特許第6981585号(P6981585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981585半導体装置、電力変換装置、および半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6981585
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】半導体装置、電力変換装置、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20211202BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H01L29/78 657A
   H01L27/06 102A
   H01L27/088 E
   H01L29/48 D
   H01L29/48 F
   H01L29/78 652C
   H01L29/78 652F
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 657D
   H01L29/78 658A
   H01L29/78 658E
   H01L29/78 658F
   H01L29/86 301D
   H01L29/86 301F
   H01L29/86 301M
【請求項の数】19
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2021-540878(P2021-540878)
(86)(22)【出願日】2020年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2020031924
【審査請求日】2021年7月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108431
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 加奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 梨菜
(72)【発明者】
【氏名】八田 英之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 基
(72)【発明者】
【氏名】福井 裕
(72)【発明者】
【氏名】日野 史郎
【審査官】 西出 隆二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−195081(JP,A)
【文献】 特許第6735950(JP,B1)
【文献】 特開2018−195782(JP,A)
【文献】 特開2018−022854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/872
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 29/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドリフト層と、
第2導電型のボディ領域と、
第1導電型のソース領域と、
前記ボディ領域を前記ドリフト層の厚さ方向に貫通するゲートトレンチ内に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲートトレンチ内に設けられ、前記ソース領域に対して、前記ゲート絶縁膜を介して対向するように設けられたゲート電極と、
前記ゲート絶縁膜の下方に設けられた第2導電型の第1底部保護領域と、
前記ゲートトレンチの延伸方向において第1の間隔で複数設けられ、前記第1底部保護領域と前記ボディ領域とを電気的に接続する第2導電型の第1接続領域と、
前記ボディ領域を前記ドリフト層の厚さ方向に貫通するショットキートレンチ内に設けられ、前記ショットキートレンチの側面にショットキー界面が形成されたショットキー電極と、
前記ショットキー電極の下方に設けられた第2導電型の第2底部保護領域と、
前記ショットキートレンチの延伸方向において前記第1の間隔よりも小さい第2の間隔で複数設けられ、前記第2底部保護領域と前記ボディ領域とを電気的に接続する第2導電型の第2接続領域と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第1接続領域は、前記ゲートトレンチの両側面に設けられる、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2接続領域は、前記ショットキートレンチの両側面に設けられる、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ショットキートレンチの延伸方向における前記第2接続領域のそれぞれの長さは、前記ゲートトレンチの延伸方向における前記第1接続領域のそれぞれの長さよりも長い、
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2接続領域は、第2導電型の不純物濃度が前記第1接続領域よりも高い、
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1接続領域の下方に設けられ、前記第1接続領域よりも第2導電型の不純物濃度が低い、第2導電型の第1電界緩和領域をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1電界緩和領域は、前記第1底部保護領域の下方に設けられる、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2接続領域の下方に設けられ、前記第2接続領域よりも第2導電型の不純物濃度が低い、第2導電型の第2電界緩和領域をさらに備える、
請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2電界緩和領域は、前記第2底部保護領域の下方に設けられる、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ゲートトレンチの延伸方向において前記第1接続領域の間に設けられ、第1導電型の不純物濃度が前記ドリフト層よりも高い第1低抵抗領域をさらに備える、
請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ショットキートレンチの延伸方向において前記第2接続領域の間に設けられ、第1導電型の不純物濃度が前記ドリフト層よりも高い第2低抵抗領域をさらに備える、
請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ゲートトレンチの延伸方向において前記第1接続領域の間に設けられ、第1導電型の不純物濃度が前記ドリフト層よりも高い第1低抵抗領域をさらに備え、
前記第2低抵抗領域は、第1導電型の不純物濃度が前記第1低抵抗領域よりも高い、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ドリフト層は、半導体材料としてワイドバンドギャップ半導体が用いられる、
請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記ドリフト層は、<11−20>方向に0°より大きいオフ角が設けられた主面を有し、半導体材料として炭化珪素が用いられ、
前記ゲートトレンチおよび前記ショットキートレンチは、<11−20>方向に平行に設けられる、
請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記ゲートトレンチおよび前記ショットキートレンチは、前記ドリフト層の厚み方向における深さが同じである、
請求項1から14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記半導体装置を駆動する駆動信号を前記半導体装置に出力する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する制御信号を前記駆動回路に出力する制御回路と、
を備えた電力変換装置。
【請求項17】
第1導電型のドリフト層の上層部に第2導電型のボディ領域を形成する工程と、
前記ボディ領域の上層部に選択的に第1導電型のソース領域を形成する工程と、
前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト層へと達するゲートトレンチを形成する工程と、
前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト層へと達するショットキートレンチを形成する工程と、
前記ゲートトレンチの下方に第2導電型の第1底部保護領域を形成する工程と、
前記ショットキートレンチの下方に第2導電型の第2底部保護領域を形成する工程と、
前記ゲートトレンチの延伸方向において第1の間隔をあけて周期的に開口されたマスクを用いて、前記ゲートトレンチの側面に対して斜め方向にイオン注入を行い、前記ボディ領域と前記第1底部保護領域とを接続するように第2導電型の第1接続領域を複数形成する工程と、
前記ショットキートレンチの延伸方向において前記第1の間隔よりも小さい第2の間隔をあけて周期的に開口されたマスクを用いて、前記ショットキートレンチの側面に対して斜め方向にイオン注入を行い、前記ボディ領域と前記第2底部保護領域とを接続するように第2導電型の第2接続領域を複数形成する工程と、
前記ゲートトレンチの底部および側面にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲートトレンチを埋め込むようにゲート電極を形成する工程と、
前記ショットキートレンチ内にショットキー電極を形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項18】
第1導電型の第1ドリフト層の上層部に、第2導電型の第1底部保護領域および第2導電型の第2底部保護領域をイオン注入により選択的に形成する工程と、
前記第1ドリフト層、前記第1底部保護領域、および前記第2底部保護領域の上に、第1導電型の第2ドリフト層をエピタキシャル成長により形成する工程と、
前記第2ドリフト層の上層部に第2導電型のボディ領域を形成する工程と、
前記ボディ領域の上層部に選択的に第1導電型のソース領域を形成する工程と、
前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記第1底部保護領域へと達するゲートトレンチを形成する工程と、
前記ボディ領域を貫通して前記第2底部保護領域へと達するショットキートレンチを形成する工程と、
前記ゲートトレンチの延伸方向において第1の間隔をあけて周期的に開口されたマスクを用いて、前記ゲートトレンチの側面に対して斜め方向にイオン注入を行い、前記ボディ領域と前記第1底部保護領域とを接続するように第2導電型の第1接続領域を複数形成する工程と、
前記ショットキートレンチの延伸方向において前記第1の間隔よりも小さい第2の間隔をあけて周期的に開口されたマスクを用いて、前記ショットキートレンチの側面に対して斜め方向にイオン注入を行い、前記ボディ領域と前記第2底部保護領域とを接続するように第2導電型の第2接続領域を複数形成する工程と、
前記ゲートトレンチの底部および側面にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲートトレンチを埋め込むようにゲート電極を形成する工程と、
前記ショットキートレンチ内にショットキー電極を形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記第1底部保護領域および前記第2底部保護領域を形成する工程よりも前に、前記第1ドリフト層の上層部に第2導電型の第1電界緩和領域および第2電界緩和領域をイオン注入により選択的に形成する工程をさらに備え、
前記第1底部保護領域は、第1電界緩和領域に接するように形成され、前記第2底部保護領域は、前記第2電界緩和領域に接するように形成される、
請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、電力変換装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置として、半導体基体(半導体チップ)のおもて面側に、ゲートトレンチと、コンタクトトレンチと、を備えたトレンチ型SiC−MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect−Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)がある。ゲートトレンチとは、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が埋め込まれたトレンチである。コンタクトトレンチとは、ショットキー電極によるショットキー接合を有するSBD(Schottky Barrier Diode)を埋め込んだトレンチである。
【0003】
この従来の半導体装置において、ゲートトレンチ、コンタクトトレンチは、p型ベース層のn型炭化珪素基板側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面からp型ベース層を貫通してn型高濃度領域に達する。ゲートトレンチは、奥行き方向(X−X’方向)に延びる平行したストライプ状の平面レイアウトに配置されている。また、コンタクトトレンチは、隣り合うゲートトレンチ間に、ゲートトレンチに平行に、かつゲートトレンチと離して、X−X’方向に延びるストライプ状の平面レイアウトに配置されている。
【0004】
上記のようなトレンチ構造を有する縦型MOSFETは、チャネルが基板表面に対して垂直に形成されるため、チャネルが基板表面に対して平行に形成されるプレーナ構造よりも単位面積当たりのセル密度を増やすことができ、単位面積当たりの電流密度を増やせるので、コスト面から有利である。また、同じオン抵抗(Ron)の素子同士で比べた場合、トレンチゲート構造は、炭化珪素基体上に平板状にMOSゲートを設けたプレーナゲート構造よりも素子面積(チップ面積)を小さくすることができる。
【0005】
一方、上記のようなSBDを内蔵する構造では、内蔵SBDとMOSFETとでドリフト領域を共用できるため外付けSBDとMOSFETとを合わせたチップ面積より小さくできる。また、SBDを内蔵する構造では、MOSFETのドレインの電圧がp型ベース層とn型ドリフト層とで形成されるボディダイオードのビルトイン電圧以上になっても、ボディダイオードを構成するpn接合付近の電位差は、ドリフト領域で電圧を保持するため低くなっており、ボディダイオードに電流が流れ難い。このため、外付けSBDの場合と異なり、大電流までボディダイオードに電流が流れず、ボディダイオードのバイポーラ動作により経時的に特性が変化(経年劣化)して信頼性が低減してしまうことを抑制できる。
【0006】
上記の従来の半導体装置においては、さらに、n型ドリフト層のn型炭化珪素基板側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面層には、p型ベース領域が選択的に設けられている。p型ベース領域は、ゲートトレンチ、コンタクトトレンチの下に形成されており、p型ベース領域の幅はゲートトレンチ、コンタクトトレンチの幅よりも広い。また、p型ベース領域は、p型ベース層と離れて設けられる。p型ベース領域は、ゲートトレンチ、コンタクトトレンチの底部においてゲート絶縁膜にかかる電界を緩和するために設けられている。
【0007】
なお、n型高濃度領域は、n型炭化珪素基板よりも低くn型ドリフト層よりも高い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている高濃度n型ドリフト層である。n型高濃度領域は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019―216224号公報(段落0002−0010、0027−0034、図1および図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
SBDを内蔵するトレンチ型の半導体装置では、n型半導体領域に露出しているトレンチ側面が高電界となりやすく、逆方向バイアス印加時には、当該部分に形成されるショットキー界面からのリーク電流が増大して素子の耐圧が悪化してしまう可能性がある。この問題に対し、SBDが形成される領域周辺のn型半導体領域を低濃度化することで、逆方向バイアス印加時におけるSBDのリーク電流の増大を抑制できる。しかし、特許文献1に記載の半導体装置は、ゲートトレンチが形成される領域とコンタクトトレンチが形成される領域とで周囲の不純物層が同様に構成されているため、n型高濃度領域を低濃度化して上記のリーク電流の増大を抑制しようとすると、MOSFETのオン抵抗が増大してしまう。すなわち、MOSFETとSBDの特性のトレードオフを改善することが困難である。
【0010】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、SBDを内蔵するトレンチ型の半導体装置において、素子のオン抵抗を低減しつつ、SBDのリーク電流増大を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る半導体装置は、第1導電型のドリフト層と、第2導電型のボディ領域と、第1導電型のソース領域と、ボディ領域をドリフト層の厚さ方向に貫通するゲートトレンチ内に設けられたゲート絶縁膜と、ゲートトレンチ内に設けられ、ソース領域に対して、ゲート絶縁膜を介して対向するように設けられたゲート電極と、ゲート絶縁膜の下方に設けられた第2導電型の第1底部保護領域と、ゲートトレンチの延伸方向において第1の間隔で複数設けられ、第1底部保護領域とボディ領域とを電気的に接続する第2導電型の第1接続領域と、ボディ領域をドリフト層の厚さ方向に貫通するショットキートレンチ内に設けられ、ショットキートレンチの側面にショットキー界面が形成されたショットキー電極と、ショットキー電極の下方に設けられた第2導電型の第2底部保護領域と、ショットキートレンチの延伸方向において第1の間隔よりも小さい第2の間隔で複数設けられ、第2底部保護領域とボディ領域とを電気的に接続する第2導電型の第2接続領域と、を備える。
【0012】
本開示に係る半導体装置の製造方法は、第1導電型のドリフト層の上層部に第2導電型のボディ領域を形成する工程と、ボディ領域の上層部に選択的に第1導電型のソース領域を形成する工程と、ソース領域およびボディ領域を貫通してドリフト層へと達するゲートトレンチを形成する工程と、ボディ領域を貫通してドリフト層へと達するショットキートレンチを形成する工程と、ゲートトレンチの下方に第2導電型の第1底部保護領域を形成する工程と、ショットキートレンチの下方に第2導電型の第2底部保護領域を形成する工程と、ゲートトレンチの延伸方向において第1の間隔をあけて周期的に開口されたマスクを用いて、ゲートトレンチの側面に対して斜め方向にイオン注入を行い、ボディ領域と第1底部保護領域とを接続するように第2導電型の第1接続領域を複数形成する工程と、ショットキートレンチの延伸方向において第1の間隔よりも小さい第2の間隔をあけて周期的に開口されたマスクを用いて、ショットキートレンチの側面に対して斜め方向にイオン注入を行い、ボディ領域と第2底部保護領域とを接続するように第2導電型の第2接続領域を複数形成する工程と、ゲートトレンチの底部および側面にゲート絶縁膜を形成する工程と、ゲート絶縁膜を介してゲートトレンチを埋め込むようにゲート電極を形成する工程と、ショットキートレンチ内にショットキー電極を形成する工程と、を備える。
【0013】
また、本開示に係る半導体装置の製造方法は、第1導電型の第1ドリフト層の上層部に、第2導電型の第1底部保護領域および第2導電型の第2底部保護領域をイオン注入により選択的に形成する工程と、第1ドリフト層、第1底部保護領域、および第2底部保護領域の上に、第1導電型の第2ドリフト層をエピタキシャル成長により形成する工程と、第2ドリフト層の上層部に第2導電型のボディ領域を形成する工程と、ボディ領域の上層部に選択的に第1導電型のソース領域を形成する工程と、ソース領域およびボディ領域を貫通して第1底部保護領域へと達するゲートトレンチを形成する工程と、ボディ領域を貫通して第2底部保護領域へと達するショットキートレンチを形成する工程と、ゲートトレンチの延伸方向において第1の間隔をあけて周期的に開口されたマスクを用いて、ゲートトレンチの側面に対して斜め方向にイオン注入を行い、ボディ領域と第1底部保護領域とを接続するように第2導電型の第1接続領域を複数形成する工程と、ショットキートレンチの延伸方向において第1の間隔よりも小さい第2の間隔をあけて周期的に開口されたマスクを用いて、ショットキートレンチの側面に対して斜め方向にイオン注入を行い、ボディ領域と第2底部保護領域とを接続するように第2導電型の第2接続領域を複数形成する工程と、ゲートトレンチの底部および側面にゲート絶縁膜を形成する工程と、ゲート絶縁膜を介してゲートトレンチを埋め込むようにゲート電極を形成する工程と、ショットキートレンチ内にショットキー電極を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る半導体装置は、ゲートトレンチの延伸方向において第1の間隔で複数設けられ、第1底部保護領域とボディ領域とを電気的に接続する第2導電型の第1接続領域と、ショットキートレンチの延伸方向において第1の間隔よりも小さい第2の間隔で複数設けられ、第2底部保護領域とボディ領域とを電気的に接続する第2導電型の第2接続領域と、を備えるため、素子のオン抵抗を低減しつつ、SBDのリーク電流増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1の半導体装置におけるセル領域の断面模式図である。
図2】実施の形態1の半導体装置におけるレイアウトを示す平面模式図である。
図3】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図4】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図5】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図6】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図7】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図8】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図9】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図10】実施の形態1の変形例1の半導体装置におけるレイアウトを示す平面模式図である。
図11】実施の形態1の変形例2の半導体装置におけるセル領域の断面模式図である。
図12】実施の形態2の半導体装置におけるセル領域の断面模式図である。
図13】実施の形態2における半導体装置の製造工程を示す図である。
図14】実施の形態2の変形例1の半導体装置におけるセル領域の断面模式図である。
図15】実施の形態2の変形例1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図16】実施の形態2の変形例1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図17】実施の形態2の変形例1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図18】実施の形態2の変形例2の半導体装置におけるセル領域の断面模式図である。
図19】実施の形態2の変形例2における半導体装置の製造工程を示す図である。
図20】実施の形態2の変形例2における半導体装置の製造工程を示す図である。
図21】実施の形態3の半導体装置におけるセル領域の断面模式図である。
図22】実施の形態3の半導体装置におけるレイアウトを示す平面模式図である。
図23】実施の形態3における半導体装置の製造工程を示す図である。
図24】実施の形態3における半導体装置の製造工程を示す図である。
図25】実施の形態3の変形例1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図26】実施の形態3の変形例1における半導体装置の製造工程を示す図である。
図27】実施の形態3の変形例2の半導体装置におけるセル領域の断面模式図である。
図28】実施の形態4の電力変換装置を適用した電力変換システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的に示されたものであり、異なる図面にそれぞれ示されている画像のサイズおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されたものではなく、適宜変更され得る。また、以下の説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称および機能も同一または同様のものとする。よって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
【0017】
また、各図面においては、特定の領域や各領域間の境界を示すために破線を図示している場合があるが、これらは説明の便宜上、または図面の理解を容易にするために記載しているものであって、各実施の形態の内容を何ら限定するものではない。
【0018】
また、以下の説明では、「上」、「下」、「側」、「底」、「表」および「裏」などの特定の位置および方向を意味する用語が用いられる場合があるが、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするため便宜上用いられているものであり、実際に実施される際の方向とは関係しない。
【0019】
本開示において、構成要素の相互関係を「〜上」や「〜下」などの用語を用いて表現する場合、構成要素間に介在物が存在することを妨げるものではない。例えば、「A上に設けられたB」と記載している場合、AとBとの間に他の構成要素Cが設けられたものも、設けられていないものも含む。また、本開示において、「〜上」や「〜下」などの用語を用いて表現する場合、積層構造を念頭に置いた上下の概念も含む。例えば、「溝を覆うA上に設けられたB」と記載している場合、BはAから見た溝面と逆方向に存在することの意味を含み、その意味の範囲内で横方向や斜め方向も含む。
【0020】
以下の記載では、不純物の導電型に関して、第1導電型をn型、第2導電型をp型とした場合について説明するが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。また、「不純物濃度」とは各領域における不純物の最高値を示すものとする。
【0021】
以下の記載において、MOSFETのドレインからソースに向けて流れる電流を順方向電流、その方向を順方向、またソースからドレインに向けて流れる電流を還流電流、その方向を逆方向などと呼ぶことにする。なお、「MOS」という用語は、古くは金属/酸化物/半導体の接合構造に用いられており、Metal−Oxide−Semiconductorの頭文字を採ったものとされている。しかしながら特にMOS構造を有する電界効果トランジスタ(以下、単に「MOSトランジスタ」と称する)においては、近年の集積化や製造プロセスの改善などの観点からゲート絶縁膜やゲート電極の材料が改善されている。
【0022】
例えばMOSトランジスタにおいては、主としてソース・ドレインを自己整合的に形成する観点から、ゲート電極の材料として金属の代わりに多結晶シリコンが採用されてきている。また電気的特性を改善する観点から、ゲート絶縁膜の材料として高誘電率の材料が採用されるが、この材料は必ずしも酸化物には限定されない。
【0023】
従って「MOS」という用語は必ずしも金属/酸化物/半導体の積層構造のみに限定されて採用されているわけではなく、本明細書でもそのような限定を前提としない。すなわち、技術常識に鑑みて、ここでは「MOS」とはその語源に起因した略語としてのみならず、広く導電体/絶縁体/半導体の積層構造をも含む意義を有する。
【0024】
実施の形態1.
<構成>
図1は、本開示の実施の形態1に係る半導体装置101におけるセル領域の一部の断面を示す断面模式図である。なお、半導体装置101は、図1に示すようなセル構造が、セル領域において繰り返し周期的に複数設けられている。
【0025】
図1に示すように、半導体装置101は、基板1、ドリフト層2、ボディ領域3、ソース領域4、ボディコンタクト領域5、ゲートトレンチ6、ゲート絶縁膜7、ゲート電極8、層間絶縁膜9、ショットキートレンチ10、ショットキー電極12、ソース電極13、ドレイン電極14、第1底部保護領域15、第2底部保護領域16、第1接続領域17、および第2接続領域18を備えている。
【0026】
MOS領域19は、ゲートトレンチ6、ゲート絶縁膜7、ゲート電極8、層間絶縁膜9を有する。SBD領域20は、ショットキートレンチ10、ショットキー電極12を有する。また、半導体層21は、ドリフト層2とその上部または内部に形成された不純物領域である、ボディ領域3、ソース領域4、ボディコンタクト領域5、第1底部保護領域15、第2底部保護領域16、第1接続領域17、および第2接続領域18を含む。
【0027】
基板1は、n型のSiC(炭化珪素)半導体基板であり、例えば4Hのポリタイプを有する。基板1は、<11−20>軸方向に傾斜するオフ角θを有する(0001)面としてもよい。この場合オフ角θとしては、例えば、10°以下であれば良い。
【0028】
基板1上には、n型の不純物濃度が基板1よりも低い、n型のドリフト層2が設けられている。ドリフト層2は、半導体材料としてSiC(炭化珪素)が用いられる。ドリフト層2は、半導体層21の大部分を占めており、半導体層21の主要部を構成する。基板1の主面が<11−20>軸方向に傾斜するオフ角θを有する(0001)面である場合、ドリフト層2の主面も同様のオフ角θを有する(0001)面となる。すなわち、ドリフト層2は、<11−20>軸方向に0°より大きいオフ角が設けられた主面を有することになる。
【0029】
ドリフト層2の上層部には、p型のボディ領域3が設けられている。ドリフト層2(ボディ領域3)の上層部には、n型のソース領域4が選択的に設けられている。ソース領域4は、n型の不純物濃度がドリフト層2よりも高い半導体領域である。また、ドリフト層2(ボディ領域3)の上層部には、ソース領域4に隣接して、p型のボディコンタクト領域5が選択的に設けられている。ボディコンタクト領域5は、p型の不純物濃度がボディ領域3よりも高い半導体領域である。
【0030】
MOS領域19には、ボディ領域3をドリフト層2の厚さ方向に貫通するゲートトレンチ6が設けられている。ゲートトレンチ6は、半導体層21の表面からソース領域4、ボディ領域3を貫通してドリフト層2に達するように形成されている。ゲートトレンチ6の底部は、典型的には面をなしているが、先端が細く尖った先細り形状であってもよい。また、ゲートトレンチ6の側面は、典型的には実質的に平行であるが、互いに傾斜しているテーパ形状であってもよい。
【0031】
ゲートトレンチ6の底部および側面には、ゲート絶縁膜7が設けられている。また、ゲートトレンチ6内には、ゲート絶縁膜7を介してゲートトレンチ6内を充填するようにゲート電極8が設けられている。ゲート電極8は、ドリフト層2、ボディ領域3、およびソース領域4に対して、ゲート絶縁膜7を介して対向するように設けられる。ゲートトレンチ6上には、ゲート電極8を覆うように層間絶縁膜9が設けられている。
【0032】
SBD領域20には、ボディ領域3をドリフト層2の厚さ方向に貫通するショットキートレンチ10が設けられている。ショットキートレンチ10は、半導体層21の表面からソース領域4、ボディ領域3を貫通してドリフト層2に達するように形成されている。ショットキートレンチ10は、ドリフト層2の厚み方向における深さがゲートトレンチ6と同じ深さになるように形成されている。ショットキートレンチ10は、ドリフト層2の厚み方向に直交する方向におけるトレンチ幅が、ゲートトレンチ6と同じ幅になるように形成されている。ショットキートレンチ10の底部は、典型的には面をなしているが、先端が細く尖った先細り形状であってもよい。また、ショットキートレンチ10の側面は、典型的には実質的に平行であるが、互いに傾斜しているテーパ形状であってもよい。
【0033】
なお、ショットキートレンチ10は、ドリフト層2の厚み方向における深さがゲートトレンチ6と同じ深さになるように形成されるものに限られない。また、ショットキートレンチ10は、ドリフト層2の厚み方向に直交する方向におけるトレンチ幅が、ゲートトレンチ6と同じ幅になるように形成されるものに限られない。ゲートトレンチ6とショットキートレンチ10とは、ドリフト層2の厚み方向における深さが異なっていてもよいし、ドリフト層2の厚み方向に直交する方向におけるトレンチ幅が異なっていてもよい。これらのトレンチは、どちらのトレンチ幅が太くても細くてもよいし、どちらの深さが深くても浅くてもよく、各半導体装置の仕様によりそれぞれ異なる。
【0034】
ショットキートレンチ10内には、ショットキー電極12が設けられている。ショットキー電極12は、Ti(チタン)やMo(モリブデン)等の金属から形成される。ショットキー電極12は、ショットキートレンチ10の底部または側面において、ドリフト層2、ボディ領域3、およびソース領域4に接しており、これらに電気的に接続されている。
【0035】
ショットキー電極12は、ショットキートレンチ10の側面において、ドリフト層2とのショットキー接合を形成する。すなわち、ショットキー電極12は、ショットキートレンチ10の側面にドリフト層2とのショットキー界面22を形成する。これにより、ショットキートレンチ10の側面には、ショットキー電極12とドリフト層2との寄生ショットキーバリアダイオード(以下、単にSBDと称する)が形成される。
【0036】
MOS領域19において、ソース領域4およびボディコンタクト領域5の上には、図示しないオーミック電極が形成されている。オーミック電極は、Ni(ニッケル)やTi(チタン)等の金属と半導体層21とのシリサイドであり、ソース領域4およびボディコンタクト領域5と接して、これらとオーミックコンタクトを形成する。
【0037】
層間絶縁膜9、オーミック電極、およびショットキー電極12の上には、これらを覆うようにソース電極13が設けられている。ソース電極13は、主成分がAl(アルミニウム)である金属からなる電極である。MOS領域19において、ソース電極13は、オーミック電極とともにおもて面側の主電極として機能する。ソース電極13は、オーミック電極を介してソース領域4およびボディコンタクト領域5に電気的に接続されている。また、SBD領域20において、ソース電極13は、ショットキー電極12に接続されており、ショットキー電極12とともにSBDのアノード電極を構成する。
【0038】
基板1において、ソース電極13が設けられた面とは反対側の面には、Ni(ニッケル)金属からなるドレイン電極14が設けられている。ソース電極13は、基板1(半導体層21)のおもて面(第1主面)側に設けられており、ドレイン電極14は、基板1(半導体層21)のおもて面に対向する裏面(第2主面)側に設けられる。
【0039】
ゲートトレンチ6(ゲート絶縁膜7)の下方には、ゲートトレンチ6の延伸方向に沿ってp型の第1底部保護領域15が設けられている。第1底部保護領域15は、ゲートトレンチ6の底部に接しており、ゲートトレンチ6の底部全体を覆うように設けられている。また、ショットキートレンチ10(ショットキー電極12)の下方には、ショットキートレンチ10の延伸方向に沿ってp型の第2底部保護領域16が設けられている。第2底部保護領域16は、ショットキートレンチ10の底部に接しており、ショットキートレンチ10の底部全体を覆うように設けられている。
【0040】
ゲートトレンチ6の側方には、p型の第1接続領域17が設けられている。第1接続領域17は、ゲートトレンチ6の一の側面と接しており、かつボディ領域3と第1底部保護領域15とに接して設けられる。第1接続領域17は、後述するように、ゲートトレンチ6の延伸方向において第1の間隔で複数設けられ、第1底部保護領域15とボディ領域3とを電気的に接続する。第1接続領域17は、ドリフト層2の最表層からの深さが、第1底部保護領域15の底面と同じ深さまで設けられる。
【0041】
ショットキートレンチ10の側方には、p型の第2接続領域18が設けられている。第2接続領域18は、ショットキートレンチ10の一の側面と接しており、かつボディ領域3と第2底部保護領域16とに接して設けられる。第2接続領域18は、後述するように、ショットキートレンチ10の延伸方向において第1の間隔よりも小さい第2の間隔で複数設けられ、第2底部保護領域16とボディ領域3とを電気的に接続する。第2接続領域18は、ドリフト層2の最表層からの深さが、第2底部保護領域16の底面と同じ深さまで設けられる。
【0042】
なお、第1底部保護領域15は、ゲートトレンチ6の底部に接して設けられるものに限られず、ドリフト層2内においてゲートトレンチ6の底部よりも下方に離れて設けられていてもよい。同様に、第2底部保護領域16も、ショットキートレンチ10の底部に接して設けられるものに限られず、ドリフト層2内においてショットキートレンチ10の底部よりも下方に離れて設けられていてもよい。
【0043】
第1底部保護領域15は、ゲートトレンチ6の底部全体を覆うものに限られず、ゲートトレンチ6の底部の少なくとも一部を覆うように設けられていればよい。例えば、第1底部保護領域15は、ゲートトレンチ6の延伸方向(ストライプ形状のときは平面視における長手方向、格子形状のときはゲートトレンチ6ごとに方向が定義される)に沿って間隔をあけて周期的に配置されていてもよいし、延伸方向と直交する断面においてゲートトレンチ6の底部の半分程度を覆うように設けられていてもよい。または、第1底部保護領域15は、ゲートトレンチ6の幅方向にはみ出すように底部全体を覆うことによって、第1底部保護領域15の幅がゲートトレンチ6の幅よりも大きくなるように構成されていてもよい。
【0044】
同様に、第2底部保護領域16も、ショットキートレンチ10の底部全体を覆うものに限られず、ショットキートレンチ10の底部の少なくとも一部を覆うように設けられていればよい。例えば、第2底部保護領域16は、ショットキートレンチ10の延伸方向(ストライプ形状のときは平面視における長手方向、格子形状のときはショットキートレンチ10ごとに方向が定義される)に沿って間隔をあけて周期的に配置されていてもよいし、延伸方向と直交する断面においてショットキートレンチ10の底部の半分程度を覆うように設けられていてもよい。または、第2底部保護領域16は、ショットキートレンチ10の幅方向にはみ出すように底部全体を覆うことによって、第2底部保護領域16の幅がショットキートレンチ10の幅よりも大きくなるように構成されていてもよい。
【0045】
第1底部保護領域15は、ゲートトレンチ6の延伸方向に沿って設けられるものに限られず、ゲートトレンチ6の延伸方向と直交する方向に延伸して複数設けられることによって、延伸方向においてゲートトレンチ6の底部を部分的に周期的に覆っていてもよい。同様に、第2底部保護領域16も、ショットキートレンチ10の延伸方向に沿って設けられるものに限られず、ショットキートレンチ10の延伸方向と直交する方向に延伸して複数設けられることによって、延伸方向においてショットキートレンチ10の底部を部分的に周期的に覆っていてもよい。
【0046】
また、第1接続領域17は、ゲートトレンチ6の一の側面に接して設けられるものに限られず、ドリフト層2内においてゲートトレンチ6の側面から離れた位置に設けられてもよい。同様に、第2接続領域18も、ショットキートレンチ10の一の側面に接して設けられるものに限られず、ドリフト層2内においてショットキートレンチ10の側面から離れた位置に設けられてもよい。
【0047】
第1接続領域17は、ドリフト層2の最表層からの深さが、第1底部保護領域15の底面と同じ深さであるものに限られず、ボディ領域3と第1底部保護領域15とに接触してこれらを電気的に接続するように設けられていればよい。例えば、第1接続領域17は、ドリフト層2の最表層からの深さが、ゲートトレンチ6の底部よりも深く、かつ第1底部保護領域15の底面よりも浅くなるように設けられていてもよいし、第1底部保護領域15の上面付近まで設けられていてもよい。
【0048】
同様に、第2接続領域18も、ドリフト層2の最表層からの深さが、第2底部保護領域16の底面と同じ深さであるものに限られず、ボディ領域3と第2底部保護領域16とに接触してこれらを電気的に接続するように設けられていればよい。例えば、第2接続領域18は、ドリフト層2の最表層からの深さが、ショットキートレンチ10の底部よりも深く、かつ第2底部保護領域16の底面よりも浅くなるように設けられていてもよいし、第2底部保護領域16の上面付近まで設けられていてもよい。
【0049】
次に、実施の形態1の半導体装置101における各半導体領域の不純物濃度について説明する。ドリフト層2のn型の不純物濃度は1.0×1014〜1.0×1017cm−3であり、半導体装置の耐圧等に基づいて設定する。ボディ領域3のp型の不純物濃度は、1.0×1014〜1.0×1018cm−3とする。ソース領域4のn型の不純物濃度は1.0×1018〜1.0×1021cm−3とする。ボディコンタクト領域5のp型の不純物濃度は、1.0×1018〜1.0×1021cm−3とし、ソース電極13とのコンタクト抵抗を低減するため、ボディ領域3よりもp型の不純物濃度が高濃度となるように設定する。第1底部保護領域15、第2底部保護領域16、第1接続領域17、および第2接続領域18のp型の不純物濃度は、1.0×1014以上、1.0×1020cm−3以下とすることが好ましく、濃度プロファイルは均一でなくてもよい。
【0050】
図2は、半導体装置101における各半導体領域のレイアウトを模式的に示す平面模式図である。なお、図2のA−A’断面が図1に相当する。また、図2は、図1に示したボディ領域3と第1底部保護領域15との間におけるある深さでの横方向の断面を上から見た図に相当する。図2に示すとおり、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10は、平面視においてストライプ状に形成されている。また、平面視において、ゲートトレンチ6の延伸方向とショットキートレンチ10の延伸方向とは、同一の方向となるように形成されている。
【0051】
ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10は、その延伸方向が<11−20>軸方向と平行となるように形成されることが望ましい。これは、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10の側面が電流経路となるため、半導体層21が<11−20>軸方向に傾斜するオフ角θを有する場合において、各トレンチの向かい合う両側面がオフ角の影響により異なる結晶面となってしまい、両側面において特性に差が出ることを回避するためである。
【0052】
図2においては、2つのMOS領域19が1つのSBD領域20を挟んだ構造を示しているが、各領域の配置はこれに限られない。例えば、2つのMOS領域19が2つまたは3つ以上のSBD領域20を挟む構造でもよいし、MOS領域19のゲートトレンチ6が2本、SBD領域20のショットキートレンチ10が3本、MOS領域19のゲートトレンチ6が2本、SBD領域20のショットキートレンチ10が3本、のような配置が繰り返される構造であってもよく、またこれらの例示に何ら限定されるものではない。
【0053】
図2に示すように、MOS領域19では、第1接続領域17が、ゲートトレンチ6の延伸方向において、第1の間隔dp1をあけて複数個が周期的に形成されている。実施の形態1において、第1接続領域17は、ゲートトレンチ6の両側面に設けられている。
【0054】
SBD領域20では、第2接続領域18が、ショットキートレンチ10の延伸方向において、第1の間隔dp1よりも小さい第2の間隔dp2をあけて複数個が周期的に形成されている。実施の形態1において、第2接続領域18は、ショットキートレンチ10の両側面に設けられている。SBD領域20では、第2接続領域18同士の間であってドリフト層2に露出するショットキートレンチ10の側面に、上述したショットキー界面22が形成されている。
【0055】
なお、第1接続領域17は、ゲートトレンチ6の向かい合う両側面において、互いに異なる間隔で設けられていてもよい。また、第1接続領域17は、ゲートトレンチ6の延伸方向において一定の間隔で設けられなくてもよい。このように、ゲートトレンチ6の両側面またはゲートトレンチ6の延伸方向において配置間隔が異なる場合には、一番小さい間隔を第1の間隔dp1とする。
【0056】
また、第1接続領域17は、ゲートトレンチ6の向かい合う両側面のうち、いずれか一方の側面のみに形成されていてもよい。さらに、ゲートトレンチ6は、向かい合う両側面のうち、一方の側面が第1接続領域17と同様のp型の半導体領域により全体的に覆われており、他方の側面において、第1接続領域17が第1の間隔dp1をあけて周期的に形成されていてもよい。
【0057】
第2接続領域18も、ショットキートレンチ10の向かい合う両側面において、互いに異なる間隔で設けられていてもよい。また、第2接続領域18は、ショットキートレンチ10の延伸方向において一定の間隔で設けられなくてもよい。このように、ショットキートレンチ10の両側面またはショットキートレンチ10の延伸方向において配置間隔が異なる場合には、一番小さい間隔を第2の間隔dp2とする。
【0058】
また、第2接続領域18は、ショットキートレンチ10の向かい合う両側面のうち、いずれか一方の側面のみに形成されていてもよい。さらに、ショットキートレンチ10は、向かい合う両側面のうち、一方の側面が第2接続領域18と同様のp型の半導体領域により全体的に覆われており、他方の側面において、第2接続領域18が第2の間隔dp2をあけて周期的に形成されていてもよい。
【0059】
なお、第1接続領域17や第2接続領域18がトレンチの一方の側面にのみ設けられているような場合などでも、後述するのと同様の効果を得ることができる。
【0060】
<動作>
次に、実施の形態1に係る半導体装置101の動作について簡単に説明する。MOS領域19では、ゲート電極8に閾値電圧以上の電圧が印加されている場合、ボディ領域3において導電型が反転し、すなわち、n型のチャネルがゲートトレンチ6の側面に沿って形成される。そうすると、ソース電極13からドレイン電極14までの間に同一導電型(実施の形態1においてはn型)の電流経路が形成されるため、電流が流れることとなる。このようにゲート電極8に閾値電圧以上の電圧が印加された状態が、半導体装置101のオン状態となる。
【0061】
一方、ゲート電極8に閾値電圧以下の電圧が印加されている場合、ボディ領域3にはチャネルが形成されないため、オン状態の場合のような電流経路が形成されない。そのため、ドレイン電極14とソース電極13との間に電圧を印加したとしても、ドレイン電極14からソース電極13へと電流がほとんど流れない。このようにゲート電極8の電圧が閾値電圧以下の状態が、半導体装置101のオフ状態となる。
【0062】
そして、半導体装置101は、ゲート電極8に印加する電圧を制御することで、オン状態とオフ状態とが切り換わり動作する。このように、半導体装置101は、MOS領域19において、ゲート電極8、ゲート絶縁膜7、ドリフト層2、ボディ領域3、ソース領域4、ソース電極13およびドレイン電極14などから構成されるMOSFET構造を有する。
【0063】
一方、半導体装置101のオフ状態において、SBD領域20におけるSBDに順方向電圧が印加された場合、ショットキー電極12とドレイン電極14間にユニポーラ電流が流れる。さらにバイアスをかけるとボディ領域3や第1底部保護領域15等に形成された寄生pnダイオードにバイポーラ電流が流れ始める。この寄生pnダイオードがバイポーラ動作を始めるまでに得られる電流値が素子の最大ユニポーラ電流となる。
【0064】
<製造方法>
次に、実施の形態1に係る半導体装置101の製造方法について説明する。図3から図9は、実施の形態1における半導体装置101の製造方法の各工程を示す図である。図3において、まず、炭化珪素からなるn型の半導体層21が形成された基板1を用意する。より具体的には、n型の炭化珪素基板である基板1上にn型の半導体層21をエピタキシャル成長法によって形成すればよい。また、半導体層21のn型不純物濃度は、上述したドリフト層2のn型不純物濃度に対応するよう形成する。
【0065】
そして、半導体層21(ドリフト層2)内の上層部に、ボディ領域3をイオン注入により形成し、ボディ領域3(半導体層21またはドリフト層2)の上層部に、ソース領域4とボディコンタクト領域5とをイオン注入により選択的に形成する。イオン注入は、n型領域を形成する場合にはドナーとして例えばN(窒素)やP(リン)等のイオンを注入し、p型領域を形成する場合にはアクセプタとして例えばAl(アルミニウム)やB(ボロン)等のイオンを注入する。各領域における不純物濃度は、上述した値となるように形成する。また、ボディ領域3、ソース領域4、およびボディコンタクト領域5を形成する順序は前後してもよく、全てまたは一部の領域についてイオン注入に代えてエピタキシャル成長によって形成することとしてもよい。
【0066】
次に、図4において、第1のマスク51を用いて、反応性イオンエッチング(RIE)によって半導体層21の表面からソース領域4およびボディ領域3を貫通してドリフト層2へと達するゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10を形成する。このとき、ゲートトレンチ6の幅とショットキートレンチ10の幅はそれぞれ異なっていてもよい。また、複数のマスクを利用して、MOS領域19におけるゲートトレンチ6とSBD領域20におけるショットキートレンチ10とを個別のエッチング工程を用いて形成してもよい。この場合、ゲートトレンチ6の深さとショットキートレンチ10の深さはそれぞれ異なっていてもよい。そして、第1のマスク51等を用いて、半導体層21の表面に対して垂直方向にイオン注入を行う。ゲートトレンチ6の底部にp型のイオン注入を行うことで第1底部保護領域15を形成し、ショットキートレンチ10の底部にp型のイオン注入を行うことで第2底部保護領域16を形成する。
【0067】
あるいは、図5に示すように、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16は、基板1上にn型の第1ドリフト層25をエピタキシャル成長により形成した後、あらかじめ第1ドリフト層25の上層部にイオン注入により選択的に形成、またはエピタキシャル成長によって埋め込み形成することとしてもよい。この場合、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16の形成後、第1ドリフト層25、第1底部保護領域15、および第2底部保護領域16の上に、n型の第2ドリフト層26をエピタキシャル成長により形成した後に、各半導体領域やトレンチを形成することとなる。例えば、ボディ領域3は、第2ドリフト層26の上層部に形成される。なお、第1ドリフト層25と第2ドリフト層26とを合わせたものが上記のドリフト層2に相当する。
【0068】
第1底部保護領域15および第2底部保護領域16は、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10の側面よりもドリフト層2側(ドリフト層2の厚み方向に直交する方向)に張り出していてもよい。また、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16は、これらを形成するための厚み分だけゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10を余分に深く形成した後、トレンチ内にエピタキシャル成長によりそれぞれ形成してもよい。
【0069】
続いて、図6において、第2のマスク52を用いた選択的なイオン注入を、ある一定の傾斜角を持たせながら行うことで、第1接続領域17および第2接続領域18を形成する。すなわち、第2のマスク52を用いて、ゲートトレンチ6の側面に対して斜め方向にイオン注入を行い、ボディ領域3と第1底部保護領域15とを接続するように第2導電型の第1接続領域17を複数形成する。また、第2のマスク52を用いて、ショットキートレンチ10の側面に対して斜め方向にイオン注入を行い、ボディ領域3と第2底部保護領域16とを接続するように第2導電型の第2接続領域18を複数形成する。
【0070】
第2のマスク52は、MOS領域19において、ゲートトレンチ6の延伸方向において第1の間隔dp1をあけて周期的に開口されており、SBD領域20において、ショットキートレンチ10の延伸方向において第1の間隔dp1よりも小さい第2の間隔dp2をあけて周期的に開口されている。このようなレイアウトを有する第2のマスク52を用いることで、第1接続領域17および第2接続領域18を同時に形成できる。なお、第1接続領域17の形成時と第2接続領域18の形成時とで、異なるマスクを使用することとしてもよい。
【0071】
その後、第2のマスク52を除去し、半導体層21上に全面的にゲート絶縁膜7を形成することで、ゲートトレンチ6内の底部および側面にゲート絶縁膜7を形成する。
【0072】
次に、図7に示すように、第3のマスク53を形成する。第3のマスク53は、SBD領域20上を覆うとともに、MOS領域19において少なくともゲートトレンチ6の上方に開口を有する。当該第3のマスク53を用いて、ゲート絶縁膜7を介してゲートトレンチ6を埋め込むように、例えばポリシリコン(Poly−Si)を充填して、ゲート電極8を形成する。また、ゲート電極8を覆うように、層間絶縁膜9を形成する。
【0073】
そして、レジストマスク等を用いた選択的なエッチング等により第3のマスク53を除去した後、ゲートトレンチ6を覆う層間絶縁膜9上に第4のマスク54を形成する。当該第4のマスク54を用いて、層間絶縁膜9とともにゲート絶縁膜7もパターニングして、図8に示すように、半導体層21の表面を露出させる。また、ソース領域4およびボディコンタクト領域5の表面には、Ni(ニッケル)等の金属からなる図示しないオーミック電極を形成する。
【0074】
その後、半導体層21上にTi(チタン)やMo(モリブデン)等の金属を堆積することで、SBD領域20において、ショットキートレンチ10内にショットキー電極12を形成する。SBD領域20およびMOS領域19において、ショットキー電極12、オーミック電極、および層間絶縁膜9の上に、これらを覆うようにAl(アルミニウム)等の金属を堆積することで、ソース電極13を形成する。そして、基板1の裏面を覆うようにドレイン電極14を形成する。以上の工程により、図1に示す半導体装置101を作製できる。
【0075】
なお、ゲート絶縁膜7と層間絶縁膜9とは、典型的にはともに酸化膜として形成される。そのため、図8図9や他の図において、ゲート絶縁膜7のうちゲートトレンチ6の外へ張り出している(半導体層21の表面に乗り出している)部分については、層間絶縁膜9と同一層のようにして記載している。
【0076】
<特徴>
次に、実施の形態1に係る半導体装置101の特徴等を説明する。実施の形態1に係る半導体装置101は、ユニポーラ型の半導体装置であるMOSFETに、ユニポーラ型の還流ダイオードとしてSBDを逆並列に内蔵させた電力用のスイッチング素子である。そのため、個別のダイオードを外付けして使用する場合に比べてコストを低減できる。
【0077】
また、半導体装置101は、炭化珪素(SiC)を基板1や半導体層21の母材として用いたMOSFETであるため、SBDを内蔵することにより、寄生pnダイオードによるバイポーラ動作を抑制できる。これは、炭化珪素を用いた半導体装置においては、寄生pnダイオード動作によるキャリアの再結合エネルギーに起因する結晶欠陥の拡張により、素子の信頼性が損なわれることがあるからである。
【0078】
また、半導体装置101は、素子に形成されたゲートトレンチ6内にゲート電極8を有する、いわゆるトレンチゲート型のMOSFETである。そのため、素子表面にゲート電極8を有するプレーナ型MOSFETに比べ、ゲートトレンチ6の側壁部分にチャネルを形成できる分、チャネル幅密度を向上でき、オン抵抗を低減できる。
【0079】
さらに、半導体装置101は、トレンチゲート型のMOSFETであり、かつ、SBD領域20におけるショットキートレンチ10内にショットキー電極12を埋め込み、ショットキートレンチ10の側面にショットキー界面22を形成した構造である。そのため、ゲート電極8とショットキー電極12の両者がそれぞれゲートトレンチ6とショットキートレンチ10の内部に形成されるので、トレンチ間距離、すなわち各セルのセルピッチを小さく保ち、高い電流密度を得ることができる。
【0080】
一方、トレンチ型のデバイス構造では、半導体装置のオフ状態において高い電圧が印加された際に、トレンチ底部において電界集中が発生することが問題となる。特に、トレンチ型の炭化珪素半導体装置では、SiCが高い絶縁破壊強度を有するため、MOS領域については、ドリフト層内でのアバランシェ破壊よりも先に、トレンチ底部の電界集中に起因するゲート絶縁膜破壊が生じやすい問題があり、SBD領域についてはトレンチ側面のショットキー界面が高電界となることによる逆方向リーク電流が増大しやすい問題がある。
【0081】
これに対し、実施の形態1に係る半導体装置101は、MOS領域19において、ゲートトレンチ6の側方に第1接続領域17を形成している。第1接続領域17の周辺には、空乏層が形成されるため、当該部分の電界強度が低下する。そのため、MOS領域19において、ゲートトレンチ6底部の電界集中に起因するゲート絶縁膜7の絶縁破壊の発生を抑制できる。
【0082】
また、MOS領域19において、第1接続領域17は、第1底部保護領域15とソース電極13とを電気的に接続するため、第1底部保護領域15から広がる空乏層内のキャリアが流れやすくし、スイッチング特性を改善する効果を有する。
【0083】
一方で、第1接続領域17は、ゲートトレンチ6の側方に形成されるため、第1接続領域17が形成された部分にはチャネルが形成されない。また、第1接続領域17の周辺には空乏層の形成と同時にJFET抵抗が発生するため、第1接続領域17の第1の間隔dp1を小さくすると、第1接続領域17間の領域のJFET抵抗が増大する。これによるオン抵抗の増大を防ぐため、第1接続領域17を形成する総面積は、第1底部保護領域15とソース電極13との電気的な接続を保てる最小限とするのが望ましい。また、第1接続領域17の第1の間隔dp1は、上記のスイッチング特性を改善する効果が得られる最大の値とすることが望ましい。なお、第1接続領域17を流れる電流値は第1接続領域17の面積に比例するので、その他のパラメータ等も踏まえて電気的な接続を保てるような第1接続領域17の面積を計算する。
【0084】
SBD領域20においては、ショットキートレンチ10の側方に第2接続領域18を形成することで、第2接続領域18の周辺に広がる空乏層によりショットキー界面22の電界を低減し、リーク電流の増大を抑制できる。また、第2接続領域18の第2の間隔dp2を小さくするほど、電界緩和の効果は高くなる。
【0085】
一方で、第2接続領域18は、ショットキートレンチ10の側方に形成されるため、第2接続領域18が形成された部分にはショットキー界面22が形成されない。そのため、第2接続領域18間の領域は、必要なユニポーラ電流値を得られる面積である必要があるが、これはリーク電流とのトレードオフとなる。よって、第2接続領域18の間隔dp2は、十分なユニポーラ電流を得られる最小の値とすることが望ましい。なお、半導体装置ごとにSBDに流したい電流値が異なるので、必要なユニポーラ電流値はその装置の仕様により定まる。
【0086】
以上より、MOS領域19におけるゲートトレンチ6の側方の第1接続領域17間の第1の間隔dp1を広くすることで、第1接続領域17間のJFET抵抗を低減でき、オン抵抗を低減できるとともに、SBD領域20におけるショットキートレンチ10の側方の第2接続領域18間の第2の間隔dp2を狭くすることで、第2接続領域18間のショットキー界面22の電界強度を低減できる。すなわち、第2接続領域18間の第2の間隔dp2を第1接続領域17間の第1の間隔dp1よりも小さくすることで、デバイスオン時のオン抵抗を低減しつつ、デバイスオフ時におけるショットキー界面22を介したリーク電流増大を抑制することができる。このように、MOS領域19とSBD領域20とで、第1接続領域17と第2接続領域18のレイアウトを変えることで、MOSFETのオン抵抗とSBDのリーク電流とのトレードオフを改善することができる。
【0087】
実施の形態1の半導体装置101は、ドリフト層2が、<11−20>軸方向に0°より大きいオフ角が設けられた主面を有し、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10が、<11−20>軸方向に平行に設けられているため、トレンチ側面による特性のばらつきを低減し、半導体装置101の動作を安定させることができる。
【0088】
<変形例>
次に、実施の形態1に係る半導体装置101の変形例を説明する。図10は、変形例1の半導体装置102における各半導体領域のレイアウトを模式的に示す平面模式図である。なお、図10は、図1に示したボディ領域3と第1底部保護領域15との間におけるある深さでの横方向の断面を上から見た図に相当する。
【0089】
変形例1に係る半導体装置102は、図10に示すように、MOS領域19において第1接続領域17が形成され、SBD領域20において第2接続領域18aが形成されている。第2接続領域18aは、その幅wp2が第1接続領域17の幅wp1よりも大きくなるように形成されている。すなわち、ショットキートレンチ10の延伸方向における第2接続領域18aのそれぞれの長さは、ゲートトレンチ6の延伸方向における第1接続領域17のそれぞれの長さよりも長い。これにより、第1接続領域17の形成周期と第2接続領域18aの形成周期が同一のレイアウトにおいて、第2接続領域18aの第2の間隔dp2を第1接続領域17の第1の間隔dp1よりも小さくすることができる。その他の構成等は、図1等に示した半導体装置101と同様である。
【0090】
変形例1に係る半導体装置102においても、実施の形態1において説明したのと同様の効果を得ることができる。また、変形例1の半導体装置102によれば、第1接続領域17と第2接続領域18aの形成周期が同一の場合でも、第2接続領域18aの幅wp2が第1接続領域17の幅wp1よりも大きくなるように形成することで、第1接続領域17の第1の間隔dp1を第2接続領域18aの第2の間隔dp2よりも小さくでき、MOSFETのオン抵抗とSBDのリーク電流とのトレードオフを改善できる。
【0091】
図11は、変形例2の半導体装置103におけるセル領域の一部の断面を示す断面模式図である。変形例2に係る半導体装置103は、図11に示すように、MOS領域19において第1接続領域17が形成され、SBD領域20において第2接続領域18bが形成されている。第2接続領域18bは、p型の不純物濃度が第1接続領域17よりも高くなるように形成されている。その他の構成等は、図1等に示した半導体装置101と同様である。
【0092】
変形例2に係る半導体装置103においても、実施の形態1において説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0093】
なお、実施の形態1の半導体装置101において、SBD領域20におけるショットキートレンチ10の幅がMOS領域19におけるゲートトレンチ6の幅と等しいあるいはそれ以上である場合には、第2底部保護領域16の底部付近の等電位線が第1底部保護領域15の底部付近の等電位線と等しいあるいはより緩やかになるため、第2底部保護領域16にかかる電界強度は第1底部保護領域15にかかる電界強度と同等あるいはそれ以下となる。また、SBD領域20におけるショットキートレンチ10の深さがMOS領域19におけるゲートトレンチ6の深さと等しいあるいはそれよりも浅い場合にも、第2底部保護領域16より下方にあるドリフト層2の長さが第1底部保護領域15より下方にあるドリフト層2の長さ以上となるため、第2底部保護領域16にかかる電界強度は第1底部保護領域15にかかる電界強度と同等あるいはそれ以下となる。
【0094】
さらに、上記の通り、半導体装置101は、第2接続領域18間の第2の間隔dp2が第1接続領域17間の第1の間隔dp1よりも小さいため、ショットキー界面22の電界強度が低減されると同時に、第2接続領域18端部のpn接合にかかる電界も緩和される。これにより、第2接続領域18端部の最大電界強度は、第1接続領域17端部の最大電界強度よりも低くなる。そこで、第2接続領域18端部の最大電界強度が低い分、第2接続領域18の不純物濃度を高くすることが可能となる。
【0095】
変形例2に係る半導体装置103は、第2接続領域18bの端部にかかる電界強度の増大による素子の耐圧悪化を回避しつつ、第2接続領域18bの不純物濃度を高くすることで第2接続領域18bの周辺の電界緩和効果を高め、リーク電流を低減できる。
【0096】
なお、上記の実施の形態1や変形例1、変形例2において、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10は、平面視においてストライプ状に形成されるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、ゲートトレンチ6やショットキートレンチ10の配置が格子形状であってもよい。この場合、トレンチが有する4つの側面のうち特定の側面について、その側面を大きな面積にするとともに第1接続領域17または第2接続領域18(第2接続領域18a、第2接続領域18b)を第1の間隔dp1または第2の間隔dp2をあけて複数形成することで、上述した種々の効果を得ることができる。
【0097】
実施の形態2.
図12は、実施の形態2の半導体装置201におけるセル領域の一部の断面を示す断面模式図である。実施の形態2の半導体装置201は、実施の形態1の半導体装置101と異なり、MOS領域19とSBD領域20において第1電界緩和領域31および第2電界緩和領域32がそれぞれ形成されている。なお、実施の形態2の半導体装置201は、実施の形態1の半導体装置101と共通している部分がほとんどであるため、以下においては、半導体装置101との相違点を中心に説明することとし、半導体装置101と共通する構成等については適宜説明を省略する。
【0098】
第1電界緩和領域31は、第1接続領域17の下方に設けられ、第1接続領域17よりもp型の不純物濃度が低い、p型の半導体領域である。第1電界緩和領域31は、図12に示すように、第1接続領域17の下方および側方に設けられている。より詳しくは、第1電界緩和領域31は、第1接続領域17の下部および側面に接して設けられ、第1接続領域17の下部および側面を覆うように形成されている。また、第1電界緩和領域31は、第1接続領域17と第1底部保護領域15とに接するように形成されている。
【0099】
第2電界緩和領域32は、第2接続領域18の下方に設けられ、第2接続領域18よりもp型の不純物濃度が低い、p型の半導体領域である。第2電界緩和領域32は、図12に示すように、第2接続領域18の下方および側方に設けられている。より詳しくは、第2電界緩和領域32は、第2接続領域18の下部および側面に接して設けられ、第2接続領域18の下部および側面を覆うように形成されている。また、第2電界緩和領域32は、第2接続領域18と第2底部保護領域16とに接するように形成されている。その他の構成は、実施の形態1の半導体装置101と同様である。
【0100】
なお、図12においては、MOS領域19内の第1電界緩和領域31とSBD領域20内の第2電界緩和領域32とが互いに離れている場合を図示しているが、これらは互いに接していてもよい。
【0101】
また、第1電界緩和領域31は、第1接続領域17と第1底部保護領域15とに接して、第1接続領域17の下部および側面を覆うように形成されるものに限られず、ドリフト層2内において第1接続領域17の下部よりも下方に離れて設けられていてもよく、ドリフト層2内において第1接続領域17や第1底部保護領域15の側面から離れた位置に設けられていてもよい。
【0102】
同様に、第2電界緩和領域32も、第2接続領域18と第2底部保護領域16とに接して、第2接続領域18の下部および側面を覆うように形成されるものに限られず、ドリフト層2内において第2接続領域18の下部よりも下方に離れて設けられていてもよく、ドリフト層2内において第2接続領域18や第2底部保護領域16の側面から離れた位置に設けられていてもよい。
【0103】
次に、半導体装置201の製造方法について説明する。図13は、実施の形態2における半導体装置201の製造方法の一部の工程を示す図である。まず、実施の形態1で説明した半導体装置101の製造方法と同様にして、図4に示すようにゲートトレンチ6、ショットキートレンチ10、第1底部保護領域15、および第2底部保護領域16を形成した後、図13に示すように、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10の内壁からAl(アルミニウム)やB(ボロン)等の傾斜イオン注入により第1電界緩和領域31および第2電界緩和領域32を形成する。
【0104】
その後、同じくゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10の内壁から、第1電界緩和領域31および第2電界緩和領域32の形成時よりも低い注入エネルギーによる傾斜イオン注入を行い、第1接続領域17および第2接続領域18を形成する。これにより、第1接続領域17とドリフト層2の間と、第2接続領域18とドリフト層2の間に第1電界緩和領域31および第2電界緩和領域32をそれぞれ形成することができる。その他の部分については、実施の形態1の半導体装置101と同様にして製造することができる。
【0105】
実施の形態2の半導体装置201においても、実施の形態1において説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0106】
なお、半導体装置101においては、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10の側方に形成された第1接続領域17および第2接続領域18の端部に電界が集中しやすい。特に、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10の延伸方向と垂直な方向において対面する第1接続領域17と第2接続領域18との距離や、ゲートトレンチ6の延伸方向における第1接続領域17間の第1の間隔dp1、およびショットキートレンチ10の延伸方向における第2接続領域18間の第2の間隔dp2が大きくなるほど、第1接続領域17の端部や第2接続領域18の端部がより高電界となり、素子の耐圧が悪化する可能性がある。
【0107】
そこで、実施の形態2の半導体装置201は、第1接続領域17とドリフト層2との間に、第1接続領域17よりもp型の不純物濃度が低い第1電界緩和領域31を形成している。また、第2接続領域18とドリフト層2との間に、第2接続領域18よりもp型の不純物濃度が低い第2電界緩和領域32を形成している。これにより、第1接続領域17の端部や第2接続領域18の端部における電界強度が低減され、素子の耐圧を向上できる。特に、第1接続領域17の下方に第1電界緩和領域31を形成し、第2接続領域18の下方に第2電界緩和領域32を形成しているため、第1接続領域17の下部や第2接続領域18の下部における電界強度をより低減できる。
【0108】
次に、実施の形態2に係る半導体装置201の変形例を説明する。図14は、変形例1の半導体装置202におけるセル領域の一部の断面を示す断面模式図である。変形例1に係る半導体装置202は、図14に示すように、第1電界緩和領域31aが、第1接続領域17の側方に設けられておらず、第1接続領域17の下方に設けられている。また、図14に示すように、第2電界緩和領域32aが、第2接続領域18の側方に設けられておらず、第2接続領域18の下方に設けられている。より詳しくは、第1電界緩和領域31aは、第1接続領域17の下部と第1底部保護領域15の側面とに接して設けられ、第1接続領域17の下部を覆うように形成されている。また、第2電界緩和領域32aは、第2接続領域18の下部と第2底部保護領域16の側面とに接して設けられ、第2接続領域18の下部を覆うように形成されている。その他の構成は、図12等に示した半導体装置201と同様である。
【0109】
なお、第1電界緩和領域31aは、第1接続領域17と第1底部保護領域15とに接して、第1接続領域17の下部を覆うように形成されるものに限られず、ドリフト層2内において第1接続領域17の下部よりも下方に離れて設けられていてもよく、ドリフト層2内において第1底部保護領域15の側面から離れた位置に設けられていてもよい。
【0110】
同様に、第2電界緩和領域32aも、第2接続領域18と第2底部保護領域16とに接して、第2接続領域18の下部を覆うように形成されるものに限られず、ドリフト層2内において第2接続領域18の下部よりも下方に離れて設けられていてもよく、ドリフト層2内において第2底部保護領域16の側面から離れた位置に設けられていてもよい。
【0111】
次に、変形例1に係る半導体装置202の製造方法について説明する。図15から図17は、変形例1に係る半導体装置202の製造方法の一部の工程を示す図である。まず、実施の形態1で説明した半導体装置101の製造方法と同様にして、図3に示すようにボディ領域3、ソース領域4、およびボディコンタクト領域5を形成した後、図15に示すように、後工程で形成されるゲートトレンチ6やショットキートレンチ10よりも広い開口を持つ第5のマスク55を半導体層21上に形成する。そして、半導体層21の表面に対して垂直方向にイオン注入を行い、第1電界緩和領域31aおよび第2電界緩和領域32aを形成する。
【0112】
続いて、図16に示すように、半導体層21の表面に対して垂直方向に、第1電界緩和領域31aおよび第2電界緩和領域32aの形成時よりも低い注入エネルギーによるイオン注入を行い、第1電界緩和領域31aの上部に第1接続領域17を形成し、第2電界緩和領域32aの上部に第2接続領域18を形成する。
【0113】
第5のマスク55の除去後、図17に示すように、第5のマスク55(第1接続領域17および第2接続領域18)よりも狭い開口を持つ第1のマスク51を半導体層21上に形成する。第1のマスク51の開口は、第1接続領域17および第2接続領域18上に位置するように形成する。そして、第1のマスク51を用いて、反応性イオンエッチング(RIE)によって半導体層21の表面からソース領域4およびボディ領域3を貫通してドリフト層2へと達するゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10を形成する。このとき、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10は、図17に示すように、トレンチ底部が第1接続領域17および第2接続領域18の下部よりも浅くなるように形成する。さらに、第1のマスク51を用いて、半導体層21の表面に対して垂直方向にイオン注入を行い、ゲートトレンチ6の底部に第1底部保護領域15を形成し、ショットキートレンチ10の底部に第2底部保護領域16を形成する。
【0114】
このようにすることで、第1接続領域17の下部に第1電界緩和領域31aを、第2接続領域18の下部に第2電界緩和領域32aを、それぞれ形成することができる。その他の部分については、実施の形態1の半導体装置101と同様にして製造することができる。
【0115】
変形例1に係る半導体装置202においても、実施の形態1や実施の形態2において説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0116】
図18は、変形例2の半導体装置203におけるセル領域の一部の断面を示す断面模式図である。変形例2に係る半導体装置203は、図18に示すように、第1電界緩和領域31bが、第1底部保護領域15の下方にも設けられている。また、図18に示すように、第2電界緩和領域32bが、第2底部保護領域16の下方にも設けられている。より詳しくは、第1電界緩和領域31bは、ゲートトレンチ6の下方において、ゲートトレンチ6の向かい合う両側面の一方の側面から他方の側面に亘って設けられ、第1接続領域17の下部と第1底部保護領域15の下部とに接して、第1接続領域17の下部と第1底部保護領域15の下部とを覆うように形成されている。また、第2電界緩和領域32bは、ショットキートレンチ10の下方において、ショットキートレンチ10の向かい合う両側面の一方の側面から他方の側面に亘って設けられ、第2接続領域18の下部と第2底部保護領域16の下部とに接して、第2接続領域18の下部と第2底部保護領域16の下部とを覆うように形成されている。その他の構成は、図12等に示した半導体装置201と同様である。
【0117】
なお、第1電界緩和領域31bは、第1接続領域17と第1底部保護領域15とに接して、第1接続領域17の下部と第1底部保護領域15の下部とを覆うように形成されるものに限られず、ドリフト層2内において第1接続領域17の下部や第1底部保護領域15の下部よりも下方に離れて設けられていてもよい。
【0118】
同様に、第2電界緩和領域32bも、第2接続領域18と第2底部保護領域16とに接して、第2接続領域18の下部と第2底部保護領域16の下部とを覆うように形成されるものに限られず、ドリフト層2内において第2接続領域18の下部や第2底部保護領域16の下部よりも下方に離れて設けられていてもよい。
【0119】
次に、変形例2に係る半導体装置203の製造方法について説明する。図19および図20は、変形例2に係る半導体装置203の製造方法の一部の工程を示す図である。半導体装置203において、第1電界緩和領域31bおよび第2電界緩和領域32bは、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16を形成する工程よりも前に、実施の形態1の図5に示した製造方法と同様にして形成することができる。すなわち、第1電界緩和領域31bおよび第2電界緩和領域32bは、図19に示すように、基板1上にn型の第1ドリフト層25をエピタキシャル成長により形成した後、あらかじめ第1ドリフト層25の上層部にイオン注入により選択的に形成、またはエピタキシャル成長によって埋め込み形成することができる。
【0120】
続いて、第1ドリフト層25、第1電界緩和領域31bおよび第2電界緩和領域32bの上に、n型の第2ドリフト層26をエピタキシャル成長により形成した後に、実施の形態1の図3に示した製造方法と同様にして、ボディ領域3、ソース領域4、およびボディコンタクト領域5を形成する。
【0121】
次に、図20に示すように、第1電界緩和領域31bおよび第2電界緩和領域32bよりも狭い開口を持つ第1のマスク51を半導体層21上に形成する。第1のマスク51の開口は、第1電界緩和領域31bおよび第2電界緩和領域32b上に位置するように形成する。そして、第1のマスク51を用いて、反応性イオンエッチング(RIE)によって半導体層21の表面からソース領域4およびボディ領域3を貫通してドリフト層2へと達するゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10を形成する。このとき、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10は、図20に示すように、トレンチ底部が第1電界緩和領域31bおよび第2電界緩和領域32bの上部よりも浅くなるように形成する。さらに、第1のマスク51を用いて、半導体層21の表面に対して垂直方向にイオン注入を行い、ゲートトレンチ6の底部に第1底部保護領域15を形成し、ショットキートレンチ10の底部に第2底部保護領域16を形成する。
【0122】
このようにすることで、第1接続領域17および第1底部保護領域15の下部を覆うように第1電界緩和領域31bを、第2接続領域18および第2底部保護領域16の下部を覆うように第2電界緩和領域32bを、それぞれ形成することができる。その他の部分については、実施の形態1の半導体装置101と同様にして製造することができる。
【0123】
なお、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16についても、あらかじめ第1ドリフト層25の上層部に形成することとしてもよい。この場合、図19において、第1電界緩和領域31bおよび第2電界緩和領域32bをイオン注入により選択的に形成、またはエピタキシャル成長によって埋め込み形成した後、図5において説明した製造方法と同様にして第1底部保護領域15および第2底部保護領域16を形成する。このとき、第1底部保護領域15は第1電界緩和領域31bの上層部に、第2底部保護領域16は第2電界緩和領域32bの上層部に、それぞれ位置するように形成する。続いて、第1ドリフト層25、第1底部保護領域15、第2底部保護領域16、第1電界緩和領域31b、および第2電界緩和領域32bの上に、n型の第2ドリフト層26をエピタキシャル成長により形成し、その後は上記で説明したのと同様の製造方法により、各半導体領域やトレンチを形成することができる。
【0124】
変形例2に係る半導体装置203においても、実施の形態1や実施の形態2において説明したのと同様の効果を得ることができる。さらに、半導体装置203は、第1接続領域17の下方や第2接続領域18の下方だけでなく、第1底部保護領域15の下方や第2底部保護領域16の下方にも第1電界緩和領域31bおよび第2電界緩和領域32bを形成しているため、第1底部保護領域15の下部や第2底部保護領域16の下部における電界強度をより低減できる。
【0125】
実施の形態3.
図21は、実施の形態3の半導体装置301におけるセル領域の一部の断面を示す断面模式図である。実施の形態3の半導体装置301は、実施の形態1の半導体装置101や実施の形態2の半導体装置201と異なり、MOS領域19とSBD領域20において第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34がそれぞれ形成されている。なお、実施の形態3の半導体装置301は、実施の形態1の半導体装置101と共通している部分がほとんどであるため、以下においては、半導体装置101との相違点を中心に説明することとし、半導体装置101と共通する構成等については適宜説明を省略する。
【0126】
第1低抵抗領域33は、後述するように、ゲートトレンチ6の延伸方向において第1接続領域17の間に設けられ、n型の不純物濃度がドリフト層2よりも高い、n型の半導体領域である。第1低抵抗領域33は、図21に示すように、ゲートトレンチ6の側方に設けられている。より詳しくは、第1低抵抗領域33は、ゲートトレンチ6の側面に接するように形成されている。また、第1低抵抗領域33は、ボディ領域3および第1底部保護領域15に接するように形成されている。
【0127】
第2低抵抗領域34は、後述するように、ショットキートレンチ10の延伸方向において第2接続領域18の間に設けられ、n型の不純物濃度がドリフト層2よりも高い、n型の半導体領域である。第2低抵抗領域34は、図21に示すように、ショットキートレンチ10の側方に設けられている。より詳しくは、第2低抵抗領域34は、ショットキートレンチ10の側面に接するように形成されている。また、第2低抵抗領域34は、ボディ領域3および第2底部保護領域16に接するように形成されている。
【0128】
図22は、実施の形態3の半導体装置301における各半導体領域のレイアウトを模式的に示す平面模式図である。なお、図22は、図21に示したボディ領域3と第1底部保護領域15との間におけるある深さでの横方向の断面を上から見た図に相当する。
【0129】
第1低抵抗領域33は、図22に示すように、ゲートトレンチ6の延伸方向において、第1接続領域17の間に設けられている。第1低抵抗領域33は、ゲートトレンチ6の延伸方向において、隣り合う第1接続領域17の間の領域を全て満たすように形成される。また、第1低抵抗領域33は、複数設けられた第1接続領域17のそれぞれに接するように形成されている。
【0130】
第2低抵抗領域34は、図22に示すように、ショットキートレンチ10の延伸方向において、第2接続領域18の間に設けられている。第2低抵抗領域34は、ショットキートレンチ10の延伸方向において、隣り合う第2接続領域18の間の領域を全て満たすように形成される。また、第2低抵抗領域34は、複数設けられた第2接続領域18のそれぞれに接するように形成されている。その他の構成は、実施の形態1の半導体装置101と同様である。
【0131】
なお、図21および図22においては、MOS領域19内の第1低抵抗領域33とSBD領域20内の第2低抵抗領域34とが互いに離れている場合を図示しているが、これらは互いに接していてもよい。
【0132】
また、第1低抵抗領域33は、ゲートトレンチ6の向かい合う両側面にそれぞれ設けられるものに限られず、いずれか一方の側面のみに形成されていてもよい。また、第1低抵抗領域33は、ゲートトレンチ6の延伸方向において隣り合う第1接続領域17間における全ての領域に形成されなくてもよく、一部の領域のみなど部分的に形成されていてもよい。
【0133】
同様に、第2低抵抗領域34も、ショットキートレンチ10の向かい合う両側面にそれぞれ設けられるものに限られず、いずれか一方の側面のみに形成されていてもよい。また、第2低抵抗領域34は、ショットキートレンチ10の延伸方向において隣り合う第2接続領域18間における全ての領域に形成されなくてもよく、一部の領域のみなど部分的に形成されていてもよい。
【0134】
第1低抵抗領域33は、ゲートトレンチ6の側面に接して設けられるものに限られず、ドリフト層2内においてゲートトレンチ6の側面から離れた位置に設けられていてもよい。同様に、第2低抵抗領域34も、ショットキートレンチ10の側面に接して設けられるものに限られず、ドリフト層2内においてショットキートレンチ10の側面から離れた位置に設けられていてもよい。
【0135】
第1低抵抗領域33は、ボディ領域3、第1接続領域17、および第1底部保護領域15に接して設けられるものに限られず、ドリフト層2内においてこれらの領域から離れた位置に設けられていてもよい。同様に、第2低抵抗領域34も、ボディ領域3、第2接続領域18、および第2底部保護領域16に接して設けられるものに限られず、ドリフト層2内においてこれらの領域から離れた位置に設けられていてもよい。
【0136】
次に、半導体装置301の製造方法について説明する。まず、実施の形態1で説明した半導体装置101の製造方法と同様にして、図4に示すようにゲートトレンチ6、ショットキートレンチ10、第1底部保護領域15、および第2底部保護領域16を形成した後、第1のマスク51を形成したまま、もしくは第1のマスク51を除去してから、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10の内壁からN(窒素)やP(リン)等の傾斜イオン注入により第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34を形成する。ここで、第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34は、これらの領域におけるn型の不純物濃度がボディ領域3のp型の不純物濃度よりも低くなるように形成する。このようにすることで、ボディ領域3の導電型がn型に反転されないようにすることができる。
【0137】
その後、図6に示した製造方法と同様にして、第1接続領域17および第2接続領域18を形成する。第1接続領域17および第2接続領域18は、これらの領域におけるp型の不純物濃度が第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34のn型の不純物濃度よりも高くなるように形成する。このようにすることで、元々第1低抵抗領域33や第2低抵抗領域34であった領域の導電型をp型に反転させて、第1接続領域17および第2接続領域18を形成することができる。なお、第1接続領域17および第2接続領域18は、通常ボディ領域3よりもp型の不純物濃度が高くなるように設定されるため、元々ボディ領域3であった領域において第1接続領域17および第2接続領域18が形成されることになる。
【0138】
このようにすることで、第1接続領域17の間においてゲートトレンチ6の側面を覆うように第1低抵抗領域33を、第2接続領域18の間においてショットキートレンチ10の側面を覆うように第2低抵抗領域34を、それぞれ形成することができる。その他の部分については、実施の形態1の半導体装置101と同様にして製造することができる。
【0139】
なお、第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34は、図15および図16に示した製造方法と同様にして形成してもよい。図23および図24は、実施の形態3における半導体装置301の製造方法の一部の工程を示す図である。まず、実施の形態1で説明した半導体装置101の製造方法と同様にして、図3に示すようにボディ領域3、ソース領域4、およびボディコンタクト領域5を形成した後、図23に示すように、後工程で形成されるゲートトレンチ6やショットキートレンチ10よりも広い開口を持つ第5のマスク55を半導体層21上に形成する。そして、半導体層21の表面に対して垂直方向にイオン注入を行い、第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34を形成する。
【0140】
第5のマスク55の除去後、図24に示すように、第5のマスク55(第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34)よりも狭い開口を持つ第1のマスク51を半導体層21上に形成する。第1のマスク51の開口は、第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34上に位置するように形成する。そして、第1のマスク51を用いて、反応性イオンエッチング(RIE)によって半導体層21の表面からソース領域4およびボディ領域3を貫通してドリフト層2へと達するゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10を形成する。このとき、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10は、図24に示すように、トレンチ底部が第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34の下部よりも浅くなるように形成する。さらに、第1のマスク51を用いて、半導体層21の表面に対して垂直方向にイオン注入を行い、ゲートトレンチ6の底部に第1底部保護領域15を形成し、ショットキートレンチ10の底部に第2底部保護領域16を形成する。
【0141】
その後、図6に示した製造方法と同様にして、第1接続領域17および第2接続領域18を形成する。その他の部分については、実施の形態1の半導体装置101と同様にして製造することができる。
【0142】
実施の形態3の半導体装置301においても、実施の形態1において説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0143】
また、実施の形態3の半導体装置301は、第1接続領域17に隣接して、ドリフト層2よりもn型の不純物濃度が高い第1低抵抗領域33が形成されているため、第1接続領域17周辺の抵抗が低減され、MOSFETのオン抵抗を低減できる。第2接続領域18に隣接して、ドリフト層2よりもn型の不純物濃度が高い第2低抵抗領域34が形成されているため、SBDの動作時に第2接続領域18周辺の抵抗が低減され、高いショットキー電流を得ることができる。
【0144】
さらに、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16の周辺にも第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34が形成されていることにより、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16の周辺のn型の不純物濃度が高くなっている。すなわち、第1底部保護領域15と第1低抵抗領域33とから構成されるpn接合部、および第2底部保護領域16と第2低抵抗領域34とから構成されるpn接合部は、ドリフト層2とから構成される場合よりもpn接合部のn型領域のポテンシャルが増大する。pn接合部のn型領域のポテンシャルが増大することにより、当該pn接合部からなるボディダイオードのビルトイン電圧も増加するため、ボディダイオードに電流が流れにくくなる。
【0145】
ここで、pn接合からなるボディダイオードがSiC(炭化珪素)から構成されている場合、ボディダイオードには、炭化珪素のバンドギャップから通常3.5V程度で電流が流れる。しかし、pn接合部のn型領域のポテンシャルが高い場合には、その分高いバイアスを印加しなければ、ボディダイオードがオンしない。そのため、ボディダイオードに順方向バイアスが印加された際、第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34に隣接する第1底部保護領域15および第2底部保護領域16のpn接合においては、より高い電圧までバイポーラ動作が抑制されることとなる。
【0146】
一方、SBDは、ショットキー障壁によるバイアスを印加することでオンでき、通常1〜2V程度など、pn接合からなるボディダイオードよりも低い電圧でオンする。そのため、順方向バイアス印加時には、まずSBDによるユニポーラ電流であるショットキー電流が流れ始め、より高いバイアスになるとボディダイオードによるバイポーラ電流が流れ始めることとなる。
【0147】
したがって、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16の周辺に、ドリフト層2よりもn型の不純物濃度が高い第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34を形成することで、pn接合部のn型領域のポテンシャルを増大でき、pn接合からなるボディダイオードの動作電圧を増大させることができるので、SBDにおいてより高い最大ユニポーラ電流を得ることができる。
【0148】
次に、実施の形態3に係る半導体装置301の変形例を説明する。変形例1に係る半導体装置302は、ドリフト層2のうち、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16の下部よりも上方に位置する部分を低抵抗領域35として形成している。低抵抗領域35は、第1ドリフト層25上に形成され、第1ドリフト層25よりもn型の不純物濃度が高いn型の半導体領域である。
【0149】
なお、低抵抗領域35のうち、MOS領域19において形成された部分(ゲートトレンチ6の延伸方向において隣り合う第1接続領域17間の領域)が第1低抵抗領域33に相当し、SBD領域20において形成された部分(ショットキートレンチ10の延伸方向において隣り合う第2接続領域18間の領域)が第2低抵抗領域34に相当する。その他の構成は、図21等に示した半導体装置301と同様である。
【0150】
次に、変形例1に係る半導体装置302の製造方法について説明する。図25および図26は、変形例1に係る半導体装置302の製造方法の一部の工程を示す図である。半導体装置302において、低抵抗領域35は、実施の形態1の図5に示した製造方法と同様にして形成することができる。すなわち、図25に示すように、基板1上にn型の第1ドリフト層25をエピタキシャル成長により形成した後、第1ドリフト層25上に、n型の低抵抗領域35をエピタキシャル成長により形成する。なお、第1ドリフト層25と低抵抗領域35とを合わせたものが上述のドリフト層2に相当する。
【0151】
続いて、実施の形態1の図3に示した製造方法と同様にして、ボディ領域3、ソース領域4、およびボディコンタクト領域5を形成する。
【0152】
そして、図26において、第1のマスク51を用いて、反応性イオンエッチング(RIE)によって半導体層21の表面からソース領域4およびボディ領域3を貫通して低抵抗領域35へと達するゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10を形成する。このとき、ゲートトレンチ6およびショットキートレンチ10は、図26に示すように、トレンチ底部が第1低抵抗領域33および第2低抵抗領域34の下部よりも浅くなるように形成する。さらに、第1のマスク51を用いて、半導体層21の表面に対して垂直方向にイオン注入を行い、ゲートトレンチ6の底部に第1底部保護領域15を形成し、ショットキートレンチ10の底部に第2底部保護領域16を形成する。このとき、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16は、これらの下部が低抵抗領域35の下部と同じ深さ、もしくはより深い位置となるように形成する。その後、図6に示した製造方法と同様にして、第1接続領域17および第2接続領域18を形成する。
【0153】
このようにすることで、ドリフト層2のうち、第1底部保護領域15および第2底部保護領域16の下部よりも上方に位置する部分に低抵抗領域35を形成することができる。その他の部分については、実施の形態1の半導体装置101と同様にして製造することができる。
【0154】
変形例1に係る半導体装置302においても、実施の形態1や実施の形態3において説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0155】
図27は、変形例2の半導体装置303におけるセル領域の一部の断面を示す断面模式図である。変形例2に係る半導体装置303は、図27に示すように、MOS領域19において第1低抵抗領域33が形成され、SBD領域20において第2低抵抗領域34aが形成されている。第2低抵抗領域34aは、n型の不純物濃度が第1低抵抗領域33よりも高くなるように形成されている。その他の構成は、図21等に示した半導体装置301と同様である。
【0156】
次に、半導体装置303の製造方法について説明する。まず、実施の形態1で説明した半導体装置101の製造方法と同様にして、図4に示すようにゲートトレンチ6、ショットキートレンチ10、第1底部保護領域15、および第2底部保護領域16を形成する。続いて、MOS領域19にのみ開口を有するマスクを半導体層21上に形成した後、ゲートトレンチ6の内壁から傾斜イオン注入を行い、第1低抵抗領域33を形成する。当該マスクを除去後、SBD領域20にのみ開口を有するマスクを半導体層21上に形成して、ショットキートレンチ10の内壁から傾斜イオン注入を行い、第2低抵抗領域34aを形成する。その後、図6に示した製造方法と同様にして、第1接続領域17および第2接続領域18を形成する。
【0157】
なお、第1低抵抗領域33と第2低抵抗領域34aを形成する順序は前後してもよく、また図23に示した製造方法と同様にして形成してもよい。
【0158】
変形例2に係る半導体装置303においても、実施の形態1や実施の形態3において説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0159】
また、上記において説明したように、ショットキートレンチ10の幅がゲートトレンチ6の幅以上となる場合や、ショットキートレンチ10の深さがゲートトレンチ6の深さ以下となる場合には、第2底部保護領域16や第2接続領域18にかかる電界は同等、あるいはより低減される。この場合に、第2接続領域18間の第2の間隔dp2を第1接続領域17間の第1の間隔dp1よりも小さくすることで、ショットキー界面22の電界強度を低減できると同時に、第2接続領域18端部のpn接合にかかる電界を第1接続領域17端部のpn接合にかかる電界よりも緩和できる。そこで、第2接続領域18端部の最大電界強度が低い分、SBD領域20における第2低抵抗領域34の不純物濃度を高くすることが可能となる。
【0160】
変形例2に係る半導体装置303は、第2接続領域18の端部にかかる電界強度の増大による素子の耐圧悪化やリーク電流の増大を回避しつつ、第2低抵抗領域34aの不純物濃度を高くすることでSBD領域20の抵抗を低減でき、より高いショットキー電流を得ることができる。
【0161】
実施の形態4.
本実施の形態は、上述した実施の形態1から3のいずれかにかかる半導体装置を電力変換装置に適用したものである。本開示は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態4として、三相のインバータに本開示を適用した場合について説明する。
【0162】
図28は、本実施の形態にかかる電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0163】
図28に示す電力変換システムは、電源500、電力変換装置600、負荷700から構成される。電源500は、直流電源であり、電力変換装置600に直流電力を供給する。電源500は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源500を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0164】
電力変換装置600は、電源500と負荷700の間に接続された三相のインバータであり、電源500から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷700に交流電力を供給する。電力変換装置600は、図28に示すように、入力される直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路601と、主変換回路601の各スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路602と、駆動回路602を制御する制御信号を駆動回路602に出力する制御回路603とを備えている。
【0165】
負荷700は、電力変換装置600から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷700は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0166】
以下、電力変換装置600の詳細を説明する。主変換回路601は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えており(図示せず)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源500から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷700に供給する。主変換回路601の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態にかかる主変換回路601は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列に接続された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路601の各スイッチング素子と各還流ダイオードの少なくともいずれかに、上述した実施の形態1から3のいずれかにかかる半導体装置を適用する。このうち、MOS領域19に配置されたMOSFET構造をスイッチング素子として、SBD領域20に配置されたSBDを還流ダイオードとして、それぞれ使用できる。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路601の3つの出力端子は、負荷700に接続される。
【0167】
なお、実施の形態1から3にかかる半導体装置は、スイッチング素子と還流ダイオードが1つのチップ内に内蔵された一体構造となっている。そのため、主変換回路601のスイッチング素子としてMOS領域19に配置されたMOSFET構造を用い、還流ダイオードとしてSBD領域20に配置されたSBDを用いることで、スイッチング素子と還流ダイオードが別個に形成された異なる2つ以上のチップを用いるときと比較して、実装面積を縮小できる。
【0168】
駆動回路602は、主変換回路601のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路601のスイッチング素子のゲート電極に供給する。具体的には、後述する制御回路603からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子のゲート電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0169】
制御回路603は、負荷700に所望の電力が供給されるよう主変換回路601のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷700に供給すべき電力に基づいて主変換回路601の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路601を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、駆動回路602に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路602は、この制御信号に従い、各スイッチング素子のゲート電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0170】
本実施の形態に係る電力変換装置では、主変換回路601のスイッチング素子として実施の形態1から3のいずれかにかかる半導体装置を適用するため、静電容量の低下やバイポーラ劣化が抑制された信頼性の高い半導体装置の使用により、電力変換装置の信頼性向上を実現することができる。
【0171】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例を説明したが、本開示は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに本開示を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに本開示を適用することも可能である。
【0172】
また、本開示を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0173】
<最後に>
以上説明した本開示に係る実施の形態1〜3においては、半導体材料が炭化珪素である場合について説明したが、その他の半導体材料を用いてもよい。すなわち、基板1、およびドリフト層2、ボディ領域3、ソース領域4、ボディコンタクト領域5などを含む半導体層21は、その他の半導体材料から構成することができる。その他の半導体材料としては、例えば、シリコンと比べてバンドギャップが広い、いわゆるワイドバンドギャップ半導体が挙げられる。炭化珪素以外のワイドバンドギャップ半導体としては、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンドなどが挙げられる。これらのワイドバンドギャップ半導体を用いた場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0174】
なお、本明細書で説明した上記の各実施の形態では、各構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件等について記載している場合があるが、これらは全ての局面において例示であって、各実施の形態が記載されたものに限られることはない。よって、例示されていない無数の変形例が、各実施の形態の範囲内において想定される。例えば、任意の構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの実施形態における少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれる。
【0175】
また、矛盾が生じない限り、上記各実施形態において「1つ」備えられるものとして記載された構成要素は、「1つ以上」備えられていても良い。さらに、各構成要素は概念的な単位であって、1つの構成要素が複数の構造物で構成される場合、および1つの構成要素がある構造物の一部に対応する場合を含む。
【0176】
また、本明細書における説明は、何れも、従来技術であると認めるものではない。
【0177】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0178】
1 基板、2 ドリフト層、3 ボディ領域、4 ソース領域、5 ボディコンタクト領域、6 ゲートトレンチ、7 ゲート絶縁膜、8 ゲート電極、9 層間絶縁膜、10 ショットキートレンチ、11 コンタクト領域、12 ショットキー電極、13 ソース電極、14 ドレイン電極、15 第1底部保護領域、16 第2底部保護領域、17 第1接続領域、18、18a、18b 第2接続領域、19 MOS領域、20 SBD領域、21 半導体層、22 ショットキー界面、25 第1ドリフト層、26 第2ドリフト層、31、31a、31b 第1電界緩和領域、32、32a、32b 第2電界緩和領域、33 第1低抵抗領域、34、34a 第2低抵抗領域、35 低抵抗領域、51 第1のマスク、52 第2のマスク、53 第3のマスク、54 第4のマスク、55 第5のマスク、101、102、103、201、202、203、301、302、303 半導体装置、500 電源、600 電力変換装置、601 主変換回路、602 駆動回路、603 制御回路、700 負荷
【要約】
本開示に係る半導体装置は、ゲートトレンチ(6)内に設けられ、ソース領域(4)に対して、ゲート絶縁膜(7)を介して対向するように設けられたゲート電極(8)と、ゲート絶縁膜(7)の下方に設けられた第2導電型の第1底部保護領域(15)と、ゲートトレンチ(6)の延伸方向において第1の間隔(dp1)で複数設けられ、第1底部保護領域(15)とボディ領域(3)とを電気的に接続する第2導電型の第1接続領域(17)と、ショットキートレンチ(10)内に設けられたショットキー電極(12)と、ショットキー電極(12)の下方に設けられた第2導電型の第2底部保護領域(16)と、ショットキートレンチ(10)の延伸方向において第1の間隔(dp1)よりも小さい第2の間隔(dp2)で複数設けられ、第2底部保護領域(16)とボディ領域(3)とを電気的に接続する第2導電型の第2接続領域(18、18a、18b)と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28