体部材20(
図1、
図2)の形状と同一である。
【0037】
中心の放射素子11に対してx軸の正方向及びy軸の正方向から45°を成す方位に位置する放射素子11ACに対応する誘電体部材20は、x軸の正方向及びy軸の正方向から45°を成す方位に傾斜している。3行3列の行列状に配置された9個の放射素子11のうち、その他の角に位置する3つの放射素子11AA、11CA、11CCに対応する誘電体部材20も、同様に傾斜している。放射素子11AA、11AC、11CA、11CCにそれぞれ対応する誘電体部材20の形状は、第3実施例の誘電体部材20(
図7A)の形状と同一である。
【0038】
中心の放射素子11に対応する誘電体部材20以外のいずれの誘電体部材20においても、誘電体部材20の各々の平断面の幾何中心を高さ方向に連ねる線が、アレイアンテナの幾何中心から見て外側に向かって傾斜している。
【0039】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。第4実施例では、構成単位25の1つずつに着目すると、アンテナゲインが最大値を示す方向が、放射素子11の正面方向から外側に広がるように傾いている。これにより、正面方向から傾いた方向に関して、より広い範囲で高いアンテナゲインを得ることができる。
【0040】
次に、上述の優れた効果を確かめるために行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションにおいて、放射素子11の各々の一辺の長さを0.8mmとした。放射素子11のx軸方向及びy軸方向の中心間距離を2.5mmとした。中心の放射素子11BBに対応する誘電体部材20の底面の直径を2mm、上面の直径を0.6mm、高さを1mmとした。周囲の8個の誘電体部材20の底面のx軸方向及びy軸方向の寸法を、それぞれ1.6mm及び1.5mmとした。放射素子11AB、11BA、11BC、11CBに対応する誘電体部材20の水平変位量を1mmとした。放射素子11AA、11AC、11CA、11CCに対応する誘電体部材20のx軸方向への水平変位量及びy軸方向への水平変位量を共に1mmとした。
【0041】
図10A及び
図10Bは、それぞれxz面内及びyz面内に関するアンテナゲインの傾斜角依存性のシミュレーション結果を示すグラフである。
図10A及び
図10Bの横軸は、それぞれ法線方向からx軸方向及びy軸方向への傾斜角度θx及びθyを表す。
図10A及び
図10Bの縦軸は、アンテナゲインを単位「dB」で表す。
図10A及び
図10Bのグラフ中の太い実線は、第4実施例によるアンテナ装置のアンテナゲインを示す。比較のために、誘電体部材20を直方体にしたアンテナ装置のアンテナゲインを破線で示し、誘電体部材20を配置しないアンテナ装置のアンテナゲインを細い実線で示す。
【0042】
第4実施例では、誘電体部材20を配置しないアンテナ装置と比べて、正面方向のアンテナゲインのみならず、正面から傾いた方向のアンテナゲインも高くなっている。このシミュレーションによって、第4実施例によるアンテナ装置のように誘電体部材20を配置することによって正面、及び正面から傾いた方向においてアンテナゲインを高めることができることが確認された。
【0043】
また、x軸方向への傾斜角度θxの絶対値が約60°より大きな範囲、及びy軸方向への傾斜角度θyの絶対値が約30°より大きな範囲において、第4実施例によるアンテナ装置のゲインが、誘電体部材20を直方体にしたアンテナ装置のアンテナゲインより大きくなっている。このように、誘電体部材20の側面を傾斜させることにより、法線方向からの傾斜角が大きな範囲でアンテナゲインを大きくする効果が得られる。
【0044】
次に、第4実施例の変形例について説明する。
第4実施例では9個の構成単位25(
図8)を3行3列の行列状に配置したが、構成単位25の個数は9個以外にしてもよい。例えば、複数の構成単位25を行列状に配置するとよい。例えば、12個の構成単位25を3行4列の行列状に配置してもよく、16個の構成単位25を4行4列の行列状に配置してもよい。なお、配置の態様は、必ずしも行列状である必要はなく、複数の構成単位25を三角格子の格子点に対応する位置に配置してもよい。
【0045】
[第5実施例]
次に、
図11を参照して第5実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、第2実施例によるアンテナ装置(
図4、
図5)と共通の構成については説明を省略する。
【0046】
図11は、第5実施例によるアンテナ装置の斜視図である。
第2実施例によるアンテナ装置の誘電体部材20のxzに平行な断面は台形である。これに対し、第5実施例では、誘電体部材20のxzに平行な断面が直角三角形である。直角を挟む2辺のうち一方の辺が底面の縁に対応し、他方の辺がxy面に対して垂直な側面に対応する。直角三角形の斜辺が、xy面に対して傾斜した側面に対応する。
【0047】
第5実施例においても、放射素子11の法線方向を高さ方向としたとき、誘電体部材20の平断面の幾何中心を高さ方向に連ねる線が放射素子11の法線方向に対して傾斜している。このため、第1実施例及び第2実施例と同様に、放射素子11の正面方向から傾斜した方向において高いアンテナゲインを得ることができる。
【0048】
[第6実施例]
次に、
図12Aを参照して第6実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、第1実施例によるアンテナ装置(
図1、
図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0049】
図12Aは、第6実施例によるアンテナ装置の断面図である。第1実施例によるアンテナ装置の誘電体部材20(
図1、
図2)は大気に晒されている。これに対して第6実施例によるアンテナ装置においては、誘電体部材20が封止樹脂30で封止されている。封止樹脂30の誘電率は誘電体部材20の誘電率より低い。
【0050】
次に、第6実施例の優れた効果について説明する。誘電体部材20の誘電率が周囲の封止樹脂30の誘電率より高いため、放射素子11から放射された電波は、誘電体部材20の傾斜している方向に偏って伝搬する。このため、第1実施例の場合と同様に、放射素子11の正面方向に対して傾いた方向のアンテナゲインを、正面方向のアンテナゲインより高めることができる。さらに、誘電体部材20が封止樹脂30で封止されているため、誘電体部材20の脱落等の損傷を抑制することができる。
【0051】
次に、
図12Bを参照して第6実施例の変形例について説明する。
図12Bは、第6実施例の変形例によるアンテナ装置の断面図である。第6実施例によるアンテナ装置の誘電体部材20の形状は平行六面体であるが、
図12Bに示した変形例によるアンテナ装置の誘電体部材20は、例えば楕円の長軸を回転軸として得られる回転楕円体を、長軸に対して斜めに二分割して得られる形状を有する。切断面が底面に相当する。
【0052】
本変形例においては、誘電体部材20の平断面の幾何中心を高さ方向に連ねる線が、放射素子11の法線方向に対して傾斜している。このため、第6実施例の場合と同様に、放射素子11の正面方向に対して傾いた方向のアンテナゲインを、正面方向のアンテナゲインより高めることができる。なお、誘電体部材20の形状は、幾何学的に厳密な回転楕円体の一部である必要はなく、底面以外の表面を任意の曲面としてもよい。
【0053】
[第7実施例]
次に、
図13Aを参照して第7実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、第1実施例によるアンテナ装置(
図1、
図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0054】
図13Aは、第7実施例によるアンテナ装置の断面図である。第7実施例によるアンテナ装置においては、第1実施例によるアンテナ装置(
図1、
図2)の誘電体部材20と同一形状の誘電体部材20の内部に無給電素子21が配置されている。無給電素子21は、放射素子11と平行に配置された導体板で構成される。無給電素子21は、平面視において放射素子11から誘電体部材20の傾斜方位に向かってずれた位置に配置されている。無給電素子21は放射素子11と結合し、複共振を生じさせる。
【0055】
次に、第7実施例の優れた効果について説明する。第7実施例では、放射素子11と無給電素子21とで複共振が生じることにより、アンテナ装置の動作帯域幅が広がるという優れた効果が得られる。さらに、無給電素子21が放射素子11に対して誘電体部材20の傾斜方位に向かってずれた位置に配置されているため、放射素子11の正面方向に対して傾いた方向のアンテナゲインを、正面方向のアンテナゲインより高めるという効果がより大きくなる。
【0056】
次に、
図13B乃至
図14Bを参照して第7実施例の変形例について説明する。
図13Bは、第7実施例の変形例によるアンテナ装置の断面図である。本変形例では、誘電体部材20として、第6実施例の変形例(
図12B)によるアンテナ装置の誘電体部材20と同一の形状のものが用いられる。本変形例のように、底面と任意の曲面で構成された誘電体部材20内に無給電素子21を配置してもよい。
【0057】
図14Aは、第7実施例の他の変形例によるアンテナ装置の断面図である。本変形例では、
図13Aに示した第7実施例によるアンテナ装置の誘電体部材20が封止樹脂30で封止されている。
図14Bは、第7実施例のさらに他の変形例によるアンテナ装置の断面図である。本変形例では、
図13Bに示した第7実施例の変形例によるアンテナ装置の誘電体部材20が封止樹脂30で封止されている。封止樹脂30の誘電率は、第6実施例(
図12A)の場合と同様に、誘電体部材20の誘電率より低い。
図14A及び
図14Bに示した変形例のように、無給電素子21を内部に含む誘電体部材20を封止樹脂30で封止してもよい。
【0058】
[第8実施例]
次に、
図15Aを参照して第8実施例による通信装置について説明する。以下、第1実施例によるアンテナ装置(
図1、
図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0059】
図15Aは、第8実施例による通信装置の部分断面図である。第1実施例によるアンテナ装置においては、誘電体部材20が接着剤等によって放射素子11及び基板10に固定されている。第8実施例では、誘電体部材20が放射素子11及び基板10に固定されておらず、アンテナ装置を収容する筐体35の一部分が誘電体部材20と同様の機能を持つ。筐体35に収容されたアンテナ装置は、第1実施例によるアンテナ装置(
図1、
図2)から誘電体部材20を取り除いた部分の構成と同一である。
【0060】
筐体35は、相対的に誘電率の高い高誘電率部分35Aと、相対的に誘電率の低い低誘電率部分35Bとを含んでいる。高誘電率部分35Aと低誘電率部分35Bとは、放射素子11の上面の面内方向に仕切られており、高誘電率部分35Aは、平面視において放射素子11と重なる位置に配置されている。放射素子11が高誘電率部分35Aから間隙を隔てて配置されるように、アンテナ装置が筐体35内に位置決めされて固定されている。なお、高誘電率部分35Aが放射素子11に接触するように、アンテナ装置を筐体35内に位置決めしてもよい。
【0061】
高誘電率部分35Aは、2つの低誘電率部分35Bの間に配置されている。高誘電率部分35Aと低誘電率部分35Bとを仕切っている2つの境界面36、37は相互に平行であり、放射素子11の上面に対して傾斜している。一方の境界面36は、平面視において放射素子11の縁と重なっている。この境界面36は、放射素子11から法線方向に遠ざかるに従って、平面視において放射素子11の外側から内側に入り込むように傾斜している。高誘電率部分35Aは、この境界面36よりも放射素子11側に位置する。他方の境界面37は、平面視において放射素子11の外側に配置されている。
【0062】
次に、第8実施例の優れた効果について説明する。
第8実施例では、筐体35の一部分である高誘電率部分35Aが、第1実施例によるアンテナ装置の誘電体部材20と同様の機能を持つ。このため、第8実施例においても第1実施例の場合と同様に、放射素子11の正面方向に対して傾いた方向のアンテナゲインを、正面方向のアンテナゲインより高めることができる。
【0063】
また、第8実施例では、一般的な指向特性を持つアンテナ装置を利用し、このアンテナ装置を収容する筐体35の高誘電率部分35Aの大きさ及び形状、及び高誘電率部分35Aと放射素子11との位置関係を調整することによって、通信装置として所望の指向特性を実現することが可能になる。
【0064】
次に、
図15B及び
図15Cを参照して、第8実施例の変形例について説明する。
図15Bは、第8実施例の変形例による通信装置の部分断面図である。第8実施例では、高誘電率部分35Aが2つの低誘電率部分35Bの間に配置されている。これに対して本変形例では、高誘電率部分35Aと低誘電率部分35Bとが1つの境界面36によって仕切られている。第8実施例による通信装置の境界面37(
図15A)に相当する境界面は存在しない。境界面36と放射素子11との位置関係は、第8実施例によるアンテナ装置(
図15A)の境界面36と放射素子11との位置関係と同一である。境界面36は、第2実施例によるアンテナ装置の誘電体部材20(
図4、
図5)の傾斜した側面と同様の機能を持つ。
【0065】
図15Cは、第8実施例の他の変形例による通信装置の部分断面図である。本変形例では、筐体35に、放射素子11の上面に対して傾斜し、相互に平行に配置された2つのスリット38、39が設けられている。2つのスリット38、39は、筐体35の内側の表面から外側の表面まで達している。スリット38、39内には大気が満たされている。
【0066】
本変形例では、一方のスリット38の2つの側面のうち基板10から遠ざかる斜め方向を向く側面41が、第8実施例によるアンテナ装置の境界面36(
図15A)として機能する。他方のスリット39の側面のうち基板10側を向く側面42が、第8実施例によるアンテナ装置の境界面37(
図15A)として機能する。すなわち、スリット38とスリット39とに挟まれた部分が、第8実施例によるアンテナ装置の高誘電率部分35Aとして機能し、スリット38、39内の大気が、第8実施例によるアンテナ装置の低誘電率部分35Bとして機能する。本変形例では、誘電率の異なる2つの材料を含む複合材料を用いることなく、筐体35を単一素材で形成することが可能である。
【0067】
[第9実施例]
次に、
図16を参照して第9実施例による通信装置について説明する。
【0068】
図16は、第9実施例による通信装置の部分斜視図である。第9実施例による通信装置は、筐体35、及び筐体35に収容されたアンテナ装置40を含む。なお、
図16では、筐体35の一部分のみを示している。アンテナ装置40として、第4実施例によるアンテナ装置(
図8、
図9)が用いられる。
【0069】
筐体35の一部がアンテナ装置40の基板10の上面に間隔を隔てて対向している。筐体35のうち基板10の上面に対向する部分(以下、アンテナ対向部分という。)は金属等の導電性材料で形成されている。筐体35のアンテナ対向部分に複数の開口45が設けられている。複数の開口45は放射素子11及び誘電体部材20からなる構成単位25に対応して配置されている。開口45の各々は、平面視において放射素子11が配置された領域から、誘電体部材20の傾斜方位に向かって延びた楕円またはレーストラック型の形状を有する。中央の構成単位25に対応する開口45は円形である。
【0070】
次に、第9実施例の優れた効果について説明する。
第9実施例では、放射素子11から放射された電波が、金属等の筐体35で遮蔽されることなく、開口45を通って筐体35の外側の空間に放射される。開口45の各々は、平面視において放射素子11が配置された領域から、誘電体部材20の傾斜方位に向かって延びた長い形状を有するため、放射素子11の法線方向から傾いた方向に放射される電波を筐体35の外に効率的に放射させることができる。開口45は、対応する放射素子11の3dBビーム幅の範囲を包含する大きさ及び形状とすることが好ましい。
【0071】
次に、第9実施例の変形例について説明する。
第9実施例では、開口45の形状を楕円またはレーストラック型にしているが、他の形状としてもよい。第9実施例では、開口45を開放させた状態にしているが、開口45を誘電体部材で塞いでもよい。
【0072】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。