(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱硬化性樹脂組成物を成形した後、得られる前記硬化物について、熱機械分析にて5℃/分の昇温速度で測定される、40℃から150℃の範囲における線膨張係数が、5ppm/℃以上25ppm/℃以下である、請求項1に記載のガスバリア性構造体。
前記熱硬化性樹脂組成物を成形した後、硬化して得られる前記硬化物について、熱機械分析にて5℃/分の昇温速度で測定される、40℃から150℃の範囲における線膨張係数が、5ppm/℃以上25ppm/℃以下である、請求項7または8に記載のガスバリア性構造体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、数値範囲の「〜」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。また、本実施形態において、組成物は、各成分を単独でまたは2種以上組み合わせて含むことができる。
以下では、(1)ガスバリア性を有するメッキ処理がなされた構造体、(2)構造体のフェノール樹脂組成物、(3)めっき層の順に説明し、さらに、(4)ガスバリア性に着目しためっき層の実施例について説明する。また、ガスバリア性の実施例については、水素ガス及びフロンガス(134aフロンガス)のガスバリア性について説明する。
【0015】
(ガスバリア性を有するメッキ処理がなされた構造体)
本実施形態では、ガスバリア性を有するめっき処理された構造体が用いられる製品(部品を含む)として、エアコン部品(具体的には冷媒ガス用の配管)を例示するが、これに限る趣旨ではなく、例えば燃料電池や水素自動車等の水素ガス供給部材等に適用できる。
【0016】
図1はエアコン部品120の概略構成を模式的に示す断面図である。ここではエアコン部品120のうち、特に冷媒ガスの流路となり高いガスバリア性が求められる冷媒ガスの配管部品121を例示している。
【0017】
配管部品121は、例えば管状であり、樹脂成形体にめっき処理が施された構造である。配管部品121には、内部に冷媒ガス(例えば134aフロンガス)が流れるガス通路123が形成されている。
【0018】
配管部品121では、外側壁125及び内側壁126にめっき処理が施されている。
図2は、
図1の配管部品121の肉厚部分断面の一部領域A1を拡大して示している。この肉厚部分において、配管部品121は、樹脂成形体101と、樹脂成形体101の外側壁125と内側壁126とに設けられためっき層103とを有する。すなわち、樹脂成形体101には両面めっき処理が施されている。
【0019】
めっき層103は、
図2に示すように、樹脂成形体101側から第1のめっき層105と第2のめっき層107とを有する。
【0020】
樹脂成形体101は、フェノール樹脂組成物の硬化物である。樹脂成形体101の厚さは、例えば2mmである。
【0021】
第1のめっき層105は、例えば無電解Ni膜(Ni層)である。第1のめっき層105の厚さは例えば0.1μm以上であり、また3μm以下である。
【0022】
第2のめっき層107は、例えば電解Cu膜(Cu層)である。第2のめっき層107の厚さは例えば2μm以上であり、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、また60μm以下であり、好ましくは50μm以下である。
【0023】
めっき層103は、外側壁125及び内側壁126の全面に形成されることが好ましい。特に、内側壁126については冷媒ガスに直接曝される領域であることから全面に形成し、ガスの外部透過を遮断することが望ましい。
【0024】
以下では、まずフェノール樹脂組成物について説明し、つづいて、めっき層103について説明する。
【0025】
(フェノール樹脂組成物)
フェノール樹脂組成物(以下、適宜単に「樹脂組成物」ともよぶ。)は、表面にめっき処理が施される樹脂成形体に用いられる樹脂組成物であって、以下の成分(A)および(B)を含む。
(A)フェノール樹脂
(B)炭酸カルシウム
本実施形態において、樹脂組成物は、具体的には、熱硬化性樹脂組成物である。
以下、樹脂組成物の構成成分について具体例を挙げて説明する。
【0026】
(成分(A))
成分(A)は、フェノール樹脂である。
成分(A)は、たとえば成形材料に用いられるものであればよく、具体的には、レゾール型フェノール樹脂およびノボラック型フェノール樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む。樹脂成形体の表面に形成されるめっき膜との密着性を向上する観点から、成分(A)は、より好ましくはレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを含み、さらに好ましくはレゾール型フェノール樹脂およびノボラック型フェノール樹脂である。
【0027】
このうち、成分(A)がレゾール型フェノール樹脂を含むことにより、樹脂成形体の表面に形成されるめっき膜との密着性を高めるとともに、樹脂成形体の架橋密度を適度に向上させ、樹脂成形体の靱性を向上させ、機械的強度を高めることができる。また、このように架橋密度を適度に向上させることができるため、樹脂成形体の吸水・吸湿寸法変化を効率的に抑制することができる。
レゾール型フェノール樹脂は、たとえば、フェノール類とアルデヒド類とを、塩基性触媒の存在下で、通常、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)を1.3〜1.7として反応させて得ることができる。
【0028】
ここで、レゾール型フェノール樹脂を製造する際に用いるフェノール類としては、たとえば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、アルキルフェノール類、カテコールおよびレゾルシンからなる群から選択される1または2以上のフェノール化合物が挙げられる。
また、レゾール型フェノール樹脂を製造する際に用いるアルデヒド類としては、たとえば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物、およびこれらのアルデヒド化合物の発生源となる物質、あるいはこれらのアルデヒド化合物の溶液が挙げられる。
【0029】
成分(A)がレゾール型フェノール樹脂を含むとき、その含有量は、樹脂成形体の耐熱性を向上する観点、および、樹脂成形体の吸水・吸湿寸法変化を抑制する観点から、樹脂組成物に含まれる成分(A)全体に対して、0質量%超であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは75質量%以上である。
また、樹脂成形体の加熱寸法変化を抑制する観点から、レゾール型フェノール樹脂の含有量は、樹脂組成物に含まれる成分(A)全体に対して、100質量%以下であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、さらにより好ましくは80質量%以下である。
【0030】
また、成分(A)がノボラック型フェノール樹脂を含むことにより、樹脂成形体の表面に形成されるめっき膜との密着性を高めるとともに、樹脂成形体の機械的強度を高めることができる。
ノボラック型フェノール樹脂として、たとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂が挙げられる。
樹脂成形体の表面に形成されるめっき膜との密着性を高めるとともに、樹脂成形体の機械的強度を高める観点から、ノボラック型フェノール樹脂は、好ましくは、下記一般式(1)で表される樹脂および下記一般式(2)で表される樹脂からなる群から選択される1または2以上の樹脂を含む。
【0032】
(上記一般式(1)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のシクロアルキル基、または炭素原子数6以上10以下のアリール基または置換アリール基を表し、R
2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のシクロアルキル基、または炭素原子数6以上10以下のアリール基または置換アリール基を表し、lは1以上10以下の数である。)
【0033】
一般式(1)に示した樹脂は、たとえば、フェノール類とアルデヒド類とを、無触媒または酸性触媒の存在下で反応させて得られる樹脂から、用途に合わせて適宜選択することができる。さらに具体的には、一般式(1)に示した樹脂として、ランダムノボラック型やハイオルソノボラック型のフェノール樹脂を用いることができる。
なお、このノボラック型フェノール樹脂は、通常、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)を0.7〜0.9に制御した上で、反応させて得ることができる。
【0034】
一般式(1)に示した樹脂を調製する際に用いられるフェノール類の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、アルキルフェノール類、カテコール、レゾルシンが挙げられる。
また、一般式(1)に示した樹脂を調製する際に用いられるアルデヒド類としては、たとえば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物、およびこれらのアルデヒド化合物の発生源となる物質、あるいはこれらのアルデヒド化合物の溶液が挙げられる。
【0036】
(上記一般式(2)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のシクロアルキル基、または炭素原子数6以上10以下のアリール基または置換アリール基を表し、R
2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のシクロアルキル基、または炭素原子数6以上10以下のアリール基または置換アリール基を表し、基Xは下記一般式(3)〜(5)で表される基から選ばれる2価の基であり、mは1以上10以下の数であり、nは1以上10以下の数である。)
【0038】
(上記一般式(3)〜(5)中、R
3はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のシクロアルキル基である。)
【0039】
一般式(2)に示した樹脂の調製方法の具体例を挙げると、一般式(3)〜(5)におけるR
3がすべて水素原子である場合に相当するベンゼン変性フェノール樹脂では、たとえば、パラキシレンジメチルエーテルとフェノール類とを酸性触媒の存在下で反応させることで調製することができる。また、一般式(3)〜(5)におけるR
3が炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のシクロアルキル基に相当する置換ベンゼン変性フェノール樹脂の場合は、まず、置換ベンゼンとアルデヒド類とを酸性触媒の存在下で反応させ、得られた重合物を、酸性触媒下でフェノール類、あるいはフェノール類およびアルデヒド類と反応させることで調製することができる。
こうすることで、ノボラック型フェノール樹脂の繰り返し単位中に、ベンゼンまたは置換ベンゼンに由来する構造単位を介在させることができる。
なお、一般式(2)において末端の構成単位は示していないが、かかる構成単位としては、フェノール類に由来する構成単位と、ベンゼンまたは置換ベンゼンに由来する構成単位の双方を取り得るものである。
【0040】
また、一般式(2)に示した樹脂の変性率は、一般式(2)におけるmとnとの和に対するnの割合すなわち(n/(m+n))の値で定義される。この変性率は、用いる用途等に応じて適宜調節することができるが、フェノール樹脂組成物から樹脂成形体を作製する際に、適度な架橋密度に制御する観点から、たとえば0.15以上であり、好ましくは0.20以上であり、また、たとえば0.60以下であり、好ましくは0.50以下である。
【0041】
一般式(2)に示した樹脂を調製する際に用いられるフェノール類の具体例としては、たとえば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、アルキルフェノール類、カテコール、レゾルシン等が挙げられる。なお、これらのフェノール類は単独、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
一般式(2)に示した樹脂を調製する際に用いられるアルデヒド類としては、たとえば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物、およびこれらのアルデヒド化合物の発生源となる物質、あるいはこれらのアルデヒド化合物の溶液等を用いることができる。なお、これらのアルデヒド類は単独、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
また、一般式(2)に示した樹脂を調製する際に用いられる置換ベンゼンとしては、たとえば、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼンが挙げられる。
【0042】
一般式(2)に示した樹脂の調製に際しては、入手容易性の高さから、ベンゼン、または上記の置換ベンゼンのうちトルエンまたはキシレンを採用し、かつ、フェノール類としてはR
1基がすべて水素原子であるフェノールを採用することで、ベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂、トルエン変性ノボラック型フェノール樹脂またはキシレン変性ノボラック型フェノール樹脂を調製し、これを一般式(2)に示した樹脂とすることが好ましい。
【0043】
成分(A)がノボラック型フェノール樹脂を含むとき、その含有量は、樹脂成形体の加工性を好ましいものとする観点から、樹脂組成物に含まれる成分(A)全体に対して、0質量%超であり、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上である。
また、樹脂成形体の機械的強度を向上する観点から、ノボラック型フェノール樹脂の含有量は、樹脂組成物に含まれる成分(A)全体に対して、100質量%以下であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下、よりいっそう好ましくは20質量%以下である。
【0044】
樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、樹脂組成物の硬化特性を向上する観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
また、樹脂成形体の表面に形成されるめっき膜との密着性を高める観点から、樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、樹脂組成物全体に対して、たとえば99質量%以下であってもよく、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、さらにより好ましくは60質量%以下、よりいっそう好ましくは50質量%以下である。
【0045】
(成分(B))
成分(B)は、炭酸カルシウムである。
炭酸カルシウムの形状に制限はなく、たとえば球状等の粒状のものを用いることができる。
【0046】
成分(B)の平均粒径d
50は、樹脂成形体とめっき膜との密着性を向上する観点から、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上であり、また、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0047】
また、同様の観点から、成分(B)は、粒子径の大きい成分と小さい成分とを含んでもよい。
たとえば、成分(B)において、粒径0.1μm以上1μm以下の粒子の割合が、成分(B)全体に対して、好ましくは5%以上であり、より好ましくは25%以上であり、また、好ましくは45%以下であり、より好ましくは30%以下であってもよい。
また、成分(B)において、粒径1μm以上10μm以下の粒子の割合が、成分(B)全体に対して、好ましくは10%以上であり、より好ましくは45%以上であり、また、好ましくは80%以下であり、また、たとえば60%以下であってもよい。
【0048】
ここで、炭酸カルシウムの平均粒径d
50および他の粒度特性は、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、島津製作所社製、SALD−7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定することができる。ここで、得られたメディアン径(d
50)を、平均粒径とすることができる。
【0049】
樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、樹脂成形体とめっき膜との密着性を向上する観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは7質量%以上である。
【0050】
また、樹脂成形体の強度を向上する観点から、樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下である。
【0051】
本実施形態においては、樹脂組成物が成分(A)および(B)を含むため、樹脂組成物の硬化物により構成される樹脂成形体の表面にめっき処理を施す際に、樹脂成形体とめっき膜との密着性を効果的に向上させることができる。このため、本実施形態の樹脂組成物は、表面にめっき処理が施される樹脂成形体を得るために好適に用いられる。
【0052】
樹脂組成物を175℃、3分で成形した後、180℃4時間で硬化して得られる硬化物について、熱機械分析(TMA)にて5℃/分の昇温速度で測定される、40℃から150℃の範囲における線膨張係数は、樹脂成形体の表面にめっき処理を施して得られる成形体の温度サイクルの信頼性を向上する観点から、好ましくは5ppm/℃以上であり、より好ましくは8ppm/℃以上、さらに好ましくは10ppm/℃以上であり、また、たとえば70ppm/℃以下であってもよく、好ましくは30ppm/℃以下、より好ましくは25ppm/℃以下、さらに好ましくは20ppm/℃以下、さらにより好ましくは18ppm/℃以下である。
【0053】
本実施形態において、樹脂組成物は、成分(A)および(B)以外の成分を含んでもよい。
【0054】
(成分(C))
成分(C)は、エラストマーである。樹脂組成物が成分(C)をさらに含むことにより、めっき膜との密着性に優れる樹脂成形体をよりいっそう安定的に得ることができる。
【0055】
成分(C)は、酸に溶解するものであることが好ましい。
成分(C)の具体例として、ブタジエンゴム;ブタジエン・アクリロニトリル共重合体;およびアルキルアセタール化ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
樹脂成形体とめっき膜との密着性を向上する観点から、成分(C)は、好ましくはブタジエンゴム、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体および変性ポリビニルアルコールからなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0056】
樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、樹脂成形体とめっき膜との密着性を向上する観点から、樹脂組成物全体に対して好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、さらにより好ましくは2.5質量%以上である。
また、樹脂成形体の強度を向上する観点から、樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、樹脂組成物全体に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下、さらにより好ましくは4質量%以下である。
【0057】
(充填材)
樹脂組成物は、成分(B)以外の充填材を含んでもよい。充填材の形状としては、たとえば繊維状;球状等の粒状が挙げられる。
【0058】
繊維状の充填材の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、繊維状のワラストナイトおよびロックウールが挙げられる。繊維状の充填材の数平均繊維径としては、たとえば10〜15μmであり、数平均繊維長としては、たとえば20〜5000μmとすることができる。このような繊維状の充填材を用いることで、樹脂組成物の製造時における作業性を向上させ、また、樹脂成形体の機械的強度をさらに向上させることができる。
【0059】
また、粒状の充填材の具体例としては、ガラスビーズ、ガラスパウダー等の球状ガラス;球状シリカ、破砕シリカ等のシリカ;水酸化アルミニウム;クレー;およびマイカが挙げられる。
【0060】
樹脂成形体の表面に形成されるめっき膜との密着性を高めるとともに、樹脂成形体の機械的強度を向上する観点から、樹脂組成物は、好ましくは無機充填材を含み、より好ましくはガラス繊維を含む。
【0061】
樹脂組成物中の成分(B)以外の充填材の含有量は、樹脂成形体の機械的強度を向上する観点から、樹脂組成物全体に対して好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、さらにより好ましくは2.5質量%以上である。
また、樹脂組成物の硬化特性を向上する観点から、樹脂組成物中の成分(B)以外の充填材の含有量は、樹脂組成物全体に対して好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、さらにより好ましくは50質量%以下である。
【0062】
また、樹脂組成物は、成分(A)以外の樹脂成分を含んでもよい。このような樹脂成分は、たとえば、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂;ビスマレイミド(BMI)樹脂;ポリウレタン樹脂;シリコーン樹脂;ベンゾオキサジン環を有する樹脂;シアネートエステル樹脂;ポリビニルブチラール樹脂;およびポリ酢酸ビニル樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0063】
また、樹脂組成物は、たとえば、熱硬化性樹脂成形材料に用いられる各種添加剤を含んでもよい。添加剤の具体例として、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、カルナバワックス、ポリエチレンなどの離型剤;酸化マグネシウム、水酸化カルシウム(消石灰)などの硬化助剤;カーボンブラックなどの着色剤;充填材と熱硬化性樹脂との接着性を向上させるための密着性向上剤、もしくはカップリング剤;溶剤が挙げられる。
樹脂組成物中のこれらの成分の含有量は、樹脂組成物全体に対して、それぞれ、たとえば0.1〜5質量%程度である。
【0064】
(樹脂組成物の配合例)
表1を参照してめっき層の密着性に関する樹脂組成物(フェノール樹脂成形品)の配合例を説明する。
(樹脂組成物の調製)
各配合例のそれぞれについて、以下のように封止用樹脂組成物を調製した。すなわち、表1に示す配合量に従って各成分を配合した混合物を回転速度の異なる加熱ロールで混練し、シート状に冷却したものを粉砕することにより、顆粒状の成形材料(フェノール樹脂組成物)を得た。ここで、加熱ロールの混練条件については、回転速度は高速側/低速側20/14rpm、温度は高速側/低速側90/20℃で、混練時間は5〜10分間とした。
【0065】
表1中の各成分の詳細は下記のとおりである。また、表1中に示す各成分の配合割合は、樹脂組成物全体に対する配合割合(質量%)を示している。
(A)フェノール樹脂1:レゾール型フェノール樹脂、PR−53529(住友ベークライト社製)
(A)フェノール樹脂2:ノボラック型フェノール樹脂、PR−51305(住友ベークライト社製)
硬化助剤1:消石灰
充填材1:ガラス繊維、CS3E479(日東紡社製)、数平均繊維径11μm、数平均繊維長3mm
充填材2:破砕シリカ、RD−8(龍森社製),d
50=15μm
(B)炭酸カルシウム1:NS#100(日東粉化工業社製)、平均粒径d
50=5.3μm、粒径0.1μm以上1μm以下の粒子の割合9.5%、粒径1μm以上10μm以下の粒子の割合80%
(B)炭酸カルシウム2:エスカロン#800(三共製粉社製)、平均粒径d
50=3.0μm、粒径0.1μm以上1μm以下の粒子の割合27%、粒径1μm以上10μm以下の粒子の割合73%
(C)エラストマー1:ブタジエン・アクリロニトリル系共重合物、TR2250(JSR社製)
(C)エラストマー2:アルキルアセタール化ポリビニルアルコール、エスレックBH−3(積水化学工業社製)
(C)エラストマー3:アルキルアセタール化ポリビニルアルコール、エスレックBL−5(積水化学工業社製)
離型剤1:ステアリン酸カルシウム(東京化成社製)
着色剤1:カーボンブラック、#5(三菱ケミカル社製)
【0066】
各例で得られた樹脂組成物について、以下の測定をおこなった。結果を表1にあわせて示す。
【0067】
(樹脂成形体の物性測定方法)
(線膨張係数αの測定方法)
各例で得られた樹脂組成物について、曲げ試験片を175℃、3分で成形した後、オーブンで180℃、4時間の硬化処理をおこない、硬化物の試験片を得た。得られた試験片の流動方向のTMA測定を実施した。TMA測定は、昇温5℃/minで実施し、40〜150℃の平均線膨張係数をαとした。
【0068】
(評価方法)
(ピール強度の測定方法)
各例で得られた樹脂組成物について、125mm四方×1.5mm厚さの成形品を、175℃90秒の条件で成形し、樹脂成形体を得た。その後、オーブンで180℃、8時間の硬化処理を行い得られた樹脂成形体のめっき膜形成面に、クロム酸エッチングを実施してめっき膜形成面を粗化した。エッチング液は、無水クロム酸および硫酸をそれぞれ以下の濃度で含む水溶液とした。
(エッチング液)
成分 濃度
無水クロム酸 400g/L
硫酸 400g/L
【0069】
その後、樹脂成形体のエッチング面に、無電解NiめっきにてNi膜を0.1〜3μm形成し、次いで、電解CuめっきにてCu膜を2〜50μm形成した。めっき幅は10mmとした。各めっき工程で用いためっき液(水溶液)の組成を以下に示す。
【0070】
(無電解Niめっきのめっき液)
成分 濃度
硫酸ニッケル 20g/L
次亜リン酸ナトリウム 15g/L
クエン酸アンモニウム 30g/L
【0071】
(電解Cuめっきのめっき液)
成分 濃度
硫酸銅 200g/L
硫酸 50g/L
【0072】
以上により得られた成形体からめっきを垂直に剥がす際の強度、すなわち、90°ピール試験をおこなった際の最大剥離強度をピール強度とした。強度の測定方法は以下の通りである。
測定方法:銅はくの一端を適切な長さにはがしてから支持金具に取り付け、はがした銅はくの先端をつかみ具でつかみ、引張方向が銅はく面に垂直になる方向に、毎分約50mmの速さで連続的に約50mmはがした。この間での荷重の最低値を引きはがし強さ[N/cm]とした。
【0073】
(曲げ強度および曲げ弾性率の測定方法)
各例で得られた樹脂組成物について、JIS K 6911に準拠して、曲げ試験片を175℃、3分の硬化条件で成形した後、180℃、4時間で硬化して試験片を得た。JIS K 6911準拠の方法で試験片を破壊した際の強度を曲げ強度とした。また、応力−歪み曲線の弾性域での傾きから曲げ弾性率を求めた。
【0075】
表1より、配合例1−4における樹脂組成物を用いて得られた成形体においては、配合例5−7のものに比べてめっき膜の樹脂成形体からのピール強度が高かった。したがって、配合例1−4の樹脂組成物を用いることにより、樹脂成形体の表面にめっき膜を形成する際のめっき膜と樹脂成形体との密着性を向上させることができる。
また、配合例1−4で得られた樹脂組成物は、硬化物の曲げ強度、曲げ弾性率および線膨張係数についても、好ましい特性を有するものであった。
【0076】
(樹脂成形体)
樹脂成形体(成形品)は、上述した樹脂組成物の硬化物により構成される。
また、樹脂成形体は、上述した樹脂組成物を成形することにより得ることができる。成形方法は、好ましくはトランスファー成形または射出成形である。
このときの条件は樹脂成形体の厚みにもよるが、たとえば、射出成形で5mm程度の肉厚成形品を成形する場合は、金型温度170〜190℃、成形圧力100〜150MPa、硬化時間30〜90秒の条件を採用することができる。
また、得られた樹脂成形体には、必要に応じてアフターベーキングをおこなうことができ、アフターベーキングの条件は用途に合わせて適宜選択することができる。たとえば、最高到達温度を150℃から270℃とし、その保持時間を1時間から15時間とすることができる。より好ましくは最高到達温度が170℃から240℃とし、その保持時間を1時間から10時間とすることができる。アフターベーキングを高温でおこなうほど使用環境下の加熱寸法変化は小さくなる傾向にある。
【0077】
また、樹脂成形体とめっき膜との密着性をさらに高める観点から、樹脂成形体は、好ましくは海島構造を有するものであり、より好ましくは樹脂成形体が海島構造であり、成分(C)が、島相に存在する。
ここで、海島構造は、電子顕微鏡観察により確認することができる。
【0078】
(成形体)
成形体は、上述した樹脂組成物の硬化物と、硬化物の表面に接して設けられためっき層と、を有する。この成形体は、
図1で示したエアコン部品120の配管部品121の肉厚部分(樹脂成形体101)に利用される。
図2に示したように、成形体100(配管部品121)は、樹脂組成物の硬化物により構成される樹脂成形体101と、樹脂成形体101の表面に接して設けられためっき層103とを有する。めっき層103は1つの層から構成されていても複数の層を有してもよく、たとえば、
図2には、めっき層103が、樹脂成形体101側から第1のめっき層105および第2のめっき層107を含む構成が示されている。また、めっき層103は、好ましくは樹脂成形体101の表面全体に設けられる。
【0079】
第1のめっき層105および第2のめっき層107のめっき方法は同じであっても異なってもよい。
樹脂成形体とめっき層103との密着性を向上する観点から、第1のめっき層105は、具体的には無電解めっき層である。また、第2のめっき層107については、無電解めっき層であってもよいし、電解めっき層であってもよい。
【0080】
また、第1のめっき層105および第2のめっき層107は、具体的には金属層であり、たとえば、これらの層は独立して、Cu、Ni、Al、Fe、Auおよびこれらの合金からなる群から選択される1または2種以上を含む層である。
樹脂成形体とめっき層103との密着性を向上する観点から、好ましくは、第1のめっき層105および第2のめっき層107の一方がNi膜であり、他方がCu膜である。
【0081】
樹脂成形体101とめっき層103との密着性を向上する観点から、樹脂成形体101は、好ましくはめっき層103との接合面に粗化層を有し、粗化層に設けられた凹部の内部にめっき層103が設けられている。
【0082】
(高いガスバリア性が要求される場合に好適なめっき層)
ここで、
図1のように、成形体100をエアコン部品120の配管部品121に適用する場合のように高いガスバリア性が要求される場合には、めっき層103は次のような構成が好ましい。すなわち、
図2において、樹脂成形体101側の第1のめっき層105がNi膜(Ni層)で、外側の第2のめっき層107がCu膜(Cu層)であることが好ましい。
このとき、めっき層103、第1のめっき層105(Ni層)及び第2のめっき層107(Cu層)の厚さは次の値を満たすことが好ましい。すなわち、めっき層103の厚さは2μm以上であり、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、また60μm以下であり、好ましくは50μm以下である。
また、より好ましくは、めっき層103のうち第2のめっき層107(Cu層)の厚さは2μm以上であり、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、また60μm以下であり、好ましくは50μm以下である。
また、より好ましくは、めっき層103のうち第1のめっき層105(Ni層)の厚さが0.1μm以上であり、また3μm以下である。
めっき層103の別の構成として、樹脂成形体101側の第1のめっき層105がCu膜(Cu層)で、外側の第2のめっき層107がNi膜(Ni層)であってもよい(図示せず)。このとき、Cu膜(Cu層)である第1のめっき層105の厚さが2μm以上であり、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、また60μm以下であり、好ましくは50μm以下である。また、Ni膜(Ni層)である第2のめっき層107(Ni層)の厚さが0.1μm以上であり、また3μm以下である。
また、
図2で示しためっき層103の構成において、第2のめっき層107(Cu層)のさらに外側に第3のめっき層(図示せず)が設けられてもよい。第3のめっき層として、例えば、厚さ0.1μm以上のNi膜(Ni層)がある。
いずれにせよ、めっき層103にCu層が含まれ、そのCu層の厚さが2μm以上であり、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、また60μm以下であり、好ましくは50μm以下であることで、高いガスバリア性を実現できる。
【0083】
(成形体の製造方法)
次に、成形体100の製造方法を説明する。成形体の製造方法は、たとえば、前述した樹脂組成物の硬化物すなわち樹脂成形体101を準備する工程と、樹脂成形体101の表面をエッチングして粗化する工程と、粗化された面にめっき層103を形成する工程を含む。
【0084】
樹脂成形体101の表面をエッチングして粗化する工程は、具体的には、めっき層103を形成しようとする面をめっき処理に先立ちエッチングすることにより、樹脂成形体101の表面近傍に存在する炭酸カルシウムを溶解して除去し、表面に凹凸が設けられた粗化層を形成する工程である。また、樹脂成形体101がエッチング液に溶解するエラストマーを含むとき、樹脂成形体101の表面近傍に存在するエラストマーを炭酸カルシウムとともに除去することが好ましい。
エッチング方法としては、たとえば酸処理が挙げられる。酸処理に用いる酸の具体例としては、クロム酸、硫酸等が挙げられる。たとえば用いる酸がクロム酸のみである場合のエッチング条件は、たとえば樹脂成形体101に含まれるフェノール樹脂等の成分の種類に応じて適宜設定することができる。
また、酸処理後、めっき層103を形成する前に、樹脂成形体101の表面を洗浄して中和することが好ましい。
【0085】
また、めっき層103を形成する工程においては、めっき膜を構成する金属の種類、めっき方法に応じて第1のめっき層105および第2のめっき層107を公知の方法を用いて順次形成する。たとえば、樹脂成形体101の粗化面にシード層を形成し、シード層を基点として金属膜を成長させる。
本実施形態においては、樹脂成形体101に粗化層が形成されているため、粗化層に設けられた凹部の内部にめっき膜が充填された第1のめっき層105を形成することができる。このため、樹脂成形体101との密着性に優れるめっき層103を得ることができる。
【0086】
以上により、
図2に示した成形体100を得ることができる。
本実施形態において得られる成形体100の用途に制限はなく、様々な用途に展開することができるが、たとえば、航空機用部品、自動車用部品、電子機器用部品、家庭用電化製品用部品、産業機器用部品などに用いることができる。
中でも、成形体100は、めっき層103が熱拡散部材として機能する部材、または、めっき層103がガスバリアとして機能する部材等に好適に用いることができ、たとえば、例えばエアコンの部品や、ガスメータ、燃料電池自動車や水素自動車の水素供給部材等に用いることもできる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、実施形態の例を付記する。
1. 熱硬化性樹脂組成物の硬化物と、
前記硬化物の表面に設けられためっき層と、
を有し、
前記めっき層はCu層を含み、
前記Cu層の厚さは2μm以上50μm以下である、
ガスバリア性構造体。
2. 前記熱硬化性樹脂組成物がフェノール樹脂組成物である、1.に記載のガスバリア性構造体。
3. 前記フェノール樹脂組成物がレゾール型フェノール樹脂を含む、2.に記載のガスバリア性構造体。
4. 前記熱硬化性樹脂組成物は、以下の成分(A)および(B)を含む、1.から3.までのいずれかに記載のガスバリア性構造体。
(A)フェノール樹脂
(B)炭酸カルシウム
5. 前記熱硬化性樹脂組成物を成形した後、得られる前記硬化物について、熱機械分析にて5℃/分の昇温速度で測定される、40℃から150℃の範囲における線膨張係数が、5ppm/℃以上25ppm/℃以下である、1.から4.までのいずれかに記載のガスバリア性構造体。
6. 前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物の曲げ強度が140MPa以上である、1.から5.までのいずれかに記載のガスバリア性構造体。
7. 前記めっき層はNi層を含む、1.から6.までのいずれかに記載のガスバリア性構造体。
8. 水素ガスのガス透過度が、差圧法によるガス透過試験(測定環境23℃、湿度0%、透過面積15.2×10−4m2、試験圧力4511mmHg)で2.0E−15mol/m2・s・Pa以下である、1.から7.までのいずれかに記載のガスバリア性構造体。
9. 134aフロンガスのガス透過度が、差圧法によるガス透過試験(測定環境80℃、湿度0%、透過面積38cm2、試験圧力760mmHg)で2.0E−14mol/m2・s・Pa以下である、1.から8.までのいずれかに記載のガスバリア性構造体。
10. 熱硬化性樹脂組成物の硬化物と、
前記硬化物の表面に設けられためっき層と、
を有し、
水素ガスのガス透過度が、差圧法によるガス透過試験(測定環境23℃、湿度0%、透過面積15.2×10−4m2、試験圧力4511mmHg)で2.0E−15mol/m2・s・Pa以下である、ガスバリア性構造体。
11. 熱硬化性樹脂組成物の硬化物と、
前記硬化物の表面に設けられためっき層と、
を有し、
134aフロンガスのガス透過度が、差圧法によるガス透過試験(測定環境80℃、湿度0%、透過面積38cm2、試験圧力760mmHg)で2.0E−14mol/m2・s・Pa以下である、ガスバリア性構造体。
12. 前記熱硬化性樹脂組成物は、以下の成分(A)および(B)を含む、10.または11.に記載のガスバリア性構造体。
(A)フェノール樹脂
(B)炭酸カルシウム
13. 前記熱硬化性樹脂組成物を成形した後、硬化して得られる前記硬化物について、熱機械分析にて5℃/分の昇温速度で測定される、40℃から150℃の範囲における線膨張係数が、5ppm/℃以上25ppm/℃以下である、10.から12.までのいずれかに記載のガスバリア性構造体。
14. 1.から13.までのいずれかに記載のガスバリア性構造体を備えるエアコン部品。
15. 1.から13.までのいずれかに記載のガスバリア性構造体を備えるガスメータ装置。
16. 1.から13.までのいずれかに記載のガスバリア性構造体を備える自動車部品。
【実施例】
【0088】
以下、本実施形態を、実施例および比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0089】
(実施例1〜3、比較例1〜6:めっき層の構成とガスバリア性)
表2を参照して、めっき層103の構成とガスバリア性に関する実施例を説明する。
使用ガスとして水素及び134aフロンを用いてガスバリア性を測定した。
(めっき層を有する成形品及び比較例の成形品の概要)
実施例1〜3は、めっき層103として、樹脂成形体101側から無電解Ni膜、Cu膜の2層の両面めっきで、膜厚20μmとした。使用ガスとして実施例1「水素ガス 23℃」、実施例2「水素ガス 150℃」、実施例3「134aフロン 80℃」である。
比較例1は、試験片「フェノール樹脂体」、使用ガス「水素 23℃」で測定した例である。
比較例2は、試験片「フェノール樹脂体」、使用ガス「水素 150℃」で測定した例である。
比較例3は、試験片「コーティング品(フェノール樹脂体+コーティング)」、使用ガス「水素 150℃」で測定した例である。
比較例4は、試験片「フェノール樹脂体」、使用ガス「134aフロン 80℃」で測定した例である。
比較例5は、試験片「コーティング品(フェノール樹脂体+コーティング) 80℃」、使用ガス「134aフロン」で測定した例である。
比較例6は、試験片「アルミ合金ADC12」、使用ガス「134aフロン 80℃」で測定した例である。
【0090】
(サンプル作成方法)
ガスバリア性能測定用サンプル:175℃3minで成形した成形品をJIS K 7126−1(差圧法)に準拠される試験片に加工した。
実施例1〜3のメッキ品は、膜厚20μmをねらい、成形品表面に無電解Ni+電解Cuめっきを施して作成した。
比較例3、5のコーティング品は、膜厚30μmをねらい、成形品表面にガスバリア性の効果を持つコーティング剤をバーコーターで塗布し、温度80℃1時間+120℃1時間+220℃2時間で乾燥・焼成して作成した。
【0091】
(ガスバリア性能測定方法)
ガスバリア性の測定(気体透過度試験)についてはJIS K 7126−1に準拠される試験方法で実施した。
【0092】
(曲げ強度の測定方法)
JIS曲げ試験片を175℃3minで成形し、JIS K 6911準拠の方法で試験片を破壊した際の強度を曲げ強度とした。
【0093】
(線膨張係数(CTE)αの測定方法)
JIS曲げ試験片を175℃3minで成形し、180℃8時間で硬化して試験片を得て、流動方向のTMA測定を実施した。昇温5℃/minで実施し、40〜150℃の平均線膨張係数をαとした。
【0094】
【表2】
【0095】
表2に実施例及び比較例の測定結果を示す。実施例1〜3の両面めっきの結果では、非常に高いガスバリア性を示した。例えば、使用ガスが「水素 23℃」の場合の気体透過度を参照すると、実施例1の両面めっきでは、比較例1のフェノール樹脂成形品と比較して、高いガスバリア性を示した。使用ガスが「水素 150℃」の場合についても、実施例2の両面めっきの測定結果は、比較例2フェノール樹脂成形品や比較例3のフェノール樹脂成形品の測定結果と比較して、高いバリア性を示した。また、使用ガスが134aフロンガス(温度80℃)の場合の気体透過度を参照すると、実施例3の両面めっきでは、比較例4のフェノール樹脂成形品と比較して高いガスバリア性を示し、また、比較例5のコーティング品や比較例6のADC12と同レベルのガスバリア性を示した。
【0096】
この出願は、2019年12月24日に出願された日本出願特願2019−232497号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。