特許第6981590号(P6981590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6981590-沈降分離装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981590
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】沈降分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20211202BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20211202BHJP
   B01D 21/08 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B01D21/02 Q
   B01D21/02 E
   B01D21/01 C
   B01D21/08 E
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-202087(P2015-202087)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2017-74539(P2017-74539A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年9月20日
【審判番号】不服2020-1550(P2020-1550/J1)
【審判請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【合議体】
【審判長】 日比野 隆治
【審判官】 宮澤 尚之
【審判官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−004355(JP,A)
【文献】 特開平09−150012(JP,A)
【文献】 特開2002−224504(JP,A)
【文献】 特開平05−123688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D21/00-21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚濁水の流入部、急速撹拌槽、緩速撹拌槽、傾斜板および流出部を有する横流沈降分離装置において、芯体から一方向あるいは左右にループ状紐状体が突出した状態で設けられたラッシュ体を流出部に密着させて遮蔽するように設けることを特徴とする横流沈降分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚濁水中の固形分を沈降分離させる沈降分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沈降分離装置は、汚濁水を水平に流し、固形分を重力によって沈降させ分離させる装置であり、濃厚なスラリーを得ることを目的とする濃縮装置(シックナー)と、清澄な液を得ることを目的とする清澄装置(クラリファイヤー)とがある。装置としては、部分的構造は多少異なるが類似したものが用いられる。
これらの装置は、装置内に汚濁水を流すと、液は出口方向に水平に流れ、固形分は液の流れに乗って出口方向に流れながら、重力によって下方に沈降する。そして固形分が分離された処理水は流出口から放流され、沈降した固形分は排出口から装置外に取り出される。
【0003】
この沈降分離装置を、実際運転すると外気温、装置内の水温差等によって水流に乱れが生じ、汚濁水中に含まれる固形分が傾斜板等で捕捉されず流れと同伴する。いわゆるキャリーオーバー現象が生起し、満足する清澄化効果が得られなかった。これらの問題点を解決する方法として、例えば、沈殿槽内を複数の要素に分割し、沈殿槽内の運動を支配する連続の式と運動方程式を差分方程式に置き換えて所定の境界条件の下でフローパターンが一定に成るまで繰り返し計算を行って定常状態における上記各分割要素の流速を得、この流速の中で沈殿槽内でキャリーオーバーが発生する直前の最大流速を臨界流速とし、該臨界流速との関係からキャリーオーバーを抑制することができる阻流板設置条件を任意の液体流量と任意の液体温度の下で決定し、所定の工程を経て該阻流板の設置された沈殿槽を有する沈降分離装置を製造する方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、このような方法によっても装置底部に溜まったフロック化した固形分の舞い上がりにより流出口部において、この固形分の混入により清澄化効率を低下させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−150012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、分離装置の底部に溜まったフロック化した固形分が舞い上がり、分離装置の流出口から排出されてしまう欠点を解消すべく種々研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、汚濁水の流入部および流出部を有する横流沈降分離装置(以下「沈降分離装置」という)において、流 を遮蔽するように、芯体から一方向あるいは左右にループ状紐状体が突出した状態で設けられたラッシュ体を設けることを特徴とする沈降分離装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の沈降分離装置によれば、浮遊するフロック化された固形分を捕捉して装置外への流出を完全に防止することができると共に、ラッシュ体にフロック化された固形分が付着しても、例えば棒状体のようなものでたたく等して、ラッシュ体に衝撃を与えることによって簡単に剥離させることができるので、保守管理も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ラッシュ体の側断面図である。
図2】ラッシュ体の他の態様を示す側断面図である。
図3】フロート付膜状ラッシュ体の斜視図である。
図4】フロート付膜状ラッシュ体の他の態様を示す側断面図である。
図5】流出口にラッシュ体を設けた状態を示す横流沈降分離装置の略断面図である。
図6】流出口にラッシュ体を他の態様で設けた状態を示す横流沈降分離装置の一部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明を図面を参照しながら本発明を説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではない。
図1は、本発明のラッシュ体1の側面図であり、芯体2から左右にループ状紐状体3が突出した状態で設けたものである。また図2に示すように芯体2から、一方向にのみループ状紐状体4を突出して設けることもできる。
【0010】
本発明のラッシュ体1を沈降分離装置の流出部に設ける場合は、例えば図3に示すように挿通口5を有するフロート6にネット7を吊下し、該ネット7の下縁部に重錘8を設ける。次にネット7の片面あるいは両面にラッシュ体1を一体に設けフロート付膜状体を構成する。
このフロート付膜状ラッシュ体は、挿通口5にロープを通し複数のフロート付膜状ラッシュ体を連結し、所望の長さに調節する。
また図4に示すように、2つのフロート付膜状体の各重錘をロープ(図示せず)等で繋ぎ、2つのフロート付膜状体を一体としたフロート付膜状体を構成することもできる。このフロート付膜状体は汚濁水が流出口に向かって上昇するところに、効果的に使用でき、流出口部に向かう流れを遮蔽するようにラッシュ体1が設けられている。
【0011】
次に沈降分離装置にラッシュ体1を設置する方法について説明する。
図5は越流型流出口を有する横流沈降分離装置の概略側断面図である。
流入管9より汚濁水を横流沈降装置の急速撹拌槽10に導入し、ここで適宜の手段で凝集剤が添加され撹拌される。次に緩速撹拌槽11に入りここで緩速撹拌が行われ固形分のフロック化を行い、次いで傾斜板12を通過させ、ここでフロックの分離を行う。分離されたフロックは沈降分離装置の底部に蓄積される。清澄化された処理水は流出口13に向かって流れる。この際外気温度、沈降分離装置内の水温差等によって沈降分離装置内の水流は整流を保持することができず、乱流が生起する。これによって底部に蓄積されたフロック化された固形分が舞い上がり流出口13に向けて流れる。
【0012】
流出口13には該流出口13を遮蔽するようにラッシュ体が展張されているので、該ラッシュ体によってフロック化された固形分が捕捉される。そしてラッシュ体を通過した処理水(清澄水)は、フロック化された固形分が除去されるために清澄効率が高められる。
またラッシュ体は密着した状態で多重状に設ける(展張)こともできる。
さらに図6に示すように流出口13からラッシュ体との間に適宜の距離(A)を置いて設置することもできる。通常この距離(A)は10cm〜100cm程度が好ましい。また展張するラッシュ体を多重に設置する場合、その距離(B)は20cm〜200cm程度が好ましい。
本発明に使用する沈降分離装置は、その流出口が前記した越流型の外、放流型のものにも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0013】
1・・・ラッシュ体
2・・・芯体
3・・・ループ状紐状体
6・・・フロート
7・・・ネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6