特許第6981703号(P6981703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6981703
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】フライパンおよびオムレツ調理方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/10 20060101AFI20211206BHJP
   A23L 15/00 20160101ALI20211206BHJP
【FI】
   A47J37/10 301
   A23L15/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2021-79395(P2021-79395)
(22)【出願日】2021年5月8日
【審査請求日】2021年5月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの公開日 令和3年4月30日(2)ウェブサイトのアドレスhttps://www.youtube.com/watch?v=U2RoZnmEPG4(3)公開者 伊藤鋳工株式会社(4)公開された発明の内容 伊藤鋳工株式会社が、上記アドレスのウェブサイトで公開されているGoogle LLCが提供する動画配信サービス(いわゆるYoutube)のウェブサイトにて、伊藤剛が発明したフライパン及びオムレツ調理方法について公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503382759
【氏名又は名称】伊藤鋳工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134533
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 夏香
(74)【代理人】
【識別番号】100186451
【弁理士】
【氏名又は名称】梅森 嘉匡
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−122614(JP,A)
【文献】 特開2011−206837(JP,A)
【文献】 特開2014−213205(JP,A)
【文献】 特開2012−147880(JP,A)
【文献】 特開平11−009237(JP,A)
【文献】 意匠登録第1319397(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/10−37/12
A23L 13/00−17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な底板と、当該底板の外周縁に沿って連続して設けられる周壁と、当該周壁に設けられる把手とが一体として鋳造され、左右対称に形成された鋳鉄製のフライパンであって、
前記底板の幅寸法が、前記底板の先端側を最大とし前記把手に近づくほど連続的に小さくなるように形成され、
前記周壁が、幅寸法が最大となる前記底板の先端側に連設され上向きに湾曲する第1アーチ部と、当該第1アーチ部に延設され前記把手側上方を向くように湾曲する第2アーチ部とを備えるとともに、前記把手から遠ざかるほど高さ寸法が大きくなるように形成されており、
前記把手が、側面視で凸状に湾曲し、前記把手の端部が、前記第2アーチ部の上端よりも低い位置まで延設されており、
前記第1アーチ部の内周面の曲率が、前記第2アーチ部の内周面の曲率よりも大きく設定され、
前記第2アーチ部の最大幅寸法が、前記底板の最大幅寸法以上であり、
前記第1アーチ部と前記底板との連設部分が直線的であることを特徴とするフライパン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オムレツの調理に好適なフライパン、及び、当該フライパンを用いたオムレツの調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オムレツの調理には、円形の底板と、当該底板の外周縁に沿って連続して設けられる一定の高さの周壁と、当該周壁に設けられる把手とにより構成される鉄製のフライパン(以下「従来のフライパン」という。)が用いられる。
【0003】
オムレツは、その外観が略左右対称に滑らかに湾曲した中央部を頂点とするラクビーボール形状のもので、かつ、その内部が半熟状ないし固形に至らない程度に加熱されたものが好まれる反面、卵の性質上、加熱により固まりやすく、かつ、一旦固形化した後に整形することが困難であることから、手際よくスピーディに調理することが求められ、相応のテクニックを要する料理である。この点、オムレツライス用フライパンとして特許文献1に開示される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−62944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オムレツの調理工程は一様でなく若干の違いがあるものの、従来のフライパンを用いて調理する場合の問題点(テクニックを要する工程)として以下の点が挙げられる。一点目として、一般に従来のフライパンは様々な調理に対応するため平坦な底板と当該底板に対して略直角に設けられた周壁とを備え、当該底板と当該周壁とは曲率が比較的小さな折曲げ部(アール部)により連設されているが、かかる形状のフライパンを用いて前述の好適な形状のオムレツを整形するには相応のテクニックを要する。二点目として、底板が平坦であるため、前記形状のオムレツの外表面に対して均等に熱を加えつつ、その内部を半熟状ないし固形に至らない程度に加熱することが難しい。三点目として、オムレツを両面とも満遍なく焼くため、周壁やヘラ等を利用してひっくり返したり半月状に折り返したりするが、やわらかい状態にあるため形状が崩れやすく、相応のテクニックを要する。四点目として、最適に加熱されたオムレツは、その内部が半熟状又は固形に至らない程度の状態にあるため形崩れし易いが、一般的なフライパンは前述の形状であるため、形を崩さずに器にのせることが難しい。この点、特許文献1に開示される技術は、前記各問題点を解決できるものではないうえ、把手(柄3)が上方に向けて直線的に設けられているため、オムレツを器にのせる際に把手を水平状態から90度以上傾ける必要があり扱いづらいという問題もある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、前述の好適なオムレツ(その外観が略左右対称に滑らかに湾曲した中央部を頂点とするラクビーボール形状のもので、かつ、その内部が半熟状ないし固形に至らない程度に加熱されたもの)を簡単に調理することが可能なフライパンを提供することを目的とする。また、少量の卵でも簡単に好適なオムレツ調理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフライパンは、
平坦な底板と、当該底板の外周縁に沿って連続して設けられる周壁と、当該周壁に設けられる把手とが一体として鋳造され、左右対称に形成された鋳鉄製のフライパンであって、
前記底板の幅寸法が、前記底板の先端側を最大とし前記把手に近づくほど連続的に小さくなるように形成され、
前記周壁が、幅寸法が最大となる前記底板の先端側に連設され上向きに湾曲する第1アーチ部と、当該第1アーチ部に延設され前記把手側上方を向くように湾曲する第2アーチ部とを備えるとともに、前記把手から遠ざかるほど高さ寸法が大きくなるように形成されており、
前記把手が、側面視で凸状に湾曲し、前記把手の端部が、前記第2アーチ部の上端よりも低い位置まで延設されており、
前記第1アーチ部の内周面の曲率が、前記第2アーチ部の内周面の曲率よりも大きく設定され、
前記第2アーチ部の最大幅寸法が、前記底板の最大幅寸法以上であり、
前記第1アーチ部と前記底板との連設部分が直線的であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前述の好適なオムレツを簡単に調理することが可能なフライパンを提供することができる。より具体的には、上記問題点に対応して次の効果を発現する。
【0010】
一点目として、加熱したフライパンに溶き卵(卵液)を流し込んで、余熱で菜箸やヘラを用いてかき混ぜた後、フライパンを加熱して底板全面に広がった半熟状に至らない状態の卵液を手際よくフライパンの片側(一般には把手部の反対側)に掻き集める際に、第1アーチ部を支点とし把手を持ち上げてフライパンを傾斜させることにより底板全面に広がった卵を平坦な底板を滑らせて手際よく第1アーチ部に向けて掻き集めることができる。底板の幅寸法が把手に近づくほど連続的に小さくなるように形成されているため、把手側にある卵を掻き集めて先端側(第1アーチ部側)に送り込みやすく、特に、第1アーチ部の端部よりも中央付近により多くの卵を集めやすく、中央部を頂点するラクビーボール形状のオムレツに整形しやすい。
【0011】
二点目として、傾斜させたフライパンの先端側に集められた卵は第1及び第2アーチ部に包まれた状態となり相応の厚み(深さ)をもつから、その内部を半熟状ないし固形に至らない程度に加熱しやすい。さらに、本発明に係るフライパンは、鋳鉄製であり、プレス成型された鉄製フライパンに比して、油染みが良く、熱伝導性および蓄熱性に優れていることから、一度加熱しておけば消火又は弱火の状態でも卵全体を余熱で温めることができ、オムレツの外表面に対して均等に熱を加えやすく、火加減の誤りによる焦げ付きを防止できる。
【0012】
三点目として、第1及び第2アーチ部の内周面を利用して前述の好適な形状のオムレツに整形しやすい。片側の面の加熱及び整形を終えた後、反対の面の加熱及び整形を行う場合には、把手側上方を向くように湾曲する第2アーチ部を利用して容易に卵をひっくり返すことができる。そのため、卵をひっくり返す際にフライパンを振る必要がない。フライパンの周壁は、把手から遠ざかるほど高さ寸法が大きくなるように形成されており、卵をひっくり返す際に側方から卵が流出する事態を防ぐことができる。なお、前記第1アーチ部の内周面の曲率が、前記所望の形状のオムレツの頂部から縁部に至る曲面の曲率に対応して設定されることが好ましい。
【0013】
四点目として、最適に加熱されたオムレツは、その内部が半熟状又は固形に至らない程度の状態にあるところ、前記第2アーチ部の最大幅寸法が前記底板の最大幅寸法以上であることから、フライパンの先端側が幅方向に大きく開口しており形を崩さずに器に移しやすい。また、オムレツを器にのせる際には、通例、把手を逆手に持ち直し、他方の手で器を斜めに保持した姿勢で行うが、本発明では把手が側面視で凸状に湾曲し把手の端部が前記第2アーチ部の上端よりも低い位置まで延設されており、把手の位置が身体に近いことから、直線的に設けられた把手(特許文献1参照)に比して、逆手に持った手首を捻らず、かつ器をテーブルに載置したままでも、オムレツを器に移すことができる。底板の幅寸法が把手に近づくほど連続的に小さくなるように形成されていることから、底板が円形である形状のフライパンに比べて軽量であり扱いやすい。
【0014】
また、本発明によれば、少量の卵でも簡単に好適な形状及び食感のオムレツの調理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態であるフライパンを示す図である。
図2】(A)は図1に示すフライパンのA−A断面図であり、(B)は図1に示す平面図に寸法線等を加えた図であり、(C)は図1に示す底面図に底板と第1アーチ部との境界線を加えた図である。
図3図1に示すフライパンを用いたオムレツの調理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るフライパン1は、底面を熱して使用し、オムレツを作ることができるフライパンである。以下、適宜図面を参照しつつ本発明を具体的に説明するが、本発明は図面に示す実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限りにおいて適宜変更可能である。なお、説明の便宜上、把手側とは反対の側を先端側と称することがある。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態であるフライパン1を示す図であり、特に、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は平面図、(D)は底面図、(E)は右側面図である。図2(A)は図1に示すフライパンのA−A断面図であり、図2(B)は図1に示す平面図に寸法線等を加えた図であり、図2(C)は図1に示す底面図に底板と第1アーチ部との境界線を加えた図である。なお、背面図は正面図と対称にあらわれるので省略する。フライパン1は、平坦な底板2と、底板2の外周縁に沿って連続して設けられる周壁3と、周壁3に設けられる把手4とが一体として鋳造された鋳鉄製のフライパンである。次に、各部分の構成について詳細に説明する。なお、底板2と周壁3の厚さはほぼ均等である。また、フライパン1は、その先端と末端(把手4の端部)を通る中心線(A−A線)を基準に左右対称に形成されている。
【0018】
図1に示す本実施例のフライパン1の全長は約287.5mm(把手4の端部から底板2との結合部までの長さが約130mm、底板2の長さが約112.5mm、底板2との連設部から先端までの長さが約45mm)、その幅寸法(L2)が約150mmである。また、底板2を机上に載置した状態において、把手4の最上部までの高さが約67.5mm、第2アーチ部32の上端までの高さが約61.8mm、把手4と底板2の結合部までの高さが約35.1mmであるが、一例に過ぎない。
【0019】
底板2は、図1(C)に示すように、底板2の幅寸法Lが、把手4に近づくほど連続的に小さくなるように形成されている。なお、本発明に係るフライパンの底板は、図3(A)に示すようにガスコンロ10上に載置した状態においてゴトク11に接する平坦な部分であり、底板2の幅寸法が最大となる位置(図2(B)及び(C)において一点鎖線で示す)から把手4との結合部までの領域を指す。
【0020】
周壁3は、幅寸法が最大となる底板2の先端側(一点鎖線)に連設され上向きに湾曲する第1アーチ部31と、第1アーチ部31に延設され把手4側上方を向くように湾曲する第2アーチ部32とを備える。第1アーチ部31の下端は底板2の先端側(一点鎖線)との連設部であり、その上端はフライパン1の最も外方に突き出した部分311である。第2アーチ部32の下端は第1アーチ部31の上端に連設され、図1(E)に示すように、その上端が同一の高さとなるように形成されている。第2アーチ部32の最大幅寸法L2は、底板2の最大幅寸法Lmax以上である(図2(B)参照)。
【0021】
第1及び第2アーチ部31、32を備えることにより、フライパン1の先端側がいわばオーバーハング状に反り返っている。第1アーチ部31の内周面の曲率は、第2アーチ部32の内周面の曲率よりも大きく設定される。なお、第1アーチ部31の内周面の曲率は、前記所望の形状のオムレツの頂部から縁部に至る曲面の曲率に対応して設定されることが好ましい。
【0022】
さらに、周壁3は、図1(A)及び図2(A)に示すように、把手4から遠ざかるほど高さ寸法が大きくなるように形成されている。
【0023】
把手4は、側面視で凸状に湾曲し、把手4の端部が、第2アーチ部32の上端よりも低い位置まで延設されている。
【0024】
次に、フライパン1を用いたオムレツの調理方法の一例を説明するが、本発明のフライパンの特徴との技術的関連性が乏しい工程(例えば、ボウルを用いて卵を溶く工程など)については適宜説明を簡略化する。なお、本方法によれば、卵を半月状に折り曲げるといったテクニックを要する操作は不要である。
【0025】
本実施例の調理方法は、(1)上述したフライパン1を200℃以上に熱し、底板2に油分をなじませ、下味をつけて調製した卵液を準備する準備工程と、(2)フライパン1の加熱を停止した状態で、前記卵液を底板2の上に流し入れ、菜箸12で攪拌し、半熟直前の状態とする余熱調理工程と、(3)フライパン1の加熱を開始し、フライパン1の把手4側が持ち上げられた状態で、ヘラ13で前記卵液を第1アーチ部31において、中央部が端部より膨らんだ半熟状の卵塊に整形する整形工程と、(4)フライパン1の把手4側が更に持ち上げられた状態で、第1アーチ部31及び第2アーチ部32に前記卵塊を移動させ、第1アーチ部31及び第2アーチ部32を下側として加熱した後、フライパン1の加熱を停止し、内部が半熟状態のままの前記卵塊を第2アーチ部32に沿わせてヘラ13で把手4側にひっくり返して第1アーチ部31に移動させる反転工程と、を含む。以下、更に詳細を説明する。なお、本実施例では、前記反転工程後には、(5)フライパン1の加熱を開始し、反転させた状態の前記卵塊の形を内部が半熟状態のまま整える再整形工程と、(6)フライパン1の加熱を停止し、フライパン1から器Pに前記卵塊がすべり落とされる盛付工程と、を含む。
【0026】
図3は、図1に示すフライパン1を用いたオムレツの調理方法を示す図であり、(A)から(F)の順序で進行する。
【0027】
材料として、鶏卵1〜2個を、菜箸12や泡立て器等の撹拌用具を用いてよく溶きほぐして、下味をつけて調製した卵液(溶き卵)を準備する。下味としては、卵2個(約80〜140g)に対し、塩、砂糖を1つまみ(約0.5〜1.0g)ずつ、牛乳大さじ1杯が好ましいが、これに限定されず、好みの味付けでも良い。
【0028】
先ず、図3(A)に示すように、ガスコンロ10に火を点けて、フライパン1をゴトク11の上で200℃以上、好ましくは200〜250℃(煙が出る程度)にまで加熱した後、均等に油分(バター、サラダ油等の食用油)をなじませる。ここまでが準備工程である。
【0029】
次に、ガスコンロ10の火を消して、フライパン1を、底板2が略水平となるようにゴトク11上に配置し、フライパン1の加熱を停止した状態で、上述した卵液を流し入れる。次いで、卵が偏らないようにフライパン1を前後左右に揺らしつつ、菜箸12を用いて底板2全体に当該卵液を拡げ、大きく全体をかき混ぜながら、半熟直前の状態に至るまで余熱で調理する。ここまでが余熱調理工程である。底板2の幅寸法が把手4に近づくほど連続的に小さくなるように形成され、中心線上が底板2の長さ方向最長部となるから、端部側よりも中心線側により多くの卵が存する。
【0030】
次に、ガスコンロ10の火を点けて(弱火〜中火)、ヘラ13を用いて、底板2全面に広がった当該卵液を平坦な底板2を滑らせて手際よく第1アーチ部31に向けて掻き集める。掻き集めた状態で、中央部が端部より膨らんだ半熟状の卵塊に整形する(図3(B)参照)。ここまでが整形工程である。底板2の幅寸法が把手4に近づくほど連続的に小さくなるように形成されており、把手4側にある卵を掻き集めて先端側(第1アーチ部31側)に送り込みやすく、かつ、前述のとおり中心線側により多くの卵が存することから、フライパン1を傾斜させて底面全体に広がった卵を第1アーチ部31に向けて送り込んだとき、第1アーチ部31の端部側よりも中央付近により多くの卵が集めやすく、中央部を頂点するラクビーボール形状のオムレツに整形しやすい。なお、ヘラ13の代わりに、フライ返しや薄いしゃもじ等、ヘラ状の用具を用いてもよい。
【0031】
次に、図3(C)に示すように、フライパン1の把手4側が更に持ち上げられた状態で、第1アーチ部31及び第2アーチ部32に卵塊を移動させ、第1アーチ部31及び第2アーチ部32を下側として加熱(弱火〜中火)した後、フライパン1の加熱を停止し、内部が半熟状態のままの卵塊を第2アーチ部32に沿わせて、把手4側にひっくり返して、図3(D)に示すように第1アーチ部31に移動させる。ひっくり返すとき、ヘラ13等のヘラ状の用具を用いてもよい。ここまでが反転工程である。第1アーチ部31を支点として把手4を持ち上げることにより傾斜させたフライパン1の先端側に集められた卵は第1及び第2アーチ部31、32に包まれた状態となり、相応の厚み(深さ)をもつから、その内部を半熟状ないし固形に至らない程度に加熱しやすい。第1アーチ部31及び第2アーチ部32は上述した卵塊を載せるのに十分な面を有する。フライパン1は熱伝導性および蓄熱性に優れており、第1アーチ部31よりやや火元から離れた第2アーチ部32からも加熱できる。第1及び第2アーチ部31、32の内周面を利用して片側の面の加熱(弱火〜中火)を終えた後、把手4側上方を向くように湾曲する第2アーチ部32を利用して容易に卵をひっくり返すことができる(図3(D)参照)。
【0032】
次いで、再整形工程として、ヘラ13等を用いて卵Eの形を整え、反転工程で加熱した面とは反対側の面の加熱(弱火〜中火)及び整形を行う(図3(E)参照)。再整形時の加熱は15秒以内が好ましい。
【0033】
次に盛付工程を行う。フライパンの加熱を停止し、フライパン1の把手側を持ち上げた状態で、ヘラ13を用いて卵塊を第2アーチ部32の方からさらに外側へずらすことで、フライパン1から器Pに卵塊がすべり落とされる。両面が最適に加熱されたオムレツは、その内部が半熟状又は固形に至らない程度の状態にあるが、フライパン1の先端側が幅方向に大きく開口していることから、図3(F)に示すように、形を崩さずに器Pに移すことができる。オムレツを器にのせる際には、通例、把手4を逆手に持ち直し、他方の手で器Pを保持した姿勢で行うが、前述のとおり把手4の位置が身体に近いことから、直線的に設けられた把手(特許文献1参照)に比して、逆手に持った手首を捻らずともオムレツを器Pに移すことができる。盛付工程では、器Pを持たなくてもよいので、作業者は片手が空く。空いた片手でヘラ13を用いてフライパン1から卵塊を押し出して器に滑り落とすことができる。
【0034】
本実施例によれば、少量の卵でも好適な形状及び食感のオムレツを簡単に調理することができる。
【0035】
本発明は、上記実施の形態ないし実施例に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 フライパン
2 底板
3 周壁
31 第1アーチ部
32 第2アーチ部
4 把手
10 ガスコンロ
11 ゴトク
12 菜箸
13 ヘラ
E 卵(オムレツ)
P 器


【要約】
【課題】好適な形状及び食感のオムレツを簡単に調理することが可能なフライパン等を提供する。
【解決手段】底板2の幅寸法が、把手4に近づくほど連続的に小さくなるように形成され、周壁3が、幅寸法が最大となる底板2の先端側に連設され上向きに湾曲する第1アーチ部31と、第1アーチ部31に延設され把手4側上方を向くように湾曲する第2アーチ部32とを備えるとともに、把手4から遠ざかるほど高さ寸法が大きくなるように形成されている。また、把手4が、側面視で凸状に湾曲し、把手4の端部が、第2アーチ部32の上端よりも低い位置まで延設されており、第1アーチ部31の内周面の曲率が、第2アーチ部32の内周面の曲率よりも大きく設定され、第2アーチ部32の最大幅寸法が、底板2の最大幅寸法以上である。
【選択図】図1
図1
図2
図3