【実施例】
【0033】
<特性試験について>
特性試験として、以下の試験を行った。
○圧縮強度試験(JIS A 1108)
養生直後の供試体(直径10cm高さ20cmの円柱体)に対して、アムスラー式圧縮試験機(株式会社テクノエナミ製;型式 圧縮試験機アムスラー式1000kN)を用いて圧縮強度試験を行った。そして、圧縮強度試験により得られた圧縮歪曲線の勾配値からヤング率を算出した。また、圧縮方向である供試体の高さについて圧縮前、圧縮解除直後及び圧縮解除後5分経過後の長さをそれぞれ測定し、変形回復率を算出した。
【0034】
<使用原料について>
コンクリート組成物の原料として以下のものを準備した。
○普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
(密度3.16g/cm
3、比表面積3330cm
2/g)
(鉱物組成;C
3S56%、C
2S18%、C
3A9%、C
4AF9%)
〇セルロースナノファイバー(CNF)
CNF1(中越パルプ工業株式会社製nanoforest−S)
ACC法により製造。繊維幅20nm以下、CNF濃度2%
〇ポリビニルアルコール(PVA)
PVA1(富士フイルム和光純薬株式会社製ポリビニルアルコールPVA500;重合度約500)
PVA2(富士フイルム和光純薬株式会社製ポリビニルアルコールPVA1500;重合度約1500)
〇ポリ塩化ビニル(PVC);比較例3で使用
PVC1(JIS K6771に準じた丸棒(市販品);直径10mm、密度1.25g/cm
3)
〇鉱物粒(チエ社製ブラジル産ショールトルマリン、粒径1〜4mm、密度3.18g/cm
3程度)
販売用の説明資料によれば、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、アルミニウム等の珪酸類を含む硼珪酸塩鉱物粒である、と説明されている。
○細骨材(中日本砂利株式会社製)
(最大骨材寸法2mm、表乾密度2.63g/cm
3)
○粗骨材(三谷セキサン株式会社製)
(最大骨材寸法10mm、表乾密度2.70g/cm
3)
【0035】
<混和剤について>
混和剤として以下のものを使用した。
○高性能減水剤(BASFジャパン株式会社製;マスターグレニウムSP8HU)
【0036】
<補強体について>
ステンレスメッシュ(日本精線株式会社製一般金網用ステンレス鋼線;ステンレス線の引張強度645N/mm
2、密度7.93g/cm
3)を用い、線径1.0〜1.5mmで網目の目開き15mmのクリンプ織タイプを使用した。補強体は、ステンレスメッシュを所定サイズの円筒体に形成して単円筒又は同心円状の組み合せで用いた。
【0037】
<混練水及び養生水について>
上水道水(越前市水道局;硬度23mg/リットル)を用いた。
【0038】
[実施例1]
セメント組成物として、CNF、PVA及び鉱物粒含有コンクリート組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0039】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;154kg/m
3
水;31kg/m
3
CNF1;154kg/m
3
(CNF量;3.08kg/m
3、セメント比;2.0質量%)
PVA1;154kg/m
3(セメント比;100質量%)
PVA2;154kg/m
3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;15kg/m
3(セメント比;9.7質量%)
粗骨材;386kg/m
3
混和剤;2.16kg/m
3
【0040】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、強制撹拌式ミキサー(株式会社関西機器製作所;容量50リットル)を使用した。ミキサーを駆動させて、セメント、水、CNF1、PVA1、鉱物粒、混和剤を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。
【0041】
排出された混練物は、コンクリート供試体型枠(株式会社マルイ製ソノモールド)に空気が混入しないように脱泡して打ち込み、JIS A 1132に準じて、圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.44g/cm
3であった。
【0042】
<供試体の養生について>
コンクリートを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、圧縮歪曲線の勾配値からヤング率を算出した。また、圧縮前、圧縮解除直後及び圧縮解除後5分経過後の高さの変化に基づいて変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0043】
[実施例2]
実施例1と同様の混練物を用い、補強体として、直径60mmの単円筒体(線径1.5mm及び目開き15mmのクリンプ織を使用)を用いてコンクリート組成物を作製した。
【0044】
<供試体の作製について>
得られた混練物は、補強体を中心に配置したコンクリート供試体型枠(株式会社マルイ製ソノモールド)に空気が混入しないように脱泡して打ち込み、JIS A 1132に準じて、補強体を内蔵する圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.76g/cm
3であった。
【0045】
<供試体の養生について>
実施例1と同様の養生を行った後、実施例1と同様の圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0046】
[実施例3]
セメント組成物として、CNF、PVA及び鉱物粒含有コンクリート組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0047】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;154kg/m
3
水;31kg/m
3
CNF1;154kg/m
3
(CNF量;3.08kg/m
3、セメント比;2.0質量%)
PVA2;308kg/m
3(セメント比;200質量%)
鉱物粒;15kg/m
3(セメント比;9.7質量%)
粗骨材;386kg/m
3
混和剤;2.16kg/m
3
【0048】
<供試体の作製について>
実施例1と同様に混練作業を行って供試体を作製した。供試体の密度は、1.31g/cm
3であった。
【0049】
<供試体の養生について>
実施例1と同様に養生を行い、養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行った。圧縮歪曲線の勾配値からヤング率を算出した。また、圧縮前、圧縮解除直後及び圧縮解除後5分経過後の高さの変化に基づいて変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0050】
[実施例4]
実施例3と同様の混練物を用い、補強体として、直径60mmの単円筒体(線径1.5mm及び目開き15mmのクリンプ織を使用)を用いてコンクリート組成物を作製した。
【0051】
<供試体の作製について>
得られた混練物は、実施例2と同様に処理して補強体を内蔵する供試体を作製した。供試体の密度は、1.84g/cm
3であった。
【0052】
<供試体の養生について>
実施例1と同様の養生を行った後、実施例1と同様の圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0053】
[実施例5]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0054】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;457kg/m
3
水;69kg/m
3
CNF1;228kg/m
3
(CNF量;4.56kg/m
3、セメント比;1.0質量%)
PVA1;228kg/m
3(セメント比;50質量%)
PVA2;457kg/m
3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;69kg/m
3(セメント比;15.1質量%)
混和剤;4.57kg/m
3
【0055】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.27g/cm
3であった。
【0056】
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0057】
[実施例6]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0058】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;387kg/m
3
水;58kg/m
3
CNF1;194kg/m
3
(CNF量;3.88kg/m
3、セメント比;1.0質量%)
PVA1;194kg/m
3(セメント比;50質量%)
PVA2;581kg/m
3(セメント比;150質量%)
鉱物粒;58kg/m
3(セメント比;15.0質量%)
混和剤;3.87kg/m
3
【0059】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.21g/cm
3であった。
【0060】
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0061】
[実施例7]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0062】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;252kg/m
3
水;38kg/m
3
CNF1;126kg/m
3
(CNF量;2.52kg/m
3、セメント比;1.0質量%)
PVA1;126kg/m
3(セメント比;50質量%)
PVA2;252kg/m
3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;20kg/m
3(セメント比;7.9質量%)
混和剤;1.26kg/m
3
【0063】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.53g/cm
3であった。
【0064】
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0065】
[実施例8]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0066】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;332kg/m
3
水;50kg/m
3
CNF1;166kg/m
3
(CNF量;3.32kg/m
3、セメント比;1.0質量%)
PVA1;332kg/m
3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;50kg/m
3(セメント比;15.1質量%)
混和剤;3.65kg/m
3
【0067】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.32g/cm
3であった。
【0068】
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0069】
[実施例9]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0070】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;332kg/m
3
水;50kg/m
3
CNF1;166kg/m
3
(CNF量;3.32kg/m
3、セメント比;1.0質量%)
PVA2;332kg/m
3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;50kg/m
3(セメント比;15.1質量%)
混和剤;3.65kg/m
3
【0071】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.36g/cm
3であった。
【0072】
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0073】
[実施例10]
CNF及びPVA含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0074】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;409kg/m
3
水;155kg/m
3
CNF1;204kg/m
3
(CNF量;4.08kg/m
3、セメント比;1.0質量%)
PVA2;409kg/m
3(セメント比;100質量%)
細骨材;503kg/m
3
混和剤;3.27kg/m
3
【0075】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(水中養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.66g/cm
3であった。
【0076】
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて水中養生(20℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0077】
[実施例11]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0078】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;332kg/m
3
水;50kg/m
3
CNF1;166kg/m
3
(CNF量;3.32kg/m
3、セメント比;1.0質量%)
PVA2;332kg/m
3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;50kg/m
3(セメント比;15.1質量%)
混和剤;3.65kg/m
3
【0079】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(水中養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.57g/cm
3であった。
【0080】
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて水中養生(20℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を
図1に示す。
【0081】
[比較例1]
CNF含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0082】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;1693kg/m
3
水;179kg/m
3
CNF1;403kg/m
3
(CNF量;8.06kg/m
3、セメント比;0.47質量%)
鉱物粒;40kg/m
3(セメント比;2.44質量%)
混和剤;14.39kg/m
3
【0083】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(水中養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.63g/cm
3であった。
【0084】
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて水中養生(20℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率を算出した。圧縮強度試験では、供試体が圧縮により破壊されたので、変形回復率は算出できなかった。算出結果を
図1に示す。
【0085】
[比較例2]
コンクリート組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0086】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;975kg/m
3
水;195kg/m
3
粗骨材;663kg/m
3
細骨材;644kg/m
3
混和剤;16.57kg/m
3
補強体;直径60mmの単円筒体(線径1.5mm及び目開き15mmのクリンプ織を使用)
【0087】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(水中養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、2.50g/cm
3であった。
【0088】
<供試体の養生について>
コンクリートを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて水中養生(20℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率を算出した。圧縮強度試験では、供試体が圧縮により破壊されたので、変形回復率は算出できなかった。算出結果を
図1に示す。
【0089】
[比較例3]
PVC丸棒を内蔵するコンクリート組成物を以下の原料を使用して作製した。
【0090】
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;777kg/m
3
水;259kg/m
3
細骨材;1257kg/m
3
鉱物粒;40kg/m
3(セメント比;5.15質量%)
混和剤;7.38kg/m
3
補強体;直径10mm及び60mmの単円筒体(線径1.5mm及び目開き15mmのクリンプ織を使用)を組み合せた同心円筒体を用い、中心にPVC1を単円筒体に挿入して配置した。
【0091】
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、強制撹拌式ミキサー(株式会社関西機器製作所;容量50リットル)を使用した。ミキサーを駆動させて、セメント、水、粗骨材、CNF1、PVA1、鉱物粒、混和剤を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。
【0092】
排出された混練物は、補強体を中心に配置したコンクリート供試体型枠(株式会社マルイ製ソノモールド)に空気が混入しないように脱泡して打ち込み、JIS A 1132に準じて、圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(水中養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、2.44g/cm
3であった。
【0093】
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて水中養生(20℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率を算出した。圧縮強度試験では、供試体が圧縮により破壊されたので、変形回復率は算出できなかった。算出結果を
図1に示す。
【0094】
以上説明した各実施例の試験結果をみると、密度が1.21g/cm
3〜1.84g/cm
3となっており、従来の硬化体に比べて軽量化されていることが確認された。
【0095】
また、ヤング率は、17〜60N/mm
2となっており、比較例よりも大きく低下している。実施例1から4のヤング率をみると、補強体を内蔵した場合にヤング率の低下が確認でき、変形しやすくなっていることがわかる。したがって、実施例2及び4に示す補強体を内蔵するコンクリート硬化体は、軽量で変形しやすく早期の変形回復を示す一種のゴム弾性体のような特性を備えている。
【0096】
また、変形回復率については、比較例では圧縮変形により破壊されたのに対し、各実施例では50%以上回復しており、変形しやすく弾性的特性を発現していることが確認された。また、圧縮試験において圧縮解除してから5分経過後に高い変形回復を示しており、早期回復の程度からみても弾性的特性が明確に確認された。
【0097】
PVAの配合割合を大きくする方が変形回復率を高めるように作用する傾向がみられ、実施例6にみられるように、PVA1よりもPVA2の配合割合を大きくした方が変形回復率が大きくなることが確認された。したがって、実施例6に示すモルタル硬化体は、軽量で変形しやすく早期の変形回復を示す一種のゴム弾性体のような特性を備えている。