特許第6981597号(P6981597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6981597
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】釣り竿及びフックキーパー
(51)【国際特許分類】
   A01K 97/06 20060101AFI20211202BHJP
   A01K 87/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   A01K97/06 501
   A01K87/00 640D
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-547030(P2020-547030)
(86)(22)【出願日】2020年5月20日
(86)【国際出願番号】JP2020019971
【審査請求日】2020年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591029507
【氏名又は名称】株式会社スミス
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】特許業務法人 松原・村木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 仁
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−170320(JP,A)
【文献】 実開昭56−131773(JP,U)
【文献】 実開昭52−95893(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3010152(JP,U)
【文献】 実開平3−67559(JP,U)
【文献】 特許第3886183(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0070572(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00 − 87/08
A01K 97/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石の磁力のみにより釣り針を保持する釣り針保持部を有する釣り竿であって、
前記釣り竿は、
シャフトと、
グリップと、
前記磁石を支持し前記シャフトに着脱可能な磁石ケースと
を備え、
前記磁石は、
前記釣り竿の先端側に面する第1釣り針保持面と、
前記釣り竿の根元側に面する第2釣り針保持面と
を有する
ことを特徴とする釣り竿。
【請求項2】
請求項に記載の釣り竿において、
前記釣り針は、前記釣り竿の種類に応じたルアーに取り付けられており、
前記磁石の前記磁力は、前記第1釣り針保持面又は前記第2釣り針保持面を下方に向け且つ前記釣り針のベンド部を前記第1釣り針保持面又は前記第2釣り針保持面に接触させた場合に、前記磁石の前記磁力のみにより前記ルアー及び前記釣り針を保持可能な強さである
ことを特徴とする釣り竿。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の釣り竿において、
前記釣り竿は、前記磁石ケースを前記シャフトに固定する弾性環状部材を備え、
前記磁石ケースは、
前記磁石を支持する磁石支持部と、
前記シャフトと接触する脚部と、
前記弾性環状部材を取り付ける取付部と
を備える
ことを特徴とする釣り竿。
【請求項4】
釣り針を保持する磁石と、
前記磁石を支持し釣り竿のシャフトに取り付けられる磁石ケースと
を備え、
前記磁石の磁力のみにより前記釣り針を保持し、
前記磁石は、
前記釣り竿の先端側に面する第1釣り針保持面と、
前記釣り竿の根元側に面する第2釣り針保持面と
を有する
ことを特徴とするフックキーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り竿及びフックキーパーに関し、より詳細には、ポイントの移動中等における釣り針の保持及び取り外しを簡易に行うことができる釣り竿及びフックキーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、釣り針保持装置及び方法が開示されている(要約)。特許文献1では、釣り竿のシャフトに固定される保持装置が用いられる。一実施形態において、保持装置はスリーブ(12)であり、このスリーブは、スリーブ内部に設けられた磁石(32)と、スリーブの上部で延在する案内部(channel)(20)を有する(図1図10)。釣り針(13)は、案内部を介して案内されると共に、磁石により釣り針が引きつけられてスリーブに保持される(要約)。磁石(32)は、釣り針(13)が案内部(20)内に挿入されることを容易にする([0033])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0277815号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1の釣り針保持装置(10)は、釣り針(13)を案内して固定する案内部(channel)(20)を備えるスリーブ(12)を有する(要約、図1図10)。また、スリーブ内の磁石(32)が釣り針を引きつけることで、釣り針(13)が案内部(20)内に挿入されることを容易にする([0033])。
【0005】
特許文献1の構成では、釣り針(13)を保持装置(10)に保持させる際、ユーザは、釣り針を案内部(20)よりもグリップ側に移動させた後、案内部(20)に対して釣り針を位置決めする必要がある。また、釣り針(13)を保持装置(10)から取り外す際、ユーザは、釣り針を案内部(20)からグリップ側に移動させる必要がある。これらの作業は、ユーザが釣り針又は釣り針が取り付けられたルアー等を摘まんで行う必要がある。しかしながら、特許文献1の構成は、釣り針の保持及び取り外しの作業性又は利便性について改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記のような課題を考慮してなされたものであり、釣り針の保持及び取り外しの作業性又は利便性を向上可能な釣り竿及びフックキーパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る釣り竿は、磁石の磁力のみにより釣り針を保持する釣り針保持部を有することを特徴とする。本発明によれば、磁石の磁力のみにより釣り針を保持する。これにより、釣り針を引っかける部分(例えば、特許文献1の案内部(20))なしに釣り針を保持することができる。従って、ユーザの利便性を向上可能になると共に、釣り針を保持する構造を簡素化可能となる。
【0008】
前記磁石は、前記釣り針を保持する釣り針保持面を備えてもよい。また、前記釣り針保持面は、前記釣り竿の先端側に面してもよい。これにより、ユーザが釣り針を磁石の釣り針保持面に近付けるだけで釣り針が釣り針保持面に引きつけられて釣り針を保持可能となる。加えて、ユーザは、ルアー、釣り糸又は釣り針のいずれかを釣り竿の先端側へ引っ張るだけで釣り針保持面から取り外す(又は引き離す)ことが可能となる。従って、ユーザの利便性をさらに向上することができる。
【0009】
前記釣り針は、前記釣り竿の種類に応じたルアーに取り付けられてもよい。また、前記磁石の前記磁力は、前記釣り針保持面を下方に向け且つ前記釣り針のベンド部(屈曲部分)を前記釣り針保持面に接触させた場合に、前記磁石の前記磁力のみにより前記ルアー及び前記釣り針を保持可能な強さであってもよい。
【0010】
前記磁石は、グリップに固定されてもよい。その場合、前記釣り針保持面は、前記釣り竿の先端側に面してもよい。これにより、例えば、後付けされるフックキーパーの形で磁石を設ける場合と比較して、ユーザは、磁石の利用を直ぐに開始することが可能となる。また、リールを用いる構成では、磁石をシャフトに設ける場合と比較して、リールとグリップ(磁石)の位置関係により、磁石と釣り糸の干渉を防止し易くなることがある。従って、ユーザの利便性をさらに向上することができる。
【0011】
前記磁石は、前記グリップの周方向に沿って前記グリップに設けられてもよい。これにより、ユーザは、周方向の位置を意識することなく、磁石に対して釣り針を着脱可能となる。従って、ユーザの利便性をさらに向上することができる。
【0012】
或いは、前記釣り竿は、シャフトと、グリップと、前記磁石を支持し前記シャフトに着脱可能な磁石ケースとを備えてもよい。また、前記磁石は、前記釣り竿の先端側に面する第1釣り針保持面と、前記釣り竿の根元側に面する第2釣り針保持面とを有してもよい。これにより、ユーザは、釣り竿(又は磁石)の長手方向における磁石の向きを意識することなく磁石ケースをシャフトに取り付けることが可能となる。従って、ユーザの利便性をさらに向上することができる。
【0013】
前記釣り竿は、前記磁石ケースを前記シャフトに固定する弾性環状部材を備えてもよい。前記磁石ケースは、前記磁石を支持する磁石支持部と、前記シャフトと接触する脚部と、前記弾性環状部材を取り付ける取付部とを備えてもよい。これにより、磁石ケースを簡易にシャフトに固定することが可能となる。
【0014】
本発明に係る釣り竿は、磁力により釣り針を保持する磁石を有するものであって、
前記磁石は、前記釣り竿の先端側に面して前記釣り針を保持する釣り針保持面を備える
ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係るフックキーパーは、
釣り針を保持する磁石と、
前記磁石を支持しシャフトに取り付けられる磁石ケースと
を備え、
前記磁石の磁力のみにより前記釣り針を保持する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、釣り針の保持及び取り外しの作業性又は利便性を向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る釣り竿の一部を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る前記釣り竿の一部を示す側面図である。
図3図3(a)は、第1実施形態のフックキーパーの一部の正面図であり、図3(b)は、第1実施形態の前記フックキーパーの一部の側面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る釣り竿の一部を示す斜視図である。
図5】第2実施形態に係る前記釣り竿の一部を示す側面図である。
図6】変形例に係る釣り竿の一部を示す斜視図である。
図7】変形例に係るフックキーパーの一部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施形態
<A−1.構成>
[A−1−1.全体構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る釣り竿10の一部を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る釣り竿10の一部を示す側面図である。図1及び図2に示すように、釣り竿10は、シャフト20と、グリップ30とを有する。グリップ30近傍には、図示しないリール(ベイトリール、スピニングリール等)が取り付けられる。また、リールから延びる釣り糸40(図2)の先端には、ルアー50(図2)が結びつけられている。
【0019】
さらに、図1及び図2に示すように、第1実施形態の釣り竿10のシャフト20は、フックキーパー60が取り付けられている。フックキーパー60は、磁石62(図1)を有し、ルアー50の釣り針52(図2)を保持する。
【0020】
[B−1−2.グリップ30]
図2に示すように、グリップ30は、リアコルク32と、ウッドスペーサ34と、フォアコルク36とを有する。リアコルク32、ウッドスペーサ34及びフォアコルク36は、それぞれ円柱状又は円錐台状を基調とする。リアコルク32は、釣り竿10の根元側に配置され、ユーザが実際に手で握る部位である。ウッドスペーサ34は、リアコルク32よりも釣り竿10の先端側に配置され、金具38を用いて図示しないリールを取り付ける部位である。リアコルク32よりも根元側には、リアコルク32、ウッドスペーサ34及びフォアコルク36を固定するラバーエンドキャップ(図示せず)が設けられる。フォアコルク36は、リアコルク32及びウッドスペーサ34よりも釣り竿10の先端側に配置され、ラバーエンドキャップと合わせてリアコルク32及びウッドスペーサ34を固定する。
【0021】
[A−1−3.フックキーパー60]
図3(a)は、第1実施形態のフックキーパー60の一部の正面図であり、図3(b)は、第1実施形態のフックキーパー60の一部の側面図である。上記のように、フックキーパー60は、シャフト20に取り付けられるものであり、磁石62の磁力のみによりルアー50の釣り針52を保持する釣り針保持部として機能する。図1に示すように、フックキーパー60は、磁石62と、磁石ケース64と、輪ゴム66(弾性環状部材)とを有する。
【0022】
磁石62は円柱状であり、その第1底面620a及び第2底面620b(図3(a)及び図3(b))のいずれもが、釣り針52を保持する釣り針保持面として機能する。以下、第1底面620a及び第2底面620bを、第1釣り針保持面620a及び第2釣り針保持面620bとも言うと共に、釣り針保持面620と総称する。磁石62は、円柱状以外の形状(例えば、直方体状又は環状)であってもよい。磁石62は、磁石62のみで釣り針52を保持する磁力を有する(詳細は後述する。)。
【0023】
磁石ケース64を介してシャフト20に取り付けられた状態で、第1底面620a(第1釣り針保持面)は、釣り竿10の先端側に面する又は露出している。また、第2底面620b(第2釣り針保持面)は、釣り竿10の根元側に面する又は露出している。磁石62及び磁石ケース64は、釣り竿10(又は磁石62)の長手方向の中心線に対して線対称である。そのため、第1底面620a及び第2底面620bの位置をひっくり返しても同じ形状となる。
【0024】
磁石ケース64は、磁石62を支持するものであり、輪ゴム66を介してシャフト20に対して着脱可能である。図3(a)及び図3(b)に示すように、磁石ケース64は、磁石支持部640と、脚部642と、輪ゴム取付部644とを有する。磁石支持部640は、磁石62を支持する部位である。第1実施形態の磁石支持部640は、円柱状の磁石62の周囲を覆う円筒状である。
【0025】
脚部642は、シャフト20と接触する部位である。脚部642は、シャフト20の長手方向に見たとき円弧状(シャフト20に向かって凹となる)であり、長手方向におけるいずれの断面も同じ形状である。これにより、脚部642は、シャフト20を収容する凹部を形成する。なお、脚部642の湾曲がシャフト20の湾曲と一致しなくても、脚部642をシャフト20に対して位置決め可能である。
【0026】
輪ゴム取付部644は、輪ゴム66(図1)を取り付ける部位である。図3(a)及び図3(b)に示すように、輪ゴム取付部644は、輪ゴム66を引っかけるための基部6440と、輪ゴム66が基部6440から外れるのを防止する返し部6442とを有する。基部6440は、磁石支持部640からシャフト20の径方向外側に延在し、シャフト20(又は磁石62)の長手方向において比較的短い(図3(b)参照)。返し部6442は、基部6440よりもシャフト20の径方向外側に配置され、シャフト20の長手方向において比較的長い(図3(b)参照)。
【0027】
輪ゴム66(図1)は、磁石ケース64をシャフト20に固定する。具体的には、ユーザは、輪ゴム66の一部を輪ゴム取付部64の基部6440に引っかけた後、輪ゴム66をシャフト20の周囲に巻き付け、その後、輪ゴム66の他部を逆方向から基部6440に引っかける(図1及び図2参照)。これにより、フックキーパー60をシャフト20に固定する。
【0028】
<A−2.磁石62の磁力>
上記のように、磁石62は、磁石62のみで釣り針52を保持する磁力を有する。より具体的には、磁石62の磁力は、ユーザが釣り針52又はルアー50を持って釣り針52を磁石62(釣り針保持面620)に近付けると、釣り針52を引きつける程度の強さである。また、磁石62の磁力は、釣り針52が磁石62(釣り針保持面620)にくっついた状態で、ユーザが釣り針52若しくはルアー50又は釣り糸40を引っ張ると、釣り針52が磁石62から容易に引き離される強さである。
【0029】
上記のような磁力であるか否かは、例えば、以下のような方法で判定可能である。すなわち、磁石62の釣り針保持面620を下方に向けた状態で釣り針52(及びルアー50)を釣り針保持面620に接触させる。手を離した状態で釣り針52と磁石62が接触状態を保てる場合、上記のような磁力を実現し得る。
【0030】
ここで、釣り針52側の重さの合計(以下「合計重さWg」ともいう。)は、釣り竿10の種類毎に設定する基準値を用いることができる。例えば、釣り竿10がトラウト用である場合、トラウト釣りに一般的に用いられるルアー50及び釣り針52の合計重さWgを用いる。トラウト用の合計重さWgは、例えば、0.4〜28gである。釣り竿10がブラックバス用である場合、ブラックバス用の合計重さWgは、例えば、3〜40gである。釣り竿10がシーバス用である場合、シーバス用の合計重さWgは、例えば、3〜50gである。合計重さWgは、上記範囲における例えば中間値以上の値又は最大値を基準値として用いる。
【0031】
また、釣り針52の形状又は材質によっても、釣り針52と磁石62の接触状態に影響し得るため、釣り針52も基準的なものを用いてもよい。例えば、釣り針52として、GAMAKATSU PTE LTDのトレブルフック(サイズ10、12又は14。特殊鋼製)を用いてもよい。
【0032】
また、磁力が、釣り針52と磁石62の接触状態を保つ最小値又はそれに近い値である場合、釣り竿10の移動に伴って釣り糸40又はルアー50若しくは釣り針52が揺れると、ユーザの意図に反して釣り針52が磁石62から引き離れ易くなってしまう。換言すると、磁石62による釣り針52の保持は実用に耐えない。そこで、合計重さWg(釣り針52及びルアー50の重さの合計)に加えて余裕値を加えた値を重さの基準値(以下「基準重さWref」ともいう。)に用いてもよい。上記から明らかなように、基準重さWrefは、釣り竿10の種類毎(又は想定されるルアー50の種類若しくは重さ)に分けて設定してもよい。例えば、トラウト、ブラックバス又はシーバス用の場合、基準重さWrefは、例えば、80〜200gの範囲で設定してもよい。これにより、磁石62による釣り針52の保持を実用に耐え得るものにし易くすることができる。
【0033】
上記のように釣り針52側を基準重さWrefとした状態で釣り針52と磁石62の接触状態を保つため、磁石62の吸着力を例えば0.75〜4.0kgfのいずれかの値で設定する。吸着力は、磁石62の一面全体を鉄板に接触させた状態で、磁石62を垂直方向(上方向)に引き、磁石62が鉄板から離脱した際の力で定義される。このような吸着力を実現する磁石62は、例えばネオジム製とすることができる。或いは、磁石62は、サマコバ製又はフェライト製としてもよい。
【0034】
表1は、上記のような磁石62を実現するための、磁石62の仕様毎の最大保持重さWmaxの例を示す。磁石62として、いずれもネオマグ株式会社製の磁石を用いた。
【0035】
【表1】
【0036】
表1において、材質記号は、ネオマグ株式会社の基準に沿ったものであり、材料、磁束密度及び耐熱温度が変化する。最大保持重さWmaxは、磁石62の釣り針保持面620を下方に向け、釣り針52及び重りを釣り針保持面620に接触させた後、手を離した状態で釣り針52と磁石62が接触状態を保てる最大の重さである。基準重さWrefを最大保持重さWmax以下とすることで、磁石62による釣り針52(及びルアー50)の保持が可能となる。
【0037】
なお、上記基準重さWref及び最大保持重さWmaxの大きさと吸着力の大きさが大きく異なっているのは、次の理由によるものと解される。すなわち、吸着力を測定する際は、磁石62の一面(釣り針保持面620)全体が鉄板に対して接するため、吸着力が比較的大きな値となる。これに対し、釣り針52と釣り針保持面620の接触は、釣り針52の形状に起因して(釣り針52のベンド部の一部のみが釣り針保持面620と接触して)非常に狭い領域で行われるため、基準重さWref及び最大保持重さWmaxが比較的小さな値となる。従って、仮に吸着力を表1に示す値よりもさらに大きくしても、ユーザが釣り針52(及びルアー50)を引き離す際に要する力は比較的小さいままである。よって、表1に示すよりも大きな吸着力を有する磁石62を用いることも可能である。
【0038】
<A−3.第1実施形態の効果>
第1実施形態によれば、磁石62の磁力のみにより釣り針52を保持する(図2)。これにより、釣り針52を引っかける部分(例えば、特許文献1の案内部(20))なしに釣り針52を保持することができる。従って、ユーザの利便性を向上可能になると共に、釣り針52を保持する構造を簡素化可能となる。
【0039】
第1実施形態において、磁石62は、釣り針52を保持する第1釣り針保持面620aを備える(図3(a)及び図3(b))。第1釣り針保持面620aは、釣り竿10の先端側に面している(図1及び図2)。これにより、ユーザが釣り針52を磁石62の第1釣り針保持面620a(釣り針保持面)に近付けるだけで釣り針52が第1釣り針保持面620aに引きつけられて釣り針52を保持可能となる。加えて、ユーザは、ルアー50、釣り糸40又は釣り針52のいずれかを釣り竿10の先端側へ引っ張るだけで釣り針52を第1釣り針保持面620aから取り外す(又は引き離す)ことが可能となる。従って、ユーザの利便性をさらに向上することができる。
【0040】
第1実施形態において、釣り竿10は、シャフト20と、グリップ30と、磁石62を支持しシャフト20に着脱可能な磁石ケース64とを備える(図1)。また、磁石62は、釣り竿10の先端側に面する第1釣り針保持面620aと、釣り竿10の根元側に面する第2釣り針保持面620bとを有する(図3(a)及び図3(b))。これにより、ユーザは、釣り竿10(又は磁石62)の長手方向における磁石62の向きを意識することなく磁石ケース64をシャフト20に取り付けることが可能となる。従って、ユーザの利便性をさらに向上することができる。
【0041】
第1実施形態において、釣り竿10は、磁石ケース64をシャフト20に固定する輪ゴム66(弾性環状部材)を備える(図1)。磁石ケース64は、磁石62を支持する磁石支持部640と、シャフト20と接触する脚部642と、輪ゴム66を取り付ける輪ゴム取付部644(取付部)とを備える(図3(a)及び図3(b))。これにより、磁石ケース64を簡易にシャフト20に固定することが可能となる。
【0042】
B.第2実施形態
<B−1.構成>
[B−1−1.全体構成]
図4は、本発明の第2実施形態に係る釣り竿10Aの一部を示す斜視図である。図5は、第2実施形態に係る釣り竿10Aの一部を示す側面図である。図4及び図5に示すように、釣り竿10Aは、シャフト20と、グリップ30aとを有する。以下では、第1実施形態と同様の構成要素に対して、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
第1実施形態の釣り竿10は、シャフト20に後付けされるフックキーパー60を有していた(図1及び図2)。換言すると、磁石62がシャフト20に後付けされた。これに対し、第2実施形態の釣り竿10Aでは、磁石62aは、釣り竿10Aの出荷時からグリップ30aに設けられている。
【0044】
[B−1−2.グリップ30a及び磁石62a]
第1実施形態のグリップ30(図2)と同様、第2実施形態のグリップ30a(図5)は、リアコルク32と、ウッドスペーサ34と、フォアコルク36とを有する。図4及び図5に示すように、第2実施形態では、第1実施形態と同様の円柱状の磁石62a(ネオジム製)がグリップ30aに固定される。より具体的には、磁石62aは、グリップ30aのフォアコルク36に埋め込まれる。これにより、釣り針52を保持する磁石62aの釣り針保持面620(図4)は、釣り竿10Aの先端側に面する。
【0045】
<B−2.第2実施形態の効果>
第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて又はこれに代えて、以下の効果を奏することができる。
【0046】
第2実施形態において、磁石62aは、グリップ30aに固定されている(図4及び図5)。また、磁石62aは、釣り針52を保持する釣り針保持面620を備え、釣り針保持面620は、釣り竿10Aの先端側に面している(図4)。これにより、例えば、後付けされるフックキーパー60の形で磁石62を設ける場合(図1及び図2)と比較して、ユーザは、磁石62aの利用を直ぐに開始することが可能となる。また、リールを用いる構成では、磁石62をシャフト20に設ける場合(図1及び図2)と比較して、リールとグリップ30a(磁石62a)の位置関係により、磁石62aと釣り糸40の干渉を防止し易くなることがある。従って、ユーザの利便性をさらに向上することができる。
【0047】
C.変形例
なお、本発明は、上記各実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0048】
<C−1.釣り竿10、10A>
第1実施形態の釣り竿10は、グリップ30の上側にリール(ベイトリール)が配置されるベイトロッドを前提としていた(図2)。しかしながら、例えば、磁石62の磁力のみにより(特許文献1の案内部(20)のような構成無しに)釣り針52を保持する観点からすれば、これに限らない。例えば、釣り竿10は、グリップ30の下側にリール(スピニングリール)が配置されるスピニングロッドであってもよい。第2実施形態も同様である。
【0049】
<C−2.釣り針52>
第1実施形態の釣り針52は、ルアー50に取り付けられたものであった(図2)。しかしながら、例えば、磁石62の磁力のみにより(特許文献1の案内部(20)のような構成無しに)釣り針52を保持する観点からすれば、これに限らない。例えば、釣り針52は、ルアー50を介さずに釣り糸40(又は図示しないハリス)に直接つながれてもよい。換言すると、釣り竿10は、ルアー釣り用では無く、餌釣り用であってもよい。第2実施形態も同様である。
【0050】
<C−3.釣り針保持部>
[C−3−1.磁石62]
第1実施形態の磁石62は、円柱状であった(図1図3(a)及び図3(b))。しかしながら、例えば、磁石62の磁力のみにより(特許文献1の案内部(20)のような構成無しに)釣り針52を保持する観点からすれば、これに限らない。例えば、磁石62は、角柱状又は環状若しくは円弧状であってもよい。第2実施形態も同様である。
【0051】
その場合、上記のように、磁石62の磁力は、ユーザが釣り針52又はルアー50を持って釣り針52を磁石62に近付けると、釣り針52を引きつける程度の強さである。また、磁石62の磁力は、釣り針52が磁石62にくっついた状態で、ユーザが釣り針52若しくはルアー50又は釣り糸40を引っ張ると、釣り針52が磁石62から容易に引き離される強さである。
【0052】
図6は、変形例に係る釣り竿10Bの一部を示す斜視図である。第1変形例の釣り竿10Bの磁石62bは円環状であり、グリップ30bの周方向に沿ってグリップ30b(フォアコルク36)に設けられる。これにより、ユーザは、周方向の位置を意識することなく、磁石62bに対して釣り針52を着脱可能となる。従って、ユーザの利便性をさらに向上することができる。なお、円環状の磁石62bの吸着力は、例えば、4.0〜10.0kgfの範囲から選択することができる。
【0053】
表2は、上記のような磁石62bを実現するための、磁石62bの仕様毎の最大保持重さWmaxの例を示す。磁石62bとして、いずれもネオマグ株式会社製の磁石を用いた。
【0054】
【表2】
【0055】
表2の各項目の定義は、表1と同様である。表2におけるリング型磁石の形状は、外径、内径及び厚みを示す。
【0056】
第1実施形態の磁石62は、釣り針保持面620a、620bが露出していた(図1図3(a)及び図3(b))。しかしながら、例えば、磁石62の磁力のみにより(特許文献1の案内部(20)のような構成無しに)釣り針52を保持する観点からすれば、これに限らない。例えば、磁石62は、防錆用のニッケルメッキ等の被覆部材を介して外部に面してもよい。第2実施形態も同様である。
【0057】
第1実施形態の磁石62は、2つの釣り針保持面620a、620bを有していた(図3(b))。しかしながら、例えば、磁石62の磁力のみにより(特許文献1の案内部(20)のような構成無しに)釣り針52を保持する観点からすれば、これに限らない。例えば、磁石62は、1つの釣り針保持面620aのみを有してもよい。
【0058】
第1実施形態では、釣り針52を保持する第1釣り針保持面620aは、釣り竿10の先端側に面していた(図1図2)。しかしながら、例えば、磁石62の磁力のみにより(特許文献1の案内部(20)のような構成無しに)釣り針52を保持する観点からすれば、これに限らない。例えば、第1釣り針保持面620aは、釣り竿10の側面側(例えば図2の上下方向)に面してもよい。第2実施形態も同様である。
【0059】
第1実施形態では、磁石ケース64及び輪ゴム66を介して磁石62をシャフト20に後付け可能(又は着脱可能)とした(図1図3(b))。しかしながら、例えば、磁石62をシャフト20に設ける観点からすれば、これに限らない。例えば、磁石62を接着剤等の固定手段でシャフト20に設けてもよい。その場合、磁石62をラバー磁石(ネオジムラバー等)で構成してもよい。或いは、シャフト20自体の一部を磁石62で構成してもよい。換言すると、磁石ケース64又は輪ゴム66を省略してもよい。
【0060】
[C−3−2.磁石ケース64]
第1実施形態の磁石ケース64は、脚部642と反対側に輪ゴム取付部644を設けた(図3(a)及び図3(b))。しかしながら、例えば、磁石ケース64に輪ゴム66を取り付ける観点からすれば、これに限らない。
【0061】
図7は、変形例に係るフックキーパー60aの一部の正面図である。図7のフックキーパー60aは、輪ゴム取付部644が磁石62又は磁石ケース64aの磁石支持部640の左右に2つ存在する。これにより、フックキーパー60a全体についてシャフト20からの距離(図2における上下方向の距離)が短くなり、フックキーパー60と釣り糸40(図示しないリールと釣り竿10の先端の間の部分)とが干渉する可能性を低くすることが可能となる。
【0062】
[C−3−3.輪ゴム66(弾性環状部材)]
第1実施形態では、輪ゴム66を用いてフックキーパー60をシャフト20に固定した(図1)。しかしながら、例えば、フックキーパー60をシャフト20に固定する観点からすれば、これに限らず、輪ゴム66以外の弾性環状部材(例えばOリング)を用いてもよい。
【0063】
[C−3−4.その他]
第1実施形態では、フックキーパー60(又は磁石62)のみを釣り針保持部として利用した(図1及び図2)。しかしながら、例えば、釣り時のポイントの移動用(釣り時保持用)に磁石62を用いる観点からすれば、これに限らない。例えば、ポイントの移動用(釣り時の釣り針52保持用)にフックキーパー60(又は磁石62)を用いる一方で、釣り竿10を自動車等に積んで長距離移動する際又は自宅で保管する際にはより強固に釣り針52を固定するための別のフックキーパー(例えば特許文献1の構成)を設けてもよい。第2実施形態も同様である。
【符号の説明】
【0064】
10、10A、10B…釣り竿 20…シャフト
30…グリップ
30a、30b…グリップ(釣り針保持部)
60、60a…フックキーパー(釣り針保持部)
62、62a…磁石 64、64a…磁石ケース
66…輪ゴム(弾性環状部材) 620…釣り針保持面
620a…第1釣り針保持面(釣り針保持面)
620b…第2釣り針保持面(釣り針保持面)
640…磁石支持部 642…脚部
644…輪ゴム取付部(取付部)
【要約】
釣り針の保持及び取り外しの作業性又は利便性を向上可能な釣り竿及びフックキーパーを提供する。釣り竿(10、10A、10B)又はフックキーパー(60、60a)は、磁石(62、62a、62b)の磁力のみにより釣り針(52)を保持する釣り針保持部を有する。磁石は、釣り竿の先端側に面して釣り針を保持する釣り針保持面(620a)を備えてもよい。磁石(62)は、磁石ケース(64、64a)及び弾性環状部材(66)を介してシャフト(20)に取り付けられてもよい。或いは、磁石(62a、62b)は、グリップ(30a、30b)に固定されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7