(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6981720
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】両利き麺汁掬いお玉
(51)【国際特許分類】
A47J 43/28 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
A47J43/28
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2021-68023(P2021-68023)
(22)【出願日】2021年2月25日
【審査請求日】2021年3月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521156376
【氏名又は名称】金澤 芳
(72)【発明者】
【氏名】金澤 芳
【審査官】
杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭54−025164(JP,U)
【文献】
実公昭25−010284(JP,Y1)
【文献】
韓国登録特許第10−0576240(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
お玉本体および前記お玉本体の下に分離可能に配置される受け皿全体部を含む麺汁掬いお玉であって、前記お玉本体は、汁を掬う部分である掬い部および手で持つ部分である柄から成り、前記受け皿全体部は、受け皿部および前記受け皿部につながるレバーから成り、前記掬い部の下に前記受け皿部が配置されるとともに、前記掬い部は、左右両側に麺をつまむことができる複数の切れ込みを有し、前記受け皿部が前記掬い部に対して左右方向に移動可能な機能を有する麺汁掬いお玉。
【請求項2】
前記受け皿部を前記掬い部に対して左右方向に移動することにより、移動方向側の切れ込みの一部または全部を塞ぐ機能を有することを特徴とする、請求項1に記載の麺汁掬いお玉。
【請求項3】
掬い部の先端にピンが下向きに形成されており、前記ピンが前記受け皿部の先端にある孔に挿入することにより、孔に挿入された前記ピンを中心にして前記受け皿部が前記掬い部に対して移動可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の麺汁掬いお玉。
【請求項4】
柄の下側に向かって突起が形成されており、前記突起が前記受け皿全体部のレバーに形成されている突起スライド溝に挿入されていて、前記レバーを左右方向に動かすことで、前記突起が前記突起スライド溝内を左右に動くことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載の麺汁掬いお玉。
【請求項5】
右利きの人が使用する際は、前記レバーを右に動かすことで、前記受け皿全体部が右に動き、前記受け皿部が前記掬い部の右側の切れ込みを塞ぎ、左側の切れ込みで麺等を掬いとることができるような機能を有する、請求項3または請求項4に記載の麺汁掬いお玉。
【請求項6】
左利きの人が使用する際は、レバーを左に動かすことで、前記受け皿全体部が左に動き、前記受け皿部が前記掬い部の左側の切れ込みを塞ぐことで、右側の切れ込みで麺等を掬いとることができるような機能を有する、請求項3または請求項4に記載の麺汁掬いお玉。
【請求項7】
前記掬い部の左右の切れ込みの間の中央部が塞がっていることで、具や汁を掬うことのできる、請求項1〜6のいずれかの項に記載の麺汁掬いお玉。
【請求項8】
さらに、前記掬い部の左右の切れ込みの間の中央部の一部または全部を網状(網状部)にした、請求項1〜6のいずれかの項に記載の麺汁掬いお玉。
【請求項9】
受け皿部を左右方向に移動することにより、前記網状部が露出し、前記網状部の網目から掬った汁が零れ落ちることで、具だけを掬うことのできる機能を有する請求項8に記載の麺汁掬いお玉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、右利きであっても左利きであっても不自由なく利用できる両利き麺汁掬いお玉に関する。
【背景技術】
【0002】
給食やホテルなどのバイキングといった場面で、うどんのような麺や、サラダなどをよそうためにうどんお玉という種類のお玉が使用されている。
図9は従来使用されている右利き用の通常のうどんお玉を示す図である。
このうどんお玉11という道具は、通常のお玉の具を掬う場所、掬い部12にフォークのような切れ込み13が入っていることにより、麺をその切れ込み13に絡めることでよそうことができる道具である。
【0003】
しかし、その切れ込み13は
図9のように掬い部12を上から見たときに左側にしかない。これは右利き用であり、左利きの人が利用しようとすると非常に不便である。なぜなら、切れ込み13が左側にしかないので、左手にうどんお玉を持つと、切れ込みの無い方でうどんを絡めとるような状態となってしまい、非常に困難になってしまう。
【0004】
図10のように切れ込み13が右側にある左利き用のものも存在するが、おそらく個人で使用する用途以外で左利き用のものが使われることはなく、大勢の人が集まる場面では、右利き用のものが使用されるだろう。
【0005】
また、従来のうどんお玉とは違い、櫛付きお玉というものも存在する。
図11は従来使用されている櫛付きお玉15を示す図である。この櫛付きお玉15はうどんお玉とは違い、
図11のように切れ込み13が左右ではなく、お玉15の柄16を自分のほうに持ってきて、上から見たときに、掬い部12の上にあり、櫛のようになっているものである。これで麺などを掬おうとすると、利き手による使いやすさの格差は無いが、手首を捻る必要があるので、使いにくい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】SHOKUBI「18−0 ステンレス レードル柄 うどんお玉」、インターネット <URL:https://www.shokubi.jp/shop/g/g101012940/>
【非特許文献2】SHOKUBI「玉虎堂製作所18−0 ステンレスうどんお玉レードル柄左利き用」、インターネット <URL:https://www.shokubi.jp/shop/g/g101066057/>
【非特許文献3】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、そのうどんお玉を使用する人が右利きであっても左利きであっても、不自由な思いをすることなく、麺類などを掬いとることのできる両利き麺汁掬いお玉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の両利き麺汁掬いお玉は、切れ込み6が左右どちらにもあるお玉本体22と、お玉本体22の下方に重なる受け皿全体部23と、この受け皿全体部のうち、受け皿1を左右にスライドさせることができる移動機構とを備える。このお玉により右利きの人と左利きの人が使い分けることとともに、十分な量の麺や汁または具材を掬いとることができる。
【0009】
右利きの人が使用するときは、レバー3をお玉の柄5に対して右側にスライドさせる。すると、受け皿1は掬い部24に対して右側に移動して掬い部24の右側の切れ込み6を覆いつつ、左側の切れ込み6を露出させる。従って、右利きの人は、左側の切れ込み6で麺をつまみ、右側の受け皿1と重複した部分と中央部で汁を掬うことができる。
【0010】
左利きの人が使用するときは、レバー3をお玉の柄5に対して左側にスライドさせる。すると、受け皿1は掬い部24に対して左側に移動して掬い部24の左側の切れ込み6を覆いつつ、右側の切れ込み6を露出させる。従って、左利きの人は、右側の切れ込み6で麺をつまみ、左側の受け皿1と重複した部分と中央部で汁を掬うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の両利き麺汁掬いお玉は、掬い部の両左右側に切れ込みを有しており、掬い部の下に配置された受け部を移動できるから、右利きの人にも左利きの人にも、簡単な切り替え操作で都合よく麺をつまむことができるとともに、汁を掬う部分を大面積で使用することができる。例えばバイキングなどの場面で、自分が左利きの場合、自分の前に使用した人が右利きであっても、自分の番では左利き用のうどんお玉の形状に簡単に切り替えることができる。また、右利き用のうどんお玉しかその場になかった時に、左利きの人が無理にそのうどんお玉を使用することで生じていた時間が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】お玉本体と受け皿部を合体させた本発明のお玉を横から見た図である。
【
図5】本発明を、柄の突起と受け皿の突起スライド溝が組み合わさっているのが分かるように受け皿全体部側から見ている図である。
【
図6】右利きの人が本発明を実際に使用してみた際の図である。
【
図7】左利きの人が本発明を実際に使用してみた際の図である。
【
図9】右利き用の従来のうどんお玉を示す図である。
【
図10】左利き用の従来のうどんお玉を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および
図2は、本発明のお玉を示す図である。本発明のお玉21はお玉本体22と受け皿全体部23から構成される。
図1及び
図2に示すように、本発明のお玉21は、切れ込み6が左右両側に形成されているお玉本体22とその下側に取り付けられた受け皿全体部を有する。受け皿1とお玉本体22は、先瑞のピン4で互いをつなぎとめている。このピン4の形状は例えばネジのような形状をしており、長さは例えば1cm程度で、太さは孔の幅と同じ程度である。
【0014】
図3は、お玉本体22だけを示しており、麺や汁(つゆ)を掬うための掬い部24と柄5からなる。掬い部24は上側に凹状(下側に凸状)となっている。掬い部24には、切れ込み6が左右対称に両側に形成してある。切れ込み6の形状はうどんなどの麺類を掬える既存のうどんお玉の切れ込み、例えばフォークのようなものと同じである。左右の切れ込み6に挟まれたお玉本体22の掬い部24の中央部(汁溜め部)25は凹部でふさがっているので、この部分で汁や具を掬える。この中央部(汁溜め部)25と左右の切れ込み6でお玉の掬い部24を構成する。掬い部24の先端には受け皿1と連結するためのピン4が下(図では奥(裏)側、受け皿1側)に向かって形成されている。また、柄5の裏側には突起2が形成されていて、後述する受け皿全体部23のレバー3の切り抜きに差し込まれる。この突起2の形状は、例えばネジのような形状をしており、長さは例えば3cm程度で、太さは突起スライド溝8の幅とほぼ同じで、突起スライド溝8に入る程度のサイズである。
【0015】
図4に受け皿全体部23を示す。受け皿全体部23のうちの受け皿1はお玉本体の掬い部24(切れ込み6部分も含む)よりも横幅が狭く、たとえば、掬い部24の一方の切れ込み6の3分の1から3分の2程度と中央部(汁溜め部)25とが重なるほどの横幅を有する(
図6参照)。
図1に示すように、受け皿全体部23は、お玉本体22を下方から合わせこめる形状をしており、受け皿1の形状は上方に凹状であり掬い部24の下側形状(すなわち凸状)に合わせて掬い部24を受けるようになっている。受け皿1の先端には、掬い部24のピン4と重なる位置に、ピン4が入る孔7が開けられている。受け皿1の後端には、受け皿1から上方に立ち上がるように湾曲してレバー3が取り付けられている。レバー3には左右に曲線状、例えば弓形やアーチ形、半月のような形状の突起スライド溝8が形成されている。
図4に示すように、突起スライド溝8が形成される部分の幅はレバー3の他の部分の幅より大きくなっても良い。
【0016】
図5は、
図2の裏側、すなわち受け皿全体部23側から見た図である。突起スライド溝8付近を中心に見ているので、受け皿1は小さく見えている。
受け皿1をお玉本体22に組み合わせた様子を
図1と
図5を参照して説明する。お玉の掬い部24と受け皿全体部23とは、先端の孔7を貫通するピン4で留められており、ここを起点として受け皿1は掬い部24に対して左右に動く(回転する)ことが可能である。受け皿1の突起スライド溝8にお玉本体の柄5の突起2が挿入されている。これにより、突起2は突起スライド溝8内を左右に移動することができる。このため、レバー3を左右に動かすと、突起2は、突起スライド溝8内で右左方向に移動して、それに伴い受け皿1をお玉本体22の掬い部24に対して左右に移動させることができる。
【0017】
図6に示す通り、右利きの人が使用するときは、レバー3をお玉の柄5に対して右側にスライドさせる。すると、突起2は突起スライド溝8の左側にくる。受け皿1は掬い部24に対して右側に移動して掬い部24の右側の切れ込み6を覆いつつ、左側の切れ込み6を露出させる。従って、右利きの人は、左側の切れ込み6で麺をつまみ、右側の受け皿1と重複した部分と中央部25で汁を掬うことができる。
【0018】
左利きの人が使用するときは、
図7に示す通り、レバー3をお玉の柄5に対して左側にスライドさせる。突起2は突起スライド溝8の右側にくる。すると、受け皿1は掬い部24に対して左側に移動して掬い部24の左側の切れ込み6を覆いつつ、右側の切れ込み6を露出させる。従って、左利きの人は、右側の切れ込み6で麺をつまみ、左側の受け皿1と重複した部分と中央部25で汁を掬うことができる。
【0019】
別形態(第2の実施形態、尚上記形態を第1の実施形態とする)として、
図8に示すように、両側の切れ込み6に挟まれた中央部25を網状にし、網状部9とすることで、具だけを掬うためのお玉としても使用することができる。この場合、受け皿1を中央に位置しないように左または右側に大きくスライドさせる。こうすると、網状部9の部分が露出されるので、汁は網目を通じて落下し、具だけを掬うことができる。汁を掬う時は、受け皿1を中央に位置させればよい、また、麺をつかむときは前述のように利き手に応じてレバー3をスライドさせればよい。こうすることで、お玉をi)具だけを掬う、ii)両利き用の麺と汁を掬う、iii)汁だけを掬うといったように使い分けることができる。尚、別形態(第2の実施形態)の突起スライド溝8の幅は第1の実施形態より左右に大きくして、受け皿1を中央部25に位置しないように左または右側に大きくスライドできるようにする。
【0020】
本発明は、上記説明したように、右利きであっても左利きであっても不自由なく使い分けることのできるうどんお玉を提供することを目的とするものである。
本発明は、レバー3を左右にスライドさせることで、掬い部24の下にある受け皿1がスライドし、受け皿1が、掬い部24にある切れ込み6を片方隠すことによって自分の利き手に合ったうどんお玉に変形させる。例えば、右利きの人が使用するときはレバー3をお玉の持ち手に対して右側にスライドさせる。すると、受け皿1は掬い部24に対して右側に移動して掬い部24の右側の切れ込み6を覆いつつ、右側の受け皿1と重複した部分と中央部25とで汁を掬うことができる。
本発明は、お玉本体22と受け皿全体部23とで、分解することができる。分解することで、繋ぎ目になっているような部分が無いので、従来のお玉と同じように洗うことができる。
本発明のお玉本体と受け皿全体部の材料は、例えばステンレスやプラスチックなどである。ピンや突起の材料も、お玉本体や受け皿全体部と同じものを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、学校給食やホテルのレストランのバイキングなどで使用される両利き麺汁掬いお玉を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0022】
1 受け皿
2 突起
3 レバー
4 ピン
5 柄
6 切れ込み
7 孔
8 突起スライド溝
9 網状部
11 従来のうどんお玉
12 掬い部
13 切れ込み
14 従来の左利き用のうどんお玉
15 櫛付きお玉
16 柄
21 両利き麺汁掬いお玉
22 お玉本体
23 受け皿全体部
24 掬い部
25 中央部
【要約】
【課題】本発明は、右利きであっても左利きであっても不自由なく使い分けることのできるうどんお玉を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、レバーを左右にスライドさせることで、掬い部の下にある受け皿がスライドし、受け皿が、掬い部にある切れ込みを片方隠すことによって自分の利き手に合ったうどんお玉に変形させる。例えば、右利きの人が使用するときはレバーをお玉の持ち手に対して右側にスライドさせる。すると、受け皿は掬い部に対して右側に移動して掬い部の右側の切れ込みを覆いつつ、右側の受け皿と重複した部分と中央部で汁を掬うことができる。
【選択図】
図1