(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るGUI表示装置及びプログラムについて説明する。
【0019】
<1.フィッティングシステムの概略構成>
図1及び
図2に、本実施形態に係るGUI表示装置であるフィッティング装置2を備えるフィッティングシステム100の全体構成を示す。フィッティング装置2は、ゴルファー7に適したゴルフクラブ4を選定するのを支援するための装置である。そのために、フィッティング装置2は、ゴルファー7によるゴルフクラブ4のスイング動作を計測した計測データを取得し、当該計測データに基づいて、スイング動作の解析を行う。解析の結果は、後述する画面W1〜W5(
図19〜
図24)等を介してユーザに提示される。なお、ここでいうユーザとは、ゴルファー7自身やそのインストラクター等の、解析の結果を必要とする者の総称である。本実施形態では、スイング動作の計測を行うセンサユニットは、慣性センサユニット1及びカメラシステム5であり、フィッティング装置2は、これらの慣性センサユニット1及びカメラシステム5とともに、フィッティングシステム100を構成する。以下、慣性センサユニット1、カメラシステム5及びフィッティング装置2の構成について説明した後、フィッティング処理の流れについて説明する。
【0020】
<1−1.慣性センサユニットの構成>
慣性センサユニット1は、
図1及び
図3に示すとおり、ゴルフクラブ4のグリップ42におけるヘッド41と反対側の端部に取り付けられており、グリップ42の挙動を計測する。なお、ゴルフクラブ4は、一般的なゴルフクラブであり、シャフト40と、シャフト40の一端に設けられたヘッド41と、シャフト40の他端に設けられたグリップ42とから構成される。本実施形態に係るシャフト40は、カーボン製のシャフトである。慣性センサユニット1は、スイング動作の妨げとならないよう、小型且つ軽量に構成されている。慣性センサユニット1は、ゴルフクラブ4の外側に取り付けることができ、ゴルフクラブ4に対して着脱自在に構成することができる。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る慣性センサユニット1には、加速度センサ11、角速度センサ12及び地磁気センサ13が搭載されている。また、慣性センサユニット1には、これらのセンサ11〜13から出力されるセンサデータ(計測データ)を外部のフィッティング装置2に送信するための通信装置10も搭載されている。なお、本実施形態では、通信装置10は、スイング動作の妨げにならないように無線式であるが、ケーブルを介して有線式にフィッティング装置2に接続するようにしてもよい。
【0022】
加速度センサ11、角速度センサ12及び地磁気センサ13はそれぞれ、グリップ42を基準としたxyz局所座標系におけるグリップ加速度、グリップ角速度及びグリップ地磁気を計測する。より具体的には、加速度センサ11は、x軸、y軸及びz軸方向のグリップ加速度a
x,a
y,a
zを計測する。角速度センサ12は、x軸、y軸及びz軸周りのグリップ角速度ω
x,ω
y,ω
zを計測する。地磁気センサ13は、x軸、y軸及びz軸方向のグリップ地磁気m
x,m
y,m
zを計測する。これらのセンサデータは、所定のサンプリング周期Δtの時系列データとして取得される。なお、xyz局所座標系は、
図3に示すとおりに定義される3軸直交座標系である。すなわち、z軸は、シャフト40の延びる方向に一致し、ヘッド41からグリップ42に向かう方向が、z軸正方向である。x軸は、ヘッド41のトゥ−ヒール方向にできる限り沿うように配向され、y軸は、ヘッド41のフェース面の法線方向にできる限り沿うように配向される。
【0023】
本実施形態では、加速度センサ11、角速度センサ12及び地磁気センサ13によるセンサデータは、通信装置10を介してリアルタイムにフィッティング装置2に送信される。しかしながら、例えば、慣性センサユニット1内の記憶装置にセンサデータを格納しておき、スイング動作の終了後に当該記憶装置からセンサデータを取り出して、フィッティング装置2に受け渡すようにしてもよい。
【0024】
<1−2.カメラシステムの構成>
次に、カメラシステム5の構成について説明する。カメラシステム5は、カメラ51と、複数台のストロボ53,54とを備えており、ストロボ式の撮影を行う。カメラ51は、ゴルフクラブ4のヘッド41のクラウン部41b(
図18参照)を上方から撮影できるように、ゴルファー7の正面側において、支持台57に固定されており、アドレス時のボールの位置の斜め上方に配置されている。ストロボ53,54も、支持台57に固定されており、地面よりも上方で、カメラ51の下方に配置されている。
【0025】
なお、ゴルフクラブのスイング動作は、一般に、アドレス、トップ、インパクト、フィニッシュの順に進む。アドレスとは、
図4(A)に示すとおり、ゴルフクラブ4のヘッド41をボール近くに配置した初期の状態を意味し、トップとは、
図4(B)に示すとおり、アドレスからゴルフクラブ4をテイクバックし、最もヘッド41が振り上げられた状態を意味する。インパクトとは、
図4(C)に示すとおり、トップからゴルフクラブ4が振り下ろされ(ダウンスイング)、ヘッド41がボールと衝突した瞬間の状態を意味し、フィニッシュとは、
図4(D)に示すとおり、インパクト後、ゴルフクラブ4を前方へ振り抜いた状態を意味する。
【0026】
また、カメラシステム5は、投光器55A,55B及び受光器56A,56Bを備えており、投光器55A及び受光器56Aが1つのタイミングセンサを構成しており、投光器55B及び受光器56Bがもう1つのタイミングセンサを構成している。これらのタイミングセンサにより生成される時刻は、後述するとおり、ストロボ53,54の発光及びそれに続くカメラ51での撮影を行うタイミングを決定するのに使用される他、インパクト直前(インパクト時とみなし得る)のヘッド速度V
hiを算出するのに使用される。
【0027】
さらに、カメラシステム5は、以上の装置51,53〜56Bの動作を制御するための制御装置50を備えている。制御装置50は、CPU,ROM,RAM等の他、通信部50A(
図2参照)を備えており、通信部50Aは、以上の装置51,53〜56Bに接続されている。また、通信部50Aは、フィッティング装置2の通信部25(
図2参照)にも接続されている。
【0028】
投光器55A,55Bは、ゴルファー7の正面側の地面付近において、カメラ51の下方に配置されている。一方、受光器56A,56Bは、ゴルファー7の足のつま先付近に配置されている。投光器55A及び受光器56Aは、X軸に概ね平行な直線上に配置されており、互いに対向している(
図1参照)。投光器55B及び受光器56Bについても同様である。投光器55A,55Bは、ゴルフスイング中、常時それぞれ受光器56A,56Bに向けて光を照射しており、受光器56A,56Bがこれを受光する。しかしながら、ゴルフクラブ4が投光器55A,55Bと受光器56A,56Bとの間を通過するタイミングでは、投光器55A,55Bからの光がゴルフクラブ4により遮断されるため、受光器56A,56Bはこれを受光することができない。受光器56A,56Bはこのタイミングを検出し、これを受けて、制御装置50がそれぞれタイミングt1,t2を生成する。
【0029】
制御装置50は、このタイミングt1の後のタイミングt3において、ストロボ53に発光を命令するとともに、カメラ51に撮影を命令する。また、制御装置50は、タイミングt2よりも後のタイミングt4において、ストロボ54に発光を命令するとともに、カメラ51に撮影を命令する。カメラ51により撮影された画像データ(計測データ)は、制御装置50に送信され、制御装置50からさらにフィッティング装置2に送信される。また、制御装置50は、タイミングt1,t2の情報(計測データ)も、フィッティング装置2に送信する。
【0030】
<1−3.フィッティング装置の構成>
図2を参照しつつ、フィッティング装置2の構成について説明する。フィッティング装置2は、CD−ROM、USBメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体20に格納されたプログラム3を、当該記録媒体20から汎用のパーソナルコンピュータにインストールすることにより製造される。プログラム3は、センサユニット1,5から送られてくる計測データに基づいてスイング動作を解析し、解析の結果を表示するためのソフトウェアである。プログラム3は、フィッティング装置2に後述する動作を実行させる。
【0031】
フィッティング装置2は、表示部21、入力部22、記憶部23、制御部24及び通信部25を備える。そして、これらの部21〜25は、バス線26を介して接続されており、相互に通信可能である。本実施形態では、表示部21は、液晶ディスプレイ等で構成され、後述する情報をユーザに対し表示する。また、入力部22は、マウス、キーボード、タッチパネル等で構成することができ、フィッティング装置2に対するユーザからの操作を受け付ける。通信部25は、フィッティング装置2と外部装置との通信を可能にする通信インターフェースであり、センサユニット1,5から計測データを受信する。
【0032】
記憶部23は、ハードディスク等の不揮発性の記憶装置により構成される。記憶部23内には、プログラム3が格納されている他、センサユニット1,5から送られてくる計測データが保存される。また、記憶部23内には、対応関係データ28、ヘッドデータベース(DB)27及びシャフトデータベース(DB)29が格納されている。ヘッドDB27は、多数のヘッド41のスペックを示す情報が、ヘッド41の種類を特定する情報に関連付けて格納されたデータベースである。シャフトDB29は、多数のシャフト40のスペックを示す情報が、シャフト40の種類を特定する情報に関連付けて格納されたデータベースである。対応関係データ28については、後述する。
【0033】
制御部24は、CPU、ROMおよびRAM等から構成することができる。制御部24は、記憶部23内のプログラム3を読み出して実行することにより、仮想的に取得部24A、グリップ挙動導出部24B、肩挙動導出部24C、算出部24D、決定部24E、選択部24F及び表示制御部24Gとして動作する。各部24A〜24Gの動作の詳細については、後述する。
【0034】
<2.フィッティング処理>
続いて、フィッティングシステム100により実行されるフィッティング処理について説明する。本実施形態に係るフィッティング処理は、
図5に示すとおり、以下の11個の工程(S1〜S11)から構成されている。
(S1)慣性センサユニット1及びカメラシステム5によりゴルファー7によるスイング動作を計測する計測工程
(S2)計測工程で得られたxyz局所座標系でのグリップ加速度a
x,a
y,a
z、グリップ角速度ω
x,ω
y,ω
z及びグリップ地磁気m
x,m
y,m
zのセンサデータを、XYZ全体座標系でのグリップ加速度a
X,a
Y,a
Z及びグリップ角速度ω
X,ω
Y,ω
Zに変換する第1変換工程
(S3)XYZ全体座標系でのグリップ42の挙動を、スイング平面P(後述する)内でのグリップ42の挙動へと変換する第2変換工程
(S4)スイング平面P内でのグリップ42の挙動に基づいて、スイング平面P内でのゴルファー7の疑似的な肩の挙動を導出する肩挙動導出工程
(S5)スイング平面P内でのグリップ42の挙動及び疑似的な肩の挙動に基づいて、後述する腕出力パワーP
1_
AVE及びクラブ入力パワーP
2_
AVE(以下、これらをまとめて、第1スイング指標と呼ぶことがある。)を算出する第1指標算出工程
(S6)第1スイング指標に基づいて、ゴルファー7に適したシャフト40の重量である最適シャフト重量を決定する最適シャフト重量決定工程
(S7)センサデータに基づいて、第2スイング指標(本実施形態では、後述する第1〜第4特徴量F
1〜F
4)を算出する第2指標算出工程
(S8)第2スイング指標に基づいて、ゴルファー7に適したシャフト40の剛性(本実施形態では、後述するIFC及びフレックス)を示す最適剛性指標を決定する最適剛性決定工程
(S9)最適シャフト重量及び最適剛性指標に合致するシャフト40を選択する推奨シャフト選択工程
(S10)計測工程で得られた画像データ(計測データ)に基づいて、ヘッド41の挙動を決定するヘッド挙動決定工程
(S11)解析の結果をGUI画面上に表示する結果表示工程
【0035】
以下、これらの工程を順に説明する。なお、XYZ全体座標系は、
図1に示すとおりに定義される3軸直交座標系である。すなわち、Z軸は、鉛直下方から上方に向かう方向であり、X軸は、ゴルファー7の背から腹に向かう方向であり、Y軸は、地平面に平行でボールの打球地点から目標地点に向かう方向である。
【0036】
<2−1.計測工程>
計測工程(S1)では、ゴルファー7により、上述の慣性センサユニット1付きゴルフクラブ4がスイングされる。以下、計測工程で使用されるゴルフクラブ4を、テストクラブと呼ぶことがある。そして、テストクラブのスイング動作中のグリップ加速度a
x,a
y,a
z、グリップ角速度ω
x,ω
y,ω
z及びグリップ地磁気m
x,m
y,m
zのセンサデータが、慣性センサユニット1により計測される。このセンサデータは、慣性センサユニット1の通信装置10を介してフィッティング装置2に送信される。一方、フィッティング装置2側では、取得部24Aが通信部25を介してこれを受信し、記憶部23内に格納する。本実施形態では、少なくともアドレスからインパクトまでの時系列のセンサデータが計測される。
【0037】
また、計測工程では、テストクラブのスイング動作中において、上述したタイミングセンサにより生成される時刻t1,t2を基準として、ストロボ53,54による発光処理と、カメラ51による撮影処理とが行われる。これにより、スイング動作中のインパクト付近のヘッド41の近傍の様子を写す画像データが撮影されるとともに、タイミングt1,t2の情報が計測され、これらの計測データが通信部50Aを介してフィッティング装置2に送信される。一方、フィッティング装置2側では、取得部24Aが通信部25を介してこれを受信し、記憶部23内に格納する。
【0038】
計測工程では、テストクラブが複数回、好ましくは2回〜5回程度試打されることが好ましい。この場合、計測データに基づいて算出される各種値の平均値を算出することができ、以降の計算にこの平均値を使用することにより、解析の結果のバラつきを低減することができる。
【0039】
<2−2.第1変換工程>
第1変換工程(S2)では、xyz局所座標系のセンサデータが、XYZ全体座標系の値へと変換される。具体的には、グリップ挙動導出部24Bが、記憶部23内に格納されているアドレスからインパクトまでのxyz局所座標系でのグリップ加速度a
x,a
y,a
z、グリップ角速度ω
x,ω
y,ω
z及びグリップ地磁気m
x,m
y,m
zの時系列のセンサデータを読み出す。そして、読み出されたセンサデータに基づいて、アドレスからインパクトまでのxyz局所座標系でのグリップ加速度a
x,a
y,a
z及びグリップ角速度ω
x,ω
y,ω
zの時系列データを、アドレスからインパクトまでのXYZ全体座標系での時系列データに変換する。以下、変換後のXYZ全体座標系でのグリップ加速度及びグリップ角速度を、グリップ加速度a
X,a
Y,a
Z及びグリップ角速度ω
X,ω
Y,ω
Zと呼ぶ。また、第1変換工程では、グリップ挙動導出部24Bは、グリップ加速度a
X,a
Y,a
Zの時系列データを積分することにより、アドレスからインパクトまでのXYZ全体座標系でのグリップ速度v
X,v
Y,v
Zを導出する。なお、局所座標系から全体座標系への値の変換方法については、様々知られている。従って、ここでは詳細な説明を省略するが、必要であれば、同出願人らによる特開2016−2429号公報や特開2016−2430号公報等に記載の方法に従うことができる。
【0040】
<2−3.第2変換工程>
第2変換工程(S3)では、グリップ挙動導出部24Bは、第1変換工程で算出されたXYZ全体座標系でのグリップ42の挙動を、スイング平面P内でのグリップ42の挙動へと変換する。本実施形態では、スイング平面Pは、XYZ全体座標系の原点を含み、Y軸及びインパクト時のシャフト40と平行な面として定義される(
図6参照)。グリップ挙動導出部24Bは、アドレスからインパクトまでのXYZ全体座標系でのグリップ速度v
X,v
Y,v
Zをスイング平面P内へ射影したグリップ速度(v
pY,v
pZ)を算出するとともに、以下の式に従って、アドレスからインパクトまでのスイング平面P内でのグリップ速度V
GE(スカラー)を算出する。
【数1】
【0041】
また、グリップ挙動導出部24Bは、グリップ速度(v
pY,v
pZ)を積分することにより、スイング平面P内でのグリップ42の軌道を算出する。さらに、グリップ挙動導出部24Bは、スイング平面Pに直交する軸周りのグリップ角速度ω
pXを算出する。なお、第2変換工程の具体的な計算方法は、適宜選択することができるが、必要であれば、同出願人らによる特開2016−2429号公報や特開2016−2430号公報等に記載の方法に従うことができる。
【0042】
<2−4.肩挙動導出工程>
以下、スイング平面P内でのグリップの挙動に基づいて、スイング平面P内の疑似的な肩の挙動を導出する肩挙動導出工程(S4)について説明する。本実施形態では、ゴルフクラブ4の挙動は、ゴルファー7の肩及びグリップ42(或いは、これを握るゴルファーの手首)を節点とし、ゴルファー7の腕及びゴルフクラブ4をリンクとする二重振り子モデル(
図7参照)に基づいて解析される。ただし、肩の挙動は直接的に実測されるのではなく、実測されたグリップの挙動に基づいて、疑似的な肩の挙動として導出される。以下では、特に断らない限り、単に「肩」という場合も、このような疑似的な肩を意味し得るものとする。疑似的な肩とグリップ42(手首)との間を直線的に延びるものとして定義される疑似的な「腕」についても同様である。
【0043】
グリップの挙動から肩の挙動を特定するに当たり、本実施形態に係る二重振り子モデルは、以下の(1)〜(3)を前提とする。
図7は、以下の前提条件を概念的に説明する図である。
(1)スイング平面P上において、グリップ42(手首)は肩を中心として円運動する。
(2)スイング平面P上において、肩とグリップ42との距離(半径)Rは、一定である。
(3)肩は、スイング動作中は動かない(ただし、回転する)。
【0044】
以上の前提の下、肩挙動導出部24Cは、第2変換工程で得られたスイング平面P内でのグリップ42の軌道を、円弧(円)に近似する(
図8参照)。そして、当該円弧(円)の中心を肩の位置P
s=(P
sX,P
sY)とし、当該円弧(円)の中心からグリップ42の軌道までの平均的な距離を、腕長さ(肩とグリップ42との距離)Rとする。以下、グリップ42の軌道上の点A
iの座標を、(X
i,Y
i)と表す(i=1,2,・・・)。なお、ここでいうiは、時系列に沿ったデータ番号である。
【0045】
以下に、グリップ42の軌道の近似円(円弧)を導出する方法の一例を示す。まず、グリップ42の軌道上の任意の3点、例えば、A
i,A
i+30,A
i+60を考える。このとき、任意の三角形の外接円の中心は、当該三角形の三辺の垂直二等分線の交点となることから、A
i,A
i+30,A
i+60を頂点とする三角形を考えたとき(
図9参照)、以下の数2の式、ひいては数3の式が成り立つ。
【数2】
【数3】
【0046】
そして、様々なiに対する複数の数3の式から以下の数4の式を作成し、疑似逆行列を導出する。これにより、グリップ42の軌道の近似円(円弧)の中心P
s=(P
sX,P
sY)を導出することができる。
【数4】
【0047】
続いて、肩挙動導出部24Cは、近似円(円弧)の中心P
s=(P
sX,P
sY)からグリップ42の軌道上の各点A
i=(X
i,Y
i)までの距離の平均値を算出し、腕長さRとする。そして、肩挙動導出部24Cは、この腕長さRに基づいて、スイング平面P内におけるトップからインパクトまでの肩周りの角速度(腕の角速度)ω
1=V
GE/Rを算出する。
すなわち、腕の角速度ω
1は、計測によるグリップ速度V
GEが反映された値となる。
【0048】
<2−5.第1指標算出工程>
以下、
図10を参照しつつ、グリップ42の挙動及び肩の挙動に基づいて、第1スイング指標を算出する第1指標算出工程(S5)について説明する。第1スイング指標とは、最適シャフト重量を決定するための指標であり、ゴルファー7によるスイング動作を特徴付ける特徴量である。本実施形態の第1スイング指標は、後述される腕出力パワーP
1_
AVE、及びクラブ入力パワーP
2_
AVEである。
【0049】
具体的には、まず、ステップS31では、肩挙動導出部24Cは、トップからインパクトまでの腕の角速度ω
1を積分し、トップからインパクトまでの腕の回転角度θ
1を算出する。なお、回転角度θ
1は、
図11のように定義され、
図11の紙面は、スイング平面Pに等しい。以下では、
図11に示されるスイング平面P内での新たなXY座標系に基づいて、解析が進められる。スイング平面P内での新たなXY座標系のX軸は、上述したXYZ全体座標系のY軸に等しく、新たなXY座標系のY軸は、XYZ全体座標系のZ軸をスイング平面P内に投影した軸である。
【0050】
また、肩挙動導出部24Cは、トップからインパクトまでの腕の角速度ω
1を微分し、トップからインパクトまでの角加速度ω
1'を算出する。次に、肩挙動導出部24Cは、トップからインパクトまでの腕の重心の位置(X
1,Y
1)、速度(V
X1,V
Y1)及び加速度(A
X1,A
Y1)を算出する。これらの値は、上述した計算結果を以下の式に代入することにより算出される。
【数5】
【0051】
ただし、rは、肩から腕の重心までの距離である。本実施形態では、腕の重心は、腕の中心にあるものと仮定される。従って、R=2rである。
【0052】
次に、ステップS32では、グリップ挙動導出部24Bは、ステップS31と同様の演算をグリップ42周りについても行う。すなわち、トップからインパクトまでのグリップ角速度ω
pX=グリップ42周りのゴルフクラブ4の角速度ω
2を積分し、トップからインパクトまでのグリップ42周りのゴルフクラブ4(シャフト40)の回転角度θ
2を算出する。回転角度θ
2は、
図11のように定義される。
【0053】
続いて、グリップ挙動導出部24Bは、トップからインパクトまでのゴルフクラブ4の角速度ω
2を微分し、トップからインパクトまでの角加速度ω
2'を算出する。次に、グリップ挙動導出部24Bは、トップからインパクトまでのゴルフクラブ4の重心の位置(X
2,Y
2)、速度(V
X2,V
Y2)及び加速度(A
X2,A
Y2)を算出する。これらの値は、上述した計算結果を以下の式に代入することにより算出される。
【数6】
【0054】
ただし、Lは、グリップ42からゴルフクラブ4の重心までの距離である。Lの値は、ゴルフクラブ4のスペックであり、予め定められているものとする。
【0055】
次に、ステップS33では、算出部24Dは、上述した計算結果を以下の式に代入することにより、トップからインパクトまでの肩に発生する拘束力R
1=(R
X1,R
Y1)を算出するとともに、トップからインパクトまでのグリップ42に発生する拘束力R
2=(R
X2,R
Y2)を算出する。以下の式は、並進方向の力の釣り合いに基づくものである。ただし、m
1は、腕の質量であり、本実施形態では、腕の質量m
1は、適宜予め定められているものとする。例えば、解析を開始する前に、ゴルファー7の体重を入力しておき、入力された体重に所定の係数を掛ける等して、自動的に腕の質量が算出される。m
2は、ゴルフクラブ4の質量であり、gは、重力加速度である。また、m
2は、ゴルフクラブ4のスペックであり、予め定められているものとする。
【数7】
【0056】
続くステップS34では、算出部24Dは、上述した計算結果を以下の式に代入することにより、トップからインパクトまでの腕の重心周りのトルクT
g1及びゴルフクラブ4の重心周りのトルクT
g2を算出する。
【数8】
ただし、I
1は、腕の重心周りの慣性モーメントであり、I
2は、ゴルフクラブ4の重心周りの慣性モーメントである。本実施形態では、腕の重心周りの慣性モーメントI
1は、腕の重心が腕の中心にあるとの仮定の下、I
1=m
1r
2/3として算出される。また、I
2は、ゴルフクラブ4のスペックであり、予め定められているものとする。
【0057】
続くステップS35では、算出部24Dは、上述した計算結果に基づいて、トップからインパクトまでの腕の仕事率(パワー)E
1'を算出する。具体的には、E
1'は、肩の速度ベクトルをv
sとし、グリップ42の速度ベクトルをv
gとして、以下の式に従って表される。また、v
s,v
gはそれぞれ、肩の位置ベクトルd
s、グリップ42の位置ベクトルd
g=d
s+(2X
1,2Y
1)を一階微分することにより算出可能である。
【数9】
【0058】
また、本実施形態では、肩は動かないため、v
s=(0,0)となり、腕の仕事率E
1'は、以下の式に従って算出される。算出部24Dは、上述した計算結果を以下の式に代入することにより、トップからインパクトまでの腕の仕事率E
1'を算出する。
【数10】
【0059】
ところで、ゴルフスイングにおいて、ゴルフクラブ4の先端(ヘッド41)を最も加速させるためには、まず腕を十分に加速させて、その後、腕の動きを止めてゴルフクラブ4に勢いを与えることが求められると考えられる。ここでいう腕の加速具合とは、腕が出力するパワー(腕出力パワー)P
1という物理指標に置き換えることができ、ゴルフクラブ4に与える勢いとは、ゴルフクラブ4に入力されるパワー(クラブ入力パワー)P
2という物理指標に置き換えることができる。そして、腕出力パワーP
1とは、腕の仕事率E
1'を表す数10の右辺の第2項及び第3項部分に相当する。また、クラブ入力パワーP
2とは、数10の式中の右辺の第1項部分に相当する。すなわち、腕出力パワーP
1及びクラブ入力パワーP
2は、以下のとおり表すことができる。ステップS35では、算出部24Dは、腕の仕事率E
1'に加え、トップからインパクトまでの腕出力パワーP
1及びクラブ入力パワーP
2を算出する。
【数11】
【0060】
なお、スイング動作中にゴルフクラブ4で発揮される仕事率E
2'は、下式のように表すことができる。すなわち、クラブ入力パワーP
2=R
2v
gTが橋渡しになって、腕からゴルフクラブ4へとエネルギーが伝達される。
【数12】
【0061】
続くステップS36では、算出部24Dは、トップの時刻t
tから仕事率E
1'が最大となる時刻t
maxまでの腕の仕事量E
1を算出する。腕の仕事量E
1は、時刻t
t〜t
maxの区間で腕の仕事率E
1'を積分することにより、算出される(
図12参照)。なお、仕事量E
1は、時刻t
t〜t
maxの間に腕で発揮される仕事量(エネルギー)を表す指標と考えることができるから、この意味で、スイング動作中の腕エネルギーと呼ぶことができる。また、算出部24Dは、時刻t
t〜t
maxの間に腕で発揮される平均仕事率E
AVE=E
1/t
max―t
tを算出する。平均仕事率E
AVEは、スイング動作中に単位時間当たりに平均的に発揮ないし消費される腕エネルギーである。
【0062】
また、算出部24Dは、トップの時刻t
tから腕出力パワーP
1が最大値をとる時刻t
mまでの区間で腕出力パワーP
1を積分し、この積分値D
1をこの積分区間で除算することで、スイング動作中の平均的な腕出力パワーP
1_
AVEを算出する。なお、この積分値D
1は、スイング動作中にゴルファーの腕が行う仕事量であり、腕出力パワーを示す指標となり得る。同様に、算出部24Dは、トップの時刻t
tからクラブ入力パワーP
2が最大値をとる時刻t
nまでの区間でクラブ入力パワーP
2を積分し、この積分値D
2をこの積分区間で除算することで、スイング動作中の平均的なクラブ入力パワーP
2_
AVEを算出する。なお、この積分値D
2は、スイング動作中のゴルフクラブ4に対してされる仕事量であり、クラブ入力パワーを示す指標となり得る。なお、ここで示した積分区間は例示であり、例えば、時刻t
tからインパクトの時刻t
iまでの区間等、適宜設定し得る。
【0063】
なお、以上の腕出力パワーP
1,P
1_
AVEとは、スイング動作中にゴルファー7がコックを溜める強さを表す指標であると言い換えることができる。また、クラブ入力パワーP
2,P
2_
AVEとは、スイング動作中にゴルファー7がコックを解放する強さを表す指標であると言い換えることができる。
【0064】
続くステップS37では、算出部24Dは、スイング動作中のコック解放タイミングt
rを算出する。なお、本発明者らは、実験を通して、インパクト時のヘッド速度V
hが、スイング動作中のコック解放タイミングt
r、及び、腕エネルギーE
1又は平均仕事率E
AVEと相関があることを発見した。そこで、ここでは、インパクト時のヘッド速度V
hを算出すべく、コック解放タイミングt
rが算出される。本実施形態では、コック解放タイミングt
rは、時刻t
t〜t
iまでの区間で腕の仕事率E
1'が最大となる時刻が、コック解放タイミングt
rとして特定される。
【0065】
続くステップS38では、算出部24Dは、コック解放タイミングt
r及び腕エネルギーE
AVEに基づいて、インパクト時のヘッド速度V
hを算出する。具体的には、インパクト時のヘッド速度V
hは、下の式に従って算出される。なお、k
1,k
2,k
3は、予め行われた多数の実験結果から重回帰分析により得られた定数であり、記憶部23内に予め保持されている値である。以上より、指標算出工程が終了する。
V
h=k
1・E
AVE+k
2・t
r+k
3
【0066】
<2−6.最適シャフト重量決定工程>
以下、
図13を参照しつつ、最適シャフト重量決定工程(S6)の流れについて説明する。最適シャフト重量決定工程は、腕出力パワーP
1_
AVE及びクラブ入力パワーP
2_
AVEの大きさに応じて、最適シャフト重量の範囲(以下、最適シャフト重量帯)を決定するステップである。ここでは、P
1_
AVE,P
2_
AVEの値が大きい程、最適シャフト重量帯は段階的に大きな値に設定される。
【0067】
まず、ステップS41では、決定部24Eは、第1指標算出工程で算出された(P
1_
AVE,P
2_
AVE)で表される点が、
図14に示すP
1_
AVE−P
2_
AVE平面において直線L1の上側にあるか、すなわち、
図14の領域A1に属するか否か(以下、条件1)を判定する。そして、条件1が満たされる場合には、80g以上が最適シャフト重量帯であると判定する。一方、ステップS41で条件1が満たされない場合には、ステップS42に進む。ステップS42では、決定部24Eは、第1指標算出工程で算出された(P
1_
AVE,P
2_
AVE)で表される点が、
図14に示すP
1_
AVE−P
2_
AVE平面において直線L2の上側かつ直線L1よりも下側にあるか、すなわち、
図14の領域A2に属するか否か(以下、条件2)を判定する。そして、条件2が満たされる場合には、70g以上、80g未満が最適シャフト重量帯であると判定する。一方、ステップS42で条件2が満たされない場合には、ステップS43に進む。ステップS43では、決定部24Eは、第1指標算出工程で算出された(P
1_
AVE,P
2_
AVE)で表される点が、
図14に示すP
1_
AVE−P
2_
AVE平面において直線L3の上側かつ直線L2よりも下側にあるか、すなわち、
図14の領域A3に属するか否か(以下、条件3)を判定する。そして、条件3が満たされる場合には、60g以上、70g未満が最適シャフト重量帯であると判定する。一方、ステップS43で条件3が満たされない場合には、ステップS44に進む。ステップS44では、決定部24Eは、第1指標算出工程で算出された(P
1_
AVE,P
2_
AVE)で表される点が、
図14に示すP
1_
AVE−P
2_
AVE平面において直線L4の上側かつ直線L3よりも下側にあるか、すなわち、
図14の領域A4に属するか否か(以下、条件4)を判定する。そして、条件4が満たされる場合には、50g以上、60g未満が最適シャフト重量帯であると判定する。一方、ステップS44で条件4が満たされない場合、すなわち、第1指標算出工程で算出された(P
1_
AVE,P
2_
AVE)で表される点が、
図14に示すP
1_
AVE−P
2_
AVE平面において直線L4よりも下側にあり、
図14の領域A5に属する場合には、55g以下が最適シャフト重量帯であると判定する。
【0068】
以上の最適シャフト重量決定工程は、以下の知見に基づく。すなわち、本発明者らは、多数のゴルファーにテストクラブをスイングさせ、このときの腕出力パワーP
1_
AVE及びクラブ入力パワーP
2_
AVEを算出した。また、同じゴルファーに、様々なシャフト重量のゴルフクラブをスイングさせ、最大の飛距離を与えるシャフト重量を算出し、これを最適シャフト重量とした。
【0069】
上記の実験からは、最適シャフト重量は、同じゴルファーによるテストクラブのスイング時の腕出力パワーP
1_
AVE及びクラブ入力パワーP
2_
AVEが共に大きいほど、大きくなる傾向にあることが確認された。その結果、本発明者らは、腕出力パワーP
1_
AVE−クラブ入力パワーP
2_
AVE空間を、
図14に示すように領域分割することで、最適シャフト重量帯に対応する領域A1〜A5を定義可能であることを発見した。すなわち、上述のステップS41〜S44は、腕出力パワーP
1_
AVE及びクラブ入力パワーP
2_
AVEを示す点が、P
1_
AVE−P
2_
AVE空間におけるどの領域にプロットされるかに応じて、最適シャフト重量帯を判定するステップとなっている。ステップS41〜S44での判定に使用される閾値、言い換えると、
図14に示す分割領域A1〜A5の境界線L1〜L4を特定する情報等は、対応関係データ28として記憶部23内に格納されている。すなわち、対応関係データ28とは、P
1_
AVE,P
2_
AVEの大きさと最適シャフト重量帯との対応関係を定めるデータである。なお、境界線L1〜L4は互いに概ね平行であり、いずれもP
1_
AVE−P
2_
AVE平面において負の傾きを持つ直線である。ステップS41〜S44では、この記憶部23内の対応関係データ28が参照され、上記の判定が行われる。なお、
図2では、対応関係データ28は、プログラム3とは別のデータとして示されているが、プログラム3内に組み込まれていてもよい。
【0070】
<2−7.第2指標算出工程>
以下、計測工程で得られたセンサデータに基づいて、第2スイング指標を算出する第2指標算出工程(S7)について説明する。第2スイング指標とは、最適剛性指標を決定するための指標であり、ゴルファー7によるスイング動作を特徴付ける特徴量である。本実施形態では、第2スイング指標として、後述される第1〜第4特徴量F
1〜F
4が算出される。
【0071】
第1〜第4特徴量F
1〜F
4について理解するためには、まず、最適剛性指標について理解することが重要である。最適剛性指標とは、ゴルファー7に適したシャフト40の剛性を示す指標のことであり、本実施形態では、シャフト40の剛性は、シャフト40の複数の位置における曲げ剛性の分布(以下、EI分布)として評価される。本実施形態に係るEI分布は、定量的に数値を用いて表現され、より具体的には、インターナショナル・フレックス・コード(IFC)を用いて算出される。そのため、まず、このIFCについて説明する。なお、IFCは、本出願人により広く提案されているシャフトの特性を示す公知の指標であり、例えば、特許文献1をはじめとして、既に様々な文献で詳しく説明されている。従って、ここで改めて説明する必要は必ずしもないが、参考のため、ここでも説明を行う。
【0072】
IFCは、
図15に示すとおり、シャフト40の延びる方向に沿った4つの位置H1〜H4におけるシャフト40の曲げ剛性をそれぞれ0〜9の1桁の数値で表し、この4つの数値をシャフト40の延びる方向に沿って配列したコードである。より具体的には、シャフト40のバット端からチップ端に向かってこの順に概ね一定間隔で、4つの測定点H1〜H4が定義される。例えば、シャフト40のチップ端から36インチの箇所を測定点H1とし、26インチの箇所を測定点H2とし、16インチの箇所を測定点H3とし、6インチの箇所を測定点H4とすることができる。そして、これらの4つの測定点H1〜H4のそれぞれにおける曲げ剛性の値(以下、EI値)J
1〜J
4が計測される。
【0073】
シャフト40の各測定点H(H1〜H4)におけるEI値(N・m
2)は、様々な方法で測定することができ、例えば、インテスコ社製の2020型計測機(最大荷重500kgf)を用いて
図16に示すようにして測定することができる。この測定方法では、2つの支持点111,112でシャフト40を下方から支持しつつ、測定点Hに上方から荷重Fを加えたときのたわみ量を測定する。支持点111と支持点112との間の距離(スパン)は、例えば、200mmとすることができ、測定点Hは、支持点111と支持点112の中間点とすることができる。より具体的には、支持点111,112を支える支持体114,115を固定した状態で、測定点Hにおいて圧子113を一定速度(例えば、5mm/分)で下方へ移動させる。そして、荷重Fが20kgfに達した時点で圧子113の移動を終了させ、この瞬間のシャフト40のたわみ量(mm)を測定し、このたわみ量をEI値(N・m
2)に換算する。
【0074】
次に、以上の4つの測定点H1〜H4におけるEI値J
1〜J
4を、それぞれ10段階のランク値K
1〜K
4に変換する。具体的には、ランク値K
1〜K
4は、それぞれ測定点H1〜H4用の以下の変換表(表1〜表4)に従って、EI値J
1〜J
4から算出することができる(表1〜4中、変換後のランク値をIFCの欄に示している)。そして、このようにして測定点H1〜H4にそれぞれ付与された4つのランク値K
1〜K
4を、よりバット側に対応する値がより左に、よりチップ側に対応する値がより右にくるように配列する。こうして得られた4桁のコードが、IFCである。IFCでは、各桁の数値が大きい程、対応する位置での剛性が高いことを意味する。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0075】
第2指標算出工程では、算出部24Dにより、第1〜第4特徴量F
1〜F
4が算出される。本実施形態では、第1〜第4特徴量F
1〜F
4は、それぞれゴルファー7に適したEI値J
1〜J
4である最適EI値J
S1〜J
S4、ひいてはゴルファー7に適したランク値K
1〜K
4である最適ランク値K
S1〜K
S4を決定するための指標である。そのため、本実施形態では、第1〜第4特徴量F
1〜F
4としては、それぞれ最適EI値J
S1〜J
S4と相関を有する特徴量が選択される。また、本実施形態では、第1〜第4特徴量F
1〜F
4として以下の指標が用いられるが、第2スイング指標としては、最適剛性指標との相関が認められる限り、その他の任意の特徴量を用いることができる。
【0076】
第1特徴量F
1は、トップ付近のコック方向の角速度ω
yの傾きであり、例えばトップから50ms前の角速度ω
yの絶対値と、トップから50ms後の角速度ω
yの絶対値との和で表すことができる。
【0077】
第2特徴量F
2は、トップから、角速度ω
yが最大となる時点までの当該角速度ω
yの平均値である。第2特徴量F
2は、まず、トップからインパクトまでの間で角速度ω
yが最大となる時点を求め、トップからこの時点までの角速度ω
yの累積値を、トップからこの時点までの時間で除することにより算出される。
【0078】
第3特徴量F
3は、角速度ω
yが最大となる時点からインパクトまでの当該角速度ω
yの平均値である。第3特徴量F
3は、角速度ω
yが最大となる時点からインパクトまでの角速度ω
yの累積値を、角速度ω
yが最大となる時点からインパクトまでの時間で除することにより算出される。
【0079】
第4特徴量F
4は、トップからインパクトまでの角速度ω
yの平均値であり、トップからインパクトまでの角速度ω
yの累積値を、トップからインパクトまでの時間で除することにより算出される。
【0080】
ところで、スイング動作中、ゴルフクラブ4のシャフト40は、当該ゴルフクラブの先端に比較的重量が大きいヘッド41が存在するため、その慣性により曲げが生じる。この曲げは、スイングの全過程において、シャフト40の同一箇所に生じるのではなく、
図17に示されるように、トップからインパクトに向けてシャフト40の手元側から先端側に伝わる。換言すれば、トップからインパクトに向けてスイングが進行するにしたがい、シャフト40における曲げの位置が当該シャフト40の手元側から先端側に移動する。
【0081】
より具体的には、アドレスからテイクバックを行い、トップに至った時点(
図17において(1)で示される時点)では、シャフト40の手元付近に曲げが生じる。ついで、切り返しを行い、ダウンスイング初期(
図17において(2)で示される時点)に至ると、曲げはシャフト40の先端側にやや移動する。さらに、ゴルファー7の腕が水平になる時点(
図17において(3)で示される時点)では、曲げはシャフト40中央よりも先端側に移動する。そして、インパクト直前(
図17において(4)で示される時点)では、曲げはシャフト40の先端付近まで移動する。
【0082】
従って、第1〜第4特徴量F
1〜F
4は、それぞれスイング動作中のトップ付近からインパクト付近までの間の第1〜第4区間において算出することができる。また、ここでの第1〜第3区間は、この順に時間経過に沿った区間であり、互いに一部重複する又は重複することのない区間となっている。
【0083】
<2−8.最適剛性決定工程>
次に、最適剛性決定工程(S8)の流れについて説明する。本工程では、決定部24Eが、第2スイング指標(第1〜第4特徴量F
1〜F
4)と最適剛性指標(最適EI値J
S1〜J
S4)との相関関係を表す予め定められた近似式に従って、最適剛性指標(最適EI値J
S1〜J
S4)を決定する。本実施形態に係る近似式は、線形近似式であり、以下のように表される。
J
S1=a
1・F
1+b
1
J
S2=a
2・F
2+b
2
J
S3=a
3・F
3+b
3
J
S4=a
4・F
4+b
4
【0084】
決定部24Eは、第2指標算出工程で算出された第1〜第4特徴量F
1〜F
4をかかる近似式に代入することにより、最適EI値J
S1〜J
S4を算出する。また、決定部24Eは、上述の表1〜表4の換算表に従って、最適EI値J
S1〜J
S4をそれぞれ最適ランク値K
S1〜K
S4に変換する。
【0085】
なお、上式中、a1〜a4及びb1〜b4は、予め行われた多数の実験結果から回帰分析により得られた定数であり、記憶部23内に予め保持されている値である。ここでいう実験とは、例えば、特許文献1と同様に、以下のように行うことができる。すなわち、まず、多数のゴルファーの各々に複数のゴルフクラブを振ってもらい、そのときの飛距離、打球の方向性(左右ずれ)及び官能試験による振り易さを数値化する。そして、その数値から各ゴルファーに適しているゴルフクラブを決定し、当該ゴルフクラブのEI値を当該ゴルファーの最適EI値とする。また、上記と同様の方法で、各ゴルファーの第1〜第4特徴量F
1〜F
4を算出する。そして、かかる実験の後、多数のゴルファー分の第1〜第4特徴量F
1〜F
4及び最適EI値のデータを回帰分析することで、a1〜a4及びb1〜b4が算出される。
【0086】
また、より信頼性の高い近似式とするために、a1〜a4及びb1〜b4の値を条件に応じて変更することができる。例えば、ヘッド速度V
hに応じて、近似式を用意することができる。一例としては、上記実験データを、ヘッド速度帯に応じて分類し(例えば、45m/s以上、41〜45m/s、41m/s以下)、同じ分類に属するデータのみを対象に上記近似式を作成し、a1〜a4及びb1〜b4を決定しておくことができる。そして、最適剛性決定工程では、ゴルファー7のヘッド速度V
hがどのヘッド速度帯に属するかを判断し、当該ヘッド速度帯に対応する近似式を用いて、最適剛性指標である最適ランク値K
S1〜K
S4を算出する。
【0087】
また、本実施形態では、最適剛性指標として、最適ランク値K
S1〜K
S4だけでなく、最適フレックスも決定される。具体的には、決定部24Eは、最適ランク値K
S1〜K
S4に基づいて、最適フレックスを決定する。フレックスとは、シャフト40全体での硬さ(曲げ剛性)を評価する指標である。従って、シャフト40の複数の位置におけるゴルファー7に適した曲げ剛性を表す最適ランク値K
S1〜K
S4が分かれば、これらの値に基づいて最適フレックスを算出することができる。例えば、特定の位置での最適ランク値を最適フレックスとすることもできるし、複数の位置での最適ランク値の平均値を最適フレックスをとすることもできる。フレックスには、例えば、「SR」「S」「X」などの様々な種類が存在するが、最適フレックスは、このうちの1つに特定される必要はなく、「SR」か「S」や、「S」か「X」等、幅を持つように設定することができる。
【0088】
なお、他の実施形態では、最適フレックスを最適ランク値K
S1〜K
S4ではなく、最適EI値J
S1〜J
S4から直接算出することもできるし、これらの値J
S1〜J
S4,K
S1〜K
S4に基づかずに算出することもきる。後者の場合、最適フレックスを特定可能な適切な特徴量を第2スイング指標決定工程で算出しておけばよい。
【0089】
<2−9.推奨シャフト選択工程>
以上の工程S1〜S8により、最適シャフト重量帯及び最適剛性指標(最適EI値J
S1〜J
S4、最適ランク値K
S1〜K
S4及び最適フレックス)が決定されると、選択部24Fは、推奨シャフト選択工程(S9)を実行する。本工程では、シャフトDB29内に登録されている多数のシャフトの中から、ゴルファー7に適したシャフト40(以下、推奨シャフト)が特定される。また、本実施形態では、推奨シャフトとして、最適シャフト重量帯を基準としたシャフトである第1推奨シャフトと、ゴルファー7の普段使用しているゴルフクラブの重量(以下、マイクラブ重量)を基準とした推奨シャフトである第2推奨シャフトとが決定される。
【0090】
第1推奨シャフトの決定方法について説明する。まず、選択部24Fは、シャフトDB29内に登録されている全てのシャフト40のスペックを示す情報を読み出す。シャフトDB29内に登録されているシャフト40のスペックを示す情報には、製造メーカー、型番、4つの位置H1〜H4におけるEI値J
1〜J
4及びランク値K
1〜K
4(IFC)、シャフト40の重量、フレックス、トルク、調子等が含まれる。そして、選択部24Fは、これらの情報を参照して、シャフトDB29内に登録されている全てのシャフト40の中から、第1絞り込みシャフトを特定する。第1絞り込みシャフトとは、シャフト40の重量が最適シャフト重量帯に属し、かつ、フレックスが最適フレックスに一致するシャフト40である。なお、第1絞り込みシャフトは、通常多数本存在する。
【0091】
続いて、選択部24Fは、各第1絞り込みシャフトについて、当該シャフトのランク値K
1〜K
4と、最適剛性決定工程で決定された最適ランク値K
S1〜K
S4との一致度を算出し、第1推奨シャフトとして、一致度の高いシャフトを特定する。一致度は、例えば、以下の数25の式に従って算出することができ、値が小さいほど一致度が高い。
【数13】
【0092】
次に、第2推奨シャフトの決定方法について説明する。まず、選択部24Fは、推奨ゴルフクラブに用いられるべきヘッド41(以下、推奨ヘッド)の種類を決定する。推奨ヘッドの種類の決定は、本明細書では説明されないフィッティング処理により行うこともできるし、表示部21及び入力部22を介してユーザに質問する等してお好みのヘッド41を選択させることにより行うこともできる。また、選択部24Fは、表示部21及び入力部22を介してユーザに質問する等して、マイクラブ重量を特定する。
【0093】
続いて、選択部24Fは、推奨ヘッドのスペックを示す情報をヘッドDB27内から読み出すととともに、シャフトDB29内に登録されている全てのシャフト40のスペックを示す情報を読み出す。ヘッドDB27内に登録されているヘッド41のスペックを示す情報には、製造メーカー、型番及び重量等が含まれる。そして、選択部24Fは、これらの情報を参照して、シャフトDB29内に登録されている全てのシャフト40の中から、第2絞り込みシャフトを特定する。第2絞り込みシャフトとは、最適フレックスに一致するフレックスを有し、推奨ヘッドと組み合わせたときの重量がマイクラブ重量±所定値(グリップの重量及びフェラルの重量等に誤差範囲を加えた値)の範囲内となる重量を有するシャフト40である。なお、第2絞り込みシャフトは、通常多数本存在する。
【0094】
続いて、選択部24Fは、各第2絞り込みシャフトについて、当該シャフトのランク値K
1〜K
4と、最適剛性決定工程で決定された最適ランク値K
S1〜K
S4との一致度を算出し、第2推奨シャフトとして、一致度の高いシャフトを特定する。一致度は、数13の式に従って算出することができる。なお、第1推奨シャフトとしては、1本のみ特定されてもよいし、複数本が特定されてもよい。第2推奨シャフトについても、同様である。
【0095】
<2−10.ヘッド挙動決定工程>
続いて、決定部24Eは、計測工程で得られた画像データに基づいて、ヘッド41の挙動を決定するヘッド挙動決定工程(S10)を実行する。本実施形態では、ヘッド41の挙動として、インパクト直前のヘッド速度V
hi、インパクト時のフェース角、ヘッド軌道の角度、打点を算出する。なお、ここでいうヘッド軌道とは、アウトサイドイン、インサイドアウト、インサイドイン等の軌道の種類を意味し、ヘッド軌道の角度として、定量的な角度が算出される。打点は、ヘッド41のフェース面41a上におけるボールの打点である。
【0096】
インパクト直前のヘッド速度V
hiは、以下のように算出される。すなわち、投光器55A,55Bと受光器56A,56Bとの間隔は既知である。従って、タイミングt1,t2が分かれば、インパクト直前のヘッド速度V
hiを算出することができるため、決定部24Eは、タイミングt1,t2の情報に基づいて、ヘッド速度V
hiを算出する。
【0097】
また、インパクト時のフェース角及びヘッド軌道は、画像データを画像処理することにより決定される。
図18は、ヘッド41をフェース面41a側から視た図である。同図に示すように、本実施形態に係るヘッド41のクラウン部41bには、フェース面41aに沿うように帯状のマーカーM1が貼付されている。マーカーM1は、ストロボ53,54からの光を効率的に反射する素材で形成されている。従って、カメラ51により撮影された画像上においては、マーカーM1の領域、言い換えると、ヘッド41の平面視においてフェース面41aに沿った帯状の領域が鮮明に写り込むことになる。決定部24Eは、記憶部25内に記憶されているインパクト直前の2つのタイミングにおける画像(ストロボ53,54の発光のタイミングでの2枚の画像)から、マーカーM1の像を抽出する。そして、これらのマーカーM1の像に基づいて、インパクト時のフェース角を推定する。また、これらのマーカーM1の像の重心を結ぶベクトルと、飛球線方向のベクトルとの為す角度を算出し、この角度からアウトサイドイン等の軌道の種類を特定するとともに、この角度をヘッド軌道の角度として決定する。
【0098】
また、決定部24Eは、画像データを画像処理にすることにより、打点を決定する。より具体的には、インパクト時又はその付近の画像において、ボール及びフェース面41aの画像を抽出し、これらの位置関係から打点を算出する。本実施形態では、フェース面41aの幾何学中心であるフェースセンターから、打点がトゥ−ヒール方向にどれ位ずれているかが定量的に算出される。
【0099】
<2−11.結果表示工程>
次に、以上の解析の結果を示すGUI画面を作成し、これを表示する結果表示工程(S11)について説明する。本実施形態では、GUI画面として、
図19〜
図24に示すような画面W1〜W5が表示部21上に表示される。
【0100】
表示制御部24Gは、入力部22を介したユーザの操作を受けて、画面W1〜W5を適宜切り替えながら、表示部21上に表示させる。本実施形態では、画面W1〜W4は、
図19、
図20、
図22及び
図24に示すようにタブ形式で表示され、現在選択されているタブに対応する画面が表示部21上に表示される。
【0101】
図19に示す画面W1は、「スイングの傾向」というタブに対応する画面であり、文字どおり、主としてゴルファー7のスイングの傾向を表示する。まず、画面W1上の左半分の領域C1内では、「コックの動きの速さ度合い」、「手の甲の動き」、「手のローテーション」及び「コックの使い方」が、スライダー形式で定量的に表示される。従って、画面W1を見たユーザは、スライダーの位置といった図形的な観点から直感的に、各種指標の大小を正しく評価することができる。
【0102】
「コックの動きの速さ度合い」としては、トップ付近、ダウンスイング前半、ダウンスイング後半及びダウンスイング全体の4つの期間における値が表示され、スライダーが左に配置されるほどこの度合いが小さく、右に配置されるほど大きいことを意味している。「コックの動きの速さ度合い」は、対応する期間の角速度ω
yに基づいて決定部24Eにより決定される。「手の甲の動き」としては、トップ付近の値が表示され、スライダーが左に配置されるほど手の甲が開いており、右に配置されるほど閉じていることを意味している。「手の甲の動き」は、トップ付近の角速度ω
xに基づいて決定部24Eにより決定される。「手のローテーション」としては、ダウンスイング全体及びインパクト直前の2つの期間における値が表示され、スライダーが左に配置されるほど手のローテーションが少なく、右に配置されるほど多いことを意味している。「手のローテーション」は、対応する期間における角速度ω
zに基づいて決定部24Eにより決定される。
【0103】
「コックの使い方」としては、「コックを溜める強さ」及び「コックを解放する強さ」が表示され、スライダーが左に配置されるほどコックの使い方が弱く、右に配置されるほど強いことを意味している。「コックを溜める強さ」は、上述したゴルファー7の腕出力パワーP
1_
AVEに応じて決定部24Eにより決定される。「コックを解放する強さ」は、上述したゴルファー7のクラブ入力パワーP
2_
AVEに応じて決定部24Eにより決定される。
【0104】
画面W1上の右上には、ゴルファー7のスイングタイプが表示される。ゴルファー7のスイングタイプとは、最適EI値J
S1〜J
S4(又は、最適ランク値K
S1〜K
S4)、すなわち、ゴルファー7に適したシャフト40のIFC(以下、理想IFCという)に基づいて、決定部24Eにより決定される。より具体的には、スイングタイプは、理想IFCの4つのコードが、シャフト40の手元から手先にかけて右上がりであるか、右下がりであるか、中央が突出しているか、一定であるか等を表す。ここでは、横軸をシャフト40の長さ方向の位置とし、縦軸をシャフト40の硬さをとしたグラフ領域内において、理想IFCをグラフ状に表す画像C2が表示される。ただし、スイングタイプは、ゴルファー7のタイプを知るための指標であるため、シャフトの位置とIFCのコードとが厳密に描画されるのではなく、模式化されたグラフが表示される。
【0105】
また、画面W1には、「平均ヘッドスピード」として、上述したヘッドスピードV
h(平均値)が表示され、「推奨シャフト硬度」として、最適フレックスが表示され、「推奨重量帯」として、最適シャフト重量帯が表示される。ヘッドスピードV
h(平均値)は、数値で表示される。一方、「推奨シャフト硬度」及び「推奨重量帯」の欄には、それぞれ、シャフトDB29内に登録されているシャフト40のフレックス及びシャフト重量の範囲がスケールの形態で表示されており、当該スケールにおいてゴルファー7に対応する部分が強調表示される。これにより、ユーザは、スケールを参照して、ゴルファーに対応する最適フレックス及び最適シャフト重量帯を直感的に理解することができる。
【0106】
図20に示す画面W2は、「理想のIFC」というタブに対応する画面であり、主として理想IFC及び推奨シャフトを表示する。画面W2には、理想IFCのコードが数値で表示され、「推奨シャフトタイプ」として、上述したスイングタイプが文字で表示される。また、画面W2には、「推奨シャフト1」及び「推奨シャフト2」として、上述した上位2本の第2推奨シャフトを特定する情報を表示する欄C3,C3が表示される。また、「推奨シャフトW」として、上述した1本の第1推奨シャフトを特定する情報を表示する欄C4が表示される。より具体的には、欄C3,C3,C4内には、製造メーカー、型番、質量、フレックス等が表示される。なお、これらの情報は、シャフトDB29内を参照して特定される。
【0107】
また、画面W2には、以上の理想IFCに加え、上述した1本の第1推奨シャフト及び2本の第2推奨シャフトのIFCをグラフ状に表示するためのグラフ領域C5が表示される。これらのグラフは、IFCのコードに対応する位置に配置され、当該コードが数値で記述されたプロット点と、これらのプロット点を連結する直線部分とから構成される。グラフ領域C5内では、理想IFCのグラフは、3本の推奨シャフトに対応するIFCのグラフとは異なる態様で、好ましくは、ユーザの注意をより引きつけるような態様(
図20では、グラフの線が太く、プロット点が大きい)で表示される。また、どのグラフがどの欄C3,C3,C4により特定されるシャフトに対応するかが一目で分かるように、欄C3,C3,C4の装飾と、これらに対応するグラフの装飾とに統一感を持たせることが好ましい。例えば、欄C3,C3,C4内の文字の色と、グラフの色とを一致させることができる。
【0108】
欄C3,C3,C4は、排他的に選択可能に構成されている。そして、領域C6には、現在選択されている欄に対応する推奨シャフトのデザイン画像が表示される。これにより、現在選択されている推奨シャフトが、どのシャフトであるのかを直感的に理解することができる。また、グラフ領域C5内では、現在選択されている推奨シャフトのIFCのグラフは、その他の推奨シャフトのIFCのグラフと異なる態様で、好ましくは、ユーザの注意をより引きつけるような態様(例えば、前者の方が色が濃く、後者の方が色が薄い)で表示される。
【0109】
ところで、
図20の例では、画面W2の左側に、「コックの動きの速さ度合い」、「手の甲の動き」及び「手のローテーション」が、
図19と同じ形式で表示されている。そして、画面W1,W2上の「コックの動きの速さ度合い」を示す欄には、アイコンC7が表示されており、これが選択されると、
図21に示す画面W5がポップアップにより表示される。この画面W5上には、コックの動きの速さ度合いの意味するところを説明する画像が表示される。より具体的には、この画面W5上では、コックの動きとは手のどのような方向の動きであるのかが、手の絵、シャフトの絵、及び動きの方向を表す矢印等を用いて図形的に説明される。
【0110】
次に、
図22に示す画面W3は、は、「推奨シャフト重量」というタブに対応する画面であり、文字どおり、主としてゴルファー7に推奨されるべきシャフト40の重量帯を表示する。より具体的には、画面W3には、画面W1と同様に、ゴルファー7の最適シャフト重量帯を表示する「推奨重量帯」の欄C8が表示される。表示形態も画面W1と同様であり、欄C8には、シャフトDB29内に登録されているシャフト重量の範囲がスケールの形態で表示されており、当該スケールにおいて最適シャフト重量帯の部分が強調表示されている。これにより、ユーザは、スケールを参照して、最適シャフト重量帯を直感的に理解することができる。
【0111】
また、画面W3には、最適シャフト重量帯についてのユーザの納得性を高めるべく、その算出の根拠を説明するための様々な欄C9〜C10が表示される。欄C10には、最適シャフト重量帯を決定するための指標であるゴルファー7の腕出力パワーP
1_
AVE及びクラブ入力パワーP
2_
AVEが表示される。より具体的には、これらの指標P
1_
AVE,P
2_
AVEが、それぞれ「コックを溜める強さ」及び「コックを解放する強さ」として、画面W1と同様にスライダー形式で表示される。これにより、ユーザは、最適シャフト重量帯を決定する根拠となる、ゴルファー7固有のコックを溜める強さ及びコックを解放する強さの大小を、直感的に正しく理解することができる。
【0112】
欄C9には、
図14に示したような、腕出力パワーP
1_
AVEを横軸とし、クラブ入力パワーP
2_
AVEを縦軸とするP
1_
AVE−P
2_
AVE平面であるプロット領域が表示され、このプロット領域内には、ゴルファー7の腕出力パワーP
1_
AVE及びクラブ入力パワーP
2_
AVEに対応する点がプロットされ、表示される。欄C9では、プロット領域の横軸及び縦軸が、それぞれ「コックを溜める強さ」「コックを解放する強さ」を表すことをが、軸に添えられた文字により明確に示されている。また、このプロット領域は、ゴルファー7に推奨すべきシャフト重量帯にそれぞれ対応する、上述した領域A1〜A5に分割されている。これらの領域は、プロット領域内において、互いに異なるシャフト重量帯に対応する領域であることが分かるように異なる態様で表示される。例えば、領域間に境界線が引かれたり、異なる領域に異なる色や模様が付される。また、各領域には、対応するシャフト重量帯に属するシャフト40の仕様を表す記号が表示される。
図22の例では、「8X・S」「7X・S」等の記号が表示されているが、これらの8や7等の数値は、シャフト重量帯を意味しており、X、S等のアルファベットは、フレックスを示している。
【0113】
ところで、コックを溜める強さ及びコックを解放する強さという概念は、全てのユーザが知っているものではない。そのため、欄C11には、「スイング中に発生する力、腕とクラブの関係」を示す画像が表示される。本実施形態では、コックを溜める強さ及びコックを解放する強さを説明するための動画が表示される。この動画は、ゴルファー7の腕を模式的に示す図形(以下、腕図形)と、ゴルファー7により把持されたゴルフクラブ4を模式的に示す図形(以下、クラブ図形)とが、スイング動作に伴って二重振り子のように移動する様子を示す動画である。
【0114】
今、スイング動作中のタイミングを、時系列に沿って序数詞i=1,2,・・・,N(Nは、2以上の整数)で表すこととする。このとき、欄C11内で表示される動画は、時系列に沿ってコマ送りの形式で再生されるN枚の画像I(i)を含む。画像I(i)上には、第i番目のタイミングにおいて腕が存在する位置に腕図形G
3(i)が表示され、第i番目のタイミングにおいてゴルフクラブ4が存在する位置にクラブ図形G
4(i)が表示される。
図23A〜
図23Fは、画像I(i)の例を示しており、
図23A〜
図23Fの画像は、この順に時系列に沿っている。
【0115】
また、画像I(i)上には、腕図形G
3(i)及びクラブ図形G
4(i)に加えて、第i番目のタイミングにおけるコックを溜める強さを表す第1図形G
1(i)と、同じく第i番目のタイミングにおけるコックを解放する強さを表す第2図形G
2(i)とが表示される。同じタイミングに対応するこれらの図形G
1(i)〜G
4(i)は、1枚の画像I(i)上において同時に表示される。第i番目のタイミングにおけるコックを溜める強さとは、第i番目のタイミングでの腕出力パワーP
1であり、第i番目のタイミングにおけるコックを解放する強さとは、第i番目のタイミングでのクラブ入力パワーP
2である。画像I(i)上の第1図形G
1(i)は、第i番目のタイミングでの腕出力パワーP
1の大きさに応じた形態をとり、第2図形G
2(i)は、第i番目のタイミングでのクラブ入力パワーP
2の大きさに応じた形態をとる。より具体的には、本実施形態では、腕出力パワーP
1が大きいタイミングである程、第1図形G
1(i)が大きく表示され、クラブ入力パワーP
2が大きいタイミングである程、第2図形G
2(i)が大きく表示される。なお、腕出力パワーP
1及びクラブ入力パワーP
2の大きさは、第1図形G
1(i)及び第2図形G
2(i)の色等を変化させることにより表現されてもよい。また、第1図形G
1(i)及び第2図形G
2(i)の形態を決定する腕出力パワーP
1及びクラブ入力パワーP
2は、計測データに基づくゴルファー7固有の値である必要はなく、一般的なスイング動作時の腕出力パワーP
1及びクラブ入力パワーP
2とすることができる。この場合、欄C11内では、ゴルファー7に関わらず同じ動画が再生される。
【0116】
ところで、観念上、コックを溜める力は、腕に関連付けられ、コックを解放する力は、ゴルフクラブ4に関連付けられる。従って、本実施形態では、第1図形G
1(i)は、腕図形G
3(i)に重ねて配置され、第2図形G
2(i)は、クラブ図形G
4(i)に重ねて配置される。ただし、第1図形G
1(i)及び第2図形G
2(i)の配置はこれに限られず、別の好ましい例としては、第1図形G
1(i)を腕図形G
3(i)の近傍に配置し、第2図形G
2(i)をクラブ図形G
4(i)の近傍に配置することもできる。また、第1図形G
1(i)と腕図形G
3(i)とを概ね一体の図形として表現することもできる。この場合、例えば、腕を模した図形の形態を、腕出力パワーP
1の大きさに応じて変化させるように構成することができる。第2図形G
2(i)及びクラブ図形G
4(i)についても同様であり、この場合、例えば、ゴルフクラブ4を模した図形の形態を、クラブ入力パワーP
2の大きさに応じて変化させるように構成することができる。また、第1図形G
1(i)を腕図形の肩に対応する部分又はその近傍に配置し、かつ、第2図形G
2(i)を腕図形の手首に対応する部分又はその近傍に配置することもできる。以上のような動画を見たユーザは、ゴルフスイング中のコックを溜める動き及びコックを解放する動きの意味するところを直感的に理解することができる。
【0117】
図24に示す画面W4は、「ヘッド軌道」というタブに対応する画面であり、主としてヘッド41の挙動を表示する。画面W4には、ヘッド挙動決定工程で決定されたインパクト直前のヘッド速度V
hi、ヘッド軌道の角度、インパクト時のフェース角及び打点が定量的に数値で表示される。また、欄C12には、インパクト付近の2つのタイミングにおけるヘッドを表す図形であるヘッド図形G
5,G
6が並べて同時に表示される。ヘッド図形G
5は、インパクト時のヘッドを表しており、ヘッド図形G
6は、その直前のヘッドを表している。また、欄C12内のヘッド図形G
5は、上述したヘッド軌道の角度に応じて傾けて表示される。これにより、ユーザは、アウトサイドインかインサイドアウトかといったゴルファー7のヘッド軌道を直感的に正確に理解することができる。なお、ヘッド図形G
5の傾きは、インパクト時のフェース角度に応じて設定することもできる。
【0118】
<3.変形例>
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0119】
<3−1>
上記実施形態では、コックを溜める強さである腕出力パワーP
1,P
1_
AVE、及び、コックを解放する強さであるクラブ入力パワーP
2,P
2_
AVEが、慣性センサユニットによる計測データに基づいて計算されたが、これらの指標の少なくとも一方を、カメラユニットによる計測データに基づいて算出することもできる。
【0120】
<3−2>
上記実施形態では、シャフトの剛性として、曲げ剛性が評価されたが、これに代えて、ねじれ剛性を評価してもよい。ねじれ剛性の値(以下、GJ値)も、シャフト40の延びる方向に沿った複数の位置において測定又は算出することができる。すなわち、シャフト40の延びる方向に沿った複数の位置におけるねじれ剛性の分布を、シャフトの剛性としてもよい。この場合、最適剛性指標としては、ゴルファー7に適したGJ値(最適GJ値)が決定されることになるが、最適GJ値を決定するための第2スイング指標としては、最適GJ値との相関が認められる任意の指標を用いることができる。このような第2スイング指標としては、例えば、特開2014−212862号公報に記載されているような、以下の指標を用いることができる。
【0121】
(1)グリップ角速度ω
yが最大となるときからインパクトまでの単位時間あたりのグリップ角速度ω
xの変化量の大きさ
(2)トップ付近でのグリップ角速度ω
zの変化量
(3)トップからダウンスイング途中であってグリップ角速度ω
yが最大となるときまでのグリップ角速度ω
zの変化量の大きさ
【0122】
本変形例でも、第2スイング指標と最適GJ値との関係を表す近似式を予め実験により算出し、記憶部23内に格納しておくことで、計測工程で得られる計測データに基づく第2スイング指標から、最適GJ値を決定することができる。
【0123】
また、最適剛性指標として、ゴルファー7に適したIFCやフレックスに代えて又は加えて、ゴルファー7に適した調子やトルクを決定するようにしてもよい。なお、トルクは、シャフト40全体でのねじれ剛性を表す指標である。
【0124】
<3−3>
上記実施形態では、i=1,2,・・・,Nについての画像I(i)が、動画の形式で表示されたが、これらN枚の画像I(i)を静止画の態様で表示することもできる。すなわち、
図23A〜
図23Fのような画像を、同じ画面上に同時に表示することができる。このとき、時系列に沿って、画像I(i)を配列することが好ましい。また、
図22に示すような1枚の画像のみを表示することもできる。
図22に示す画像では、様々なタイミングでの図形G
1(i)〜G
4(i)がストロボ画像のように1枚の画像上に同時に表示されている。従って、このような1枚の画像のみであっても、スイング動作中のコックを溜める強さ及びコックを解放する強さを直感的に理解することができる。