特許第6981584号(P6981584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981584多層基板、回路装置、およびフィルタ回路基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981584
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】多層基板、回路装置、およびフィルタ回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20211202BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20211202BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H05K3/46 Z
   H05K3/46 N
   H05K3/46 Q
   H01L23/12 B
   H01L23/12 N
   H01L23/12 301L
   H03H7/09 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-540016(P2021-540016)
(86)(22)【出願日】2020年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2020041686
(87)【国際公開番号】WO2021117392
(87)【国際公開日】20210617
【審査請求日】2021年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-222805(P2019-222805)
(32)【優先日】2019年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 淳
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−320170(JP,A)
【文献】 特開2004−165633(JP,A)
【文献】 特開2004−222087(JP,A)
【文献】 特開2010−177591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H01L 23/12
H03H 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層されてなる積層体と、
前記積層体の内部に形成される内部配線と、
前記積層体の第1表面に形成され、キャパシタ成分を有する受動素子の入出力端子と電気的に接続するための複数の電極と、
前記第1表面の対向する前記積層体の第2表面または前記第2表面と前記内部配線との間に形成される接地電極と、を備え、
前記内部配線は、
前記第1表面から見て前記複数の電極のうち第1の電極と重なる位置から前記複数の電極のうち第2の電極の方向に延伸して配置され、
前記第1の電極と第1のビア導体により電気的に接続され、
前記第1表面から見て前記第2の電極と少なくとも一部が重なる位置に設けた第2のビア導体により前記接地電極と電気的に接続される、多層基板。
【請求項2】
前記第1のビア導体は、前記接地電極と電気的に接続される、請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記積層体は、前記第1表面に前記受動素子を複数の直列に実装できるように前記複数の電極を形成し、
前記内部配線は、
前記第1表面から見て前記第1の電極と重なる位置から複数の前記受動素子の配置に沿って最も遠い前記受動素子の前記第2の電極まで延伸して配置される、請求項1または請求項2に記載の多層基板。
【請求項4】
前記第2のビア導体は、前記受動素子を実装する位置にある前記第2の電極の領域と少なくとも一部が重なる位置に設ける、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の多層基板。
【請求項5】
前記内部配線は、前記第1表面から見て前記受動素子を実装する位置から前記第2の電極までの領域を含む平板状である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の多層基板。
【請求項6】
前記内部配線は、前記積層体のうち前記第1表面に最も近い配線層に形成してある、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の多層基板。
【請求項7】
キャパシタ成分を有する受動素子と、
前記受動素子の入出力端子を前記複数の電極に実装する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の多層基板と、を備える、回路装置。
【請求項8】
第1コイルと第2コイルとを磁気結合させたコイル部品と、
前記コイル部品の前記第1コイルと前記第2コイルとの間の電極に接続するコンデンサと、
前記コイル部品および前記コンデンサの入出力端子を前記複数の電極に実装する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の多層基板と、を備える、フィルタ回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層基板、回路装置、およびフィルタ回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では、フィルタ回路基板(以下、フィルタ回路ともいう)を用いたノイズ対策がよく行われる。ノイズ対策に用いるフィルタ回路には、例えばEMI(Electro-Magnetic Interference)除去フィルタなどがあり、導体を流れる電流のうち必要な成分を通して不要な成分を除去する。また、フィルタ回路は、キャパシタンス素子であるコンデンサを用いるため、当該コンデンサの寄生インダクタンスである等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)によりノイズ抑制効果が低下することが知られている。
【0003】
コンデンサの等価直列インダクタンスESLを、二つのコイルを磁気結合することで生じる負のインダクタンスで打ち消し、フィルタ回路のノイズ抑制効果を広帯域化する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−160728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フィルタ回路において打ち消す必要のインダクタンスは、等価直列インダクタンスESLだけではなく、例えば、コンデンサ等を回路基板に実装する場合、実装面とGND電極(接地電極)配線との間で生じるインダクタンス成分も含まれる。
【0006】
特に、コンデンサ等のキャパシタ成分を有する受動素子を回路基板である多層基板に実装する場合、受動素子を実装する実装面とGND電極との間に他の配線が形成されるなど、実装面とGND電極との距離が長くなる可能性が高くなる。実装面とGND電極との距離が長くなると、実装面とGND電極との間で生じるインダクタンス成分の影響も大きくなり、フィルタ回路で高周波ノイズを除去する場合に大きな障害になることがある。
【0007】
そこで、本開示の目的は、キャパシタ成分を有する受動素子の実装面と接地電極との間で生じるインダクタンス成分の影響を低減することができる多層基板、回路装置、およびフィルタ回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態に係る多層基板は、複数の絶縁層が積層されてなる積層体と、積層体の内部に形成される内部配線と、積層体の第1表面に形成され、キャパシタ成分を有する受動素子の入出力端子と電気的に接続するための複数の電極と、第1表面の対向する積層体の第2表面または第2表面と内部配線との間に形成される接地電極と、を備える。内部配線は、第1表面から見て複数の電極のうち第1の電極と重なる位置から複数の電極のうち第2の電極の方向に延伸して配置され、第1の電極と第1のビア導体により電気的に接続され、第1表面から見て第2の電極と少なくとも一部が重なる位置に設けた第2のビア導体により接地電極と電気的に接続される。
【0009】
本開示の一形態に係る回路装置は、キャパシタ成分を有する受動素子と、受動素子の入出力端子を複数の電極に実装する上記の多層基板と、を備える。
【0010】
本開示の一形態に係るフィルタ回路基板は、第1コイルと第2コイルとを磁気結合させたコイル部品と、コイル部品の第1コイルと第2コイルとの間の電極に接続するコンデンサと、コイル部品およびコンデンサの入出力端子を複数の電極に実装する上記の多層基板と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一形態によれば、内部配線が、第2の電極と少なくとも一部が重なる位置に設けた第2のビア導体により接地電極と電気的に接続されるので、受動素子の実装面と接地電極との間で生じるインダクタンス成分の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態1に係る回路装置の断面図である。
図2】本実施の形態1に係る回路装置の斜視図である。
図3】本実施の形態2に係る回路装置の断面図である。
図4】本実施の形態2に係るコイル部品の斜視図である。
図5】本実施の形態2に係るコイル部品を含むフィルタ回路の回路図である。
図6】内部配線と接地電極とを電気的に接続する位置を説明するための回路装置の断面図である。
図7図6に示したフィルタ回路の周波数に対する伝送特性を示すグラフである。
図8】本実施の形態3に係る回路装置の斜視図である。
図9】本実施の形態3の変形例に係る回路装置の斜視図である。
図10】本実施の形態3に係る回路装置の周波数に対する伝送特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施の形態に係る多層基板、回路装置、およびフィルタ回路について説明する。
【0014】
<実施の形態1>
まず、本実施の形態1に係る回路装置150について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態1に係る回路装置150の断面図である。図2は、本実施の形態1に係る回路装置の斜視図である。回路装置150は、多層基板200の表面にコンデンサC1を実装する。多層基板200の表面には、コンデンサC1を表面実装するためのランド電極201,202が形成されている。ランド電極201,202は、コンデンサC1の入出力端子と接続される。なお、ランド電極201,202に実装する回路素子は、コンデンサC1に限定されず、キャパシタ成分を有する受動素子であればよい。
【0015】
ランド電極201は、図2に示すように配線パターンに含まれる。そのため、ランド電極201は、配線パターンを介して他の回路素子、電源回路と電気的に接続可能である。ランド電極202は、ビア導体210で多層基板200の内部に形成された内部配線203およびランド電極202と反対側の多層基板200の表面に形成した接地電極204と電気的に接続する。なお、接地電極204は、ランド電極202と反対側の多層基板200の表面と内部配線203との間に形成してもよい。
【0016】
内部配線203は、ランド電極202を形成した表面(第1表面)から見て、ランド電極202(第1の電極)と重なる位置からランド電極201(第2の電極)の方向に延伸して配置される。内部配線203は、図2から分かるようにランド電極202、コンデンサC1を設ける領域と同等の面積、またはよりも広い面積を有している。内部配線203は、ビア導体210(第1のビア導体)によりランド電極202と電気的に接続され、ランド電極201と少なくとも一部が重なる位置に設けたビア導体211(第2のビア導体)により接地電極204と電気的に接続される。
【0017】
多層基板200は、複数の絶縁層が積層されてなる積層体を含み、例えば低温同時焼成セラミックス、ガラスエポキシ樹脂等で形成される。積層体の表面に形成される各ランド電極201,202、接地電極204、積層体の内部に形成される内部配線203は、それぞれCuやAg、Al等の電極として一般的に採用される金属で形成されている。また、各ビア導体210,211は、AgやCu等の金属で形成されている。
【0018】
多層基板200の各々の層は、内部配線203、接地電極204などが形成される。接地電極204は、インダクタンス成分が生じないように比較的広い面積で形成される。しかし、多層基板200の場合、コンデンサC1を実装する実装面と接地電極204との距離が長くなるため、コンデンサC1を実装する実装面と接地電極204との間にインダクタンス成分が生じ、フィルタ回路基板(以下、フィルタ回路ともいう)で高周波ノイズを除去する場合に大きな障害になることがある。
【0019】
コンデンサC1を実装する実装面と接地電極204との間に複数のビア導体を形成してインダクタンス成分を下げることも考えられるが、コンデンサC1を実装する実装面と接地電極204との間を流れる電流のループ経路を大きく変更できないので効果が低い。
【0020】
そこで、本実施の形態1に係る多層基板200では、コンデンサC1を実装する実装面と接地電極204との間に内部配線203を設けている。内部配線203は、ビア導体210でコンデンサC1を実装する実装面に設けたランド電極202と電気的に接続されている。さらに、内部配線203は、ビア導体211で接地電極204と電気的に接続されている。
【0021】
図2に示すように、多層基板200は、内部配線203を設けることにより、ランド電極201からコンデンサC1、ランド電極202、内部配線203、接地電極204の順で流れる電流のループ経路が形成される。多層基板200は、内部配線203を設けない場合、ランド電極201からコンデンサC1、ランド電極202、接地電極204の順で流れる電流のループ経路が形成される。そのため、多層基板200は、内部配線203を設けることにより、電流が流れるループ経路が小さくなる。さらに、ランド電極201からランド電極202へ流れる電流方向と内部配線203を流れる電流方向が逆になるため互いの磁束が打ち消し合い、コンデンサC1を実装した多層基板200(回路装置150)は、インダクタンス成分が低下する。つまり、内部配線203には、ランド電極202から接地電極204に流れる帰還電流が通ることになり、ランド電極201からランド電極202へ流れる電流により生じるインダクタンス成分を当該帰還電流により生じるインダクタンス成分で打ち消している。
【0022】
ランド電極201からランド電極202へ流れる電流により生じるインダクタンス成分を当該帰還電流により生じるインダクタンス成分で打ち消すためには、両者の電流の距離が短い方が好ましい。つまり、内部配線203は、ランド電極201およびランド電極202との距離を短くするために、コンデンサC1を実装する表面から見てランド電極202と重なる位置からランド電極201の方向に延伸して配置される。
【0023】
内部配線203は、多層基板200のうちコンデンサC1を実装する表面に近い側の配線層(例えば、多層基板200の中央よりコンデンサC1側の配線層)に形成してある。さらに、内部配線203は、多層基板200のうちコンデンサC1を実装する表面に最も近い配線層に形成することが好ましい。例えば、多層基板200が8層の配線層で形成されている場合、コンデンサC1を実装する表面(第1層目)に最も近い第2層目の配線層に内部配線203を形成する。
【0024】
以上のように、本実施の形態1に係る多層基板200は、複数の絶縁層が積層されてなる積層体と、積層体の内部に形成される内部配線203と、積層体の第1表面に形成され、キャパシタ成分を有するコンデンサC1の入出力端子と電気的に接続するための複数のランド電極201,202と、第1表面の対向する積層体の第2表面に形成される接地電極204と、を備える。内部配線203は、第1表面から見てランド電極202と重なる位置からランド電極201の方向に延伸して配置され、ランド電極202とビア導体210により電気的に接続される。内部配線203は、第1表面から見てランド電極201と少なくとも一部が重なる位置に設けたビア導体211により接地電極204と電気的に接続される。これにより、本実施の形態1に係る多層基板200は、コンデンサC1をランド電極201,202に実装した場合、ランド電極201,202を流れる電流により生じインダクタンス成分を、内部配線203を流れる電流により生じインダクタンス成分で打ち消すので、コンデンサC1の実装面と接地電極との間で生じるインダクタンス成分の影響を低減することができる。なお、接地電極204は、第2表面と内部配線203との間に形成してもよい。
【0025】
ビア導体210は、接地電極204と電気的に接続してもよい。これにより、確実に内部配線203と接地電極204とを電気的に接続することができる。もちろん、ビア導体210は、ランド電極202と内部配線203とを電気的に接続するだけの構成でもよい。つまり、ビア導体210は、図1に示すようにランド電極202から接地電極204まで貫通していなくてもよい。
【0026】
内部配線203は、積層体のうち第1表面に最も近い配線層に形成してあることが好ましい。これにより、本実施の形態1に係る多層基板200は、コンデンサC1をランド電極201,202に実装した場合、ランド電極201,202を流れる電流により生じインダクタンス成分を、内部配線203を流れる電流により生じインダクタンス成分で打ち消す効果を増すことができる。
【0027】
本実施の形態1に係る回路装置150は、コンデンサC1と、コンデンサC1をランド電極201,202に実装する多層基板200とを含む。これにより、本実施の形態1に係る回路装置150は、ランド電極201,202を流れる電流により生じインダクタンス成分を、内部配線203を流れる電流により生じインダクタンス成分で打ち消すので、コンデンサC1の実装面と接地電極との間で生じるインダクタンス成分の影響を低減することができる。
【0028】
<実施の形態2>
実施の形態1に係る回路装置150では、多層基板200にコンデンサC1を1つ実装する構成について説明した。本実施の形態2に係る回路装置では、多層基板にコンデンサおよびコイル部品を実装してフィルタ回路を構成する。図3は、本実施の形態2に係る回路装置の断面図である。図4は、本実施の形態2に係るコイル部品の斜視図である。図5は、本実施の形態2に係るコイル部品を含むフィルタ回路の回路図である。ここで、図4では、コイル部品1の短辺方向をX方向、長辺方向をY方向、高さ方向をZ方向としている。また、基板の積層方向はZ方向で、矢印の向きが上層方向を示している。図3に示すフィルタ回路100のうち、図1に示す回路装置150と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明を繰り返さない。
【0029】
フィルタ回路100は、例えば、EMI除去フィルタであり、3次のT型LCフィルタ回路である。このフィルタ回路100に多層基板200aが用いられている。なお、以下の実施の形態2では、フィルタ回路100の構成として3次のT型LCフィルタ回路を用いて説明するが、5次のT型LCフィルタ回路や、より高次のT型LCフィルタ回路に対しても同様の構成の多層基板を適用することができる。まず、フィルタ回路100は、図5に示すように、コンデンサC1、電極4a,4b,4c、コイルL1(第1コイル)、およびコイルL2(第2コイル)を備えている。
【0030】
コンデンサC1は、図5に示すように一方の端部を電極4cに接続し、他方の端部をGND配線に接続している。なお、コンデンサC1は、BaTiO3(チタン酸バリウム)を主成分とした積層セラミックコンデンサだけでなく、他の材料を主成分とした積層セラミックコンデンサでも、積層セラミックコンデンサでない、例えばアルミ電解コンデンサなどの他の種類のコンデンサでもよい。コンデンサC1は、寄生インダクタンス(等価直列インダクタンス(ESL))としてインダクタL3を有しており、インダクタL3がキャパシタC1aに直列に接続された回路構成と等価である。なお、コンデンサC1は、さらに寄生抵抗(等価直列抵抗(ESR))がインダクタL3およびキャパシタC1aに直列に接続された回路構成と等価であるとしてもよい。
【0031】
電極4cには、コンデンサC1の他にコイルL1およびコイルL2が接続されている。コイルL1とコイルL2とは磁気結合しており、負のインダクタンス成分を生じている。この負のインダクタンス成分を用いて、コンデンサC1の寄生インダクタンス(インダクタL3)を打ち消すことができ、コンデンサC1のインダクタンス成分を見かけ上小さくすることができる。コンデンサC1、コイルL1およびコイルL2で構成されるフィルタ回路100は、コイルL1とコイルL2との相互インダクタンスによる負のインダクタンス成分で、コンデンサC1の寄生インダクタンスを打ち消すことにより、高周波帯のノイズ抑制効果を向上させることができる。
【0032】
コイル部品1は、図4に示すようにコイルの配線を形成した基板(セラミックグリーンシート)が複数枚積層されたセラミック層の積層体3(セラミック素体)で構成されている。積層体3は、互いに対向する1対の主面と主面間を結ぶ側面とを有している。積層体3の主面に対して平行に、複数の第1配線パターン10と、複数の第3配線パターン30と、複数の第2配線パターン20とが下から順に積み重ねられ、コイルL1およびコイルL2を形成している。
【0033】
積層体3の側面は、長辺側の第1の側面(電極4a(第1電極)を形成した側面)および第2の側面(電極4b(第2電極)を形成した側面)と、短辺側の第3の側面(電極4c(第3電極)を形成した側面)および第4の側面(電極4dを形成した側面)と有している。
【0034】
コイル部品1は、コイルL1,L2を構成する複数の第1配線パターン10、複数の第2配線パターン20および複数の第3配線パターン30が積層体3の内部に配置されている。複数の第3配線パターン30は、一部がコイルL1を構成し、残りがコイルL2を構成している、つまり、複数の第3配線パターン30は、コイルL1,L2を構成する共通部分である。複数の第3配線パターン30のように、コイルL1,L2の共通部分を持つことで、コイルL1とコイルL2との磁気結合の変動を低減することができる。コイルL1,L2のコイル形状は、電極4cに対しほぼ線対称の形状である。
【0035】
下層に積層されている複数の第1配線パターン10のうち、最下層の第1配線パターン10の端部11が電極4aと電気的に接続される。複数の第1配線パターン10の間は、図示していないビア導体(第1ビア導体)を介して電気的に接続されている。なお、第1ビア導体は、1つのビア導体で形成しても、複数のビア導体で形成してもよい。複数の第1配線パターン10のうち、少なくとも1つの第1配線パターンが電極4aと電気的に接続していればよい。
【0036】
中層に積層されている複数の第3配線パターン30のうち、最下層の第3配線パターン30の端部31が電極4cと電気的に接続される。複数の第3配線パターン30の間は、図示していないビア導体(第7ビア導体)を介して電気的に接続されている。なお、第7ビア導体は、1つのビア導体で形成しても、複数のビア導体で形成してもよい。複数の第3配線パターン30のうち、少なくとも1つの第3配線パターンが電極4cと電気的に接続していればよい。
【0037】
中層に積層されている第3配線パターン30は、図示していないビア導体(第2ビア導体),(第3ビア導体)を介して下層の第1配線パターン10と電気的に接続されている。第2ビア導体を設ける第1配線パターン10と、第3ビア導体を設ける第1配線パターン10とは、積層体3の異なる側面側にある。具体的に、第2ビア導体を設ける第1配線パターン10は、図4に示すように長辺側の第1の側面側になり、第3ビア導体を設ける第1配線パターン10の短辺側の第4の側面側と異なる。
【0038】
上層に積層されている複数の第2配線パターン20のうち、最下層の第2配線パターン20の端部21が電極4bと電気的に接続される。複数の第2配線パターン20の間は、ビア導体54(第4ビア導体)を介して電気的に接続されている。なお、ビア導体54は、1つのビア導体で形成しても、複数のビア導体で形成してもよい。複数の第2配線パターン20のうち、少なくとも1つの第2配線パターンが電極4bと電気的に接続していればよい。
【0039】
上層に積層されている第2配線パターン20は、ビア導体55,56を介して中層の第3配線パターン30と電気的に接続されている。なお、ビア導体55,56は、それぞれ1つのビア導体で形成しても、それぞれ複数のビア導体で形成してもよい。ビア導体55,56は、複数の第2配線パターン20、および複数の第3配線パターン30のそれぞれと電気的に接続されている。また、ビア導体55(第5ビア導体)を設ける第2配線パターン20と、ビア導体56(第6ビア導体)を設ける第2配線パターン20とは、積層体3の異なる側面側にある。具体的に、ビア導体55を設ける第2配線パターン20は、図4に示すように長辺側の第2の側面側になり、ビア導体56を設ける第2配線パターン20の短辺側の第4の側面側と異なる。
【0040】
図3に戻って、フィルタ回路100は、多層基板200aの表面にコンデンサC1およびコイル部品1を実装する。多層基板200aの表面には、コンデンサC1およびコイル部品1を表面実装するためのランド電極201,202,205が形成されている。なお、ランド電極201,202に実装する回路素子は、コンデンサC1に限定されず、キャパシタ成分を有する受動素子であればよい。ランド電極202,205に実装する回路素子は、コイル部品1に限定されず、2つのコイルが磁気結合するコイル素子であればよい。
【0041】
ランド電極205は、配線パターンに含まれる。そのため、ランド電極205は、配線パターンを介して他の回路素子、電源回路と電気的に接続可能である。ランド電極205は、ビア導体210で多層基板200aの内部に形成された内部配線203と電気的に接続する。ランド電極205は、ビア導体210でランド電極202と反対側の多層基板200aの表面に形成した接地電極204と電気的に接続してもよい。なお、接地電極204は、ランド電極202とは反対側の多層基板200aの表面と内部配線203との間に形成してもよい。
【0042】
内部配線203は、ランド電極202を形成した表面(第1表面)から見て、ランド電極202(第1の電極)と重なる位置からランド電極201(第2の電極)の方向に延伸して配置される。内部配線203は、ランド電極202、コンデンサC1を設ける領域と同等の面積、またはよりも広い面積を有している。内部配線203は、ビア導体210(第1のビア導体)によりランド電極202と電気的に接続され、ランド電極201と少なくとも一部が重なる位置に設けたビア導体211(第2のビア導体)により接地電極204と電気的に接続される。
【0043】
コイル部品1は、コンデンサC1の寄生インダクタンスを打ち消すことにより、高周波帯のノイズ抑制効果を向上させることができる。しかし、コンデンサC1を実装する実装面と接地電極204との間にインダクタンス成分がさらに生じる場合、当該インダクタンス成分とコンデンサC1の寄生インダクタンスと合わせたインダクタンスをコイル部品1で打ち消す必要がある。そのため、フィルタ回路は、高周波ノイズを除去する場合、当該インダクタンス成分が大きな障害になる。また、コンデンサC1を実装した多層基板の仕様に合わせて、打ち消すインダクタンスの大きさが異なるコイル部品1の種類を多数準備しておく必要がある。
【0044】
そこで、本実施の形態2に係る多層基板200aでは、コンデンサC1を実装する実装面と接地電極204との間に内部配線203を設けている。内部配線203は、ビア導体210でコンデンサC1を実装する実装面に設けたランド電極202と電気的に接続されている。さらに、内部配線203は、ビア導体211で接地電極204と電気的に接続されている。そのため、多層基板200aは、内部配線203を設けることにより、電流が流れるループ経路が小さくなる。また、ランド電極201からランド電極202へ流れる電流方向と内部配線203を流れる電流方向が逆になるため互いの磁束が打ち消し合い、コンデンサC1を実装した多層基板200aは、インダクタンス成分が低下する。
【0045】
コンデンサC1を実装した多層基板200aのインダクタンス成分が低下することで、コイル部品1で打ち消すことが必要なインダクタンスも低下する。つまり、多層基板200aを用いることで、コンデンサC1の寄生インダクタンスを打ち消すことを主としてコイル部品1の種類を準備するだけでよい。
【0046】
前述の内部配線203では、ランド電極202と重なる位置からランド電極201の方向に延伸し、ランド電極201と少なくとも一部が重なる位置でビア導体211を介して接地電極204と電気的に接続すると説明した。しかし、電流が流れるループ経路が小さくなり、ランド電極201からランド電極202へ流れる電流方向に対して逆方向に電流を流すことができれば、内部配線203は、接地電極204と電気的に接続する位置は限定されない。
【0047】
以下に、内部配線203と接地電極204とを電気的に接続する位置を変更した構成について説明する。図6は、内部配線203と接地電極204とを電気的に接続する位置を説明するための回路装置の断面図である。図6に示すフィルタ回路100のうち、図1に示す回路装置150と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明を繰り返さない。
【0048】
図7は、図6に示したフィルタ回路の周波数に対する伝送特性を示すグラフである。図7に示すグラフは、横軸を周波数Freq(GHz)とし、縦軸を伝送特性S21(dB)としている。なお、図6では、ランド電極205およびコイル部品1の図示を省略している。
【0049】
図6(a)に示すフィルタ回路は、比較のための構成で、内部配線203を設けていない。図6(b)に示すフィルタ回路は、ランド電極202と重なる位置からコンデンサC1の電極とランド電極202とが重なる位置まで内部配線203が延伸し、当該位置でビア導体211により内部配線203と接地電極204とが電気的に接続する。図6(c)に示すフィルタ回路は、ランド電極202と重なる位置からコンデンサC1の中央部と重なる位置まで内部配線203が延伸し、当該位置でビア導体211により内部配線203と接地電極204とが電気的に接続する。
【0050】
図6(d)に示すフィルタ回路は、ランド電極202と重なる位置からコンデンサC1の電極とランド電極201とが重なる位置まで内部配線203が延伸し、当該位置でビア導体211により内部配線203と接地電極204とが電気的に接続する。図6(e)に示すフィルタ回路は、ランド電極202と重なる位置からランド電極201の遠端と重なる位置まで内部配線203が延伸し、当該位置でビア導体211により内部配線203と接地電極204とが電気的に接続する。
【0051】
図7に示すグラフでは、グラフ(a)が図6(a)に示す構成のフィルタ回路での伝送特性を、グラフ(b)が図6(b)に示す構成のフィルタ回路での伝送特性を、グラフ(c)が図6(c)に示す構成のフィルタ回路での伝送特性をそれぞれ示している。図7に示すグラフでは、グラフ(d)が図6(d)に示す構成のフィルタ回路での伝送特性を、グラフ(e)が図6(e)に示す構成のフィルタ回路での伝送特性をそれぞれ示している。
【0052】
図7に示すグラフ(a)〜(d)から分かるように、内部配線203をランド電極201の方向に延伸するに従い、フィルタ回路の伝送特性S21は、急激に変化する部分が0.100GHzに近づく方向にずれる。つまり、フィルタ回路100は、内部配線203をランド電極201の方向に延伸することでより高い高周波帯のノイズを抑制することができる。また、図7に示すグラフ(d)〜(e)から分かるように、フィルタ回路の伝送特性S21は、急激に変化する部分がほぼ同じ位置にある。つまり、フィルタ回路100は、コンデンサC1を接続したランド電極201の領域と重なる位置まで内部配線203を延伸すれば、それ以上延伸させてもノイズを抑制できる帯域に変化はない。
【0053】
以上のように、本実施の形態2に係るフィルタ回路100は、コイルL1(第1コイル)とコイルL2(第2コイル)とを磁気結合させたコイル部品1と、コイル部品1のコイルL1とコイルL2との間の電極4cに接続するコンデンサC1と、コイル部品1およびコンデンサC1をランド電極201,202,205に実装する多層基板200aと、を備える。これにより、本実施の形態2に係るフィルタ回路100は、ランド電極201,202を流れる電流により生じインダクタンス成分を、内部配線203を流れる電流により生じインダクタンス成分で打ち消すので、コンデンサC1の実装面と接地電極との間で生じるインダクタンス成分の影響を低減することができ、より高い高周波帯のノイズを抑制する。
【0054】
多層基板200aでは、内部配線203が第1表面から見てランド電極202と重なる位置からランド電極201の方向に延伸して配置され、第1表面から見てランド電極201と少なくとも一部が重なる位置に設けたビア導体211により接地電極204と電気的に接続さればよい。これにより、多層基板200aを用いたフィルタ回路100は、図7に示すグラフ(a)〜グラフ(d)から分かるように、高い高周波帯のノイズを抑制することが可能となる。
【0055】
さらに、ビア導体211は、コンデンサC1を実装する位置にあるランド電極201の領域と少なくとも一部が重なる位置に設けることが望ましい。これにより、多層基板200aを用いたフィルタ回路100は、図7に示すグラフ(d)〜グラフ(e)から分かるように、より高い高周波帯のノイズを抑制することが可能となる。
【0056】
<実施の形態3>
実施の形態1に係る回路装置150では、多層基板200にコンデンサC1を1つ実装する構成について説明した。本実施の形態3に係る回路装置では、多層基板に複数のコンデンサを実装して回路装置を構成する。図8は、本実施の形態3に係る回路装置の斜視図である。図8に示す回路装置150Aのうち、図1に示す回路装置150と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明を繰り返さない。なお、本実施の形態3に係る回路構成を、実施の形態2に係る回路構成に組み合わせてもよい。
【0057】
回路装置150Aは、多層基板200bの表面にコンデンサC1およびコンデンサC2を実装する。多層基板200bの表面には、コンデンサC1を表面実装するためのランド電極201a,202、コンデンサC2を表面実装するためのランド電極201a,206が形成されている。なお、ランド電極201a,202,206に実装する回路素子は、コンデンサC1,C2に限定されず、キャパシタ成分を有する受動素子であればよい。
【0058】
ランド電極206は、図8に示すように配線パターンに含まれる。そのため、ランド電極206は、配線パターンを介して他の回路素子、電源回路と電気的に接続可能である。ランド電極202は、ビア導体210で多層基板200bの内部に形成された内部配線203aと電気的に接続する。コンデンサC1とコンデンサC2とがL字状に配置されるように、多層基板200bの表面にランド電極201a,202,206が配置される。なお、内部配線203aは、ランド電極202と反対側の多層基板200bの表面に形成した接地電極204と電気的に接続する。また、接地電極204は、ランド電極202と反対側の多層基板200bの表面と内部配線203aとの間に形成してもよい。
【0059】
内部配線203aは、ランド電極202を形成した表面(第1表面)から見て、ランド電極202(第1の電極)と重なる位置からコンデンサC1およびコンデンサC2の配置に沿って形成される。好ましくは、内部配線203aは、ランド電極202からコンデンサC1およびコンデンサC2の配置に沿って最も遠いコンデンサC2のランド電極206まで延伸して配置される。
【0060】
内部配線203aは、図8から分かるようにランド電極202、コンデンサC1およびコンデンサC2を設ける領域と同等の面積、またはよりも広い面積を有している。内部配線203aは、ビア導体210(第1のビア導体)によりランド電極202と電気的に接続され、ランド電極206と少なくとも一部が重なる位置に設けたビア導体211(第2のビア導体)により接地電極204と電気的に接続される。
【0061】
多層基板200bは、内部配線203aを設けることにより、ランド電極206からコンデンサC2,ランド電極201a、コンデンサC1、ランド電極202、内部配線203、接地電極204の順で流れる電流のループ経路が形成される。多層基板200bは、内部配線203aを設けることにより、電流が流れるループ経路が小さくなる。さらに、ランド電極206からランド電極202へ流れる電流方向と内部配線203を流れる電流方向が逆になるため互いの磁束が打ち消し合い、コンデンサC1およびコンデンサC2を実装した多層基板200b(回路装置150A)は、インダクタンス成分が低下する。つまり、内部配線203aには、ランド電極202から接地電極204にコンデンサC1,C2の配置に沿って流れる帰還電流が通ることになり、ランド電極206からランド電極202へコンデンサC1,C2の配置に沿って流れる電流により生じるインダクタンス成分を当該帰還電流により生じるインダクタンス成分で打ち消している。
【0062】
以上のように、本実施の形態3に係る多層基板200aは、第1表面にコンデンサC1,C2を複数の直列に実装できるように複数のランド電極201a,202,206を形成する。内部配線203aは、第1表面から見てランド電極202と重なる位置からコンデンサC1,C2の配置に沿って最も遠いコンデンサC2のランド電極206まで延伸して配置される。これにより、本実施の形態3に係る回路構成150Aは、ランド電極201a,202,206を流れる電流により生じインダクタンス成分を、内部配線203aを流れる電流により生じインダクタンス成分で打ち消すので、コンデンサC1およびコンデンサC2の実装面と接地電極との間で生じるインダクタンス成分の影響を低減することができる。なお、多層基板200aに実装するコンデンサが2つの場合について説明したが、3つ以上であってもよい。また、コンデンサC1とコンデンサC2とが並列に接続されてもよく、その場合、内部配線203aは、それぞれコンデンサC1,C2に沿って配置されても、いずれか一方に沿って配置されてもよい。
【0063】
内部配線203aは、コンデンサC1,C2の配置に沿った形状であると説明したが、コンデンサC1,C2の配置を含む平板状であってもよい。図9は、本実施の形態3の変形例に係る回路装置の斜視図である。図9に示す回路装置150Bのうち、図1に示す回路装置150と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明を繰り返さない。
【0064】
回路装置150Bは、多層基板200bの表面にコンデンサC1およびコンデンサC2を実装する。多層基板200bの表面には、コンデンサC1を表面実装するためのランド電極201a,202、コンデンサC2を表面実装するためのランド電極201a,206が形成されている。
【0065】
内部配線203bは、平板状に形成され、第1表面から見て、ランド電極202と重なる位置、コンデンサC1およびコンデンサC2の配置を含む領域に形成される。そして、内部配線203bは、ビア導体210(第1のビア導体)によりランド電極202と電気的に接続され、図示していないがランド電極206と少なくとも一部が重なる位置に設けたビア導体211(第2のビア導体)により接地電極204と電気的に接続される。
【0066】
図10は、本実施の形態3に係る回路装置の周波数に対する伝送特性を示すグラフである。図10に示すグラフは、横軸を周波数Freq(GHz)とし、縦軸を伝送特性S21(dB)としている。図10に示すグラフでは、グラフ(A)が内部配線を設けていない回路装置での伝送特性を、グラフ(B)が図8に示す構成の回路装置での伝送特性を、グラフ(C)が図9に示す構成の回路装置での伝送特性をそれぞれ示している。
【0067】
図10に示すグラフ(A)〜(C)から分かるように、回路装置の伝送特性S21は、急激に変化する部分が0.002GHzに近づく方向にずれる。つまり、回路装置は、内部配線203a,203bを設けることでより高い高周波帯のノイズを抑制することができる。また、図10に示すグラフ(B)〜(C)から分かるように、回路装置の伝送特性S21は、急激に小さくなる部分がほぼ同じ位置にある。つまり、回路装置は、内部配線203a,203bがコンデンサC1,C2の配置に沿った形状であっても平板状であってもノイズを抑制できる帯域に変化はない。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 コイル部品、4a,4b,4c 電極、10,20,30 配線パターン、51〜57 ビア導体、100 フィルタ回路、150,150A,150B 回路装置、200,200a,200b 多層基板、201,201a,202,205,206 ランド電極、203,203a,203b 内部配線、204 接地電極、C1 コンデンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10