特許第6981591号(P6981591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981591
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】衣服用吸湿シート体
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20211202BHJP
   A47G 25/28 20060101ALI20211202BHJP
   B01D 53/28 20060101ALI20211202BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20211202BHJP
   D06F 59/02 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B01D53/26 210
   A47G25/28 Z
   B01D53/28
   A61L9/00 Z
   D06F59/02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-112251(P2017-112251)
(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公開番号】特開2018-202343(P2018-202343A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】513007930
【氏名又は名称】テクナード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】原 真澄
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−168866(JP,A)
【文献】 韓国登録実用新案第0351264(KR,Y1)
【文献】 登録実用新案第3210735(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26−53/28
A47G 25/00−25/92
A61L 9/00− 9/22
B65D 85/18
D06F 59/00−59/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服用ハンガー類に対して垂下状態で使用される衣服用吸湿シート体であって、
2枚の吸湿シートの縁部が部分的に接合されてなる袋状であって、
前記衣服用ハンガー類を挿通させるための首側開口部と、前記首側開口部と対向する裾側開口部とを有し、
前記吸湿シートは、2枚の基材シートの間にシリカゲルを含有する吸湿層が形成されてなり、一方の基材シートの片面に表面層を備え、
前記袋状の衣服用吸湿シート体の外表面は、前記吸湿シートの前記表面層で構成され、前記袋状の衣服用吸湿シート体の内側の表面は、前記吸湿シートの前記基材シートで構成されている
ことを特徴とする衣服用吸湿シート体。
【請求項2】
前記一方の基材シートの片面に、ポリウレタン層を介して前記表面層が形成されている
請求項1に記載の衣服用吸湿シート体。
【請求項3】
前記表面層は、ポリエステル、レーヨンまたは綿布により形成されている
請求項1または2に記載の衣服用吸湿シート体。
【請求項4】
前記吸湿シートは、吸湿センサーを備えている
請求項1〜のいずれか一項に記載の衣服用吸湿シート体。
【請求項5】
前記吸湿シートは、消臭機能を有する
請求項1〜のいずれか一項に記載の衣服用吸湿シート体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服用吸湿シート体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジャケット等の衣服の湿気や臭いを除去するために、衣服用防湿マットが使用されている。本出願人は、略長方形状の一方の短手側の縁に向かって、長手側の両側縁を斜めに切断した形状の吸湿性を有する吸湿シートと、前記吸湿シートの前記一方の短手側縁の近傍に、衣服用ハンガーの肩部に繋止するための第1取付部と、を備えた衣服用防湿マットについて特許出願している(特許文献1)。
【0003】
ところが、本出願人が上記衣服用防湿マットについて研究を重ねたところ、除湿効果についてさらに改良の余地があることを突き止めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−84923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、除湿効果に優れた衣服用吸湿シート体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る衣服用吸湿シート体は、衣服用ハンガー類に対して垂下状態で使用される衣服用吸湿シート体であって、2枚の吸湿シートの縁部が部分的に接合されてなる袋状であって、前記衣服用ハンガー類を挿通させるための首側開口部と、前記首側開口部と対向する裾側開口部とを有し、前記吸湿シートは、2枚の基材シートの間にシリカゲルを含有する吸湿層が形成されてなり、一方の基材シートの片面に表面層を備え、前記袋状の衣服用吸湿シート体の外表面は、前記吸湿シートの前記表面層で構成され、前記袋状の衣服用吸湿シート体の内側の表面は、前記吸湿シートの前記基材シートで構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る衣服用吸湿シート体は、除湿効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る衣服用吸湿シート体の正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る衣服用吸湿シート体の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る衣服用吸湿シート体の斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る衣服用吸湿シート体の吸湿シートの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本発明の一態様に係る衣服用吸湿シート体は、衣服用ハンガー類に対して垂下状態で使用される衣服用吸湿シート体であって、2枚の吸湿シートの縁部が部分的に接合されてなる袋状であって、前記衣服用ハンガー類を挿通させるための首側開口部と、前記首側開口部と対向する裾側開口部とを有することを特徴としている。
【0010】
この態様によれば、衣服用吸湿シート体は、2枚の吸湿シートの外周である縁部のみが部分的に接合され、2枚の吸湿シートの表面同士は接合されていない袋状であるため、立体的であり、衣服用吸湿シート体の内部に空気が流れる空気層ができる。したがって、衣服用吸湿シート体に衣服を吊り下げた場合に、1枚の吸湿シートのみからなる従来の衣服用除湿シートよりも、衣服と密着しやすく、衣服との接触面積が増えるため、衣服の湿気が空気層を伝って外部に逃げるやすく、除湿効果に優れている。
【0011】
<実施形態>
以下に本発明の一態様である衣服用吸湿シート体について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る衣服用吸湿シート体の正面図である。図2は、本実施形態に係る衣服用吸湿シート体を側方からみた斜視図である。図3は、本実施形態に係る衣服用吸湿シート体を裾側からみた斜視図である。図4は、本実施形態に係る衣服用吸湿シート体の吸湿シートの概略構成を示す断面図である。
【0013】
1.全体構成
本実施形態の衣服用吸湿シート体100は、図2及び図3に示すように、人の上半身をかたどった略矩形状の2枚の吸湿シート1を部分的に貼り合わせてなる。
【0014】
衣服用吸湿シート体100は、図1に示すように、頭部101が直線状で、肩部102はなだらかな曲線状で、脇部103は下側(裾側)に行くに従い幅狭になり、下端の裾部104は直線状である。
【0015】
衣服用吸湿シート体100の肩部102には、図2に示すように、型くづれ防止等の観点から、まち(襠)部1aが設けられている。まち部1aの幅は、約3〜4cm程度である。まち部1aは、吸湿シート1と同じ部材で形成されている。まち部1aは、吸湿シート1と一体であっても、別に成形してもよい。
【0016】
衣服用吸湿シート体100は、2枚の吸湿シート1の外周である縁部2同士を部分的に接合してなり、開口部30,40,50を有する袋状である。
【0017】
2.開口部
開口部30,40,50は、2枚の吸湿シート1の縁部2同士を接合していない非接合部に相当する。
【0018】
首側開口部30は、衣服用ハンガー60の吊り部(フック)61を挿通させるための開口である。
【0019】
裾側開口部40は、首側開口部30と対向する開口であり、衣服用ハンガー60に対して垂下状態で吊り下げられた際に裾側(下端)の開口である。
【0020】
脇側開口部50は、肩部102の端から脇部103の中央付近にかけて開口しており、衣服用ハンガー60を挿通させる等の開口である。
【0021】
3.吸湿シート
吸湿シート1は可撓性で通気性を備え、内部に吸湿機能を有する材料を備えている。
【0022】
吸湿シート1は、例えば、図4に示すように、基材シート12と基材シート13とが重ね合わせられ、その重ね合わせられた面14,15同士の間に、多数の粒状をなすシリカゲル16が挟持されて吸湿層11が形成されている。
【0023】
吸湿シート1は、例えば、基材シート12と基材シート13との間に、多数の粒状をなすシリカゲル16を挟み、縫合や熱溶着などにより固定して吸湿層11を形成することにより作製することができる。
【0024】
3−1.基材シート
基材シート12,13は、特に限定はないが、通気性を備え、空気や湿分を透過可能なものが好ましく、例えば不織布、織布、編物などが用いられる。
【0025】
基材シート12,13の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂、レーヨンなどが使用できる。
【0026】
基材シート12はウェブ17の集合体であり、同じく基材シート13はウェブ18の集合体である。
【0027】
基材シート13は、図3に示すように、衣服用吸湿シート体100の裏面、すなわち吸湿シート1の裏面に設けられる。
【0028】
3−2.吸湿層
吸湿層11の材質は、吸湿機能を有するものであれば特に限定はなく、例えば、シリカゲルや、ゼオライト、トルマリンなどの天然多孔石、備長炭などの炭材や活性炭、パーライト、ケイ酸ソーダなどが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併用することができる。これらのなかでも、吸湿機能や消臭機能に優れ、即効性がある点でシリカゲルが好適に用いられる。シリカゲルは水分の他に空気中に飛散する臭いの元であるアンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メルカプタンや、加齢臭の原因となるノネナールガスなども吸着し消臭機能をも有する。
【0029】
吸湿層11は、図4に示すように、基材シート12,13間において層状をなし、基材シート12,13の対向面14,15間に全体に亘り均一に分布してなる多数のシリカゲル16の集合体である。シリカゲル16を上下両側から矜持した状態において、基材シート12,13の対向面14,15は、図4において拡大して示すように、基材シート12,13の構成素材であるウェブ17,18により互いに縫合されている。
【0030】
シリカゲル16を固定するために、基材シート12と基材シート13との重合部分にはシリカゲル16を上下両側から挟持した状態においてニードルパンチが複数箇所に亘って施されている。すなわち各ニードルパンチの箇所において基材シート12と基材シート13のウェブ17,18同士が機械的に絡み合うことにより、その絡み合った各箇所付近に基材シート12と基材シート13とが接合され固定されている。これにより、ウェブ17,18により対向面14と対向面15との間が縫合された基材シート12と基材シート13にてシリカゲル16は層状をなしたまま移動不能に挟着保持されている。
【0031】
シリカゲル16の粒は、多数の微細貫通孔を備えており、高湿度雰囲気下では表面吸着又は毛細管現象により空気中の水分を吸収し、乾燥雰囲気下では吸収した水分を放出し得る機能を有している。そのため、かかる吸湿機能及び放湿機能を良好にするべく、本実施形態におけるシリカゲル16には微細空間容積が0.5〜1.0ml/g及び表面積が650〜350m/gの範囲内にあるものが採用されている。
【0032】
また、微細貫通孔の孔径は30〜120オングストロームのものが吸湿機能などを良好に発揮する上で好ましい。
【0033】
このように、多数のシリカゲル16の粒が基材シート12と基材シート13とに挟持されることで、高い吸湿性、防湿性、消臭性を長時間に亘って保つことができる。
【0034】
吸湿シート1は、天日に干すと吸湿機能が再生し、繰り返し使用することができる。
【0035】
3−3.表面層
吸湿シート1は、基材シート12側の表面にポリウレタン層19を介して、表面層20が形成されている。表面層20は吸湿性を備えたものが好ましい。表面層20は、基材シート12を覆い、基材シート12の露出を防ぐ意匠的な役割のほか、基材シート12保護の役割を有する。表面層20は、図3に示すように、衣服用吸湿シート体100の表面、すなわち吸湿シート1の表面に設けられる。
【0036】
なお、本明細書において、衣服用吸湿シート体の表面とは、袋状の衣服用吸湿シート体の外表面をいい、衣服用吸湿シート体の裏面とは、袋状の衣服用吸湿シート体の内側の表面をいう。
【0037】
表面層20の形成材料は特に限定はなく、通気性を備えたものが好ましく、例えば、ポリエステル、レーヨン、綿布などがあげられる。
【0038】
ポリウレタン層19は、例えば、シート状に形成したポリウレタンを、フレームラミネート加工等により基材シート12に接着して形成することができる。
【0039】
表面層20は、例えば、ポリエステルなどのシート材をフレームラミネート加工によりポリウレタン層19に貼り合わせることにより形成できる。
【0040】
4.衣服用吸湿シート体の寸法
実施形態の衣服用吸湿シート体100の寸法は、肩幅が約46cm、裾部104の幅が約34cm、頭部101から裾部104までの丈が約60cmである。実施形態の衣服用吸湿シート体100は、人の上半身をかたどった形状をしているが寸法、形状は、特に限定はなく、例えば、ロングドレスや着物などに適した全長の長いものでもよい。
【0041】
本実施形態の衣服用吸湿シート体は、吸湿効果に優れるため、スーツ、ブレザーなどの上着、濡れた衣類などの湿気や嫌なニオイを取り除くことができ、衣類をサラットすることができる。また、体からでるイヤな臭い(汗の臭い・加齢臭)である酢酸ガス・ノネナールガスにわずか数十分で大きな消臭効果を発揮することができる。また、シリカゲルの調湿機能によりカビやダニの発生を防ぐこともできる。また、本実施形態の衣服用吸湿シート体は、立体的形状でしかも型崩れしにくい。また、小さく折り畳めるため、鞄などに入れて持ち運びが容易であるため、旅行先などでも使用できる。
【0042】
<変形例>
以上、一実施形態に係る衣服用吸湿シート体を説明したが、本発明はこの実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例とを組み合わせたものでもよいし、変形例同士を組み合わせたものでもよい。また、実施形態や変形例に記載していない例や要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0043】
1.衣服用ハンガー類
衣服用ハンガー類は、衣服用吸湿シート体を吊り下げることができるものであれば特に限定はなく、例えば、トルソー、マネキン等を使用することもできる。トルソー、マネキンは、洋服を着せる人形の意であるが、トルソーは胴体のみ、マネキンは全身の違いがある。
【0044】
本実施形態の衣服用吸湿シート体をトルソーなどの人形に使用すれば、衣服用吸湿シート体が立体的形状ゆえ、トルソーなどと密着しやすく、除湿効果がさらに高くなる。
【0045】
2.衣服用吸湿シート体
実施形態の衣服用吸湿シート体は、まち部1aを有していたが、まち部1aは省略してもよい。また、まち部1aは吸湿シート1と同じ部材で形成したが、異なる部材で形成してもよい。
【0046】
実施形態の衣服用吸湿シート体は、袖部はないが、袖部を設けても差し支えない。
【0047】
3.開口部
実施形態の裾側開口部40の開口度は、裾の一辺(吸湿シート1の短手側の一辺)全体を開口しているが、衣服用吸湿シート体100の内部に空気層ができれば、裾側開口部40の開口度は実施形態に限定されるものではない。
【0048】
なお、実施形態では脇側開口部50を設けたが、脇部103の開口はなくてもよい。
【0049】
4.吸湿シート
実施形態の吸湿シート1は、基材シート12側にのみ表面層20を形成しているが、これに限定されず、基材シート13側にも表面層20を形成しても差し支えない。また、表面層20はポリウレタン層19を介して基材シート12側に形成しているが、他の方法で形成してもよい。なお、表面層20を省略することも可能である。
【0050】
また、吸湿層11を構成するシリカゲル16の固定は、ニードルパンチに限定されず、ホットメルト加工であってもよい。例えば、2枚の基材シートの間に粒状のシリカゲルを挟み込み、2枚の基材シートをエチレン酢酸ビニルなどの熱可塑性プラスチックを接着剤としてホットメルト加工することによって形成してもよい。
【0051】
また、ポリウレタン層19や表面層20の接着は、フレームラミネート加工に限定されるものではなく、例えば、ホットメルトシートやキルティング等の方法により行うこともできる。
【0052】
5.吸湿センサー
実施形態の衣服用吸湿シート体100は、吸湿センサーを有していてもよい。吸湿センサーは、例えば塩化コバルトを表面に所定量塗布したものである。塩化コバルトが無水の場合は青色であり、雰囲気中の湿度が増して二水和物となると紫色になり、さらに湿度が増えると六水和物となって桃色となる。この変色を人が視認することで吸湿の度合いを知ることができる。変色によって吸湿の具合が大きくなったと判断すれば、天日干しや乾燥機などの手段を用いて、色の変化を参考に乾燥させることができる。吸湿センサーを設ける位置については特に限定はないが、吸湿シートの中央部ではなく、周辺部に設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
100 衣服用吸湿シート体
1 吸湿シート
2 縁部
11 吸湿層
12 基材シート
13 基材シート
20 表面層
30 首側開口部
40 裾側開口部
60 衣服用ハンガー
図1
図2
図3
図4