特許第6981624号(P6981624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981624
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】水系インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/326 20140101AFI20211202BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20211202BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20211202BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20211202BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C09D11/326
   C09D11/03
   C09D11/037
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-200635(P2017-200635)
(22)【出願日】2017年10月16日
(65)【公開番号】特開2019-73626(P2019-73626A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100118131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 渉
(72)【発明者】
【氏名】江川 剛
(72)【発明者】
【氏名】光吉 要
(72)【発明者】
【氏名】西村 晋平
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−119845(JP,A)
【文献】 特開2014−205767(JP,A)
【文献】 国際公開第01/094482(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/129476(WO,A1)
【文献】 特開2012−201710(JP,A)
【文献】 特開2018−109095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B41J 2/01
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾメチン金属錯体顔料(A)、芳香族基含有ポリマー(B)、有機溶媒(D)、及び水を含有する水系インクであって、
アゾメチン金属錯体顔料(A)と芳香族基含有ポリマー(B)の質量比[(A)/(B)]が1.4以上3.2以下であり、
芳香族基含有ポリマー(B)が、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である芳香族基含有ポリマー(b)を水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋してなる架橋ポリマーであり、
アゾメチン金属錯体顔料(A)が、アゾメチン化合物を配位子とするFe、Co、Ni及びZnから選ばれる二価又は三価の金属イオンを含む金属錯体顔料であり、
有機溶媒(D)の沸点が90℃以上250℃以下であり、その含有量がインク中20質量%以上70質量%以下である、水系インク。
【請求項2】
アゾメチン金属錯体顔料(A)が、下記一般式(2)で表される構造を有する金属錯体顔料又はその互変異性体である、請求項1に記載の水系インク。
【化1】

(式中、Mは、Fe、Co、Ni又はZnである二価又は三価の金属イオンを示し、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5の1価の炭化水素基、又は−SO3H基を示す。)
【請求項3】
アゾメチン金属錯体顔料(A)が、C.I.ピグメントイエロー150である、請求項1又は2に記載の水系インク。
【請求項4】
アゾメチン金属錯体顔料(A)の含有量が、水系インク中2質量%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の水系インク。
【請求項5】
アゾメチン金属錯体顔料(A)が、該顔料(A)の表面に芳香族基含有ポリマー(B)が付着した水不溶性ポリマー粒子の形態である、請求項1〜4のいずれかに記載の水系インク。
【請求項6】
水不溶性多官能エポキシ化合物(c)が、炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのグリシジルエーテル化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の水系インク。
【請求項7】
インクジェット記録用である、請求項1〜6のいずれかに記載の水系インク。
【請求項8】
下記工程1工程3、及び工程4を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の水系インクの製造方法。
工程1:アゾメチン金属錯体顔料(A)、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である芳香族基含有ポリマー(b)及び水を含有する混合物を分散処理して、顔料分散液を得る工程
工程3:工程1で得られた顔料水分散液を、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)にアゾメチン金属錯体顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程
工程4:工程3で得られた顔料水分散液Bと有機溶媒(D)とを混合し、水系インクを得る工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系インク及び顔料水分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用水系インクとして顔料を使用したインクが知られている。顔料を使用したインクは、優れた耐水性、耐光性を期待できるものの、顔料の凝集、沈降に伴う吐出ノズルの目詰まりが問題となっている。これを解決するため、ポリマー分散剤を用いて顔料を水性媒体中に分散させる方法が行われているが、長期間にわたって顔料を安定に分散させること、すなわち優れた保存安定性を有する顔料分散系インクジェット記録用水系インクが望まれている。
【0003】
特に、黄色顔料を色材とする水系インクでは、フルカラー印刷時の色域の広さや他色との混合時の色相等の面から保存安定性に対する要求が高い。
無機黄色顔料では、この要求への対応が困難であるため、有機黄色顔料を用いた水系インクであって、物性の変動が少なく、高い印刷品質を充足できるインクジェット記録用水系インクの開発が期待されており、いくつかの提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、高品質の印刷画像が得られ、保存安定性に優れるインクジェット記録用インクセットとして、少なくとも顔料をポリマーで包含した着色剤、浸透剤、水よりなり、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの組み合わせからなるインクセットが開示されている。その実施例では、60mgKOH/g程度の低酸価の架橋ポリマーでC.I.ピグメントイエロー150を包含した着色剤2−Bを用いたインクが使用されている。
特許文献2には、印字性、吐出安定性、保存安定性等に優れるインクとして、C.I.ピグメントイエロー150、ジオール類等の水溶性溶剤、水及び顔料分散ポリマーを含有してなるインクジェット用顔料イエローインクにおいて、顔料分散ポリマーが、(メタ)アクリレートエステル、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸を含む未架橋の共重合体であるインクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2001/094482号
【特許文献2】特開2012−201710号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
顔料分散用ポリマー分散剤及び水溶性有機溶剤を含む従来のインクジェット記録用水系インクでは、画像の耐擦性及び画質が一応改善されているが、ノズル面にインクが付着して増粘したり、付着したインクがノズル面で乾固した場合、増粘、固着したインクが後続するインク中に再度分散可能となる再分散性が低いため、保存安定性に加えてメンテナンス性が悪くなる傾向があった。インクのメンテナンス性が悪いと、メンテナンス工程での拭き取り回数が増え、インクジェットヘッド表面に設けられた撥液膜が劣化し易いという問題がある。
例えば、黄色系水系インクに関し、ポリマー分散剤を用いて分散したモノアゾ顔料であるC.I.ピグメント・イエロー74を用いたインクジェット記録用水系インクでは、水系インクの保存安定性、メンテナンス性には問題がないにも関わらず、記録物の色表現や耐熱性の向上等の目的でアゾメチン金属錯体顔料であるC.I.ピグメント・イエロー150を用いると、同じポリマー分散剤で分散しても、顔料の微粒化による増粘や凝集が発生したり、水系インクの保存安定性、メンテナンス性が劣る場合があった。
しかし、C.I.ピグメント・イエロー150が使用されている上記特許文献1及び2では、メンテナンス性については何ら述べられていない。
本発明は、保存安定性、メンテナンス性に優れるアゾメチン金属錯体顔料を含有する水系インク、及び顔料水分散液の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アゾメチン金属錯体顔料、芳香族基含有ポリマー、有機溶媒、及び水を含有し、アゾメチン金属錯体顔料と芳香族基含有ポリマーの質量比が特定の範囲にあり、芳香族基含有ポリマーが特定の架橋ポリマーである水系インクが、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]アゾメチン金属錯体顔料(A)、芳香族基含有ポリマー(B)、有機溶媒(D)、及び水を含有する水系インクであって、
アゾメチン金属錯体顔料(A)と芳香族基含有ポリマー(B)の質量比[(A)/(B)]が1.4以上4以下であり、
芳香族基含有ポリマー(B)が、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH以下である芳香族基含有ポリマー(b)を水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋してなる架橋ポリマーである、水系インク。
[2]下記工程1及び工程3を有する、アゾメチン金属錯体顔料(A)を含有する芳香族基含有ポリマー(B)粒子の顔料水分散液の製造方法。
工程1:アゾメチン金属錯体顔料(A)、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH以下である芳香族基含有ポリマー(b)及び水を含有する混合物を分散処理して、顔料分散液を得る工程
工程3:工程1で得られた顔料水分散液を、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)にアゾメチン金属錯体顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存安定性、メンテナンス性に優れるアゾメチン金属錯体顔料を含有する水系インク、及び顔料水分散液の製造方法を提供することができる。
なお、メンテナンス性とは、インクジェット記録におけるインクの増粘、固着等による不具合が低減され、高寿命となることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[水系インク]
本発明の水系インクは、アゾメチン金属錯体顔料(A)、芳香族基含有ポリマー(B)、有機溶媒(D)、及び水を含有する水系インク(以下、単に「インク」ともいう)であって、
アゾメチン金属錯体顔料(A)と芳香族基含有ポリマー(B)の質量比[(A)/(B)]が1.4以上4以下であり、
芳香族基含有ポリマー(B)が、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH以下である芳香族基含有ポリマー(b)を水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋してなる架橋ポリマーである。
なお、本明細書において、「水系インク」とは、少なくとも30質量%の水を含むインクを意味し、顔料を分散させる媒体中で、水が最大割合を占めていることが好ましい。
また、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。
【0011】
本発明の水系インクは、アゾメチン金属錯体顔料を用いていても、保存安定性、メンテナンス性に優れる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
アゾメチン金属錯体顔料(A)は、モノアゾ顔料であるC.I.ピグメントイエロー74より静電的相互作用が大きいため、水系インクに汎用されているC.I.ピグメントイエロー74より水系インク中での凝集性が高いと考えられる。そのため、印字濃度等の観点から、顔料の高濃度化、微粒化を行うと、顔料の比表面積増大に伴って、粘度の増大や、凝集異物が発生すると考えられる。これを解決する手段として、顔料の比表面積増大に合わせてポリマー分散剤量を増やす手段が考えられるが、ポリマー分散剤量を増やすとインクの粘度が増大するため、ポリマー分散剤の量を単純に増やすことができない。
そこで、ポリマー分散剤として、芳香族基含有ポリマー(B)を採用し、[顔料(A)/ポリマー分散剤]比が高い状態において、ポリマー分散剤に高い酸価を持たせることで、静電反発性を付与し、架橋したポリマー分散剤で分散することで、ポリマー分散剤が顔料(A)に一度吸着すると脱離しにくくなって、顔料粒子の分散性が向上し、顔料粒子の粒径が小さくなり、得られる水系インクの保存安定性が向上し、凝集異物の抑制ができるためメンテナンス性が高まると考えられる。
また、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)は、顔料(A)の表面近傍に存在して架橋反応が進行し、芳香族基含有ポリマー(B)の水不溶性を向上させるため、水溶性の架橋剤を用いる場合よりも、得られる芳香族基含有ポリマー(B)が顔料(A)から脱離しにくくなり、有機溶媒等のインクビヒクルを含む水系インクを保存する場合においても保存安定性に優れると考えられる。
【0012】
<アゾメチン金属錯体顔料(A)>
本発明に用いられるアゾメチン金属錯体顔料(A)(以下、「顔料(A)」、又は単に「顔料」ともいう)は、分子中にアゾメチン構造を有する黄色系の金属錯体顔料である。顔料(A)を含有する水系インクは、得られる記録物の耐熱性の点でも好ましい。
顔料(A)としては、C.I.ピグメント・イエロー117、同129、同150、同153等のアゾメチン化合物を配位子とするFe、Co、Ni及びZnから選ばれる二価又は三価の金属イオンを含む金属錯体顔料が挙げられる。前記金属イオンの具体例としては、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Ni2+及びZn2+が挙げられる。
顔料(A)は、下記一般式(1)又はその互変異性体で表される環状のアゾメチン化合物を配位子とする金属錯体顔料であることが好ましい。
【0013】
【化1】
【0014】
一般式(1)中、Xは、炭素数1〜20の1価の芳香族炭化水素基、5〜6員環の含窒素複素環を有する基を示し、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5の1価の炭化水素基、又は−SO3H基を示す。
顔料(A)は、好ましくは下記一般式(2)で表される構造を有する金属錯体顔料又はその互変異性体である。
【0015】
【化2】
【0016】
一般式(2)中、Mは、Fe、Co、Ni又はZnである二価又は三価の金属イオンを示し、より具体的には、Fe2+、Fe3+2/3、Co2+、Co3+2/3、Ni2+、及びZn2+から選ばれる二価又は三価の金属イオンである。
一般式(2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5の1価の炭化水素基、又は−SO3H基を示す。
上記顔料(A)の中では、保存安定性、メンテナンス性の観点から、より好ましくは下記式(3)で表されるアゾバルビツール酸ニッケル錯体顔料、すなわちC.I.ピグメントイエロー150である。
【0017】
【化3】
【0018】
上記顔料(A)は、単独で又は2種以上の混合物若しくは固溶体として用いることができる。顔料の形態は、粉末状、顆粒状又は塊状の乾燥顔料でもよく、ウエットケーキやスラリーでもよい。
また、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて、インクジェット記録用途で公知又は慣用の黄色顔料を併用することができる。
【0019】
本発明において、顔料(A)は、水系インク中に、芳香族基含有ポリマー(B)で分散された顔料、又は顔料を含有する芳香族基含有ポリマー(B)、即ち、顔料(A)の表面に芳香族基含有ポリマー(B)が付着した水不溶性ポリマー粒子の形態で含有される。
顔料(A)は、耐水性を維持しつつ、水系インクの保存安定性を向上させる観点から、顔料(A)を含有する芳香族基含有ポリマー(B)粒子(以下、単に「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)として含有されることが好ましく、顔料含有ポリマー粒子を、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋してなる形態であることがより好ましい。
この好適態様においては、水系インクは、少なくとも顔料含有ポリマー粒子と水を含有し、必要に応じて、更に有機溶媒を含有する。
【0020】
<芳香族基含有ポリマー(B)>
本発明の水系インクは、ポリマー分散剤として、芳香族基含有ポリマー(B)を含有する。
芳香族基含有ポリマー(B)は、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH以下である芳香族基含有ポリマー(b)を水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋してなる架橋ポリマーである。すなわち、芳香族基含有ポリマー(B)は、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH以下である芳香族基含有ポリマー(b)と水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋物であるポリマーである。
本発明で用いられる芳香族基含有ポリマー(B)は、カルボキシ基を有する芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基の少なくとも一部を中和した状態でアゾメチン金属錯体顔料(A)を水系媒体に分散した後、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋処理することによって、水系媒体中で形成されることが好ましい。
【0021】
(芳香族基含有ポリマー(b))
芳香族基含有ポリマー(b)は、アゾメチン金属錯体顔料(A)の分散作用を発現する顔料分散剤としての機能と、記録媒体への定着剤としての機能を有する。
芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基の量は酸価で表すことができる。その酸価は、80mgKOH/g以上であり、好ましくは90mgKOH/g以上、より好ましくは95mgKOH/g以上であり、そして、400mgKOH/g以下であり、好ましくは380mgKOH/g以下、より好ましくは360mgKOH/g以下、更に好ましくは340mgKOH/g以下である。酸価が前記の範囲であれば、カルボキシ基及びその中和されたカルボキシ基の量は十分であり、顔料(A)の分散安定性が確保される。また芳香族基含有ポリマー(B)と有機媒体の親和性と、芳香族基含有ポリマー(B)と顔料(A)との相互作用とのバランスの点からも好ましい。
芳香族基含有ポリマー(b)の酸価は、構成するモノマーの質量比から算出することができる。また、適当な有機溶剤(例えば、MEK)にポリマーを溶解又は膨潤させて滴定する方法でも求めることができる。
【0022】
水系インク中における、芳香族基含有ポリマー(b)を水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋させて得られる芳香族基含有ポリマー(B)の存在形態としては、(i)顔料に吸着している状態、(ii)顔料を含有している顔料内包(カプセル)状態、及び(iii)顔料を吸着していない形態がある。顔料の分散安定性、水系インクの保存安定性の観点から、本発明においては(i)又は(ii)の状態が好ましく、(ii)顔料を含有している顔料内包状態がより好ましい。
【0023】
芳香族基含有ポリマー(b)としては、(i)芳香族基含有モノマー(以下、「(i)成分」ともいう)と、(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマー(以下、「(ii)成分」ともいう)とを含む芳香族基含有モノマー混合物(以下、単に「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるポリマーが好ましい。このポリマーは、(i)成分由来の構成単位と(ii)成分由来の構成単位を有する。
芳香族基含有ポリマー(b)には、(i)成分及び(ii)成分以外に、必要に応じて、(iii)ノニオン性モノマー(以下、「(iii)成分」ともいう)等をモノマー成分として用いることができる。
【0024】
〔(i)芳香族基含有モノマー〕
(i)芳香族基含有モノマーは、顔料含有ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、芳香族基含有ポリマー(b)のモノマー成分として用いられる。
芳香族基含有モノマーは、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭素数6〜22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレート、スチレン系マクロモノマーがより好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレン等のアルキルスチレン、4−フロロスチレン、3−クロロスチレン、3−ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン、3−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中では、スチレン、α−メチルスチレンがより好ましい。
芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0025】
スチレン系マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物であり、片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
スチレン系マクロモノマーの数平均分子量は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上であり、そして、好ましくは10,000以下、より好ましくは9,000以下、更に好ましくは8,000以下である。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される値である。
商業的に入手しうるスチレン系マクロモノマーとしては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
芳香族基含有モノマーは、前記のモノマーを1種単独で又は2種以上を併用することができるが、スチレン系モノマー又は芳香族基含有(メタ)アクリレートと、スチレン系マクロモノマーを併用することが好ましく、スチレン系モノマーとスチレン系マクロモノマーを併用することがより好ましく、スチレンとスチレン系マクロモノマーを併用することが更に好ましい。
【0026】
〔(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマー〕
(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマーは、顔料含有ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、芳香族基含有ポリマー(b)のモノマー成分として用いられる。
カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、カルボン酸モノマーが用いられ、カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。これらの中では、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上が好ましい。
【0027】
〔(iii)ノニオン性モノマー〕
(iii)ノニオン性モノマーは、顔料含有ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、必要に応じて、芳香族基含有ポリマー(b)のモノマー成分として用いることができる。
ノニオン性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:n=1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートが好ましく、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレートがより好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上を意味する。以下における「(メタ)」も同義である。
【0028】
商業的に入手しうるノニオン性モノマーとしては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM−20G、同40G、同90G、同230G等、日油株式会社のブレンマーPE−90、同200、同350等、PME−100、同200、同400等、PP−500、同800、同1000等、AP−150、同400、同550等、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE−600B等が挙げられる。
【0029】
本発明に用いられる芳香族基含有ポリマー(b)は、本発明の目的を損なわない範囲において、前記モノマー以外の他のモノマー由来の構成単位を含有することができる。
他のモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等のシリコーン系マクロモノマー等が挙げられる。
上記モノマー成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
(モノマー混合物中又はポリマー中における各成分又は構成単位の含有量)
芳香族基含有ポリマー(b)製造時における、(i)芳香族基含有モノマー、(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマー、及び必要に応じて含有させる(iii)ノニオン性モノマーのモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)、すなわち芳香族基含有ポリマー(b)中における(i)、(ii)及び(iii)成分由来の構成単位の含有量は、芳香族基含有ポリマー(b)のアゾメチン金属錯体顔料(A)への芳香族基含有ポリマー(b)の親和性を向上させ、水系インクの保存安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
【0031】
(i)芳香族基含有モノマーの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
また、(i)成分としてスチレン系マクロモノマーを含む場合、スチレン系マクロモノマーは、スチレン系モノマー及び/又は芳香族基含有(メタ)アクリレート等の他のモノマーと併用することが好ましい。スチレン系マクロモノマーの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマーの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
【0032】
[(ii)成分/(i)成分]の質量比は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.20以上であり、そして、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下である。
(iii)ノニオン性モノマーを含有する場合、その含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
また、(i)、(ii)及び(iii)成分を含有する場合、〔(ii)成分/[(i)成分+(iii)成分]〕の質量比は、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。
【0033】
(芳香族基含有ポリマー(b)の製造)
芳香族基含有ポリマー(b)は、前記モノマー混合物を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に特に制限はないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、炭素数3〜5のケトン類、エーテル類、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましく、メチルエチルケトン又はそれと水との混合溶媒が好ましい。
【0034】
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の連鎖移動剤を用いることができる。
また、重合モノマーの連鎖の様式に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの重合様式でもよいが、ランダム、グラフトが好ましく、ランダムがより好ましい。
【0035】
好ましい重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、通常、重合温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より80℃以下である。重合時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。また、重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
【0036】
本発明において、芳香族基含有ポリマー(b)を用いて顔料(A)を分散する方法としては、任意の公知の方法を用いることができるが、後述する顔料含有ポリマー粒子の水分散液とすることが好ましい。顔料含有ポリマー粒子の水分散液の生産性を向上させる観点から、重合反応に用いた溶媒を除去せずに、含有する有機溶媒を後述する工程1’に用いる有機溶媒として用いるために、そのまま芳香族基含有ポリマー(b)溶液として用いることが好ましい。
芳香族基含有ポリマー(b)溶液の固形分濃度は、顔料含有ポリマー粒子の水分散液の生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
【0037】
本発明で用いられる芳香族基含有ポリマー(b)の重量平均分子量は、好ましくは5,000以上、より好ましくは7,000以上、更に好ましくは9,000以上であり、そして、好ましくは80,000以下、より好ましくは70,000以下、更に好ましくは60,000以下である。ポリマーの重量平均分子量が前記の範囲であれば、顔料への吸着力が十分であり保存安定性を発現することができる。
なお、重量平均分子量の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
【0038】
〔顔料含有ポリマー粒子の製造〕
アゾメチン金属錯体顔料(A)を含有する芳香族基含有ポリマー(B)粒子(顔料含有ポリマー粒子)は、水分散液として下記の工程1及び3を有する方法により、効率的に製造することができる。更に、工程1で中和剤を混合することがより好ましい。
工程1:アゾメチン金属錯体顔料(A)、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である芳香族基含有ポリマー(b)及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、顔料分散液を得る工程
工程3:工程1で得られた顔料水分散液を、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)にアゾメチン金属錯体顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程
【0039】
好ましくは、アゾメチン金属錯体顔料(A)を含有する芳香族基含有ポリマー(B)粒子(顔料含有ポリマー粒子)は、水分散液として下記の工程1’〜3’を有する方法により、効率的に製造することができる。更に、工程1’で中和剤を混合することがより好ましい。
工程1’:アゾメチン金属錯体顔料(A)、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である芳香族基含有ポリマー(b)、有機溶媒、及び水を含有する混合物(顔料混合物)を分散処理して、顔料分散液を得る工程
工程2’:工程1’で得られた顔料分散液から有機溶媒を除去して、顔料水分散液Aを得る工程
工程3’:工程2’で得られた顔料水分散液Aを、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)にアゾメチン金属錯体顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程
【0040】
(工程1)(工程1’)
工程1は、顔料(A)、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である芳香族基含有ポリマー(b)、及び水を含有する顔料混合物を分散処理して、顔料分散液を得る工程である。また、工程1’は、更に有機溶媒を含有する顔料混合物を分散処理して、顔料分散液を得る工程である。更に必要に応じて、工程1及び工程1’において、中和剤を含有する顔料混合物を分散処理してもよい。
以下において工程1を説明するが、工程1’も同様である。
芳香族基含有ポリマー(b)の製造方法は前記のとおりである。
工程1では、まず、芳香族基含有ポリマー(b)を有機溶媒に溶解させ、中和剤で中和することが好ましい(工程1’)。
芳香族基含有ポリマー(b)を溶解させる有機溶媒に制限はないが、大気圧において150℃以下の沸点を有する揮発性有機溶媒が好ましく、例えば、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エステル類等が挙げられる。これらの中では、顔料への濡れ性、芳香族基含有ポリマー(b)の溶解性、及び芳香族基含有ポリマー(b)の顔料への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。
芳香族基含有ポリマー(b)を溶液重合法で製造した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
【0041】
(中和剤)
芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基の少なくとも一部は、得られる水系インクの耐水性、保存安定性等の観点から、中和剤で中和され、酸価を調整される。この時のpHは7以上11以下になるように中和することが好ましい。
中和剤としては、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。また、該芳香族基含有ポリマーを予め中和しておいてもよい。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、水溶液として用いることが好ましい。該水溶液の濃度は、上記の観点から、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、そして、50質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
中和剤の添加量は、芳香族基含有ポリマー(b)が有する全カルボキシル基を中和するために必要な量の0.2〜1.0倍に相当する量であることが好ましい。
【0042】
芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基の中和度は、得られる水系インクの耐水性、保存安定性の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは66モル%以下である。
ここで中和度とは、中和剤のモル当量数を芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基のモル当量数で除した値、即ち「中和剤のモル当量数/芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。本発明では、中和度は中和剤のモル当量数から計算するため、中和剤を過剰に用いた場合は100モル%を超える。
【0043】
工程1において、中和剤として、アルカリ金属水酸化物に加えて、揮発性塩基性化合物を併用することもできる。ここで揮発性塩基性化合物とは、大気圧における沸点が100℃以下の有機アミンを意味し、揮発性塩基性化合物の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。この中では揮発性の高さの観点からアンモニアが好ましい。
揮発性塩基性化合物の使用量については特に制限はないが、全く用いないか、又は用いる場合は10モル%以上、好ましくは20モル%以上、更に好ましくは25モル%以上、より更に好ましくは30モル%以上、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、より更に好ましくは75モル%以下である。
本発明の中和度の算出には、アルカリ金属水酸化物の使用量を算入し、揮発性塩基性化合物の使用量は用いない。
【0044】
(顔料混合物中の各成分の含有量)
工程1における顔料混合物中の各成分の含有量は、得られる顔料水分散液の耐水性、保存安定性、及び生産性の観点から、以下のとおりである。
顔料(A)の顔料混合物中の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
芳香族基含有ポリマー(b)の顔料混合物中の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上であり、そして、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、更に好ましくは6.0質量%以下である。
有機溶媒の顔料混合物中の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
水の顔料混合物中の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
芳香族基含有ポリマー(b)に対する顔料(A)の顔料混合物中の質量比〔顔料(A)/芳香族基含有ポリマー(b)〕は、好ましくは1.4以上であり、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.8以上、より更に好ましくは2.0以上、より更に好ましくは2.2以上であり、そして、好ましくは4以下であり、より好ましくは3.8以下、更に好ましくは3.6以下、より更に好ましくは3.4以下、より更に好ましくは3.2以下である。
【0045】
(顔料混合物の分散処理)
工程1において、顔料分散液を得る分散方法に特に制限はない。本分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
顔料混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができるが、中でも高速撹拌混合装置が好ましい。
【0046】
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidic社製)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、そして、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは3以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
【0047】
(工程2’)
工程2’は、工程1で有機溶媒を顔料混合物に含有した場合に、工程1で得られた顔料分散液から有機溶媒を除去して、顔料水分散液Aを得る工程である。
有機溶媒の除去は、公知の方法で行うことができる。得られた顔料水分散液A中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に顔料分散液を加熱撹拌処理することもできる。
得られる顔料水分散液Aは、顔料含有ポリマー粒子が水を主媒体とする媒体中に分散しているものである。ここで、顔料含有ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料(A)と芳香族基含有ポリマー(b)により粒子が形成されていればよいが、前述のように、芳香族基含有ポリマー(b)に顔料(A)が内包された粒子形態であることが好ましい。
【0048】
得られた顔料水分散液Aの不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散液の分散安定性を向上させる観点及び水系インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
なお、顔料水分散液Aの固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散液A中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは140nm以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0049】
(工程3)(工程3’)
工程3は、工程1で得られた顔料水分散液を、工程3’は、工程2’で得られた顔料水分散液Aを、それぞれ、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)に顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程である。
この工程で、顔料含有ポリマー粒子を構成する芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基の一部を架橋し、顔料含有ポリマー粒子の表層部に架橋構造を形成させる。すなわち本発明に係る芳香族基含有ポリマー(B)は、顔料表面上で芳香族基含有ポリマー(b)と水不溶性多官能エポキシ化合物(c)から調製される。
【0050】
<水不溶性多官能エポキシ化合物(c)>
本発明で用いられる水不溶性多官能エポキシ化合物(c)は、水を主体とする媒体中で効率よく芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基と反応させる観点から、20℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が好ましくは50g以下、より好ましくは40g以下、更に好ましくは35g以下である。
また、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)は、得られる水系インクの保存安定性、メンテナンス性の観点から、水溶率(質量比)は好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下である。ここで、水溶率%(質量比)とは、室温25℃にて水90質量部にエポキシ化合物10質量部を溶解したときの溶解率(%)をいい、より具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
【0051】
水不溶性多官能エポキシ化合物(c)としては、分子中に2以上のエポキシ基、好ましくはグリシジルエーテル基を有する化合物が好ましく、炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのグリシジルエーテル化合物がより好ましい。
水不溶性多官能エポキシ化合物(c)の分子量は、反応のし易さ、及び得られる架橋ポリマーの保存安定性の観点から、好ましくは120以上、より好ましくは150以上、更に好ましくは200以上であり、そして、好ましくは1500以下、より好ましくは1000以下、更に好ましくは800以下である。
水不溶性多官能エポキシ化合物(c)のエポキシ基の数は、効率よくカルボキシ基と反応させて顔料含有ポリマー粒子の保存安定性等を高める観点から、1分子あたり2〜6が好ましく、1分子あたり3〜6がより好ましい。また1分子内に5以上のエポキシ基を有するものは市場入手性が乏しいので、反応性と経済性の両立という観点から、1分子内に3又は4のエポキシ基を有するものがより好ましい。
水不溶性多官能エポキシ化合物(c)のエポキシ当量は、上記と同様の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは120以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは270以下、更に好ましくは250以下である。
【0052】
水不溶性多官能エポキシ化合物(c)の具体例としては、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(水溶率31%)、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(水溶率27%)、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中では、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(水溶率27%)、及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(水不溶性)が好ましい。
【0053】
(架橋反応)
本発明においては、芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基の一部を中和剤で中和して顔料(A)を分散させ、顔料水分散液Aを得た後、更に該芳香族基含有ポリマー(b)が有するカルボキシ基の一部を水不溶性多官能エポキシ化合物(c)と反応させて架橋構造を形成させて、系内で得られた芳香族基含有ポリマー(B)で顔料(A)を水系媒体に分散させた顔料水分散液Bとする。
【0054】
芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基と水不溶性多官能エポキシ化合物(c)との架橋反応は、芳香族基含有ポリマー(b)で顔料(A)を分散した後に行うことが好ましい。
その反応温度は、上記と同様の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、より更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは65℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。
また、その反応時間は、反応の完結と経済性の観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは1.5時間以上、より更に好ましくは3.0時間以上であり、そして、好ましくは12時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは8.0時間以下、より更に好ましくは6時間以下である。
架橋された芳香基含有ポリマー(b)の架橋度は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物(c)のエポキシ基のモル当量数/芳香族基含有ポリマー(b)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)で算出される見かけの架橋度である。
【0055】
顔料水分散液B中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは140nm以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
また、本発明の水系インクの平均粒径は、顔料水分散液Bの平均粒径と実質的に同じである。
顔料水分散液BのpHは、好ましくは8.0以上、より好ましくは8.5以上である。pHが8.0以上であれば、アニオン性基の解離が促進され、顔料分散液の電荷量が十分であり、これは顔料分散液の保存安定性を高めることができる。pHの上限に特に制限はないが、プリンタや印刷機の部材に悪影響を与えることを避けるため、顔料水分散液BのpHは、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下である。
pHの測定法に特に制限はないが、ガラス電極を用いたpH測定法がJIS Z8802に規定されており、簡便かつ正確な点から、この方法が好ましい。
【0056】
〔水系インクの製造〕
本発明の水系インクは、特に限定されないが、下記工程1、3、4を有する方法、又は下記工程1’〜4’を有する方法により効率的に製造することができる。
工程1:アゾメチン金属錯体顔料(A)、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である芳香族基含有ポリマー(b)及び水を含有する混合物(顔料混合物)を分散処理して、顔料分散液を得る工程
工程3:工程1で得られた顔料水分散液を、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)にアゾメチン金属錯体顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程
工程4:工程3で得られた顔料水分散液Bと有機溶媒(D)とを混合し、水系インクを得る工程
工程1’:アゾメチン金属錯体顔料(A)、酸価が80mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である芳香族基含有ポリマー(b)、有機溶媒、及び水を含有する混合物(顔料混合物)を分散処理して、顔料分散液を得る工程
工程2’:工程1’で得られた顔料分散液から有機溶媒を除去して、顔料水分散液Aを得る工程
工程3’:工程2’で得られた顔料水分散液Aを、水不溶性多官能エポキシ化合物(c)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)にアゾメチン金属錯体顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程
工程4’:工程3’で得られた顔料水分散液Bと有機溶媒(D)とを混合し、水系インクを得る工程
【0057】
工程1、3、及び工程1’〜3’の詳細は、前述した〔顔料含有ポリマー粒子の製造〕における工程1、3、及び工程1’〜3’に記載したとおりである。
工程4は、工程3又は工程3’で得られた顔料水分散液Bと有機溶媒(D)とを混合し、水系インクを得る工程であるが、その混合方法に特に制限はない。
【0058】
<有機溶媒(D)>
有機溶媒(D)は、水系インクの保存安定性等を更に向上させる観点から用いられる。ここで用いられる有機溶媒は、沸点90℃以上の1種又は2種以上の有機溶媒を含むことが好ましく、沸点(加重平均値)が250℃以下である有機溶媒が好ましい。有機溶媒の沸点の加重平均値は、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
当該有機溶媒の好適例としては、多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
【0059】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等が挙げられる。また、トリエチレングリコール(沸点285℃)、トリプロピレングリコール(沸点273℃)、グリセリン(沸点290℃)等を沸点が250℃未満の化合物、好ましくは沸点が230℃未満の化合物と組み合わせて用いることができる。これらの中では、エチレングリコール(沸点197℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)及びジエチレングリコール(沸点244℃)がより好ましく、エチレングリコール及びプロピレングリコールが更に好ましい。
【0060】
多価アルコールアルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。また、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点276℃)等を沸点が250℃未満の化合物、好ましくは沸点が230℃未満の化合物と組み合わせて用いることができる。これらの中では、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルがより好ましい。
【0061】
有機溶媒は、前記多価アルコールと多価アルコールアルキルエーテル以外のその他の有機溶媒、例えば含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等を含有することができる。その他の有機溶媒は、25℃環境下で液状であるものが好ましい。
本発明の水系インクにおいては、複数の有機溶媒が含まれうるが、沸点が250℃を超える有機溶媒の含有量は、有機溶媒(D)中、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましは1質量%以下であり、より更に好ましくは0質量%である。
【0062】
本発明の水系インクは、更に必要に応じて、水系インクに通常用いられる界面活性剤、湿潤剤、浸透剤、保湿剤、分散剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0063】
(界面活性剤)
界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために添加するもので、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
【0064】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等が挙げられる。
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等も使用することができる。
これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
界面活性剤の含有量は特に制限はないが、水系インク中、0.001〜3質量%、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.1〜1.0質量%で用いることができる。
【0065】
本発明の水系インク中の各成分の含有量、及びインク物性は以下のとおりである。
(アゾメチン金属錯体顔料(A)の含有量)
水系インク中の顔料(A)の含有量は、水系インクの印刷濃度を向上させる観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは3質量%以上である。また、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、高温下における保存安定性を向上させる観点から、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましく8質量%以下、より更に好ましく6質量%以下である。
(アゾメチン金属錯体顔料(A)と芳香族基含有ポリマー(B)との合計含有量)
水系インク中の顔料(A)と芳香族基含有ポリマー(B)との合計含有量は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは1.8質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、より更に好ましくは2.2質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは9質量%以下である。
アゾメチン金属錯体顔料(A)と芳香族基含有ポリマー(B)の質量比[(A)/(B)]は、保存安定性、メンテナンス性の観点から、1.4以上であり、好ましくは1.6以上、より好ましくは1.8以上、更に好ましくは2.0以上、より更に好ましくは2.2以上であり、そして、4以下であり、好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下、更に好ましくは3.4以下、より更に好ましくは3.2以下である。
【0066】
(有機溶媒(D)の含有量)
水系インク中の有機溶媒(D)の含有量は、保存安定性、メンテナンス性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
プロピレングリコールの水系インク中の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
【0067】
(水の含有量)
水系インク中の水の含有量は、保存安定性、メンテナンス性の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
【0068】
(水系インク物性)
水系インクの32℃の粘度は、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは2.0mPa・s以上であり、より好ましくは3.0mPa・s以上であり、更に好ましくは5.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下であり、より好ましくは9.0mPa・s以下であり、更に好ましくは7.0mPa・s以下である。
水系インクのpHは、インクの保存安定性を更に向上させる観点から、好ましくは7.0以上であり、より好ましくは7.2以上であり、更に好ましくは7.5以上である。また、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、pHは、好ましくは11.0以下であり、より好ましくは10.0以下であり、更に好ましくは9.5以下である。
【0069】
本発明の水系インクは、保存安定性に優れ、良好な記録物を得ることができるため、フレキソ印刷用、グラビア印刷用、又はインクジェット記録用のインクとして好適に用いることができ、また、インクジェット記録方式におけるメンテナンス性に優れることから、インクジェット記録用水系インクとして用いることが好ましい。
本発明の水系インクは、公知のインクジェット記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて画像等を記録することができる。
インクジェット記録装置としては、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等があるが、ピエゾ式のインクジェット記録用水系インクとして用いることがより好ましい。
用いることができる記録媒体としては、高吸水性の普通紙、低吸水性のコート紙及びフィルムが挙げられる。コート紙としては、汎用光沢紙、多色フォームグロス紙等が挙げられ、フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下の製造例、調製例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
【0071】
(1)芳香族基含有ポリマーの重量平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、高速液体クロマトグラフィー用)に、リン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)及びリチウムブロマイド(東京化成工業株式会社製、試薬)をそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
【0072】
(2)芳香族基含有ポリマーの酸価の算出
ポリマーの酸価は、構成するモノマーの質量比から算出した。
製造例1のポリマーB1の酸価は、104mgKOH/gと算出され、
製造例2のポリマーB2の酸価は、327mgKOH/gと算出され、
比較製造例1のポリマーB3の酸価は、70mgKOH/gと算出される。
【0073】
(3)顔料水分散液の固形分濃度の測定
30mlのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で更に15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
【0074】
(4)多官能エポキシ化合物の水溶率の測定
室温25℃にてイオン交換水90質量部及び架橋剤10質量部をガラス管(25mmφ×250mmh)に添加し、該ガラス管を水温25℃に調整した恒温槽中で1時間静置した。次いで、該ガラス管を1分間激しく振とうした後、再び恒温槽中で10分間静置した。次いで、未溶解物を秤量し、水溶率(質量%)を算出した。
【0075】
(5)顔料含有ポリマー粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム(大塚電子株式会社、型番:ELS−8000)を用いてキュムラント解析を行い測定した。測定する粒子の濃度が約5×10-3重量%になるよう水で希釈した分散液を用いた。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力し、得られたキュムラント平均粒径を顔料含有ポリマー粒子の平均粒径とした。
【0076】
<ポリマー分散剤の調製>
製造例1(芳香族基含有ポリマーB1溶液の製造)
2つの滴下ロート1及び2を備えた反応容器内に、表1の「初期仕込みモノマー溶液」に示すモノマー、溶媒(メチルエチルケトン:MEK)、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。
一方、表1の「滴下モノマー溶液1」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65)、重合連鎖移動剤を混合して、滴下モノマー溶液1を得、滴下ロート1中に入れて、窒素ガス置換を行った。
また、表1の「滴下モノマー溶液2」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤、重合連鎖移動剤を混合して、滴下モノマー溶液2を得、滴下ロート2中に入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を攪拌しながら77℃に維持し、滴下ロート1中の滴下モノマー溶液1を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。次いで滴下ロート2中の滴下モノマー溶液2を2時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の混合溶液を77℃で0.5時間攪拌した。
【0077】
次いで前記の重合開始剤(V−65)0.6部をメチルエチルケトン27.0部に溶解した重合開始剤溶液を調製し、該混合溶液に加え、77℃1時間攪拌することで熟成を行った。前記重合開始剤溶液の調製、添加及び熟成を更に5回行った。次いで反応容器内の反応溶液を80℃に1時間維持し、メチルエチルケトンを加えて芳香族基含有ポリマーB1の溶液(固形分濃度:40.8%)を得た。
得られた芳香族基含有ポリマーB1の重量平均分子量は52,700、酸価は104mgKOH/gであった。また、得られた芳香族基含有ポリマーB1を105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、水に5×10−3質量%(固形分濃度換算)で溶解させたときの平均粒径は89nmであった。
【0078】
なお、表1中のモノマーの詳細は下記のとおりである。
スチレンマクロマー:東亜合成株式会社製「AS−6(S)」、(数平均分子量6000、50質量%メチルイソブチルケトン溶液)
M−40G:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、新中村化学工業株式会社社製、NKエステルM−40G(エチレンオキシド平均付加モル数:4、末端:メトキシ基)
【0079】
【表1】
【0080】
製造例2(芳香族基含有ポリマーB2溶液の製造)
アクリル酸84部、スチレン108部、α−メチルスチレン8部を混合しモノマー混合液を調製した。反応容器内に、MEK20部、2−メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、及び前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に、行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK60部及びアゾ系ラジカル重合開始剤(V−65)2.2部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をMEK5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、カルボキシ基を有するポリマー溶液(B2)(固形分濃度:71.0%、ポリマーの重量平均分子量:16500、ポリマーの酸価:327mgKOH/g)を得た
【0081】
比較製造例3(芳香族基含有ポリマーB3溶液の製造)
アクリル酸18部、スチレン174部、α−メチルスチレン8部を混合してモノマー混合液を調製し、その後、製造例2と同様にして、カルボキシ基を有するポリマー溶液B3(ポリマーの重量平均分子量:19000、ポリマーの酸価:70mgKOH/g)を得た。
【0082】
調製例1(顔料含有ポリマー粒子の水分散液1の調製)
(1)製造例1で得られた芳香族基含有ポリマーB1溶液(固形分濃度40.8%)147.1gを、MEK119.1gと混合し、芳香族基含有ポリマーB1のMEK溶液を得た。容積が2Lのディスパーに該芳香族基含有ポリマーB1のMEK溶液を投入し、1400rpmの条件で撹拌しながら、イオン交換水591.8g、5N水酸化ナトリウム水溶液16.0g、及び25%アンモニア水溶液1.9gを添加して、水酸化ナトリウムによる中和度が60モル%、アンモニアによる中和度が25モル%となるように調整し、0℃の水浴で冷却しながら、2000rpmで15分間撹拌した。
次いで、C.I.ピグメントイエロー150(ランクセス社製、Bayscript Yellow 4GF)180gを加え、6400rpmで1時間撹拌した。得られた顔料混合物をメディア分散機(寿工業株式会社製、ウルトラ・アペックス・ミル、形式:UAM−1)を用いて、粒径0.05mmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製「YTZボール」、造粒法により作製された分散メディア粒子)を充填し(ビーズ充填率80%)、攪拌翼周速12m/s、循環流量500mL/minの条件で2時間、循環方式による分散処理を行った。次に、マイクロフルタイザー(Microfluidics社製、高圧分散機)を用いて、150MPaの圧力で3パスの高圧分散処理を行い、分散処理物を得た。固形分濃度は23.0質量%であった。
【0083】
(2)前記工程で得られた分散処理物1000gを2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水533.3gを加え(固形分濃度15.0質量%)、回転式蒸留装置「ロータリーエバポレーター N−1000S」(東京理化器械株式会社製)を用いて、回転数50rpmで、32℃に調整した温浴中、0.09MPaの圧力で3時間保持して、有機溶媒を除去した。更に、温浴を62℃に調整し、圧力を0.07MPaに下げて固形分濃度25.0質量%になるまで濃縮した。
(3)得られた濃縮物を500mlアングルローターに投入し、高速冷却遠心機(日立工機株式会社製、himac CR22G、設定温度20℃)を用いて7000rpmで20分間遠心分離した後、液層部分を5μmのメンブランフィルター(Sartorius社製、Minisart)で濾過した。
ろ液400g(ピグメントイエロー150 73.5g、芳香族基含有ポリマーB1 24.5g)にイオン交換水52.42gを添加し、更にプロキセルLVS(アーチケミカルズジャパン株式会社製:防黴剤、有効分20%)1.37gを添加し、更に架橋剤としてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX−321、分子量302、エポキシ当量140、水溶率27%)2.35gを添加し、70℃で3時間攪拌した(架橋度40モル%)。25℃に冷却後、前記5μmフィルターでろ過し、更に固形分濃度は22.0質量%になるようにイオン交換水を加えて、顔料含有ポリマー粒子の水分散液1(顔料含有ポリマー粒子の平均粒径:110nm)を得た。
【0084】
調製例2(顔料含有ポリマー粒子の水分散液2の調製)
製造例2で得られた芳香族基含有ポリマーB2溶液(固形分濃度71.0%)を減圧乾燥させて得られたポリマー58.1部をMEK71.5部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%、和光純薬工業株式会社製、容量滴定用)23.6部を加え、ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が40%になるように中和した(中和度40モル%)。更にイオン交換水695.1部を加え、その中に前記ピグメントイエロー150(Bayscript Yellow 4GF)200gを加え、ディスパー(浅田鉄工株式会社製、ウルトラディスパー:商品名)を用いて、20℃でディスパー翼を7000rpmで回転させる条件で60分間攪拌した。
得られた顔料混合物を前記メディア分散機(UAM−1)を用いて、調製例1(1)と同様にして分散処理物を得た。
【0085】
(2)前記工程で得られた分散処理物1000gを2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水666.7gを加え(固形分濃度15.0質量%)、前記ロータリーエバポレーターを用いて、調製例1(2)と同様にして固形分濃度25.0質量%になるまで濃縮した。
(3)得られた濃縮物を用いて調製例1(3)と同様にして濾過した。
ろ液400g(ピグメントイエロー150 76.0g、芳香族基含有ポリマーB2 22.1g)にイオン交換水61.61gを添加し、更に前記プロキセルLVS(防黴剤)1.08gを添加し、更に前記デナコールEX−321L(架橋剤)4.86gを添加し、70℃で3時間攪拌した(架橋度40モル%)。25℃に冷却後、前記5μmフィルターでろ過し、更に固形分濃度は22.0質量%になるようにイオン交換水を加えて、顔料含有ポリマー粒子の水分散液2(顔料含有ポリマー粒子の平均粒径:110nm)を得た。
【0086】
調製例3(顔料含有ポリマー粒子の水分散液3の調製)
調製例1の顔料をC.I.ピグメントイエロー74(山陽色素株式会社製、ファストイエロー7414)に変更した以外は、調製例1と同様の方法にて、顔料含有ポリマー粒子の水分散液3(顔料含有ポリマー粒子の平均粒径:110nm)を得た。
【0087】
調製例4(顔料含有ポリマー粒子の水分散液4の調製)
比較製造例3で得られた芳香族基含有ポリマーB3(ポリマーの酸価:70mgKOH/g)溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー58.1部をMEK70.7部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%、和光純薬工業株式会社製)6.9部を加え、ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が40%になるように中和した(中和度40モル%)。更にイオン交換水701.3部を加え、その中に前記ピグメントイエロー150(Bayscript Yellow 4GF)200gを加え、前記ウルトラディスパーを用いて、20℃でディスパー翼を7000rpmで回転させる条件で60分間攪拌した。
得られた顔料混合物を前記メディア分散機(UAM−1)を用いて、調製例1(1)と同様にして分散処理物を得た。
【0088】
(2)前記工程で得られた分散処理物1000gを2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水666.7gを加え(固形分濃度15.0質量%)、前記ロータリーエバポレーターを用いて、調製例1(2)と同様にして固形分濃度25.0質量%になるまで濃縮した。
(3)得られた濃縮物を用いて、調製例1(3)と同様にして遠心分離した後、濾過した。
ろ液400g(ピグメントイエロー150 76.0g、芳香族基含有ポリマーB3 22.1g)にイオン交換水49.46gを添加し、更に前記プロキセルLVS(防黴剤)1.03gを添加し、更に前記デナコールEX−321L(架橋剤)1.42gを添加し、70℃で3時間攪拌した。25℃に冷却後、前記5μmフィルターでろ過し、更に固形分濃度は22.0質量%になるようにイオン交換水を加えて、顔料含有ポリマー粒子の水分散液4(顔料含有ポリマー粒子の平均粒径:160nm)を得た。
【0089】
調製例5(顔料含有ポリマー粒子の水分散液5の調製)
(1)製造例1で得られた芳香族基含有ポリマーB1溶液(固形分濃度40.8%)223.0gを、メチルエチルケトン(MEK)73.6gと混合し、芳香族基含有ポリマーB1のMEK溶液を得た。容積が2Lのディスパーに該芳香族基含有ポリマーB1のMEK溶液を投入し、1400rpmの条件で撹拌しながら、イオン交換水582.6g、5N水酸化ナトリウム水溶液24.2g、及び25%アンモニア水溶液2.9gを添加して、水酸化ナトリウムによる中和度が60モル%、アンモニアによる中和度が25モル%となるように調整し、0℃の水浴で冷却しながら、2000rpmで15分間撹拌した。次いで前記ピグメントイエロー150(Bayscript Yellow 4GF)147.0gを加え、6400rpmで1時間撹拌した。得られた顔料混合物を前記メディア分散機(UAM−1)を用いて、調製例1(1)と同様にして分散処理を行った。次に、前記マイクロフルタイザー(Microfluidics社製)を用いて、150MPaの圧力で3パスの高圧分散処理を行い、分散処理物を得た。
【0090】
(2)前記工程で得られた分散処理物1000gを2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水533.3gを加え(固形分濃度15.0質量%)、前記ロータリーエバポレーターを用いて、調製例1(2)と同様にして固形分濃度25.0質量%になるまで濃縮した。
(3)得られた濃縮物を用いて、調製例1(3)と同様にして遠心分離した後、濾過した。
ろ液400g(ピグメントイエロー150 60.5g、芳香族基含有ポリマーB1 37.5g)にイオン交換水56.81gを添加し、更に前記プロキセルLVS(防黴剤)1.39gを添加し、更に前記デナコールEX−321L(架橋剤)3.59gを添加し、70℃で3時間攪拌した。25℃に冷却後、前記5μmフィルターでろ過し、更に固形分濃度は22.0質量%になるようにイオン交換水を加えて、顔料含有ポリマー粒子の水分散液5(顔料含有ポリマー粒子の平均粒径:110nm)を得た。
【0091】
調製例6(顔料含有ポリマー粒子の水分散液6の製造)
調製例1(3)のイオン交換水を44.11gに、前記プロキセルLVS(防黴剤)を1.34gに、前記デナコールEX−321L(架橋剤)を0gにそれぞれ変更した以外は、調製例1と同様にして、顔料含有ポリマー粒子の水分散液6(顔料含有ポリマー粒子の平均粒径:115nm)を得た。
【0092】
調製例7(顔料含有ポリマー粒子の水分散液7の調製)
(1)製造例1で得られた芳香族基含有ポリマーB1溶液(固形分濃度40.8%)283.0gを、MEK59.8gと混合し、芳香族基含有ポリマーB1のMEK溶液を得た。容積が2Lのディスパーに該芳香族基含有ポリマーB1のMEK溶液を投入し、1400rpmの条件で撹拌しながら、イオン交換水640.5g、5N水酸化ナトリウム水溶液30.7g、及び25%アンモニア水溶液3.7gを添加して、水酸化ナトリウムによる中和度が60モル%、アンモニアによる中和度が25モル%となるように調整し、0℃の水浴で冷却しながら、2000rpmで15分間撹拌した。
次いで、前記ピグメントイエロー150(Bayscript Yellow 4GF)147.0gを加え、6400rpmで1時間撹拌した。得られた顔料混合物を前記メディア分散機(UAM−1)を用いて、調製例1(1)と同様にして分散処理を行った。次に、前記マイクロフルタイザー(Microfluidics社製)を用いて、150MPaの圧力で3パスの高圧分散処理を行い、分散処理物を得た。
【0093】
(2)前記工程で得られた分散処理物1000gを2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水533.3gを加え(固形分濃度15.0質量%)、前記ロータリーエバポレーターを用いて、調製例1(2)と同様にして固形分濃度25.0質量%になるまで濃縮した。
(3)得られた濃縮物を用いて、調製例1(3)と同様にして遠心分離した後、濾過した。
ろ液400g(ピグメントイエロー150 54.9g、芳香族基含有ポリマーB1 43.1g)にイオン交換水58.72gを添加し、更に前記プロキセルLVS(防黴剤)1.39gを添加し、更に前記デナコールEX−321L(架橋剤)4.14gを添加し、70℃で3時間攪拌した。25℃に冷却後、前記5μmフィルターでろ過し、更に固形分濃度は22.0質量%になるようにイオン交換水を加えて、顔料含有ポリマー粒子の水分散液7(顔料含有ポリマー粒子の平均粒径:120nm)を得た。
【0094】
調製例8(顔料含有ポリマー粒子の水分散液8の調製)
(1)製造例1で得られた芳香族基含有ポリマーB1溶液(固形分濃度40.8%)73.8gを、MEK107.9gと混合し、芳香族基含有ポリマーB1のMEK溶液を得た。容積が2Lのディスパーに該芳香族基含有ポリマーB1のMEK溶液を投入し、1400rpmの条件で撹拌しながら、イオン交換水438.4g、5N水酸化ナトリウム水溶液8.0g、及び25%アンモニア水溶液1.0を添加して、水酸化ナトリウムによる中和度が60モル%、アンモニアによる中和度が25モル%となるように調整し、0℃の水浴で冷却しながら、2000rpmで15分間撹拌した。
次いで前記ピグメントイエロー150(Bayscript Yellow 4GF)147.0gを加え、6400rpmで1時間撹拌した。得られた顔料混合物を前記メディア分散機(UAM−1)を用いて、調製例1(1)と同様にして分散処理を行った。次に、前記マイクロフルタイザー(Microfluidics社製)を用いて、150MPaの圧力で3パスの高圧分散処理を行い、分散処理物を得た。
【0095】
(2)前記工程で得られた分散処理物1000gを2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水533.3gを加え(固形分濃度15.0質量%)、前記ロータリーエバポレーターを用いて、調製例1(2)と同様にして固形分濃度25.0質量%になるまで濃縮した。
(3)得られた濃縮物を用いて、調製例1(3)と同様にして遠心分離した後、濾過した。
ろ液400g(ピグメントイエロー150 81.3g、芳香族基含有ポリマーB1 16.7g)にイオン交換水49.76gを添加し、更に前記プロキセルLVS(防黴剤)1.36gを添加し、更に前記デナコールEX−321L(架橋剤)1.60gを添加し、70℃で3時間攪拌した。25℃に冷却後、前記5μmフィルターでろ過し、更に固形分濃度は22.0質量%になるようにイオン交換水を加えて、顔料含有ポリマー粒子の水分散液8(顔料含有ポリマー粒子の平均粒径:185nm)を得た。
【0096】
実施例1(水系インクの製造)
調製例1で得られたピグメントイエロー150を含有する顔料含有ポリマー粒子の水分散液1(固形分22質量%)27.93g、プロピレングリコール(PG、和光純薬工業株式会社製)37.50g、ジエチレングリコール(DEG、和光純薬工業株式会社製)10.00g、ポリエーテル変性シリコーン(日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG005、動粘度:170mm/s、HLB:7)0.05g、合計量が100gとなるようイオン交換水24.52gを添加して、水系インクを得た。
【0097】
実施例2(水系インクの製造)
実施例1において、調製例1で得られた水分散液1(固形分22質量%)を調製例2で得られた水分散液2(固形分22質量%)26.78gに変更し、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)を43.00gに、ジエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製)を0gに、イオン交換水を30.17gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
【0098】
実施例3(水系インクの製造)
実施例1において、調製例1で得られた水分散液1(固形分22質量%)を12.41gに、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)を41.25gに、イオン交換水2を36.29gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
【0099】
実施例4(水系インクの製造)
実施例1において、調製例1で得られた水分散液1(固形分22質量%)を調製例5で得られた水分散液5(固形分22質量%)34.33gに変更し、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)を36.00g、イオン交換水を19.62gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
【0100】
比較例1(水系インクの製造)
実施例1において、調製例1で得られた水分散液1(固形分22質量%)を調製例4で得られた水分散液4(固形分22質量%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行なったが、インクが増粘し、実用上不適であった。
【0101】
比較例2(水系インクの製造)
実施例1において、調製例1で得られた水分散液1(固形分22質量%)を調製例6で得られた水分散液6(固形分22質量%)27.27gに変更し、イオン交換水を25.18gに変更した以外は、実施例1と同様にして、水系インクを得た。
【0102】
比較例3(水系インクの製造)
実施例1において、調製例1で得られた水分散液1(固形分22質量%)を調製例7で得られた水分散液7(固形分22質量%)38.07gに変更し、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)を35.30gに、イオン交換水を14.58gに、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、水系インクを得た。
比較例4(水系インクの製造)
実施例1において、調製例1で得られた水分散液1(固形分22質量%)を調製例8で得られた水分散液8(固形分22質量%)25.05gに変更し、イオン交換水を24.90gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行なったが、インクが増粘し、実用上不適であった。
【0103】
参考例1(水系インクの製造)
実施例1において、調製例1で得られた水分散液1(固形分22質量%)を調製例3で得られた水分散液3(固形分22質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして、水系インクを得た。
参考例2(水系インクの製造)
調製例3において、架橋剤を使用しなかった以外は、調製例3と同様にして水分散液を得た。この水分散液を用いて、実施例1と同様にして、水系インクを得た。
【0104】
<水系インクの調製と評価試験>
(水系インクの調製)
実施例、比較例、参考例で得られた水系インクを用いて、下記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0105】
(水系インクの評価試験)
(1)保存安定性の評価
水系インクをガラス製密閉容器に充填し、70℃で28日間静置して保存した。この分散液を試料とし、下記の方法で保存前後の粘度を測定した。
(粘度の測定)
水系インクをE型粘度計(東機産業株式会社製、RE80L)により、標準ローター(1°34’×R24)を用いて測定温度32℃、測定時間1分の条件で測定した。回転数は測定可能な回転数で最も大きいものを用いた。ただし、最高100rpmを用いた。
(粘度変化率の測定)
次に、下記式により粘度変化率(%)を算出し、保存安定性を評価した。
粘度変化率(%)=(保存後の粘度/保存前の粘度)×100
粘度変化率が100%に近いほど、保存安定性が良好である。
【0106】
(2)水系インクのメンテナンス性の評価
水系インクの当初の重量吸光度と再分散後の重量吸光度を下記のように測定し、次式にて再分散率を算出した。再分散率が100%に近いほど、メンテナンス性が良好である。
再分散率(%)=(当初の重量吸光度/再分散後の重量吸光度)×100
(i)当初の重量吸光度の測定
水系インクをイオン交換水にて2500倍に希釈し、分光光度計(株式会社日立製作所製、型番:U−3010)を用いて、吸収波長400〜600nmの範囲にわたって測定した。測定範囲内での極大吸収波長の吸光度を用い、下記式にて重量吸光度を算出した。
当初の重量吸光度=(極大吸収波長における吸光度×2500)/(顔料濃度)
(ii)再分散後の重量吸光度の測定
水系インクを6mLガラスシャーレ上に0.03g測りとり、40℃20%RHで90分乾燥させた。乾燥物にイオン交換水5mlを加え、100rpm1分振とうし、再分散させ、上澄み液をイオン交換水にて50倍に希釈し、分光光度計(株式会社日立製作所製、型番:U−3010)を用いて、吸収波長400〜600nmの範囲にわたって測定した。
測定範囲内での極大吸収波長における吸光度を用い、下記式にて「再分散後の重量吸光度」を算出した。
再分散後の重量吸光度=(極大吸収波長における吸光度×(5/0.03)×50)/(顔料濃度)
【0107】
(3)印字濃度の評価
水系インクを用いて、普通紙(富士ゼロックス株式会社製、4200、吸水量14.0g/m)上に、以下のインクジェット記録方式により画像を形成し、印字濃度を評価した。
(インクジェット記録方式)
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェットヘッド(京セラ株式会社製、「KJ4B−HD06MHG−STDV」、ピエゾ式)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)に水系インクを充填した。ヘッド電圧26V、周波数20kHz、吐出液適量11pl、ヘッド温度32℃、解像度600dpi、吐出前フラッシング回数200発、負圧−4.0kPaを設定し、記録媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、記録媒体を搬送台に減圧で固定した。前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、Duty100%の画像を印刷し、1日放置後、光学濃度計SpectroEye(グレタグマクベス社製)を用いて任意の10箇所を測定し、平均値を求めた。
【0108】
(4)耐熱性の評価
前記(3)「印字濃度の評価」で作成した印刷物を、1日放置後、光学濃度計SpectroEye(グレタグマクベス社製)を用いて、L、a、b表色系において、任意の10箇所の座標L、a、bを測定し、平均値を求めた。乾燥機にて150℃で2時間加熱し、加熱後の印刷物を前記と同様の方法で座標L、a、bを測定し、加熱前後の差であるΔL、Δa、Δbによって定義されるより色差ΔEを、以下の式を用いて算出し、耐熱性を評価した。
ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb0.5
ΔEが小さいほど耐熱性が良好である。
【0109】
【表2】
【0110】
表2から、実施例1〜4の水系インクは、比較例1〜4の水系インクに比べて、保存安定性、メンテナンス性に優れることが分かる。
顔料としてC.I.ピグメント・イエロー74を用いた参考例1及び2では、ポリマー(B)の架橋〔化合物(c)〕の有無にかかわらず、メンテナンス性に優れることが分かる。保存安定性についても、参考例1は比較例1より優れ、参考例2は比較例2より優れていることが分かる。なお、参考例1及び2において、ポリマー(B)の含有量、及び質量比[(A)/(B)]の値の違いは、架橋剤〔化合物(c)〕の量の違いによるものである。