(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属含有粒子と、ポリマー、オリゴマーおよびモノマーからなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む熱硬化性成分と、を含み、熱処理により前記金属含有粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する熱伝導性組成物であって、
前記金属含有粒子は、樹脂粒子の表面が銀でコートされた銀コート樹脂粒子を含み、
当該熱伝導性組成物を、30℃から180℃まで60分間かけて一定速度で昇温し、続けて180℃で2時間加熱して得られる硬化膜の、25℃での厚み方向の熱伝導率λは25W/m・K以上であり、
当該熱伝導性組成物を、30℃から180℃まで60分間かけて一定速度で昇温し、続けて180℃で2時間加熱して得られる硬化膜を、25℃、引張モード、周波数1Hzで粘弾性測定することで求められる貯蔵弾性率E'は10000MPa以下であり、
前記熱硬化性成分は、エポキシ基含有化合物を含む、熱伝導性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に
図2以降において、
図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
【0015】
本明細書中、数値範囲の説明における「a〜b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1〜5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0016】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリル(−CO―CH=CH
2)とメタクリル(−CO―C(CH
3)=CH
2)の両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
【0017】
<熱伝導性組成物>
本実施形態の熱伝導性組成物は、金属含有粒子と、ポリマー、オリゴマーおよびモノマーからなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む熱硬化性成分と、を含み、熱処理により金属含有粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する熱伝導性組成物である。
本実施形態の熱伝導性組成物を、30℃から180℃まで60分間かけて一定速度で昇温し、続けて180℃で2時間加熱して得られる硬化膜の、25℃での厚み方向の熱伝導率λは25W/m・K以上である。
本実施形態の熱伝導性組成物を、30℃から180℃まで60分間かけて一定速度で昇温し、続けて180℃で2時間加熱して得られる硬化膜を、25℃、引張モード、周波数1Hzで粘弾性測定することで求められる貯蔵弾性率E'は10000MPa以下である。
【0018】
以下、「ポリマー、オリゴマーおよびモノマーからなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む熱硬化性成分」を、単に「熱硬化性成分」とも記載する。
また、上記の加熱条件で熱硬化させて得られる硬化膜を、「特定硬化膜」と記載することがある。
【0019】
本発明者らは、シンタリングタイプの熱伝導性組成物を接着に適用した際に、ヒートサイクル(加熱−冷却の繰り返し)によって剥離が生じる原因を検討した。
【0020】
本発明者らは、剥離の原因は、(1)組成物を硬化させる/組成物中の金属粒子をシンタリングさせる際の加熱温度が高すぎるために、冷却後の硬化物に、熱収縮による応力が発生することや、(2)ヒートサイクルによる膨張−収縮によっても応力が発生すること、等にあると考察した。
【0021】
本発明者らは、上記(1)の観点から、ある程度低温での加熱でも硬化する(金属含有粒子がシンタリングする場合にはシンタリングして熱伝導パスが形成される)組成物を設計すればよいと考えた。組成物の硬化/金属含有粒子のシンタリングに必要な温度が低ければ、硬化/シンタリング後の冷却による熱収縮の程度を小さくすることができ、そして熱収縮により発生する応力を低減できる(ひいては接着力の低下が抑えられる)と考えられたためである。
また、上記(2)の観点から、硬化物の「弾性率」が比較的小さくなるように(硬化物がある程度「柔らかく」なるように)組成物を設計すれば、硬化物がヒートサイクルによる応力を吸収して、接着力の低下が抑えられるのではないかと考えた。
【0022】
そこで、熱伝導性組成物の設計のための指標の1つとして、本発明者らは、熱伝導性組成物を「180℃」で加熱(加熱条件の詳細は上記のとおり)して得られる硬化膜の、25℃での厚み方向の熱伝導率λを設定した。そして、λが十分に大きい熱伝導性組成物を設計すれば、接着力の低下が抑えられるのではないかと考えた(λは、金属含有粒子のシンタリングの程度と相関するから、λが大きいことは、おおよそ「低温(180℃)でシンタリングしやすい」ことに対応する)。
【0023】
また、熱伝導性組成物の設計のための別の指標として、本発明者らは、熱伝導性組成物を180℃で加熱(加熱条件の詳細は上記のとおり)して得られる硬化膜を、25℃、引張モード、周波数1Hzで粘弾性測定することで求められる貯蔵弾性率E'を設定した。そして、E'が適度に小さい熱伝導性組成物を設計すれば、接着力の低下が抑えられるのではないかと考えた(硬化物がある程度「柔らかい」ならば、硬化物がヒートサイクルによる応力を吸収しやすくなると思われたため)。
【0024】
本発明者らは、これら2つの指標に基づき熱伝導性組成物を設計した。そして、λが25W/m・K以上であり、かつ、E'が10000MPa以下である熱伝導性組成物を新たに設計することで、ヒートサイクルによる接着力の低下を小さくすることができた。
【0025】
本実施形態では、素材の種類や量、組成物の調製方法などを適切に選択することにより、λが25W/m・K以上であり、かつ、E'が10000MPa以下である熱伝導性組成物を得ることができる。例えば、金属含有粒子の一部または全部として、後述する金属コート樹脂粒子を用いることで、λおよびE'が適切な値である熱伝導性組成物を得ることができる。使用可能な素材や調製方法などについては以下でより具体的に説明していく。
【0026】
念のため補足しておくと、上記記載内容により本発明は限定的に解釈されない。
【0027】
本実施形態の熱伝導性組成物の含有成分、物性、性状などについて以下詳述する。
【0028】
(金属含有粒子)
本実施形態の熱伝導性組成物は、金属含有粒子を含む。
金属含有粒子は、典型的には、適切な熱処理によってシンタリング(焼結)を起こし、粒子連結構造(シンタリング構造)を形成することができる。
【0029】
金属含有粒子における「金属」は、任意の金属であることができる。良好な熱伝導性、シンタリングのしやすさ、半導体装置への適用性などの観点から、好ましい金属は、例えば、金、銀、銅、ニッケル、スズからなる群から選択される少なくともいずれかである。より好ましい金属は、銀、金および銅からなる群から選択される少なくともいずれかである。
金属含有粒子は、金属を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい(つまり、金属含有粒子は、合金含有粒子であってもよい)。また、金属含有粒子のコア部分と表層部分は異種の金属で構成されていてもよい。
特に、熱伝導性組成物中に銀含有粒子が含まれること、特に、粒径が比較的小さくて比表面積が比較的大きい銀粒子が含まれることで、比較的低温(180℃程度)での熱処理でもシンタリング構造が形成されやすい。好ましい粒径については後述する。
【0030】
金属含有粒子の形状は特に限定されない。好ましい形状は球状であるが、球状ではない形状、例えば楕円体状、扁平状、板状、フレーク状、針状などでもよい。
(「球状」とは、完全な真球に限られず、表面に若干の凹凸がある形状等も包含する。本明細書において以下同様。)
【0031】
金属含有粒子は、(i)実質的に金属のみからなる粒子であってもよいし、(ii)金属と金属以外の成分からなる粒子であってもよい。また、金属含有粒子として(i)および(ii)が併用されてもよい。
【0032】
本実施形態において、特に好ましくは、金属含有粒子は、樹脂粒子の表面が金属でコートされた金属コート樹脂粒子を含む。これにより、λが25W/m・K以上であり、かつ、E'が10000MPa以下である熱伝導性組成物を調製しやすい。
金属コート樹脂粒子は、表面が金属であり、かつ、内部が樹脂であるため、熱伝導性が良く、かつ、(金属のみからなる粒子に比べれば)やわらかい、と考えられる。このため、金属コート樹脂粒子を用いることで、λやE'を適切な値に設計しやすいと考えられる。
通常、λを大きくするためには、金属含有粒子の量を増やすことが考えられる。しかし、通常、金属は「硬い」ため、金属含有粒子の量が多すぎると、シンタリング後の弾性率が大きくなりすぎてしまう場合がある。金属含有粒子の一部または全部が金属コート樹脂粒子であることで、λが25W/m・K以上であり、かつ、E'が10000MPa以下である熱伝導性組成物を設計しやすい。
【0033】
金属コート樹脂粒子においては、樹脂粒子の表面の少なくとも一部の領域を金属層が覆っていればよい。もちろん、樹脂粒子の表面の全面を金属が覆っていてもよい。
具体的には、金属コート樹脂粒子において、金属層は、樹脂粒子の表面の好ましくは50%以上、より好ましく75%以上、さらに好ましくは90%以上を覆っている。特に好ましくは、金属コート樹脂粒子において、金属層は、樹脂粒子の表面の実質的に全てを覆っている。
別観点として、金属コート樹脂粒子をある断面で切断したときには、その断面の周囲全部に金属層が確認されることが好ましい。
さらに別観点として、金属コート樹脂粒子中の、樹脂/金属の質量比率は、例えば90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、より好ましくは70/30〜30/70である。
【0034】
金属コート樹脂粒子における「金属」は、前述のとおりである。特に、銀が好ましい。
金属コート樹脂粒子における「樹脂」としては、例えば、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などを挙げることができる。もちろん、これら以外の樹脂であってもよい。また、樹脂は1種のみであってもよいし、2種以上の樹脂が併用されてもよい。
弾性特性や耐熱性の観点から、樹脂は、シリコーン樹脂または(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0035】
シリコーン樹脂は、メチルクロロシラン、トリメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のオルガノクロロシランを重合させることにより得られるオルガノポリシロキサンにより構成される粒子でもよい。また、オルガノポリシロキサンをさらに三次元架橋した構造を基本骨格としたシリコーン樹脂でもよい。
(メタ)アクリル樹脂は、主成分(50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上)として(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーを重合させて得られた樹脂であることができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロピル(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートおよびイソボロノル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。また、アクリル系樹脂のモノマー成分には、少量の他のモノマーが含まれていてもよい。そのような他のモノマー成分としては、例えば、スチレン系モノマーが挙げられる。金属コート(メタ)アクリル樹脂については、特開2017−126463号公報の記載なども参照されたい。
シリコーン樹脂や(メタ)アクリル樹脂中に各種官能基を導入してもよい。導入できる官能基は特に限定されない。例えば、エポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基等が挙げられる。
【0036】
金属コート樹脂粒子における樹脂粒子の部分は、各種の添加成分、例えば低応力改質剤などを含んでもよい。低応力改質剤としては、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリウレタンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、液状オルガノポリシロキサン、液状ポリブタジエン等の液状合成ゴム等が挙げられる。特に、樹脂粒子の部分がシリコーン樹脂を含む場合、低応力改質剤を含むことで、金属コート樹脂粒子の弾性特性を好ましいものとすることができる。
【0037】
金属コート樹脂粒子における樹脂粒子の部分の形状は、特に限定されない。好ましい形状は球状であるが、球状以外の異形状、例えば扁平状、板状、針状などでもよい。金属コート樹脂粒子の形状を球状に形成する場合は、使用する樹脂粒子の形状も球状であることが好ましい。
【0038】
金属コート樹脂粒子の比重は特に限定されないが、下限は、例えば2以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上である。また、比重の上限は、例えば10以下、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。比重が適切であることは、金属コート樹脂粒子そのものの分散性や、金属コート樹脂粒子とそれ以外の金属含有粒子を併用したときの均一性などの点で好ましい。
【0039】
金属コート樹脂粒子を用いる場合、金属含有粒子全体中の金属コート樹脂粒子の割合は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜45質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。この割合を適切に調整することで、ヒートサイクルによる接着力の低下を抑えつつ、放熱性を一層高めることができる。
ちなみに、金属含有粒子全体中の金属コート樹脂粒子の割合が100質量%ではない場合、金属コート樹脂粒子以外の金属含有粒子は、例えば、実質的に金属のみからなる粒子である。
【0040】
金属含有粒子(複数種の金属含有粒子が併用される場合は全体として)のメジアン径D
50は、例えば0.001〜1000μm、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.1〜20μmである。D
50を適切な値とすることで、熱伝導性、焼結性、ヒートサイクルに対する耐性などのバランスを取りやすい。また、D
50を適切な値とすることで、塗布/接着の作業性の向上などを図れることもある。
金属含有粒子の粒度分布(横軸:粒子径、縦軸:頻度)は、単峰性であっても多峰性であってもよい。
【0041】
実質的に金属のみからなる粒子のメジアン径D
50は、例えば0.8μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.2μm以上である。これにより、熱伝導性をより高めることができる。
また、実質的に金属のみからなる粒子のメジアン径D
50は、例えば7.0μm以下、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下である。これにより、シンタリングのしやすさの一層の向上、シンタリングの均一性の向上などを図ることができる。
【0042】
金属コート樹脂粒子のメジアン径D
50は、例えば0.5μm以上、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上である。これにより、貯蔵弾性率E'を適切な値にしやすい。
また、金属コート樹脂粒子のメジアン径D
50は、例えば20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。これにより、熱伝導性を十分大きくしやすい。
【0043】
金属含有粒子のメジアン径D
50は、例えば、シスメックス株式会社製フロー式粒子像分析装置FPIA(登録商標)−3000を用い、粒子画像計測を行うことで求めることができる。より具体的には、この装置を用い、湿式で体積基準のメジアン径を計測することで、金属粒子の粒子径を決定することができる。
【0044】
熱伝導性組成物全体中の金属含有粒子(複数種の金属含有粒子を用いる場合は、それらの合計)の割合は、例えば1〜98質量%、好ましくは30〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%である。金属含有粒子の割合を1質量%以上とすることで、熱伝導性を高めやすい。金属含有粒子の割合を98質量%以下とすることで、塗布/接着の作業性を向上させることができる。
【0045】
金属含有粒子のうち、実質的に金属のみからなる粒子は、例えば、DOWAハイテック社、福田金属箔粉工業社などより入手することができる。また、金属コート樹脂粒子は、例えば、三菱マテリアル社、積水化学工業社、株式会社山王などより入手することができる。
【0046】
(熱硬化性成分)
本実施形態の熱伝導性組成物は、ポリマー、オリゴマーおよびモノマーからなる群より選ばれる少なくともいずれかの熱硬化性成分を含む。
熱硬化性成分は、通常、ラジカルなどの活性化学種が作用することで重合/架橋する基、および/または、後述の硬化剤と反応する化学構造を含む。熱硬化性成分は、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性炭素−炭素二重結合を含む基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、マレイミド構造などのうち1または2以上を含む。
【0047】
熱硬化性成分は、好ましくは、エポキシ基含有化合物および(メタ)アクリロイル基含有化合物からなる群より選ばれる少なくともいずれか含む。
【0048】
エポキシ基含有化合物は、一分子中にエポキシ基を1つのみ備える化合物であってもよいし、一分子中にエポキシ基を2つ以上備える化合物であってもよい。
【0049】
エポキシ基含有化合物として具体的には、公知のエポキシ樹脂を挙げることができる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の2官能性または結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂およびアルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
また、エポキシ基含有化合物としては、4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、m,p−クレジルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等の、単官能のエポキシ基含有化合物を挙げることもできる。
【0051】
(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、一分子中に(メタ)アクリル基を1つのみ備える単官能(メタ)アクリルモノマーや、一分子中に(メタ)アクリル基を2つ以上備える多官能(メタ)アクリルモノマーなどを挙げることができる。
多官能(メタ)アクリルモノマーは、典型的には一分子中に(メタ)アクリル基を2〜6つ備え、好ましくは一分子中に(メタ)アクリル基を2〜4つ備える。
【0052】
単官能(メタ)アクリルモノマーとして具体的には、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングルコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、グリシジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−(メタ)アクロイロキシエチルアシッドホスフェートなどを挙げることができる。
【0053】
多官能(メタ)アクリルモノマーとして具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アタクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヘキサン−1,6−ジオールビス(2−メチル(メタ)アクリレート)、4,4'−イソプロピリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ブタン、1,6−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサン、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、N,N'−ジ(メタ)アクリロイルエチレンジアミン、N,N'−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、又は1,4−ビス((メタ)アクリロイル)ピペラジンなどが挙げられる。
【0054】
また、(メタ)アクリルモノマーの一種として、(メタ)アクリルアミドモノマーを挙げることもできる。具体的には、(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンなどを挙げることができる。
【0055】
(メタ)アクリルモノマーとしては、単官能(メタ)アクリルモノマーまたは多官能(メタ)アクリルモノマーを単独で用いてもよいし、単官能(メタ)アクリルモノマー及び多官能(メタ)アクリルモノマーを併用してもよい。好ましくは、(メタ)アクリルモノマーとしては、多官能アクリルモノマーが単独で用いられる。
(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、共栄社化学株式会社から販売されている「ライトエステル」シリーズを用いることができる。
【0056】
本実施形態の熱伝導性組成物は、熱硬化性成分を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
本実施形態においては、熱硬化性成分として、エポキシ樹脂と(メタ)アクリロイル基含有化合物が併用されることが好ましい。エポキシ樹脂と(メタ)アクリロイル基含有化合物とを併用する場合の比率(質量比)は特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂/(メタ)アクリロイル基含有化合物=95/5〜50/50、好ましくはエポキシ樹脂/(メタ)アクリロイル基含有化合物=90/10〜60/40である。
【0057】
特に、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が好ましく挙げられる。また、(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、多官能(メタ)アクリルモノマーが好ましく、2官能(メタ)アクリルモノマーがより好ましい。
【0058】
本実施形態の熱伝導性組成物中の、熱硬化性成分の量は、不揮発成分全体中、例えば5〜25質量%、好ましくは10〜20質量%である。
【0059】
(硬化剤)
本実施形態の熱伝導性組成物は、硬化剤を含んでもよい。
硬化剤としては、熱硬化性成分と反応する反応性基を有するものを挙げることができる。
硬化剤は、例えば、熱硬化性成分中に含まれるエポキシ基、マレイミド基、ヒドロキシ基などの官能基と反応する反応性基を含む。
【0060】
硬化剤は、好ましくは、フェノール系硬化剤および/またはイミダゾール系硬化剤を含む。これら硬化剤は、特に、熱硬化性成分がエポキシ基を含む場合に好ましい。
【0061】
フェノール系硬化剤は、低分子化合物あってもよいし、高分子化合物(すなわちフェノール樹脂)であってもよい。
【0062】
低分子化合物であるフェノール系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF(ジヒドロキシジフェニルメタン)等のビスフェノール化合物(ビスフェノールF骨格を有するフェノール樹脂);4,4'−ビフェノールなどのビフェニレン骨格を有する化合物などが挙げられる。
【0063】
フェノール樹脂として具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、フェノール−ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂などを挙げることができる。
【0064】
硬化剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の熱伝導性組成物が硬化剤を含む場合、その量は、熱硬化性成分の量を100質量部としたとき、例えば5〜50質量部、好ましくは10〜30質量部である。
【0065】
(硬化促進剤)
本実施形態の熱伝導性組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。
硬化促進剤は、典型的には、熱硬化性成分と硬化剤との反応を促進させるものである。
【0066】
硬化促進剤として具体的には、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;ジシアンジアミド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン等のアミジンや3級アミン;上記アミジンまたは上記3級アミンの4級アンモニウム塩等の窒素原子含有化合物などが挙げられる。
【0067】
硬化促進剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の熱伝導性組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、熱硬化性成分の量を100質量部としたとき、例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0068】
(シランカップリング剤)
本実施形態の熱伝導性組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。これにより、接着力の一層の向上を図りうる。
【0069】
シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を挙げることができる。具体的には以下を挙げることができる。
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;
p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;
メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;
イソシアヌレートシラン;
アルキルシラン;
3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシランなど。
【0070】
シランカップリング剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の熱伝導性組成物がシランカップリング剤を含む場合、その量は、熱硬化性成分の量を100質量部としたとき、例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0071】
(可塑剤)
本実施形態の熱伝導性組成物は、可塑剤を含んでもよい。これにより、E'を小さめに設計しやすい。そして、ヒートサイクルによる接着力の低下を一層抑えやすくなる。
【0072】
可塑剤として具体的には、ポリエステル化合物、シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーン化合物、ポリブタジエン無水マレイン酸付加体などのポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物などを挙げることができる。
【0073】
可塑剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の熱伝導性組成物が可塑剤を含む場合、その量は、熱硬化性成分の量を100質量部としたとき、例えば5〜50質量部、好ましくは10〜30質量部である。
【0074】
(ラジカル開始剤)
本実施形態の熱伝導性組成物は、ラジカル開始剤を含んでもよい。これにより、例えば、硬化が不十分となることを抑えることができたり、比較的低温(例えば180℃)での硬化反応を十分に進行させることができたり、接着力を一層向上させることができたりする場合がある。
【0075】
ラジカル開始剤としては、過酸化物、アゾ化合物などを挙げることができる。
【0076】
過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタールなどの有機過酸化物を挙げることができる。より具体的には、以下を挙げることができる。
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール;
p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;
ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−へキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;
ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;
ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−へキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノネート等のパーオキシエステルなど。
【0077】
アゾ化合物としては、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などを挙げることができる。
【0078】
ラジカル開始剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の熱伝導性組成物がラジカル開始剤を含む場合、その量は、熱硬化性成分の量を100質量部としたとき、例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0079】
(溶剤)
本実施形態の熱伝導性組成物は、溶剤を含んでもよい。これにより、例えば、熱伝導性組成物の流動性の調整、基材上に接着層を形成する際の作業性の向上などを図ることができる。
【0080】
溶剤は、典型的には有機溶剤である。有機溶剤として具体的には以下を例示することができる。
【0081】
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α−ターピネオール、β−ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルプロピレントリグリコール、グリセリン等のアルコール類;
【0082】
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、2−オクタノン、イソホロン(3、5、5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)、ジイソブチルケトン(2、6−ジメチル−4−ヘプタノン)等のケトン類;
【0083】
酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2−ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリペンチル等のエステル類;
【0084】
テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2−ビス(2−ジエトキシ)エタン、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;
【0085】
酢酸2−(2ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;
2−(2−メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類;
トルエン、キシレン、n−パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシン、軽油等の炭化水素類;
アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;
アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;
低分子量の揮発性シリコンオイル、揮発性有機変成シリコンオイル等のシリコンオイル類など。
【0086】
溶剤を用いる場合、1種のみの溶剤を用いてもよいし、2種以上の溶剤を併用してもよい。
溶剤を用いる場合、その量は特に限定されない。所望の流動性などに基づき使用量は適宜調整すればよい。一例として、溶剤は、熱伝導性組成物の不揮発成分濃度が50〜90質量%となる量で使用される。
【0087】
(組成物の性状)
本実施形態の熱伝導性組成物は、好ましくは、20℃でペースト状である。すなわち、本実施形態の熱伝導性組成物は、好ましくは、20℃で、糊のようにして基板等に塗布することができる。このことにより、本実施形態の熱伝導性組成物を、半導体素子の接着剤などとして好ましく用いることができる。
もちろん、適用されるプロセスなどによっては、本実施形態の熱伝導性組成物は、比較的低粘度のワニス状などであってもよい。
【0088】
(λについての補足)
上述のように、特定硬化膜の、25℃での厚み方向の熱伝導率λは25W/m・K以上である。λは、好ましくは30W/m・K以上、より好ましくは50W/m・K以上である。λの値が大きいことそれ自体、放熱性が良好であることを意味する。すなわち、λの値が大きいことは、本実施形態の熱伝導性組成物を半導体装置に好ましく適用可能であることをする。
現実的な設計の観点から、λは、例えば200W/m・K以下、好ましくは150W/m・K以下である。
【0089】
(E'についての補足)
上述のように、特定硬化膜の、25℃、引張モード、周波数1Hzで粘弾性測定することで求められる貯蔵弾性率E'は10000MPa以下である。E'は、好ましくは8000MPa以下、より好ましくは6000MPa以下である。E'の値が適度に小さいことで、ヒートサイクルによる応力を一層吸収しやすくなる。
一方、E'は、好ましくは500MPa以上、より好ましくは1000MPa以上である。E'の値が適度に大きいことで、硬化物の機械的強度が高められる。つまり、物理的な衝撃等による破損が抑えられる。
【0090】
<半導体装置>
上述の熱伝導性組成物を用いて、半導体装置を製造することができる。例えば、上述の熱伝導性組成物を、基材と半導体素子との「接着剤」として用いることで、半導体装置を製造することができる。
換言すると、本実施形態の半導体装置は、例えば、基材と、上述の熱伝導性組成物を熱処理して得られる接着層を介して基材上に搭載された半導体素子と、を備える。
本実施形態の半導体装置は、ヒートサイクルによっても接着層の密着性などが低下しにくい。つまり、本実施形態の半導体装置の信頼性は高い。
【0091】
半導体素子としては、IC、LSI、電力用半導体素子(パワー半導体)、その他各種の素子を挙げることができる。
基板としては、各種半導体ウエハ、リードフレーム、BGA基板、実装基板、ヒートスプレッダー、ヒートシンクなどを挙げることができる。
【0092】
以下、図面を参照して、半導体装置の一例を説明する。
図1は、半導体装置の一例を示す断面図である。
半導体装置100は、基材30と、熱伝導性組成物の熱処理体である接着層10(ダイアタッチ材)を介して基材30上に搭載された半導体素子20と、を備える。
半導体素子20と基材30は、例えばボンディングワイヤ40等を介して電気的に接続される。また、半導体素子20は、例えば封止樹脂50により封止される。
【0093】
接着層10の厚さは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。これにより、熱伝導性組成物の応力吸収能が向上し、耐ヒートサイクル性を向上できる。
接着層10の厚さは、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0094】
図1において、基材30は、例えば、リードフレームである。この場合、半導体素子20は、ダイパッド32または基材30上に接着層10を介して搭載されることとなる。また、半導体素子20は、例えば、ボンディングワイヤ40を介してアウターリード34(基材30)へ電気的に接続される。リードフレームである基材30は、例えば、42アロイ、Cuフレーム等により構成される。
【0095】
基材30は、有機基板やセラミック基板であってもよい。有機基板としては、例えばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等によって構成されたものを挙げることができる。
基材30の表面は、例えば、銀、金などの金属により被膜されていてもよい。これにより、接着層10と基材30との接着性が向上する。
【0096】
図2は、
図1とは別の半導体装置100の一例を示す断面図である。
図2の半導体装置100において、基材30は、例えばインターポーザである。インターポーザである基材30のうち、半導体素子20が搭載される一面と反対側の面には、例えば複数の半田ボール52が形成される。この場合、半導体装置100は、半田ボール52を介して他の配線基板へ接続されることとなる。
【0097】
半導体装置の製造方法の一例について説明する。
まず、基材30の上に、熱伝導性組成物を塗工し、次いで、その上に半導体素子20を配置する。すなわち、基材30、熱伝導性組成物、半導体素子20がこの順で積層される。
熱伝導性組成物を塗工する方法は特に限定されない。具体的には、ディスペンシング、印刷法、インクジェット法などを挙げることができる。
次いで、熱伝導性組成物を熱硬化させる。熱硬化は、好ましくは前硬化及び後硬化により行われる。熱硬化により、熱伝導性組成物を熱処理体(硬化物)とする。熱硬化(熱処理)により、熱伝導性組成物中の金属含有粒子が凝集し、複数の金属含有粒子同士の界面が消失した構造が接着層10中に形成される。これにより、接着層10を介して、基材30と、半導体素子20とが接着される。次いで、半導体素子20と基材30を、ボンディングワイヤ40を用いて電気的に接続する。次いで、半導体素子20を封止樹脂50により封止する。このようにして半導体装置を製造することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
金属含有粒子と、ポリマー、オリゴマーおよびモノマーからなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む熱硬化性成分と、を含み、熱処理により前記金属含有粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する熱伝導性組成物であって、
当該熱伝導性組成物を、30℃から180℃まで60分間かけて一定速度で昇温し、続けて180℃で2時間加熱して得られる硬化膜の、25℃での厚み方向の熱伝導率λは25W/m・K以上であり、
当該熱伝導性組成物を、30℃から180℃まで60分間かけて一定速度で昇温し、続けて180℃で2時間加熱して得られる硬化膜を、25℃、引張モード、周波数1Hzで粘弾性測定することで求められる貯蔵弾性率E'は10000MPa以下である、熱伝導性組成物。
2.
1.に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属含有粒子は、銀、金および銅からなる群から選択される少なくともいずれかを含む粒子を含む、熱伝導性組成物。
3.
1.または2.に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属含有粒子は、樹脂粒子の表面が金属でコートされた金属コート樹脂粒子を含む、熱伝導性組成物。
4.
1.〜3.のいずれか1つに記載の熱伝導性組成物であって、
前記熱硬化性成分は、エポキシ基含有化合物および(メタ)アクリロイル基含有化合物からなる群より選ばれる少なくともいずれか含む、熱伝導性組成物。
5.
1.〜4.のいずれか1つに記載の熱伝導性組成物であって、
さらに硬化剤を含む、熱伝導性組成物。
6.
5.に記載の熱伝導性組成物であって、
前記硬化剤は、フェノール系硬化剤および/またはイミダゾール系硬化剤を含む、熱伝導性組成物。
7.
1.〜6.のいずれか1つに記載の熱伝導性組成物であって、
さらにシランカップリング剤を含む、熱伝導性組成物。
8.
1.〜7.のいずれか1つに記載の熱伝導性組成物であって、
さらに可塑剤を含む、熱伝導性組成物。
9.
1.〜8.のいずれか1つに記載の熱伝導性組成物であって、
さらにラジカル開始剤を含む、熱伝導性組成物。
10.
1.〜9.のいずれか1つに記載の熱伝導性組成物であって、
さらに溶剤を含む、熱伝導性組成物。
11.
1.〜10.のいずれか1つに記載の熱伝導性組成物であって、
25℃でペースト状である、熱伝導性組成物。
12.
基材と、
1.〜11.のいずれか1つに記載の熱伝導性組成物を熱処理して得られる接着層を介して前記基材上に搭載された半導体素子と、
を備える、半導体装置。
【実施例】
【0099】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0100】
<熱伝導性組成物の調製>
まず、後掲の表1に示される配合量に従って、各原料成分を混合し、ワニスを得た。
次に、得られたワニス、溶剤および金属含有粒子(金属コート樹脂粒子を含む)を、後掲の表1に示す配合量に従って配合し、常温で、3本ロールミルで混練した。これにより、ペースト状の熱伝導性組成物を作製した。
【0101】
以下、表1の原料成分の情報を示す。
【0102】
(熱硬化性成分)
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(日本化薬社製、RE−303S)
・アクリルモノマー1:(メタ)アクリルモノマー(エチレングリコールジメタクリレート、共栄化学社製、ライトエステルEG)
・アクリルモノマー2:(メタ)アクリルモノマー(フェノキシエチルメタクリレート、共栄化学社製、ライトエステルPO)
・アクリルモノマー3:(メタ)アクリルモノマー(1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、三菱ケミカル社製、CHDMMA)
【0103】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビスフェノールF骨格を有するフェノール樹脂(室温25℃で固体、DIC社製、DIC−BPF)
【0104】
(アクリル粒子)
・アクリル粒子1:イソブチル=メタクリラート・メチル=メタクリラート重合物(積水化成品社製、IBM−2、粒径0.1〜0.8mm)
【0105】
(可塑剤)
・可塑剤1:アリル樹脂(関東化学社製、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ビス(2−プロペニル)とプロパン−1,2−ジオールとの重合体、以下の化学構造のポリエステル化合物、Rはメチル基)
【0106】
【化1】
【0107】
(シランカップリング剤)
・シランカップリング剤1:メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(信越化学工業社製、KBM−503P)
・シランカップリング剤2:3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−403E)
【0108】
(硬化促進剤)
・イミダゾール硬化剤1:2−フェニル−1H−イミダゾール−4,5−ジメタノール(四国化成工業社製、2PHZ−PW)
【0109】
(重合開始剤)
・ラジカル重合開始剤1:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ社製、パーカドックスBC)
【0110】
(溶剤)
・溶剤1:ブチルプロピレントリグリコール(BFTG)
【0111】
(金属含有粒子)
・銀粒子1:銀粉(DOWAハイテック社製、AG−DSB−114、球状、D
50:1μm)
・銀粒子2:銀粉(福田金属箔粉工業社製、HKD−16、フレーク状、D
50:2μm)
・銀コート樹脂粒子1:銀メッキシリコーン樹脂粒子(三菱マテリアル社製、耐熱・表面処理10μm品、球形状、D
50:10μm、比重:2.3、銀の重量比率50wt%、樹脂の重量比率50wt%)
・銀コート樹脂粒子2:銀メッキアクリル樹脂粒子(株式会社山王製、SANSILVER−8D、球形状、D
50:8μm、単分散粒子、比重:2.4、銀の重量比率50wt%、樹脂の重量比率50wt%)
【0112】
<25℃での厚み方向の熱伝導率λの測定>
得られた熱伝導性組成物を、テフロン板上に塗布し、30℃から180℃まで60分間かけて昇温し、続けて180℃で120分間熱処理した。これにより、厚さ1mmの、熱伝導性組成物の熱処理体を得た(「テフロン」は、フッ素樹脂に関する登録商標である)。
次いで、レーザーフラッシュ法により、熱処理体の厚み方向の熱拡散係数αを測定した。測定温度は25℃とした。
また、示差走査熱量(Differential scanning calorimetry:DSC)測定により、比熱Cpを測定した。
さらに、JIS K 6911に準拠して、密度ρを測定した。
これらの値を用いて、以下の式に基づいて、熱伝導率λを算出した。
熱伝導率λ[W/(m・K)]=α[m
2/sec]×Cp[J/kg・K]×ρ[g/cm
3]
【0113】
<25℃での貯蔵弾性率E'の測定>
得られた熱伝導性組成物を、テフロン板上に塗布し、30℃から180℃まで60分間かけて昇温し、続けて180℃で120分間熱処理した。これにより、厚さ0.3mmの、熱伝導性組成物の熱処理体を得た
得られた熱処理体をテフロン板から剥がして、測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、DMS6100)にセットし、引張モード、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を行った。これにより、25℃における貯蔵弾性率E'(MPa)を測定した。
【0114】
<シンタリングの確認>
上記のλやE'の測定に用いられた熱処理体(硬化膜)を、自動研磨機で研磨し、その研磨面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。
観察の結果、実施例1〜3の組成物を用いて作製された熱処理体の全てにおいて、加熱により金属含有粒子がシンタリングし、金属含有粒子の連結構造が形成されていることを確認した。特に、金属含有粒子の連結構造中では、実質的に金属のみからなる粒子と、金属コート樹脂粒子の表面の金属とが、シンタリングして連結構造を形成していた。
【0115】
<ヒートサイクル試験/剥離有無の評価>
熱伝導性組成物を表面銀メッキの基板上に塗布して塗膜を形成し、その塗膜の上に3.5×3.5mmのシリコンチップ(比較例2のみ表面銀メッキ、それ以外はメッキなし)を載せた。比較例2において表面銀メッキのシリコンチップを用いた理由は、メッキなしの場合、シリコンチップが基板に全く接合しなかったためである。
その後、30℃から180℃まで60分間かけて昇温し、続けて180℃で120分間熱処理した。以上により熱伝導性組成物を硬化させ、また、シリコンチップを基板に接合した。
接合後のシリコンチップ・基板を、封止材EME−G700ML−C(住友ベークライト製)で封止した。これを温度サイクル試験用のサンプルとした。
【0116】
サンプルを、85℃/60%RHの高温高湿槽に入れて、168時間処理し、その後、260℃のリフロー処理にかけた。
リフロー処理後のサンプルを、温度サイクル試験機TSA−72ES(エスペック製)に投入し、(i)150℃/10分、(ii)25℃/10分、(iii)−65℃/10分、(iv)25℃/10分を1サイクルとして、2000サイクル処理を行った。
その後、SAT(超音波探傷)により剥離の有無を確認した。剥離がないものを○(良好)、剥離があるものを×(不良)と評価した。
【0117】
熱伝導性組成物の組成、熱伝導率λ、貯蔵弾性率E'およびヒートサイクル試験の結果をまとめて表1に示す。表1において、各成分の量の単位は質量部である。
【0118】
【表1】
【0119】
表1に示される通り、実施例1〜3の熱伝導性組成物(λが25W/m・K以上であり、かつ、E'が10000MPa以下である)を用いたヒートサイクル試験において、剥離は発生しなかった。
一方、比較例1および2の熱伝導性阻止物(E'が10000MPa超である)を用いたヒートサイクル試験においては、剥離が発生した。
【0120】
この出願は、2019年9月5日に出願された日本出願特願2019−161766号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。