(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図面に示す構成は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造などが下記のものに限定されるものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
<第1実施形態>
(化粧シートの構成)
本開示の第1実施形態に係る化粧シートの基本構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係る化粧シート10の一構成例を説明するための断面図である。
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る化粧シート10は、着色層12の一方の面側に、絵柄模様層13、表面保護層14がこの順に積層されている。また、表面保護層14は、第1表面保護層14aと、第2表面保護層14bとを有している。以下、各層について詳細に説明する。
【0011】
(着色層)
着色層12は、化粧シート10の基材となる層である。本実施形態では、着色層12として、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体、エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0012】
ここで、着色層12に使用可能な熱可塑性樹脂として、多数の熱可塑性樹脂を挙げたが、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは望ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが望ましい。特に、各種物性や、加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)を使用することが最も望ましい。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂としては、既に列挙した多くの種類から、化粧シートの使用目的等に応じて適宜選択して使用すればよい。特に、一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわち、プロピレンを主成分とする単独又は共重合体である。例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独又は適宜配合したり、それらに更にアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用したりすることができる。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1のコモノマーの1種又は2種以上を15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等を例示できる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体又はその水素添加物等の改質剤を適宜添加できる。
【0014】
さらに、着色層12には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
【0015】
着色層12の厚さは、40μm以上150μm以下の範囲内であることが好ましく、50μm以上130μm以下であることがより好ましい。着色層12の厚さが40μm以上である場合、下地となる床材の凹凸や段差などを吸収して化粧シート10の施工仕上がりを良好にすることができる。また、着色層12の厚さが150μm以下である場合、着色層12を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート10の製造コストを削減することができる。
【0016】
(絵柄模様層)
絵柄模様層13は、着色層12上に形成され、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層であり、必要に応じて設けられる。絵柄模様層13は、着色層12の着色で代用できる場合には、省略も可能である。絵柄模様層13は、染料又は顔料等の着色剤を適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等によって塗布される。また、バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、或いはそれらの混合物等を用いることができるが、勿論これらに限定されない。また、絵柄としては、任意の絵柄を用いることができ、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、或いはそれらの組み合わせ等を用いることできる。また、化粧シート10の隠蔽性を向上するために、絵柄模様層13と着色層12との層間に、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料による隠蔽層を設けてもよい。
【0017】
絵柄模様層13の厚さは、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。絵柄模様層13の厚さが1μm以上である場合、印刷を明瞭にすることができる。絵柄模様層13の厚さが10μm以下である場合、化粧シート10を製造する際の印刷作業性が向上し、かつ製造コストを抑制することができる。
【0018】
また、絵柄模様層13には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
【0019】
また、絵柄模様層13は、例えば化粧シート10が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するためにべた塗りされた着色層と意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有していてよい。
【0020】
(表面保護層)
表面保護層14は、絵柄模様層13上に形成される層であり、化粧シート10に耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性などの機能を付与するために設けられた層である。
表面保護層14は単層でも良く、また複数の層を重ねて表面保護層14としても良い。
図1に示すように、本実施形態の化粧シート10では、表面保護層14として、第1表面保護層14aおよび第2表面保護層14bの2層が設けられている。表面保護層14が一層から構成される構造(単層構造)の場合、第1表面保護層14aが表面保護層14となる。
【0021】
第1表面保護層14aおよび第2表面保護層14bを含む表面保護層14の形成方法は、それぞれの層を、硬化型樹脂の種類に応じて、既知のコーティング装置、熱乾燥装置および紫外線照射装置を用いて塗布および塗膜の硬化を行うことで表面保護層14を形成する。
【0022】
表面保護層14は、曲げ加工性、耐候性、耐傷付性や清掃性に関してその優劣を左右する重要な役割をもつ。表面保護層14は、硬化型樹脂(硬化性樹脂)を主成分とする。すなわち樹脂成分が実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。実質的とは、例えば樹脂全体を100質量部とした場合に80質量部以上を指す。表面保護層14には、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含んでもよい。
【0023】
[第1表面保護層]
第1表面保護層14aは、表面保護層14を構成する層(第1表面保護層14a、第2表面保護層14b)のうち、最表面(最外面)に位置する層(最表層)である。本実施形態では、第1表面保護層14aは、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも1種を含んでいる。なお、電子線硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂とをまとめて電離放射線硬化型樹脂と記載する。第1表面保護層14aは、一般的に反応性樹脂を塗工することにより塗膜形成をし、その後加熱や電離放射線照射により塗膜を硬化させる方法で形成ことができる。第1表面保護層14aにおいては、硬化方法の違いによる特性差もある。例えば、一般的に電離放射線硬化型樹脂で形成された第1表面保護層14aは、硬化反応後の架橋度が高いことから硬度も高く、耐傷性に優れる傾向にある。一方で、熱硬化型樹脂で形成された第1表面保護層14aは、比較的架橋度が低いために硬度が低く、折り曲げや基材への追従などの柔軟性に優れる傾向にある。
【0024】
第1表面保護層14aは、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のいずれか1種を主成分としてもよい。つまり、第1表面保護層14aの主成分は、熱硬化型樹脂単体であってもよいし、紫外線硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂単体であってもよい。
【0025】
例えば、化粧シート10を部材として複雑な形状が多い建具に用いる場合は、柔軟性(例えば加工適正)が要求されることが多い。このため、例えば建具に用いる化粧シート10において、第1表面保護層14aの主成分には、熱硬化型樹脂を用いることが好ましい。また、化粧シート10において柔軟性よりも耐傷性が求められる場合には、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
また、第1表面保護層14aの主成分は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物であってもよい。当該混合物を主成分とする場合、使用用途によって、第1表面保護層14aにおける熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂の比率をコントロールすることで、化粧シート10を各種用途の要求に応じて使い分けることができる。
【0027】
例えば、化粧シート10を建具に用いる場合、第1表面保護層14aの主成分となる熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物は、熱硬化型樹脂を最も多く含有することが好ましい。具体的には、当該混合物において熱硬化型樹脂が50重量%を超えていればよく、70重量%以上を占めることが好ましく、75重量%以上を占めることがより好ましく、80重量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0028】
また、例えば、化粧シート10に耐傷性が求められる場合、第1表面保護層14aの主成分となる熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂の少なくとも一方を最も多く含有することが好ましい。具体的には、当該混合物において紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂が50重量%を超えていればよく、70重量%以上を占めることが好ましく、75重量%以上を占めることがより好ましく、80重量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0029】
このように、表面保護層14のうちの最表層に当たる第1表面保護層14aの主成分が、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物とすることで、耐傷性を満足させると同時に曲げ加工においては表面保護層14の白化や割れが発生し難くなる。
ただし、第1表面保護層14aに用いる樹脂の硬化方法の違いのみで、上記のような耐傷付性や加工適性といった化粧シート10の性能が決まるわけではない。化粧シート10の性能(ここでは耐傷付性や加工適性)は、樹脂自体の材料設計やフィラーなどの添加剤の添加作用、つまり表面保護層14に含まれる各種成分の物性が性能に大きく寄与する。このため、表面保護層14全体としての設計が重要になってくる。
【0030】
〔電離放射線硬化型樹脂〕
ここで第1表面保護層14aに用いる電離放射線硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂を含む)としては、特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。電離放射線硬化型樹脂における硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0031】
具体的には、上述のプレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0032】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。
【0033】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。
【0035】
また、上述のプレポリマーとして、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0036】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0037】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常、190nm以上380nm 以下の範囲が好ましい。
【0038】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100keV以上1000keV以下の範囲のエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましく、100keV以上300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものがより好ましい。
【0039】
〔熱硬化型樹脂〕
ここで第1表面保護層14aに用いる熱硬化型樹脂としては、特に限定されないが、例えば2液硬化型ウレタン系樹脂が挙げられる。2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。また熱硬化型樹脂としてはこれらに限られず、1液反応硬化型のポリウレタン系樹脂や、1液又は2液反応硬化型のエポキシ系樹脂などを用いてもよい。
【0040】
また、表面保護層14は、界面活性剤が添加されている。界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤の少なくとも一種を含んでいる。界面活性剤が添加されていることにより、銀系抗ウイルス剤と表面保護層のバインダ中の相溶性が良好となり、塗工中の抗ウイルス剤の沈殿等による濃度のばらつきが抑制された化粧シートを得ることができる。
【0041】
また、第1表面保護層14aの層厚は、3μm以上15μm以下の範囲内が望ましい。第1表面保護層14aの厚さが3μm以上であれば、耐傷性、耐摩耗性、耐候性等、各種耐性が向上する。第1表面保護層14aの厚さが15μm以下であれば、必要以上に多くの量の樹脂材料を使用する必要がなくコストを低減することができる。
【0042】
〔抗ウイルス剤〕
表面保護層14は、抗ウイルス性を向上させる抗ウイルス剤を含んでいる。
抗ウイルス剤は、銀系材料であることが好ましい。抗ウイルス剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる、また抗ウイルス剤としてジンクピリチオン、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、10、10−オキシビスフェノキサルシン、有機窒素硫黄ハロゲン系、ピリジン−2−チオール−オキシド等が使用できるが、抗ウイルス効果の点で銀系抗ウイルス剤が優れている。
また、抗ウイルス剤は銀系材料が無機材料に担持されている構成であってもよい。これにより、ウイルス効果の持久性の優れた化粧シート10を得ることができる。
【0043】
表面保護層14における抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内である。抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%以上である場合、抗ウイルス剤が効果的に作用し、抗ウイルス性が向上する。抗ウイルス剤の添加量が10質量%以下である場合、耐傷性が向上する。
【0044】
抗ウイルス剤の平均粒径は、表面保護層14の厚さの0.5倍以上2倍以下であることが望ましい。すなわち、抗ウイルス剤の平均粒径をΦ、表面保護層の厚さをDとしたときに、0.5≦Φ≦2Dの関係が成り立つことが望ましい。抗ウイルス剤の平均粒径が表面保護層14の0.5倍以上2倍以下である場合、抗ウイルス剤との接触面先拡大、及び抗ウイルス剤自体の表面積拡大により抗ウイルス性が良好になる。
また、抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であることが望ましい。抗ウイルス剤の平均粒径が1μm以上である場合、表面保護層14と抗ウイルス剤との接触面積が向上し、抗ウイルス性が良好になる。抗ウイルス剤の平均粒径が10μm以下である場合、耐傷性が向上する。
【0045】
また、抗ウイルス剤の粒径のピークは複数存在していることが好ましい。具体的には、抗ウイルス剤の粒径のピークは2つのピークを有し、2つのピークは、1μm以上5μm以下の範囲である第1ピークと、5μm以上10μm以下の範囲である第2ピークとを含んでいることが好ましい。ここで、抗ウイルス剤の粒径の第2ピークは、第1ピークより大きい値とする。抗ウイルス剤の粒径のピークは複数存在していることにより、抗ウイルス剤の充填密度がより向上し、抗ウイルス剤をより多く添加することができる。このため、抗ウイルス剤との接触面積が拡大し、抗ウイルス自体の表面積も拡大することにより、抗ウイルス性が向上する。
【0046】
また、本実施形態に係る化粧シート10において、例えば耐汚染性向上策として、化粧シート10の最表面(第1表面保護層14a)にシリコン系成分(例えばシリコン樹脂)やフッ素系成分(例えばフッ素樹脂)を設定してもよい。
【0047】
〔シリコン樹脂〕
シリコン樹脂を用いる場合は、周囲との密着性や相溶性の問題から変性シリコンを用いることが好ましい。第1表面保護層14aを構成する硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂から形成される場合には、変性シリコンは、電離放射線反応性の変性シリコン樹脂であることが好ましい。また第1表面保護層14aを構成する硬化型樹脂が熱硬化型樹脂から形成される場合には、変性シリコンは、熱反応性の変性シリコン樹脂であることが好ましい。また、第1表面保護層14aを構成する硬化型樹脂が電離放射線硬化型樹脂及び熱硬化型樹脂の混合から形成される場合には、上記変性シリコンは、電離放射線反応性及び熱反応性の少なくとも一方からなる変性シリコン樹脂であることが好ましい。
【0048】
変性シリコンは、反応性変性シリコンと非反応性シリコンとに分類できる。熱反応性の変性シリコンとしては、モノアミン変性シリコン、ジアミン変性シリコン、エポキシ変性シリコン、カルビノール変性シリコン、カルボキシ変性シリコン、メルカプト変性シリコン、シラノール変性シリコン、アルコール変性シリコン、ジオール変性シリコンが例示出来る。また、電離放射線反応性の変性シリコンとしては、アクリル変性シリコン、メタクリル変性シリコンが例示できる。また、非反応性変性シリコンであるポリエーテル変性シリコン、アラルキル変性シリコン、長鎖アルキル変性シリコン、高級脂肪酸エステル変性シリコンが例示出来る。またこれらの変性シリコン製造メーカーとしては信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング株式会社、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社、旭化成ワッカーシリコーン株式会社などが挙げられる。
【0049】
〔フッ素樹脂〕
フッ素樹脂は最小レベルの表面張力を示すことが広く知られており、耐汚染材料として好適である。第1表面保護層14aが含有するフッ素樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン―エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどが挙げられ、これら以外にも多くの誘導体を用いることができる。またこれらのフッ素樹脂のメーカーとしてはダイキン工業株式会社、三井・デュポンフロロケミカル株式会社などが挙げられる。第1表面保護層14aが含有するフッ素樹脂の量は、10質量部以上100質量部以下が好ましい。より好ましくは20質量部以上である。ここで、フッ素樹脂自体が硬化型樹脂であっても良い。すなわち、フッ素樹脂の一部が、表面保護層14(第1表面保護層14a、第2表面保護層14b)の主成分である硬化型樹脂の一部を兼ねていても良い。例えば、第2表面保護層14bの樹脂成分全部がフッ素樹脂であっても良い。
【0050】
このように、本実施形態に係る化粧シート10において、表面保護層14の最表層、すなわち第1表面保護層14aに、シリコン系成分又はフッ素系成分のうち少なくともいずれか一方が含まれていてもよい。これにより、化粧シート10の耐汚染性を向上することができる。耐汚染性が向上されると、ウイルスが化粧シート10の表面に長期間存在することを抑制することができ、結果として、抗ウイルス性をさらに向上させることができる。
【0051】
また、化粧シート10の各層の接着強度を向上するために、絵柄模様層13と表面保護層14との層間に、イソシアネート系硬化剤を使用する2液硬化型ウレタン系接着剤を含む接着層を設けてもよい。
【0052】
[第2表面保護層]
第2表面保護層14bは、表面保護層14を構成する層(第1表面保護層14a、第2表面保護層14b)のうち、最表層と絵柄模様層13との間に形成された層(内側層)である。本実施形態では、第2表面保護層14bは、第1表面保護層14aと同様に、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも1種を含んでいる。なお、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂については、第1表面保護層14aに含まれる硬化型樹脂と同様であるため説明を省略する。
第2表面保護層14bは、第1表面保護層14aと同様に抗ウイルス剤及び界面活性剤を含んでいてもよい。このとき、第2表面保護層14bに含まれる抗ウイルス剤は、第1表面保護層14aに含まれる抗ウイルス剤と同様の材料でもよいし、また第1表面保護層14aに含まれる抗ウイルス剤とは異なる材料でもよい。
【0053】
(変形例)
第1実施形態に係る化粧シートの変形例について、
図2を用いて説明する。
図2は、第1実施形態の変形例による化粧シート20の一構成例を説明するための断面模式図である。
図2に示すように、化粧シート10において表面保護層14の表面、すなわち第1表面保護層14aの表面には、所与の意匠性を付与するためにエンボス部25が形成されていてもよい。通常はエンボス加工によって凹凸模様を形成する。エンボス加工方法は特に限定されない。エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機が用いられる。エンボス部25の凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0054】
<第1実施形態の効果>
本実施形態に係る化粧シート10は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態の化粧シート10の抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上10質量%以下である。
この構成によれば、化粧シート全体への強度に影響を与えず、より高い抗ウイルス性を実現することができる。
(2)本実施形態の化粧シート10の抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下である。
この構成によれば、抗ウイルス剤の接触面積が拡大し、また抗ウイルス剤自体の表面積が拡大することにより高い抗ウイルス性を実現することができる。
【0055】
<第2実施形態>
(化粧シートの構成)
本開示の第2実施形態に係る化粧シートについて、
図3を用いて説明する。
図3は、本開示の第2実施形態に係る化粧シート30の一構成例を説明するための断面図である。
【0056】
化粧シート30は、着色層12の一方の面側に、絵柄模様層13、透明樹脂層36及び表面保護層14がこの順に積層されている。
すなわち、化粧シート30は、透明樹脂層36を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート10と相違する。
【0057】
以下、透明樹脂層36について説明する。なお、透明樹脂層36以外の各層(着色層12、絵柄模様層13及び表面保護層14)については、化粧シート10の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0058】
(透明樹脂層)
図3に示すように、透明樹脂層36は、絵柄模様層13と表面保護層14との間に形成された層である。
透明樹脂層36の厚さは、例えば30μm以上200μm以下であることが好ましい。透明樹脂層36の厚さが30μm以上である場合、化粧シートの表面の摩耗や傷に対する透明樹脂層36の耐傷性が十分に高くなる。また、透明樹脂層36の厚さが200μm以下である場合、化粧シートの曲げ性が必要以上に高くなりすぎず、化粧シートを貼り付ける床材が平面でない場合にも床材に対して密着した状態で施工することができる。
【0059】
〔樹脂材料〕
透明樹脂層36を構成する樹脂材料としては、例えば着色層12と同様に、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体、エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0060】
ここで、透明樹脂層36に使用可能な熱可塑性樹脂として、多数の熱可塑性樹脂を挙げたが、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは望ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが望ましい。特に、各種物性や、加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)を使用することが最も望ましい。
【0061】
ポリオレフィン系樹脂としては、既に列挙した多くの種類から、化粧シートの使用目的等に応じて適宜選択して使用すればよい。特に、一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわち、プロピレンを主成分とする単独又は共重合体である。例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独又は適宜配合したり、それらに更にアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用したりすることができる。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1のコモノマーの1種又は2種以上を15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等を例示できる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体又はその水素添加物等の改質剤を適宜添加できる。
【0062】
透明樹脂層36には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていてもよい。なお、透明樹脂層36は、化粧シート30の表面(上面)から絵柄模様層13の絵柄を透視可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
【0063】
また、透明樹脂層36は、表面保護層14と同様に、抗ウイルス性を向上させる抗ウイルス剤を含んでもよい。表面保護層14に抗ウイルス剤を含むことにより、化粧シートの最表面において抗ウイルス性を保つことができる。透明樹脂層36及び表面保護層14の双方に抗ウイルス剤が含まれることにより、表面保護層14が摩耗により透明樹脂層36が露出しても抗ウイルス性を有する。このことから、表面保護層14及び透明樹脂層36の双方に抗ウイルス剤を含むことがより好ましい。なお、抗ウイルス剤については、化粧シート10の表面保護層14に含まれる抗ウイルス剤と同様の構成であるため説明を省略する。
【0064】
(変形例)
第2実施形態に係る化粧シートの変形例について、
図4を用いて説明する。
図4は、第2実施形態の変形例による化粧シート40の一構成例を説明するための断面模式図である。
図4に示すように、化粧シート40において透明樹脂層36の表面には、所与の意匠性を付与するためにエンボス加工が施されたエンボス部45が形成されていてもよい。エンボス部45の凹凸形状としては、上記第1実施形態による化粧シート20のエンボス部25と同様に、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。透明樹脂層36にエンボス部45を形成することにより、化粧シート40には、質感が付与され、意匠性を向上することができる。
【0065】
<第2実施形態の効果>
本実施形態に係る化粧シート30は、第一実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(3)本実施形態の化粧シート30は、透明樹脂層36を備えている。
この構成によれば、化粧シート全体の強度を向上させ、かつクッション性を付与することができる。
【0066】
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態に係る化粧材について、
図5を用いて説明する。
図5は、本開示の第3実施形態に係る化粧材50の一構成例を説明するための断面図である。
(化粧材の構成)
化粧材50は、着色層12の一方の面側に、絵柄模様層13及び表面保護層14がこの順に積層されており、着色層12の他方の面側に、接着剤層57及び建具用基材58が設けられている。
すなわち、化粧材50は、接着剤層57及び建具用基材58を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート10と相違する。
【0067】
以下、接着剤層57及び建具用基材58について説明する。なお、接着剤層57及び建具用基材58以外の各層(着色層12、絵柄模様層13及び表面保護層14)については、化粧シート10の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0068】
(接着剤層)
接着剤層57は、化粧材50の着色層12において絵柄模様層13とは反対の面側に設けられる基板との接着に用いられる接着剤との密着性を向上させるために、必要に応じて施されるものである。例えば、基板が木質系材料で形成されている場合には、接着剤として、酢酸ビニルエマルジョン系、2液硬化型ウレタン系等の接着剤が使用されるため、接着剤層57は、これらの接着剤に合わせた樹脂設計とすることが望ましい。例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系等を用いることができる。特に、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの配合による2液硬化型ウレタン系のプライマー剤等が好ましい。また、例えば、シリカや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機質粉末を添加すると、巻取保存時のブロッキングの防止や投錨効果による接着力の向上に有効である。
【0069】
(建具用基材)
建具用基材58としては、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。建具用基材58の厚さは3mm以上25mm以下程度が好適である。なお建具用基材58は、アルミなどの金属やプラスチックなどの樹脂、またはそれらの複合材料であっても良い。建具用基材58を形成することにより、重歩行時における靴のかかとや小石による傷の発生を抑制可能な化粧シート40を提供することができる。
なお、本実施形態においては、化粧シート10に接着剤層56及び建具用基材58が貼り合わされているが、化粧シート10に代えて化粧シート20、化粧シート30又は化粧シート40を用いて化粧材を形成してもよい。
【0070】
<第3実施形態の効果>
本実施形態に係る化粧材50は、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(4)本実施形態の化粧材50は、接着剤層57及び建具用基材58を備えている。
この構成によれば、重歩行時における靴のかかとや小石による傷の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0071】
以下、本開示を実施例によりさらに詳しく説明するが本開示は、実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
基材シートとしてオレフィン素材からなる着色熱可塑性樹脂層を用いた。その上に絵柄模様層として木目柄をグラビア印刷機で印刷して設けた。また、絵柄模様層上に、透明樹脂層としてオレフィン素材からなる透明シートを貼り合わせた。このとき、透明樹脂層の厚さを80μmとした。その後に、表面保護層の内側層(第2表面保護層)として熱硬化性樹脂(DICグラフィックス株式会社製UCクリヤー)を厚さ3μmにて塗工した。さらに、表面保護層の最表層(第1表面保護層)として熱硬化性樹脂(DICグラフィックス株式会社製UCクリヤー)を厚さ3μmで塗工した。このとき、最表層の熱硬化性樹脂中に、抗ウイルス剤として銀系無機添加剤(株式会社タイショーテクノクス製、ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で0.2質量%配合した。なお、抗ウイルス剤は、無機系材料に銀イオンを担持させた構造となっている。また、抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を5μmとした。このとき、抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを3μmとし、第2のピークを7μmとした。また、表面保護層の最表層(第1表面保護層)の厚さD(本実施例では、3μm)に対する抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を1.67Dとした。続いて加熱により熱硬化性樹脂を硬化させた。以上により、実施例1の化粧シートを作製した。
【0072】
<実施例2>
抗ウイルス剤の添加量を7質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の化粧シートを作製した。
【0073】
<実施例3>
表面保護層の最表層(第1表面保護層)の主成分を紫外線硬化型樹脂(DICグラフィックス株式会社製ウレタンアクリレート樹脂)に変更した。また、最表層の厚さを6μmに変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例3の化粧シートを作製した。
【0074】
<実施例4>
表面保護層の最表層(第1表面保護層)の主成分を電子線硬化性型樹脂に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例4の化粧シートを作製した。
【0075】
<実施例5>
抗ウイルス剤の添加量を10質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例5の化粧シートを作製した。
【0076】
<実施例6>
抗ウイルス剤の添加量を14質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例6の化粧シートを作製した。
【0077】
<実施例7>
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を1μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例7の化粧シートを作製した。
【0078】
<実施例8>
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を10μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例7の化粧シートを作製した。
<実施例9>
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを0.1μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例9の化粧シートを作製した。
【0079】
<実施例10>
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを1μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例10の化粧シートを作製した。
【0080】
<実施例11>
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを5μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例11の化粧シートを作製した。
【0081】
<実施例12>
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを6μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例12の化粧シートを作製した。
【0082】
<実施例13>
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを4μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例13の化粧シートを作製した。
【0083】
<実施例14>
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを5μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例14の化粧シートを作製した。
【0084】
<実施例15>
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを10μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例15の化粧シートを作製した。
【0085】
<実施例16>
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを20μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例16の化粧シートを作製した。
【0086】
<実施例17>
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを0.1μmに変更し、第2ピークを4μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例17の化粧シートを作製した。
【0087】
<実施例18>
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを10μmに変更し、第2ピークを20μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例18の化粧シートを作製した。
【0088】
<実施例19>
表面保護層の厚さを2μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例19の化粧シートを作製した。
【0089】
<実施例20>
表面保護層の厚さを3μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例20の化粧シートを作製した。
【0090】
<実施例21>
表面保護層の厚さを15μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例21の化粧シートを作製した。
【0091】
<実施例22>
表面保護層の厚さを25μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例22の化粧シートを作製した。
【0092】
<実施例23>
透明樹脂層の厚さを20μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例23の化粧シートを作製した。
【0093】
<実施例24>
透明樹脂層の厚さを30μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例24の化粧シートを作製した。
【0094】
<実施例25>
透明樹脂層の厚さを200μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例25の化粧シートを作製した。
【0095】
<実施例26>
透明樹脂層の厚さを210μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例26の化粧シートを作製した。
【0096】
<比較例1>
表面保護層において、抗ウイルス剤の添加を省略した。それ以外は実施例28と同様の方法で、比較例1の化粧シートを作製した。
【0097】
<比較例2>
抗ウイルス剤の添加量を0.1質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例2の化粧シートを作製した。
【0098】
<比較例3>
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を0.5μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、比較例3の化粧シートを作製した。
【0099】
<比較例4>
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を13μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、比較例4の化粧シートを作製した。
【0100】
<評価判定>
上述した実施例1〜26、比較例1〜4で得られた化粧シートについて、以下の方法で抗ウイルス性能及び曲げ加工性の評価を行った。
<評価>
〔抗ウイルス性能〕
実施例1〜26及び比較例1〜4の化粧シートをISO 21702に準じて抗ウイルス試験を実施した。50mm四方の供試試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。このとき、ウイルス液は、エンベロープウイルス(インフルエンザウイルス)を含むウイルス液を使用した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度25℃・湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。所定時間(24時間)後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウイルスを洗い出した。洗い出し液は、プラーク法にてウイルス感染価を測定した。
〈ウイルス感染価の測定(プラーク法)〉
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。5%CO
2・温度37℃の条件で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで更に2〜3日培養した。培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
〈ウイルス感染価の算出〉
以下の式に伴い、試料1cm
2当たりのウイルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm
2当たりのウイルス感染価(PFU/cm
2)
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
〈抗ウイルス活性値の算出〉
以下の式に伴い、抗ウイルス活性値を算出した。ここで、抗ウイルス活性値が2log
10以上の場合、抗ウイルス効果ありと判定した。
抗ウイルス活性値=log(Vb)−log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm
2当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm
2当たりのウイルス感染価の常用対数値
算出した抗ウイルス活性値を以下の◎、〇、×の4段階で評価した。
<評価基準>
◎:抗ウイルス活性値3log
10以上である場合
○:抗ウイルス活性値2log
10以上である場合
×:抗ウイルス活性値2log
10未満である場合
【0101】
〔曲げ加工性〕
建具基材である厚み3mmのMDF(広葉樹)の表面に、接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(重量比BA−10L/BA−11B=100:2.5))をウエット状態で100g/m
2に塗工した後、実施例1〜14及び比較例1〜5の化粧シートをそれぞれ貼り合わせ、24時間養生することで、実施例1〜26及び比較例1〜4の建具化粧材とした。
これらの建具化粧材にVカット加工を実施し、折り曲げ頂上部の目視確認にて外観状態を確認した。Vカット加工としては、建具化粧材において化粧シートが張り付けられていない面側から上記建具基材と化粧シートとを貼り合わせている境界まで、化粧シートにキズが付かないようにV型の溝を入れた。次に、化粧シート1を貼付した面が山折りとなるようにして、建具基材を当該V型の溝に沿って90度まで折り曲げた。
<評価基準>
◎:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等が全く無し。
〇:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等がほとんど無し。
△:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化が一部のみ発生。
×:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化発生。
以上の評価結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1中に表されるように、実施例1から26、比較例1、2の評価結果から、実施例1から26のように抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%以上である場合には、比較例1、2のように抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%未満である場合と比べて抗ウイルス性が高いことがわかった。
【0104】
また、実施例1から26、比較例3、4の評価結果から、実施例1から26のように抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)が1μm以上10μm以下である場合には、比較例3のように抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)が1μm未満かつ10μmを超える場合と比べて抗ウイルス性が高いことがわかった。
【0105】
なお、本開示の化粧シート及び化粧材は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【解決手段】着色層と、絵柄模様層と、表面保護層と、を備え、前記表面保護層は、エンベロープウイルスに対する抗ウイルス性を有する抗ウイルス剤と、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種とを含む第1表面保護層を有し、前記表面保護層に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上10質量%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であり、前記抗ウイルス剤は、銀系抗ウイルス剤、抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア、ジンクピリチオン、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、10、10−オキシビスフェノキサルシン、有機窒素硫黄ハロゲン系、ピリジン−2−チオール−オキシドの少なくとも1種を含有する。