【課題を解決するための手段】
【0023】
この度、本出願企業は、先行技術の方法の不利点を克服できる、使用済み触媒粒子を含む反応器を空にするための新規技術を発見した。
【0024】
本発明の1つの主題は、少なくとも1つの使用済み触媒粒子の層を含み、粒子層の底部又は下部において反応器内に開口する少なくとも1つの廃棄管を備えた反応器を空にする方法である。本発明による方法は、
− 廃棄管を介して反応器から触媒層の一定割合を流出させる第1のステップと、
− その後に連続して触媒の残存物を抽出する第2のステップと、
を含み、第2のステップは、廃棄管を介して反応器に挿入され且つ反応器の外側に存在する抽出システムに接続された柔軟な抽出スリーブを用いて、第1のステップの終了時に反応器内に残っている触媒粒子を吸い出すことによって行われ、スリーブは、外面に突起物を有するとともに、反応器内で廃棄管に対して並進運動及び回転運動することができる。
【0025】
本発明による方法は、反応器から使用済み触媒の装填物を特に完全に、効果的に、迅速に排出して空にすることができる。
【0026】
本発明による方法では、反応器内部におけるあらゆる人間の介入を回避することもでき、使用済み触媒の廃棄作業の安全性を大幅に改善することができる。
【0027】
最後に、本発明による方法は、使用済み触媒の特性を維持して、使用済み触媒が廃棄時に受けるダメージを制限することができ、このことは、その後の再利用のために触媒を再生しようとする時に不可欠となる。
【0028】
本発明による方法の第1のステップは、廃棄管を開くことにより、廃棄管を介して反応器から一定割合の触媒層を流出させることである。
【0029】
この第1のステップは、重力下で、すなわち前記廃棄管を介して反応器から一定割合の触媒層を重力下で流出させることによって行われることが好ましい。
【0030】
「重力下で流出させる」とは、第1のステップ中に使用済み触媒がそれ自体の重量の作用によって反応器から流出することを意味し、反応器内の機械的押し出し手段によって(例えば作業者によって)押し出されることも、粒子抽出手段によって反応器から吸い出されることもないことを意味する。
【0031】
通常、この流れは、先行技術によって知られているような従来の重力流である。
【0032】
この流れを補助することもでき、すなわち第1のステップ中に、例えば反応器に加圧ガスを注入することによって、反応器からの使用済み触媒の流出を促す手段を使用することもできる。
【0033】
さらに、特に廃棄管を開いた時に触媒の流れが自発的に生じない場合には、第1のステップの直前に、触媒層を脱凝集させる手段を用いることもできる。このような手段は、先行技術によって知られている。具体的には、このような手段は、加圧ガス(典型的には加圧CO
2)を注入するものである。これらの手段は、触媒粒子が流れ始めるのを可能にし、その後、重力流の場合には使用済み触媒をそれ自体の重量の作用のみによって流れたままにする。
【0034】
従って、本発明の1つの実施形態によれば、前記第1のステップよりも前に使用済み触媒を脱凝集させる予備ステップが行われ、この予備ステップは、触媒層に二酸化炭素又は窒素などの加圧不活性ガスを注入することによって行われることが好ましい。
【0035】
本発明は、粒子層の底部又は下部において反応器内に開口する少なくとも1つの廃棄管を備えた反応器に当てはまる。
【0036】
廃棄管は、水平とすることも、又は下向きに傾斜することもできる。廃棄管は、下向きに傾斜することが好ましい。この場合、廃棄管は、垂直方向に対して0〜75度の傾斜角を有することが好ましく、この角度は10〜60度であることがさらに優先される。
【0037】
本発明による方法の第1のステップ中、一般に反応器からは、典型的には初期層の50重量%を上回る、一般的には初期触媒層の60〜95重量%、より具体的には初期触媒層の70〜90重量%である、かなりの割合の使用済み触媒層が抽出される。
【0038】
その後、本発明の方法の第2のステップを用いて、触媒の残存物(又は「ディグアウト」)を反応器から完全に除去する。
【0039】
この第2のステップでは、柔軟な抽出スリーブを使用し、第1のステップが完了すると、廃棄管を介してその長さの一部を反応器に挿入する。
【0040】
反応器の外部に位置するスリーブの端部は、触媒の残存物の吸い出しを可能にする抽出装置に接続され、これらの残存物は、反応器に挿入されたスリーブ端部を介してスリーブに入り込む。
【0041】
従って、この第2のステップ中には、本発明による抽出スリーブを用いて使用済み触媒の残存物を触媒層の底部から完全に吸い出す。
【0042】
本発明によれば、スリーブは、反応器内で廃棄管に対して並進運動及び回転運動することができる。このことは、スリーブ押し込み手段を用いて反応器内へスリーブをより浅くまたはより俯角押し込むことができ、スリーブ回転手段によってスリーブがそれ自体を中心に回転できることを意味する。
【0043】
この目的で、反応器の外部には、前記スリーブの移動を可能にするスリーブ誘導手段が存在することが有利である。好適な誘導手段は、例えば一方が廃棄管に対するスリーブの並進運動を可能にし、他方が回転運動を可能にする少なくとも2つのモータを備える。
【0044】
スリーブ誘導手段は、廃棄管にねじ留めされた取り付けシステムを用いてスリーブに、及び/又は反応器に固定することができる。
【0045】
これらの誘導手段は、手動、自動又は半自動で制御することができる。
【0046】
スリーブ誘導手段の制御が手動である場合、反応器外部の作業者がこれらの誘導手段を操作することによって反応器内部のスリーブの動きを制御する。
【0047】
スリーブ誘導手段の制御が自動である場合、誘導手段は、反応器内部でスリーブをあちこちに動かすプログラムを実行するコンピュータによって制御される。この移動プログラムは予め定義することができ、すなわち第2のステップ中のスリーブの動きは、「ディグアウト」の抽出を最適化するように事前に計算される。この移動プログラムは、反応器内におけるスリーブのランダムな動きを構築するように設計することもできる。
【0048】
スリーブ誘導手段の制御は半自動的とすることもでき、すなわち一部をコンピュータプログラムによって制御し、一部を作業者によって制御することもできる。
【0049】
さらに、本発明の1つの特に有利な実施形態によれば、反応器内にスリーブ位置検出手段が存在する。このような手段により、常に反応器内のスリーブの正確な位置を知ることができ、適切な場合にはその動きを最適化することもできる。
【0050】
これらの検出手段は、行われた動きを考慮して反応器内のスリーブの位置を次第に特定する(前記スリーブの位置を推定するために制御データを編集するソフトウェアを用いて装置の位置をシミュレートする)計算ソフトウェアを含むことができる。
【0051】
他の検出手段としては、例えばレーダー探知システム又は超音波探知システム、1又は2以上の加速度計を用いたシステム、1又は2以上のGPS、1又は2以上のカメラを用いた視覚システムが挙げられる。
【0052】
好ましい実施形態によれば、検出手段が、反応器内のスリーブの位置を可視化する1又は2以上のカメラを含む。このようなカメラは、例えば反応器の内壁及び/又はスリーブ自体に配置することができる。この目的では、特に暗視カメラ及び赤外線カメラを含む様々なタイプのカメラを使用することができる。
【0053】
このようなカメラは、必要な場合には触媒の残存物の位置を特定することもでき、これに応じて抽出スリーブの動きを制御することができる。
【0054】
本発明で使用する抽出スリーブは、その外面に突起物を含む。これらの突起物は、スリーブを触媒の残存物(ディグアウト、dig out)の表面上に引っ掛けることができ、従ってスリーブを単純に回転させ、すなわちスリーブ自体を中心にスリーブを回転させることによってこの触媒の表面におけるスリーブの横方向の動きを実現することができ、すなわちスリーブは、突起物によって触媒の残存物の表面に引っ掛かり、この触媒上を転がりながら移動する。この突起物は、スリーブで触媒の残存物の表面を掻き出すことにより、前記スリーブの端部を用いて触媒を容易に引き離して抽出できるようにもする。
【0055】
この突起物は、非常に様々な形状を有することができる。これらの形状は、例えば、限定ではないが、スプライン(spline)、様々な程度の丸み又は逆に鋭さを持った歯、ブラシ、或いはソーセージ、スタッド、ピン、スパイク又は釘の形の突起物を含むことができる。
【0056】
突起物は、抽出スリーブの外面にわたって均一又は不均一に配置することができる。突起物は、反応器に挿入された抽出スリーブの長さ全体にわたって存在することも、或いはこの長さの一部にわたって、例えばスリーブの吸い込みヘッドのみに存在することもできる。
【0057】
「スリーブ」は、本質的には中空管を意味する。本発明によるスリーブは可撓性を有し、すなわち変形可能であって、特に曲げた際に変形することができる。従って、この抽出スリーブは、例えば強化高分子などの高分子材料、又は柔軟な金属材料などの変形可能材料で作製される。
【0058】
1つの特に有利な実施形態によれば、反応器に挿入されたスリーブの端部(すなわち、スリーブの吸い込みヘッド)が、例えば「鉤鼻」の形に湾曲する。このような形状により、反応器内の雰囲気を犠牲にして触媒粒子を吸い出すことが容易になる。
【0059】
反応器が複数の触媒層を含む場合、本発明による方法を用いて各層を廃棄することができる。このため、反応器には、各触媒層の底部に少なくとも1つの廃棄管が存在する必要がある。
【0060】
反応器から除去すべき使用済み触媒が空気反応型である場合、例えば使用済み触媒が自然発熱性である場合、通常、本発明による方法は、反応器を不活性ガス下に置いた後に不活性ガス下に維持することによって実行され、すなわち本発明による2つのステップ中に反応器から除去される触媒は、例えば窒素などの不活性ガスに徐々に置き換えられる。反応器が徐々に空になるにつれて反応器内に導入されるこの不活性ガスは、例えば反応器の最上部から導入することも、或いは底部から導入することもできる。
【0061】
以下、添付図を用いて本発明をより詳細に非限定的に説明する。