(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入出力切り替え手段により、前記クラッチを切、前記第一ブレーキを入、前記第二ブレーキを切とし、前記モータの動力のみを前記第三回転軸から出力する前記第二モードに切り替え可能とした、
ことを特徴とする請求項1に記載の車軸駆動装置。
前記入出力切り替え手段により、前記クラッチを入、前記第一ブレーキを切、前記第二ブレーキを切とし、前記エンジンと前記モータの動力を合わせて前記第三回転軸から出力する前記第三モードに切り替え可能とした、
ことを特徴とする請求項1に記載の車軸駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
まず、本発明の第一の実施形態に係る車軸駆動装置を備えるユーティリティビークル(UTV)の全体構成について説明する。
図1および
図2に示すように、UTV100は、機体フレーム101上にプラットフォーム101aが配設され、このプラットフォーム101aの前方にフロントカバー101bが配設されている。プラットフォーム101aより後部の機体フレーム101は、一段高く形成されており、この一段高く形成された機体フレーム101の前端に運転席102が配設され、この運転席102の後方に荷台103が配設されている。機体フレーム101の前後には、それぞれ左右一対の前輪104・104及び後輪105・105が懸架されており、フロントカバー101bの上部には、前輪104・104を操舵するためのステアリングハンドル106が配設されている。
【0018】
そして、機体フレーム101の荷台103下方には、エンジン120が配設されている。エンジン120は、防振ゴムを介して機体フレーム101に弾性的に支持(防振マウント)されている。エンジン120からは、水平側方に出力軸120aが突設され、この出力軸120aが、エンジン120の側方に配設されている主変速機であるベルト式自動無段変速機(以下、「CVT」と呼ぶ)121に連結されている。
【0019】
CVT121は、エンジン120の出力軸120aに固設されている入力プーリ122と、エンジン側入力軸3に固設されている出力プーリ123と、入力プーリ122と出力プーリ123とに巻回されているVベルト124とを備えている。入力プーリ122は、割プーリとされており、Vベルト124が巻回されている入力プーリ122の溝幅が、エンジン120(出力軸120a)の回転数に伴って変化される。入力プーリ122の溝幅が変化することにより、出力軸120aとエンジン側入力軸3との間でVベルト124が移動されて、入力プーリ122と出力プーリ123との間のギア比が変化される。例えば、エンジン120の回転数が低いほど、入力プーリ122の溝幅が拡幅され、減速比が増大される。
【0020】
そして、エンジン120の後方であって、CVT121の側方には、本発明の一実施形態に係る車軸駆動装置1が配設されている。
図2および
図3に示すように、車軸駆動装置1は、エンジン側入力軸3と、ミッションケース4と、デフギア機構5と、左右一対の後輪駆動軸6・6と、モータ側入力軸10と、出力軸12と、前輪駆動軸たるPTO軸14と、遊星歯車機構20等を備えており、ミッションケース4内に、デフギア機構5、出力軸12と、遊星歯車機構20等が収納されている。
【0021】
ミッションケース4は、エンジン120と同じく防振ゴムを介して機体フレーム101に弾性的に支持(防振マウント)されている。また、ミッションケース4からは、前輪104・104に駆動力を伝達するための動力取出(以後「PTO」)軸14が前方に突設されており、該PTO軸14は出力軸12に連結されている。
また、ミッションケース4は、第一ケース4aと第二ケース4bに分割可能に構成されている。さらに、ミッションケース4は、内部に収容される各軸部材を支持するための軸受板4cを備えている。
【0022】
また、
図1に示す如く、UTV100のフロントカバー101bの内側には、電動モータ130(
図2参照)を作動させる動力源となるバッテリー190が配置されている。
即ち、UTV100では、機体フレーム101の後方側ではなく、前方側にバッテリー190を配置する構成としている。
UTV100では、車軸駆動装置1やエンジン120のような重量物が機体後方側に配置されているが、重量物であるバッテリー190を機体前方側に配置することによって、UTV100における前後方向の重量配分の偏りが緩和される。例えば、UTV100における前後方向の重量配分が後方側に偏っていると、後輪105がぬかるみに嵌ったとき(スタック時)に、脱出することが困難になるが、バッテリー190を機体前方側に配置して、UTV100における前後方向の重量配分の偏りを緩和することによって、ぬかるみからの脱出が容易になる。
【0023】
図2に示す如く、左右一対の後輪駆動軸6・6は、デフギア機構5によって差動連結されている。後輪駆動軸6には、ユニバーサルジョイント107及び伝動軸108を介して、後輪105が連結されている。
【0024】
図1および
図2に示す如く、機体フレーム101の前方に配置されたフロントカバー101bの下方には、前側ケース50が支持されており、この前側ケース50には、左右一対の前差動出力軸51・51が支持されているとともに、この左右一対の前差動出力軸51・51を差動連結するデフギア機構52が収納されている。前差動出力軸51には、ユニバーサルジョイント109及び伝動軸110を介して、前輪104・104のそれぞれの車軸が連結されている。
【0025】
左右一対の前輪104・104の車軸同士は、タイロッド53により連結されており、このタイロッド53はステアリングハンドル106(
図1参照)に連結されている。このような構成によって、ステアリングハンドル106の回動操作により、タイロッド53を介して左右一対の前輪104が左右に回動されて、UTV100が操舵される。前側ケース50の後方からは、デフギア機構52の入力軸52aが水平後方に突設されており、この入力軸52aとミッションケース4から突設されているPTO軸14とが、PTO軸14より同一軸心上にて延設される伝動軸114、ユニバーサルジョイント111、伝動軸112、ユニバーサルジョイント113を介して連結されている。
【0026】
また、UTV100は、停車状態を保持するためのブレーキとして、左右一対の走行ブレーキ115・116を備えている。走行ブレーキ115・116は、それぞれ後輪駆動軸6・6を回転不能に固定することができるブレーキであり、
図1に示すブレーキペダル117を踏み込んで作動させることによって、後輪105・105を回転不能とすることができる。
さらに、走行ブレーキ115・116は、
図1に示す前後進切替レバー118とも連動連係しており、前後進切替レバー118が「N(ニュートラル)」に切り替えられたときに自動的に作動し、駐車状態を保持するためのブレーキである駐車ブレーキとしても機能するように構成されている。
【0027】
このように、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両であるUTV100は、エンジン120とエンジン側入力軸3との間に無段変速装置であるCVT121をさらに備えており、CVT121によって、エンジン120の動力を変速してエンジン側入力軸に出力する構成としている。このような構成によれば、エンジン120で駆動するモードにおける変速幅を広くすることができる。
【0028】
次に、本発明の一実施形態に係る車軸駆動装置1の構成について、
図3〜
図10を用いてさらに詳細に説明する。
図3に示す車軸駆動装置1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両用の車軸駆動装置であり、ハイブリッド車両であるUTV100に搭載される。
【0029】
車軸駆動装置1は、該車軸駆動装置1における第一の回転軸であるエンジン側入力軸3と、第二の回転軸であるモータ側入力軸10と、第三の回転軸である出力軸12と、遊星歯車機構20と、を備えている。
【0030】
ここで、遊星歯車機構20について、説明する。
図3〜
図10に示すように、遊星歯車機構20は、エンジン側入力軸3とモータ側入力軸10と出力軸12との間で、相互の動力伝達を可能としつつ連係させる連係手段であり、インターナルギア21、サンギア22、複数のプラネタリギア23・23・・・、プラネタリキャリア24を備えている。
【0031】
インターナルギア21は、外周方向に沿って外側伝達ギア21aが形成されるとともに、内周方向に沿って内側伝達ギア21bが形成されている。
【0032】
サンギア22は、円筒状の軸部22aと、該軸部22aの一端部に形成された第一伝達ギア22bと、軸部22aの他端部に形成された第二伝達ギア22cと、を備えている。サンギア22は、軸部22aの内側に、ベアリングを介して出力軸12が挿通されており、出力軸12と同一の軸心回りに回転可能に構成されている。
サンギア22の第一伝達ギア22bは、インターナルギア21の内側伝達ギア21bと複数のプラネタリギア23・23・・・に噛合している。また、サンギア22の第二伝達ギア22cは、中間軸11の第二伝達ギア11bに噛合している。
【0033】
複数のプラネタリギア23・23・・・は、プラネタリキャリア24の外周部において、出力軸12の軸心を中心として放射状に均等配置されて、プラネタリキャリア24によって、自転および公転自在に軸支されている。
【0034】
複数のプラネタリギア23・23・・・は、インターナルギア21の内側伝達ギア21bと噛合されており、かつ、サンギア22の第一伝達ギア22bと噛合されている。このような構成によって、複数のプラネタリギア23・23・・・は、インターナルギア21及び/又はサンギア22が出力軸12回りに回転されることによって、その回転状況に応じて出力軸12回りに変位され、その変位がプラネタリキャリア24によって回転力として出力軸12へ出力されるように構成されている。
【0035】
エンジン側入力軸3は、エンジン120の動力を車軸駆動装置1に入力するための軸であり、一端部に後述のクラッチ33を介してCVT121の出力プーリ123が固定されており、他端部に伝達ギア3aが形成されている。そして、エンジン側入力軸3は、伝達ギア3aが、インターナルギア21の外側伝達ギア21aと噛合しており、これにより、遊星歯車機構20と連係している。
【0036】
モータ側入力軸10は、電動モータ130の動力を車軸駆動装置1に入力するための軸であり、一端部に電動モータ130の回転軸130aが連結されており、他端部に伝達ギア10aが形成されている。
【0037】
また、車軸駆動装置1においては、モータ側入力軸10と遊星歯車機構20の間に、中間軸11を配置している。
中間軸11は、一端部に第一伝達ギア11aが形成されており、他端部に第二伝達ギア11bが形成されている。そして、中間軸11の第一伝達ギア11aは、モータ側入力軸10の伝達ギア10aに噛合している。そして、モータ側入力軸10は、伝達ギア10aが、中間軸11の第一伝達ギア11aに噛合しており、さらに、中間軸11は、第二伝達ギア11bが、サンギア22と一体的に構成されている第二伝達ギア22cに噛合している。このような構成により、電動モータ130から出力された動力が、モータ側入力軸10、中間軸11を介して、サンギア22に伝達される。即ち、車軸駆動装置1においては、モータ側入力軸10は、遊星歯車機構20と連係可能に構成されている。
【0038】
尚、モータ側入力軸10は、電動モータ130をジェネレータ(発電機)として機能させる場合には、エンジン120から出力された動力を電動モータ130へ出力する出力軸としての役割を果たす。
【0039】
尚、車軸駆動装置1に用いる電動モータ130としては、SR(Switched Reluctance)モータ、ACモータ、DCモータ、PM(Permanent Magnet)モータ等種々の種類のモータを採用することが可能であり、UTV100の種類、用途、所望する性能等に応じて、適宜モータの種類、容量等を選択する。
【0040】
出力軸12は、エンジン120及び/又は電動モータ130から遊星歯車機構20に入力された動力を、後輪駆動軸6・6および前輪駆動軸たるPTO軸14へ出力する軸であり、一端部に伝達ギア12aが形成され、他端部にベベルギア12bが形成されている。伝達ギア12aは、デフギア機構5のデフケース5aに設けられたリングギア5bに噛合しており、デフギア機構5を介して、出力軸12に伝達された動力が、後輪駆動軸6・6およびPTO軸14へ出力される。
【0041】
尚、
図10に示すように、デフギア機構5は、デフロック機構60を備えている。デフロック機構60は、左右一対の後輪駆動軸6・6を、差動可能な状態と差動不能な状態に切り替える機構であり、デフロックスライダ61等により構成される。
【0042】
デフロックスライダ61は、
図10における右側の後輪駆動軸6上において、該後輪駆動軸6の軸方向に変位可能に設けられており、デフケース5aに対面する側の端部において、凸部62が形成されている。また、デフケース5aの凸部62に対面する位置には、凸部62を挿通可能な凹部5cが形成されている。
【0043】
デフロック機構60は、図示しないピストンによって、デフロックスライダ61を凸部62が凹部5cに挿通される位置(デフロック位置)に変位させることで、右側の後輪駆動軸6をデフケース5aに固定することができ、これにより、後輪駆動軸6・6を差動不能な状態とする。また、デフロック機構60は、デフロックスライダ61を、図示しないピストンによって、凸部62が凹部5cに挿通されない位置(
図10に示すデフロック解除位置)に変位させることで、後輪駆動軸6・6を差動可能な状態とする。
【0044】
そして、出力軸12には、伝達ギア12aとベベルギア12bの間の中途部において、プラネタリキャリア24が固定されており、これにより、出力軸12と遊星歯車機構20が連係されている。
【0045】
このように、車軸駆動装置1では、エンジン側入力軸3、モータ側入力軸10、出力軸12の各軸が、遊星歯車機構20によって互いに動力伝達が可能な状態で連係されている。
【0046】
また、出力軸12の他端部には、ベベルギア12bが固定されている。そして、ベベルギア12bには、PTO軸14の後端部に配置されたベベルギア15が噛合されており、出力軸12から出力される動力が、ベベルギア12bとベベルギア15によって90度方向転換された後に、PTO軸14に伝達されるように構成している。
【0047】
尚、本実施形態では、エンジン側入力軸3とモータ側入力軸10と出力軸12を連係させる連係手段として、遊星歯車機構20を採用しているが、連係手段の構成はこれに限定されず、他の構成の連係手段を採用することも可能である。連係手段としては、例えば、複数のクラッチを備え、複数のクラッチの入切を切り替えることで、動力の入出力系統を切り替える構成のものを採用してもよい。
【0048】
ここで、入出力切り替え部30について、説明する。
車軸駆動装置1は、
図11(A)に示すように、入出力系統を切り替えるための手段である入出力切り替え部30を備えている。入出力切り替え部30は、操作部31と、ECU32と、出力部たるクラッチ33、第一ブレーキ34、第二ブレーキ35と、を備えている。
【0049】
操作部31は、ステアリングハンドル106近傍のダッシュボード上に配置され、UTV100の運転者が運転モードの切り替えのために、人為的に操作する部位である。本実施形態で示す操作部31は、運転者がつまみを回すことで運転モードを切り替え可能としたセレクトスイッチの態様を有している。
【0050】
ECU32は、操作部31の操作に応じて、出力部たる各部位に指令信号を出力する機器である。ECU32には、入出力切り替え部30の出力部の他、エンジン120と電動モータ130も接続されており、操作部31の操作に応じて、ECU32からエンジン120と電動モータ130に対して、直接運転信号を出力する構成としている。
【0051】
クラッチ33は、
図3〜
図10に示すように、エンジン120からエンジン側入力軸3に入力される動力を断接するための機構であり、エンジン側入力軸3の中途部(出力プーリ123と伝達ギア3aの間の部位)に配設されており、ECU32からの出力によって、入切を切り替え可能に構成される。即ち、クラッチ33は、出力プーリ123からエンジン側入力軸3に入力されるエンジン120の動力を、エンジン側入力軸3において断接可能としている。
【0052】
クラッチ33は、油圧クラッチであり、それぞれ摩擦板を含む部材である第一部材33aと第二部材33bを備えている。
そして、クラッチ33を「入」とすると、油圧力によって第一部材33aと第二部材33bが係合され、これにより、エンジン側入力軸3において伝達ギア3aが一体化され、動力が伝達可能な状態となるように構成されている。尚、本実施形態では、クラッチ33として油圧クラッチを採用しているが、電磁クラッチ等のその他の構造のクラッチを採用しても良い。
【0053】
第一ブレーキ34は、遊星歯車機構20のインターナルギア21を固定するための部位であり、
図11(A)に示すように、ECU32からの出力によって、入切を切り替え可能に構成される。
【0054】
また、
図3〜
図10に示すように、第二ブレーキ35は、遊星歯車機構20のサンギア22を固定するための部位であり、
図11(A)に示すように、ECU32からの出力によって、入切を切り替え可能に構成される。
【0055】
ここで、クラッチ33および第一・第二ブレーキ34・35を作動させる油圧回路の構成について、
図12を用いて説明する。
図12に示す如く、車軸駆動装置1を備えたUTV100(
図1参照)は、クラッチ33および第一・第二ブレーキ34・35の作動油を供給するための油圧ユニット140を備えている。油圧ユニット140は、電動油圧ポンプ141と、作動油の供給状態を切り替えるためのバルブユニット150を備えており、電動油圧ポンプ141とバルブユニット150は、穿設孔や配管等により構成された油路160によって接続されている。
【0056】
油圧ユニット140は、ミッションケース4近傍の機体フレーム101内に配置されており、ミッションケース4の下部(オイルパン)に貯溜される作動油を、オイルフィルタ142を介して電動油圧ポンプ141により吸い上げて、油路160を介してバルブユニット150に供給する。
【0057】
バルブユニット150は、複数の方向制御弁151・152・153および複数のリリーフ弁154・155によって構成されている。バルブユニット150の一次側に位置する油路160上には、クラッチ33へ供給する作動油の圧力を設定するための第一リリーフ弁154を設けており、さらに、第一リリーフ弁154の二次側の油路160上には、クラッチ33および各ブレーキ34・35に供給する潤滑油の圧力を設定するための第二リリーフ弁155を設けている。そして、第一リリーフ弁154と第二リリーフ弁155の間の油路160には、潤滑油路161が接続されており、潤滑油路161によって、クラッチ33および第一・第二ブレーキ34・35に対して、潤滑油として作動油を供給する構成としている。また、第二リリーフ弁155によって、潤滑油路161内の作動油圧力を一定に保持することで、一定量の潤滑油をクラッチ33および第一・第二ブレーキ34・35に常時供給する構成としている。
【0058】
第一の方向制御弁(以下、第一方向制御弁と呼ぶ)151は、クラッチ33への作動油の供給を切り替えるための3ポートを有するノーマルクローズ型の方向制御弁であり、ECU32からの指令信号に応じて「ON(ソレノイドに通電された状態)」とされ、クラッチ33に所定の圧力の作動油を供給可能な状態とされる。また、第一方向制御弁151は、ECU32からの指令信号に応じて「OFF(ソレノイドに通電されない状態)」とされ、クラッチ33への作動油の供給を遮断可能な状態とされる。
【0059】
第二の方向制御弁(以下、第二方向制御弁と呼ぶ)152は、第一ブレーキ34への作動油の供給を切り替えるための3ポートを有するノーマルクローズ型の方向制御弁であり、ECU32からの指令信号に応じて「ON(ソレノイドに通電された状態)」とされ、第一ブレーキ34に所定の圧力の作動油を供給可能な状態とされる。また、第二方向制御弁152は、ECU32からの指令信号に応じて「OFF(ソレノイドに通電されない状態)」とされ、第一ブレーキ34への作動油の供給を遮断可能な状態とされる。
【0060】
第三の方向制御弁(以下、第三方向制御弁と呼ぶ)153は、第二ブレーキ35への作動油の供給を切り替えるための3ポートを有するノーマルクローズ型の方向制御弁であり、ECU32からの指令信号に応じて「ON(ソレノイドに通電された状態)」とされ、第二ブレーキ35に所定の圧力の作動油を供給可能な状態とされる。また、第三方向制御弁153は、ECU32からの指令信号に応じて「OFF(ソレノイドに通電されない状態)」とされ、第二ブレーキ35への作動油の供給を遮断可能な状態とされる。
【0061】
さらに、入出力切り替え部30は、
図3〜
図10に示すように、ミッションケース4に回転不能に架設された支持軸36、第一ブレーキギア37、第二ブレーキギア38、を備えている。
第一ブレーキギア37は、支持軸36上で回転可能に軸支されており、インターナルギア21の外側伝達ギア21aと噛合している。第一ブレーキ34は、第一ブレーキギア37を回転不能に固定することができる油圧式のブレーキ手段であり、第一ブレーキ34を「入」とすることによって、第一ブレーキギア37に噛合する外側伝達ギア21aを、摩擦板を介して回転不能とすることができ、ひいては、インターナルギア21を固定することができる。また、第一ブレーキ34を「切」とすることによって、第一ブレーキギア37に噛合する外側伝達ギア21aを回転可能とすることができる。
【0062】
また、第二ブレーキギア38は、支持軸36上で回転可能に軸支されており、サンギア22と一体的に構成された第二伝達ギア22cと噛合している。第二ブレーキ35は、第二ブレーキギア38を回転不能に固定することができる油圧式のブレーキ手段であり、第二ブレーキ35を「入」とすることによって、第二ブレーキギア38に噛合する第二伝達ギア22cを回転不能とすることができ、ひいては、サンギア22を固定することができる。また、第二ブレーキ35を「切」とすることによって、第二ブレーキギア38に噛合する第二伝達ギア22cを、摩擦板を介して回転可能とすることができ、ひいてはサンギア22を回転可能とすることができる。尚、本実施形態では、第一ブレーキ34および第二ブレーキ35を油圧ブレーキにより構成する場合を例示したが、電磁ブレーキにより構成してもよい。
【0063】
図3に示すように、遊星歯車機構20は、インターナルギア21を固定した場合、エンジン120の動力の伝達が遮断され、電動モータ130の動力のみが、遊星歯車機構20に入力される状態となる。この場合、車軸駆動装置1は、サンギア22に電動モータ130の動力が入力され、プラネタリキャリア24からは、電動モータ130の動力のみが出力される。
【0064】
また、遊星歯車機構20は、サンギア22を固定した場合、電動モータ130の動力の伝達が遮断され、エンジン120の動力のみが、遊星歯車機構20に入力される状態となる。この場合、車軸駆動装置1は、インターナルギア21にエンジン120の動力が入力され、プラネタリキャリア24からは、エンジン120の動力のみが出力される。
【0065】
さらに、遊星歯車機構20は、後述するようにプラネタリキャリア24を固定し、インターナルギア21およびサンギア22を回転可能とした場合、出力軸12への動力の伝達が遮断され、エンジン120の動力がサンギア22から出力されることとなり、モータ側入力軸10からジェネレータたる電動モータ130に動力が伝達される。
【0066】
尚、UTV100では、
図13に示すような、出力軸12を固定するための第三ブレーキ39および第三ブレーキギア40を備えた別実施形態に係る車軸駆動装置2を採用してもよく、駐車ブレーキを兼ねた走行ブレーキ115・116によらず、第三ブレーキ39によって出力軸12(即ち、プラネタリキャリア24)を固定する構成としてもよい。この場合の車軸駆動装置2は、出力軸12上に第三ブレーキギア40に噛合するブレーキギア12cを配置する構成とする。
【0067】
第三ブレーキギア40は、支持軸36上で回転可能に軸支されており、プラネタリキャリア24と一体的に構成された出力軸12のブレーキギア12cと噛合している。第三ブレーキ39は、第三ブレーキギア40を回転不能に固定することができる油圧式のブレーキ手段であり、第三ブレーキ39を「入」とすることによって、第三ブレーキギア40に噛合するブレーキギア12cを、摩擦板を介して回転不能とすることができ、ひいては、出力軸12を固定することができる。また、第三ブレーキ39を「切」とすることによって、第三ブレーキギア40に噛合するブレーキギア12cを回転可能とすることができ、ひいては出力軸12を回転可能とすることができる。
【0068】
即ち、本発明の一実施形態に係る車軸駆動装置1における連係手段は、エンジン側入力軸3と連係するインターナルギア21と、モータ側入力軸10と連係するサンギア22と、インターナルギア21とサンギア22に噛合する複数のプラネタリギア23・23・・・と、複数のプラネタリギア23・23・・・を支持し出力軸12と連係するプラネタリキャリア24と、を有する遊星歯車機構20として構成され、入出力切り替え部30は、エンジン側入力軸3上に設けられ、エンジン120からの動力伝達を断接可能とするクラッチ33と、インターナルギア21を固定可能に構成され、インターナルギア21を固定することによりエンジン側入力軸3を回転不能に固定可能な第一ブレーキ34と、サンギア22を固定可能に構成され、サンギア22を固定することによりモータ側入力軸10を回転不能に固定可能な第二ブレーキ35と、を有し、クラッチ33と第一ブレーキ34と第二ブレーキ35と、をそれぞれ独立して入切可能に構成されるものである。
このような構成によれば、UTV100の運転モード切り替えを容易に行うことができる。
【0069】
次に、車軸駆動装置1を備えたUTV100における各運転モードについて、
図11および
図14〜
図18を用いて説明する。
【0070】
車軸駆動装置1は入出力切り替え部30を備えており、UTV100の運転席102(
図1参照)の近傍において、
図11(A)に示すようなモード切り替え用の操作部31が配置されている。つまみ状のセレクトスイッチである操作部31は、ECU(電子制御ユニット)32に接続されており、運転者が操作部31の回動位置を変更し、運転モードを選択することによって、その運転モードを選択した旨の指令信号が、ECU32に入力される構成としている。尚、本実施形態では、つまみ状の形態を有する操作部31を例示しているが、操作部31の形態はこれに限定されない。
【0071】
ECU32は、エンジン120、電動モータ130、クラッチ33、第一ブレーキ34と第二ブレーキ35に接続されており、選択した運転モードに応じて、ECU32からエンジン120、電動モータ130、クラッチ33、第一ブレーキ34、第二ブレーキ35に信号が送られて、各部位の入切を切り替える構成としている。
【0072】
車軸駆動装置1を備えたUTV100は、
図11(B)に示すような5つの運転モード「エンジンモード、EVモード、POWERモード、回生モード、ニュートラルモード」を切り替え可能に構成されており、ECU32には、各運転モードのときに、エンジン120、電動モータ130、クラッチ33、第一ブレーキ34、第二ブレーキ35の各部位をどのような入切状態とするかという情報(
図11(B)に示す情報)が、予め記憶されている。
【0073】
ここではまず、第一のモードであるエンジンモードについて、
図11(A)および
図14を用いて説明する。
UTV100は、
図11(A)に示す前後進切替レバー118が「F(前進)」に切り替えられており、かつ、ブレーキペダル117が踏み込まれていない(即ち、駐車ブレーキたる走行ブレーキ115・116が「OFF」である)ときに、運転者が操作部31を人為的に「エンジン」の位置に回動させることによって、エンジンモードに切り替えられる。
エンジンモードは、全ての車輪(前輪104・104および後輪105・105(
図1参照))をエンジン120の動力によって駆動して走行するモードである。エンジンモードでは、例えば、電動モータ130が故障したり、バッテリー190(
図1参照)がバッテリー切れになって、電動モータ130による走行が不可能となったような場合でも、UTV100の走行を可能にすることができる。
【0074】
操作部31でエンジンモードを選択した場合には、ECU32から出力される信号によって、
図14(A)(B)に示すように、エンジン120が「入(ON)」、電動モータ130が「切(OFF)」、クラッチ33が「入」、第一ブレーキ34が「切」、第二ブレーキ35が「入」、という状態に切り替えられる。尚、「入」と「ON」は同じ意味であり、「切」と「OFF」は同じ意味である。
【0075】
そして、エンジンモードを選択した場合、UTV100は、
図14(B)に示すように、前輪104・104と後輪105・105は、エンジン120のみを駆動源として駆動される。
【0076】
即ち、本発明の一実施形態に係る車軸駆動装置1では、入出力切り替え部30により、クラッチ33を「入」、第一ブレーキ34を「切」、第二ブレーキ35を「入」とし、エンジン120の動力のみを第三の回転軸たる出力軸12から出力するエンジンモードに切り替え可能であり、UTV100において、エンジン120の動力のみで走行することを可能にしている。
【0077】
次に、第二のモードであるEVモードについて、
図11(A)および
図15を用いて説明する。
UTV100は、
図11(A)に示す前後進切替レバー118が「F(前進)」に切り替えられており、かつ、ブレーキペダル117が踏み込まれていない(即ち、駐車ブレーキたる走行ブレーキ115・116が「OFF」である)ときに、運転者が操作部31を人為的に「EV」の位置に回動させることによって、EVモードに切り替えられる。
EV(Electric Vehicle)モードは、UTV100を完全な電気自動車として走行させるモードであり、前輪104・104と後輪105・105(
図1参照)を電動モータ130のみで駆動して、静かに走行することを可能にするものである。EVモードは、例えば、狩猟等の場面において、UTV100に乗車しながら、低速で静かに獲物の場所まで移動するような用途に特に適している。
【0078】
操作部31でEVモードを選択した場合には、ECU32から出力される信号によって、
図15(A)(B)に示すように、エンジン120が「切」、電動モータ130が「入」、クラッチ33が「切」、第一ブレーキ34が「切」、第二ブレーキ35が「入」、という状態に切り替えられる。
そして、EVモードを選択した場合、UTV100は、
図15(B)に示すように、電動モータ130のみを駆動源として、前輪104・104と後輪105・105が駆動される。
【0079】
そして、UTV100でEVモードを選択した場合には、エンジン120を停止させるため、高い静粛性が得られる。また、EVモードでは、エンジン120を使用せずに完全な電気自動車として走行することができ、燃料が無くても、一定時間の走行が可能になり、またエンジン120の燃料の消費を抑えることもできる。
【0080】
即ち、本発明の一実施形態に係る車軸駆動装置1では、入出力切り替え部30により、クラッチ33を「切」、第一ブレーキ34を「入」、第二ブレーキ35を「切」とし、電動モータ130の動力のみを出力軸12から出力するEVモードに切り替え可能であり、UTV100において、電動モータ130の動力のみで走行することを可能にしている。
【0081】
次に、第三のモードであるPOWERモードについて、
図11(A)および
図16を用いて説明する。
UTV100は、
図11(A)に示す前後進切替レバー118が「F(前進)」に切り替えられており、かつ、ブレーキペダル117が踏み込まれていない(即ち、駐車ブレーキたる走行ブレーキ115・116が「OFF」である)ときに、運転者が操作部31を人為的に「POWER」の位置に回動させることによって、POWERモードに切り替えられる。
POWERモードは、エンジン120の駆動力を電動モータ130で補助するモードであり、より高い駆動力(牽引力)や加速力を得ることができ、また、CVT121(
図1参照)を用いた場合にみられる発進時のもたつきを解消することもできる。
【0082】
操作部31でPOWERモードを選択した場合には、ECU32から出力される信号によって、
図16(A)(B)に示すように、エンジン120と電動モータ130が、共に「入」に切り替えられ、クラッチ33が「入」、第一ブレーキ34が「入」、第二ブレーキ35が「切」、という状態に切り替えられる。そして、このような切り替え状態では、エンジン120と電動モータ130の動力が遊星歯車機構20に入力され、エンジン120と電動モータ130の動力を合わせた出力がプラネタリキャリア24から出力軸12に出力される(
図3参照)。
【0083】
また、ベルト式のCVT121(
図1参照)を用いた場合、エンジン120の回転数を一定以上高くしないと発進に十分な駆動力を得ることができないが、車軸駆動装置1では、電動モータ130でアシストすることによって、エンジン120が低回転のときでも発進に十分な駆動力を得ることが可能になり、これにより、UTV100の発進時のもたつきを解消することができる。
【0084】
即ち、本発明の一実施形態に係る車軸駆動装置1では、入出力切り替え部30により、クラッチ33を「入」、第一ブレーキ34を「切」、第二ブレーキ35を「切」とし、エンジン120と電動モータ130の動力を遊星歯車機構20で合わせて出力軸12から出力するPOWERモードに切り替え可能であり、UTV100において、エンジン120と電動モータ130の動力を合わせて走行することを可能にしている。
【0085】
次に、第四のモードである回生モードについて、
図11(A)および
図17を用いて説明する。
UTV100は、
図11(A)に示す前後進切替レバー118が「N(ニュートラル)」に切り替えられており、かつ、ブレーキペダル117が踏み込まれている(即ち、駐車ブレーキたる走行ブレーキ115・116が「ON」である)ときに、運転者が操作部31を人為的に「回生」の位置に切り替えることによって、回生モードに切り替えられる。
回生モードは、電動モータ130を発電機として利用して、エンジン120の出力を電気エネルギーに変換してバッテリー190(
図1参照)を充電するモードである。回生モードは、UTV100を停車させ、走行ブレーキ115・116(
図17(A)参照)を「入」とした状態、即ち、出力軸12およびプラネタリキャリア24を回転不能とした状態で実行する。
【0086】
操作部31で回生モードを選択した場合には、ECU32から出力される信号によって、
図17(A)(B)に示すように、エンジン120が「入」、電動モータ130が「切」、クラッチ33が「入」、第一ブレーキ34が「切」、第二ブレーキ35が「入」、という状態に切り替えられる。そして、UTV100は、第三のブレーキたる走行ブレーキ115・116あるいは第三ブレーキ39(
図13参照)を「入」とすることで、回生モードとされる。
【0087】
そして、UTV100は、
図17(B)に示すように、エンジン120の駆動力によって、ジェネレータ(発電機)たる電動モータ130を駆動して発電を行うことができる。
【0088】
そして、UTV100で回生モードを選択した場合には、電動モータ130で発電した電力をバッテリー190(
図1参照)に蓄えて、バッテリー190の充電容量を回復させることができ、より長時間・長距離の走行が可能になる。
【0089】
また、回生モードでは、駐車ブレーキたる走行ブレーキ115・116のブレーキ力によって、UTV100の停車状態を確実に維持できるようにするため、
図17(B)に示すように、アクセル開度が変更されたときに、電動モータ130の発生トルクが、走行ブレーキ115・116のブレーキ力によって抗し得る値となるように、電動モータ130の出力を制限する構成としている。
【0090】
即ち、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両であるUTV100は、出力軸12を回転不能に固定可能な第三ブレーキたる走行ブレーキ115・116をさらに備え、入出力切り替え部30により、クラッチ33を「入」、第一ブレーキ34を「切」、第二ブレーキ35を「切」とし、かつ、走行ブレーキ115・116を「入」とし、出力軸12を回転不能に固定することによって、エンジン120の動力を出力軸12から電動モータ130に出力する回生モードに切り替え可能としている。UTV100では、このような構成によって、エンジン120の動力により電動モータ130で発電しバッテリー190を充電することを可能にしている。
【0091】
尚、UTV100が
図13に示す車軸駆動装置2を備えている場合、操作部31で回生モードを選択した場合には、ECU32によって、
図17(A)(B)に示すように、エンジン120が「入」、電動モータ130が「切」、クラッチ33が「入」、第一ブレーキ34が「切」、第二ブレーキ35が「入」、という状態に切り替えられ、さらに、
図13に示す第三ブレーキ39を「入」とすることで、第三ブレーキギア40によって、出力軸12を回転不能に固定することができ、これにより、回生モードとされる。
【0092】
次に、後進時におけるEVモードへの切替状況について、説明する。
UTV100では、
図11(A)に示す前後進切替レバー118を「R(後進)」に切り替えたとき、自動的にEVモードへ切り替わるように構成されている。即ち、UTV100は、後進時においては、電動モータ130のみを駆動源として走行するように構成されている。後進時におけるEVモードでは、電動モータ130の回転軸130aの回転方向を、前進時のEVモードのときに対して逆転させ、後輪駆動軸6・6を逆向きに回転させることで、UTV100を後進させる。
【0093】
前後進切替レバー118で「R」を選択した場合には、ECU32から出力される信号によって、
図18(A)(B)に示すように、エンジン120が「切」、電動モータ130が「入」、クラッチ33が「切」、第一ブレーキ34が「切」、第二ブレーキ35が「入」、という状態に切り替えられる。そして、UTV100は、
図18(B)に示すように、回転軸130aを逆回転させた電動モータ130のみを駆動源として、前輪104・104と後輪105・105が駆動されて後進可能となる。
【0094】
即ち、本発明の一実施形態に係る車軸駆動装置1は、エンジン120の動力が入力可能なエンジン側入力軸3と、電動モータ130の動力が入力可能であり、かつ、ジェネレータとしての電動モータ130に対して動力を出力可能なモータ側入力軸10と、前輪104・104の駆動軸たるPTO軸14と後輪105・105の後輪駆動軸6に対して動力を出力可能な出力軸12と、エンジン側入力軸3とモータ側入力軸10と出力軸12とを互いに動力伝達可能に連係させる連係手段たる遊星歯車機構20と、遊星歯車機構の入出力系統を切り替え可能とする入出力切り替え部30と、を備え、遊星歯車機構20、入出力切り替え部30によって、エンジン120の動力のみを出力軸12から出力するエンジンモードと、電動モータ130の動力のみを出力軸12から出力するEVモードと、エンジン120と電動モータ130の動力を合わせて出力軸12から出力するPOWERモードと、エンジン120の動力をモータ側入力軸10から電動モータ130に出力する回生モードと、を切り替え可能に構成されるものである。
このような構成によれば、走行場所の状態や、UTV100の使用用途に合わせて、運転者が臨機応変に手動で走行モードを切り替えることができる。また、これにより、状況に応じた最適な走行モードを容易に選択することができる。