特許第6981652号(P6981652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムコ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6981652-プラズマ処理用基板トレイ 図000002
  • 特許6981652-プラズマ処理用基板トレイ 図000003
  • 特許6981652-プラズマ処理用基板トレイ 図000004
  • 特許6981652-プラズマ処理用基板トレイ 図000005
  • 特許6981652-プラズマ処理用基板トレイ 図000006
  • 特許6981652-プラズマ処理用基板トレイ 図000007
  • 特許6981652-プラズマ処理用基板トレイ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981652
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】プラズマ処理用基板トレイ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20211202BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   H01L21/68 U
   H01L21/302 101G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-1664(P2018-1664)
(22)【出願日】2018年1月10日
(65)【公開番号】特開2019-121724(P2019-121724A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】392022570
【氏名又は名称】サムコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】扇谷 浩通
(72)【発明者】
【氏名】中野 博彦
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−101992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/673
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚又は複数枚の被処理基板をトレイに載置し、該トレイを静電チャック上に載置した状態で該被処理基板に対してプラズマ処理を施す場合に使用するトレイであって、
a) 各被処理基板を個別に収容する孔部を有する、該被処理基板の厚さに対応した厚さを有する板状の上部材と、
b) 前記上部材の下に配置される板状の部材であって、上面の、前記孔部の周囲に対応する部分に耐プラズマ性の高い材料から成る耐久部を有する下部材と
を備えることを特徴とするプラズマ処理装置用トレイ。
【請求項2】
前記耐久部が、下部材に形成された溝内に充填された耐プラズマ性の高い材料から成ることを特徴とする請求項に記載のプラズマ処理装置用トレイ。
【請求項3】
前記耐プラズマ性の高い材料がイットリア(Y2O3)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置用トレイ。
【請求項4】
1枚又は複数枚の被処理基板をトレイに載置し、該トレイを静電チャック上に載置した状態で該被処理基板に対してプラズマ処理を施す場合に使用するトレイであって、
a) 各被処理基板を個別に収容する孔部を有し、該被処理基板の厚さに対応した厚さを有するとともに、該孔部の周囲から内部に張り出す、耐プラズマ性の高い材料から成る耐久縁を有する板状の上部材と、
b) 前記上部材の下に配置される板状の部材である下部材と
を備え
前記上部材が石英又はジルコニア(ZrO2)であることを特徴とするプラズマ処理装置用トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ等の薄板状の被処理材(以下、これを「基板」と呼ぶ。)にプラズマ処理を行うに際して、該基板を載置するためのトレイに関する。
【背景技術】
【0002】
基板の表面にエッチング、積層等のプラズマ処理を施す場合、処理中に該基板が移動、変形しないようにするため、基板を基板台上に固定しておく必要がある。この基板の固定のために、通常、静電チャック(ESC)と呼ばれる吸着保持装置が用いられる。この静電チャックにはまた、基板冷却機構も設けられる。これは、プラズマ処理により基板の温度が過度に上昇し、基板が損傷したり、プラズマ処理条件が変化することを防止するためである。この基板冷却機構は多くの場合、静電チャック内に設けられた流路と、該流路にヘリウムガス等の冷却媒体を流通させるための冷却媒体源から成る。
【0003】
基板の表面全体に均等にプラズマ処理を施す必要がある場合、生成するプラズマの密度や温度を広い範囲に亘って均等にしたとしても、基板の中心部と周辺部とではその幾何学的条件に差異があるため、プラズマ処理量、速度等に差異が生じる。そこで、基板の周囲を囲うような、基板の表面と同じ高さのリングを設け、そのようなプラズマ処理条件の差異をできるだけ少なくする手法が開発されている。例えば、特許文献1には、フォーカスリングと呼ばれるリングをウエハの周囲に設けることが開示されている。
【0004】
しかし、基板とフォーカスリングの間には隙間を設けざるを得ないことから、その隙間からプラズマが侵入し、静電チャックを侵食するという問題がある。これを解決するため、特許文献2には、その隙間の下面にイットリア(Y2O3)等の耐プラズマ性の高い材料から成る保護層を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-246370号公報
【特許文献2】特開2017-050468号公報
【特許文献3】特開2012-074650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板をプラズマ処理室に搬入したり処理後の基板を処理室から搬出する際に基板の損傷を防止しハンドリング性を高めるために、基板をトレイ上に載置して搬送し、また、トレイ上に載置したまま処理が行われることが多い。更に、処理効率を高めるために、複数の基板を1台のトレイに載置し、該トレイで複数枚の基板をまとめて搬送し、処理室でまとめて処理を行うということも行われる(特許文献3)。
【0007】
トレイ上に載置した基板を処理室内でプラズマ処理する際には、該トレイを処理室内の基板台上に載置し、基板台に設けられた静電チャックによりトレイを吸着するとともに、トレイに載置された基板も静電チャックにより間接的に吸着する。また、トレイにも冷却媒体を流通させるための機構を設ける。
【0008】
このように、基板をトレイに載置した状態でも、基板のみを静電チャック上に直接載置した場合と同様にプラズマ処理を施すことが可能であるが、特にトレイに複数の基板を載置した場合、単純に1枚の基板を処理する場合と比較すると平面視した場合の幾何学的構成が複雑となっているため、各基板の内部と周辺とで処理結果に差異が生じやすい。また、トレイは繰り返し使用するものであるが、その劣化が激しいとトレイが早期に使用不可能となり、生産効率が悪い上に生産コストも上昇する。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、1枚又は複数枚の基板をトレイに載置した状態でプラズマ処理を施す場合に、各基板に対して均等な処理を施すとともに、長期に亘って使用することのできるトレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明は、1枚又は複数枚の被処理基板をトレイに載置し、該トレイを静電チャック上に載置した状態で該被処理基板に対してプラズマ処理を施す場合に使用するトレイであって、
a) 上面に、各被処理基板を個別に収容する、該被処理基板の厚さに対応する深さを有する1又は複数の穴部を有するとともに、
b) 前記各穴部の周囲の下方部分に耐プラズマ性の高い耐久部が設けられている
ことを特徴とするプラズマ処理装置用トレイである。
【0011】
上記において、該被処理基板の厚さに対応する深さとは、その深さが該被処理基板の厚さにより決定されるという意味であり、具体的には被処理基板の厚さと同じである場合もあるし、それよりも浅い(小さい)場合も深い(大きい)場合もある。これは後述の目的に応じて設定する。
【0012】
また、各穴部の周囲の下方部分とは、各穴部の周囲の底部又は各穴部の側部の下方、或いはそれら双方である。
【0013】
本発明に係るプラズマ処理装置用トレイは、各穴部に被処理基板を挿入した後、プラズマ処理室内の静電チャック上に載置する。そして、静電チャックで本トレイ及び被処理基板を吸着固定した上で、プラズマ処理を行う。
【0014】
本発明に係るプラズマ処理装置用トレイでは、穴部の深さを被処理基板の厚さと等しくすることにより、各被処理基板の内部と周囲のプラズマの密度や温度をほぼ均等にすることができる。また、穴部の深さを被処理基板の厚さよりも浅くし、或いは深くすることにより、被処理基板の周囲のプラズマ処理の程度を内部よりも高くし或いは低くする等の意図的な処理度合いの差異を設けることも可能である。
【0015】
本発明に係るプラズマ処理装置用トレイではまた、各穴部の周囲の下方部分に耐プラズマ性の高い耐久部が設けられているため、各穴部に被処理基板を挿入してプラズマ処理を行った場合に、各穴部の周囲とその穴部に挿入された被処理基板の間の隙間から侵入するプラズマによりトレイが侵食されるという事態が生じにくい。
【0016】
本発明における耐久部は、前記各穴部の周囲の下方部分のみのものであってもよいし、穴部の内部全体であってもよい。更には、トレイ全体であってもよい。この耐久部は、例えばイットリア(Y2O3)、石英、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO2)等で構成することができる。
【0017】
本発明に係るプラズマ処理装置用トレイは、具体的には次のような態様(第1態様)とすることができる。すなわち、
a) 各被処理基板を個別に収容する1又は複数の孔部を有する、該被処理基板の厚さに対応した厚さを有する板状の上部材と、
b) 前記上部材の下に配置される板状の部材であって、上面の、前記孔部の周囲に対応する部分に耐プラズマ性の高い材料から成る耐久部を有する下部材と
を備えるプラズマ処理装置用トレイとすることができる。
【0018】
ここで、上部材の孔部は、前記穴部とは異なり、上部材の上下面を貫通する孔である。
【0019】
第1態様のプラズマ処理装置用トレイにおいて、上部材と下部材は固定されたものであってもよいし、分離されており、使用時に積み重ねられるものであってもよい。
【0020】
第1態様のプラズマ処理装置用トレイにおいて、前記耐久部は、下部材の表面に溝を設け、該溝に耐プラズマ性の高い材料を充填することにより形成することができる。
【0021】
この耐プラズマ性の高い材料の充填は、耐プラズマ性の高い材料を該溝に溶射することで行うことができる。
【0022】
本発明に係るプラズマ処理装置用トレイは、次のような態様(第2態様)とすることもできる。すなわち、
a) 各被処理基板を個別に収容する孔部を有し、該被処理基板の厚さに対応した厚さを有するとともに、該孔部の周囲から内部に張り出す、耐プラズマ性の高い材料から成る耐久を有する板状の上部材と、
b) 前記上部材の下に配置される板状の部材である下部材と
を備えるプラズマ処理装置用トレイとすることができる。
【0023】
前記の耐プラズマ性の高い材料としては、イットリア(Y2O3)、石英、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO2)を用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るプラズマ処理装置用トレイでは、例えば穴部の深さを被処理基板の厚さと同じにすることにより、各被処理基板の内部と周囲のプラズマの密度や温度をほぼ均等にすることができる。また、穴部の深さを被処理基板の厚さよりも浅くし、或いは深くすることにより、被処理基板の周囲のプラズマ処理の程度を内部よりも高くし或いは低くする等の意図的な処理度合いの差異を設けることも可能である。
【0025】
本発明に係るプラズマ処理装置用トレイではまた、各穴部の周囲の下方部分に耐プラズマ性の高い耐久部が設けられているため、各穴部に被処理基板を挿入してプラズマ処理を行った場合に、各穴部の周囲とその穴部に挿入された被処理基板の間の隙間から侵入するプラズマによりトレイが侵食されるという事態が生じにくい。このため、本発明に係るプラズマ処理装置用トレイは長期に亘って損傷の少ない状態で使用することができ、生産効率を高めることができると共に生産コストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】プラズマ処理装置の全体構成を示す概略図。
図2】本発明の一実施形態であるトレイの上面図。
図3】前記実施形態のトレイの中心断面図。
図4】前記実施形態のトレイを構成する上部材の上面図(a)、下部材の上面図(b)、及び下部材の中心断面図(c)。
図5】他の3種の実施形態であるトレイの断面図。
図6】他の実施形態であるトレイおよび静電チャックの側面図。
図7】他の実施形態であるトレイの上面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明を実施したプラズマ処理装置について説明する。以下の実施形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0028】
<1.全体構成>
プラズマ処理装置用のトレイ20(以下、単に「トレイ20」という。)について説明する前に、これが用いられるプラズマ処理装置10の全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、プラズマ処理装置10の全体構成を示す概略図である。
【0029】
プラズマ処理装置10は、真空容器11と、その内部に対向して設けられた上部電極12及び下部電極13を備える。各電極12,13には、これに高周波電圧を印加するための高周波電源(図示省略)が接続されている。
【0030】
下部電極13の上面には誘電層14が設けられており、この誘電層14の上面に、被処理基板(以下、単に基板と言う。)30が載置されたトレイ20が載置される。つまり、誘電層14の上面が、トレイ20が載置される載置面を構成し、下部電極13と誘電層14が、トレイ20を静電吸着する静電チャック部(静電吸着装置)15を構成する。この静電チャック部15はJ-R力型のものであり、誘電層14は体積抵抗率が1×109〜1×1012Ω・cm程度の低抵抗の材料で構成される。静電チャック部15は単極型、双極型のどちらであってもよいが、単極型とすることによりトレイ20の吸着性を特に良好なものとすることができる。
【0031】
誘電層14の上面には、ヘリウムガス等の冷却媒体を流通させるための溝16が設けられており、この溝16は、図示しない冷却媒体供給装置と接続されている。下部電極13には、その内部に冷却水を循環させるための冷却機構17が接続されており、これによって下部電極13及びトレイ20が冷却されるようになっている。
【0032】
プラズマ処理装置10は上述した各要素に加え、真空容器11内にプラズマ発生のための各種のガス等を供給するガス供給部、真空容器11内を排気する真空排気装置等(いずれも図示省略)を備えている。
【0033】
<2.トレイ20>
トレイ20の構成について、図1に加え、図2図3及び図4を参照しながら説明する。図2はトレイ20の上面図であり、図3はトレイ20の中心断面図(図2のIII−III断面図)、そして図4はトレイ20を構成する上部材22及び下部材23の上面図、そして下部材23の中心断面図(図4(b)のc−c断面図)である。
【0034】
<2−1.全体構成>
トレイ20は、プラズマ処理装置10にて処理すべき基板30を1枚あるいは複数枚載置するための器具であり、図2に示すように、その上面には基板30(図2においてその外形を点線で示す)を1枚載置する部分(以下「基板載置領域」とも呼ぶ)21が1個以上(図2の例では4個)設けられる。各基板載置領域21は、平面視にて基板30よりも僅かに大きなサイズの領域とされる。
【0035】
図3に示すように、本実施形態におけるトレイ20は上部材22と下部材23が積層されて成る。上部材22と下部材23は積層された状態で固定されていてもよいし、分離した状態で用意され、プラズマ処理時に積層して使用されるものであってもよい。後者の場合には、上部材22と下部材23の位置決めをするための機構が上部材22と下部材23のいずれか又は双方に設けられていることが望ましい。
【0036】
上部材22は図4(a)に示すように、1枚の基板30を収容する孔24が所定数(図4の例では4個)形成された円形の平板である。下部材23は図4(b)に示すように、上部材22と同径の円形の平板となっており、上部材22が重ねられたときに、その孔24の周囲に対応するリング状の領域は、本発明の耐久部に相当する耐プラズマ領域25とされている。耐プラズマ領域25は、上部材22が載置されたときにその孔24(図4(b)において内側の点線で示す)よりも外側から、基板30が載置されたときにその周囲(図において内側の点線で示す)よりも内側までを覆う。
【0037】
下部材23において、耐プラズマ領域25は、当該領域に設けられた溝に、耐プラズマ性の高い材料であるイットリア(Y2O3)を溶射により充填して形成されている。耐プラズマ性の高い材料としてはその他に、石英、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO2)等を用いることができる。
【0038】
上部材22の厚さを基板30の厚さと同じとしておくことにより、トレイ20の基板載置領域21に基板30を載置したとき、トレイ20の上面と基板30の上面が面一となる。これにより、基板30がプラズマによってより均一に処理されるようになる。
【0039】
上部材22は図3に示すように下部材23の上面側のみを覆うように構成してもよいし、図5(a)に示すように、当該上面側に加えて下部材23の側面を覆うように構成してもよい。この構成によると、下部材23の側面部分がプラズマでエッチングされて不純物が放出されるといった事態が生じない。もっとも、トレイ20の側面に接するプラズマの強度はその上面に接するプラズマの強度に比べて小さく、当該側面は上面に比べてエッチングされにくい。したがって、下部材23の側面が上部材22に覆われることは必須ではない。
【0040】
<2−2.形成材料>
トレイ20の静電チャック部15に接する下部材23は低体積抵抗率材により構成され、プラズマに曝される上部材22は高体積抵抗率材料により構成される。ここでいう「低体積抵抗率材料」とは、体積抵抗率が1×1013Ω・cm以下の材料(好ましくは、体積抵抗率が1×107Ω・cm以上かつ1×1013Ω・cm以下の材料)である。また、ここでいう「高体積抵抗率材料」とは、体積抵抗率が1×1013Ω・cmを超える材料である。
【0041】
下部材23の形成材料(低体積抵抗率材料)は、例えばセラミック(特に、炭素を多く含むセラミックが好ましい)であり、具体的には例えば、炭化ケイ素(SiC)である。下部材23の形成材料としてはその他に、体積抵抗率が1011Ω・cm程度の低抵抗窒化アルミニウム材料を用いることもできる。「低抵抗窒化アルミニウム材料」とは、窒化アルミニウム(体積抵抗率は1014Ω・cm程度)に、炭化チタンや炭素繊維などの導電材料(導電性添加物)を分散させることにより、体積抵抗率を低下させたものである。
また、上述したとおり、静電チャック部15の誘電層14は体積抵抗率が1×109〜1×1012Ω・cm程度の低抵抗の材料で形成されており、下部材23を、この誘電層14の形成材料と同じ材料で形成することも好ましい。
【0042】
上部材22の形成材料(高体積抵抗率材料)は、酸素を多く含む材料が好ましく、具体的には例えば、アルミナ(Al2O3)である。上部材22の形成材料としてはその他に、石英、窒化アルミニウム(AlN)、イットリア(Y2O3)、ジルコニア(ZrO2)、等を用いることもできる。
【0043】
トレイ20の下面側に配置される下部材23が体積抵抗率が1×1013Ω・cm以下の低体積抵抗率材料で構成されることによって、トレイ20が静電チャック部15に確実に吸着されるとともに、基板30がトレイ20に確実に吸着される。これにより、誘電層14とトレイ20の間の密着性、及び、トレイ20と基板30の間の密着性が向上し、プラズマ処理により基板30及びトレイ20に生じる熱が、トレイ20を通して誘電層14および下部電極13(外部)に良好に放出される。
【0044】
また、下部材23は、これとは別の材料(高体積抵抗率材料)で構成された上部材22で覆われているので、例えば、下部材23に抵抗コントロール用の導電性添加物等が添加されている場合であっても、これがエッチングにより放出されて基板30が汚染されるということがない。
【0045】
特に、ここでは上部材22が、体積抵抗率が1×1013Ω・cmを超える高体積抵抗率材料で構成されている。つまり、下部材23はこれが静電チャック部15に吸着されるように比較的低い体積抵抗率の材料で構成する必要があったが、上部材22にはそのような制限がなく、その構成材料として体積抵抗率が比較的高いもの(具体的には、体積抵抗率が1×1013Ω・cmを超える高体積抵抗率材料)が許容される。この高体積抵抗率材料においては、当然のことながら抵抗コントロール用の導電性添加物を添加する必要がなく、高純度の物質から形成することができる。したがって、仮に上部材22がエッチングされたとしても、基板30の汚染原因となる導電性添加物が放出されることがない。
【0046】
また、上部材22にはこのような制限がないので、上部材22の構成材料として、上記に例示したイットリア等のように、プラズマによるエッチング耐性が比較的高いものを採用することも可能となる。このような材料を採用することで、耐久性に優れたトレイ20を得ることができる。
【0047】
本実施形態によると、低体積抵抗率材料からなる下部材23と高体積抵抗率材料からなる上部材22が分離可能に形成されるので、下部材23だけ(あるいは上部材22だけ)を交換することができる。例えば、異なる材料で形成された上部材22を複数個作製しておき、プロセス条件に応じて最適な上部材22を選択して用いることができる。また例えば、上部材22が不要なプロセス条件の場合は、上部材22を取り外して下部材23だけをトレイとして用いることで、上部材22の無駄な消耗を抑制することができる。
また、例えば、孔24のサイズや形成位置が異なる上部材22を複数個作製しておき、トレイ20に載置するべき基板30のサイズや個数に応じて最適な上部材22を選択することができる。この場合、下部材23は共通のものを使用することができる。
【0048】
<2−3.他の構成例>
上記の実施形態においては、上部材22の孔24はストレートなものであったが、図5(b)に示すように、上部材22の下面側において孔の内側に張り出すようになっていてもよい。この場合、その張出部26が本発明の耐久部となる。更に、図5(a)の例と同様に、上部材22が下部材23の周囲を覆うようにしてもよい(図5(c))。
【0049】
上記のように下部材23と上部材22を重ねてトレイ20を形成する場合(特に、上部材22に下部材23の側面を覆う部分が設けられない場合(図5(b)))、下部材23と上部材22とを位置合わせするとともに位置ずれを防止ための要素を設けることも好ましい。具体的には例えば、下部材23および上部材22のうちの一方に、その外周縁の3箇所以上の位置に立設する位置決めピンを設けることができる。
【0050】
上記の実施形態において、例えば図6に示されるように、基板載置領域21に、冷却媒体が流通するための溝からなる冷却通路27が設けられることも好ましい。冷却通路27は、例えば、図7(a)に示すように、基板載置領域21の中心から放射状に延在してもよいし、図7(b)に示すように、基板載置領域21の中心と同心に配置された複数の円に沿って形成してもよい。
【0051】
トレイ20に冷却通路27を設けることによって、トレイ20に載置された基板30を、冷却通路27を流れる冷却媒体に直接接触させることができるので、基板30を効果的に冷却することができる。
【0052】
トレイ20に冷却通路27を設ける場合、冷却通路27を、例えば連通路28を介して誘電層14の上面に設けられた溝16と連通させることも好ましい。こうすることによって、溝16に流通される冷却媒体を、冷却通路27にまで流通させることができる。つまり、1つの流通通路で、誘電層14とトレイ20の間、及び、トレイ20と基板30の間に冷却媒体を流すことができる。したがって、プラズマ処理の間、効率よく基板30を冷却することができるようになる。
【0053】
上記の実施形態においては、トレイ20は下部材23と上部材22のみからなる2層構造であるとしたが、トレイ20はそれ以外の層を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…プラズマ処理装置
11…真空容器
12…上部電極
13…下部電極
14…誘電層
15…静電チャック部
16…溝
17…冷却機構
20…トレイ
21…基板載置領域
22…上部材
23…下部材
24…孔
25…耐プラズマ領域
26…張出部
27…冷却通路
28…連通路
30…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7