(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、航空機、船舶、および自動車などの、空気または水などの流体中を進む乗り物の上塗り上などの、外面上に微細構造パターンを設ける際の技法に関する。
【0011】
フォトポリマーなどの光硬化性材料は、コンピュータマイクロチップ製作のために開発されたフォトリソグラフィ技法からよく知られており、
図1に概略的に例示するように、フォトポリマー1は、より小さい分子(モノマー2およびオリゴマー3)と光重合開始剤4との混合物からなる。
【0012】
通常はマスクを介する紫外光6または放射への露光後、光重合開始剤は、モノマー2とオリゴマー3との間の重合反応を引き起こし、それらを架橋させてより大きいネットワークポリマー分子にし、それにより硬化済みのポリマーを形成させる。これらのネットワークポリマーは、その化学的特性および構造的特性を変化させる。いわゆる「ネガ型フォトポリマー」は、不溶性になり、未露光のフォトポリマーよりも強くなる。しかしながら、いわゆる「ポジ型フォトポリマー」は、可溶性になり、したがって未露光のフォトポリマーよりも弱くなる。したがって、微細構造は、フォトポリマーの薄層を基材に塗布し、それをフォトマスクを通じてUV光または放射へ露光することにより作製することができる。未露光のネガ型フォトポリマーを、未露光のフォトポリマーを洗い流す現像液の使用により除去し、それにより露光済みのフォトポリマーを所望のパターンに残すか、または露光済みのポジ型フォトポリマーを除去するかのいずれかである。
【0013】
次いで、基材を腐食するが、残存するフォトポリマーを腐食しない液体エッチング剤を塗布することができる。結果的に、残存するフォトポリマーが除去されるとき、所望の微細構造が作製され、基材内にエッチングされる。プラズマによるなどの、他のエッチング方法も、使用することができる。
【0014】
フォトリソグラフィ技法
この一般的なフォトリソグラフィ技法は、ローリングマスクフォトリソグラフィにおいて、
図2および3に概略的に例示する連続プロセスで使用されている。ここで、液体フォトポリマーを、ノズル10を介して基材11に塗布する。円筒状ローリングマスク12にフォトポリマー上をローリングさせる。円筒状ローリングマスク12は、UV放射の内部同軸源13を収容している。ローリングマスク12の下流には、現像剤のためのノズル15およびリンス液のためのノズル16がある。
【0015】
図3に見られるように、内部同軸源13からのUV放射は、基材11上のフォトポリマーと接触しているマスク12を通過し、それにより上述の光重合反応を形成する。次いで、ポリマーにより被覆された基材11は、それぞれ露光済みのフォトポリマーにより覆われていない基材の部分から未露光のフォトポリマーを除去するためノズル15の下を、および基材11をすすぐためのノズル16の下を通る。
【0016】
ある代替的なプロセスを、
図4および5に例示する。このフラウンホーファ法では、微細構造は、
図2および3の先行技術構成の場合のように航空機表面または基材上にエッチングされるのではなく、フォトポリマーから形成され、航空機表面上に残される。
図4および5の構成では、UV透過ウェブ22は、その外側表面上に形成される所望の微細構造のネガを有する。ウェブ22は、好ましくはシリコーンフィルムから形成され、UVランプ21から発されるUV放射に対して透過的である。ウェブ22は、一対の可撓性ローラー23およびガイドローラー25の上を通る。投与ユニット24は、タンク30と、液体コーティング26がウェブに塗布され、タンク30内に収容されている液体から形成されることを可能にするパイプ31との形をとる。次いで、液体コーティング26を、ローラー3、5上のウェブ22のローリング動作により、基材27の上面に塗布する。
【0017】
図5に示すように、ウェブ22は、所望のパターンのネガを有し、したがって、基材27上のフォトポリマー32をその所望のパターンに形成する。UVランプ21からのUV放射33は、ウェブ22を通過し、フォトポリマー32を、硬化済みのフォトポリマー28により形成される所望のパターンに固める。このように、装置が基材27に対して矢印29により示される方向に動くにつれて、所望のパターンの硬化済みのフォトポリマー28が、基材27上に形成される。
【0018】
この方法では、ローリングマスクマトリクス材料は、非常に低い表面エネルギーと、特定の狭い範囲内のショア硬さとを必要とする。加えて、液体コーティング26は、露光後に基材27に付着しなければならないが、ウェブ22が除去された後に流れ、または別の方法で形状を変えてはならない。さらに、ウェブ22は、生産するのが高価であり、ローリング接触プロセスを通じて劣化する。
【0019】
マスクベースの構成
これより
図6および7に目を転じて、本開示のある構成について説明する。装置は、装置を覆い、装置を周囲UV光から保護するフードまたはシュラウド41の形をとる。シュラウド内には、装置が基材43にわたって動くことを可能にする一対のローラー42がある。
【0020】
図2の構成に概して類似したある構成では、ノズル45のアレイが、ポリマーを基材43に塗布し、さらなるノズル46のアレイが、液体現像剤を塗布し、さらなるノズル47のアレイが、液体リンス液を塗布する。ノズル45と46の間には、UV光源50を収容するローリング円筒状マスク49がある。ある代替的な構成では、マスクは、実質的に平面状であってもよく、前記外面の上で、かつ前記外面に沿って移動される。当業者は、円筒状マスクについての以下の説明が、軽微な変更と共に、実質的に平面状のマスクに適用可能であり得ることを理解するであろう。
【0021】
図7で最もよく見えるように、マスク49は、フォトポリマー44に当接しないが、その代わりに、約10〜100センチメートルの小さい隙間51だけフォトポリマー44から離間している。
【0022】
図6に概略的に例示するように、光源50からのUV放射へ露光されたフォトポリマー44の部分は、現像剤ノズル46およびリンス液ノズル47の下を通った後も、基材43に付着した状態にとどまる。コンピュータマイクロチップフォトリソグラフィの近接プリント技法を利用する本構成は、解像度を1〜2マイクロメートルまで下げることを達成でき、これは、表面摩擦抗力などの空気力学を低減する微細構造にとって十分過ぎるものである。記載の構成は、
図4および5に関連して上述したマスク密着プリントの厳格な要件なしに、異なるフォトポリマー/現像剤の組み合わせを可能にする。加えて、異なる円筒状マスク49を容易に代用して、異なる微細構造構成を、例えば単一の航空機の外装の異なる区域に塗布することを可能にすることができる。
【0023】
基材43をエッチングすることにより微細構造を形成するように、
図6および7の構成を使用することも可能である。これは、追加のエッチングノズルを使用することにより、またはパネル全体をエッチング液内浸すことにより、行うことができる。
【0024】
マスクレスの構成
本開示のあるさらなる構成によれば、
図8および9に例示するように、マスクレスシステムは、干渉リソグラフィの使用により作製することができる。干渉リソグラフィは、2つのコヒーレントな光源または放射源間の干渉パターンを構築することにより、規則的配列構造の連続パターン形成を可能にする。特徴間の最小間隔は、波長の約半分に等しく、これは、UV放射の場合、約0.2マイクロメートルの最小間隔に対応する。
図8に示すように、
図6の装置が、円筒状マスク49および光源50の除去、ならびにその代わりとしてのUVレーザー61、空間フィルタ62、ビームスプリッタ63、および一対の鏡64の提供により、変更されている。この構成では、UVレーザーの波長は、364ナノメートルである。鏡64は、角度θを増大または減少させるように、基材43に対して可動性である。これは、干渉構成により生成されるパターン線間の間隔を調節する。
【0025】
前と同じように、本構成を使用して、追加のエッチングノズルの提供により、基材24内にエッチングパターンを形成することができる。
【0026】
これより
図10に目を転じると、
図8および9の構成は、ビームスプリット技法を使用する代わりに回折格子71を(例えば、位相マスクの形で)代わりに利用するように、さらに変更することができる。回折格子71は、UV源(
図10に例示せず)から均一に照射され、それにより基材43上に干渉パターンを再び形成する。この構成では、間隔パターンは、調整可能ではなく、その代わりに回折格子の構造により決定される。
【0027】
単一露光構成
一部の既存のフォトリソグラフィ構成は、表面にわたって望ましい微細構造パターンを層ごとに(例えば、多重露光により)作製するために、多重露光を必要とする。本明細書に記載するのは、多重露光の必要なしに選択された空間プロファイルを有する微細構造パターンを提供する、微細構造パターンを外面上に設けるための方法およびシステムである。
【0028】
図11Aに例示するように、記載の方法1100は、光硬化性材料の層を外面に塗布するステップ1102と、光硬化性材料に所定の照射強度プロファイルを含む放射を照射するステップ1104と、微細構造パターンを形成するために未硬化の光硬化性材料を除去するステップ1106と、を含む。放射は、照射済みの光硬化性材料の硬化を開始し、光硬化性材料の層にわたって選択された強度プロファイルに対応する硬化深さプロファイルを生じさせる。対応関係としては、選択された強度プロファイルと硬化深さプロファイルとの間の線形または非線形関係が挙げられる。除去するステップ1106は、硬化の完了後に発生し得る。
【0029】
図11Bおよび11Cは、記載の方法1100のステップ1102、1104、および1106の各々の後の中間結果または最終結果の一例の側面
図1150および上面
図1160をそれぞれ概略的に例示する。この例では、光硬化性材料の層は、UV硬化性または近UV硬化性のコーティング1152であり、これは、硬化後に外面に付着する。コーティング1152は、MIL−PRF−85285規格を含む軍用規格を満たすものなどの、特定の用途のために設計されたものであってもよい。別の例では、コーティング1152は、プライマーサーフェーサーCromax 3130Sである。この例では、外面は、乗り物の上塗りなどの基材1154である。
図11Bおよび11Cに例示する例では、所定の照射強度プロファイルは、のこぎり歯照射強度プロファイル1156である。強度と硬化深さとの対応関係が線形の関係であるこの例では、得られる微細構造パターンは、のこぎり歯リブレット幾何形状1160を含む。強度と硬化深さとの対応関係が非線形の関係である別の例では、得られる微細構造パターンは、波形リブレット幾何形状を含む。
【0030】
微細構造パターン形成システム
図12は、記載の方法1100において照射するステップ1104を行うように構成された微細構造パターン形成システム1200のある構成を例示する。この構成では、コーティング1152を基材1154に塗布するステップ1102(これはすでに行われている)と未硬化の光硬化性材料を除去するステップ1106(これはまだ行われていない)とは、システム1200によってではなく、別々に行われる。
【0031】
システム1200は、放射源1202を含む。放射源1202は、近UV光源であってもよい。一例では、近UV光源は、最大50mWの電力出力を有する405nmのレーザーダイオードである。レーザーダイオードは、同位相の入射光を作り出す点状源として振る舞う。この波長は、フォトマスクが、さもなければUV波長のために必要となるであろう水晶ではなく、ガラスから作製されることを可能にする。別のシステムでは、他の波長が使用されてもよい。システム1200は、放射を改質して光硬化性材料の層に対する望ましい照射を作り出す放射改質器1203を含む。一構成では、放射改質器1203は、振幅マスク1204および/または位相マスク1206を含む。所定の照射強度プロファイルを達成するために、放射に、所定の照射強度プロファイルに関連付けられた振幅マスクおよび/または位相マスクを通過させる。振幅マスク1204の場合、これは、マスク上の位置に基づいて異なる透過度または減衰量を有するグレースケールマスクであってもよい。位相マスク1206の場合、これは、照明時に干渉パターン1209を提供する1次元の回折格子の形であってもよい。ボトムアップ式硬化(下のさらなる説明を参照されたい)の存在下で、所定の照射強度プロファイルは、多重露光の必要なしに微細構造パターンの作製を可能にする。
【0032】
この構成では、照射強度プロファイルは、第1の次元1211に沿ってばらつきを有し、同様に第1の次元1211に沿ってばらつきを有する硬化深さプロファイルを生じさせる。放射改質器1203は、光硬化性材料1152の層の露光面積を第1の次元1211に沿って限定するためのシャッター1208を含んでもよい。放射改質器1203はまた、第1の次元1211に実質的に直交する第2の次元1212に沿って露光を限定するためのフォトレジストマスク1214を含んでもよい。放射源1202および/または放射改質器1203は、支持リグ1210により支持されている。支持リグ1210は、放射改質器1203から光硬化性材料1152の層への距離を変化させるように、上昇させるおよび下降させるなど、支持される構成要素を変位するよう構成される。支持リグ1210はまた、光硬化性材料1152の層の異なる部分に照射するように、第2の次元1212に沿って移動させるなど、放射源1202および放射改質器1203を変位するよう構成される。放射改質器1203の変位は、放射改質器1203の開口よりも大きい光硬化性材料1152の層の領域の露光を可能にする。
【0033】
図13A〜13Cは、変位を有するシステム1200による光硬化性材料1152の層の照射の、スナップショットを例示する。例えば、フォトレジストマスク1214および/またはシャッター1208が放射露光を実質的に線の次元に限定する
図13Aに例示するように、放射源1202および放射改質器1203は、第2の次元1212に沿って連続動作で移動され、放射改質器1203の開口よりも大きい露光面積を達成する。別の例として、フォトレジストマスク1214および/またはシャッター1208が第2の次元1212に沿ってより多くの放射露光を可能にする
図13Bに例示するように、放射源1202および放射器改質器1203は、第2の次元1212に沿ってシャッター式の様式で移動され(すなわち、移動−露光−シャッターの繰り返しサイクル)、放射改質器1203の開口よりも大きい露光面積を達成する。いずれの例でも、第1の次元1211沿いの硬化深さプロファイルの周期性は、第2の次元1212沿いの支持リグの移動の有無にかかわらず、次の微細構造パターン、すなわち、のこぎり歯リブレット幾何形状(
図15A)、波形リブレット幾何形状(
図15B)、および刃形リブレット幾何形状(
図15C)のうちの1つ以上の形成という結果をもたらす。外面が乗り物の外面の一部分である場合、これらの幾何形状は、乗り物が空気または水などの流体に対して動くとき、乗り物が経験する表面摩擦抗力などの有害抗力を低減することが知られている。本質的に、
図15A〜15Cの微細構造パターンは、パターン形成された外面に隣接する流体境界層の分離を遅延または低減する効果を有する。流体境界層の分離の相対的な遅延または低減は、表面摩擦抗力の低減という結果をもたらす。有利には、有害抗力を低減することにより、乗り物は、例えば、燃料効率の増大を経験し得る。いくつかの異なる、例示しない微細構造パターンが
図15A〜15Cに示す微細構造パターンと同じ効果を有し得ることを当業者は理解するであろう。
【0034】
図14Aは、微細構造パターン形成システム1400の別の構成を例示する。システム1200とは異なり、システム1400は、ステップ1102、1104、および1106の全てを行うように構成される。システム1400は、光硬化性コーティングを塗布するための光硬化性コーティング塗布器1402、光硬化性材料に所定の照射強度プロファイルを含む放射1403を照射するための照射器1404、および未硬化の光硬化性材料を除去して微細構造パターンを形成するための除去器1406を含む。照射器1404は、放射源1202および放射改質器1203を含み得る。除去器1406は、現像剤1407aを塗布して、未硬化の光硬化性材料の、硬化済みの光硬化性材料からの分離を容易にするための現像塗布器1406aを含む。除去器1406はまた、リンス剤1407bを塗布して、未硬化の光硬化性材料をすすぎ落すためのリンス液塗布器1406bを含む。現像剤1407aの選択は、使用する光硬化性材料に依存する。例えば、現像剤は、UV硬化性コーティングの場合、鉱物性アルコールであってもよい。一部の構成では、一部の光硬化性材料については、圧縮空気による物理的除去が可能であり得る。
【0035】
この構成では、システム1400は、光硬化性コーティング塗布器1402、照射器1404、および除去器1406をこの順序で位置決めされた状態で囲い込むための囲い1408を含む。さらに、システム1400は、基材1154の上をローリングする(光硬化性材料1152の有無にかかわらず)2つの車輪、すなわち前輪1410aおよび後輪1410bを含む。使用中、システム1400は、後輪1410bから前輪1410aの方向にローリングさせることができる。前輪1410aは、記載の方法1100の第1のステップ(ステップ1102)を行う光硬化性コーティング塗布器1402の近くに置かれ、後輪1410bは、記載の方法1100の最後のステップ(ステップ1106)を行う除去器1406の近くに置かれる。
【0036】
図14Bは、航空機表面1412上でローリングされるとき、システム1400により方法1100を行う際のスナップショットを例示する。光硬化性コーティング塗布器1402は、光硬化性コーティング1414を航空機表面1412に塗布する。
図12Aの図と同様に、照射器1404内のフォトレジストマスク1214および/またはシャッター1208は、放射露光を、干渉パターン1209を有する実質的に線の次元に限定する。システム1400が次元1212に沿ってローリングされるにつれて、光硬化性材料は、照射されると、経時的に硬化済みの光硬化性材料1416になり、硬化深さプロファイルを呈する。次いで、除去器1407が、現像およびすすぎを行って、未硬化の光硬化性材料1417を除去し、微細構造パターン1418を形成する。
【0037】
図14Cは、システム1400に類似しているが車輪がない、微細構造パターンシステム1450のある構成を例示する。この構成では、放射改質器の開口よりも大きい露光面積を達成するために、システム1450は、システム1400の囲い1408を支持するロボットアーム1452(車輪1410aおよび1410bがない)を含み、シャッター式の様式で(すなわち、移動−露光−シャッター)または連続様式で動く。
【0038】
図12の構成では、放射改質器1203は、第2の次元1212において、照射強度プロファイルのいかなるばらつきも提供しない。これは、照射済みの光硬化性材料の層にわたって、第1の次元1211において周期性を有する周期的な硬化深さプロファイル(および、それゆえに微細構造の周期的なパターン形成)を可能にし、かつ第2の次元1212において実質的に非周期的なプロファイルを可能にする。例えば、支持リグ1210は、放射源1202および放射器改質器1203を基材1154に対して一定の速度で第2の次元1212に沿って移動させて、第2の次元1212において実質的に一定の硬化深さプロファイルを提供するように構成されてもよい。別の構成では、移動速度は、第2の次元1212において非一定の硬化深さプロファイルを提供するように、可変的な様式で制御されてもよく、変化する移動速度は、第2の次元1212における非一定のプロファイルに対応する。より低い移動速度は、一般により大きい硬化深さに対応し、逆もまた同様である。例えば、のこぎり歯様式の移動速度は、第2の次元1212において逆のこぎり歯硬化深さプロファイルをもたらし得る。さらに別の構成では、移動速度は、一定であってもよいが、全体的な強度は(強度プロファイルの有無にかかわらず)、第2の次元1212において非一定の硬化深さプロファイルを提供するように可変的な様式で制御されてもよく、変化する全体的な強度は、第2の次元1212における非一定のプロファイルに対応する。より低い全体的強度は、一般に小さい硬化深さに対応し、逆もまた同様である。例えば、のこぎり歯様式で変化する全体的な強度は、第2の次元1212においてのこぎり歯硬化深さプロファイルをもたらす。当業者はのこぎり歯プロファイルまたは逆のこぎり歯プロファイルが単に例示的なものであることを理解するであろうが、非一定の硬化深さプロファイルは、第2の次元に沿ってばらつきを有する様々な非一定の微細構造パターンという結果をもたらし得る。一例では、高さのばらつきは、各リブレットが、1つの次元においてのこぎり歯プロファイルを含み、直交次元においてランプアップ部、プラトー部、およびランプダウン部を含む、テーパ状のリブレット幾何形状において現れ得る。他の例は、例えば、米国特許第6,345,791号に見出すことができる。
【0039】
ある代替的な構成では、放射改質器1203は、第2の次元1212に沿って照射強度プロファイルのばらつきを提供し、同様に第2の次元1212に沿ってばらつきを有する硬化深さプロファイルを生じさせるために、別の1次元の振幅マスクもしくは位相マスク(図示せず)を含んでもよく、または1次元の振幅マスクもしくは位相マスクを2次元の振幅マスクもしくは位相マスクで置き換えてもよい。この構成では、放射源1202および放射器改質器1203は、
図13Cに図示するように、シャッター式の仕方で移動されて、放射改質器1203の開口よりも大きい露光面積を達成する。第1の次元1211および第2の次元1212沿いの硬化深さプロファイルの周期性は、第2の次元1212沿いの支持リグの移動の有無にかかわらず、次の微細構造パターン、すなわち、蓮の葉の幾何形状(
図15D)およびスーパーオムニフォビックな幾何形状(
図15E)のうちの1つ以上の形成という結果をもたらす。これらの幾何形状のうちのいくつかは、例えば航空機の洗浄要件または保守要件を低減するために自己洗浄特性を有する。
【0040】
図15A〜15Eに示す幾何形状では、このような幾何形状の特徴サイズは、最小約10マイクロメートル、高さ最大約100マイクロメートルであり得る。
【0041】
ボトムアップ式硬化
一構成では、硬化は、ボトムアップ式硬化を含む。
図11B〜11Cに例示する例を参照すると、ボトムアップ式硬化は、光硬化性材料の層の外面から近位の第1の側(すなわち、底部側1162)で始まり、外面から遠位の対向する第2の側(すなわち、頂部側1164)に向かって続く硬化プロセスを指す。ボトムアップ式硬化がない場合、硬化は、照射時に瞬間的またはほぼ瞬間的であってもよい。逆に、ボトムアップ式硬化は、硬化が、底部側1162から頂部側1164に空間的かつ経時的に進行することを可能にする。ボトムアップ式硬化は、次のこと、すなわち、未硬化の光硬化性材料が除去される、光硬化性材料の層が完全に硬化する、または硬化がさらに進行することが抑止される、のうちのいずれか1つが発生するまで進行し続ける(下のさらなる説明を参照されたい)。したがって、微細構造パターンの最大高さは、次のもの、すなわち、光硬化性材料の層の厚さ、除去するステップ1106のタイミング、および硬化の抑止の程度、のうちの1つ以上により制御され得る。
【0042】
ボトムアップ式硬化は、制御区域をもたらし、硬化深さプロファイルの制御およびそれゆえに微細構造パターンの提供を容易にする。例えば、照射強度および/または持続時間を制御することは、最終的な硬化深さプロファイルおよびその後の微細構造パターンに影響を与える。
図11Bおよび11Cに例示する例では、照射強度プロファイルと硬化深さプロファイルとの間の対応関係は、整合しているか、または実質的に整合している。具体的には、硬化深さプロファイルは、のこぎり歯照射強度プロファイル1156に対応するのこぎり歯硬化深さプロファイル1158である。のこぎり歯硬化深さプロファイル1158は、未硬化の光硬化性材料を除去するステップ1106を行うことにより達成される。別の例では、対応関係は、整合していないか、実質的に整合していない場合がある。例えば、光硬化性材料がのこぎり歯照射強度プロファイル1156で照射され、のこぎり歯の先端が光硬化性材料層の全高に達した後もボトムアップ式に硬化され続ける場合、得られる硬化深さプロファイルは、台形プロファイルに対応し得る。
【0043】
ボトムアップ式硬化は、いくつかの方法のうちの1つで達成され得る。一構成では、ボトムアップ式硬化は、ボトムアップ式硬化を容易にする大気中の酸素の存在に依存する。特に、光硬化性材料の少なくとも一部は、光硬化性材料内に拡散した酸素により抑制される硬化の抑止を被る。拡散した酸素は、光硬化性材料内の光重合開始剤の重合を抑止する。大気条件下では、大気中の酸素は、光硬化性材料の層の上部(すなわち、外面から遠位)により多く、光硬化性材料の層の下部(すなわち、外面から近位)により少なく拡散する。この例では、外面は、航空機の外面であってもよく、大気中の酸素は、航空機が格納庫内に保管されている間に供給されることがある。拡散した酸素および結果として生じる硬化の抑止は、光硬化性材料の層内で差別的な硬化速度を生じさせる。差別的な硬化速度は、第1の側に向かってのより高い硬化速度と、第2の側の近くのより低い硬化速度とを含む。コーティングが相対的に厚い場合、酸素抑止は、しきい値深さまでのみ測定可能または有効であり得、しきい値深さより下では、光硬化性材料は、酸素抑止がない、またはほとんどない状態で、硬化することができる。しきい値深さ未満では、光/放射が浸透するにつれての光/放射の減衰のため、硬化はより困難になる。この減衰は、ポリマー自体内への吸収および/またはコーティング内の色素による吸収により、生じ得る。
【0044】
別の構成では、当業者なら理解するであろうが、外面は、酸素拡散レベルを制御するように所定のレベルで加圧された酸素を有し、かつそれゆえに硬化の抑止を制御する制御環境内に置かれてもよい。さらに別の構成では、当業者なら理解するであろうが、外面は、ボトムアップ式硬化または酸素がコーティング表面の下に浸透する範囲を低減するように、低減された酸素レベルを有する制御環境内に置かれてもよい。
【0045】
後処理
記載の方法1100は、後処理ステップをさらに含んでもよい。ステップ1106における微細構造パターンの形成後に、方法1100は、硬化済みの光硬化性材料がない基材1154の少なくとも一部分の除去処理ステップまたは付加処理ステップを含んでもよい。
図16Aに例示するように、上段の図は、ステップ1106後の方法1100の結果を表す。結果は、硬化済みの光硬化性材料1600により形成される微細構造パターンを、基材1154の上面上に有する。基材1154の上面はまた、硬化済みの光硬化性材料1600がない区域1602を含む。
図16Aに例示する除去処理の場合、方法1110は、例えば基材1154の上面にエッチングまたはサンドブラスト加工を行い、その後硬化済みの光硬化性材料1600を除去することにより、基材1154の一部を除去するステップをさらに含む。除去処理の結果は、ステップ1106の結果の微細構造パターンに対応する微細構造パターンを含む、基材のみの材料である。あるいは、
図16Bに例示する付加処理の場合、方法1110は、例えば、追加の基材材料を基材1154の上面上に堆積させ、その後硬化済みの光硬化性材料1600を除去することにより、追加の基材材料を添加することをさらに含む。付加処理の結果は、ステップ1106の結果の微細構造パターン(のネガ)に対応する微細構造パターンを含む、基材のみの材料である。
【0046】
図6〜15の記載の構成は、
図2〜5の構成に内在する生産上の困難のうちの少なくとも一部を克服する。例えば、一構成では、基材43は、航空機の外面の上塗りである。別の例として、
図12および14に例示するシステムの構成は、多重露光の必要性なしに微細構造パターンの作製を可能にする。
【0047】
図6〜10に例示するローラー装置の特徴およびその非接触な性質は、ローラー装置を複雑な曲面および航空機の窓に適用し、それにより、より大きい適用範囲および抗力低減を確保することができることである。
図14Aに例示するローリング可能なシステム1400、および
図14Cに例示し、対応する段落に記載するロボットシステム1450も、類似の特徴を提供する。
【0048】
上述の事項は、本発明の一部の実施形態のみを説明したものであり、それらの一部の実施形態に対する当業者に自明な変更を、本発明の範囲から逸脱することなしに、行うことができる。
【0049】
本明細書で使用するとき、「備える(comprising)」という用語(およびその文法的変化形)は、「のみからなる(consisting only of)」という排他的意味ではなく、「含む(including)」または「有する(having)」という包括的な意味で使用されている。