(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センサ部と、前記気体の流れにおいて前記センサ部よりも下流に配置された前記駆動部との間に、複数の前記流路からそれぞれ排出される前記気体を1つにまとめる排出路が設けられている、
請求項7に記載の物質検出システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の化学センサデバイスは、各感応膜への気体の当たり方によって、感応膜間で検出結果にばらつきが生じる場合がある。例えば、気体の当たり方が緩やかな感応膜は、物質と良く反応して反応値が大きくなる一方、気体の流れが強すぎて気体の当たり方が強い感応膜は、反応値が小さくなる。このような感応膜間における反応のばらつきは、その反応値の検出結果のばらつきとなって現れ、各感応膜の反応値のパターンによる匂いの特定の妨げとなる。
【0006】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、感応膜間における検出結果のばらつきを低減することができる物質検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る物質検出システムは、
気体が通過する複数の流路が形成され、前記流路それぞれに前記気体に含まれる物質に反応する感応膜が配置されているセンサ部と、
流入した前記気体の流れを一様に抑制して前記流路それぞれに送る整流部と、
前記整流部に前記気体を流入させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、前記気体の流れにおいて、前記整流部よりも上流に配置され、流入する前記気体を前記整流部に吹き出す第1のポンプを備え、
前記第1のポンプは、前記物質の非検出時には外部からの前記気体の前記整流部への流入を
制限し
、
前記感応膜が、前記流路の一部を塞ぐ振動梁に設けられ、前記気体の流れに対向するように設けられており、
前記流路は、前記振動梁の前後において前記気体が流れる方向が同じで、かつ、前記気体の流れに直交する断面が均一となるように構成されている。
【0008】
この場合、前記整流部は、
前記流路に送られる前記気体の流量及び流速の少なくとも一方が前記流路間で均一化されるように、前記気体の流れを整流する、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記整流部は、
前記気体が流入する第1の整流路と、
前記第1の整流路から流出した気体を互いに異なる方向に送る複数の枝路を有する第2の整流路と、
前記流路毎に設けられ、前記第2の整流路から流出した気体を前記流路に送る複数の第3の整流路と、
を備える、
こととしてもよい。
【0010】
前記第3の整流路は、互いに形状及び大きさが同一であり、
前記第2の整流路の形状は、前記第3の整流路に供給される前記気体の流量及び流速の少なくとも一方が前記第3の整流路間で同じとなるように規定されている、
こととしてもよい。
【0011】
前記整流部は、
第1の基板と、前記第1の基板に貼り合わされる第2の基板とを備え、
前記第1の整流路は、前記第1の基板に形成され、
前記第2の整流路は、前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方に形成され、
前記第3の整流路は、前記第2の基板に形成されている、
こととしてもよい。
【0012】
前記流路は、形状及び大きさが互いに同じである、
こととしてもよい。
【0015】
前記駆動部は
、
前記気体の流れにおいて、前記整流部よりも下流に配置され、前記センサ部から前記気体を引き込んで排出する第2のポン
プを備える、
こととしてもよい。
【0016】
前記センサ部と、前記気体の流れにおいて前記センサ部よりも下流に配置された前記駆動部との間に、前記流路からそれぞれ排出される前記気体を1つにまとめる排出路が設けられている、
こととしてもよい。
【0017】
検出時における前記駆動部の駆動時間が一定である、
こととしてもよい。
【0018】
前記振動梁は、両端が前記流路の内壁に固定されている、
こととしてもよい。
前記センサ部は、前記振動梁の振動周波数の変化を示す信号を出力する、
こととしてもよい。
【0019】
外部からの前記気体を流入する流入口を有し、前記流入口から流入した前記気体を内部に収容する前記センサ部、前記整流部及び前記駆動部に送るハウジングを備え、
前記流入口に、交換可能なフィルタが取り付けられている、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、物質が含まれる気体の流れを一様に抑制して複数の流路に送る整流部を備えているので、流路毎に設けられた感応膜への気体の当たり方を均一化することができるようになる。この結果、感応膜間における検出結果のばらつきを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0023】
実施の形態1
本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る物質検出システム1は、気体Fに含まれる物質を検出する。この物質検出システム1は、例えば、気体Fに含まれる匂いを構成する物質を検出するために用いられる。物質検出システム1は、センサ部10と、駆動部11と、整流部12と、を備える。
【0024】
本実施の形態では、センサ部10が気体Fの流れの最下流に位置している。センサ部10は、互いに仕切られて形成される複数の流路20を有している。流路20は、それぞれ気体Fが通過可能な貫通孔であり、この貫通孔によって形成される空間が、気体Fが通過する流路20となる。流路20は、互いの形状及び大きさが同じである。
図1では、流路20が2つだけ示されているが、流路20は、3つ以上設けられていてもよい。
【0025】
センサ部10において、流路20のそれぞれには、気体Fに含まれる物質に反応する感応膜21が配置されている。感応膜21は、対象となる物質に反応すると、その質量が増加する。感応膜21と反応する物質は、流路20毎に異なっている。なお、本実施の形態では、感応膜21は、物質に反応すると質量が増加することが想定されているが、本発明はこれには限られない。対象となる物質が付着している感応膜21の水分が、乾燥した気体によって取り除かれて質量が減少するものを感応膜21として用いてもよい。また、感応膜21として、対象となる物質と反応して消耗し、質量が減る膜を用いてもよい。
【0026】
流路20には、その一部を塞ぐ振動梁22が設けられている。感応膜21は、流路20に張り出す振動梁22上に設けられている。振動梁22は、流路20を形成する側壁に少なくとも一端が固定されている。物質と反応しやすくするため、感応膜21は、気体Fの流れの上流側を向いている。
【0027】
振動梁22には、例えば圧電素子が固定されている。振動梁22には、圧電素子に電圧を印加する駆動電極と、振動梁22の振動により、圧電素子の振動レベルを検出可能な検出電極とが設けられている。駆動電極を介して正弦波状に変動する電圧が印加されて圧電素子が伸縮すると、その伸縮により振動梁22が振動する。検出電極では、その振動レベルに応じた電圧が検出される。
【0028】
感応膜21が気体Fに含まれる物質と反応すると、感応膜21の質量が増加又は減少する。これにより、振動梁22の振動周波数、例えば共振周波数が変化する。センサ部10は、感応膜21毎に、この振動周波数の変化を示す信号を出力する。この変化に基づいて、感応膜21と反応した物質、すなわち気体Fに含まれる物質を検出することが可能となる。
【0029】
なお、本実施の形態に係る物質検出システム1は、携帯可能な小型の機器とすることができる。このような機器は、スマートフォン等の別の電子機器と電気的に接続される。物質検出システム1は、接続された電子機器から電力が供給されるとともに、電子機器からの指令により、気体Fに含まれる物質を検出する。
【0030】
駆動部11は、気体Fの流れにおいて最上流に配置されている。駆動部11は、気体Fを引き込んで吹き出すポンプである。本実施の形態では、駆動部11は、気体Fの流れにおいて、整流部12よりも上流に配置されている。駆動部11は、整流部12に気体Fを流入させる。本実施の形態では、駆動部11は、流入する気体Fを整流部12に吹き出す。
【0031】
駆動部11は、駆動の開始及び終了を制御可能である。駆動部11の駆動時間T(
図2参照)は、検出時において一定とすることができる。
【0032】
整流部12は、気体Fの流れにおいて、駆動部11とセンサ部10との間に設けられている。整流部12は、駆動部11から吹き出す気体Fを流入する。整流部12は、流入した気体の流れを一様に抑制して流路20のそれぞれに送る。ここで、一様に抑制とは、流路20間で気体Fの流れが互いに均一又は均等とみなせるように気体Fの流れを制限することをいう。整流部12は、流路20のそれぞれに送られる気体Fの流量及び流速が均一化されるように、気体Fの流れを整流する。
【0033】
整流部12における整流路は、3つの部分に分かれている。すなわち、整流部12は、第1の整流路としての流入孔31と、第2の整流路としての分岐路32と、第3の整流路としての複数の流出孔33と、を備える。
【0034】
最上流の流入孔31は、貫通孔である。流入孔31の一方端、すなわち上流端は、駆動部11の吹き出し口に合わせて配置されている。流入孔31は、駆動部11から吹き出された気体Fを流入する。
【0035】
分岐路32は、流入孔31の他方端、すなわち下流端と連通している。分岐路32は、流入孔31から見て、2つの方向に枝別れしている。すなわち、分岐路32には、2つの枝路32aが設けられている。2つの枝路32aは、流入孔31の下流端から流出した気体Fを互いに異なる方向に送る。なお、分岐路32が枝別れする方向は2つには限られない。
【0036】
流出孔33は、流路20毎に設けられた貫通孔である。流出孔33は、各枝路32aと流路20とを連通している。流出孔33は、枝路32aから流出した気体Fを流路20に送る。流出孔33は、互いに形状及び大きさが同一である。また、分岐路32の形状は、流出孔33のそれぞれに供給される気体Fの流量及び流速が同じとなるように規定されている。
図1に示すように、流入孔31と、枝路32aと、流出孔33は、仮想中心線CLに対して対称となっているため、流出孔33のそれぞれに供給される気体Fの流量及び流速は同じとなる。
【0037】
また、部材の観点からすれば、整流部12は、第1の基板40と、第1の基板40に貼り合わされる第2の基板41とを備えている。流入孔31は、第1の基板40に形成されている。また、分岐路32は、第2の基板41における第1の基板40と接する部分に形成されている。分岐路32は、第2の基板41に形成された溝が、第1の基板40により塞がれて形成されている。流出孔33は、第2の基板41に形成されている。
【0038】
なお、分岐路32は、第1の基板40の第2の基板41に接する部分に形成するようにしてもよい。また、分岐路32は、第1の基板40に形成された溝部分と、第2の基板41に形成された溝部分とが、貼り合わされて形成されるようにしてもよい。また、分岐路32については、第1の基板40、第2の基板41でなく、第1の基板40と第2の基板41との間に挟まれて貼り付けられる第3の基板に形成するようにしてもよい。
【0039】
また、センサ部10に形成された流路20のそれぞれは、形状及び大きさが同じである。流出孔33と流路20とは、継ぎ目のない一体化した貫通孔となっている。これにより、気体Fを通し易くすることができる。
【0040】
次に、本発明の実施の形態1に係る物質検出システム1の動作について説明する。
【0041】
図2に示すように、まず、時刻t1において、駆動部11は、気体Fの吹き込みを開始する。この時刻t1から、駆動部11は、流入した気体Fを、整流部12の流入孔31に流入させる。流入孔31に供給された気体Fは、分岐路32に流入する。これにより、気体Fは、流れの方向が変わり、分散した状態で、流出孔33に流入する。すなわち、分岐路32により、流入孔31に流入した気体Fの流れが一様に抑制される。気体Fは、流れが抑制された状態で、2つに均等に分かれて、その流量及び流速が流出孔33間で同じとなるように、各流出孔33に流入する。
【0042】
一方の流出孔33に流入した気体Fと、他方の流出孔33に流入した気体Fとは、同じ流速、同じ流量でセンサ部10の流路20に供給される。気体Fに感応膜21に反応する物質が含まれていれば、感応膜21が物質に反応し、感応膜21の質量が変化する。流路20に供給された気体Fは、感応膜21に当たった後、流路20から排出される。
【0043】
時刻t1から駆動時間T経過後の時刻t2において、駆動部11は、気体Fの吹き込みを終了する。これにより、物質検出システム1内部の気体Fの流れが停止する。気体Fが流れる駆動時間Tは一定であるため、1回の測定について、物質検出システム1内を流れる気体Fの流量は同じとなる。
【0044】
吹き込み終了後、時刻t3において、センサ部10から出力される各感応膜21が設けられた振動梁22の振動周波数の変化を示す信号が出力され、その信号に基づいて、気体Fに含まれる物質が検出される。各流路20の感応膜21で反応する物質の量の割合は、気体Fに含まれる匂いを構成する物質の割合に等しくなるため、検出された物質から構成される匂いを正確に特定することができる。
【0045】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図3及び
図4に示すように、本実施の形態に係る物質検出システム1は、センサ部10に設けられた流路20の数が、上記実施の形態1に係る物質検出システム1と異なっている。本実施の形態では、流路20の数は10である。すなわち、感応膜21の数は10である。
【0046】
本実施の形態に係る物質検出システム1は、センサ部10、駆動部11及び整流部12の他、ハウジング13A、13Bを備えている。この物質検出システム1は、気体Fの流れに対して、駆動部11、整流部12及びセンサ部10の順に並んでいることは、上記実施の形態1に係る物質検出システム1と同じである。
【0047】
ハウジング13A、13Bは、物質検出システム1の筐体であり、センサ部10、駆動部11及び整流部12を収容する。ハウジング13Aには、気体Fの流入口13aが設けられている。流入口13aから流入した気体Fが、整流部12、センサ部10及び駆動部11に送られる。流入口13aには、交換可能なフィルタが取り付けられている。このフィルタは、気体Fの流入に伴う異物の混入を防いでいる。また、ハウジング13Bには、気体Fの排出口13bが設けられている。なお、本実施の形態に係る物質検出システム1は、内部フレーム15を備えている。内部フレーム15とハウジング13Bは、整流部12及びセンサ部10を内部で狭持している。
【0048】
図5に示すように、整流部12は、第1の基板40と、第1の基板40に貼り合わされる第2の基板41とを備えている。流入孔31は、第1の基板40に形成されている。また、分岐路32は、第2の基板41における第1の基板40と接する部分に形成されている。流出孔33は、第2の基板41に形成されている。
図5に示すように、第2の基板41に形成された分岐路32に相当する溝の深さは、流出孔33に連通する部分以外は均一である。
【0049】
図6及び
図7に示すように、分岐路32には、2本の枝路32aと、両端部32bと、枝路32cとが設けられている。2本の枝路32aは、互いに平行に延びている。この枝路32aのそれぞれの中央部と、流入孔31とが連通している。駆動部11から吹き出された気体Fは、流入孔31から枝路32aに流入する。気体Fは、枝路32aの両端部32bへ向かって流れた後、両端部32bから分岐する枝路32cに流入し、その枝路32cの端部、すなわち下流端に至る。枝路32cの下流端は、流出孔33に連通しており、気体Fは、流出孔33を介して、センサ部10の流路20へ送られる。
【0050】
分岐路32の形状は、流出孔33のそれぞれに供給される気体Fの流量及び流速が同じとなるように規定されている。なお、
図6に示すように、流出孔33の中には、2つの枝路32cの合流地点に設けられているものがある。合流地点に向かって設けられた2つの枝路32cの幅は、他の枝路32cの幅の半分となっている。これにより、すべての流出孔33に流れる気体Fの流量を均一にしている。
【0051】
流出孔33は、流路20毎に設けられている。流出孔33は、分岐路32と流路20とを連通している。流出孔33のそれぞれは、形状及び大きさが同一である。
【0052】
上述のような物質検出システム1の動作は、上記実施の形態1に係る物質検出システム1と同じである。まず、駆動部11の電源をオンして、気体Fの吹き込みを開始する。ハウジング13Aの流入口13aから流入した気体Fは駆動部11に引き込まれ、駆動部11は、流入した気体Fを整流部12の流入孔31に流入させる。流入孔31に供給された気体Fは、分岐路32に流入する。
【0053】
分岐路32の枝路32aでは、気体Fの流れの方向が変更され、気体Fは、両端部32bへ進む。両端部32bに進んだ気体Fは、さらに枝路32cを進んで、流出孔33に到達する。すなわち、枝路32aにより、気体Fは、流速が抑制された状態で、枝分かれして、その流量及び流速が流出孔33間で同じとなるように、各流出孔33に流入する。
【0054】
各流出孔33に流入した気体Fは、同じ流速、同じ流量でセンサ部10の流路20に供給される。流路20に供給された気体Fは、感応膜21に当たった後、流路20から排出される。
【0055】
このように、本実施の形態に係る物質検出システム1であれば、各感応膜21に気体Fを均一な流量及び流速で当てることができるので、各感応膜21での反応値の割合を正確に測定することが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態では、気体Fに含まれる10個の物質を検出可能となる。このようにすれば、気体Fに含まれる複数の匂いを検出することも可能となる。各感応膜21に流れる気体Fの流量及び流速は均一であるため、検出された物質に基づいて、気体Fに含まれる匂いの比率も正確に求めることができるようになる。
【0057】
また、本実施の形態のように、整流部12では、気体Fの流れを分散させるだけでなく、合流する部分を設けることも可能である。いずれにしても、センサ部10の各流路20に流れ込む気体Fの流れが均一化されていればよい。整流部12の整流路は、気体Fの流体シミュレーションの結果に基づいて決定することができる。
【0058】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図8及び
図9に示すように、本実施の形態に係る物質検出システム1は、気体Fの流れに対する構成要素の並び順が、上記実施の形態2に係る物質検出システム1と異なる。
【0059】
本実施の形態では、整流部12、センサ部10及び駆動部11の順に並んでいる。すなわち、駆動部11は、気体Fの流れにおいて、整流部12及びセンサ部10よりも下流に配置され、センサ部10から気体Fを引き込んで排出する。
【0060】
また、本実施の形態では、センサ部10と駆動部11との間に、流路20のそれぞれから排出される気体Fを1つにまとめる排出路14が設けられている。排出路14の排出路は、気体Fの流れに対して、整流部12の整流路と全く逆の構成となっている。このようにすれば、駆動部11の吸引力に、場所によってばらつきがあったとしても、複数の流路20における、気体Fの流量及び流速を均一化することができる。
【0061】
しかしながら、駆動部11の吸引力にばらつきがなければ、排出路14は設けられていなくてもよい。また、排出路14の構成は、整流部12と逆の構成でなくてもよい。複数の流路20各々から流出した気体Fを1つにまとめる構造となっていればよい。
【0062】
なお、本実施の形態に係る物質検出システム1は、内部フレーム15、16を備えている。内部フレーム15,16は、整流部12、センサ部10及び排出路14を内部で狭持している。
【0063】
上述のような物質検出システム1の動作について説明する。まず、駆動部11の電源をオンして、気体Fの引き込みを開始する。ハウジング13Aの流入口13aから流入した気体Fは整流部12の流入孔31に流入する。流入孔31に流入した気体Fは、さらに、分岐路32に流入する。
【0064】
分岐路32の枝路32aでは、気体Fの流れの方向が変更され、気体Fは、両端部32bへ進む。両端部32bに進んだ気体Fは、さらに枝路32cを進んで、流出孔33に到達する。すなわち、枝路32aにより、気体Fは、流速が抑制された状態で、枝分かれして、その流量及び流速が流出孔33間で同じとなるように、各流出孔33に流入する。
【0065】
各流出孔33に流入した気体Fとは、同じ流速、同じ流量でセンサ部10の流路20に供給される。流路20に供給された気体Fは、感応膜21に当たった後、流路20から排出される。流路20から排出された気体Fは、排出路14でまとめられた後、駆動部11、ハウジング13Bの排出口13bを経て排出される。
【0066】
このように、本実施の形態に係る物質検出システム1であれば、各感応膜21に気体Fを均一な流量及び流速で当てることができるので、各感応膜21での反応値の割合を正確に測定することが可能となる。
【0067】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
図10及び
図11に示すように、本実施の形態に係る物質検出システム1は、駆動部11が、整流部12の上流と下流との双方に設けられている点が、上記実施の形態と異なっている。
【0068】
この物質検出システム1では、駆動部11、整流部12、センサ部10及び駆動部11の順に並んでいる。駆動部11は、第1のポンプ11Aと、第2のポンプ11Bとを備えている。第1のポンプ11Aは、気体Fの流れにおいて、整流部12よりも上流に配置され、流入する気体Fを整流部12に吹き出す。第2のポンプ11Bは、気体Fの流れにおいて、整流部12よりも下流に配置され、センサ部10から気体Fを引き込んで排出する。
【0069】
なお、本実施の形態でも、内部フレーム15,16は、整流部12、センサ部10及び排出路14を内部で狭持している。内部フレーム15の上流に第1のポンプ11Aが配置され、内部フレーム16の下流に第2のポンプ11Bが配置されている。
【0070】
第1のポンプ11Aと、第2のポンプ11Bとは協調して動作する。第1のポンプ11Aは、ハウジング13Aの流入口13aから気体Fを引き込んで、整流部12へ吹き出す。整流部12で流れが一様に抑制された気体Fは、センサ部10の複数の流路20に入り込んで、気体Fに検出対象となっている物質が含まれていれば、感応膜21(
図1参照)で検出される。
【0071】
一方、第2のポンプ11Bは、流路20内の気体Fを、排出路14を介して引き込んで、ハウジング13Bの排出口13bから外部に排出する。
【0072】
上流の第1のポンプ11Aと下流の第2のポンプ11Bとを両方備えることにより、吸引力を高めることができる。また、1つのポンプの吸引力を低減して、製品コストを下げることも可能となる。
【0073】
なお、流路20内の気体Fの圧力が、外部の気圧に維持されるように、第1のポンプ11Aの吸引力と、第2のポンプ11Bの吸引力とを制御するようにしてもよい。例えば、整流部12、センサ部10又は排出路14等に気圧センサを備え、気体Fの圧力が外部の気圧より高くなったことが気圧センサで検出されれば、第1のポンプ11Aの吸引力を弱くするか、第2のポンプ11Bの吸引力を強くする。また、気体Fの圧力が外部の気圧より低くなったことが気圧センサで検出されれば、第1のポンプ11Aの吸引力を強くするか、第2のポンプ11Bの吸引力を弱くするようにしてもよい。
【0074】
このように、整流部12の上流と下流の双方に設けられた第1のポンプ11A及び第2のポンプ11Bによって、流入する気体Fの流れを調整することにより、センサ部10の流路20内の各感応膜21(
図1参照)への気体Fの当たり方を均一化したままで、流路20内の気体Fの状態を制御することができる。例えば、第1のポンプ11Aによる気体Fの流入量を第2のポンプ11Bによる気体Fの排出量よりも大きくして、気体Fを感応膜21の周囲に溜め込むことができるし、第1のポンプ11Aによる気体Fの流入量を第2のポンプ11Bによる気体Fの排出量よりも小さくして、感応膜21の周囲の気体Fの量を少なくしたりすることができる。
【0075】
以上詳細に説明したように、上記実施の形態によれば、物質が含まれる気体Fの流れを一様に抑制して流路20のそれぞれに送る整流部12を備えている。このため、流路20毎に設けられた感応膜21への気体Fの当たり方を同じようにすることができる。この結果、感応膜21間における検出結果のばらつきを低減することができる。
【0076】
上記実施の形態では、整流部12は、流路20のそれぞれに送られる気体Fの流量及び流速が均一化されるように、気体Fの流れを整流する。このようにすれば、気体Fの当たり方を、感応膜21間で、極力均一化することができる。この結果、感応膜21間における検出結果のばらつきを低減することができる。
【0077】
しかしながら、整流部12は、気体Fの流量又は流速のいずれかを均一化すればよい。このようにしても、感応膜21の間における検出結果のばらつきをある程度低減することができる。
【0078】
また、整流部12は、気体Fを流入する流入孔31と、流入孔31と連通し、複数の分岐を有する分岐路32と、分岐路32と流路20のそれぞれとを連通するために流路20毎に設けられた複数の流出孔33と、を備える。このようにすれば、流出した気体Fの流れを抑制した後に分岐させて複数の流路20に送ることが可能となる。
【0079】
また、流出孔33のそれぞれは、形状及び大きさが同一であり、分岐路32の形状は、流出孔33のそれぞれに供給される気体Fの流量及び流速が同じとなるように規定されている。このようにすれば、気体Fの流量及び流速を均一化することができる。
【0080】
なお、整流部12の分岐路32は、上記実施の形態に係るものには限られない。例えば、
図12に示すように、放射状に形成されたものを採用するようにしてもよい。
図12に示す流路においても、放射状に形成された分岐路32の断面の形状及び大きさを同じとして、その中を流れる気体Fの流量及び流速を均一化するのが望ましい。
【0081】
また、整流部12は、第1の基板40と、第1の基板40に貼り合わされる第2の基板41とを備えている。また、流入孔31は、第1の基板40に形成され、分岐路32は、第1の基板40及び第2の基板41の少なくとも一方に形成されている。また、流出孔33は、第2の基板41に形成されている。このようにすれば、2つの基板で、複雑な流路を有する整流部12を簡単に製造することが可能となる。
【0082】
なお、上記実施の形態では、整流部12を、例えばセラミック製とすることができる。整流部12がセラミック製である場合には、全ての流路、すなわち流出孔31、分岐路32及び流出孔33を、一体的に製造することが可能である。
【0083】
また、上記実施の形態によれば、流路20のそれぞれは、形状及び大きさが同じである。このようにすれば、各流路20に流入する気体Fの流量及び流速を同じにすることで、流路20内の気体Fの状態を同じとすることができる。
【0084】
駆動部11は、気体Fの流れにおいて、整流部12よりも上流に配置されていてもよいし、下流に配置されていてもよい。また、駆動部11は、上流と下流の双方に配置されていてもよい。
【0085】
なお、上記実施の形態では、駆動部11は、気体Fの流れにおいてセンサ部10の上流に配置された場合、気体Fからセンサ部10を保護する保護部としての機能も果たすことができる。また、駆動部11は、堅牢であるため、検出時においても、検出していない時においても、外力からセンサ部10及び整流部12を保護する役割を果たすことができる。
【0086】
また、上記実施の形態3によれば、センサ部10と駆動部11との間に、流路20のそれぞれから排出される気体Fを1つにまとめる排出路14が設けられている。このようにすれば、各流路20から排出される気体Fの流量及び流速を均一化することができる。
【0087】
また、上記実施の形態によれば、検出時における駆動部11の駆動時間Tが一定である。このようにすれば、複数回行われる測定の間において、気体Fの流量及び流速を、可能な限り均一化することができる。
【0088】
また、上記実施の形態2に係る物質検出システム1によれば、外部からの気体Fを流入する流入口13aを有するハウジング13Aを備えている。この流入口13aには、交換可能なフィルタが取り付けられている、このようにすれば、内部への異物の進入を防いでポンプの故障等を防止することができる。また、フィルタの種類によっては、内部への細菌等の進入を防ぐことができ、清潔さを保つことができる。また、フィルタを交換することにより、物質検出システム1の汚染を防止することができる。
【0089】
なお、上記実施の形態では、感応膜21の種類を2種類又は10種類としたが、本発明はこれには限られない。感応膜21の種類は、2種類以上であればよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、流路20を貫通孔とした。しかしながら、本発明はこれには限られない。例えば、流路20は、気体Fの流入口13aと、排出口13bとが、対向していなくてもよい。
【0091】
なお、上記実施の形態では、駆動部11をポンプとしたが、ポンプの種類は限られない。装置全体を小型化する場合には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた小型のポンプを用いるのが望ましい。また、駆動部11として羽根が回転して気体Fを送るファンを用いてもよい。
【0092】
また、上記実施の形態では、感応膜21への気体Fの当たり方を感応膜21間で同じとしたが、本発明はこれには限られない。感度の低い感応膜21が設けられた流路20については、気体Fが長時間止まるような形状、例えば、他の流路20に比べ気体Fの流速が遅くなるような形状とするようにしてもよい。
【0093】
整流部12の整流路は、上記実施の形態のものに限られない。分岐と合流を繰り返すような形状であってもよいし、網の目のような形状であってもよい。また、流入孔31と、流出孔33との間に、薄く広い空間を設けるだけでもよい。
【0094】
また、上記実施の形態に係る物質検出システム1は、感応膜21が設けられた振動梁22の振動周波数の変化に基づいて、気体Fに含まれる物質を検出した。しかしながら、本発明はこれに限られない。感応膜21への物質の脱着による他の特性の変化で、物質を検出するものを用いてもよい。例えば、感応膜21が取り付けられた構造体の物理特性として、屈折率、蛍光強度、温度の変化に基づいて、物質を検出するようにしてもよい。さらに、感応膜21を含む電気回路の物理特性として、電気伝導度、抵抗値、インピーダンス、電位差、キャパシタンスの変化に基づいて、物質を検出するようにしてもよい。
【0095】
上記実施の形態に係る物質検出システム1は、スマートフォン等の電子機器に接続されて使用されるものを想定している。しかしながら、本発明はこれには限られない。物質検出システム1は、バッテリを有し、単独で使用可能な機器であってもよい。
【0096】
また、上記実施の形態に係る物質検出システム1は、携帯可能なタイプを想定している。しかしながら、本発明はこれには限られない。物質検出システム1は、特定の場所に備え付けのものであってもよい。
【0097】
センサ部10及び整流部12は、MEMS技術を用いて一体化して製造するようにしてもよい。駆動部11についても同様である。
【0098】
また、上記実施の形態に係る物質検出システム1の構成要素の材質については特に制限はない。しかしながら、感応膜21以外は、気体Fと反応することのない材質、例えば樹脂等で構成されているのが望ましい。駆動電極及び検出電極等、金属で構成されている部分については、酸化等することのないように、皮膜で覆うようにしてもよい。
【0099】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。