(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。なお、本明細書において「〜」を用いて特定される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む。本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0012】
[[積層体]]
本実施形態に係る積層体は、光透過性基材層(A)と、この光透過性基材層(A)の少なくとも一方の面に直接または一以上の他の層を介して形成された樹脂層(B)とが積層された積層構成を有する。樹脂層(B)は、活性エネルギー線により硬化性を示す硬化性化合物(Q)と、シリカ粒子(R)とを含有する硬化性組成物(S)を硬化させた層である。樹脂層(B)の光透過性基材層(A)側とは反対の主面(F)は、アニーリング処理が行われる前の初期ぬれ張力(以下、「初期ぬれ張力」ともいう)が38〜60mN/mである。そして、樹脂層(B)の主面(F)に耐熱保護ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、耐熱保護PETフィルム)を貼付し、150℃にて3時間アニーリング処理を行い、前記耐熱保護PETフィルムを剥離した後の樹脂層(B)の主面(F)のぬれ張力(以下、「アニーリング処理後のぬれ張力」ともいう)が30〜54mN/mである。また、樹脂層(B)は、1μm厚の樹脂層(B)と50μm厚のポリエチレンテレフタレートとの積層構成において、樹脂層(B)の表層側から測定した場合に、ヘイズ値が2.0%以下となるものを用いる。なお、本明細書に開示する初期ぬれ張力、アニーリング処理後のぬれ張力およびヘイズの各値は、後述する実施例において説明する方法にて行ったときの値をいう。
【0013】
ここで、「活性エネルギー線により硬化性を示す硬化性化合物(Q)」とは、活性エネルギー線の照射により、硬化性化合物(Q)が重合または/および架橋により硬化する化合物をいう。また、活性エネルギー線とは、紫外線、可視光線、赤外線、エレクトロンビーム(EB)、および放射線を含む、化学反応を生じさせるための活性化に必要なエネルギーを提供できる広義のエネルギー線を意味する。また、「硬化させた層」とは、更に、活性エネルギー線を照射しても実質的に硬化反応が進行しない程度に硬化された層をいう。本実施形態の硬化性組成物(S)の層を形成する際に、硬化性化合物(Q)の一部が硬化反応していても、更に硬化し得る状態はここでいう硬化された層には含まない。
【0014】
光透過性基材層(A)と樹脂層(B)は直接積層されている態様の他、アンカー層、易接着層、接着層等の他の層を介して積層することができる。また、本実施形態の積層体は、樹脂層(B)上にOCAフィルムを更に積層させてもよい。
【0015】
ロール・ツー・ロール法により積層体を製造する場合、前述したようにフィルム同士の貼り付きによる歩留まりの低下が問題となっている。本実施形態に係る積層体によれば、硬化性化合物(Q)およびシリカ粒子(R)を含有する硬化性組成物(S)の硬化層を樹脂層(B)として用い、初期ぬれ張力およびアニーリング後のぬれ張力を上記特定範囲とする上記積層体を用いることにより、アンチブロッキング性および耐擦傷性に優れる。また、ロール・ツー・ロール法により製造した場合においてもフィルム同士のブロッキングを効果的に抑制できる。このため、歩留まりを格段に高めることができる。更に、優れた透明性および耐擦傷性に加え、アニーリング処理の有無に関わらずOCA密着性に優れる積層体を提供できる。以下、各層について詳述する。
【0016】
[光透過性基材層(A)]
光透過性基材層(A)は、樹脂層(B)の支持層として機能する。ここで光透過性とは、積層体における光透過性基材層(A)の厚みで測定したときに、必要な波長の光の透過率が80%以上であることをいう。より好ましくは85%以上であり、更に好ましくは90%以上である。必要な波長の光とは、透明性が必要な用途に積層体を用いる場合には可視光線領域(380〜780nm)の光が該当する。
【0017】
光透過性基材層(A)の素材は、優れた透過性を有していれば特に限定されない。好適例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂(COP)の環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン共重合体の鎖状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂およびアセテート系樹脂が挙げられる。
これらのうちでも、汎用性の高いポリエチレンテレフタレートや、低複屈折、低吸湿、高透明性および高耐熱性の優れるシクロオレフィン系樹脂が好適である。
【0018】
光透過性基材層(A)の厚みは、樹脂層(B)の支持体としての機能を有する厚みを有していればよく任意に選定することができる。通常は、25〜188μm程度とすることができる。透明性の観点からは25〜125μmであることが好ましく、25〜100μmの範囲がより好ましい。
【0019】
[樹脂層(B)]
樹脂層(B)は、硬化性組成物(S)に活性エネルギー線を照射して硬化せしめた層であり、耐擦傷性、アンチブロッキング性に優れるので、ロール・ツー・ロール法による積層体形成に好適である。
例えば、ロール状に巻いた光透過性基材層(A)を巻き出して硬化性組成物(S)を塗工し、活性エネルギー線を照射して硬化膜である樹脂層(B)を得た後、再びロールに巻き取る工程を経て積層体を製造できる。また、ロール状に巻いた光透過性基材層(A)と、ロール状に巻いた樹脂層(B)を貼り合わせてから、再びロールに巻き取る工程を経て製造してもよい。枚葉の光透過性基材層(A)に樹脂層(B)を積層する方法に比べて、生産性を格段に向上させることができる。
【0020】
樹脂層(B)の膜厚は用途により設計することができるが、優れたアンチブロッキング性を付与する観点からは1〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましく、1〜3μmであることが更に好ましい。
【0021】
本発明者が鋭意検討を重ねたところ、アニーリング処理前の初期ぬれ張力の範囲がたとえ38〜60mN/mであっても、アニーリング処理を行うと樹脂層(B)の主面(F)のぬれ張力が著しく低下する場合があることがわかった。そして、初期ぬれ張力が38〜60mN/mであり、且つアニーリング(150℃×3時間)後のぬれ張力が30〜54mN/mである樹脂層(B)を用いることによって、アニーリング処理の有無に関わらずに、OCA密着性に優れることがわかった。
【0022】
樹脂層(B)の主面(F)の初期ぬれ張力は38〜60mN/mであり、更に好適な範囲は40〜60mN/mであり、特に好適な範囲は42〜60mN/mである。また、アニーリング処理後は30〜54mN/mであり、更に好適な範囲は32〜54mN/mであり、特に好適な範囲は36〜54mN/mである。
【0023】
樹脂層(B)表層を初期ぬれ張力を38〜60mN/mとし、且つアニール後(150℃×3時間)のぬれ張力を30〜54mN/mとする方法は、硬化性組成物(S)の組成により調整する方法、または/および表面処理により調整する方法がある。
【0024】
硬化性組成物(S)の組成により調整する方法として、
(1)硬化性化合物(Q)として、3級アミノ基および4級アンモニウム塩基の少なくとも一方を有する硬化性化合物(Q
N)を含有させる方法、
(2)硬化性組成物(S)に、更に、活性エネルギー線硬化性を示さない親水化剤(T)を含有させ、親水化剤(T)として、3級アミノ基および4級アンモニウム塩基の少なくとも一方を有する親水化剤(T
N)を含ませる方法、および
(3)前記(1)および(2)を併用する方法が例示できる。
【0025】
表面処理によりぬれ張力を調整する方法としては、樹脂層(B)の表層に、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、紫外線照射処理からなる群より選択される少なくとも一種の処理を施す方法が例示できる。
【0026】
1μm厚の樹脂層(B)と50μm厚のポリエチレンテレフタレートの積層構成において、樹脂層(B)の表層から測定したときのヘイズ値が2.0%以下の層を用いることにより優れた透明性が得られる。前記ヘイズ値は1.0%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。ヘイズ値の下限は0%である。
【0027】
上記ヘイズ値を満たすための樹脂層(B)の調整方法は、硬化性組成物(S)の組成により調整する方法がある。具体的には、後述するように、水酸基含有硬化性化合物(Q
O)を、シリカ粒子(R)および3級アミノ基または/および4級アンモニウム塩基と併用することにより、ヘイズ値を低下させることができる。この方法によれば、コロナ処理やオゾン処理の工程を省くことができるというメリットを有する。
【0028】
[硬化性組成物(S)]
本実施形態の硬化性組成物(S)は、活性エネルギー線の照射により重合反応または/および架橋反応が進行して硬化層である樹脂層(B)を形成できる組成物をいう。硬化性組成物(S)は、少なくとも活性エネルギー線により硬化性を示す硬化性化合物(Q)と、シリカ粒子(R)とを含有する。以下、各成分について詳述する。
【0029】
<硬化性化合物(Q)>
硬化性化合物(Q)は、活性エネルギー線の照射により重合反応または/および架橋反応が進行して硬化する化合物であればよく、低分子化合物、高分子化合物等、分子量を問わずに選定することができる。硬化性化合物(Q)は、一種単独または二種以上併用で用いられる。
【0030】
硬化性化合物(Q)の硬化性を示す基は、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基等のラジカル重合性基が例示できる。これらの中でも(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物(Q)が好ましい。硬化性化合物(Q)は一種単独または二種以上を併用して用いることができる。なお、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」、「メタクリレート」およびこれらの混合物の両方を包含する。
【0031】
樹脂層(B)の表面硬度を高める観点からは、硬化性化合物(Q)100質量%に対し、3官能以上の(メタ)アクリレートを30〜100質量%以上用いることが好ましく、50〜100質量%以上用いることがより好ましく、80〜100質量%以上用いることが更に好ましい。
【0032】
4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロレンオキサイド変性ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびポリペンタエリスリトールポリアクリレートが挙げられる。
【0033】
3官能のトリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、εカプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、および、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
【0034】
2官能の(メタ)アクリレートとしては、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;
エチレンオキサイド変性ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール−ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ブチルオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートおよびイソシアヌル酸ブチルオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキシ基含有ジ(メタ)アクリレート;
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオールエステル系ジ(メタ)アクリレートが例示できる。
【0035】
単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ラウリル、および(アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−エチル、および(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル−等の(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸(メトキシカルボニル)メチル、(メタ)アクリル酸2−(エトキシカルボニルオキシ)ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−(プロポキシカルボニルオキシ)エチル−、および(メタ)アクリル酸2−(オクチルオキシカルボニルオキシ)ブチル等のカルボニル基を1つ有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2−オキソブタノイルエチル、(メタ)アクリル酸3−オキソブタノイルプロピル、(メタ)アクリル酸2,3−ジ(オキソブタノイル)ブチル、(メタ)アクリル酸2,3−ジ(オキソブタノイル)ヘキシル等のカルボニル基を2つ有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸3−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ブトキシエチル、および(メタ)アクリル酸4−ブトキシエチル等のアルコキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物等のアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリル酸誘導体;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、4−ターシャリーブチル−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3−ジシクロプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル−(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−プロピル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル−α−(ヒドロキシメチル)等の単官能(メタ)アクリル酸グリセロール;
(メタ)アクリル酸グリシジルラウリン酸エステル等の脂肪酸エステル系(メタ)アクリル酸エステル;
シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ア(メタ)アクリロイルキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸等の環状(メタ)アクリル酸エステル;
水酸基を有するモノ(メタ)アクリレートにε−カプロラクトンを開環付加させて合成した分子末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
水酸基を有するモノ(メタ)アクリレートにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミドが例示できる。
【0036】
硬化性化合物(Q)は、オリゴマーまたはポリマーであってもよい。なお、本明細書においてオリゴマーおよびポリマーとは有限個のモノマーが結合した重合体であり、オリゴマーは重量平均分子量が10000以下である化合物をいい、ポリマーとは重量平均分子量が10000越えである化合物をいう。オリゴマー、ポリマーは単独重合体でも共重合体でもよい。(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例として、ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーが例示できる。本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、重量平均分子量が既知のポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0037】
ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ウレタン結合とラジカル重合性官能基を有する化合物である。ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物を反応させて得られる、末端にイソシアネート基を有する化合物に、水酸基を有する(メタ)アクリロイル基を反応させて得ることができる。または、水酸基を有する化合物と、イソシアネート基および(メタ)アクリレート基を有する化合物を反応させて合成できる。ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)としては、ポリエーテル骨格を有するもの、ポリエステル骨格を有するもの等がある。
2個以上のイソシアネート基を有する化合物は、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,4−フェニレンビスメチレンジイソシアナート等の芳香族イソシアネート;3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート等が挙げられる。
ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーの商品として、EBECRYL210、EBECRYL220(以上、ダイセル・オルネクス社製)、CN9782、CN9783(以上、SARTOMER社製)等の芳香族ポリウレタンオリゴマー;紫光UV3000B、紫光UV3300B(以上、日本合成化学工業社製)、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL8402、EBECRYL8701(以上、ダイセル・オルネクス社製)等の脂肪族ポリウレタンオリゴマーが例示できる。
【0038】
ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマーは、エステル結合とラジカル重合性官能基を有する化合物であり、例えば、多塩基酸と多価アルコールを重縮合して合成したポリエステルが有する水酸基と、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸など)とをエステル化反応により合成できる。
多塩基酸は、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等の脂肪族系多塩基酸;ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族系、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族系が挙げられる。
多価アルコールは、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール等で数平均分子量(Mn)50〜500のポリオール、およびその数平均分子量(Mn)500〜30,000のポリオール、並びにトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマーの商品として、CN296、CN2203、CN2259、CN2261(以上、SARTOMER社製)等の芳香族ポリエステルオリゴマー;CN294、CN2270、CN2271(以上、SARTOMER社製)等の脂肪族ポリエステルオリゴマーが例示できる。
【0039】
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ基を有する化合物のエポキシ基と、カルボキシル基や水酸基を有する化合物とを反応させた、ラジカル重合性官能基を有する化合物である。なお、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ基が少量残留しても構わない。
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーの商品として、CN104、CN110(以上、SARTOMER社製)、EBECRYL600、EBECRYL3701(以上、ダイセル・オルネクス社製)等の芳香族エポキシオリゴマー、CN111、CN113(以上、SARTOMER社製)、EBECRYL860(ダイセル・オルネクス社製)等の脂肪族エポキシオリゴマーが例示できる。
【0040】
(メタ)アクリレートポリマーの具体例として、前記オリゴマーの具体例をポリマーに読み替えた化合物が例示できる。
【0041】
樹脂層(B)の光透過性基材層(A)側とは反対側の主面(F)の初期ぬれ張力を38〜60mN/mとし、且つアニーリング後のぬれ張力を30〜54mN/mとする方法として、前述した(1)の方法、即ち、硬化性化合物(Q)として、3級アミノ基および4級アンモニウム塩基の少なくとも一方を有する硬化性化合物(Q
N)を含有させる方法がある。ぬれ張力を容易に調整させる観点からは、アミン価が140〜370mgKOH/gであることが好ましい。なお、アミン価は、後述する実施例の方法により得られる値である。
【0042】
3級アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等のジアルキルアミノ基が挙げられる。4級アンモニウム基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基等のトリアルキルアンモニウム基が挙げられる。4級アンモニウム基を構成する窒素原子に対する対イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、水酸化物イオン等が挙げられる。
【0043】
3級アミノ基を有する硬化性化合物(Q
N)として、3級アミノ基を有する(メタ)アクリレートが好適である。好適例として、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、およびN,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N−〔2−メタクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−メタクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−メタクリロイルオキシエチル〕モルホリン、並びに1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレートが例示できる。
また、グリシジル(メタ)アクリレートと、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、およびジプロピルアミンなどの第2級アミノ化合物、又は例えばジメチルアミノプロピルメチルアミン等の第3級アミノ基および第2級アミノ基を有する化合物を反応させて得られる、エポキシ基が開環してヒドロキシ基を有するメタクレート;メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートに、ヒドロキシ基、又は1級もしくは2級アミノ基を有し、且つ第3級アミノ基を有する化合物を反応させて得られる、ウレタン結合や尿素結合を有する(メタ)アクリレートなども挙げることができる。これらのうちでも、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0044】
4級アンモニウム塩基を有する硬化性化合物(Q
N)として、4級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリレートが好適である。好適例として、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリレートに、4級化剤を反応させた(メタ)アクリレートを挙げることができる。4級化剤としては、例えば、メチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、メチルアイオダイド、プロピルクロライド、ドデシルクロライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ヨウ化メチル、およびベンジルアイオダイドなどの有機ハロゲン化物;メタンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸メチル、およびトリフルオロメタンスルホン酸メチルなどのスルホン酸エステル;ジメチル硫酸およびジエチル硫酸などの硫酸エステルなどが挙げられる。4級化剤を3級アミノ基と反応させて、4級アンモニウム塩とすることができる。また、4級化剤として、有機ハロゲン化物を使用した場合、窒素原子はカチオンであり、対イオンのハロゲンはアニオンとして4級アンモニウム塩となるが、そのアニオンを他のアニオンで交換してできるモノマーを使用してもよい。そのアニオンを有する化合物しては、従来公知の化合物を使用でき、例えば、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、トリフルオロメチル硫酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウムなどの無機塩の化合物が挙げられる。
市販品としては、アクリット 8WX−018(大成ファインケミカル社製)、アミノイオンRE3000MF(日本乳化剤社製、アクリル基含有反応性イオン)等が例示できる。
【0045】
3級アミノ基または/および4級アンモニウム塩基を有する硬化性化合物(Q
N)の合計含有率は、硬化性化合物(Q)100質量%中、3〜40質量%であることが好ましく、3〜30質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることが更に好ましい。3〜40質量%の範囲とすることにより、優れたアンチブロッキング性と、OCAに対する優れた密着性を兼ね備えることができる。なお、硬化性化合物(Q
N)中に3級アミノ基と4級アンモニウム塩基を両方有していてもよく、この場合において合計含有率の計算にあたっては、一化合物として含有量を算出することは言うまでもない。
【0046】
硬化性化合物(Q)として、3級アミノ基および4級アンモニウム塩基の少なくとも一方を有する硬化性化合物(Q
N)を用いることにより、3級アミノ基および4級アンモニウム塩基の少なくとも一方が硬化層中のバインダー樹脂に取り込まれる。3級アミノ基および4級アンモニウム塩基は親水性が高く、親水性基以外のバインダー樹脂およびシリカ粒子(R)との親和性が低い。このため、樹脂層(B)の表層側に3級アミノ基および/または4級アンモニウム塩基が露呈しやすくなる。また、これらの基は硬化反応により樹脂として固定化されているので、ブリードアウトすることもなく、経時的安定性に優れる。
【0047】
硬化性組成物(S)には、更に、水酸基含有硬化性化合物(Q
O)を含有させてもよい。水酸基含有硬化性化合物(Q
O)を含有させることにより、シリカ粒子(R)と3級アミノ基または/および4級アンモニウム塩基との相溶性・分散性を改善し、優れた塗液安定性が得られる。また、樹脂層(B)の塗膜のヘイズ値を低下させることができる。更に、初期ぬれ張力の向上およびアニーリング処理後のぬれ張力の低下の抑制し、OCA密着性のバランスをより効果的に高めることができる。その結果、樹脂層(B)中におけるシリカ粒子(R)の分散性をより効果的に高めることができ、透明性を格段に高めることができる。
水酸基含有硬化性化合物(Q
O)の含有率は、硬化性化合物(Q)100質量%に対し、3〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましい。
【0048】
水酸基含有硬化性化合物(Q
O)の好適例は、上述した水酸基を有する(メタ)アクリレートが例示できる。その中でも特に好ましい例として、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが例示できる。
【0049】
<親水化剤(T)>
本実施形態の硬化性組成物(S)は、前述したように、任意成分として更に親水化剤(T)を含有させることができる。ここで親水化剤(T)とは、添加することにより硬化性組成物(S)の塗工層の硬化物である樹脂層(B)の表層(光透過性基材層(A)が積層されている側とは反対側の表層)の水接触角を低下できる化合物をいう。水接触角を60°以下に低下させる化合物が好ましく、55°以下がより好ましい。
【0050】
親水化剤(T)は、4級アンモニウム塩基を有するイオン系親水化剤、および3級アミノ基を有する非イオン系親水化剤が例示できる。ぬれ張力を容易に調整させる観点からは、アミン価が140〜370mgKOH/gであることが好ましい。親水化剤(T)の全構成単位100質量%中、100〜50質量%が3級アミノ基または/および4級アンモニウム塩であることが好ましい。
【0051】
4級アンモニウム塩基を有するイオン系親水化剤の商品名として、アクリット 8WX−030(大成ファインケミカル社製), アミノイオン RE3000MF(日本乳化剤社製)が例示できる。
3級アミノ基を有する非イオン系親水化剤の好適な例として、3級アミノ基を有するビニル系樹脂、3級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂等が例示できる。これらのうちでも、ジアルキルアミノ基含有の(メタ)アクリル樹脂が好適である。
【0052】
また、上記イオン系親水化剤および非イオン系親水化剤の好適例として、硬化性化合物(Q
N)のモノマーあるいはオリゴマーを単独重合した重合体あるいはモノマー成分の一部または全部に含む共重合体が例示できる。また、前述した硬化性化合物(Q
N)のモノマーあるいはオリゴマーを架橋した化合物が例示できる。これらは、単一種類であっても混合物であってもよい。
【0053】
親水化剤(T)の硬化性組成物(S)100質量%に対する含有率は特に限定されないが、アンチブロッキング性を優れたものとする観点から3〜40質量%とすることが好ましい。前記含有率は、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましい。
【0054】
親水化剤(T)の分子量は限定されず、低分子化合物でも高分子化合物でもよいが、高温高湿環境におけるブリードアウトを効果的に抑制する観点からは、重量平均分子量が10,000以上の高分子化合物であることが好ましい。重量平均分子量の上限は特に限定されないが、硬化性組成物(S)等との相溶性の観点から、例えば50,000以下とすることができる。
【0055】
3級アミノ基または/および4級アンモニウム塩基を有する硬化性化合物(Q
N)、並びに3級アミノ基または/および4級アンモニウム塩基を有する親水化剤(T
N)の合計含有率は、硬化性組成物(S)の不揮発成分100質量%中、3〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることが更に好ましい。3〜50質量%の範囲とすることにより、アニーリング処理の有無に関わらず、樹脂層(B)の主面(F)のぬれ張力を所望の範囲とし、OCAに対する優れた密着性を優れたものとすることができる。
【0056】
<シリカ粒子(R)>
シリカ粒子(R)は、主としてアンチブロッキング性を付与する役割を担う。シリカ粒子(R)を加えることによりアンチブロッキング性を高めることができる。シリカ粒子(R)として、未処理のシリカ粒子の他、親水性シリカ粒子、疎水性シリカ粒子を用いることができる。シリカ粒子(R)の形状は限定されないが、例えば、球状シリカ、破砕シリカなどを用いることができる。
【0057】
シリカ粒子(R)の一次粒子径は、好ましくは10〜100nm、より好ましくは10〜50nmである。平均粒子径(メジアン径)は1000nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは100nm以下である。
【0058】
上記平均粒子径は、粒度分布測定装置、なかでも動的光散乱式を用いた粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「NANOTRAC WAVE II UZ152」等)により測定できる。本発明においては、溶媒にメチルエチルケトンを用い、ローディングインデックスが1.0±0.2の範囲となる濃度で60秒間の測定を3回行った際の平均値を使用した。
【0059】
シリカ粒子(R)の含有率は、硬化性組成物(S)の不揮発成分100質量%に対して3〜40質量%とすることが好ましい。より好ましくは5〜40質量%であり、更に好ましくは5〜30質量%である。3〜50質量%の範囲で含有させることにより、よりアンチブロッキング性に優れた樹脂層(B)が得られる。ここで、不揮発成分とは、溶媒以外の組成物を構成する成分をいう。
【0060】
シリカ粒子(R)は、疎水性シリカ粒子が好適である。疎水性シリカ粒子を用いることにより、高温または高湿環境下においても吸湿しにくくなる効果が得られる。疎水性シリカ粒子は、シリカ粒子に表面処理することにより得られる。
シリカ粒子に対する表面処理剤としては、例えば、β−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン等のシランカップリング剤や、シリコーンオイルなどの公知の処理剤を用いることができる。表面処理が施された疎水性シリカ粒子は市販品として入手可能である。例えば、シベルコ・ジャパン社製の「Megasil 525RCS」が例示できる。
【0061】
3級アミノ基または/および4級アンモニウム塩基を有する硬化性化合物(Q
N)または/および親水化剤(T
N)と、疎水性シリカ(R
H)との併用により、硬化性化合物(Q
N)または/および親水化剤(T
N)とシリカの凝集を防ぐという効果が得られる。優れたアンチブロッキング性に加え、樹脂層(B)におけるシリカ粒子(R)の分散性を顕著に高め、優れた塗工安定性および良好なヘイズ値を実現する観点から、上記組合せに更に、水酸基含有硬化性化合物(Q
O)を配合することが好ましい。
【0062】
<光重合開始剤および光増感剤>
硬化性組成物(S)は、任意成分として光重合開始剤を含むことができる。活性エネルギー線が紫外線の場合には光重合開始剤を添加することが好ましい。
光重合開始剤としては、光励起によって硬化性化合物(Q)の重合または/および架橋を開始できる機能を有するものであればよく、特に限定されない。好適例として、モノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物等が挙げられる。
【0063】
前記モノカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル−エタノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシエチル)メタアンモニウムシュウ酸塩、2−/4−イソ−プロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9Hチオキサントン−2−イロキシ−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、ベンゾイルメチレン−3−メチルナフト(1,2−d)チアゾリンが例示できる。
前記ジカルボニル化合物としては、1,2,2−トリメチル−ビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2,3−ジオン、ベンザイル、2−エチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、メチル−α−オキソベンゼンアセテート、4−フェニルベンザイルが例示できる。
前記アセトフェノン化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−ジ-2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−スチリルプロパン−1−オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノ−プロパノニル)−9−ブチルカルバゾールが例示できる。
前記ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルが例示できる。
前記アシルホスフィンオキシド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−n−プロピルフェニル−ジ(2,6−ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシドが例示できる。
前記アミノカルボニル化合物としては、メチル−4−(ジメトキシアミノ)ベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4’−ビス−4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス−4−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5’−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノンが例示できる。
【0064】
光重合開始剤の市販品としては、IGM−Resins B.V.社製のOmnirad 184、651、500、907、127、369、784、2959、IGM−Resins B.V.社製ルシリンTPO、DKSHジャパン社製エサキュアワン等が挙げられる。
特に、活性エネルギー線硬化後の耐黄変の観点で、Omnirad 184やエサキュアワンが好ましい。
【0065】
光重合開始剤は、上記化合物に限定されず、重合を開始させる能力があれば、どのようなものでも構わない。光重合開始剤は、一種類で用いられるほか、二種類以上を混合して用いてもよい。
光重合開始剤の使用量に関しては、特に制限はされないが、硬化性化合物(Q)100質量%に対して、1〜20質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0066】
増感剤としては、カルコン誘導体、ジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2−ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ−ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、又はミヒラーケトン誘導体、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’又は4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。増感剤は、一種単独または二種以上を併用して用いられる。
【0067】
<その他の成分>
本実施形態の硬化性組成物(S)は、必要に応じて溶剤を含有することができる。溶剤を加える場合は、溶剤を揮発させた後に活性エネルギー線による硬化処理を行なうことが好ましい。
溶剤としては、特に制限されるものでなく、様々な公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には例えば、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン、トルエン、キシレン、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−2−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ブチルアセテート、イソアミルアセテート、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、2種類以上を併用しても差し支えない。
また、本発明の目的や効果を損なわない範囲において上記に該当しないその他の成分を含有することができる。例えば、界面活性剤、着色剤、安定化剤、樹脂、表面処理剤、粘度調整剤、接着性付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防腐剤、分散剤、消泡剤、シランカップリング剤、無機充填剤などが挙げられる。
【0068】
[硬化性組成物(S)の製造方法]
硬化性組成物(S)の製造方法としては既知の方法で得ることができ、特に制限されない。例えば、硬化性化合物(Q)と、シリカ粒子(R)とを混合分散し、必要に応じて溶媒、光重合開始剤および他の様々な配合成分を添加および調整する方法が挙げられる。
【0069】
[積層体の製造方法]
本実施形態の積層体の製造方法について説明する。本実施形態の積層体は、光透過性基材層(A)の少なくとも片面に、樹脂層(B)を積層してなるものである。樹脂層(B)は、活性エネルギー線により硬化性を示す硬化性化合物(Q)と、シリカ粒子(R)とを含有する硬化性組成物(S)を硬化させた層である。
【0070】
光透過性基材層(A)上に硬化性組成物(S)を塗工する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ロット、ワイヤーバーを用いる方法、マイクログラビア、グラビア、ダイ、カーテン、リップ、スロットまたはスピン等の各種コーティング方法を用いることができる。
硬化性組成物(S)の塗膜を形成した後、自然または強制乾燥させる。次いで、活性エネルギー線を照射して硬化せしめることにより樹脂層(B)が得られる。紫外線、波長400〜500nmの可視光線の光源として、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等を使用することができる。電子線源には、熱電子放射銃、電解放射銃等を使用することができる。照射する活性エネルギー線量は十分な硬化性が得られればよく、例えば50〜2000mJ/cm
2程度とすることができる。
【0071】
[透明電極フィルム]
本実施形態の透明電極フィルムは、本積層体と透明導電層を少なくとも有する。
図1に、本実施形態の透明電極フィルムの一例を示す。同図に示すように、透明電極フィルム1は、積層体2,インデックスマッチング層(以下、IM層ともいう)3,透明導電層4がこの順に積層されている。積層体2は、本実施形態の例では樹脂層(B)および光透過性基材層(A)により構成され、光透過性基材層(A)上にIM層3が積層されている。樹脂層(B)の表層にOCAフィルムが更に積層されていてもよい。また、IM層3を設けずに、積層体2の光透過性基材層(A)直上に透明導電層4が積層されていてもよい。各層はそれぞれ独立に単層でも複層であってもよい。
【0072】
IM層3は、パターン形成された透明導電層4の形状を視認しにくくする目的で積層される、屈折率の高い層であり、例えば、屈折率の高い金属酸化物粒子と活性エネルギー線硬化性成分とを含む組成物の硬化物層により形成できる。IM層3の屈折率はできるだけ透明導電層4の屈折率に近いことが好ましい。屈折率の高い金属酸化物粒子および活性エネルギー線硬化性成分は既知の材料を用いて得ることができる。例えば、屈折率の高い金属酸化物粒子としては、酸化チタン(nD=2.72)、酸化ジルコニウム(nD=2.22)、酸化アルミニウム(nD=1.77)等が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化性成分としては、前述の樹脂層(B)に含まれる硬化性化合物(Q)が例示できる。IM層3の厚みは、例えば0.03μm〜30μm程度である。IM層として低屈折率層と高屈折率層を積層してもよい。
【0073】
透明導電層4は、導電性を有する透明層であり、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛、銀又は銅ナノワイヤー等により形成できる。透明導電層4は、例えば、真空蒸着法(物理的蒸着法又は化学的蒸着法)、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により成膜できる。透明導電層4をIM層3上に設けた後、エッチング等の方法により回路や電極パターンを形成することができる。透明導電層4の厚みは、導電性向上およびIM層3との密着性向上の点から、例えば、1nm〜数十μmとすることができる。
【0074】
IM層3と透明導電層4の間にアンカー層(不図示)を配してもよい。アンカー層は、例えば、透明導電層4の場合と同様に真空を利用した成膜法により形成できる。アンカー層の形成に用いられる金属酸化物としては、酸化ケイ素が挙げられ、強固な密着性を付与できることから好ましい。
【0075】
透明電極フィルム1の積層体2の樹脂層(B)の主面(F)上に、更に、OCAフィルムを積層することができる。そして、このOCAフィルムを介して、例えばタッチパネルのモジュールに透明電極フィルムに組み込むことができる。本実施形態の透明電極フィルムは、例えば、スマートフォン、タブレット、PC、テレビ、カーナビや、その他商業施設等の案内板や交通券売機などの電子機器に搭載して好適に用いることができる。
【0076】
<<実施例>>
本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」をそれぞれ表す。
Mwは重量平均分子量を意味し、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8320GPC)で、展開溶媒にDMFを用いたときのポリスチレン換算分子量である。
また、3級アミノ基含有硬化性化合物のアミン価は、ASTM D 2074の方法に準拠し、測定した全アミン価(mgKOH/g)を固形分換算した値である。なお、本明細書において、不揮発分は、サンプル1gを180℃で20分加熱させた場合の加熱後サンプル質量/ 加熱前サンプル質量から算出される値を意味する。
【0077】
本実施例で用いた硬化性組成物(S)の各成分の略号は以下の通りである。
[硬化性化合物(Q)]
・q−1(PET−30):ペンタエリスリトールトリアクリレート、日本化薬社製。
・q−2(KAYARAD DPHA):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬社製。
・q−3(Miramer PU610):ウレタンアクリレート、MIWON社製。
・q−4(4HBA):4−ヒドロキシブチルアクリレート、三菱ケミカル社製。
・q−5(アクリット 8WX-030):カチオンポリマー、大成ファインケミカル社製、4級アンモニウム塩基含有。
・q−6(アミノイオン RE3000MF):カチオンポリマー、日本乳化剤社製、4級アンモニウム塩基含有。
・q−7:3級アミノ基含有硬化性ビニル系樹脂。
なお、上記q−1およびq−4が、水酸基含有硬化性化合物(Q
O)に該当する。
[シリカ粒子(R)]
・r−1(MSD-57):堺化学社製、D50:200nm、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランにより表面処理。
・r−2(MEK-ST-2040):日産化学社製、D50:100nm、シランカップリング剤により表面処理。
・r−3(アエロジル200分散体):日本アエロジル社製、D50:42.2nm、表面処理なし
[親水化剤(T)]
・t−1:3級アミノ基含有親水化剤、トーヨーケム社製、3級アミノ基含有。
・t−2:3級アミノ基含有親水化剤、トーヨーケム社製、3級アミノ基含有。
・t−3:3級アミノ基含有親水化剤、トーヨーケム社製、3級アミノ基含有。
・t−4(FC−4400):イオン液体、スリーエム社製、4級アンモニウム塩基含有。
【0078】
<3級アミノ基含有硬化性化合物(q−7)の製造例>
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、および温度計を備え付けた反応槽に、酢酸エチル50.6部およびN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート180質量部、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート20質量部を仕込み、窒素置換しながら50℃に昇温した後、1−チオグリセロール2.3部を添加し、70℃に昇温した。滴下槽に酢酸エチル16.8質量部および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.6質量部仕込み、均一になるまで攪拌した後、反応槽へ7時間かけて滴下し、その後同温度で1時間反応を継続し、固形分測定により95%以上反応したことを確認した。次いで、フラスコ内を空気置換し、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)32.8質量部、ヒドロキノン0.1質量部を仕込み、70℃で4時間反応を行った。FT−IRにてイソシアネート基に基づく2270cm−1のピークの消失を確認後、反応溶液を冷却して、3級アミノ基及びアクリロイル基を有するビニル系樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が45重量%になるように酢酸エチルを添加して、固形分当たりのアミン価が234mgKOH/g、数平均分子量22,000の3級アミノ基を有するビニル系樹脂である硬化性化合物(q−7)溶液を得た。
【0079】
<3級アミノ基含有親水化剤(t−1)の製造例>
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、および温度計を備え付けた反応槽に、イソプロピルアルコール50.6部およびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート200部を仕込み、窒素置換しながら50℃に昇温した後、1−チオグリセロール2.3部を添加し、70℃に昇温した。滴下槽にイソプロピルアルコール16.8部および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.6部仕込み、均一になるまで攪拌した後、反応槽へ7時間かけて滴下し、その後同温度で1時間反応を継続し、3級アミノ基を有するビニル系樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定した。先に合成した樹脂溶液に不揮発分が45%になるようにイソプロピルアルコールを添加して、固形分当たりのアミン価が357mgKOH/g、数平均分子量21,000の3級アミノ基を有するビニル系樹脂である親水化剤(t−1)溶液を得た。
【0080】
<3級アミノ基含有親水化剤(t−2)の製造例>
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、および温度計を備え付けた反応槽に、イソプロピルアルコール50.6部およびN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート200部を仕込み、窒素置換しながら50℃に昇温した後、1−チオグリセロール2.3部を添加し、70℃に昇温した。滴下槽にイソプロピルアルコール16.8部および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.6部仕込み、均一になるまで攪拌した後、反応槽へ7時間かけて滴下し、その後同温度で1時間反応を継続し、3級アミノ基を有するビニル系樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が45%になるようにイソプロピルアルコールを添加して、固形分当たりのアミン価が301mgKOH/g、数平均分子量20,000の3級アミノ基を有するビニル系樹脂である親水化剤(t−2)溶液を得た。
【0081】
<3級アミノ基含有親水化剤(t−3)の製造例>
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、および温度計を備え付けた反応槽に、イソプロピルアルコール50.6部およびN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート100部、およびメチルメタクリレート100部を仕込み、窒素置換しながら50℃に昇温した後、1−チオグリセロール2.3部を添加し、70℃に昇温した。滴下槽にイソプロピルアルコール16.8部および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.6部仕込み、均一になるまで攪拌した後、反応槽へ7時間かけて滴下し、その後同温度で1時間反応を継続し、3級アミノ基を有するビニル系樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が45%になるようにイソプロピルアルコールを添加して、固形分当たりのアミン価が151mgKOH/g、数平均分子量21,000の3級アミノ基を有するビニル系樹脂である親水化剤(t−3)溶液を得た。
【0082】
<アエロジル200分散体(r−3)の製造例>
シリカ粒子(日本アエロジル社製「アエロジル200」)15.0部と分散剤(「DYSPERBYK142」)1.5部、メチルエチルケトン/メトキシブタノール=1/1混合溶剤83.5部とを混合し、前分散(ジルコニアビーズ(0.5mm)をメディアとして用い、ペイントシェイカーで1時間分散)と、本分散(ジルコニアビーズ(0.1mm)をメディアとして用い、寿工業( 株) 製分散機UAM−015で分散)の2段階で行ない、アエロジル200分散体を得た。
【0083】
<硬化性組成物(S)の製造例>
(実施例1)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD PET30」、一部ペンタエリスリトールテトラアクリレートを含有。)94.5部、アクリット8WX−030(大成ファインケミカル社製)5.5部、Omnirad184(IGM−Resins B.V.社製)5.0部、メチルプロピレングリコール50部を均一に混合した。次いで、それにMSD−57をシリカ粒子の含有率が不揮発成分中5質量%になるように加え、不揮発成分が50質量%となるようにメチルプロピレングリコールを加え均一に混合することにより、活性エネルギー線硬化性組成物(S−1)を得た。
【0084】
(実施例2〜25,比較例1〜7)
表1〜3に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法により各実施例および比較例に係る硬化性組成物(S)を得た。
【0088】
<積層体の製造例>
(実施例1)
光透過性基材層(A)として50μm厚の易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーU403」)を用いた。この光透過性基材層(A)上に、バーコーターを用いて、実施例・比較例で得られた硬化性組成物(S)を塗工し、100℃の熱風オーブンを用いて1分間乾燥させ、有機溶剤を除去した。その後、高圧水銀ランプを用いて400mJ/cm
2の紫外線を照射し、1μmの樹脂層(B)を形成し、実施例1に係る積層体を得た。
(実施例2〜25,比較例1〜7)
実施例1と同様の方法により、実施例2〜25,比較例1〜7に係る積層体を得た。
各実施例および比較例について、種々の評価を行った結果を表4に示す。
【0089】
<耐熱保護フィルムの製造例>
トーヨーケム社製「サイアバインSH101」と「サイアバインT−501B」を固形分で100/20の配合比で混合して得られた粘着剤を、バーコーターを用いて100μm厚の易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーU403」)上に塗工した。そして、100℃の熱風オーブンを用いて2分間乾燥させ、有機溶剤を除去して、粘着層5μmを備える耐熱保護PETフィルムを得た。
【0090】
<OCAフィルムの製造例>
トーヨーケム社製「オリバインBPS5896」と「オリバインBXX5627」を固形分で100/0.5の配合比で混合して得られた粘着剤を、バーコーターを用いて100μm厚の易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーU403」)上に塗工した。そして、100℃の熱風オーブンを用いて2分間乾燥させ有機溶剤を除去して、粘着層5μmを備えるOCAフィルムを得た。
【0091】
<初期ぬれ張力の測定>
各実施例および比較例の積層体のアニーリング前の樹脂層(B)の主面(F)(
図1参照)の初期ぬれ張力は以下の手順により測定した。即ち、23℃、相対湿度50%の環境下においてArcotest社製のぬれ性チェック用ダインペン(表面エネルギー値評価用テストペン)を用いて、樹脂層(B)の主面(F)のぬれ張力を求めた。具体的には、各実施例および比較例の積層体(試験片)をガラス板の上に置き、前記ダインペンを用いて試験片の樹脂層(B)の主面(F)上に1cm×5cm程度のダインペンの液膜を形成させた。判定は、ダインペンの液膜を明るいところで観察し,5秒後の液膜の状態で行った。液膜の短辺が95%以上保たれているものはぬれていると判定した。ぬれが95%以上保つ場合は,次に表面張力の高いダインペンに進み,逆に95%以上保たれていない場合には,次の表面張力の低い混合液に進むことにより評価した。なお、ぬれ張力の別の測定方法として、JIS K6768が知られている。この測定方法によれば、ダインペン/インキを塗布後2秒以下で液膜が破れる場合にNGと判断しており、本試験法の方がより正確な評価方法となる。JIS K6768に比較して、本試験法により求めたぬれ張力の方が小さな値となる傾向にある。
【0092】
<アニーリング後のぬれ張力の測定>
各実施例および比較例の積層体の樹脂層(B)と製造例にて得られた耐熱保護PETフィルムを23℃、相対湿度50%の環境下に30分間静置させてから、樹脂層(B)の主面(F)と、耐熱保護PETフィルムの粘着層を貼合わせ、2kgローラーを用いて貼付した。次いで、150℃にて3時間アニーリング処理を行った後、前記耐熱保護PETフィルムを剥離し、露出した樹脂層(B)の主面(F)のぬれ張力を、初期ぬれ張力と同様の方法により測定した。
【0093】
<ヘイズ値の測定>
50μm厚のポリエチレンテレフタレート(ルミラーU403、東レ社製、ヘイズ値1.1%、全光線透過率91%)上に、バーコータを用いて、表1に示す硬化性組成物(S)を塗工し、100℃で1分間乾燥させた。活性エネルギー線および照射量は、硬化性組成物(S)の種類によって適宜変更する必要があるが、本実施例および比較例においては、光源として高圧水銀ランプを用いてUVA紫外線領域における光量400mJ/cm
2の紫外線を照射して厚みが1μmの硬化膜からなる樹脂層(B)を有する測定試料を得た。そして、各実施例および比較例に係る測定試料(50μmのポリエチレンテレフタレート/樹脂層(B))を、23℃、50%RHの環境下において、ヘイズメーター(日本電色工業社製、商品名「SH7000」)を用い、JIS K 7136に準じてヘイズ値を求めた。測定は、樹脂層(B)側から行った。
【0094】
<アンチブロッキング性の評価>
測定試料は以下のように作製した。即ち、上記で得られたアニーリング処理前の積層体と樹脂層の積層されていない光透過性基材層(A)とを4cm×4cmのサイズに切り抜いた試験片を用意し、積層体の樹脂層(B)の表面と光透過性基材層(A)が接するように重ね合わせ、永久歪試験機(商品名「CO−201 永久歪試験機(定荷重式)」、日本テスター産業株式会社製)の試験台に乗せ、荷重200kgをかけて50℃に加温したオーブン内で24時間静置させた。その後、荷重を取り除いた直後に、試験片同士の重ね合わせた面が貼りついてしまっている(ウォーターマーク(水が入りこんだような外観)が形成される)面積の割合を下記の基準にしたがってアンチブロッキング性(以下、「AB性」と略記する。)として評価した。
A:貼りついた面積が10%以下。
B:貼りついた面積が10%超え30%以下。
C:貼りついた面積が30%を超える。
【0095】
<耐擦傷性の評価>
上記で得られた積層体の樹脂層が試験面となるように学振試験機にセットし、樹脂層の表面を、スチールウールのNo.0000で、荷重200gの条件で10回往復擦った。試験後のIM層の表面のキズの本数を確認し、以下の評価基準で評価した。
A:0〜10本。
B:11〜20本。
C:21本以上。
【0096】
<OCA密着性の評価>
測定試料は以下のように作製した。即ち、アニーリング実施前(初期)およびアニーリングを実施した各実施例および比較例の積層体と製造例にて得られたOCAフィルムを23℃、相対湿度50%の環境下に30分間静置させた。次いで、樹脂層(B)の主面(F)と、OCAフィルムの粘着層を貼合わせ、2kgローラーを用いて貼付した。その後、引っ張り試験機にて300mm/minの速度で180°ピール試験を行い、剥離強度を測定した。得られた剥離強度の値から、下記の基準にしたがって密着性を評価した。
A:剥離強度が25N以上。
B:剥離強度が10N以上25N未満。
C:剥離強度が10N未満。
【0098】
初期ぬれ張力が38mN/m未満であり、且つアニーリング処理後の表面張力が30mNm未満である積層体は、例えば、比較例1に示すように、OCA密着性不良が認められた。また、初期ぬれ張力が60mN/m越えであり、且つアニーリング処理後の表面張力が54mN/m越えである積層体は、比較例3に示すように、耐擦傷性およびアンチブロッキング性不良が認められた。また、比較例4に示すように、シリカ粒子の含有量が多いとアンチブロッキング性改善が認められる一方で、ヘイズ値が低下することがわかる。一方、本実施例によれば、光学特性および耐擦傷性に優れ、更に、ロール・ツー・ロール法で製造した場合にも歩留まりが高く、アニーリング処理の有無に関わらずOCA密着性に優れる結果が得られることを確認した。
【課題】光学特性および耐擦傷性に優れ、更に、ロール・ツー・ロール法で製造した場合にも歩留まりが高く、アニーリング処理の有無に関わらずOCA密着性に優れる積層体および透明電極フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の積層体は、光透過性基材層(A)と、硬化性化合物(Q)、シリカ粒子(R)を含有する硬化性組成物(S)の硬化層である樹脂層(B)とを有する。1μmの樹脂層(B)と50μmのPETの積層構成において、樹脂層(B)の表層側から測定した場合にヘイズ値が2.0%以下であり、光透過性基材層(A)側とは反対の樹脂層(B)の主面(F)は、アニーリング処理前の初期ぬれ張力が38〜60mN/mであり、且つ主面(F)に耐熱保護PETフィルムを貼付し、3時間アニーリング処理を行い、前記耐熱保護PETフィルムを剥離した後の樹脂層(B)の主面(F)のぬれ張力が30〜54mN/mである。