(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フルオロビニルエーテルが、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルからなる群から選択される、請求項1に記載の配合物。
前記フルオロビニルエーテルが、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルからなる群から選択される、請求項2に記載の配合物。
前記充填剤が、高分子補強充填剤、高分子微細粉末、鉱物微細粉末、カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、加工助剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の配合物。
前記充填剤が、高分子補強充填剤、高分子微細粉末、鉱物微細粉末、カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、加工助剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の配合物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
略号
本明細書の説明および請求項は、以下に示す略号および定義によって解釈されるべきである。
「h」、「hrs」は、時間を表す。
「%」は、パーセントという用語を表す。
「モル%」は、モルパーセントを表す。
「重量%」は、重量パーセントを表す。
「部」は、重量部を表す。
「phr」は、フルオロエラストマー(ゴム)100部当たりの部数を表す。当業者は、この計量用語を理解し、使用している。例えば、フルオロエラストマー100部当たりの成分3部は、3phrと書く。本明細書に記載の配合物、方法、および物品では、phrは、100部のフルオロエラストマーAに対するものである。
「g」はグラムを表す。
「Ph」はフェニル環を表す。
【0008】
定義
本明細書で使用される冠詞の「1つの(a)」は、1つおよび複数を表し、必ずしも指示対象の名詞を単数の文法カテゴリーに限定するわけではない。
【0009】
本明細書で使用される「約」および「またはそのくらい」という用語は、量または値を修飾するために用いられている場合、請求項に挙げられているかまたは本明細書に記載されている正確な量または値よりも大きいかまたは小さい、量または値の近似を表す。近似の正確な値は、当業者が正確な値の適切な近似として認めるであろうものによって定められる。本明細書で使用されるこの用語は、類似値(請求項に正確に挙げられておらず、または本明細書に記載されてもいない)でも、請求項に挙げられているかまたは本明細書に記載されているものと同等の結果または効果をもたらすことができるということを伝えている。当業者は、その類似値によって、受け入れられる仕方で結果または効果がもたらされると認めるであろう。
【0010】
本明細書で使用される「物品」という用語は、完成していないかまたは完成した商品、物、物体、または要素、あるいは完成していないかまたは完成した商品、物、または物体の特徴を表す。本明細書で使用される「物品」という用語は、物品がまだ完成していない場合、完成した物品になるためにさらに処理されるであろう、形、形状、配置を有する任意の商品、物、物体、要素、デバイスなどを表しうる。物品が完成していない場合、「プリフォーム」という用語は、完成されるためにその一部がさらに処理されるであろう、その形、形状、配置を表しうる。本明細書で使用される「物品」という用語は、物品が完成されている場合、物質全体またはその一部をさらに処理しなくても、特定の用途/目的に適している、ある形、形状、配置の、商品、物、物体、要素、デバイスなどを表す。
【0011】
物品は、1種または複数種の要素またはサブアセンブリー(どちらも、部分的に完成され、さらに処理されることになるもの)またはアセンブリーを、他の要素/サブアセンブリーと一緒に含むことができ、それらは、完成した物品を一緒になって含むことになる。さらに、本明細書で使用される「物品」という用語は、物品の仕組みまたは配置を表しうる。
【0012】
本明細書で使用される「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、またはそれらの他のいずれの変化形も、非排他的な包含を表す。例えば、一式の要素を含む方法、手法、物品、または装置は、その一式の要素しか含まないわけではなく、明確に挙げられていない他の要素または固有の要素も含みうる。さらに、逆のことを特に述べていない限り、「または」は、包含的な「または」であり、排他的な「または」ではない。例えば、AまたはBという条件は、以下のいずれによって満たされる:Aが正しく(または存在し)かつBが誤りである(または存在しない)、Aが誤りであり(または存在せず)かつBが正しい(または存在する)、さらにAおよびBの両方が正しい(または存在する)。
【0013】
本明細書で使用される「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」またはそれらの他のいずれの変化形も、非排他的な包含または排他的な包含のいずれかを表しうる。
【0014】
これらの用語が、より排他的な包含(more exclusive inclusion)を表す場合、こうした用語により、請求項の範囲は、記載された発明の新規要素に実質的に影響を与える挙げられた材料またはステップに限定される。
【0015】
こうした用語が、完全排他的包含(wholly exclusive inclusion)を表す場合、こうした用語により、請求項に明確に挙げられていないどんな要素もステップも成分も排除される。
【0016】
本明細書で使用されている分子またはポリマーを記述する用語は、IUPAC Compendium of Chemical Terminology_version 2.15(International Union of Pure and Applied Chemistry)(2009年9月7日)の用語に従っている。
【0017】
本明細書で使用される「不飽和フッ素化オレフィン」という用語は、少なくとも1つの不飽和二重結合を含み、かつ少なくとも1個のフッ素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の炭化水素構造体を表す。
【0018】
本明細書で使用される、「アルキル」という用語は、直鎖、分枝、または環状の炭化水素構造体およびそれらの組合せを表す。アルキルは、芳香族の構造体を含まない。直鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルの各基が含まれる。分枝アルキル基としては、例えば、s−およびt−ブチル、およびイソプロピルの各基が含まれる。環状炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロブチル、およびシクロオクチルの各基が含まれる。
【0019】
本明細書で使用される「不飽和フッ素化オレフィン」という用語は、少なくとも1つの不飽和二重結合および少なくとも1個のフッ素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の炭素構造体を表す。
【0020】
本明細書で使用される「アルコキシ」または「アルコキシル」という用語は、単結合によって酸素原子に結合しているアルキル基を表す。酸素原子の他の結合は炭素原子につながっている。例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、およびシクロヘキシルオキシがある。
【0021】
本明細書で使用される「硬化剤Bとは異なる硬化剤C」という用語は、硬化剤Bと同じ化学構造を有していない硬化剤Cを表す。
【0022】
本明細書で使用される「配合物」という用語は、硬化可能な組成物(すなわち、硬化性組成物)、ならびに少なくともフルオロエラストマーと硬化剤とを含む化学物質(chemical entities)の混合物を表す。化学物質の混合物は、硬化されたものでも、また化学物質の混合物の硬化を引き起こして硬化させるような処理条件にさらされたものでもない。
【0023】
本明細書で使用される、「フルオロ」という接頭語は、化学物質名の前に接頭語として置かれる場合、少なくとも1個のフッ素原子を有する化学物質を表す。以下の名称で例示される通りである:フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、フルオロビニル、およびパーフルオロビニルエーテル。接頭語「フルオロ」は、化学物質名の前に接頭語として置かれる場合、特に「パーフルオロ」化学物質を含む。したがって、接頭語「フルオロ」は、化学物質名の前に来る場合、「フルオロ」の物質および「パーフルオロ」の物質の両方を指す。
【0024】
本明細書で使用される「芳香族」という用語は、環を形成する結合の相互作用によって安定化されている原子からなる少なくとも1つの不飽和環を含む、化学物質を表す。そのような化学物質として、ベンゼンおよびナフタレンが代表的なものである。
【0025】
本明細書で使用される「フェニル」という用語は、1個の水素原子を取り除くことによりベンゼンから得られる、式−C
6H
5を有する化学物質を表す。水素原子を失った炭素原子は、別の化学物質との結合を形成するのに用いられる。
【0026】
本明細書で使用される「硬化(cured)」という用語は、フルオロエラストマーを含むもので、フルオロエラストマー分子が十分に架橋されるようにする条件(すなわち、硬化条件)にさらされて得られた物質に関係した言葉である。結果として、得られた物質は、再加工、成形、または押出しを行って別のものにすることができない形態または形状または配置または構造を持つ。すなわち、フルオロエラストマーを含んでいた得られた物質が、硬化条件にさらされて硬化されたなら、その物質は、実質的に異なる形態または構造となるように再び硬化させることはできない。
【0027】
本明細書で使用される「硬化させる(curing)」という用語は、配合物(本明細書では硬化性組成物)のそうした処理を表し、それにより、再加工、成形、または押出しを行って別のものにすることができない形態または形状または配置または構造となる物質が得られる。そのような処理は、「硬化のプロセス/処理」を表し、硬化プロセスを開始させるために配合物をある特定の条件にさらすことが必要となる(そのような条件を硬化条件と呼ぶ)。
【0028】
硬化プロセスの結果得られた物質は、「硬化」物質、すなわち、上に定義した物品である。分かりやすく言うと、硬化により、配合物が、ある形態または形状または配置または構造の物品となる。本明細書に記載の配合物の硬化物品としては、Oリング、シール、およびガスケットがあるが、これらに限定されない。
【0029】
「硬化させる」、「硬化」という用語には、配合物の処理のいろいろ異なる度合いが明らかに含まれ、結果として、得られた物質は、再加工、成形、または押出しをして異なるものにすることができず、かつ硬化の結果として、ある特定の物理的性質を示しうる、形態または形状または配置または構造を持つ。
【0030】
この段階になるように、こうした配合物は、最初に硬化されて、再加工不能な形態、形状などを実現する(本明細書では、このことを「硬化」と呼んでいる)。硬化配合物は、更なる硬化条件に更にさらすことができ、それにより、更なる後続の硬化が行われる。そのような更なる硬化条件は、本明細書では、「硬化」または「後硬化」と呼ぶことがあり、呼び方はまちまちである。
【0031】
すなわち、「硬化させる」、「硬化」という用語は、初期硬化の生成物質をもたらす初期硬化プロセスを表すと共に、特に、初期硬化の生成物質とは異なる物質特性または物理的性質を有しうる(または有し得ない)後続硬化の生成物質をもたらす、後続硬化プロセスも表す。
【0032】
範囲および好ましい変形形態
本明細書に明示的に述べられているどんな範囲も、特に明確な断りがなければ、その端点を含む。量、濃度、あるいは他の値またはパラメータを範囲として述べている場合、それにより、可能な範囲の上限および可能な範囲の下限から作られる可能な全範囲が具体的に開示されていることになり、範囲のそのような上限および下限のペアが本明細書に明示的に開示されているかどうかとは無関係である。本明細書に記載の配合物、方法および物品は、説明の中で範囲を明示する際に開示されている特定の値に限定されない。
【0033】
本明細書に具体的に記載した方法、配合物および物品について、材料、化学物質、手法、ステップ、値、及び/または範囲などによって本明細書に開示した任意の変形形態は、(好ましいものとして示されているかどうかに関わりなく)、材料、手法、ステップ、値、範囲などの任意の可能な組合せを含むことを意図している。請求項の正確かつ十分な裏付けとなるようにするため、開示されている組合せはいずれも、本明細書に記載の方法、配合物、および物品の好ましい変形形態である。
【0034】
この説明において、本明細書に記載の任意の化学種(式(I)の硬化剤を含む)の化学名に関して、命名法の間違いまたは誤植があった場合、化学名よりも化学構造が優先される。また、もし本明細書に記載の任意の化学種の化学構造に誤りがあった場合、説明が意図していると当業者が見なす化学種の化学構造が優先される。
【0035】
概要
本明細書では、ある特定の硬化剤を含む配合物について記載する。さらに具体的には、本明細書の記載の配合物は、
A.フルオロエラストマーであって、
(1)1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンと、
(2)フルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、不飽和オレフィン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、(1)とは異なる1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンコモノマーと、
(3)ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される1種または複数種の硬化部位モノマーと
の共重合単位を含む、フルオロエラストマーと、
B.0.1〜10部の、式(I)、(II)、(III)、および(IV):
【0037】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
8、およびR
9のそれぞれは、H、ハロゲン原子、C
1〜C
4のアルキル基(ここで、アルキル基は、直鎖、分枝、または環状のものである)、OR’、および芳香族基からなる群から選択され、
R
5はHであり、かつ
R’は、C
1〜C
4のアルキル基(ここで、アルキル基は、直鎖、分枝、または環状のものである)およびフェニルからなる群から選択される]
からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤と
を含む。
【0038】
また本明細書では、硬化の前にこうした配合物を含んでいた硬化された物品、ならびに本明細書に記載の配合物を硬化させる方法についても記載する。
【0039】
具体的には、物品は、硬化の前に、
A.フルオロエラストマーであって、
(1)1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンと、
(2)フルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、不飽和オレフィン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、(1)とは異なる1種または
複数種の不飽和フッ素化オレフィンコモノマーと、
(3)ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される1種または複数種の硬化部位モノマーと
の共重合単位を含んでいる、フルオロエラストマーと、
B.0.1〜10部の、式(I)、(II)、(III)、および(IV):
【0041】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
8、およびR
9のそれぞれは、H、ハロゲン原子、C
1〜C
4のアルキル基(ここで、アルキル基は、直鎖、分枝、または環状のものである)、OR’、および芳香族基からなる群から選択され、
R
5はHであり、かつ
R’は、C
1〜C
4のアルキル基(ここで、アルキル基は、直鎖、分枝、または環状のものである)およびフェニルからなる群から選択される]
からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤と
を含有していた硬化配合物を含む。
【0042】
本発明に記載の方法は、
フルオロエラストマーAを含む配合物を、式(I)、(II)、(III)、および(IV):
【0044】
からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤Bによって硬化させるステップを含み、ここで、フルオロエラストマーAは、
(1)1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンと、
(2)フルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、不飽和オレフィン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、(1)とは異なる1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンコモノマーと、
(3)ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される1種または複数種の硬化部位モノマーと
の共重合単位を含み、
ならびに、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
6,R
7、R
8、およびR
9のそれぞれは、H、ハロゲン原子、C
1〜C
4のアルキル基(ここで、アルキル基は、直鎖、分枝、または環状のものである)、OR’、および芳香族基からなる群から選択され、
R
5はHであり、かつ
R’は、C
1〜C
4のアルキル基(ここで、アルキル基は、直鎖、分枝、または環状のものである)およびフェニルからなる群から選択される。
【0045】
本明細書に記載の配合物、物品、および配合物の硬化方法における変形形態では、以下の要素のいずれかまたは以下の要素の任意の組合せを、特に含めるかまたは除外することができる。すなわち、本明細書に記載され請求項に列挙されている配合物、物品および方法は、この段落にリストされている特定の要素またはこうした特定要素の任意の組合せを含むかまたは除外するよう変えることができることを特に意図している。
− 配合物は、硬化剤Bとは異なる硬化剤Cを含むことができ、かつ/または
− 硬化剤Cは、0.1〜5phrの範囲であってよく、かつ/または
− 硬化剤Cは、有機錫硬化剤、ビス(アミノフェノール)硬化剤、ビス(アミノチオフェノール)硬化剤、テトラアミン硬化剤、トリアミン硬化剤、ジアミン硬化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択され、かつ/または
− 不飽和フッ素化オレフィンA(1)は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、1,1−ジフルオロエチレン、1,1,2−トリフルオロエチレン、1−フルオロエチレン、およびこれらの組合せからなる群から選択され、かつ/または
− 不飽和フッ素化オレフィンコモノマーA(2)は、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル、およびこれらの組合せからなる群から選択され、かつ/または
− 硬化剤Bは、1,3−ジイミノイソインドリン、5,6−ジクロロ−1,3−ジイミノイソインドリン、およびこれらの組合せからなる群から選択され、かつ/または
− 配合物は、少なくとも1種の充填剤をさらに含んでもよく、かつ/または
− 少なくとも1種の充填剤は、高分子補強充填剤(polymeric reinforcing fillers)、高分子微細粉末(polymeric micropowders)、鉱物微細粉末(mineral micropowders)、カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、加工助剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0046】
本明細書に記載の配合物は、硬化された後、ASTM D395Bにしたがって200℃で70時間試験した場合に、圧縮永久ひずみが15パーセント未満である。
【0047】
本明細書に記載の硬化剤は、本明細書に記載の配合物を硬化させることができる。ある材料の硬化剤としての能力を測定する1つの方法は、そうした配合物のトルクの増大を、配合物を硬化条件にさらしているときに経時的に測定することである。特に、本明細書に記載のフルオロエラストマー配合物は、トルク値(MH)が、硬化条件にさらす前のそうした配合物の初期トルク値(ML)よりも、少なくとも0.5dNm、好ましくは1.0dNm、およびより好ましくは2dNm大きい。
【0048】
本明細書に記載の硬化剤は、硬化条件にさらされるフルオロエラストマー配合物のトルク値を、硬化条件にさらされない同一配合物の初期トルク値より、少なくとも50パーセント、好ましくは少なくとも100パーセント、より好ましくは少なくとも150パーセント増大させることができる。
【0049】
配合物
A)フルオロエラストマー
本明細書に記載のフルオロエラストマーAは、フッ素化または過フッ素化されていてよく、少なくとも以下の3種類の共重合モノマー単位を含むことができる:A(1)約25〜74.9モルパーセントの1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィン;A(2)不飽和フッ素化オレフィンA(1)とは異なり、かつフルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、不飽和オレフィン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、約25〜74.9モルパーセントの1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンコモノマー;およびA(3)ニトリル含有フッ素化オレフィン、ニトリル含有フッ素化ビニルエーテル、またはこれらの組合せからなる群から選択される、約0.1〜10モルパーセントの1種または複数種の硬化部位モノマー(ここで、A(1)、(2)、および(3)のそれぞれのモルパーセントは、フルオロエラストマーA中のA(1)、(2)、および(3)の全モルパーセントに対するものである)。
【0050】
本明細書に記載のフルオロエラストマーAは、重合の際に様々な開始剤または連鎖移動剤を使用した結果として生じるさまざまな末端基の任意のものを含みうる。末端基の非限定的な例としては、スルホネート、スルホン酸、カルボキシレート、カルボン酸、カルボキサミド、ジフルオロメチル基、トリフルオロビニル基、または過フッ素化されたアルキル基がある。
【0051】
A)(1)不飽和フッ素化オレフィン
不飽和フッ素化オレフィンA(1)としては、少なくとも1個のフッ素原子を含む不飽和モノマー、好ましくは少なくとも2個のフッ素原子を含む不飽和モノマー、最も好ましくは過フッ素化されているモノマーがある。不飽和フッ素化オレフィンの例としては、テトラフルオロエチレン(C
2F
4)、ヘキサフルオロプロピレン、1,1−ジフルオロエチレン;1,1,2−トリフルオロエチレン;1−フルオロエチレン、およびこれらの組合せが含まれる。より好ましい不飽和フッ素化オレフィンとしては、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンが含まれる。不飽和フッ素化オレフィンA(1)の濃度は、フルオロエラストマーA中のモノマー単位の全モル数の25〜74.9モルパーセントの範囲であってよい。
【0052】
A)(2)不飽和フッ素化オレフィンコモノマー
不飽和フッ素化オレフィンコモノマーA(2)(不飽和フッ素化オレフィンA(1)とは異なるもの)は、フルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、不飽和オレフィン、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0053】
フルオロエラストマーAの製造に用いられるフルオロビニルエーテルの例としては、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、フルオロ(アルキルビニル)エーテル、フルオロ(アルコキシビニル)エーテル、およびこれらの組合せが含まれる。適切な過フッ素化されている(アルキルビニル)エーテルとしては、式(II)〜(VI)に示すものが含まれる。
CF
2=CFO(R
f’O)
n(R
f’’O)
mR
f (II)
[式中、R
f’およびR
f’’は、2〜6個の炭素原子の異なる直鎖または分枝パーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立に0〜10であり、さらにR
fは1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である]。
【0054】
適切なパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルの更なる例として、式(III)の化学物質が含まれる。
CF
2=CFO(CF
2CFXO)
nR
f (III)
[式中、XはFまたはCF
3であり、nは0〜5であり、R
fは1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である]。好ましくは、nは0または1であり、R
fは1〜3個の炭素原子を含む。そのような過フッ素化されている(アルキルビニル)エーテルの例としては、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルが含まれる。
【0055】
フルオロエラストマー(A)を製造するための他のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルモノマーとしては、式(IV)、(V)、および(VI)の化合物が含まれる。
CF
2=CFO[(CF
2)
mCF
2CFZO]
nR
f (IV)
[式中、R
fは、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、m=0または1、n=0〜5、およびZ=FまたはCF
3である];
CF
2=CFO[(CF
2CFCF
3O)
n(CF
2CF
2CF
2O)
m(CF
2)
p]C
xF
2x+1 (V)
[式中、mおよびn=1〜10、p=0〜3、およびx=1〜5である](この部類の特定の実施形態としては、n=0〜1、m=0〜1、およびx=1である化合物がある);および
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2O)
mC
nF
2n+1 (VI)
[式中、n=1〜5、m=1〜3であり、好ましくは、n=1である]。
【0056】
パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルの例としては、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、およびパーフルオロエチルビニルエーテルが含まれる。パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテルの例としては、パーフルオロメトキシビニルエーテル、パーフルオロプロポキシビニルエーテル、およびパーフルオロエトキシビニルエーテルが含まれる。
【0057】
不飽和フッ素化オレフィンの例としては、テトラフルオロエチレン(C
2F
4);ヘキサフルオロプロピレン;1,1−ジフルオロエチレン;1,1,2−トリフルオロエチレン;1−フルオロエチレン;1−フルオロプロピレン;1,1−ジフルオロプロピレン;1,1,3−トリフルオロプロピレン;1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロピレン;およびこれらの組合せが含まれる。
【0058】
不飽和オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、およびこれらの組合せが含まれる。フルオロビニルエーテルと不飽和フッ素化オレフィンと不飽和オレフィンとの組合せを使用してもよい。
【0059】
フルオロエラストマーA中の不飽和フッ素化オレフィンコモノマーの濃度は、フルオロエラストマーA中のモノマー単位の全モルパーセントに対して、25〜74.9モルパーセント、好ましくは30〜65モルパーセント、より好ましくは45〜55モルパーセントの範囲である。
【0060】
A)(3)硬化部位モノマー
フルオロエラストマーAは、1種または複数種の硬化部位モノマー(3)の共重合単位を、一般には、フルオロエラストマーAの調製に使用される重合可能モノマー単位の全モルパーセントに対して、0.1〜10モルパーセント、好ましくは0.3から1.5モルパーセントの間の量さらに含む。複数種の硬化部位モノマーが存在してもよいが、少なくとも1つのニトリル置換基を含む硬化部位モノマーが好ましい。適切な硬化部位モノマーとしては、ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルを含みうるが、これらに限定されない。有用なニトリル含有硬化部位モノマーとしては、式(VII)〜(XI)のものが含まれる。
CF
2=CF−O(CF
2)
n−CN (VII)
[式中、n=2〜12、好ましくは2〜6である];
CF
2=CF−O[CF
2−CFCF
3−O]
n−CF
2−CFCF
3−CN (VIII)
[式中、n=0〜4、好ましくは0〜2である];
CF
2=CF−[OCF
2CFCF
3]
x−O−(CF
2)
n−CN (IX)
[式中、x=1〜2、およびn=1〜4である];および
CF
2=CF−O−(CF
2)
n−O−CF(CF
3)CN (X)
[式中、n=2〜4である]。
【0061】
好ましくは、式(IX)のモノマーを硬化部位モノマーとして使用する。特に好ましい硬化部位モノマーとしては、ニトリル基およびトリフルオロビニルエーテル基を有する過フッ素化されているポリエーテルが含まれる。最も好ましい硬化部位モノマーは、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)(8−CNVE)であり、式(XI)で表される。
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN (XI)
【0062】
B)硬化剤
本明細書に記載の硬化剤は、式(I)、(II)、(III)、および(IV)の化学物質により表わすことができる。
【0064】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
8、およびR
9のそれぞれは、H、ハロゲン原子、C
1〜C
4のアルキル基(ここで、アルキル基は、直鎖、分枝、または環状のものである)、OR’、および芳香族基からなる群から選択され、
R
5はHであり、かつ
R’は、C
1〜C
4のアルキル基(ここで、アルキル基は、直鎖、分枝、または環状のものである)およびフェニルからなる群から選択される]。
【0065】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素の各原子がある。式(I)〜(IV)の硬化剤の非限定的な例としては、5−クロロ−1,3−ジイミノイソインドリン;6−クロロ−1,3−ジイミノイソインドリン;4−クロロ−1,3−ジイミノイソインドリン;1,3−ジイミノ−4,5,6−トリクロロ−イソインドリン;4,5−ジクロロ−1,3−ジイミノイソインドリン;5,6−ジクロロ−1,3−ジイミノイソインドリン;4,7−ジクロロ−1,3−ジイミノイソインドリン;5−ブロモ−1,3−ジイミノイソインドリン;6−ブロモ−1,3−ジイミノイソインドリン;4−ブロモ−1,3−ジイミノイソインドリン;1,3−ジイミノ−4,5,6−トリブロモ−イソインドリン;4,5−ジブロモ−1,3−ジイミノイソインドリン;5,6−ジブロモ−1,3−ジイミノイソインドリン;4,7−ジブロモ−1,3−ジイミノイソインドリン;1,3−ジイミノ−5−ヨード−イソインドリン;1,3−ジイミノ−6−ヨード−イソインドリン;1,3−ジイミノ−4−ヨード−イソインドリン;1,3−ジイミノ−4,5,6−トリヨード−イソインドリン;1,3−ジイミノ−4,5−ジヨード−イソインドリン;1,3−ジイミノ−5,6−ジヨード−イソインドリン;1,3−ジイミノ−4,7−ジヨード−イソインドリン;1,3−ジイミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、4−メチル−5−クロロ−1,3−ジイミノイソインドリン;6−クロロ−1,3−ジイミノ−4−メチルイソインドリン;4−クロロ−7−メチル−1,3−ジイミノ−イソインドリン;1,3−ジイミノ−4,5,6−トリクロロ−7−メチル−イソインドリン;4,5−ジクロロ−1,3−ジイミノ−7−メチルイソインドリン;5,6−ジクロロ−1,3−ジイミノ−4,7−ジメチルイソインドリン;4,7−ジクロロ−1,3−ジイミノ−5,6−ジメチルイソインドリン;5−クロロ−1,3−ジイミノ−4−エチルイソインドリン;6−クロロ−1,3−ジイミノ−4−エチルイソインドリン;4−クロロ−1,3−ジイミノ−7−エチルイソインドリン;1,3−ジイミノ−4,5,6−トリクロロ−7−エチル−イソインドリン;4,5−ジクロロ−1,3−ジイミノ−7−エチルイソインドリン;5,6−ジクロロ−4,7−ジエチル−1,3−ジイミノイソインドリン;5,6−ジエチル−4,7−ジクロロ−1,3−ジイミノイソインドリン、1,3−ジイミノ−5−メトキシイソインドリン、1,3−ジイミノ−ベンゾ[e]イソインドリン、1,3−ジイミノ−ベンゾ[f]イソインドリン、および1,3−ジイミノ−ジベンゾ[e,g]イソインドリンが含まれる。
【0066】
本明細書に開示されている式(I)、(II)、(III)、および(IV)の硬化剤は、塩、互変異性体の形であってもよく、かつ/または他の対イオンと結びついていてもよい。本明細書に開示されている硬化剤の塩の例としては、1,3−ジイミノイソインドリン塩酸塩;1,3−ジイミノイソインドリウムベンゾエート(1,3−diiminoisoindolinium benzoate);および1,3−ジイミノイソインドリウム水素フタレート(1,3−diiminoisoindolinium hydrogen phthalate)が含まれるが、これらに限定されない。硬化剤は、式100に示すようなアミノ互変異性体としても存在しうる。
【0068】
こうした配合物中の硬化剤Bの濃度は、0.1〜5phr、好ましくは約0.3〜2phrの範囲である。フルオロエラストマーA中に存在するすべての硬化部位と反応するのに必要な量に対して、過剰の硬化剤Bを使用してもよい。
【0069】
C)硬化剤Bとは異なる硬化剤
任意選択の硬化剤Cは硬化剤Bとは異なる。任意選択の硬化剤Cを共硬化剤(co−curing agent)としてこれらの配合物で使用すると、「二重硬化(dual cure)」硬化系が生じる。二重硬化の硬化系では、硬化剤Cに応じて、こうした配合物中で、少なくとも2種類の異なるタイプの架橋が可能である。二重硬化配合物は、単硬化(singly−cured compounds)配合物と比べて物理的性質の利点がもたらされうる。例えば、1種の硬化剤によって耐薬品性が付与され、別の硬化剤によって耐熱性が付与される。
【0070】
硬化剤Cの例としては、8−CNVE、オクタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、デシルアミン、テトラアミン、トリアミン、およびジアミンがある。他の例としては、有機錫硬化剤またはアミノ基含有ベンゼン硬化剤がある。有機錫硬化剤の非限定例としては、アリル−、プロパルギル−、トリフェニル−およびアレニル錫硬化剤が含まれるが、これらに限定されない。有機錫硬化剤の具体例としては、テトラアルキル錫化合物、テトラアリール錫化合物、およびテトラフェニル錫化合物が含まれる。
【0071】
アミノ基含有ベンゼン硬化剤の例としては、式(XII)のビス(アミノフェノール)、式(XIII)のビス(アミノチオフェノール)、
【0075】
が含まれる。上式において、Aは、SO
2、O、CO、1〜6個の炭素原子のアルキル、1〜10個の炭素原子のパーフルオロアルキル、または2つの芳香環を結合させる炭素−炭素結合である。上記の式XIIおよびXIII中のアミノ基およびヒドロキシル基は、基Aに関してメタ位およびパラ位で交換可能である。ビス(アミノフェノール)硬化剤およびビス(アミノチオフェノール)硬化剤の具体例としては、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(ジアミノビスフェノールAF);4,4’−スルホニルビス(2−アミノフェノール);3,3’−ジアミノベンジジン;および3,3’、4,4’−テトラアミノベンゾフェノンがあり、3,3’−ジアミノベンジジンが好ましい。
【0076】
使用する硬化剤(C)の量は、最終生成物で望まれる架橋度、ならびに本明細書に記載の配合物中の反応部分のタイプおよび濃度に必然的に依存するであろう。こうした配合物中の任意選択の硬化剤C(存在する場合)の濃度は一般に、100部のフルオロエラストマーA当たり、硬化剤Cが0.5〜5.0部、好ましくは1.0〜2.5部である。
【0077】
硬化剤Cが存在する場合、硬化剤Bと硬化剤Cの合計は、本明細書に記載の配合物中に存在するすべての硬化部位と反応するのに必要なモル量に対してモル過剰であってよい。
【0078】
Cが存在する場合、本明細書に記載の配合物は、次のものを含む。
A.テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルとパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)との共重合単位を含むフルオロエラストマー;
B.1,3−ジイミノイソインドリン、5,6−ジクロロ−1,3−ジイミノイソインドリン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、1種または複数種の硬化剤;および
C.有機錫硬化剤、ビス(アミノフェノール)硬化剤、ビス(アミノチオフェノール)硬化剤、テトラアミン硬化剤、トリアミン硬化剤、ジアミン硬化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、1種または複数種の硬化剤。
【0079】
添加剤
本明細書に記載の配合物は、高分子補強充填剤をさらに含むことができる。高分子補強充填剤としては、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーが含まれる。高分子補強充填剤は、任意のフルオロエラストマーAの硬化部位と架橋することができても、できなくても構わない。高分子補強充填剤の非限定的な例には、少なくとも主鎖かあるいはその側鎖の一端に、フルオロエラストマーAと架橋反応することができる、シアノ(−CN)、カルボキシル(−COOH)、アルコキシカルボニル(−COOR9、ここで、R9は一価の有機基である)、および酸ハロゲン化物基(−COX1、ここで、X1はハロゲン原子である)からなる群から選択される少なくとも1種の架橋可能な基を有するものがある。
【0080】
高分子補強充填剤の例としては、フッ素含有ゴム、熱可塑性フッ素含有ゴム、およびフッ素含有ゴムを含むゴム組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
フッ素含有ゴムは、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレン、および少なくとも1種の更なるモノマー(例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、フッ化ビニル、およびヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルなど)、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル、およびこれらの組合せからなる群から独立に選択されるモノマー単位を含むことができる。
【0082】
カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、充填剤、および加工助剤などの添加剤(典型的には、配合に利用されるもの)は、本明細書に記載の配合物に混ぜることができる。但し、それらは、意図している使用状況で十分に安定性があることを条件とする。特に、低温性能は、パーフルオロポリエーテルを含めることによって向上させることができる。
【0083】
カーボンブラック充填剤は、こうした配合物のモジュラス、引張強度、伸び率、硬さ、耐摩耗性、伝導率、および加工性のバランスを取るための手段として、エラストマーで使用できる。こうした配合物では、粒径が小さく、表面積の大きなカーボンブラックが好ましい。一般に選択されるカーボンブラックの等級は、SAFカーボンブラックであり、これは、平均粒径が約14nmである、グループNo.1の中のN 110と呼ばれる(ASTM D 1765による)、高補強ブラックである。フルオロエラストマー配合物に役立つ特定クラスのカーボンブラックが、(特許文献4)に記載されている。こうしたカーボンブラックは、ASTM D 3849で測定した平均粒径が少なくとも約100nm〜約500nmである。例としては、MTブラック(中間サーマルブラック(medium thermal black))(N−991、N−990、N−908、およびN−907と呼ばれる)、および大きな粒径の加熱炉ブラック(furnace blacks)が含まれる。MTブラックが好ましい。カーボンブラックを加える場合、カーボンブラックの量は、100部のフルオロエラストマーAに対して、1〜70phr、好ましくは約0.01〜約50phrのカーボンブラック、より好ましくは1〜50phr、最も好ましくは10〜50phrの範囲である。
【0084】
カーボンブラック充填剤に加えて、またはカーボンブラック充填剤と一緒に、カーボンブラック以外の充填剤が、本明細書に記載の配合物中に存在してもよい。使用してよいカーボンブラック以外の充填剤の例としては、酸性シリカまたはヒュームドシリカなどの無水シリカがある。そのようなシリカは、Aerosil(登録商標)という商標でDegussa Aktiengesellschaft(Frankfurt,Germany)から入手できる。特に有用なタイプは、Aerosil(登録商標)200シリカである。他の適切なシリカとしては、Reolosil(登録商標)シリカ(Tokuyama KK(Tokyo,Japan)から入手可能)があり、例えば、Reolosil(登録商標)QS13、Reolosil(登録商標)QS102、およびReolosil(登録商標)QS30がある。シリカの量は、100部のフルオロエラストマーAに対して1〜25phrの範囲であるが、好ましくは1〜7phr以下である。
【0085】
充填剤の更なるタイプとして、鉱物微細粉末、高分子微細粉末、またはフルオロ添加剤がある。高分子微細粉末は、通常は部分結晶のポリマーである。微細粉末としては、容易に分散される微粉の可塑性フルオロポリマーが含まれるが、それは、本明細書に記載の配合物の製造および硬化で使用される最も高い温度でも固体である。固体であるとは、可塑性フルオロポリマーが、本明細書に記載の配合物の加工温度より上の結晶溶融温度を有することを意味する。
【0086】
こうした配合物で使用できる高分子微細粉末としては、テトラフルオロエチレン(TFE)ポリマーとして知られるポリマー群に基づいている高分子微細粉末が含まれるが、これらに限定されない。この群には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ならびに、高分子微細粉末を含んでいるフルオロエラストマー(A)の処理時に高分子微細粉末が溶融したり軟化したりしないようにするために、少なくとも1種の共重合性改質モノマーが約1モルパーセント以下の低濃度で含まれるTFEのコポリマーが含まれる。改質モノマーは、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)、パーフルオロブチルエチレン、クロロトリフルオロエチレン、あるいは側基をポリマー分子に導入する別のモノマーであってよい。
【0087】
フルオロエラストマー配合物の添加剤として使用されるテトラフルオロエチレンポリマーとしては、融点をPTFEの融点よりも下げるのに十分な濃度の1種または複数種のモノマーの共重合単位を有する、TFEのコポリマーがある。そのようなコポリマーは一般に、0.5〜60×10
3Pa.sの範囲の溶融粘度を有するが、この範囲外の粘度も知られている。パーフルオロオレフィンおよびパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルが好ましいコモノマーである。ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルが最も好ましい。TFEコポリマーの例としては、TFE/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよびTFE/パーフルオロ(プロピルビニル)エーテルコポリマーがあるが、但し、パーフルオロエラストマー加工温度に関する溶融温度の制約条件を満たすことを条件とする。こうしたコポリマーは、重合媒体から分離された粉末形態で利用できるか(粒径が条件にかなっている場合)、またはそれらを粉砕して、大きな寸法のストックから好適な粒径にすることができる。
【0088】
こうした配合物中のカーボンブラック以外の充填剤の量は、フルオロエラストマーAの全体に対して約0.01〜33部、好ましくは少なくとも約1〜5部の範囲である。
【0089】
本明細書に記載の配合物の製造およびそうした配合物を含む本明細書に記載の物品の硬化
本明細書記載のフルオロエラストマー配合物は、ゴム用二本ロール機、密閉式ミキサー(例えば、Banbury密閉式ミキサー)などのゴム配合手順を用いて、または押出機によって、均質になるまで、フルオロエラストマーA、硬化剤B、および任意選択成分を混合することにより、製造できる。そうした配合物は、硬化剤Bによる硬化部位モノマーとの架橋を生じさせるのに十分な加熱および/または加圧によって硬化させてもよく、あるいは二重硬化系を使用してもよい。圧縮成形を使用して硬化させる場合、プレス硬化サイクル(press cure cycle)の後に、好ましくは硬化後サイクル(post cure cycle)を行う。この硬化後サイクルの間に、プレス硬化配合物は、300℃を超える高温で数時間加熱される。
【0090】
硬化させると、本明細書に記載の配合物は、本明細書に記載の物品となり、そうした物品が使用される用途において適切な熱安定性および耐薬品性を示す。そうした物品は、広範囲の化学環境において、高温の状況でシールおよびガスケットとして、高温の自動車用途ではシールとして、またOリングとして役立つ。
【実施例】
【0091】
以下の表において「E」で示されている例示的配合物は、さらに明確にするためだけのものであり、本明細書に記載し列挙した配合物、方法、および物品の範囲を限定するものではない。比較例は、以下の表で「C」で示されている。
【0092】
材料
FP−A:48.8重量%のテトラフルオロエチレン単位と、49.0重量%のパーフルオロ(メチルビニル)エーテル単位と、2.2重量%のパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)単位とを含むパーフルオロエラストマーは、(特許文献1)の実施例1(第12〜13欄)に開示されている方法で製造できる。
− パーフルオロ(メチルビニル)エーテル:E.I.DuPont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware,USA)[DuPont]から入手可能である。
− CA−1は、1,3−ジイミノイソインドリンであり、Sigma Aldrich(St.Louis,Missouri,USA)から入手可能である。
− CA−2は、5,6−ジクロロ−1,3−ジイミノイソインドリンであり、これは、4,5−ジクロロ−1,2−ジシアノベンゼン(Sigma Aldrich(St.Louis,Missouri,USA)から入手可能)をDMFに溶解させ、その後、アンモニア化メタノール(ammoniated methanol)中に滴加することにより調製されたものである。5,6−ジクロロ−1,3−ジイミノイソインドリンは、溶液から沈殿させ、濾過で分離し、メタノールで洗浄し、乾燥させる。
− CA−3は、ジシアンジアミドである(Sigma Aldrich(St.Louis,Missouri,USA)から入手可能)。
− カーボンブラックは、平均粒径が280nmであるThermax(登録商標)N990中間サーマル(medium thermal)カーボンブラック(Cancarb Limited(Alberta,Canada)から入手可能)である。
【0093】
試験方法
本明細書に記載の配合物での、ある材料の硬化剤としての効果性を測定するための1つの試験法は、そうした配合物を硬化条件にさらしている間のトルクの増大を測定することである。式(I)、(II)、(III)、または(IV)の硬化剤を使用して、本明細書に記載の配合物を硬化させると、配合物のトルクが、硬化条件にさらされていない同一配合物の初期トルク値と比べて、少なくとも0.5dNm、好ましくは少なくとも1.0dNm、より好ましくは少なくとも2.0dNm、最も好ましくは少なくとも3.0dNmだけ増大する。トルクの増大が約0.5dNm未満である場合、それは、望ましい物理的性質を有する物品を提供するだけのかなりの数の架橋をこうした配合物に生じさせない物質であることを示す。
【0094】
硬化特性
硬化特性は、Monsanto MDR 2000測定器を用いて、以下の条件下で測定した。
可動ダイの振動数(moving die frequency):1.66Hz
振動振幅:±0.5度
温度:200℃(特に記載のない場合)
試料サイズ:直径が1.5インチ(38mm)の円板
試験時間:30分間。
【0095】
以下の硬化パラメータを記録した。
MH:試験期間の最後のトルク値(単位:dNm)
ML:初期トルク値(単位:dNm)
Ts2:トルクが2Nm上昇するまでの時間。目標は、1分間の間に、捕捉された気体が強制的に出されるだけの十分な背圧(backpressure)を提供しつつ、金型キャビティを完全に満たすだけの十分の流量となるようにすることである。
T50:最大トルク値の50パーセントに到達するまでの時間。
T90:最大トルク値の90パーセントに到達するまでの時間。
【0096】
トルク試験に使用した本明細書に記載の配合物は、表1に開示されている原料から製造した。配合はゴム用ロール機で行った。ロール機にかけた配合物をシートに成形し、10gの試料を打ち抜ぬいて円板にして試験体を作った。
【0097】
硬化特性は、正圧および200℃の試験温度に保持された測定器の試験キャビティに試験体を入れて測定した。試験体を試験キャビティに入れたらすぐに、双円錐円板(biconical disk)を試験体に埋め込み、その円板を指定の振動数で0.5°の弧を描くように振動させた。そのようにして試験体にせん断ひずみを加えた。双円錐円板を試験キャビティに入れたらすぐに試験体でトルク値を測定した。このトルク値はML(初期トルク値)である。試験の間、試験体を200℃に維持し、トルク値を時間の関数として記録した。指定時間後の試験体のトルク値を、MH(最終トルク値)として記録した。
【0098】
円板を回転させるのに必要な最大振幅での力(トルク)は、ゴムのスチフネス(せん断弾性率)に比例する。このトルクを時間の関数として記録した。ゴム試験片のスチフネスは硬化の間に増大するので、この試験により硬化性の尺度が得られる。
【0099】
こうした配合物の初期トルク値(ML)から、試験終了時の同じ配合物の最終トルク値(MH)までのトルク値の増大は、硬化過程の結果としてのトルクの増大を表す。
【0100】
こうした化合物で材料が硬化剤としてどれほど効果的かを測定するための別の方法は、Monsanto MDR 2000測定器、または経時的にトルクの増大を測定できる類似の機器を用いて、ML値とMH値との間のトルクの向上パーセント(percent improvement)を調べるというものである。トルクの向上パーセントは、(MH−ML)/ML×100で計算される。
【0101】
式(I)、(II)、(III)、および(IV)の硬化剤を使用して本明細書に記載の配合物を硬化させて、Oリングおよびシールなどの物品を調製できる。これらの式のこうした硬化剤により、配合物は、硬化条件にさらされると、硬化条件にさらされていない同一配合物の初期トルク値と比べて、トルクが少なくとも100パーセント増大し、好ましくはトルクが少なくとも150パーセント増大し、最も好ましくはトルクが少なくとも200パーセント増大する。トルクの増大が50パーセント未満である場合、それは、望ましい物理的性質を有する物品を提供するだけのかなりの数の架橋をこうした配合物に生じさせない硬化材料であることを示す。
【0102】
圧縮永久ひずみ試験
表1に示す物質を用いて、圧縮永久ひずみ試験用のOリングを作った。配合物は次のようにして調製した。
【0103】
パーフルオロエラストマー(FP−A)を、約20℃において4インチ×6インチの実験用練り機(lab mill)でロール練りした。カーボンブラックを練り機でゆっくりと混ぜて分散させるようにし、その後、硬化剤を混ぜ、均質になるまで配合物をロール練りした。厚さが約2mmの配合物のシートを、実験用練り機で押し出した。その後、直径1インチの円形座金をシートから打ち抜いた。1インチの円形座金の試験試料の重さが2.5g未満である場合、打ち抜かれる試験試料が少なくとも2.5gになるまで、ニップロールのすき間を広くしてシートを再び押し出す。この試験試料を用いて、以下の硬化手順でOリングを作った。
【0104】
硬化試験手順
本明細書に記載の配合物の硬化の程度および速度は、Alpha Technologies Rheometer MDR 2000を用いて試験した。試験は、2つのMylar(登録商標)フィルム片の間に、約8gのこうした配合物を挟んで、所望の温度で30分間実施した。
【0105】
使用した配合物すべてで、標準の214個のOリング(3cm×0.34cm)を、8インチ×8インチのPHIプレスで、TC90+5分間の間、圧縮成形した。試料は、ゆっくりと305℃まで変化させ、空気をパージしたオーブン内に42時間保持することにより、後硬化させた。得られたOリングを、ASTM D395Bにしたがって圧縮永久ひずみ試験に使用した。
【0106】
表1は、実施例E1〜E5および比較例C1〜C2についての圧縮永久ひずみ値および硬化特性を示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1は、E1およびE2の場合、(MLからMHへの)トルクの上昇および1分未満のTS2値によって示されるように、1,3−ジイミノイソインドリン(CA−1)を加えると、200℃まで加熱した場合に急速な硬化反応が起こることを示している。
【0109】
E1、E3、およびC1は、カーボンブラックを含む硬化配合物であり、E2、E4、E5、およびC2(カーボンブラックを欠く配合物)よりもMLが大きかった。E1およびE3の最大トルクは、C1(カーボンブラックを含む対照)の最大トルクとほぼ同じであった。E2、E4、およびE5の最大トルクは、C2(カーボンブラックを欠く対照)の最大トルクとほぼ同じであった。
【0110】
硬化剤の5,6−ジクロロ−1,3−ジイミノイソインドリン(CA−2)では、E1とE3との比較、E2とE4との比較から分かるように、1,3−ジイミノイソインドリンと同様の硬化反応を示す硬化配合物が得られた。硬化速度はTS2によって測ることができ、目標の1分間が、配合物の流量と硬化速度のバランスを取るのに最も望ましい。1,3−ジイミノイソインドリンおよび5,6−ジクロロ−1,3−ジイミノイソインドリンの硬化配合物は、ジシアンジアミドの硬化対照試料と比べて圧縮永久ひずみ(set under compression)が低かった。
【0111】
実施例E5は、1,3−ジイミノイソインドリンとジシアンジアミドの両方を硬化剤として含み(二重硬化系)、適度な硬化速度(TS2)および1,3−ジイミノイソインドリンのみを含む配合物と類似した圧縮永久ひずみ抵抗性を示した。