(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正弦パルスは、(i)約1KHz〜約20KHz、または、(ii)約1KHz〜約10KHz、または、(iii)約5KHzの周波数を有する、請求項6に記載のデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示の特定の実施形態の説明及び請求に使用される、周波数、期間、または、電流、電圧及びエネルギ等の量若しくはレベルは、いくつかの事例において用語「約」で変更されるように理解すべきものである。いくつかの実施形態では用語「約」は、値を決定するために採用されるデバイスまたは方法に対する平均値の標準偏差を含むものである。いくつかの実施形態では、ここに記載の説明及び添付の特許請求の範囲に示す数値パラメータは、特定の実施形態で得ることが求められる所要の特性にしたがって変化することが可能な近似値である。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、記録された有効数字の数に照らし、通常の丸め技術を適用することにより解釈されるものである。本開示のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるとしても、特定の実施形態に示す数値は、実施可能に正確に記載されている。本開示のいくつかの実施形態で提示された数値は、それぞれの試験測定で見つけられる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を包含し得る。本明細書における値の範囲の説明は、範囲内に入る各個別の値を個々に参照する簡略方法として作用することを意図するだけのものである。他に示されていない限り、それぞれの個別の値は、ここに個別に記載されているかのように、本明細書に包含される。
【0022】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、患者の病気を治療するために、頸動脈鞘(頸動脈神経血管束とも称される)のターゲット領域内またはその周りで、電気エネルギを患者に作用させる。本発明は、特に、頸動脈鞘内に位置する迷走神経の信号と最終的に相互作用し、治療結果を達成する電気インパルス作用させるのに有益である。神経刺激は、喘息、COPD及び/または運動誘発性気管支収縮に関連する気管支収縮の治療のための気管支の平滑筋の弛緩、起立性低血圧と関連する血圧の上昇、血圧の低下、てんかんの治療、腸閉塞、うつ病、不安神経症、アナフィラキシ、肥満、アルツハイマー病、片頭痛、緊張型、群発型、MOH及び他のタイプの頭痛等の神経変性疾患、鼻炎、副鼻腔炎、脳卒中、心房細動、自閉症、肝機能、胃不全麻痺及び他の機能性胃腸障害、及び/または、迷走神経の神経伝送によって影響を受け得る他の病気の変調の調整等、患者に利益となる。異なる不具合に対するこのような治療は、ElectroCore, LLC社に譲渡された以下の米国特許出願に開示されている(その全ての開示は、参照することにより、あらゆる目的のためにその全体が包含される。つまり、2013年4月8日付け米国特許出願13/858114(ELEC−47)、2013年3月3日付け米国特許出願第13/783391号(ELEC−49)、2013年1月8日付け米国特許出願第13/736096号(ELEC−43)、2012年12月30日付け米国特許出願第13/731035(ELEC−46)、2012年9月5日付け米国特許出願第13/603799(ELEC−44−1)、2012年1月24日付け米国特許出願第13/357,010(ELEC−41)、2011年10月24日付け米国特許出願13/279,437号(ELEC−40)、2011年8月31日付け米国特許出願第13/222,087号(ELEC−39)、2011年7月15日付け米国特許出願第13/183,765号(ELEC−38)、2011年7月15日付け米国特許出願第13/183,721号である2014年3月18日発行の現米国特許第8,676,330号(ELEC−36)、2011年5月17日付け米国特許出願第13/109,250号である2014年3月18日発行の現米国特許第8,676,324号(ELEC−37)、2011年3月30日付け米国特許出願第13/075,746号(ELEC−35)、2011年2月10日付け米国特許出願第13/024,727号(ELEC−34)、2011年1月12日付け米国特許出願第13/005,005号(ELEC−33)、2010年12月9日付け米国特許出願第12/964,050号(ELEC−32),2010年8月9日付け米国特許出願第12/859568号(ELEC−31)、2009年3月20日付け米国特許出願第12/408,131号(ELEC−17CP1)及び2009年11月9日付け米国特許出願第12/612,177号で2011年10月18日発行の現米国特許第8,041,428号(ELEC−14CP1)である。
【0023】
迷走神経の電気刺激が多くの不具合の治療に用いることが可能である事実は、以下から理解し得る。迷走神経は運動及び知覚繊維を有する。迷走神経は、頭蓋を出て、頸動脈鞘内で首の付け根まで首を下方に通過し、この後、胸郭及び腹部に移動し、ここで内臓の神経支配に貢献する。人の迷走神経(第10脳神経、左右の対)は、100000以上の神経線維(軸索)を有し、ほとんどはグループに組織化されている。このグループは、種々のサイズの小束内に包含され、神経に沿って分岐及び合流する。通常の生理学的条件下では、各繊維は一方向にのみ電気インパルス導き、これは、順方向と定義され、逆行性方向と反対である。しかし、神経の外部電気刺激は、順方向及び逆行方向に伝搬する活動電位を生成することができる。中枢神経系から体内の種々の器官に信号を伝達する遠心性出力繊維に加えて、迷走神経は、体の器官の状態についての感覚(求心性)情報を中枢神経系に戻して伝達する。迷走神経における神経線維の約80〜90%は求心性(感覚)繊維であり、内臓の状態を中枢神経系と通信する。
【0024】
左または右の迷走神経内で最大の神経線維は、径がほぼ20μmで、密な有髄であり、一方、約1μmより小さな径の最小神経線維は、完全に無髄である。神経の先端部分が電気的に刺激されたときに、複合活動電位が、より近くに位置する電極で記録され得る。複合活動電位は、同様な伝導速度を有する多数の繊維の加算した応答を表す複数の活動のピークまたは波を有する。複合活動電位における波は、対応する機能カテゴリに分類される神経線維の異なる形式を示し、概略的な径は以下のようである。つまり、Aアルファ繊維(求心性または遠心性繊維、12〜20μm径)、Aベータ繊維(求心性または遠心性繊維、5〜12μm)、Aガンマ繊維(遠心性繊維、3〜7μm)、Aデルタ繊維(求心性繊維、2〜5μm)、B繊維(1〜3μm)及びC繊維(無髄、0.4〜1.2μm)である。グループA及びグループBの繊維の径は、ミエリン鞘の厚さを含む。
【0025】
迷走(または迷走性)求心性神経線維は、頭蓋骨基部の近部の腫脹の形態を取る迷走感覚神経節に位置する細胞体から生じる。迷走神経求心性は、孤束内の脳幹を横断し、終端シナプスの約80パーセントが孤束(または、孤束核、複数の孤束核、または、NTS)の神経核内に位置する。NTSは、扁桃体、縫線核、中脳水道周囲灰白質、巨細胞性網様体傍核、嗅覚結核、青斑核、疑核及び視床下部等の中枢神経内の多種多様な組織内に突出する。NTSは更に、傍小脳脚核内に突出し、これは、次に、視床下部、視床、偏桃体、前頭、及び、下辺縁皮質、外側前頭前皮質、及び、他の皮質領域に突出する(JEAN A. The nucleus tractus solitarius: neuroanatomic,neurochemical and functional aspects. Arch Int Physiol Biochim Biophys 99(5,1991):A3−A52)。したがって、迷走神経求心性の刺激は、この突起を介して脳と脳幹の多くの組織の活性を調節することができる。
【0026】
迷走遠心性神経線維に関して、2つの迷走神経のコンポーネントが、周辺の副交感神経の機能を調節するために脳幹で進化してきた。背側運動核及びその接続部を有する背側迷走神経複合体は、主として横隔膜のレベルの下側の副交感神経機能を制御し、一方、疑核及び顔面神経核後核を有する腹側迷走神経複合体は、主として、心臓、胸腺及び肺、首及び胸郭上部の分泌線及び組織、並びに、食道複合体の筋肉等の特殊な筋肉等、横隔膜の上の器官の機能を制御する。例えば、心臓を刺激する節前副交感神経迷走神経細胞の細胞体は、疑核内に存在し、これは、迷走神経刺激によって生成され得る潜在的な心臓血管の副作用に関連する。
【0027】
迷走遠心性繊維は、それぞれ標的器官内またはその近部に配置される副交感神経の神経節の神経細胞を刺激する。これらの繊維の活動による迷走神経副交感神経の緊張は、交感神経の神経支配により、部分的に反射的バランスされる。したがって、迷走神経の電気刺激は、節後神経線維の副交感神経活動の調整だけでなく、交換神経活動の反射調節も生じる。迷走遠心性神経の調整を通じて直接的に、または、迷走求心性神経の電気刺激でもたらされる脳幹及び脳機能の活動を介して間接的に自律神経活動の幅広い変化をもたらす迷走神経の能力は、迷走神経の刺激が多くの末端器官の多岐にわたる病状を治療することが可能であるという事実を説明する。特定の状態の選択的な治療が可能であり、これは、電気刺激のパラメータ(周波数、振幅、パルス幅等)が、それぞれ個人における特定の生理反応を生じる特定の求心性または遠心性のA,B及び/またはC繊維の活動を選択的に活性化または調節し得るためである。
【0028】
通常実行されるように、迷走神経を刺激するために使用される電極は、首切開手術中に神経の回りに埋め込まれる。多くの患者に対し、てんかん、うつ病または他の状態を治療するために、永久電極を埋設する目的で行っても良い(Arun Paul AMAR,Michael L Levy,Charles Y.Liu及びMichael L.J.Apuzzo.第50章50.Vagus nerve stimulation pp.625〜638,特に634−635.Elliot S.Krames,P Hunber Peckham,Ali R Rezai,eds.Neuromodulation.ロンドン:Academic Press,2009;KIRSE DJ,Werle AH,Murphy JV,Eyen TP, Bruegger DE, Hornig GW,Torkelson RD.Vagus nerve stimulator implantation in children. Arch Otolaryngol Head Neck Surg 128(11,2002):1263−1268)。その場合、電極はらせん電極のことが多いが、他のデザインを使用しても良い(特許US4979511,題名 Strain relief tether for implantable electrode,TERRYによる,Jr;US5095905,題名Implantable neural electrode,KLEPINSKIによる)。他の患者では、手術中に偶発的に損傷されていないことを確認するために、開首甲状腺手術中に迷走神経が電気的に刺激される。その場合、首内の迷走神経は、外科的に露出され、一時的刺激電極が神経の回りにクリップされる(SCHNEIDER R,Randolph GW,Sekulla C,Phelan E,Thanh PN,Bucher M,Machens A,Dralle H,Lorenz K.Continuous intraoperative vagus nerve stimulation for identification of imminent recurrent laryngeal nerve injury.Head Neck 2012 Nov 20 doi:10 1002/hed.23187(Epub ahead of print,pp.1〜8))。
【0029】
更に、最小侵襲の外科的アプローチすなわち経皮的神経刺激を使用して迷走神経を電気的に刺激することも可能である。この措置では、一対の電極(アクティブ電極及びリターン電極)が患者の首の皮膚を通して迷走神経の近部に導入され、電極に接続されたワイヤが患者の皮膚からパルスジェネレータに延び(公開番号US20100241188,題名Percutaneous electrical treatment of tissue,J.P.ERRICO et alによる;SEPULVEDA P,Bohill G,Hoffmann TJ Treatment of asthmatic bronchoconstriction by percutaneous low voltage vagal nerve stimulation: case report Internet J Asthma Allergy Immunol 7(2009):e1(pp1〜6);MINER,J.R.,Lewis,L.M.,Mosnaim,G.S.,Varon,J.,Theodoro,D Hoffman,T.J.Feasibility of percutaneous vagus nerve stimulation for the treatment of acute asthma exacerbations Acad Emerg Med 2012;19:421-429)、その全開示は、全ての目的に対して、参照することにより、本明細書に包含される。
【0030】
経皮的神経刺激処置は、迷走神経に対してではなく、主として痛みの治療に対して説明してきており、これは、通常は痛みを生じさせるとは考えられず、特別な課題を提示する(HUNTOON MA,Hoelzer BC,Burgher AH, Hurdle MF, Huntoon EA. Feasibility of ultrasound−guided percutaneous placement of peripheral nerve stimulation electrodes and anchoring during simulated movement: part two, upper extremity. Reg Anesth Pain Med 33(6,2008):558−565; CHAN I, Brown AR, Park K, Winfree CJ.Ultrasound−guided, percutaneous peripheral nerve stimulation: technical note.Neurosurgery 67(3 Suppl Operative,2010):ons136−139;MONTI E.Peripheral nerve stimulation:a percutaneous minimally invasive approach.Neuromodulation 7(3,2004):193−196;Konstantin V SLAVIN.Peripheral nerve stimulation for neuropathic pain. US Neurology 7(2,2011):144−148)。
【0031】
いくつかの実施形態では、刺激装置は、患者に経皮浸透を通じて、迷走神経を包含する頸動脈鞘の内部、隣接部または極近接部の標的位置に導入される。所定位置となると、電気インパルスが刺激装置の電極を介して1つまたは複数の選択した神経(例えば、迷走神経またはその分岐の1つ)に印加され、神経(複数を含む)を刺激、ブロックまたは調節し、患者の状態またはその状態の症状を治療する。いくつかの状態に対しては、治療は激しいことがあり、患者に反応を起こすために1つまたは複数の神経と電気インパルスが直ちに相互作用を開始することを意味する。いくつかの実施形態では、電気インパルスは神経(複数を含む)に反応を生じさせ、患者の状態または症状を、3時間より短く、好ましくは1時間より短く、更に好ましくは15分よりも短い時間で改善する。他の状態に対しては、数日、数週間、数か月または数年にわたって神経の刺激を間欠的に予定しまたは必要に応じて行うことで、患者の改善を起こし得る。迷走神経の刺激に対する適切な経皮的処置のより完全な説明が、同時継続中の2009年4月13日付け「Percutaneous Electrical Treatment of Tissue」と題する米国特許出願(出願番号12/422483)で見ることができ、その完全な開示は、参照することにより、その全体があらゆる目的に対して本明細書に包含される。
【0032】
本発明の他の実施形態では、患者の外側に発生しかつ制限される時間的に変化する磁界は、患者の組織内に電磁界を生成し、及び/または、渦電流を誘導する。他の実施形態では、患者の皮膚に適用された電極は、患者の組織内に電流を生成する。本発明の目的は、脳卒中及び/または一過性脳虚血発作を防止または回避するために、1つまたは複数の神経と相互作用するように、電気インパルスを生成および作用させ、急性脳梗塞または一過性脳虚血発作の影響を改善または制限し、及び/または、脳卒中患者を回復することである。
【0033】
開示の多くは、患者の首またはその近部にデバイスを非侵襲的に配置して、特に、迷走神経またはその周りの電気刺激により患者を治療することに向けられている。しかし、本発明のデバイス及び方法は、制限するものではないが、副交感神経、交換神経、脊椎神経、または、脳神経を含む体の他の組織及び神経に作用させることが可能であることも理解される。当業者に明らかなように、この方法は、心臓に問題が存在することが知られている患者に使用する前に、十分に評価することが必要である。更に、本発明の治療パラダイムは、上述のような埋め込み可能及び/または経皮的刺激デバイスを含む多岐にわたる迷走神経刺激に使用することができることが認識される。
【0034】
図1Aは、刺激によって潜在的に影響される他の解剖学的構造との接続に関連して、「迷走神経刺激」として刺激する位置を示す。本発明の他の実施形態では、種々の脳及び脳幹構造が刺激によって優先的に調整される。これらの構造は、脳卒中または一過性脳虚血発作のための予防または治療としての活性を調節するための理論的根拠とともに、以下の開示のセクションで説明する。予備的事項として、始めに、迷走神経自体及びその最も近接する接続を説明し、これらは、刺激を実行するために使用される電気波形の後述の開示に特に関係する。
【0035】
迷走神経(第10脳神経、左右対)は、運動及び感覚繊維を有する。迷走神経は、頭蓋を出て、頸動脈鞘内で首の付け根まで首を下方に通過し、この後、胸郭及び腹部に移動し、ここで内臓の神経支配に貢献する。
【0036】
人の迷走神経は100,000を超える神経線維(軸索)を有し、主にグループに編成されている。このグループは、種々のサイズの小束内に包含され、神経に沿って分岐及び合流する。通常の生理学的状態では、各繊維は一方向にのみ電気信号を伝達し、これは、順方向と規定され、逆行性方向と反対である。しかし、神経の外部電気刺激は、順方向及び逆行方向に伝搬する活動電位を生成することができる。中枢神経系から体内の種々の器官に信号を伝達する遠心性出力繊維に加えて、迷走神経は、体の器官の状態についての感覚(求心性)情報を中枢神経系に戻して伝達する。迷走神経における神経線維の約80〜90%は求心性(感覚)繊維であり、内臓の状態を中枢神経系と通信する。遠心性方向及び求心性方向の電気信号の伝搬は、
図1Aに矢印で示してある。組織間の通信が双方向の場合、遠心性及び求心性神経線維を個別に示すのではなく、
図1Aに2つの矢印を有する単一接続として示してある。
【0037】
左または右の迷走神経内で最大の神経線維は、径がほぼ20μmで、密な有髄であり、一方、約1μmより小さな径の最小神経線維は、完全に無髄である。神経の先端部分が電気的に刺激されたときに、複合活動電位が、より近くに位置する電極で記録され得る。複合活動電位は、同様な伝導速度を有する多数の繊維の加算した応答を表す複数の活動のピークまたは波を有する。複合活動電位内の波は、異なるタイプの神経線維を示し、対応する機能的カテゴリに分類され、近似する径は以下の通りである。つまり、Aアルファ繊維(求心性または遠心性繊維、12〜20μm径)、Aベータ繊維(求心性または遠心性繊維、5〜12μm)、Aガンマ繊維(遠心性繊維、3〜7μm)、Aデルタ繊維(求心性繊維、2〜5μm)、B繊維(1〜3μm)及びC繊維(無髄、0.4〜1.2μm)。グループA及びグループBの繊維の径は、ミエリン鞘の厚さを含む。迷走神経の組織は、新生児及び幼児で発達し、これは、自律反射の成熟の一部を占めることが理解される。したがって、本発明における迷走神経刺激のパラメータは、この年齢関連成熟を説明するように選択されることが理解される(PEREYRA PM,Zhang W,Schmidt M,Becker LE.Development of myelinated and unmyelinated fibers of human vagus nerve during the first year of life. J Neurol Sci 110(1−2,1992):107−113;SCHECHTMAN VL, Harper RM, Kluge KA.Development of heart rate variation over the first 6 months of life in normal infants. Pediatr Res 26(4,1989):343−346)。
【0038】
迷走神経(または、迷走神経の)求心性神経線維は、迷走感覚神経節内に位置する細胞体から生じる。これらの神経節は、頭蓋骨にちょうど後ろ側の迷走神経の頸部側に見られる腫脹の形態を取る。下側及び上側迷走神経節と称されるこのような2つの神経節がある。更に、これらは、それぞれ節状及び頚静脈神経節と呼ばれる(
図1A参照)。頚部(上側)神経節は、頭蓋骨の基部の頸静脈孔を通るように、迷走神経上の小さな神経節である。節状(下側)神経節は、第1頸椎の横突起の高さに位置する迷走神経上の神経節である。
【0039】
迷走神経求心性は、孤束内の脳幹を横断し、末端シナプスの約80パーセントは孤束(または、孤束核、孤束核、または、NTS、
図1A参照)の中枢内に位置する。NTSは、扁桃体、縫線核、中脳水道周囲灰白質、室傍核、嗅結節、青斑核、疑核及び視床下部等の中枢神経系における多種多様の組織内に突出する。NTSは、更に、傍小脳脚核内に突出し、これは、次に視床下部、視床、扁桃体、前島、及び、下辺縁皮質、外側前頭前皮質、及び、他の皮質領域に突出する(JEAN A.The nucleus tractus solitarius:neuroanatomic,neurochemical and functional aspects.Arch Int Physiol Biochim Biophys 99(5,1991):A3−A52)。このような中央投影は、内受容および休止状態の神経回路網に関連して以下に説明する。
【0040】
迷走遠心性神経線維に関して、2つの迷走神経のコンポーネントが、周辺の副交感神経の機能を調節するために脳幹で進化してきた。背側運動核及びその接続部を有する背部迷走神経複合体(
図1A参照)は、主として横隔膜(例えば、腸及びそのクロム親和性細胞)の下のレベルの副交感神経機能を制御し、一方、疑核及び顔面神経核後核を有する腹側迷走神経複合体は、主として横隔膜より上の、心臓、胸腺及び肺の器官、首及び胸郭上部の他の線及び組織、並びに、食道複合体の筋肉等の特別な筋肉の機能を制御する。例えば、心臓を刺激する節前副交感神経迷走神経細胞の細胞体は、疑核内に存在し、これは、迷走神経刺激によって生成され得る潜在的な心臓血管の副作用に関連する。
【0041】
迷走神経についての予備情報としての上記説明と共に、発明の開示との関連で後述するトピックは、以下の(1)開示された迷走神経刺激法が、脳卒中及び/または一過性脳虚血発作に危険があるまたはこれを経験した個人の神経回路を調節するために使用しても良い生理機構の概要、(2)迷走神経を刺激するために使用される特定の電気波形を説明する、出願人の磁気及び電極ベースの神経刺激デバイスの説明、(3)磁気刺激装置の好ましい実施形態、(4)電極ベースの刺激装置の好ましい実施形態、(5)患者の首への刺激の適用、(6)個々の患者の治療を改善するためのフィードバック及びフィードフォワードを有するデバイスの使用、を包含する。
【0042】
開示された迷走神経刺激法が、脳卒中及び/または一過性脳虚血発作に危険がある、またはこれを経験した個人の神経回路を調節するために使用しても良い生理機構の概要
【0043】
脳卒中及び/または一過性脳虚血発作に危険があるまたはこれを経験した個人に治療を施すために、迷走神経を非侵襲的に電気的に刺激するための方法及びデバイスを開示する。開示する方法及びデバイスは、後述するように、他の状態を治療するために開発してきた方法及びデバイスの延長である。頸部迷走神経(nVNS)の非侵襲的刺激は、主として脳機能を調整するために迷走神経の特別な求心性繊維を刺激することにより、種々の中枢神経系障害を治療するための新規な技術である。この技術は、頭痛(慢性及び急性の群発および片頭痛)、てんかん、気管支収縮、不安障害、うつ病、鼻炎、線維筋痛症、過敏性腸症候群、脳卒中、外傷性脳損傷、PTSD、アルツハイマー病、自閉症、及びその他を含む中枢神経系障害の広い範囲を治療するために、動物及び人での研究で実証されてきた。出願人は、2分間の刺激が、兆候の種類及び重症度にしたがって、最大8時間以上持続することができる効果を有することを見出した。
【0044】
大まかにいうと、出願人は、脳に対するnVNSの効果は3つの成分が存在することを判断した。最大の効果が2分間の刺激中に発生し、(例えば、瞳孔測定、心拍変動、電気皮膚反応または誘発電位を使用して測定した)自律機能の急激な変化として明瞭に見ることができる脳機能、fMRI画像解析に示すように、種々の脳領域の活性化及び抑制の著しい変化を生じる。第2の効果は、中程度の強度であり、刺激後、15〜180分持続する。動物実験は、脳の様々な部分における神経伝達物質レベルの数時間持続する変化を示している。第3の効果は、強さが軽度の強さであり、8時間まで継続し、例えば片頭痛の動物モデルにおいて臨床的に見られる症状の長時間にわたる緩和に対して貢献する。
【0045】
したがって、病状、慢性的または急性治療であるかどうか、及び、病気の自然経過にしたがって、異なる治療プロトコルを使用しても良い。特に、出願人は、特定の疾患を有する患者に対して、迷走神経を「連続的に刺激する」こと(または、臨床的に効果的な利点を提供するために)は、必要ないことを見出した。ここに画定される用語、「連続的に刺激する」は、24時間/日、連続的に特定のオン/オフパターンを継続することを意味するものとして、画定される。例えば、既存の埋め込み可能迷走神経刺激装置は、迷走神経を、24時間/日及び数日/週にわたって、30秒オン/5分オフ(または、同様)のパターンで「連続的に刺激する」。出願人は、この連続的な刺激は、多くの疾患に対して所要の臨床的利点を提供するためには、必要でないと、判断した。例えば、急性片頭痛発作の治療では、治療パラダイムは、痛みの始まりでの2分間の刺激を行い、15分後、更に2分間の刺激を行う。てんかんに対して、一日当たり2分の刺激を3回行うことが最適と見られる。しばしば、複数回連続して、2分間刺激が必要とされる。したがって、初期治療プロトコルは、所要の状態に対して大規模な患者集団に対して最適であり得るものに対応する。しかし、治療は、それぞれ特定の患者の反応にしたがって、個別化した基準で変更しても良い。
【0046】
本発明は、迷走神経の刺激、つまり、予防、急性及び補償(リハビリ的)を含む3つのタイプのインターベンションを考慮する。これらの内でも、急性治療は迷走神経刺激の最小の処置を包含し、これは、症状の出現時に開始する。主として、症状を伴う神経伝達の興奮を抑制する自律神経系を求め、係合することを意図している。予防的治療は、急性症状が丁度生じたばかり(そうでない場合でも)のように処置され、また、症状が再発したかのように(そうでない場合でも)一定間隔で繰り返される意味で、急性治療と共通する。他方、リハビリまたは代償治療は、中枢神経系の長期にわたる調節を促進することを試み、新たな神経回路を形成することにより、患者の疾病の結果として生じた不備を補償する。
【0047】
本発明による迷走神経刺激治療は、30秒から5分、好ましくは約90秒から約3分でより好ましくは約2分間(それぞれ単一の処置として)の連続周期で実施される。処置が完了した後、一定期間にわたって治療が停止される(後述するように、治療にしたがって)。脳卒中または一過性脳虚血発作を回避するための治療等、予防的処置については、治療は、1週間から所定年数まで続くことがある期間にわたり、1日当たり複数回の処置を施すことが好ましい。特定の実施形態では、治療は、日中の所定時間に、及び/または、1日を通して所定の間隔で複数回の処置が行われる。例示的な実施形態では、治療は以下のうちの1つで行われ、つまり、(1)所定の間隔または時間で3回/日、(2)2回、連続してまたは所定の間隔若しくは時間で5分離して、好ましくは2または3回/日、(3)3回、連続してまたは所定の間隔若しくは時間で5分離して、例えば2または3回/日、または、(4)1〜3回、連続してまたは5分離して、1日当たり4〜6回。治療の開始は、差し迫った脳卒中またはTIAが予測されるときに始めても良く、または、リスクファクタ低減プログラムで、朝、患者が起きた後に開始し、一日を通して実行しても良い。
【0048】
例示的な実施形態では、各治療期間は、連続的にまたは5分離して、患者に対して1〜3回施される。治療セッションは、患者が1日24時間を通して、時間毎に2回の処置を受けられるように、日中、15,30,60または120分毎に処置される。
【0049】
特定の障害に対しては、時刻は、治療間の時間間隔よりも重要である。例えば、青斑核は、1日24時間中に、不活性期間と活性期間との期間を有する。典型的には、不活性期間は夕方近く、または、患者が眠っているときの真夜中に生じ得る。青斑核で生成される脳内の抑制性神経伝達物質のレベルが減少するのが、不活性期間中である。これは、特定の障害に影響を与え得る。例えば、片頭痛または群発性頭痛を患っている患者は、青斑核の不活性期間の後にこれらの頭痛がすることが多い。これらの障害のタイプに対し、脳内の抑制性神経伝達物質の量が、障害の急性発作を緩和または防ぐために十分高いレベルに維持することができるように、不活性期間中における予防的治療が最適である。
【0050】
これらの実施形態では、予防的治療は、青斑核の不活性期間のタイミングに、複数回/日行うことを包含しても良い。1つの実施形態では、本発明による治療は、1日当たり2〜3回、または、1日当たり2〜3「治療セッション」で施す、1以上の回数分を包含する。治療セッションは、真夜中に及び患者が起きた朝に再度、夕方近くまたは深夜に行われるのが好ましい。例示的な実施形態では、各治療セッションは、1〜4回、好ましくは2〜3回包含し、各回は約90秒から約3分持続する。
【0051】
他の障害に対して、治療セッション間の間隔は、最も重要であり、これは、出願人が迷走神経の刺激は、脳内の抑制性神経伝達物質レベルに、例えば、少なくとも1時間で、3時間まで、場合によっては8時間までの持続効果を有することが可能であると判断したためである。1つの実施形態では、本発明による治療は、24時間にわたる間隔で1回以上(すなわち、治療セッション)施すことを包含する。好ましい実施形態では、このような治療セッションは1〜5回で、好ましくは2〜4回の治療セッションである。各治療セッションは、1〜3回含むことが好ましく、それぞれ約60秒から約3分、好ましくは約90秒から約150秒、より好ましくは約2分持続する。
【0052】
急性脳卒中の治療等の急性の治療に対して、本発明による治療は、1以上の実施形態を有しても良く、(1)症状の発症時に1回、(2)症状の発症時に1回、続いて、5〜15分の他の回、または、(3)症状の発症時から急性発作が軽減またはなくなるまで、15分から1時間毎に1回行う。これらの実施形態では、各実行回は、約60秒から約3分、好ましくは約90秒から約150秒、より好ましくは約2分の間持続するのが好ましい。
【0053】
脳卒中患者のリハビリテーション中に生じるような急性の損傷の長期にわたる治療に対し、この治療は、(1)3回処置/日、(2)2回処置、連続的または5分離して、3x/日、(3)3回処置、連続的または5分離して、2x/日、(4)2または3回処置、連続的または5分離して、10x/日まで、または、(5)1,2または3回処置、連続的または5分離して、15,30,60または120分ごとに行うことを包含しても良い。
【0054】
上記した治療の全てについて、左右側間で交互に治療しても良く、または、特に脳半球で起こる脳卒中若しくは片頭痛の場合に、それぞれ脳卒中−脳半球若しくは頭痛側に対して同側若しくは反対側を治療しても良い。または、単一治療について、一側で1分、続いて反対側で1分治療しても良い。これらの治療パラダイムの変更は、患者ごとに応じて選択しても良い。しかし、刺激プロトコルのパラメータは、患者の症状の異質性に応じて変更しても良いことが理解される。異なる刺激パラメータは、更に、患者の状態変化の経過と共に選択しても良い。好ましい実施形態では、開示した方法及びデバイスは、興奮若しくは不安神経症、または、心拍若しくは血圧の変化等の臨床的に重要な副作用を生じるものではない。
【0055】
予防的治療は、患者が前駆、ハイリスク双安定状態にあるときに最も効果的であり得る。その状態では、患者は同時に正常のまま、または、症状を示すことができ、正常状態と症状との間の選択は、生理的フィードバックネットワークによる変動の増幅にしたがう。例えば、血栓は、ゲルまたは流体相で存在しても良く、変動のフィードバック増幅が相の及び/またはゲル相の体積を変化させる。したがって、血栓は、迷走神経刺激で調整され得る血流及び炎症で影響されるように、血栓の形成に含まれる酵素のネットワークで示される非線形動力学にしたがって、形成されまたは形成されない(PANTELEEV MA,Balandina AN,Lipets EN,Ovanesov MV,Ataullakhanov FI.Task−oriented modular decomposition of biological networks:trigger mechanism in blood coagulation. Biophys J 98(9,2010):1751−1761;Alexey M SHIBEKO,Ekaterina S Lobanova,Mikhail A Panteleev及びFazoil I Ataullakhanov.Blood flow controls coagulation onset via the positive feedback of factor VII activation by factor Xa.BMC Syst Biol 2010;4(2010):5,pp.1〜12)。その結果、脳卒中に対する予防中の迷走神経刺激治療のメカニズムは、血栓によって既に生じている虚血の始まりを引き起こす興奮性神経伝達を刺激が抑制するときに、急性治療中生じるものとは一般的に相違する。それにも関わらず、予防的治療は、更に、最終的には血栓の形成時に生じ興奮を制限するように、興奮性神経伝達を抑制することができ、急性治療は、他の血栓の形成を阻止することができる。
【0056】
このような阻害に関与する回路が
図1Aに示してある。背側迷走神経複合体内の興奮性神経は、その神経伝達物質として一般にグルタミン酸を用いる。背側迷走神経複合体内の神経伝達を阻害するため、本発明は、孤束(NTS)の核が有する、抑制性神経伝達物質を生成する組織との双方向接続を使用し、または、NTSが有する視床下部との接続を使用し、これは、次に、抑制性神経伝達物質を生成する組織に突出する。抑止は、後述する刺激波形の結果として生じる。したがって、最後野と背側運動核のNTSにより、グルタミン酸媒介活性化に対抗する作用は、それぞれ中脳水道周囲灰白質、縫線核及び青斑核からのGABA、及び/または、セロトニン、及び/または、ノルエピネフリンである。
図1Aは、これらの興奮性と抑制性の影響が組み合わされて、背側運動核の出力を調節する方法を示す。同様な影響がNTS自体内で結合し、NTS及び背側運動核の結合した抑制性の影響が一般的な抑制効果を生じる。
【0057】
視床下部またはNTSによる中脳水道周囲灰白質、縫線核及び青斑核内の抑制性回路の活性化も、これらの組織のそれぞれを接続する回路を互いに調節させる。したがって、
図1Aに示すように、中脳水道周囲灰白質は、縫線核及び青斑核に伝達し、青斑核は縫線核に伝達する(PUDOVKINA OL,Cremers TI,Westerink BH.「The interaction between the locus coeruleus and dorsal raphe nucleus studied with dual−probe microdialysis.」Eur J Pharmacol 7(2002);445(1−2):37−42.;REICHLING DB,Basbaum AI.Collateralization of periaqueductal gray neurons to forebrain or diencephalon and to the medullary nucleus raphe magnus in the rat. Neuroscience 42(1,1991):183−200;BEHBEHANI MM.The role of acetylcholine in the function of the nucleus raphe magnus and in the interaction of this nucleus with the periaqueductal gray.Brain Res 252(2,1982):299−307)。中脳水道周囲灰白質、縫線核及び青斑核も、虚血中に興奮されることになるものを含む脳内の他の多くの場所に突出する。したがって、本発明のこの態様では、急性脳卒中または一過性脳虚血発作中の迷走神経刺激は、中脳水道周囲灰白質、縫線核及び青斑核のその活性化を介する、全体的な神経保護の抑制効果を有する。
【0058】
特に、迷走神経刺激は、島(更に、島的皮質(insulary cortex)、島皮質または島ローブとしても知られている)として知られている脳の一部及びその前帯状皮質(ACC)との接続に対する神経保護としても良い。迷走神経から島及びACCに導かれる神経回路が
図1Aに示してある。脳卒中患者に対して島の保護は特に重要であり、これは、島に対するダメージが運動コントロール、手及び目運動機能(hand and eye motor movement)、運動学習、嚥下、語音明瞭度、長く複雑な話しかけられた文章に対する処理能力、感覚及び自律機能を含む典型的な脳卒中患者における症状を生じさせることが知られているためである(ANDERSON TJ,Jenkins IH,Brooks DJ,Hawken MB,Frackowiak RS,Kennard C.Cortical control of saccades and fixation in man.A PET study. Brain 117(5,1994):1073-1084;FINK GR,Frackowiak RS,Pietrzyk U,Passingham RE (April 1997).Multiple nonprimary motor areas in the human cortex.J.Neurophysiol 77(4,1997):2164-2174;SOROS P,Inamoto Y,Martin RE.Functional brain imaging of swallowing:an activation likelihood estimation meta−analysis.Hum Brain Mapp 30(8,2009):2426-2439;DRONKERS NF.A new brain region for coordinating speech articulation.Nature 384(6605,1996):159-161;ACKERMANN H,Riecker A.The contribution of the insula to motor aspects of speech production:a review and a hypothesis.Brain Lang 89(2,2004): 320-328;BOROVSKY A,Saygin AP,Bates E,Dronkers N.Lesion correlates of conversational speech production deficits. Neuropsychologia 45(11,2007):2525-2533;OPPENHEIMER SM, Kedem G,Martin WM.Left−insular cortex lesions perturb cardiac autonomic tone in humans.Clin Auton Res ;6(3,1996):131−140; CRITCHLEY HD.Neural mechanisms of autonomic, affective,and cognitive integration. J. Comp. Neurol.493(1,2005):154-166)。
【0059】
図1Cは、脳卒中を患う患者を治療するための本発明の1実施例を示し、SMNのコンポーネント間の例示的な接続を示す。ここに示すコンポーネントは、小脳(Cereb)、一次運動野(M1)、前前頭皮質(PFC)、外側前運動皮質(PMC)、補足運動野(SMA)、上頭頂小葉(SPC)及び視床(Thal)である。更に、脳内で対となっているコンポーネントを示してあり、図の左右のコンポーネントは、脳卒中で影響を受ける脳半球内のコンポーネントである。
図1Dは、脳卒中前のSMN内の連接に対し、これらのコンポーネント間の興奮及び抑制の相互関係の増減を示す。
図1Cに示すように、図の左右のコンポーネントは、脳卒中で影響を受ける脳半球内のコンポーネントである(REHME AK,Grefkes C.Cerebral network disorders after stroke:evidence from imaging−based connectivity analyses of active and resting brain states in humans.J Physiol 591(Pt 1,2013):17−31;INMAN CS,James GA,Hamann S,Rajendra JK,Pagnoni G,Butler AJ.Altered resting−state effective connectivity of fronto−parietal motor control systems on the primary motor network following stroke.Neuroimage 59(1,2012):227−237)。
【0060】
追加のSMAコンポーネントは、特別な筋肉の動きに包含されることが理解される。例えば、脳卒中後の会話能力の喪失及び回復に含まれるコンポーネントは、補足運動野(SMA、
図1C及び1D参照)、及び、その右ブローカ野(図示しない)との相互作用である(SAUR D,Lange R,Baumgaertner A,Schraknepper V,Willmes K,Rijntjes M,Weiller C.Dynamics of language reorganization after stroke.Brain 129(2006):1371-1384)。
【0061】
磁気及び電極ベースの神経刺激/調整デバイスの好ましい実施形態の説明
【0062】
次に、迷走神経を刺激するために使用される本発明のデバイスについて説明する。磁気刺激デバイスまたは電極ベースデバイスのいずれもその目的に使用しても良い。
図2Aは、病状を治療するために神経にエネルギのインパルスを送出する、出願人の磁気神経刺激/調整デバイス301の概略図である。図示のように、デバイス301は、インパルスジェネレータ310、インパルスジェネレータ310に連結された電源320、インパルスジェネレータ310と通信しかつ電源320に連結された制御ユニット330、及び、ワイヤを介してインパルスジェネレータコイル310に連結された時期刺激コイル341を備えても良い。刺激コイル341は、コア材料のトロイダルの回りに巻回されているため、トロイダル形状である。
【0063】
磁気刺激コイル341は
図2Aに単一コイルとして示してあるが、実際には、コイルは2つ以上の別個のコイルを備え、それぞれインパルスジェネレータ310に直列または並列に接続しても良い。したがって、
図2Aに示すコイル341は、デバイスの全ての磁気刺激コイルを集合的に表すものである。後述する好ましい実施形態では、コイル341は、実際にインパルスジェネレータ310に直列または並列に接続しても良い。
【0064】
図2Aに、351を付したアイテムは、コイル341を囲むボリュームであり、導電媒体を充填されている。図示のように、媒体は磁気刺激コイルを囲むだけでなく、更に、体の表面に適用されたときに、ぴったり合うように変形可能である。したがって、導電媒体351の外面における湾曲または屈曲は、体の表面の湾曲または屈曲にも対応し、この体に導電媒体351が適用され、媒体と体表面とを接触させる。コイル341に時間的に変化する電流が流れると、磁場が生成されるが、コイル巻き線がトロイダルであるため、磁場は、空間的にトロイダルの内部に制限される。電場及び渦電流も生成される。電場は、トロイダル空間を超えて患者の体内に延び、患者内に電流及び刺激を生じさせる。ボリューム351は、患者の神経または組織を刺激するために必要なコイル341を流れる電流を大きく減少するために、目標皮膚面で患者に電気的に接続される。上述する磁気刺激装置の好ましい実施形態では、コイル341が接触する導電媒体は、トロイダルを完全に囲むことは必要ない。
【0065】
磁気刺激装置301のデザインは、表面電極と共に使用するためにここでも適用され、患者の首の迷走神経等の比較的深い神経を選択的に刺激するために使用される電場を形成することを可能とする。更に、デザインは、皮膚の刺激場所で、患者に与える痛みまたは不快感(ある場合には)は、当該分野で現在知られている刺激デバイスよりも、極めて小さい。逆に、患者の一部における痛みまたは不快感の所与の大きさ(例えば、このような不快感または痛みのそこにおける閾値)に対し、このデザインは皮膚の下側でより大きな貫入深さを達成する。
【0066】
本発明の他の実施形態が
図2Bに示してあり、これは、病状を治療するために、神経にインパルスエネルギを送出する電極ベースの神経刺激/調整デバイス302の概略図である。図示のように、デバイス302は、インパルスジェネレータ310、インパルスジェネレータ310に連結された原電320、インパルスジェネレータ310と通信し、電源320に連結される制御ユニット330及びワイヤ345を介してインパルスジェネレータ310に連結される電極340を備える。好ましい実施形態では、同じインパルスジェネレータ310、電源320及び制御ユニット330は、磁気刺激装置301または電極ベースの刺激装置302の双方に使用しても良く、ユーザは、コイル341または電極340が取り付けられているかどうかにしたがって、パラメータを変更することができる。
【0067】
一対の電極340が
図2Bに示してあるが、実際には、電極は3またはそれ以上の異なる電極を備え、そのそれぞれが直列または並列にインパルスジェネレータ310に接続される。したがって、
図2Bに示す電極340は、デバイスの全ての電極を集合的に表す。
【0068】
図2Bの350を付したアイテムは、ボリュームであり、電極340と接触し、導電媒体を充填されている。本発明の特定の実施形態との関係で上述するように、電極340が埋設される導電媒体は、電極を完全に囲む必要はない。更に、好ましい実施形態との関係で後述するように、ボリューム350は、目標皮膚面で患者に電気的に接続され、患者の神経または組織を刺激するために達成することが必要な電極340を通る電流密度形成する。患者の皮膚面に対する電気接続は、インターフェース351を介している。1つの実施形態では、インターフェースは、マイラーの薄いシート等電気絶縁(誘電体)材料で形成される。その場合、患者に対する刺激装置の電気的連結は、容量性である。他の実施形態では、インターフェースは、導電媒体350自体または導電若しくは浸透膜等、導電材料を備える。その場合、患者に対する刺激装置の電気的連結は、オーム性である。図示のように、体の表面に適用されたときにぴったりするように変形可能としても良い。したがって、インターフェース351の外面における湾曲または屈曲は、体の表面の湾曲または屈曲にも対応し、この体にインターフェース351が適用され、媒体と体表面とを接触させる。
【0069】
制御ユニット330は、インパルスジェネレータ310を制御し、デバイスのコイルまたは電極のそれぞれに対する信号を生成する。信号は、この信号が非侵襲的に目標神経または組織にコイル341または電極340を介して作用したときに、特定の病状の改善に適切であるように選択される。神経刺激/調整デバイス301または302は、その機能により、パルスジェネレータと称しても良いことに注意が必要である。双方がSHAFFERに対する特許公開公報US2005/0075701及びUS2005/0075702は、本発明に適用しても良いパルスジェネレータの説明を包含する。例として、パルスジェネレータは、市販もされており、例えば、5301 スティーブンスクリーク大通り サンタクララ カルフォルニア州 95051に住所を有するAgilent Technologies Inc.社のAgilent 33522A Function/Arbitrary Waveform Generatorである。
【0070】
制御ユニット330は、汎用コンピュータを備えてもよく、1または複数のCPU、実行可能なコンピュータプログラム(システムのオペレーティングシステムを含む)及びデータ保存及び検索を格納するコンピュータメモリ、磁気ディスク装置とシステムのキーボードとコンピュータマウスとタッチスクリーンと任意の外部供給生理学的信号(
図8参照)からの外部信号を受信する通信装置(シリアルまたはUSBポート)、外部から供給されるアナログ信号(
図8参照)をデジタル処理するアナログ・デジタルコンバータ、システムの一部を構成するプリンタ及びモデム等の外部装置との間でデータを送受信する通信装置、システムの一部を構成するモニタ上に情報の表示を生成するハードウェア、並びに、上述のコンポーネントを相互接続するバスを備える。したがって、ユーザは、キーボード等のデバイスで、制御ユニット330に対して命令をタイピングすることにより、システムを操作し、システムのコンピュータモニタ等のデバイス上でその結果を見ても良く、または、結果をプリンタ、モデム及び/または保存ディスクに送っても良い。システムの制御は、外部から供給された生理学的または環境信号から測定されたフィードバックに基づいても良い。これに代え、制御ユニット330は、コンパクトかつ簡単な構造を有し、例えば、ユーザがオン/オフスイッチ及びパワーコントロールホイールまたはノブ使用するだけでシステムを操作しても良い。
【0071】
神経または組織を刺激するパラメータは、パワーレベル、周波数及び列の継続(または、パルス数)を包含する。貫通深さ、強度及び選択性等の各パルスの刺激特性は、電極またはコイルに伝達される電気エネルギの立上り時間及びピークの電気エネルギ、並びに、電極またはコイルで生成される電場の空間的分布に従う。立上り時間及びピークエネルギは、刺激装置及び電極またはコイルの電気特性、並びに、患者内の電流の流れる領域の組織で支配される。本発明の一実施形態では、パルスパラメータは、刺激される神経を囲む詳細な組織を考慮するような方法で設定される。(Bartosz SAWICKI,Robert Szmurlo,Przemyslaw Plonecki,Jacek Starzynski,Stanislaw Wincenciak,Andrzej Rysz.Mathematical Modelling of Vagus Nerve Stimulation.pp.92〜97:Krawczyk,A.Electromagnetic Field,Health and Environment:Proceedings of EHE’07.Amsterdam,IOS Press,2008)。パルスは、単相、二相または多相であっても良い。本発明の実施形態は、列における各パルスが、同一の刺激間間隔を有する固定周波数、及び、車内の各パルス間隔を変化させることができる変調周波数を包含する。
【0072】
図2Cは、本発明の実施形態による、選択した神経の一部または複数部分に適用される刺激、遮断及び/または調整インパルスの例示的な電圧/電流曲線を示す。好ましい実施形態について、電圧及び電流は、刺激装置のコイルまたは電極により、患者内に生成される非侵襲的なものを参照する。図示のように、神経の一部または複数部分に対する遮断及び/または調整インパルス410は用の電圧/電流プロファイル400は、パルスジェネレータ310を使用して達成しても良い。好ましい実施形態では、パルスジェネレータ310は、電源320、及び、例えばプロセッサとクロックとメモリ等を有して、刺激、遮断及び/または調整インパルス410を神経に送出するコイル341または電極340に対するパルス列420を生成する制御ユニット330を使用して実装しても良い。神経刺激/調整デバイス301または302は、外部から電力を供給し及び/または再充電し手も良く、または、その自身の電力現320を有しても良い。周波数、振幅、デューティサイクル、ハルス幅、パルス形状等の変調信号400のパラメータは、プログラム可能であることが好ましい。外部通信デバイスは、治療を向上するためにパルスジェネレータプログラミングを変更しても良い。
【0073】
電極またはコイルに対して刺激、遮断及び/または調整インパルスの電圧/電流プロファイルを生成する調整ユニットを実現するデバイスに対する追加または代替手段として、特許公報第US2005/0216062に開示されたデバイスを採用しても良い。その特許公報は、異なる生物学的及び生物医学的用途の広範囲のスペクトルに対する電磁的または他の形態の電気刺激を作用させる出力信号を生じさせるのに適する多機能電気刺激(ES)システムを開示しており、これは、非侵襲的に神経を刺激するために電場パルスを形成する。システムは、サイン波、方形または若しくは刃状波、または、単純若しくは複合パルス等の異なる形状を有する信号をそれぞれが生成する複数の異なる信号ジェネレータに連結されるセレクタを有するES信号ステージを包含し、そのパラメータは、振幅、持続時間、繰り返し率及び他の変数に関して調整可能である。このようなシステムで生成され得る信号はLIBOFFにより公開されている(A.R.LIBOFF.Signal shapes in electromagnetic therapies:a primer.pp.17〜37:Bioelectromagnetic Medicine (Paul J.Rosch及びMarko S.Markov,eds.).ニューヨーク:Marcel Dekker(2004))。ESステージの選択したジェネレータからの信号は、所要の極性を有する高または低電圧または電流出力を生成するように処理される少なくとも1つの出力ステージに送られ、これにより、出力ステージは、その意図する用途に対して適切な電気刺激信号を得ることができる。更に、システムには測定ステージが設けられ、これは、処置される物質に作用する電気刺激信号、及び、この物質に広がっている優勢な状態を検知する種々のセンサの出力を測定及び表示し、これにより、システムのユーザは、信号を手動調整、または、フィードバックにより自動的に調整させ、ユーザが望むどのようなタイプの電気刺激信号も提供することが可能であり、そして、ユーザは処置される物質上のこの信号の効果を観察することができる。
【0074】
刺激及び/または調節インパルス信号410は、治療効果、すなわち選択された神経のいくつかまたは全ての伝達を刺激及び/または調整に影響するように選択された周波数、振幅、デューティサイクル、パルス幅、パルス形状等を有することが好ましい。例えば、周波数は約1Hz以上で、例えば約15Hz〜約100Hzの間、好ましくは約15〜50Hzで、より好ましくは約15〜35Hzとしても良い。例示的な実施形態では、周波数は約25Hzである。変調信号は、例えば1マイクロ秒〜約1000マイクロ秒で、好ましくは約100〜400マイクロ秒、より好ましくは約200〜400マイクロ秒等、治療効果に影響するように選択されたパルス幅を有しても良い。例えば、神経の近部の組織内にデバイスで誘導または生成される電場は、約5〜約600V/m、好ましくは約100V/mよりも小さく、より好ましくは約30V/mよりも小さくても良い。電場の勾配は、約2V/m/mmよりも大きくても良い。より一般的には、刺激デバイスは、神経を脱分極し、1000Hzで約8V/mの活動電位伝搬の閾値に到達するために十分な電場を神経の近部に生成する。変調信号は、治療効果に影響するように選択された、例えば約0.2ボルト以上、約0.2ボルト〜約40ボルト、好ましくは約1〜20ボルト、より好ましくは約2〜12ボルトの間等のピーク電圧振幅を有しても良い。
【0075】
開示した刺激装置の目的は、神経線維の選択性及び空間選択性の双方を提供することである。空間選択性は、電極またはコイルのデザインを介して部分的に達成しても良く、神経線維の選択性は、刺激波形のデザインを介して部分的に達成しても良いが、2つのタイプの選択性は、絡み合っている。これは、例えば、波形は、2つの神経が互いに近接しているかどうかに関わらず2つの神経の一方のみを選択的に刺激し得るため、刺激信号を神経の1つにのみに焦点を当てる必要がない(GRILL W及びMortimer J T.Stimulus waveforms for selective neural stimulation.IEEE Eng.Med.Biol.14(1995):375-385)。これらの方法は、例えば、局所麻酔薬の使用、加圧、虚血の誘発、冷却、超音波の使用、刺激強度の段階的な増加、軸索の絶対不応期の利用、及び、神経ブロックの適用等の選択的神経刺激を達成するために使用される他の方法を補完する(John E.SWETT及びCharles M.Bourassa.Electrical stimulation of peripheral nerve.Electrical Stimulation Research Techniques,Michael M.Patterson and Raymond P.Kesner,eds.Academic Press.(ニューヨーク,1981)pp.243〜295)。
【0076】
今まで、神経刺激用の刺激波形パラメータの選択は、高度に経験主義的であり、ここでは、最初に成功したパラメータのセットのいくつかについて、各患者に対する改善したパラメータのセットの発見を目指して変更される。刺激パラメータを選択するためのより効果的なアプローチは、自然に発生する電気波形を取り込む目的で、間接的に刺激しようとしている解剖学的領域の電気活性に近似する刺激波形を選択することと考えられ、例えば、THOMAS et al.による「Electrotherapy device using low frequency magnetic pulses」と題する特許番号US6234953、及び、GLINER et al.による「Systems and methods for enhancing or affecting neural stimulation efficiency and/or efficacy」と題する出願番号US20090299435に示唆されている。最適な設定を探して、反復的に刺激パラメータを変更しても良い(特許US7869885, 題名 Threshold optimization for tissue stimulation therapy,BEGNAUD et alによる)。しかし、ここに記載のいくつかの刺激波形は、試行錯誤によって見出され、その後慎重に改善したものである。
【0077】
侵襲的な神経刺激は、典型的には方形波パルス信号を使用する。しかし、出願人は、方形の波形は、過度の痛みを生じさせるため、非侵襲的刺激には理想的ではないことを見出した。先行パルス及び同様な波形変更が、神経刺激波形の選択性を改善する方法として提案されてきたが、出願人は、それが理想的とは見ない(Aleksandra VUCKOVIC,Marco Tosato及びJohannes J Struijk.A comparative study of three techniques for diameter selective fiber activation in the vagal nerve:anodal block,depolarizing prepulses and slowly rising pulses.J.Neural Eng.5(2008):275-286;Aleksandra VUCKOVIC,Nico J.M.Rijkhoff,及びJohannes J.Struijk.Different Pulse Shapes to Obtain Small Fiber Selective Activation by Anodal Blocking− A Simulation Study.IEEE Transactions on Biomedical Engineering 51(5,2004):698−706;Kristian HENNINGS.Selective Electrical Stimulation of Peripheral Nerve Fibers:Accommodation Based Methods.Ph.D.Thesis,Center for Sensory−Motor Interaction,オールボー大学,オールボー,デンマーク, 2004)。
【0078】
出願人は、更に、方形波形のバーストを有する刺激波形は、非侵襲的刺激に対して理想的ではないことを見出した(M.I.JOHNSON,C.H.Ashton,D.R.Bousfield及びJ.W.Thompson.Analgesic effects of different pulse patterns of transcutaneous electrical nerve stimulation on cold−induced pain in normal subjects. Journal of Psychosomatic Research 35(2/3,1991):313−321;特許US7734340,題名Stimulation design for neuromodulation,De Ridderによる)。しかし、
図2D及び2Eに示すように、正弦曲線パルスのバーストは好ましい刺激波形である。ここに示すように、個々の正弦曲線パルスは、τの周期を有し、バーストはNのこのようなパルスを有する。これに、無信号の期間が続く(バースト間期間)。バーストの後に無音のバースト間期間が続くパターンがそれ自体をTの周期で繰り返す。例えば、サイン曲線周期τは、約50〜1000マイクロ秒(約1〜20KHzに相当)の間、好ましくは約100〜400マイクロ秒(約2.5〜10KHzに相当)の間、より好ましくは約133〜400マイクロ秒(約2.5〜7.5KHzに相当)、更に好ましくは、約200マイクロ秒(約5KHzに相当)としても良く、バースト毎のパルス数はN=1〜20、好ましくは約2〜10、より好ましくは約5であり、バーストに続く無音のバースト間期間の全体パターンは、約10〜100Hz、好ましくは約15〜50Hz、より好ましくは25〜35Hz、更に好ましくは約25Hzに相当する周期Tを有しても良い(より小さなTの値は
図2Eに示してあり、バーストを認識可能とする)。これらの例示的値がT及びτに使用されたときに、波形は、高周波数(1/200マイクロ秒=5000/秒)において、現在行われているように、経皮性の神経刺激波形に包含されるものに比較して、重要なフーリエ係数を包含する。
【0079】
出願人は、迷走神経の刺激に使用されてきたこのような波形を意識していないが、一流のアスリートの筋力増大の手段として筋肉を刺激するために使用されてきている。しかし、筋肉強化の用途に対して、使用される電流(200mA)は非常に痛みをもたらし、ここに開示されたものよりも2桁大きい。更に、筋肉強化に使用される信号は、正弦曲線以外(例えば、三角形)でも良く、パラメータτ,N,Tは、上記例示した値と異なる(A.DELITTO,M.Brown,M.J.Strube,S.J.Rose,R.C.Lehman.Electrical stimulation of the quadriceps femoris in an elite weight lifter:a single subject experiment. Int J Sports Med 10(1989):187−191;Alex R WARD, Nataliya Shkuratova. Russian Electrical Stimulation:The Early Experiments. Physical Therapy 82 (10,2002):1019−1030;Yocheved LAUFER及びMichal Elboim.Effect of Burst Frequency and Duration of Kilohertz−Frequency Alternating Currents and of Low− Frequency Pulsed Currents on Strength of Contraction,Muscle Fatigue, and Perceived Discomfort. Physical Therapy 88(10,2008):1167−1176; Alex R WARD. Electrical Stimulation Using Kilohertz−Frequency Alternating Current. Physical Therapy 89(2,2009):181−190;J.PETROFSKY,M.Laymon,M.Prowse,S.Gunda,及びJ.Batt. The transfer of current through skin and muscle during electrical stimulation with sine, square, Russian and interferential waveforms. Journal of Medical Engineering and Technology 33(2,2009):170-181;特許US4177819,題名Muscle stimulating apparatus,KOFSKY et alによる)。バースト刺激も、埋め込み可能なパルスジェネレータに関連して開示されているが、バースティングは神経興奮パターン自体の特徴である(特許US7734340 DE RIDDERによる,題名Stimulation design for neuromodulation;US出願20110184486 DE RIDDERによる,題名 Combination of tonic and burst stimulations to treat neurological disorders)。例として、
図2D及び2Eに示す電場は、17V/mのE
max値を有しても良く、これは、神経を刺激するために十分であるが、周囲の筋肉を刺激するために必要な閾値よりもかなり低い。
【0080】
高周波数電気刺激も、脊椎の背痛の治療で知られている(特許出願US20120197369,題名Selective high frequency spinal cord modulation for inhibiting pain with reduced side effects and associated systems and methods,ALATARIS et al.による;Adrian AL KAISY,Iris Smet,及びJean−Pierre Van Buyten. Analgeia of axial low back pain with novel spinal neuromodulation. ポスタープレゼンテーション #202 ナショナルハーバーで開催された、2011年の米国疼痛医学会の会議にて,MD,3月24〜27日,2011)。
【0081】
これらの方法は、約1.5KHzから約50KHzの範囲における高周波変調を包含し、これは患者の脊髄領域に作用される。しかし、このような方法は、本発明と相違しており、その理由は、例えば、それらは侵襲的であり、本発明のようにバースト波形を有せず、Aデルタ及びC神経線維を必要としかつこれらの繊維が傷みを生成し、一方、本発明ではなく、それらは、後根レベルで作用される伝導ブロックを有しても良く、一方、本発明は、そのような活動電位を遮断することなく活動電位を刺激しても良く、及び/または、それらは脳脊髄液を通して貫通するために高周波変調の増加能力を有し、これは、本発明には関係しない。実際、10〜50KHzの周波数を使用することで生じる背痛軽減のための同様な説明は、これらの周波数で作用させた電気刺激が痛みを生じさせる神経に対して永久的な損傷を生じさせることであり、一方、本発明は可逆性の効果のみを包含する(LEE RC,Zhang D,Hannig J.Biophysical injury mechanisms in electrical shock trauma. Annu Rev Biomed Eng 2(2000):477−509)。
【0082】
次に、非侵襲的な迷走神経刺激により、どの神経線維が刺激されるか考察する。
図2に示す波形は、例え波形も低周波数(例えば、25/秒)の成分を包含するとしても、高周波数(例えば、1/200マイクロ秒=5000/秒)で大きなフーリエ成分を有する。経皮的には、Aベータ、Aデルタ及びC繊維は、典型的には、それぞれ2000Hz、250Hz、及び5Hzで励起され、すなわち、2000Hz刺激がAベータ繊維の応答を測定するため、Aデルタ繊維に対して250Hz、C繊繊維に対して5Hzを測定するために特別であると説明されている(George D.BAQUIS et al. TECHNOLOGY REVIEW:THE NEUROMETER CURRENT PERCEPTION THRESHOLD (CPT). Muscle Nerve 22(Supplement 8,1999):S247−S259)。したがって、非侵襲的刺激の高周波成分は、Aアルファ及びAデルタ繊維を好適に刺激し、C繊維は大部分が刺激されない。
【0083】
しかし、繊維タイプの活性化の閾値は、刺激の振幅にもしたがい、所与の刺激周波数に対して、繊維サイズが減少すると閾値が増加する。電極で固定された神経繊維の活動電位を生成するための閾値は、伝統的にラピックまたはワイスの方程式で記述されており、これは、繊維を特徴つけるパラメータと共に、刺激パルスの幅と振幅とが閾値をどのように決定するか説明する(クロナキシー及び基電流)。ここにおける場合のように、繊維に外部から作用する電場により刺激される神経線維について、パルス振幅及び周波数の機能として閾値を特徴つけることは、より複雑であり、これは、通常、モデルの微分方程式の数値解またはケースバイケースの経験的評価を含む(David BOINAGROV, Jim Loudin及びDaniel Palanker. Strength−Duration Relationship for Extracellular Neural Stimulation:Numerical and Analytical Models. J Neurophysiol 104(2010):2236−2248)。
【0084】
例えば、REILLYは、異なる径を有する神経線維の最小刺激閾値を計算するために使用し得るモデル(特に、非線形節点モデルまたはSENNモデル)を説明する(J.Patrick REILLY. Electrical models for neural excitation studies. Johns Hopkins APL Technical Digest 9(1,1988):44−59)。REILLYの解析によると、本発明の予定する範囲内であるパルス幅(1ms)を仮定したときに、興奮に対する最小閾値は、有髄A繊維が、20μm径繊維に対して6.2V/m、10μm繊維に対して12.3V/m、5μm径繊維に対して24.6V/mである。これらの閾値はREILLYの図で示すように、本発明の波形で生成されるものと僅かに相違しても良いことが理解されており、例えば、本発明は方形パルスよりも正弦曲線を用いることが好ましいからである。B及びC繊維に対する閾値はそれぞれ、A繊維のものよりも2〜3及び10〜100倍大きい(Mark A.CASTORO, Paul B.Yoo, Juan G.Hincapie,Jason J.Hamann,Stephen B.Ruble,Patrick D.Wolf,Warren M.Grill. Excitation properties of the right cervical vagus nerve in adult dogs.Experimental Neurology 227(2011):62-68)。閾値15V/mの平均的A繊維を前提とすると、B繊維は30〜45V/mの閾値を有し、C繊維は150〜1500V/mの閾値を有することになる。本発明は、約6〜約100V/mの範囲の迷走神経に電場を生成するもので、したがって、これは全ての有髄のA及びB繊維を興奮させるが、無髄のC繊維を興奮させるものではない。反対に、てんかんの治療に用いられてきた侵襲的神経刺激装置は、いくらかの患者でC繊維を興奮させることが報告されてきた(EVANS MS,Verma−Ahuja S,Naritoku DK, Espinosa JA.Intraoperative human vagus nerve compound action potentials.Acta Neurol Scand 110(2004):232−238)。
【0085】
本発明のデバイスは、A及びB神経線維を刺激し得るが、最も大きなA繊維(Aデルタ)及びB繊維を刺激しないように用いても良いことが理解される。特に、刺激装置の振幅が、望ましくない副作用が発生し始めるポイントまで増加する場合、デバイスのオペレータは、単に振幅を低減してこれらの影響を避けても良い。例えば、気管支収縮に応答する迷走神経遠心繊維は、B繊維のこれらの範囲の伝導速度を有することが観察されてきた。これらの実験では、気管支収縮作用は,B繊維が興奮したときにのみ生じ、C繊維が回復する前に最大となる(R.M.McALLEN及びK.M.Spyer. Two types of vagal preganglionic motoneurones projecting to the heart and lungs. J.Physiol.282(1978):353−364)。開示したデバイスでの適正な刺激は気管支収縮に副作用を生じないため、振幅が適正に設定されている場合には、明らかに気管支収縮B繊維は活性化されている可能性はない。更に、徐脈またはPR間隔が延長していないことは、心臓の遠心性のB線維が刺激されていないことを示唆する。同様に、Aデルタ求心性神経は、生理的にC繊維のように作用し得る。開示のデバイスでの刺激は、頸静脈A繊維またはC繊維で生成される侵害受容作用を生成しないため、振幅が適切に設定されている場合には、明らかに、Aデルタ線維は刺激されないことがある。
【0086】
上述の説明を概略すると、迷走神経線維の信号伝達を十分に刺激及び/または調整するエネルギのインパルスの送出は、興奮性神経伝達物質を抑止し、脳のより高位のより正常な活性化を生じ、これらの多くは休止状態ネットワークの構成成分である。最も可能性の高い機序は、C繊維の刺激を含まず、求心性神経線維の刺激は、神経経路を活性化し、ノルエピネフリン、及び/またはセロトニン及び/またはGABAを放出させる。
【0087】
変調信号400を生成するためにフィードバックの使用は、特に、フィードバックが、患者から自然に発生する経時的に変化する非周期的な生理的信号を測定するセンサから生成される場合、周期的でない信号となる。実際、患者から自然に発生する生理的信号に大きな変動がないことは、通常、患者が不健康であることの指標であると考えられる(
図8)。これは、患者の生理的変数を調整する病理的制御システムが、2以上の可能な安定状態の1つのみの回りに捕捉され、したがって、外部及び内部ストレスに正常に応答することができなかったことがある。したがって、フィードバックが変調信号400を生成するために使用されない場合でも、健康的な人に自然に生じる変動をシミュレートするように、非周期的な態様で信号を人工的に調整するために有益となる。したがって、刺激信号の雑音調節は、病理学的、生理学的制御システムをリセットさせ、または、確率共鳴として知られている機構を通して、非線形相転移を受けることがある(B.SUKI,A.Alencar,M.K.Sujeer,K.R.Lutchen,J.J.Collins,J.S.Andrade,E.P.Ingenito,S.Zapperi,H.E.Stanley,Life−support system benefits from noise,Nature 393(1998)127−128;W Alan C MUTCH,M Ruth Graham,Linda G Girling及びJohn F Brewster. Fractal ventilation enhances respiratory sinus arrhythmia. Respiratory Research 2005,6:41,pp.1〜9)。
【0088】
したがって、本発明の一実施形態では、フィードバック付きまたは無しの変調信号は、選択した神経線維を、1つまたは複数刺激パラメータ(電力、周波数及びここに記載の他のもの)が、選択しまたは最も新しいそのパラメータの現行平均値に対応する平均を有する統計的分布をサンプリングし、その後にパラメータの値をランダムにサンプリングした値に設定することにより変更されるように、選択した神経線維を刺激する。サンプリングされた統計的分布は、ガウス分布及び1/fを備え、記録された自然に発生するランダムな時系列から、または、計算式によって得られる。パラメータ値は、そのように定期的に、または、他の統計的分布のサンプリングによりランダムに選択された時間間隔で変更され、選択された平均及び変動係数を有し、サンプリングされた分布は、ガウス分布及び指数関数を有し、記録された自然に発生するランダムな時系列からまたは計算式によって得られる。
【0089】
他の実施形態では、本発明によるデバイスは「ペースメーカ」タイプの形態で提供され、電気インパルス410は、神経の選択した領域に、間欠的な原則で、刺激デバイスで発生され、患者に神経の低反応性を形成する。
【0091】
磁気刺激コイル341の好ましい実施形態は、高透磁率の材料(例えば、Supermendur)を有するコアの回りのトロイダル巻き線を有し、導電性媒体内に埋設される。高透磁率のトロイダルコイルは、理論的には、経頭蓋(TMS)及び他の形態の磁気刺激に必要な電流を大きく低減することを示すが、トロイドが導電媒体内に埋設され、空気界面がない場合のみである(Rafael CARBUNAR及びDominique M.Durand.Toroidal coil models for transcutaneous magnetic stimulation of nerves. IEEE Transactions on Biomedical Engineering 48(4,2001):434−441;Rafael Carbunaru FAIERSTEIN,Coil Designs for Localized and Efficient Magnetic Stimulation of the Nervous System. Ph.D. Dissertation,Department of Biomedical Engineering, Case Western Reserve,1999年5月(UMI Microform Number:9940153,UMI Company,Ann Arbor MI))。
【0092】
Carbunaru及びDurandが、そのようなデバイスで経皮的に患者に電気的刺激を与えることが可能であることを実証したが、神経を刺激するための一般的な電場を形成するようなデバイスの開発は試みていない。特に、それらのデバイスで生成され得る電場は、患者内の任意の与えられた刺激深度で半径方向に対象であるものに制限されている(すなわち、2つの変数、z及びローが、場の位置を特定するために使用されており、x,y,及び、zではない)。これは、重大な制限であり、その公報の
図6に指摘されている欠陥、つまり、大きな刺激深度で、「長い軸索に対する閾値電流(デバイスのコイル内)が、コイルの刺激電流よりも大きい。これらの軸索の刺激が、屈曲部または組織の導電性が不均質等の低閾値ポイントでのみ可能である。」ことになる。したがって、それらのデバイスに対して、神経の近部における電場またはその勾配を増大するために、考慮されるパラメータを変更することは、場の生理学的効果を制限させることになることがあり、刺激の場の空間的範囲が、目標とする神経の機能を調節するためには不十分となることがある。更に、そのような長い軸索は、ここに開示するように、まさに、治療的介入で刺激しようとするものである。
【0093】
したがって、本発明は、このような長い神経に対して平行に配向することのできる長い電場を形成することを目的とする。ここで使用される用語「電場を形成」は、患者内の所与の刺激深度で一般に半径方向に対象的ではない電場またはその勾配、特に、細長くまたは指状に特徴がある場、更に、いくつかの方向における場の強さが1よりも多くの空間的最大値(すなわち、バイモダルまたはマルチモダル)を示し、その最大値間の組織が、横断する誘導電流を制限される領域を有する場を形成することを意味する。電場の形成は、その中に重要な電場が存在する領域に外接すること、及び、その領域内の電場の方向を設定することの双方を指す。電場の形成は、SIMON et al.に対する「磁気刺激デバイス及び治療方法」と題し、同一人に譲渡された出願US20110125203(出願番号12/964050)に記載されており、参照することにより、ここに包含される。
【0094】
したがって、本発明は、CARBUNARU及びDurandにより開示された、患者を経皮的に刺激するために使用される電場を意図的に形成することによるデバイスとは相違する。一方、CARBUNARU及びDurand公報のトロイドは、均質導電性半空間内に浸漬されており、これは本発明については、必要ないケースである。本発明は、全体的に、デバイスのコイルと患者の皮膚との間にいくつかの連続的導電路を有することになるが、導電媒体は全体的にコイルを浸漬する必要はなく、導電媒体内に絶縁ボイドを有しても良い。例えば、デバイスが2つのトロイドを包含すると、導電材料はトロイドのそれぞれを患者の皮膚に接続するが、導電材料が各トロイドに接続されて、患者に接触する面間に、絶縁ギャップ(空気または他の絶縁体から)が存在することがある。更に、皮膚に接触する導電材料の領域は、虹彩絞り等の開口調節機構を使用して可変としても良い。他の実施例として、コイルが、積層されたコア材料の回りに巻回されると、コアがデバイスの導電材料に接触した状態で、積層間の誘導電流を患者の皮膚の表面の方向に導くように、積層が導電材料内に延びても良い。他の実施例として、導電材料は、患者の皮膚に接触する前に、絶縁されたメッシュの開口を挿通し、これにより、電場最大値の列を形成しても良い。
【0095】
上記引用の論文では、Carbunaru−FAIERSTEINは、KCl溶体内の寒天以外に導電材料を使用する試みはなされておらず、また、その容器から導電材料が漏出することなく、都合よくかつ安全に患者の皮膚に適用することができるデバイスを考案する試みをなされていない。したがって、本発明の目的は、導電材料の導電性を適用し、境界状態を選択し、これにより、上述のように電場及び電流を形成するだけでなく、体の任意の表面に実際的に適用することのできるデバイスを作成する導電材料を開示することである。導電媒体を収容する容器の容積は、
図2Aに351としてある。導電媒体351の容器の使用は、現在の磁気刺激装置を使用して生成されるものに相当するが、磁気刺激コイルに慣例的に適用される電流の約0.001パーセントから約0.1パーセントである組織内に電場(及び、電場勾配及び電流)を皮膚に生成(誘導)することを可能とする。これは、コイル(複数を含む)の最小加熱及びより深い組織の刺激を可能とする。しかし、導電媒体を患者の表面に適用することは、実際には実行が困難であり、これは、組織外形(頭、腕、脚、首等)が平坦でないからである。この問題を解決するため、本発明の好ましい実施形態では、トロイダルコイルは、以下に説明するように、筋肉組織とほぼ同じ導電性を有する導電媒体を充填された組織内に埋設される。
【0096】
本発明の1つの実施形態では、容器は孔を有し、したがって、導電材料(例えば、導電ゲル)をこの孔を通して患者の皮膚に物理的に接触することが可能である。例えば、導電媒体351は、コイルを囲み、ゲルデオドラント(例えば、Dial社、15501 N. Dial Boulevard, Scottsdale AZ 85260によるライドガードクリアゲル(Right Guard Clear Gelであり、その1つの合成物は、アルミニウムクロロハイドライト、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリジメチルシロキサンシリコンオイル、シクロメチコン、エタノール/SDアルコール40、ジメチコーンコポリオール、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレックスグリシン、および水)の近似粘度及び機械的粘稠度を有する導電性ゲルを充填されるチャンバを有しても良い。従来の電極ゲルよりも粘度の低いゲルが、チャンバに保持され、患者の皮膚に接触するデバイスの端部の開口にメッシュを設けてある。ゲルは漏出せず、簡単なねじ駆動ピストンを省略することができる。
【0097】
他の実施形態では、容器自体は導電性エラストマ(例えば、乾燥したカーボンが充填されたシリコーンエラストマ)で形成され、患者との電気接触は、エラストマ自体を通し、場合によっては、導電材料の追加の外側コーティングを通して行われる。発明のいくつかの実施形態では、導電媒体は、導電ゲルまたは導電粉末を充填されたバルーンでも良く、あるいは、バルーンは変形可能な導電性エラストマから構築しても良い。バルーンは、皮膚表面に適合し、空気を除去し、したがって、高インピーダンス整合及び組織内の大きな電場の伝導を可能とする。PHILLIPS et al.による特許第US7591776に記載のような、磁気刺激装置及び刺激コイルと題するデバイスは、コイル自体を体の外形に適合するが、好ましい実施形態では、このような湾曲コイルは、更に、皮膚に隣接するように変形する導電媒体を充填された容器により、囲まれる。
【0098】
寒天は、導電媒体の一部として使用することが可能であるが、時間の経過で劣化し、皮膚に対して使用することは理想的ではなく、患者及び刺激コイルの洗浄に困難であるため、好ましくはない。導電媒体として4M KCl溶液の寒天を使用することが、上記引用した論文に言及されており、すなわち、Rafael Carbunaru FAIERSTEIN,Coil Designs for Localized and Efficient Magnetic Stimulation of the Nervous System. Ph.D. Dissertation, Department of Biomedical Engineering,Case Western Reserve,1999年5月、117頁(UMI Microform Number:9940153,UMI Company,Ann Arbor MI)。しかし、導電媒体が任意配向を有する患者の皮膚の全体的に非平坦な外形に適合するのを可能とするために、その公報は寒天を導電エラストマバルーン、または、他の変形可能な容器内に配置することは述べていない、または示唆していない。実際、その公報は、導電溶液を充填された容器内に浸漬されるようにコイルを説明する。コイル及び容器は、垂直方向に配向された体表面に配置された場合、それから、導電溶液は漏出し、その配向内で体表面を刺激することを不可能とする。反対に、本発明は、任意配向を有する体表面を刺激することが可能である。
【0099】
その論文は、寒天を患者の皮膚と接触させる分配方法について何も言及していない。電解ゲルの層が、皮膚とコイルとの間に適用されることは言及されてきたが、しかし、公報にはその構成は明瞭に説明されていない。特に、寒天と接触する電解ゲルの説明はなされていない。
【0100】
導電媒体として寒天を使用することよりむしろ、コイルは、代わりに、1〜10%NaCl等の導電媒体内に浸漬可能であり、人組織に対する導電インターフェースに接触することができる。このようなインターフェースは、電流がコイルから組織内に流れることを可能とし、媒体で囲まれたトロイドを支え、完全に密封される。したがって、インターフェースは、導電媒体(例えば、生理食塩水)を、それを介してゆっくり漏洩するのを可能とし、皮膚に対して電流が流れるのを可能とする材料である。複数のインターフェースを以下のように開示する。
【0101】
1つのインターフェースは、29400レイクランド大通り,ウィクリフ,オハイオ州44092に住所を有するLubrizo社のTecophlic等の親水性導電材料を包含する。これは、水中でその重さの10〜100%を吸収し、高度の導電性とし、一方、最小量の流体流のみを可能とする。
【0102】
インターフェースとして使用され得る他の材料は、標準のEEG、EKG及びTENS電極で使用されるようなヒドロゲルである(Rylie A GREEN,Sungchul Baek,Laura A Poole−Warren及びPenny J Martens. Conducting polymer−hydrogels for medical electrode applications. Sci. Technol. Adv. Mater. 11(2010)014107(13pp))。例えば、次の低刺激性、静菌性電極ゲル、すなわち、286 エルドリッジ通り, フェアフィールド ニュージャージー州 07004に住所を有するParker Laboratories Inc.社のSIGNAGEL Electrode Gelであっても良い。
【0103】
第3のタイプのインターフェースは、コンデンサの製造に使用されるような高誘電率の非常に薄い材料で作っても良い。例えば、Mylarは、サブミクロンの厚さで、約3の誘電率を有することができる。したがって、数キロヘルツ以上の刺激周波数で、Mylarは、皮膚自体に相当するインピーダンスを有するため、それを通して信号を容量結合する。したがって、トロイドと組織から埋設された溶液とを分離し、電流を通過可能とする。
【0104】
図2Aの磁気刺激コイル341の好ましい実施形態は、2つのトロイドを並べて使用し、2つのトロイダルコイルに反対方向の電流を流すことにより、トロイダルコイルの囲む必要のある導電材料の容積を減少する。この構成では、誘導電流は1つのトロイドのルーメンから組織を通って流れ、他のルーメンを介して戻り、トロイドの導電媒体内に回路を完成する。したがって、一対のコイル間の間隙から近くに位置するトロイド外側の外側の回りに、導電媒体の最小スペースが必要である。この構成における2つのトロイドを使用する追加の利点は、このデザインはその間の電場勾配の大きさが大きく増大し、これは、迷走神経及び他の抹消神経のように長く、真っすぐな軸索を興奮させるために重要である。
【0105】
磁気刺激デバイスのこの好ましい実施形態は、
図3に示してある。
図3A及び3Bはそれぞれトロイダル磁気刺激器30の外面の上部及び底部の図を記載する。
図3C及び3Dは、それぞれ刺激器の内側を露出するために、その長手方向軸に沿って切り取った後の、トロイダル磁気刺激器30の上部及び底部の図を記載する。
【0106】
図3A〜3Dは、神経または組織刺激位置で、導電ゲルを刺激器の内側から患者の皮膚の表面に通すことができる開口を有する網31を示す。したがって、開口31を有する網は、患者の皮膚に適用する刺激器の一部である。
【0107】
図3B〜3Dは、刺激器30の反対側端部の開口を示す。開口の1つは、刺激コイル(複数を含む)からインパルスジェネレータ(
図2Aの310)にワイヤを挿通する電子回路用ポート32である。第2開口は、導電ゲルポート33であり、これを通して導電ゲルが刺激器30内に導入され、ねじ駆動ピストンアームが導入されて網31を通して導電ゲルを分配する。ゲル自体は、円筒状であるが、導電媒体チャンバ34内に連結されており、これは
図3C及び3Dに示してある。導電媒体チャンバ34の深さは、刺激器の長手方向軸のほぼ高さであり、デバイスで誘導される電場及び電流の強さに影響する(Rafael CARBUNARU及びDominique M. Durand. Toroidal coil models for transcutaneous magnetic stimulation of nerves. IEEE Transactions on Biomedical Engineering. 48(4,2001):434−441)。
【0108】
図3C及び3Dは、トロイダルコア36の回りに巻回されたワイヤ35のコイルを示し、高透磁率材料(例えば、Supermendur)を有する。コイル35のリードワイヤ(図示しない)が、刺激コイル(複数を含む)から、電子回路ポート32を介してインパルスジェネレータ(
図1の310)に通る。異なる回路構成が考えられる。コイル35のそれぞれの別個のリードワイヤがインパルスジェネレータに接続(すなわち、平行接続)される場合、及び、コイルの対がコアの回りに同じ利き手で巻回される場合、電流が2つのコイルを通して反対方向に流れるようにデザインされる。一方、コイルがコアの回りを利き手と反対の手で巻回される場合、コイルのリードワイヤがインパルスジェネレータに直列に接続され、または、インパルスジェネレータに並列に接続される場合、両コイルを通して同じ方向に電流が流れるようにデザインされる。
【0109】
図3C及び3Dに示すように、コイル35及びコイルがその周りに巻回されるコア36は、導電ゲルが患者の皮膚の表面に通る開口を有する対応する網31にできる限り最適な位置に近接して装着される。
図3Dに示すように、各コイル及びその回りにコイルが巻回されるコアは、その自身のハウジング37内に装着され、その機能はコイル及びコアに対する機械的な支持を行うこと及びコイルをそれに隣接するコイルから電気的に絶縁することである。このデザインで、誘導電流は、1つのトロイドのルーメンから組織を通って流れ、他のルーメンを介して戻り、トロイドの導電媒体内に回路を完成する。
【0110】
径の異なるトロイダルコイル及び窓は、異なる用途に好ましいことがある。一般的な用途に対して、コアの外径は典型的には1〜5cm、内径は典型的には外径の0.5〜0.75でも良い。コアの回りのコイルの巻き線は、コアの径に従い、及び、所要のコイルインダクタンスに従い、その数は典型的には3〜250としても良い。
【0111】
磁気刺激器の信号ジェネレータは、商用システム(Chris HOVEY及びReza Jalinous,THE GUIDE TO MAGNETIC STIMULATION,The Magstim Company Ltd, Spring Gardens,Whitland,Carmarthenshire,SA34 0HR,英国,2006)、及び、制御ユニット330、インパルスジェネレータ310及び電源320のカスタムデザイン用として説明してきた。(Eric BASHAM,Zhi Yang,Natalia Tchemodanov,及びWentai Liu.、Magnetic Stimulation of Neural Tissue:Techniques and System Design.pp.293〜352,Implantable Neural Prostheses 1,Devices and Applications,D. Zhou and E.Greenbaum,eds.,ニューヨーク:Springer(2009);特許番号US7744523,題名Drive circuit for magnetic stimulation,Charles M. Epsteinによる;特許番号US5718662,題名Apparatus for the magnetic stimulation of cells or tissue,Reza Jalinousによる;特許番号US5766124,題名Magnetic stimulator for neuro−muscular tissue,Polsonによる)従来の磁気神経刺激器は、5000アンペア以上の放電電流を生成する高電流インパルスジェネレータを使用し、これは刺激コイルを通過し、これにより、磁気パルスを生成する。典型的には、変圧器がインパルスジェネレータ310のキャパシタを充電し、これは、更に、望ましくない電気的過渡現象の効果を制限する回路素子を包含する。キャパシタの充電は、制御ユニット330の制御下であり、これは、キャパシタ電圧、電力及びユーザがセットした他のパラメータ等、並びに、適切な動作を確保する装置内の様々な安全インターロックからの情報を受け、更に、ユーザが刺激を作用させようとするときに、電子スイッチ(例えば、制御された整流器)を介して、キャパシタはコイルを通して放電される。
【0112】
インパルスジェネレータに、異なる時間で放電することが可能なキャパシタ列を追加することで、より大きな柔軟性を得ることができる。したがって、キャパシタの再充電を、列内の他のキャパシタを放電する間に、実行するように、列内のキャパシタを順に放電することにより、インパルス速度をより高速にし得る。更に、他のキャパシタを順に放電する間に、いくつかのキャパシタを放電し、キャパシタを、様々な抵抗を有する抵抗器を介して放電し、放電の極性を制御することにより、制御ユニットは、任意関数に近似するパルス形状を合成しても良い。
【0113】
磁気刺激器のインパルスジェネレータ、制御ユニット及び刺激コイルのデザイン及び使用方法は、比較可能な完全に電気的神経刺激装置のインパルスジェネレータ、制御ユニット及び電極(リード付き)のデザイン及び使用方法により、情報を与えられるが、磁気刺激器のデザイン及び使用方法は、多くの特別な考慮事項を考慮し、完全に電気的刺激方法の知識を磁気刺激方法に移送することを全体的に直接的にしないことを考慮する必要がある。このような考慮は、刺激の解剖学的位置の決定、及び、適切なパルス形状の決定を包含する(OLNEY RK,So YT, Goodin DS, Aminoff MJ.A comparison of magnetic and electric stimulation of peripheral nerves. Muscle Nerve 1990:13:957-963;J. NILSSON,M.Panizza,B.J.Roth et al.Determining the site of stimulation during magnetic stimulation of the peripheral nerve,Electroencephalographs and clinical neurophysiology 85(1992):253−264;Nafia AL−MUTAWALY,Hubert de Bruin,及びGary Hasey.The effects of pulse configuration on magnetic stimulation.Journal of Clinical Neurophysiology 20(5):361〜370,2003)。
【0114】
更に、磁気刺激コイルを使用することの潜在的な実質的不都合は、長時間にわたって使用したときに、過熱することがあることである。上述のトロイダルコイル及び導電媒体の容器の使用は、この潜在的な不都合に対処する。しかし、刺激コイルと神経組織との間の連結が不十分であるため、それにも関わらず、電場閾値に達するために大きな電流が必要である。高い繰り返し速度で、これらの電流は、電力レベル並びにパルス持続時間及び速度にしたがって、数秒から数分で許容できないレベルまでコイルを加熱することができる。加熱を克服する2つの方法は、流水でコイルを冷却しまたはフェライトコアを使用して磁場を増大すること(したがって、小電流を可能とする)である。高刺激周波数で比較的長い治療時間を必要とするいくつかの用途について、これらの2つのアプローチはいずれも適切ではない。水冷コイルは、数分で過熱する。フェライトコアコイルは、電流及びフェライトコアの熱容量がより低いため、よりゆっくり加熱するが、よりゆっくり冷却し、冷却水が流れるボリュームをフェライトコアが占めるため、水冷却はできない。
【0115】
この問題に対する解決は、強磁性流体のように、懸濁液中に磁性粒子を含有する流体、または、磁気粘性流体を冷却材料として使用することである。磁性流体は、キャリア流体、通常は有機溶剤または水に懸濁したナノスケールの強磁性体またはフェリ磁性粒子を有するコロイド混合物である。強磁性体ナノ粒子は、界面活性剤を被覆して凝集(ファンデルワールス力及び磁力による)を阻止してある。強磁性流体は、水よりも熱容量が大きく、したがって、より良い冷却材として作用する。更に、流体は、フェライトコアとして作用し、磁界強度を増大する。更に、強磁性流体は常磁性であるため、キュリーの法則にしたがい、したがって、より高温で磁性がより小さくなる。磁気刺激コイルで形成される強い磁界は、高温の強磁性流体よりも、冷たい強磁性流体を引き付け、したがって、加熱された強磁性流体をコイルから離隔させる。したがって、冷却はコイルを介する強磁性流体のポンピングを必要としないが、冷却のために簡単な対流システムのみを必要とすることになる。これは、追加のエネルギ入力を必要としなくても良い効果的な冷却方法である(特許番号US7396326及び公開出願US2008/0114199,US2008/0177128,及びUS2008/0224808,全ての題名Ferrofluid cooling and acoustical noise reduction in magnetic stimulators,それぞれGhiron et al.,Riehl et al.,Riehl et al.及びGhiron et al.による)。
【0116】
磁気粘性流体は、強磁性流体と同様であるが、より大きな磁性粒子を包含し、強磁性流体の単一磁区よりも、多磁区を有する。(特許番号US6743371,Magneto sensitive fluid composition and a process for preparation thereof,John et al.による)。これらは、強磁性流体よりも著しく高い透磁率と、キャリアに対する鉄のより高い堆積分率を有する。磁気粘性流体と強磁性流体との組み合わせを使用しても良い(M T LOPEZ−LOPEZ,P Kuzhir,S Lacis,G Bossis,F Gonzalez−Caballero及びJ D G Duran.Magnetorheology for suspensions of solid particles dispersed in ferrofluids.J.Phys.:Condens.Matter 18(2006)S2803-S2813;Ladislau VEKAS.Ferrofluids及びMagnetorheological Fluids.Advances in Science and Technology Vol.54(2008)pp.127〜136.)。
【0117】
市販の磁気刺激器は円形、パラボラ状、8の字形(バタフライ)及び市販のカスタムデザインを包含する(Chris HOVEY及びReza Jalinous,THE GUIDE TO MAGNETIC STIMULATION,The Magstim Company Ltd,Spring Gardens,Whitland,Carmarthenshire,SA34 0HR,英国,2006)。磁気刺激コイル341の他の実施形態が記載されている(US特許6179770,題名Coil assemblies for magnetic stimulators,Stephen Mouldによる;Kent DAVEY.Magnetic Stimulation Coil and Circuit Design.IEEE Transactions on Biomedical Engineering,Vol.47(No.11,2000年11月):1493−1499)。このような従来の磁気刺激器に関連する多くの問題、例えば、インパルスジェネレータ回路装置の複雑さ、及び、過熱の問題は、
図3に示すトロイダルデザインで大きく回避される。
【0118】
したがって、導電媒体351の容器の使用は、現行の磁気刺激デバイスを使用して生成されるものと同等であるが、磁気刺激コイルに従来適用される電流の約0.001パーセントから約0.1パーセントである組織内に電場(及び電場勾配及び電流)を生成(誘導)可能とする。したがって、本発明では、比較的単純で、バッテリで駆動される低電力回路を有する
図2に示す波形を生成することが可能である。回路は、
図3Eに示すように、ボックス38内に囲んでも良く、または、回路は、手持ちデバイスとして使用される刺激器自体(
図3A〜3D)に取り付けても良い。いずれの場合も、ユニットの制御は、オン/オフスイッチ及びノブのみを使用して作成しても良い。必要とされることのある唯一の他の部材は、使用の間に導電流体を漏洩または乾燥から維持するためにカバー39が必要となることがある。磁気刺激器のコイルを流れる電流は、そのコアを飽和する(例えば、Suermendurコア材料に対して、0.1〜2テスラの磁界強度)。これは、各コイルにほぼ0.5〜20アンペアの電流、典型的には、各コイルの両端で10〜100ボルトの電圧で2アンペアを必要とする。電流は、
図2D及び2Eとの関係で説明するように、パルスのバーストとしてコイルを流れ、電場の効果を細長く成形する。
【0119】
電極ベースの刺激器の好ましい実施形態
【0120】
本発明の他の実施形態では、首の表面または体の他のいくつかの表面に適用される電極は、磁気コイルを介して神経にエネルギを送出することに代え、非侵襲的に磁気コイルを介して神経にエネルギを送出するために使用される。電極迷走神経は、皮膚の表面にリードを介して適用される電極を使用して、予め非侵襲的に刺激されてきた。更に、機械的振動の使用を通して、非電気的に刺激される(HUSTON JM, Gallowitsch−Puerta M,Ochani M,Ochani K, Yuan R,Rosas−Ballina M et al(2007).Transcutaneous vagus nerve stimulation reduces serum high mobility group box 1 levels and improves survival in murine sepsis.Crit Care Med35:2762-2768;GEORGE MS,Aston−Jones G.Noninvasive techniques for probing neurocircuitry and treating illness:vagus nerve stimulation(VNS),transcranial magnetic stimulation(TMS)及びtranscranial direct current stimulation(tDCS).Neuropsychopharmacology 35(1,2010):301−316)。しかし、脳卒中または一過性脳虚血発作の患者の治療に非侵襲性迷走神経刺激の使用を向けたことの報告はない。「Methods of indirectly stimulating the vagus nerve to achieve controlled asystole」と題し、John D. PUSKASによるUS特許7340299は、患者の首に配置した電極を使用する迷走神経の刺激を開示するが、患者は脳卒中または一過性脳虚血発作に関連しない。迷走神経の非侵襲性電気も、Fukui YOSHIHOTOによる2008年3月26日付け「Vagus Nerve Stimulation System」と題する日本特許出願JP2009233024Aに開示してあり、ここでは、体表面電極が、迷走神経を電気的に刺激するために首に適用される。しかし、この出願は、心拍のコントロールに関係し、脳卒中または一過性脳虚血発作の治療には関係しない。LESSER et al.による「System and method for treating nausea and vomiting by vagus nerve stimulation」と題する特許公報US20080208266では、電極が首の迷走神経を刺激し、吐き気及び嘔吐を緩和するために使用されるが、これも、脳卒中または一過性脳虚血発作には関係しない。
【0121】
DIETRICH et al.による「Device and method for the transdermal stimulation of a nerve of the human body」と題する特許出願US2010/0057154は、迷走神経が外耳道の皮膚内の通路を有する解剖学的位置で、迷走神経を刺激する非侵襲的な経皮性の/経皮方法を開示する。その非侵襲的方法は、痛みの治療(経皮的電気神経刺激)、筋肉トレーニング(電気的筋肉刺激)及び所定の経絡点の電気的鍼療法のために抹消神経及び筋肉刺激に使用するものと同様な表面刺激を使用してその位置で電気的刺激を実行することを包含する。この出願に使用する方法は、電気鍼療法のための、McCALLによる「Electrical pulse acupressure system」と題するUS特許4319584、痛み治療のための、KIM et al.による「Auricular electrical stimulator」と題するUS特許5514175、及び、結合した音響/電気鍼療法のための、COLSEN et al.よる「Combined sound generating device and electrical acupuncture device and method for using the same」と題するUS特許4966164に使用されるものと同様である。関連する出願は、LIBBUS et al.による「Stimulator for auricular branch of vagus nerve」と題するUS2006/0122675である。同様に、特許第US7386347、CHUNG et al.による「Electric stimilator for alpha−wave derivation」と題するは、耳における迷走神経の電気刺激を説明する。AMURTHURら et al.よる「Systems and Methods for Stimulating Neural Targets」と題する特許出願US2008/0288016も、耳における迷走神経の電気刺激を開示する。ECKERSONによる「Method and apparatus for drug free neurostimulation」と題するUS特許4865048は、薬物離脱の症状を治療するために、乳様突起上の耳の背部の迷走神経のブランチの電気刺激を説明する。KRAUS et al.は、耳の同様な刺激方法を記載する(KRAUS T,Hosl K,Kiess O,Schanze A,Kornhuber J,Forster C(2007).BOLD fMRI deactivation of limbic and temporal brain structures and mood enhancing effect by transcutaneous vagus nerve stimulation.J Neural Transm114:1485-1493)。しかし、耳における迷走神経の電気刺激に対するこれらの特許または特許出願のいずれも、脳卒中または一過性脳虚血発作を治療するために用いるものではない。
【0122】
特許発明の実施形態は、使用する電極の数、電極間の距離、及び、使用される電極がディスクまたはリングかどうかに関して相違することもある。方法の好ましい実施形態では、皮膚の表面に過度の電流を生成することなく、選択した神経に最適の電場及び電流を集めるような方法で、各患者に対して電極構成を選択する。この局地化と表面電流との間のトレードオフはDATTA et al.で説明されている(Abhishek DATTA,Maged Elwassif,Fortunato Battaglia and Marom Bikson.Transcranial current stimulation focality using disc and ring electrode configurations:FEM analysis.J.Neural Eng.5(2008):163-174)。DATTA et al.は、特に、経頭蓋電流刺激のための電極構成の選択に対処しているが、それらの記載する原理は抹消神経にも適用可能である(RATTAY F.Analysis of models for extracellular fiber stimulation. IEEE Trans.Biomed.Eng.36(1989):676-682)。
【0123】
双方が電気インパルスの形状を制御する
図2Aの神経刺激デバイス301及び
図2Bの神経刺激デバイス302を考察すると、一方が磁界のパルスを介して神経を刺激し、他方が表面電極を通して電気パルスを介して神経を刺激することを除いて、その機能は類似している。したがって、神経刺激デバイス301に対して列挙した全体的な特徴は、後者の刺激デバイス302にも当てはまり、ここでは繰り返さない。各神経刺激デバイスの好ましいパラメータは、所要の理療効果を生成させるものである。
【0124】
電極ベースの刺激器の好ましい実施形態は、
図4Aに示してある。長手軸に沿う刺激器の断面図を
図4Bに示してある。図示のように、刺激器(730)は、2つのヘッド(731)とこれらを結合するボディ(732)とを有する。各ヘッド(731)は刺激電極を有する。刺激器(732)のボディは、電極を駆動する信号の生成に使用される電子素子とバッテリ(図示しない)とを有し、これらは、
図4Bに示す絶縁基板(733)の背部に配置される。しかし、本発明の他の実施形態では、電極に適用する信号を生成する電子素子は分離していても良いが、ワイヤを使用して電極ヘッド(731)に接続される。更に、本発明の他の実施形態は、単一のこのようなヘッドまたは2つより多くのヘッドを有しても良い。
【0125】
刺激器(731)のヘッドは、患者の体の表面に適用され、この際、刺激器はストラップまたはフレームまたはカラーで所定位置に保持され、または、刺激器は患者の体に手で保持されることもある。いずれの場合も、刺激力のレベルは、オン/オフスイッチとしても作用するホイール(734)で調節しても良い。ライト(735)は、電力が刺激器に供給されたときに、照明される。選択可能なキャップが、シミュレータのヘッド(731)のそれぞれをカバーするように設け、使用してないときにデバイスを保護し、偶発的な刺激を避け、ヘッド内の材料が漏洩しまたは乾燥するのを防止する。したがって、本発明のこの実施形態では、刺激器の機械的かつ電子的な構成部材(インパルスジェネレータ、制御ユニット及び電力源)はコンパクトで、携帯可能で、操作が単純である。
【0126】
刺激器ヘッドの1つの実施形態の詳細が
図4C及び4Dに示してある。電極ヘッドは開窓無しのディスク(743)、または、代替的に誘電体若しくは導電までのタンブールとして作用するスナップ式キャップから組み立てても良く、または、代替的にヘッドは固体有窓ヘッドキャップを有しても良い。電極は、ねじでも良い(745)。ディスク(743)の好ましい実施形態は、固体で、通常の均質な導電ディスク(例えば、ステンレス鋼等の金属)であり、これは、いくつかの実施形態では場合により可撓性である。ディスクの他の実施形態は、非導電性(例えば、プラスチック)の開口スクリーンで、その開口、例えば開口(開窓)列を通して電流を通すことができる。各刺激器ヘッドに見える電極(745、更に、
図2Bの340)は、その先端が平坦なねじの形状を有しても良い。先端を尖らせることは、電極をよりポイントソースとし、電位に対する式は、遠距離場近似値に対してより密に対応する解を持つことになる。電極面を丸めること、または、表面を他の形状に形成することは、同様に、電場を決定する他の境界条件に影響を及ぼす。刺激器の完成した組立体を
図4Dに示してあり、これは、更に、刺激器(747)のボディにヘッドに取り付ける方法を示す。
【0127】
膜を使用する場合、これは、通常、
図2Bに351として示すインターフェースとして作用する。例えば、膜はマイラー(BoPETととしても知られている2軸配向ポリエチレンテレフタレート)の薄いシート等の誘電体(非導電性)材料で形成しても良い。他の実施形態では、29400レイクランド大通り,ウィクリフ,オハイオ州 44092に住所を有するLubrizol社の、Tecophlic材料のシート等、導電材料で形成しても良い。他の実施形態では、ディスクの開口部を開放し、または、例えば4020 ガネット大通り,デモイン アイオワ州 50321に住所を有するKatecho社のKM10Tヒドロゲルである導電材料で塞いでも良い。開口がこのようにプラグで塞がれた場合、膜は導電材料で形成され、この膜は選択可能であり、プラグは
図2Bに示すようにインターフェース351として作用する。
【0128】
ヘッドカップ(744)は、例えば286エルドリッジ通り,フェアフィールド ニュージャージー州 07004に住所を有するParker Laboratories社のSIGNAGEL Electrode Gelである導電材料(
図2Bの350)を充填されている。刺激器のヘッドカップ(744)及びボディは、アクリロニトリルブタジエンスチレン等の非導電材料で形成される。ヘッドカップのその帳面から電極までの深さは、1〜6センチメートルとしても良い。ヘッドカップは、
図4に示すものと異なる曲線を有し、または、チューブ状若しくは円錐状でも良く、または、電場強度を決定するノイマンの境界条件に影響する内面の幾何学形状を有しても良い。
【0129】
特定の実施形態では、ディスクインターフェース743は実際に電極として機能し、ねじ745は単に、信号ジェネレータ電極に対する出力接続部である。この実施形態では、導電流体またはゲルは、信号ジェネレータと、インターフェースまたは電極745との間に位置する。この実施形態では、導電流体は、電極(複数を含む)745に到達する前に、信号から高周波成分を除去または取り除かれる。信号が生成されるときに、電力のスイッチング及び電気ノイズは、典型的に望ましくない高周波スパイクが加わり、信号に戻される。更に、正弦曲線のパルスのバーストが、信号に高周波成分を誘導する。導電流体で電極745に達する直前に信号をフィルタリングすることにより、滑らかで、清浄な信号が患者に適用され、これにより、患者が感じる痛み及び不快を低減し、患者により高い振幅を作用させることを可能とする。これは、患者の皮膚の表面に多くの痛み及び不快を生じさせることなく、迷走神経等のより深い神経に到達する十分に強い信号を作用させることができる。
【0130】
他の実施形態では、ローパスフィルタを、導電流体に代えて、信号の望ましくない高周波成分を除去するために使用しても良い。ローパスフィルタは、デジタル若しくはアナログフィルタ、または、単に、信号ジェネレータと電極/インターフェースとの間に直列に配置されるキャパシタを備えても良い。
【0131】
外側膜が使用され、導電材料で形成される場合、及び、
図4Cのディスク(743)がステンレス鋼等の固体導電材料で形成される場合、膜は選択物となり、この場合、ディスクは
図2Bに示すインターフェース351として作用しても良い。したがって、膜のない実施形態が
図4C及び4Dに示してある。デバイスのこのバージョンは、流体を吸収できない固体(いくつかの実施形態では、可撓性とすることもできる)の導電ディスクと、ディスクが内部または上に配置される非導電刺激ヘッド(744)と、電極(745)とを備え、これは、ねじでもある。ディスク(743)は異方性材料または電気的構造を有しても良く、ここに、ステンレス鋼のディスクは、ディスクのグレインが刺激ヘッド上のその位置の回りに回転するようにグレインを有し、患者に最適の電気刺激を与えることが理解される。
図4Dに示すように、これらのアイテムは組み立てられ、刺激器(747)のボディに取り付けられるシールされた刺激ヘッドとなる。ディスク(743)は刺激器ヘッド(744)にねじ込まれても良く、接着剤でヘッドに取り付けても良く、または、当該分野で既知の他の方法で取り付けても良い。刺激ヘッドカップのチャンバは導電ゲル、流体またはペーストを充填され、ディスク(743)及び電極(745)が刺激ヘッドカップ(744)に対して堅くシールされるため、刺激ヘッド内の導電材料は漏出することができない。更に、この特徴は、(例えば、イソプロピルアルコールまたは同様な消毒剤で)ユーザがデバイスの外面を容易に清浄にすることを可能とし、デバイスを続いて使用する際の汚染の可能性を回避する。
【0132】
いくつかの実施形態では、インターフェースは、材料の透過性部分を通して電流を流すことが可能な流体透過性材料を有する。これらの実施形態では、導電媒体(ゲル等)は、電極(複数を含む)と透過性インターフェースとの間に位置することが好ましい。導電媒体は、電子の導通路を形成し、透過性インターフェースを通してインターフェースの外面及び患者の皮膚に通過する。
【0133】
本発明の他の実施形態では、インターフェース(
図2Bにおける351)は、キャパシタを形成するために使用される材料等、高誘電率の非常に薄い材料から形成される。例えば、約3の誘電率を有するサブミクロンの厚さ(約0.5〜約1.5ミクロンの範囲が好ましい)を有するマイラーとしても良い。マイラーの一側は滑らかで、他側は微視的に粗いため、本発明は2つの異なる構成を考慮しており、その1つは、滑らかな側が患者の皮膚側に配向され、他は粗い側がそのように配向されることである。したがって、数キロヘルツ以上の刺激フーリエ周波数で、誘電体インターフェースはそれ自体を通して信号を容量結合し、これは、皮膚に相当するインピーダンスを有するからである。したがって、誘電体インターフェースは、刺激器の電極を組織から分離するが、しかし電流を通す。本発明の1つの実施形態では、神経の非侵襲性電気刺激は、本質的に、実質的に容量的に達成され、これは、抵抗刺激(ohmic stimulation)の量を減少し、これにより、患者が皮膚表面に感じる感覚を低減する。これは、抵抗連結(ohmic coupling)よりも、刺激器インターフェースを介する容量連結からくる、例えば、神経を刺激するエネルギの少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%である状況に対応する。換言すると、電圧降下のかなりの部分(例えば、50%)は、誘電体インターフェースを横切り、一方、残りの部分は組織を通る。
【0134】
特定の例示的な実施形態では、インターフェース及び/またはその基礎となる機械的サポートは、デバイスの内部のかなりのまたは完全なシールを提供する。これは、ゲル等の導電材料がデバイスの内部からのいかなる漏洩も防止し、更に、いかなる流体もデバイス内に入るのも防止する。更に、この特徴は、(例えば、イソプロピルアルコールまたは同様な消毒剤で)ユーザが容易に誘電体材料の表面を清浄にするのを可能とし、続いてデバイスを使用する際の潜在的な汚染を阻止する。1つのこのような材料はマイラーの薄いシートであり、上述のように、ステンレス鋼のディスクで支持される。
【0135】
誘電率のための材料の選択は、少なくとも2つの重要な変数を有し、つまり、(1)インターフェースの厚さ、及び、(2)材料の誘電率である。材料のインターフェースがより薄く及び/または誘電率がより高くなると、誘電体インターフェースを横断する電圧低下がより減少する(及び、したがって、必要とする駆動電圧が低下する)。例えば、マイラーでは、約3の誘電率で厚さは約0.5〜約5ミクロン(好ましくは約1ミクロン)とすることができる。チタン酸バリウムまたはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料に対して、誘電率は>1000であるため、厚さは、約100〜400ミクロン(好ましくは、約200ミクロンまたは約0.2mm)とすることができる。
【0136】
非侵襲的容量性刺激器(以下、より一般的に、容量性電極と称する)である実施形態の1つの新規な点は、低電圧(一般には、100ボルトより下)の電源を使用することであり、これは、ここに開示する波形等の適切な刺激波形を使用することにより可能とする(
図2)。更に、容量性電極は、デバイスの内部のより適切なシールを提供するインターフェースの使用を可能とする。容量性電極は、少量の導電材料(例えば、上述のような導電性ゲル)をその外面に適用することにより使用しても良い。いくつかの実施形態では、乾燥した皮膚に接触することで使用してもよく、これにより、導電ゲル、ペーストまたは他の導電材料を患者の皮膚に塗布することの不便さを回避し、電極ペースト及びゲルの乾燥に伴う問題を回避する。このような電極は、皮膚に電極ゲルを接触させた後に皮膚炎を起こす患者に使用するのに特に適している(RalphJ.COSKEY.Contact dermatitis caused by ECG electrode jelly.Arch Dermatol 113(1977):839−840)。容量性電極は更に、湿った(水道水または従来の電解質材料で)皮膚に接触し、電極−皮膚接触(ここでは誘電体接触)をより均一にしても良い(A L ALEXELONESCU,G Barbero,F C M Freire,及びR Merletti.Effect of composition on the dielectric properties of hydrogels for biomedical applications.Physiol.Meas.31(2010)S169-S182)。
【0137】
後述するように、容量性生物医学的電極は当該分野で知られているが、しかし、神経を非侵襲的に刺激するために使用されたときに、刺激を実行するために、高電圧電力が現在使用されている。別の面では、容量性生物医学的電極の先使用は、侵襲的埋込型用途、信号のモニタリングまたは記録を含むが組織の刺激は含まない非侵襲的用途、神経以外の何か(例えば、腫瘍)の刺激を含む非侵襲的用途、または、電気外科手術における分散電極として制限されている。
【0138】
長年解決されていなかった要望の証拠、及び、本発明(神経の低電圧、非侵襲的容量性刺激)のこの実施形態で解決された問題を他が解決するのを失敗した証拠がKELLER及びKuhnで提供されており、彼らはGEDDES et alの先の高電圧容量性刺激電極を検討し、「誘電体材料の高電圧破壊の固有の危険を取り除くのが可能なときに、容量性刺激は筋肉神経及び繊維を活性化する好ましい方法である。今後の研究の目的は、高刺激電圧を降下できるように改善された極薄誘電体箔の開発とすることができる」と記述する(L.A.GEDDES,M.Hinds,及びK.S.Foster.Stimulation with capacitor electrodes.Medical and Biological Engineering and Computing 25(1987):359−360;Thierry KELLER及びAndreas Kuhn.Electrodes for transcutaneous(surface)electrical stimulation.Journal of Automatic Control,University of Belgrade 18(2,2008):35−45,39頁)。合衆国では、2005年米国電気工事規定により、高電圧は600ボルト超える任意の電圧であることが理解される。BARTROW et al.による「Electro−physiotherapy apparatus」と題するUS特許3077884、HICKEYによる「Neuromuscular therapy device」と題するUS4144893、及び、TANRISEVERによる「High voltage transcutaneous electrical stimulation device and method」と題するUS7933648は、更に高電圧容量性刺激電極について記載する。JUOLA et al.による「Capacitive medical electrode」と題するUS特許7904180は、意図した用途として経皮的神経刺激を含む容量性電極を記載するが、しかし、この特許は経皮的刺激に使用するための刺激電圧または刺激波形及び周波数について記載しない。PALTIによる「Electrodes for applying an electric field in−vivo over an extended period of time」と題するUS特許7715921、及び、PALTIによる「Treating a tumor or the like with an electric field」と題するUS7805201は、更に、容量性刺激電極について記載するが、これらは腫瘍の治療を意図しており、神経を含む使用について記載しておらず、50kHzから約500kHzの範囲の刺激周波数について説明する。
【0139】
本発明のこの実施形態は、開発中の極薄誘電体箔よりも高刺激電圧を低下させるため、すなわちここに開示の波形(
図2)のような適切な刺激波形を使用するために異なる方法を使用する。この波形は、現在実行されている経皮的神経刺激対して使用されている波形よりも、より高い周波数で、かなりのフーリエ成分を有する。したがって、経皮的神経刺激は、低周波数でのみかなりのフーリエ成分を有し、非侵襲的容量性神経刺激はより高い周波数で実行されるため、当業者は請求の範囲の要素を組み合わせない。実際、組み合わせ内の要素は、各要素が別個に実行する機能を実行するものではない。誘電体材料は、高刺激電圧ではあるが、抵抗刺激に関連するよりもより均一な電流密度で、単独で、ペースト無しまたはドライ刺激を実行するために皮膚に接触させて配置しても良い(L.A.GEDDES,M.Hinds,及びK.S.Foster.Stimulation with capacitor electrodes.Medical and Biological Engineering and Computing 25(1987):359−360;Yongmin KIM,H.Gunter Zieber,及びFrank A.Yang.Uniformity of current density under stimulating electrodes.Critical Reviews in Biomedical Engineering 17(1990,6):585−619)。波形部材に関して、経皮的神経刺激に現在使用されている波形よりも高い周波数でかなりのフーリエ成分を有する波形が、非容量性及び容量性電極の双方に対してここに記載するように、選択的に深部の神経を刺激し、他の神経を刺激しないように使用することができる。しかし、現在実行されているように高い刺激電圧を使用することなく、神経を容量的に刺激することを可能とする2つの要素(誘電体インターフェース及び波形)の組み合わせである。
【0140】
電極ベースの刺激器の他の実施形態が
図5に示してあり、ここでは、導電材料が患者の皮膚に対するデバイスから省略して示してある。この実施形態では、インターフェース(
図2Bの351)は導電材料自体である。
図5A及び5Bは、それぞれ電気刺激器50の外面の上部及び底部の図を示す。
図5Cは、刺激器の内部を表すために長手方向軸に沿って切断した後の刺激器50の底部の図を示す。
【0141】
図5A及び5Cは、導電ゲルを刺激器の内側から、刺激する神経または組織の位置で患者の皮膚の表面まで通過させることを可能にする開口を有する網51を示す。したがって、開口51を有する網は、患者の皮膚に適用される刺激器の一部であり、これを通して導電材料が分配される。任意の所与の刺激器では、
図5Aの2つの網開口51間の距離は一定であるが、網間距離が異なると、異なる刺激を構築し、各患者の解剖学的構造及び生理機能に対応しても良いことが理解される。代替的に、網間距離は1個の双眼鏡の対眼レンズのように、変更可能としても良い。カバーキャップ(図示しない)も刺激器ハウジング及び網開口51の上部にぴったり合うように設けられ、デバイスを使用しないときに、ハウジングの導電媒体が漏出しまたは乾燥しないように維持する。
【0142】
図5B及び5Cは自給式刺激器50を示す。オン/オフスイッチ52がポート54を介して取り付けられ、パワーレベルコントローラ53が他のポート54を介して取り付けられる。スイッチはバッテリ電力源(
図2Bの320)に接続され、パワーレベルコンタクトは、デバイスの制御ユニット(
図2Bの330)に取り付けられる。電源バッテリ及びパワーレベルコントローラ、及び、インパルスジェネレータ(
図2Bの310)は、刺激器50のハウジングの後部部材55内に配置される(図示してない)。
【0143】
各ワイヤ(図示しない)は、インパルスジェネレータ(
図2Bの310)を刺激器の電極56に接続する。2つの電極56は、ここでは、刺激器50のヘッド区画57と後部区画55との間に位置する楕円状の金属ディスクとして示してある。仕切り58が2つのヘッド区画57を互いに分離し、かつ、単一の後部区画55から分離する。各仕切り58は、更に、対応する電極を所定位置に保持する。しかし、各電極56は、導電ゲル(
図2Bの350)を各ヘッド区画57に加えるために除去しても良い。選択的な非導電可変開口虹彩絞を、各電極の有効表面領域を変更するために、ヘッド区画57内で電極のそれぞれの前部に配置しても良い。各仕切り58は、更に、網開口51を通して導電ゲルを分配するために、デバイスのヘッドの側にスライドしても良い。各仕切り58位置は、したがって、その電極56と網開口51と間の距離59を定め、これは、最適な均一な電流密度を、網開口51を通して得られるために、変更可能である。刺激器50の外側ハウジング、並びに、各ヘッド区画57ハウジング及びその仕切り58は、アクリロニトリルブタジエンスチレン等の電気絶縁材料で形成され、したがって、2つのヘッド区画は互いに電気的に絶縁される。
図5の実施形態では非容量性刺激器として示してあるが、網開口51をマイラーのシート等の誘電体材料で置き換えることにより、または、網開口51をそのような誘電体材料で覆うことにより、容量性刺激器に変換しても良いことが理解される。
【0144】
図2Bに示す電極ベースの刺激器の好ましい実施形態では、電極は、ステンレス鋼、プラチナまたはプラチナ−イリジウム合金等の金属で形成される。しかし、他の実施形態では、電極は多くの他のサイズ及び形状に形成しても良く、他の材料で形成しても良い(Thierry KELLER及びAndreas Kuhn.Electrodes for transcutaneous(surface)electrical stimulation.Journal of Automatic Control,University of Belgrade,18(2,2008):35−45;G.M.LYONS,G.E.Leane,M.Clarke−Moloney,J.V.O’Brien,P.A.Grace.An investigation of the effect of electrode size and electrode location on comfort during stimulation of the gastrocnemius muscle.Medical Engineering&Physics26(2004)873-878;Bonnie J.FORRESTER及びJerrold S.Petrofsky.Effect of Electrode Size,Shape,and Placement During Electrical Stimulation.The Journal of Applied Research 4,(2,2004):346−354;Gad ALON,Gideon Kantor及びHenry S.Ho.Effects of Electrode Size on Basic Excitatory Responses and on Selected Stimulus Parameters.Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy.20(1,1994):29−35)。
【0145】
例えば、刺激器の導電材料は非磁性でも良く、刺激器は長い非磁性ワイヤ(
図2Bの345)でインパルスジェネレータに接続しても良く、したがって、刺激器は、場合によっては磁気シールドを付加した強磁場の企画で使用しても良い。他の実施例として、2つより多くの電極があっても良く、電極は、多数の同心状リングを有しても良く、電極は、ディスク状でまたは非平坦形状を有しても良い。これらは、他の金属、または、異なる導電特性を有する炭素を含侵したシリコンゴム等の抵抗性材料で形成しても良い(Stuart F.COGAN.Neural Stimulation and Recording Electrodes.Annu.Rev.Biomed.Eng.2008.10:275-309;Michael F.NOLAN.Conductive differences in electrodes used with transcutaneous electrical nerve stimulation devices. Physical Therapy 71(1991):746−751)。
【0146】
電極は、導電材料の列を有しても良いが、
図4及び5に示す実施形態は、列またはグリッド電極の複雑さ及び費用を回避する(Ana POPOVIC−BIJELIC,Goran Bijelic,Nikola Jorgovanovic,Dubravka Bojanic,Mirjana B.Popovic,及びDejan B.Popovic.Multi−Field Surface Electrode for Selective Electrical Stimulation.Artificial Organs 29(6,2005):448-452;Dejan B.POPOVIC及びMirjana B.Popovic.Automatic determination of the optimal shape of a surface electrode:Selective stimulation.Journal of Neuroscience Methods 178(2009)174-181;Thierry KELLER,Marc Lawrence,Andreas Kuhn,及びManfred Morari.New Multi−Channel Transcutaneous Electrical Stimulation Technology for Rehabilitation.Proceedings of the 28th IEEE EMBS 年次国政会議 ニューヨーク市,米国,2006年8月30日〜9月3日(WeC14.5):194−197)。これは、
図4及び5に示すデザインが、均一な表面電流密度を形成するため、これは、そうでなければ電極列の潜在的な利点となり、多くの電極デザインで共有されない特徴である(Kenneth R.BRENNEN.The Characterization of Transcutaneous Stimulating Electrodes.IEEE Transactions on Biomedical Engineering BME−23(4,1976):337−340;Andrei PATRICIU,Ken Yoshida,Johannes J.Struijk,Tim P.DeMonte,Michael L.G.Joy,及びHans Stodkilde−Jorgensen.Current Density Imaging and Electrically Induced Skin Burns Under Surface Electrodes.IEEE Transactions on Biomedical Engineering 52(12,2005):2024−2031;R.H. GEUZE.Two methods for homogeneous field defibrillation and stimulation.Med.and Biol.Eng. and Comput.21(1983),518−520;J.PETROFSKY,E.Schwab,M.Cuneo,J.George,J.Kim,A.Almalty,D.Lawson,E.Johnson及びW.Remigo.Current distribution under electrodes in relation to stimulation current and skin blood flow:are modern electrodes really providing the current distribution during stimulation we believe they are?Journal of Medical Engineering and Technology 30(6,2006):368-381;Russell G.MAUS,Erin M.McDonald,及びR.Mark Wightman.Imaging of Nonuniform Current Density at Microelectrodes by Electrogenerated Chemiluminescence. Anal. Chem.71(1999):4944−4950)。実際、患者は、
図4及び5に示すデザインが市販のグリッドパターン電極と直接比較して痛みが少ないことを発見した(UltraStim grid−pattern electrode,Axelggard Manufacturing Company,520 Industrial Way, Fallbrook CA,2011)。容量性カップリングを使用する電極の実施形態は、均等な刺激電量の生成に特に適している(Yongmin KIM,H.Gunter Zieber,及びFrank A.Yang.Uniformity of current density under stimulating electrodes. Critical Reviews in Biomedical Engineering 17(1990,6):585−619)。
【0147】
図4及び5に示す電極ベースの刺激器デザインは、導電材料をチャンバ内で皮膚と電極との間に配置した状態で、チャンバ内で皮膚の表面から離隔して電極を配置する。このようなチャンバのデザインは、可撓性の平坦な使い捨て電極の利用が可能となる前に使用されていた(特許US3659614,題名Adjustable headband carrying electrodes for electrically stimulating the facial and mandibular nerves,Jankelsonによる;US3590810,題名Biomedical body electode,Kopeckyによる;US3279468,題名Electrotherapeutic facial mask apparatus,Le Vineによる;US6757556,題名Electrode sensor,Gopinathan et alによる;US4383529,題名Iontophoretic electrode device, method and gel insert,Websterによる;US4220159,題名Electrode,Francis et al.による、US3862633,US4182346,及びUS3973557,題名Electrode,Allison et alによる;US4215696,題名Biomedical electrode with pressurized skin contact,Bremer et alによる;及びUS4166457,題名Fluid self−sealing bioelectrode,Jacobsen et al.による)。
図4及び5に示す刺激器デザインも自己内蔵ユニットであり、電極、信号電極及び電源を収容する。携帯可能な刺激器も当該分野で知られており、例えば、Gruzdowichによる、「Electro−acupuncture device with stimulation electrode assembly」と題するUS特許717266がある。
図4及び5に示すデザインの新規性の1つは、適切な刺激波形に対応すると共に、電場形状を成形し、その神経を刺激することにより、選択的生理反応を生成するが、目標神経の他の神経及び組織の実質的な刺激を回避し、特に痛みを生じる神経の刺激を回避する。電場の成形は、SIMON et al.による「Devices and methods for non−invasive electrical stimulation and their use for vagal nerve stimulation on the neck of a patient」と題する、共に譲渡された出願US20110230938(出願番号13/075746)の対応する場の方程式に関して記載されており、これは参照することにより、本明細書に包含される。
【0148】
1つの実施形態では、
図2Aの磁気刺激コイル341は、
図5Cに示す電極ベースの刺激器と同様なボディを有する。電極ベースの刺激器を磁気刺激器と比較するため、磁気刺激器530をその長手方向軸に沿って切断してその内部構造を表す
図5Dを参照する。後述するように、並置した2つのトロイドを使用することにより、トロイダルコイルを囲む必要があり、2つのトロイダルコイルを反対方向に電流が流れる導電材料のボリュームが減少する。この構成では、誘導される電流は1つのトロイドのルーメンから組織を通って流れ、他のルーメンを通って戻り、トロイドの導電媒体内に回路を完成する。したがって、一対のコイル間の間隙から近くに位置するトロイド外側の回りに、導電媒体の最小スペースが必要である。この構成における2つのトロイドを使用する他の利点は、これらの間の電場勾配の大きさが大きく増大し、これは迷走神経及び特定の抹消神経等の長い真っすぐな軸索を興奮するために重要である。
【0149】
図5Dに示すように、網531は、導電ゲル(
図2Aの351内)が刺激器の内側から神経または組織刺激位置の患者の皮膚の表面に通すことを可能とする開口を設けてある。したがって、開口531を有する網は、患者の皮膚に作用する磁気刺激器の一部である。
【0150】
図5Dは、更に、磁気刺激器530の反対側端部の開口を示す。開口の1つが電子機器ポート532であり、これを通してワイヤが刺激器コイル(複数を含む)からインパルスジェネレータ(
図2Aの310)に通す。第2開口は導電ゲルポート533であり、これを通して、導電ゲル(
図2Aの351)が磁気刺激器530内に導入しても良く、これを通して、ねじ駆動のピストンアームを導入し、導電ゲルを、網531を通して分配しても良い。ゲル自体は、円筒状形状であるが相互連結される
図5Dに示す導電媒体チャンバ534内に包含される。導電媒体半534の深さは、刺激器の長手軸のほぼ高さであり、磁気刺激器で誘導される電場及び電流の強さに影響する(Rafael CARBUNARU及びDominique M.Durand.Toroidal coil models for transcutaneous magnetic stimulation of nerves.IEEE Transactions on Biomedical Engineering.48(4,2001):434−441)。
【0151】
図5Dは、更に、トロイダルコア536の回りに巻回されるワイヤ535のコイルを示し、高透磁性材料を有する(例えば、Supermendur)。コイル535のリードワイヤ(図示いない)は、刺激器コイル(複数を含む)から、電子回路ポート532を介してインパルスジェネレータ(
図2Aの310)に通過する。異なる回路構成が考えられる。コイル535のそれぞれの分離したリードワイヤがインパルスジェネレータ(すなわち、並列接続)に接続した場合、及び、コイルの対がコアの回りを同じ利き手で巻回された場合、このデザインは電流が2つのコイルを通して反対方向に流すことになる。一方、コイルが利き手と反対の手で巻回される場合、コイルのリードワイヤがインパルスジェネレータに直列に接続され、または、インパルスジェネレータに並列に接続される場合、両コイルを通して同じ方向に電流が流れるようにデザインされる。
【0152】
更に、
図5Dに示すように、コイル535及びその周りに巻回されるコア536は、患者の皮膚の表面に導電性ゲルを通す開口を設けた対応する網531にできる限り最適な位置に近接して装着される。図示のように、各コイル及びその回りに巻回されるコアは、その自身のハウジング537内に装着され、その機能はコイル及びコアを機械的に支持するため、及び、その近接するコイルからコイルを電気的に絶縁するために設けられる。このデザインで、誘導電流は、1つのトロイドのルーメンから、組織を通って他のルーメンに戻り、トロイドの導電媒体内に回路を完成する。
図5Cに示す電極ベースの刺激器と、
図5Dに示す磁気刺激器との間の差は、導電ゲルが電極ベースの刺激器のチャンバ57内に維持され、これは、電極56の存在により、全体的にチャンバの後側が閉じられるが、しかし、磁気刺激器では、各トロイダルコア及び巻線の孔は開口し、導電ゲルが相互接続されたチャンバ534内に入ることができることである。
【0154】
選択した神経線維は、患者の首に位置する迷走神経の刺激を含む開示した電気刺激デバイスを使用する方法の異なる実施形態で刺激される。その位置では、迷走神経は、頸動脈鞘内、頸動脈の近く及び頚静脈内に位置する。頸動脈鞘は、胸鎖乳突筋の深部で首の両側の咽頭後のスペースの側方境界に位置する。右迷走神経の刺激は心臓に望ましくない作用を生じさせ得るため、左迷走神経が刺激のために選択されることがあるが、しかし、用途によって、右迷走神経または左右両迷走神経を代わりに刺激しても良い。
【0155】
頸動脈鞘内の3つの主要構造は、総頸動脈、内頸静脈及び迷走神経である。頸動脈は内頚静脈に対して中間に位置し、迷走神経は2つ血管の後方に位置する。典型的には、患者の頸動脈鞘または内頚静脈の位置(したがって、迷走神経の位置)は、例えば感覚または超音波画像により、当該分野で既知の任意の方法で確認される。迷走神経に対して胸鎖乳突筋の上の首の皮膚から開始すると、皮膚上の位置が外頚静脈のいずれかの側にすぐ接していない限り、ラインが胸鎖乳突筋、頸動脈鞘及び内頚静脈を連続的に通過しても良い。後者の場合、ラインは、迷走神経に出会う前に、胸鎖乳突筋と頸動脈鞘のみを連続的に通過し、内頚静脈に当たらない。したがって、外頚静脈に近接するポイントは、迷走神経の非侵襲的刺激が好ましいことがある。磁気刺激コイルは、約第5から第6頸椎のレベルで、このようなポイントを中心としても良い。
【0156】
図6は、首のその位置における迷走神経を刺激するための
図3,4及び5に示すデバイスを示し、
図5の刺激デバイス50または530は、上述のように患者の首の目標位置に適用する状態を示す。例えば、
図6Aは、以下の頸椎の位置を示し、つまり、第1頸椎71、第5頸椎75、第6頸椎76及び第7頸椎77である。
図6Bは、子供の首に適用する刺激器50を示し、これは、首の損傷及び頸痛に使用されるものと同様な発泡頸椎カラー78で部分的に不動になっている。カラーは、ストラップ79で締め付けられ、刺激器は、カラーの孔を通して子供の首の表面に達するように挿入されている。図示のように、刺激器は、刺激器に配置されたスイッチでオン及びオフにされ、刺激器の振幅は、刺激器にも配置された制御ノブで調節しても良い。他のモデルでは、刺激器は、コントローラの全ての刺激パラメータ(オン/オフ、刺激振幅、周波数等)を調節するために使用し得るワイヤレスコントローラを使用して、遠隔的にオン及びオフにしても良い。
【0157】
図7は、
図6に示す首位置で迷走神経を刺激するために配置された際の、電気刺激器の使用をより詳細に示す図である。図示のように、
図5の刺激器50は、刺激器の網開口(
図5に51として特定される)を介して分散され、または、導電性ゲル若しくはペーストとして塗布しても良い導電性ゲル29(または、他の導電性材料)を介して電気的に接触することにより、間接的に首に接触する。
図7の導電性ゲル29は、デバイスを患者の皮膚と連絡するように示してあるが、ゲル相(複数を含む)の実際の位置は、
図5に示す網51の位置で全体的に定めても良いことが理解される。更に、本発明の他の実施形態について、デバイスの導電性ヘッドは、皮膚に塗布される追加の導電性材料の使用を必ずしも必要としなくても良いことが理解される。
【0158】
迷走神経60は
図7に、太い周囲輪郭で識別される頸動脈鞘61と共に特定してある。頸動脈鞘は、迷走神経をだけでなく、更に、内解静脈62及び総頸動脈63も囲む。首の表面の近くに識別し得る機能は、外頚静脈64及び胸鎖乳突筋65を含む。迷走神経の近部の他の器官は、気管66、甲状腺67.食堂68、斜角前筋69及び中斜角筋70を包含する。第6頸椎76も、
図7に示してあり、ハッチングマークで識別される骨構造を有する。
【0159】
患者を治療する方法は、
図6及び7に示すように迷走神経を刺激することを包含し、ここに開示する電気刺激デバイスを使用する、刺激は、左右の迷走神経またはこれらの双方を同時にまたは交互に行っても良い。デバイスの位置決め及び配向は、電流が刺激電極を介して流れるときに、患者が刺激を知覚するまで、その場所の周りで調整される。流される電流は、最初は、刺激器からの感覚を患者が知覚できるレベルまで、次第に増大される。電力は増大されるが、患者が最初に何らかの不快を示したものよりも低いレベルに設定される。ストラップ、ハーネスまたはフレームが、刺激器を所定位置に維持するために使用される。刺激信号は、患者に治療効果を生じさせるために選択された周波数及び他のパラメータを有しても良い。各患者に対する刺激パラメータは、個別化ベースで調節される。通常、刺激信号の振幅は、患者に取って心地よい最大値に設定され、この後、他の刺激パラメータが調整される。
【0160】
この後、
図2に示すような正弦バースト波形で刺激が実行される。バースト間休止が続くバーストのパターンは、それ自体が周期Tで繰り返す。例えば、正弦波の周期タウは200マイクロ秒、バースト当たりのパルス数は、N=5、バースト間休止が続くバーストの全体パターンは、T=40000マイクロ秒の周期を有しても良く、これは25Hzの刺激に相当する。より一般的には、バースト当たり1〜20パルス、好ましくは5パルスとしても良い。バースト内の各パルスは、約10〜約1000マイクロ秒(すなわち、約1〜約10KHz)、好ましくは、約200マイクロ秒(約5KHz)の持続時間を有する。バースト間休止が続く1バーストは、毎秒1〜5000バースト(bps)、好ましくは5〜50bps、より好ましくは10〜25bpsの刺激(10〜25Hz)で繰り返す。各パルスの好ましい形状は、完全正弦波であるが、三角形または他の形状を用いても良い。
【0161】
本発明による迷走神経治療は、30秒から5分、好ましくは約90秒から約3分、より好ましくは約2分(それぞれ、単回用量として)の連続周期で実施する。処置が完了した後、一定期間にわたって治療が停止される(後述するように、治療にしたがって)。患者が患う片頭痛の重症度、持続時間及び/または回数を低減または解消するための治療等の予防的治療のため、治療は、1週間から所定年数まで続くことがある期間にわたり、1日当たり複数回の処置を施すことが好ましい。特定の実施形態では、治療は、日中の所定時間に、及び/または、1日を通して所定の間隔で複数回の処置が行われる。例示的な実施形態では、治療は以下のうちの1つで行われ、つまり、(1)所定の間隔または時間で3回/日、(2)2回、連続してまたは所定の間隔若しくは時間で5分離して、好ましくは2または3回/日、(3)3回、連続してまたは所定の間隔若しくは時間で5分離して、例えば2または3回/日、あるいは、(4)1〜3回、連続してまたは5分離して、1日当たり5〜6回。治療の開始は、差し迫った症状(例えば、頭痛、発病等)が予想されるときに始めても良く、または、リスクファクタ低減プログラムにおいて、患者が朝に起床した後に始めて、一日を通して行っても良い。
【0162】
特定の障害に対しては、時刻は、治療間の時間間隔よりも重要である。例えば、青斑核は、1日24時間中に、不活性期間と活性期間との期間を有する。典型的には、不活性期間は夕方近く、または、患者が眠っているときの真夜中に生じ得る。青斑核で生成される脳内の抑制性神経伝達物質のレベルが減少するのが、不活性期間中である。これは、特定の障害に影響を与え得る。例えば、片頭痛または群発性頭痛を患っている患者は、青斑核の不活性期間の後にこれらの頭痛がすることが多い。これらのタイプの障害に対して、予防的治療は、脳内の抑制性神経伝達物質の量が、障害の急性発作を緩和または防ぐために十分高いレベルに維持することができるように、不活性期間中における予防的治療が最適である。
【0163】
これらの実施形態では、予防的治療は、青斑核の不活性期間のタイミングに、複数回/日行うことを包含しても良い。1つの実施形態では、本発明による治療は、1日当たり2〜3回、または、1日当たり2〜3「治療セッション」で施す、1以上の回数分を包含する。治療セッションは、真夜中に及び患者が起きた朝に再度、夕方近くまたは深夜に行われるのが好ましい。例示的な実施形態では、各治療セッションは、1〜4回、好ましくは2〜3回包含し、各回は約90秒から約3分持続する。
【0164】
他の障害に対して、治療セッション間の間隔は、最も重要であり、これは、出願人が迷走神経の刺激は、脳内の抑制性神経伝達物質レベルに、少なくとも1時間で、3時間まで、場合によっては8時間までの持続効果を有することが可能であると判断したためである。1つの実施形態では、本発明による治療は、24時間にわたる間隔で1回以上(すなわち、治療セッション)施すことを包含する。好ましい実施形態では、このような治療セッションは1〜5回で、好ましくは2〜4回の治療セッションである。各治療セッションは、1〜3回含むことが好ましく、それぞれ約60秒から約3分、好ましくは約90秒から約150秒、より好ましくは約2分持続する。
【0165】
急性脳卒中の治療等の急性の治療に対して、本発明による治療は、1以上の実施形態を有しても良く、(1)症状の発症時に1回、(2)症状の発症時に1回、続いて、5〜15分の他の回、または、(3)症状の発症時から急性発作が軽減またはなくなるまで、15分毎から1時間1回行う。これらの実施形態では、各実行回は、約60秒から約3分、好ましくは約90秒から約150秒、より好ましくは約2分の間持続するのが好ましい。
【0166】
脳卒中患者のリハビリテーション中に生じるような急性の損傷の長期にわたる治療に対し、この治療は、(1)3回処置/日、(2)2回処置、連続的または5分離して、3x/日、(3)3回処置、連続的または5分離して、2x/日、(4)2または3回処置、連続的または5分離して、10x/日まで、または、(5)1,2または3回処置、連続的または5分離して、15,30,60または120分ごとに行うことを包含しても良い。
【0167】
上記した治療の全てについて、左右側間で交互に治療しても良く、または、特に脳半球で起こる脳卒中若しくは片頭痛の場合に、それぞれ脳卒中−脳半球若しくは頭痛側に対して同側若しくは反対側を治療しても良い。または、単一治療について、一側で1分、続いて反対側で1分治療しても良い。これらの治療パラダイムの変更は、患者ごとに応じて選択しても良い。しかし、刺激プロトコルのパラメータは、患者の症状の異質性に応じて変更しても良いことが理解される。異なる刺激パラメータは、更に、患者の状態変化の経過と共に選択しても良い。好ましい実施形態では、開示した方法及びデバイスは、興奮若しくは不安神経症、または、心拍若しくは血圧の変化等の臨床的に重要な副作用を生じるものではない。
【0168】
予防的治療は、患者が前駆、ハイリスク双安定状態にあるときに最も効果的であり得る。その状態では、患者は同時に正常のまま、または、症状を示すことができ、正常状態と症状との間の選択は、生理的フィードバックネットワークによる変動の増幅にしたがう。例えば、血栓は、ゲルまたは流体相で存在しても良く、変動のフィードバック増幅が相の及び/またはゲル相の体積を変化させる。したがって、血栓は、迷走神経刺激で調整され得る血流及び炎症で影響されるように、血栓の形成に含まれる酵素のネットワークで示される非線形動力学にしたがって、形成されまたは形成されない(PANTELEEV MA,Balandina AN,Lipets EN,Ovanesov MV,Ataullakhanov FI.Task−oriented modular decomposition of biological networks:trigger mechanism in blood coagulation.Biophys J 98(9,2010):1751−1761;Alexey M SHIBEKO, Ekaterina S Lobanova, Mikhail A Panteleev及びFazoil I Ataullakhanov.Blood flow controls coagulation onset via the positive feedback of factor VII activation by factor Xa.BMC Syst Biol 2010;4(2010):5,pp.1〜12)。したがって、脳卒中に対する予防中の迷走神経刺激治療のメカニズムは、刺激がすでに血栓によって生じる虚血の発症に続く興奮性神経伝達を阻害する際に、急性期治療中に発生したものとは一般的に異なる。それにも関わらず、予防的治療は、更に、最終的には血栓の形成時に生じ興奮を制限するように、興奮性神経伝達を抑制することができ、急性治療は、他の血栓の形成を阻止することができる。
【0169】
このような阻害に関与する回路が
図1Aに示してある。背側迷走神経複合体内の興奮性神経は、その神経伝達物質として一般にグルタミン酸を用いる。背側迷走神経複合体内の神経伝達を阻害するため、本発明は、孤束(NTS)の核が有する、抑制性神経伝達物質を生成する組織との双方向接続を使用し、または、NTSが有する視床下部との接続を使用し、これは、次に、突出する。
【0170】
上述の一般的な刺激スケジュールまたは各患者に対して適合した個別化プロトコルが、薬剤治療プロトコルの選択に類似した概念を使用してデザインされまたは必要とされる。薬剤について、薬学的な用量反応実験は、時間の関数(例えば、血圧)として制御される生理学的パラメータに対する薬物のボーラスの累積的影響を測定する。薬剤の投与後、薬剤の有効濃度は、典型的には指数関数的に半減期が減少するが、ときには、複雑な減衰パターンで減少し、生理的パラメータにおける薬剤の効果も、最終的には減少する。状況は、迷走神経の刺激と同様である。生理的パラメータ上の迷走神経の刺激の有効性も、量的に考慮してもよい(例えば、EEG派生の脳虚血の指標、参照:FERREE TC,Hwa RC.Electrophysiological measures of acute cerebral ischaemia.Phys Med Biol 50(17,2005):3927−3939)。有効性は、刺激電圧、刺激持続時間、及び、刺激が終了したかどうか、最後の刺激の停止からの時間の機能である。したがって、特定の波形を有する「累積迷走神経刺激」の数値は、S(t)として表示しても良く、本目的のために、長期刺激後、累積刺激効果は、V及びTAU
Pの積と等しい値で飽和するように、刺激電圧Vに比例する速度で増加し、時定数TAU
Pで減衰するものとしてあらわされる。したがって、T
Pが刺激パルスの持続時間で、時間t<T
Pのときに、S(t)=Vτ
P[1−exp(−t/TAU
P)]+S
0exp(−t/TAU
P)である。t>T
Pのときに、S(t)=S(T
P)exp(−[t−T
P]/TAU
P)であり、ここに、時間tはパルスの開始から測定し、S
0は、t=0のときのSの値であり、刺激電圧Vは、患者の一部に最初に刺激を引き出すために必要な電圧の単位で表しても良い。患者のそれぞれは、TAU
Pの異なる値を有しすることがあるため、生理値を特定の予め決定した値よりも上または下に維持するために必要な刺激プロトコルは、同様に患者から患者で変化することがある。神経刺激効果の減衰が複雑な場合、単純な指数関数的減衰よりも、薬物動態学及び薬力学で使用されるより複雑なモデルに類似する、より複雑なモデルを使用すべきである。
【0171】
本発明の他の実施形態では、迷走神経の刺激のペアリングは、追加の感覚的刺激と一緒でも良い。対となった感覚刺激は、例えば、迷走神経の電気刺激と同じ周波数で脈動する明るい光、音、触覚刺激、または、舌の電気刺激で臭い/味をシミュレートするものであても良い。対となった感覚刺激の論拠は、左右の迷走神経の双方の同時で対となった刺激と同様であり、すなわち、脳内で相互作用する刺激の対は、個々の信号に関連する神経細胞群よりも、より大きく、より整然とした神経細胞群を形成することがあり、これにより、治療効果が増進することにある。
【0172】
例えば、視床下部は、明るい光に反応することが周知であり、迷走神経と同じ刺激周波数(または、その周波数の倍数)で変動する明るい光を患者に暴露することを、視床下部の役割を強化するために実行し、所要の治療効果が得られることがある。このような対となる刺激は、必ずしも神経可塑性に依存するものではなく、その意味で、対となる刺激の他の報告とは相違する(Navzer D.ENGINEER,Jonathan R.Riley,Jonathan D.Seale, Will A.Vrana,Jai A.Shetake,Sindhu P.Sudanagunta,Michael S.Borland及びMichael P.Kilgard.Reversing pathological neural activity using targeted plasticity.Nature 470(7332,2011):101−104;PORTER BA,Khodaparast N,Fayyaz T,Cheung RJ,Ahmed SS,Vrana WA,Rennaker RL 2nd,Kilgard MP.Repeatedly pairing vagus nerve stimulation with a movement reorganizes primary motor cortex.Cereb Cortex 22(10,2012):2365−2374)。
【0173】
脳の特定領域を優先的に刺激する刺激パラメータの選択は、実験的に行っても良く、ここで、刺激パラメータのセットが選択され、脳の応答領域がfMRIまたは関連する撮像方法を使用して測定される(CHAE JH,Nahas Z,Lomarev M,Denslow S,Lorberbaum JP,Bohning DE,George MS.A review of functional neuroimaging studies of vagus nerve stimulation (VNS).J Psychiatr Res.37(6,2003):443−455;CONWAY CR,Sheline YI,Chibnall JT,George MS,Fletcher JW,Mintun MA.Cerebral blood flow changes during vagus nerve stimulation for depression.Psychiatry Res.146(2,2006):179−84)。したがって、刺激パラメータの異なるセットで撮像を実行することにより、特定の脳の領域に一致するようにパラメータを選択することの逆問題が、データベースを参照することによって解決することができるように、データベースを構成しても良い。
【0174】
刺激波形は、
図2に示すバースト波形を重ねまたはミキシングすることにより、構成しても良く、ここに、混合物の各成分は、異なる周期Tを有しても良く、異なる毎秒当たりのバースト波形が効果的にミキシングされる。混合物の各成分の相対的振幅は、特定の休止状態ネットワークのEEG内の異なる帯域の相関関係にしたがう重要性を有するように選択しても良い。したがって、MANTINI et alは、同時にfMRI及びEEG測定を行い、各休止状態ネットワークは特定のEEGシグニチャを有することを見出した(次の
図3参照:MANTINI D,Perrucci MG,Del Gratta C,Romani GL,Corbetta M.Electrophysiological signatures of resting state networks in the human brain.Proc Natl Acad Sci 米国 104(32,2007):13170−13175)。彼らは、以下の帯域、つまり、それぞれデルタ(1〜4Hz)、シータ(4〜8Hz)、アルファ(8〜13Hz)、ベータ(13〜30Hz)及びガンマ(30〜50Hz)で測定した休止状態ネットワークについて、それぞれの相関関係に関して報告している。最近識別された休止状態ネットワークについて、対応するシグニチャEEGネットワークの測定を行うことが必要となる。
【0175】
本発明の実施形態によると、
図2に示す複数の信号は、EEG帯域のそれぞれの中間点の近位置に対応する周期Tで構成されている(例えば、MINATIデータを使用して、Tは、それぞれ約0.4秒、0.1667秒、0.095秒、0.00465秒及び0.025秒に等しい)。各帯域について、1つの信号より多くを混合することにより、広範囲の混合も可能となる。これらの信号は、この後、混合され、任意の特定の休止状態ネットワークに対して測定された重要度にしたがう相対振幅を有し、この混合物は、患者の迷走神経の刺激に使用される。混合された信号間の相は、刺激されている休止状態ネットワークに対するfMRI信号を最適にするように調整され、これにより、休止状態ネットワークで同調される。ネットワークの刺激は、ネットワーク内のアドレナリン受容体の詳細な形態及びネットワーク内の神経活動を強化または抑制するその役割、及び、その後のネットワーク対ネットワークの相互作用にしたがって、ネットワークを活性化または不活性化する。この方法の変形は、異なる組み合わせのfMRAI−EEGが採用され、同じ休止状態が、状況にしたがって異なるEEGシグニチャを有するときに、使用し得ることが理解される(WU CW,Gu H,Lu H,Stein EA,Chen JH, Yang Y.Frequency specificity of functional connectivity in brain networks.Neuroimage 42(3,2008):1047−1055;LAUFS H.Endogenous brain oscillations and related networks detected by surface EEG−combined fMRI.Hum Brain Mapp 29(7,2008):762−769;MUSSO F,Brinkmeyer J,Mobascher A,Warbrick T,Winterer G.Spontaneous brain activity and EEG microstates.A novel EEG/fMRI analysis approach to explore resting−state networks.Neuroimage 52(4,2010):1149−1161;ESPOSITO F,Aragri A,Piccoli T,Tedeschi G,Goebel R,Di Salle F.Distributed analysis of simultaneous EEG−fMRI time−series:modeling and interpretation issues.Magn Reson Imaging 27(8,2009):1120−1130;FREYER F,Becker R,Anami K,Curio G,Villringer A,Ritter P.Ultrahigh−frequency EEG during fMRI:pushing the limits of imaging−artifact correction.Neuroimage 48(1,2009):94−108)。ネットワークが取り込まれると、刺激が最初に取り込まれるネットワークの刺激&EEGパターンの周波数内容をゆっくり変更することにより、ネットワークのシグニチャEEGパターンを変更しようとしても良い。この場合における目的は、休止状態シグニチャEEGの周波数内容を変更することである。
【0176】
神経刺激プロトコルに対するパラメータの個別化された選択は、皮膚痛または筋収縮の感覚無しに、有益な反応を得るために、試行錯誤に基づいても良い。通常、刺激信号の振幅は、患者にとって満足な最大値にセットされ、この後、他の刺激パラメータが調整される。代替的に、パラメータ値の選択は、後述するように、制御理論で理解されるように、チューニングすることを包含しても良い。パラメータは、通常の生理的変動を刺激するために、ランダムに変更しても良く、これにより、患者に有益な反応を誘導することが可能であることが理解される(Buchman TG.Nonlinear dynamics,complex systems,and the pathobiology of critical illness.Curr Opin Crit Care 10(5,2004):378−82)。
【0177】
各患者の治療を改善するための制御理論方法の使用
【0178】
迷走神経刺激は、迷走神経に対する刺激器の動きを補償し、過度の心拍等の潜在的に危険が状況を回避し、測定されたEEG帯域(例えば、デルタ、シータ、アルファ、ベータ)を所定範囲に維持し、特定の休止状態を優先的に活性化するために、制御理論(フィードバック)の方法を採用する。したがって、これらの方法では、迷走神経刺激のパラメータは、所定の範囲内の生理学的信号の値を維持するため、行われる生理学的測定にしたがって、自動的に変更しても良い。
【0179】
患者のEEGの測定は、先のセクションで説明したように、迷走神経の刺激のパラメータを選択する1つの開示された方法の一部として実行することが好ましい。EEGは、更に、急性脳卒中の始まり及び経過に関する動的生理学データを提供する(JORDAN KG.Emergency EEG and continuous EEG monitoring in acute ischemic stroke.J Clin Neurophysiol 21(5,2004):341−352;FERREE TC,Hwa RC.Electrophysiological measures of acute cerebral ischaemia.Phys Med Biol 50(17,2005):3927−3939)。
【0180】
表面EEG波形上の迷走神経刺激の効果は、検出が困難なことがあることが理解されているが(Michael BEWERNITZ,Georges Ghacibeh, Onur Seref,Panos M.Pardalos,Chang−Chia Liu,及びBasim Uthman.Quantification of the impact of vagus nerve stimulation parameters on electroencephalographic measures.AIP Conf. Proc. DATA MINING, SYSTEMS ANALYSIS AND OPTIMIZATION IN BIOMEDICINE;2007年11月5日,953巻,pp.206〜219)、しかし、これらは、それでも存在する(KOO B.EEG changes with vagus nerve stimulation.J Clin Neurophysiol.18(5,2001):434−41;KUBA R, Guzaninova M,Brazdil M,Novak Z,Chrastina J,Rektor I.Effect of vagal nerve stimulation on interictal epileptiform discharges: a scalp EEG study.Epilepsia.43(10,2002):1181−8;RIZZO P,Beelke M,De Carli F,Canovaro P,Nobili L,Robert A,Fornaro P,Tanganelli P,Regesta G,Ferrillo F.Modifications of sleep EEG induced by chronic vagus nerve stimulation in patients affected by refractory epilepsy.Clin Neurophysiol.115(3,2004):658−64)。
【0181】
迷走神経を刺激しているときに、動きの変動性は多くの場合、患者の呼吸に起因し、これは、迷走神経(
図7の65で認識される)の近くに位置する胸鎖乳突筋の収縮、及び、形状の関連する変形を含む。この変動性を補償する刺激振幅の変動は、患者の呼吸相を測定し、または、より直接的に、刺激器の動きを測定し、この後、説明するように制御理論の分野で既知のコントローラ(例えば、PIDコントローラ)を使用することにより、実行しても良い。
【0182】
図8は、開示した迷走神経刺激方法の制御理論を表示するものである。ここに示すように、患者または患者の関連する生理的要素は、制御されるべき「システム」と考えられる。「システム」(患者)は、「環境」から入力を受ける。例えば、環境は、周囲温度、光および音を含む。「システム」が患者の特別な生理学的要素のみで画定されると、「環境」は、「システム」に含まれない患者の生理学的システムを含むと考え得る。したがって、いくつかの生理学的要素が、患者の他の生理学的要素の挙動で影響することが可能で、逆は可能でない場合、先の要素は、環境の一部とすることができるが、後の要素はシステムの一部とすることができる。他方において、先の要素を制御し、後の要素に影響させることを意図する場合、双方の要素は「システム」の一部と考えられる。
【0183】
システムは、更に「コントローラ」から入力を受け、この場合、これは迷走神経刺激デバイス、及び、刺激プロトコルのパラメータ(振幅、周波数、パルス幅、バースト数等)を選択若しくは設定に使用し、または、刺激器を使用若しくは調節する必要に応じて患者に警告し得る(すなわち、アラーム)電子部材を備えても良い。例えば、コントローラは、
図2の制御ユニット330を有しても良い。システムの生理学的計測は、センサを用いて行われるため、
図8に示す概要におけるフィードバックが可能である。したがって、測定することができるシステムの変数の値は、システムの状態(システム出力)を画定する。実際問題として、これらの測定の幾つかのみが実際に行われ、これらは、コントローラに対する「感知された生理的入力」を表す。
【0184】
好ましいセンサは、移動モニタリングに使用される通常のものを含む。例えば、センサは、心拍または変動、ECG、呼吸深さまたは速さ、中核温度、水和反応、血圧、脳機能、酸素供給、皮膚インピーダンス、及び、皮膚温度を監視するための通常のホルター臨床モニタ用に使用されているものを備えても良い。これらのセンサは、現在、兵士の生理学的状態を監視するプログラムで使用されるように、衣類に組み込み、または、スポーツ用リストウォッチに配置しても良い(G.A.SHAW,A.M.Siegel,G.Zogbi,及びT.P.Opar.Warfighter physiological and environmental monitoring:a study for the U.S.Army Research Institute in Environmental Medicine and the Soldier Systems Center.MIT Lincoln Laboratory,Lexington MA.2004年11月1日,pp.1〜141)。ECGセンサは、例えばP波形態指標であるECGの特定の特徴、並びに、副交感神経及び交換神経系の緊張の指標である心拍変動を自動的に抽出及び分析するように適合させるべきである。非侵襲的誘導プレスチモグラフィ、水銀式シラスティック歪ゲージまたはインピーダンスニューモグラフィを使用する呼吸作用の測定は、特に、心臓に対する呼吸の影響を考慮するため、推奨される。非侵襲的加速度計も、動きアーチファクトを識別するために、歩行センサに含んでも良い。事象マーカも、患者に対して関連環境及び感覚をマークするために、含まれても良い。
【0185】
脳のモリタリングのため、センサは歩行可能なEEGセンサ(CASSON A,Yates D,Smith S,Duncan J,Rodriguez−Villegas E.Wearable electroencephalography.What is it,why is it needed,and what does it entail?IEEE Eng Med Biol Mag.29(3,2010):44−56)、または、前頭前皮質光活性化マッピング用のトポグラフィシステム(Atsumori H,Kiguchi M,Obata A,Sato H,Katura T,Funane T,Maki A.Development of wearable optical topography system for mapping the prefrontal cortex activation. Rev Sci Instrum. 2009 Apr;80(4):043704)を備えても良い。従来の線形フィルタを生のEEGデータに適用するだけでなく、データから非線形信号特性のほぼリアルタイムの抽出も有する信号処理方法は、EEGモニタリングの一部と考えても良い(D.Puthankattil SUBHA, Paul K.Joseph,Rajendra Acharya U,及びChoo Min Lim.EEG signal analysis:A survey.J Med Syst 34(2010):195-212)。本願では、特性はEEG帯域(例えば、デルタ、シータ、アルファ、ベータ)を包含する。
【0186】
呼吸相の検出は、プローブが鼻の孔に位置するように、患者の頬にサーミスタまたはサーモカップルプローブを付着することにより、非侵襲的に実行しても良い。胸の回りに締め付けたベルトからの歪ゲージ信号、並びに、誘導性脈波検査及びインピーダンスニューモグラフィも、呼吸相の機能として起伏する信号を非侵襲的に生成するために伝統的に用いられている。呼吸相は、呼吸中に迷走神経刺激器の動きを生じさせる胸鎖乳突筋の動きから推測しても良く、後述するように、迷走神経刺激器に取り付けられる加速度計を使用して測定される。このような信号をデジタル化した後、呼吸相は、「プカ(puka)」等のソフトウェアを用いて決定しても良く、これは、広範囲にわたる生理学的信号を処理し、表示するために使用されるオープンソースソフトウェア及びユーザマニュアルの膨大な公開されたライブラリであるPhysioToolkitの一部である(GOLDBERGER AL,Amaral LAN,Glass L,Hausdorff JM,Ivanov PCh,Mark RG,Mietus JE,Moody GB,Peng CK,Stanley HE.PhysioBank,PhysioToolkit,及びPhysioNet:Components of a New Research Resource for Complex Physiologic Signals. Circulation 101(23,2000):e215−e220]available from PhysioNet,M.I.T.Room E25−505A,77 Massachusetts Avenue,Cambridge,MA 02139)。本発明の1つの実施形態では、制御ユニット330は、このようなアナログの呼吸信号を受けるアナログ−デジタル変換器、及び、制御ユニット330内に存在するデジタル化した呼吸波形の分析のためのソフトウェアを有する。そのソフトウェアは、呼気終端及び吸気終端等の呼吸波形内のターニングポイントを抽出し、先の呼吸の波形と現在の呼吸の部分的波形が一致する周波数に基づいて、今後のターニングポイントを予測する。制御ユニット330は、その後、インパルスジェネレータ310を制御し、例えば、吸気の全て若しくは第1,第2呼気のみ、または、吸気の予期される吸気の中間半分のみ等の選択した呼吸相中の選択した神経をのみを刺激する。
【0187】
インパルスジェネレータ310を制御し、磁気刺激コイルまたは電極により、患者の呼吸相にしたがって、一時的に刺激を調節するように、制御ユニット330をプログラムすることは治療上有益なことがある。YOSHIHOTOによる「Vagus nerve stimulation system」と題する特許出願JP2008/081479Aには、心拍を安全限度内の維持するためのシステムが記載されている。心拍数が高すぎると、そのシステムは、患者の迷走神経を刺激し、心拍数が低すぎると、そのシステムは、迷走神経を刺激する異なるパラメータを使用するのではなく、心臓自体を刺激することにより、心拍の安定を達成しようとする。その開示では、迷走神経の刺激は電極を用い、これは、体表面に適用される表面電極または皮下注射鍼を介して迷走神経の近部に導入される電極の一方について記載する。その開示は、ここで対象としている脳卒中または一過性脳虚血発作の問題とは無関係であるが、以下の理由のために、呼吸サイクルの特定の相での刺激を考慮する。迷走神経は、横隔神経の近くであるため、Yoshihotoは、横隔神経は迷走神経と共に電気的に刺激されることがあると指摘している。出願人は、この問題を経験しておらず、したがって、その問題は誤って配置された電極のものの可能性がある。いずれの場合も、横隔神経は、横隔膜の筋肉運動を制御し、その結果、横隔神経の刺激は、患者にしゃっくり、若しくは、横隔膜の不規則な動きを生じさせ、または、そうでないときは不快感を生じさせる。横隔膜の不規則な運動の効果を最小にするため、 Yoshihotoのシステムは、呼吸サイクルの呼気相ではなく、吸気相でのみ横隔神経(及び、迷走神経を一緒に刺激する可能性もある)を刺激するようにデザインされている。更に、そのシステムは、横隔神経及び横隔膜を緩やかに刺激するために、吸気中の電気刺激の強さを次第に増大し、この後、減少する(特に、振幅及び刺激速度)ようにデザインされている。
【0188】
本発明は、呼吸相の機能として迷走神経の刺激を更に開示するものであるが、このような刺激の原理は、Yoshihotoの方法と相違する。
【0189】
本発明のいくつかの実施形態では、呼吸サイクルの特定の相に対する磁気刺激を選択的に制限し、呼吸サイクルの他の移動でコイルを冷却可能とすることにより、磁気刺激コイルの過熱を最小化し得る。代替的に、呼吸サイクルの選択した相に、磁気パルスの全エネルギを集中することにより、呼吸サイクル当たりのピーク電力をより大きくしても良い。
【0190】
更に、本発明の選択肢として、刺激のパラメータを制御ユニット330で調整し、心拍を安全または所要限度内としかつ維持するために、磁気刺激コイルまたは電極による刺激を一時的に調整するようにインパルスジェネレータ310を制御しても良い。その場合、刺激のパラメータは、段階的に個別に上下し(電力、周波数等)、増加した、変化しない、または、減少した心拍として、効果が制御ユニット330のメモリに格納される。心拍が特定した範囲外の値に変化すると、制御ユニット330は、その範囲内の心拍を生じさせるように記録された値に、自動的にパラメータをリセットし、または、その範囲内に心拍がまだ到達しない場合、先に取得したデータが、所要範囲内の心拍に向けて心拍が変化する方向にパラメータを上下する。同様に、動脈圧も、本発明の実施形態で非侵襲的に記録され、上述のように、制御ユニット330は動脈圧波形から、収縮期、拡張期及び平均動脈圧を抽出する。制御ユニット330は、この後、心拍について上述したものと同じ方法により、所定の安全または所要限度内の血圧を達成しかつ維持するように、インパルスジェネレータ310を制御し、磁気刺激器または電極に一時的に神経刺激を調製する。したがって、脳卒中に関連する問題を治療することを意図していない場合であっても、上述した本発明の実施形態は、所望の範囲内の心拍数および血圧とし、これを維持するために使用しても良い。
【0191】
図8のシステムの測定された出力変数をy
i(i=1〜Q)で示し、y
iの所要(基準または設定値)値をr
iで示し、システムに対するコントローラの入力を変数u
j(j=1〜P)とする。目標は、コントローラが入力u
jを、出力変数(または、そのサブセット)が基準信号r
iに密に追従すること、すなわち、システムに対する環境入力またはノイズが存在しても、制御誤差e
i=r
i−y
iが小さいことである。誤差関数e
i=r
i−y
iが
図8のコントローラに対する検知された生理的入力と考える(すなわち、基準信号はコントローラに組み込まれており、これは、これらの信号から測定されたシステム値を減じ、制御誤差信号を構成する)。コントローラは、更に、測定した1セットの環境信号v
k(k=1〜R)を受け取り、これは
図8に示すように、更に、システムに作用する。
【0192】
システムの入力u(t)の機能的形態は、
図2D及び2Eに示すように制約される。通常、調節に必要なパラメータは、
図2に示す信号の振幅に関連したものである。システムを制御するためのフィードバックを使用する第1実施例として、動きアーチファクトに対して補償するため、迷走神経刺激器(すなわち、コントローラからの出力)からの入力u(t)の調節の問題を考える。
【0193】
神経活性化は、一般的に、軸索に沿う2次的空間微分の機能であり、これは軸索に対する刺激器の位置がずれたときに変化することになる(F.RATTAY.The basic mechanism for the electrical stimulation of the nervous system.Neuroscience 89(2,1999):335−346)。このような動きアーチファクトは、患者の動き(例えば、首の動き)若しくは患者の内部の動き(例えば、呼吸に関連する胸鎖乳突筋の収縮)に起因することがあり、または、体に対する刺激器の動き(スリップ若しくはドリフト)に起因することがある。したがって、このような望ましくない、または避けることができない動きのために、通常は、意図(r)するもの対実際(y)の神経振幅刺激に、連続的に調整が必要ないくらかの誤差(e=r−y)が存在する。
【0194】
加速度計は、例えば、750 キャニオン Dr#300 コッペル,テキサス州 75019に住所を有するSTMicroelectronicsのModel LSM330DLを使用して、あらゆるこれらのタイプの動きを検出するために使用可能である。患者の首に1つ以上の加速度計を取り付けられ、1つ以上の加速度計が、刺激器が患者に接触する部位の近部で刺激器のヘッドに取り付けられる。一時的に組み込まれる加速度計の出力が、各加速度計の現在位置を測定するため、組み合わせた加速度計の出力は、下側の組織に対する刺激器のあらゆる動きを測定することを可能とする。
【0195】
刺激器の下側の迷走神経の位置は、刺激器の中心が配置される位置に超音波プローブを配置することにより、予め決定し得る(KNAPPERTZ VA,Tegeler CH,Hardin SJ,McKinney WM.Vagus nerve imaging with ultrasound:anatomic and in vivo validation.Otolaryngol Head Neck Surg 118(1,1998):82−5)超音波プローブは、1つまたは複数の加速度計の取付け具を含み、刺激器と同じ形状を有するように構成される。予備的プロトコルの一部として、加速度計を取付けられた患者は、この後、刺激器による長期の刺激に伴う首の動き、胸鎖乳突筋を収縮するような深い呼吸、及び、一般的な刺激が可能な動きを指示または支援される。これは、患者の首の初期位置に対して可能性のある刺激器のスリップまたは動きを含む。これらの動きが行われる間、加速度計は位置情報を取得し、超音波画像から対応する迷走神経の位置が決定される。これらの予備的データにより、この後、先に取得した迷走神経位置との間に、加速度計位置データの関数として補間することにより、刺激期間中の加速度計のデータを受けるだけで、刺激器に対する迷走神経の位置を推測することが可能である。
【0196】
迷走神経に対する刺激器の任意の所与の位置に対し、迷走神経の近部で生成する電場の振幅を推測することも可能である。これは、関連する体組織をシミュレートする想像線内の深さ及び位置の機能として、刺激器により生成される電場を計算または測定することにより、行われる(Francis Marion MOORE. Electrical Stimulation for pain suppression:mathematical and physical models.Thesis,School of Engineering,Cornell University,2007;Bartosz SAWICKI,Robert Szmurlo,Przemyslaw Plonecki,Jacek Starzynski,Stanislaw Wincenciak,Andrzej Rysz.Mathematical Modelling of Vagus Nerve Stimulation.pp.92〜97:Krawczyk,A.Electromagnetic Field,Health and Environment:Proceedings of EHE’07 Amsterdam, IOS Press,2008)。したがって、動きに対して補償するため、コントローラは、その所要値に対して、迷走神経の近部の電場の振幅の推測されるずれに比例して、刺激器(u)からの出力の振幅を増大または低減する。
【0197】
本目的に対し、システム出力変数とシステムの状態を示す変数との間に、相違はない。この後、システムの状態空間表示またはモデルは、1次微分方程式のセットを有し、この形態は、dy
i/dt=F
i(t,{y
i},{u
j},{v
k};{r
i})であり、ここにtは時間であり、一般的に、各変数y
iの変化の速度は、多くの他の出力変数並びに入力及び環境信号の関数(F
i)である。
【0198】
伝統的な制御理論は、状況に関連し、F
i の形態の関数は、状態と入力変数の線形結合としてあるが、線形項の係数は必ずしも予め知られているものではない。この線形の場合には、微分方程式は線形変形(例えば、ラプラス変換)法で解決しても良く、これは、微分方程式を簡単に解決するために、代数方程式に変換する。したがって、例えば、1入力1出力システム(変数の添え字を除外する)は、
の形態のコントローラからの入力を有しても良く、ここで、コントローラのパラメータは、比例ゲイン(K
p)、積分ゲイン(K
i)及び微分ゲイン(K
d)である。このタイプのコントローラは、制御入力が、誤差e=r−yを使用するフィードバックで制御入力信号を形成し、PIDコントローラ(比例−積分−微分)として知られている。
【0199】
対応する状態の微分方程式が予め知られている場合は、コントローラのパラメータの最適な選択は、計算を通じて行うことができる。しかし、これらは通常は知られておらず、したがって、コントローラのパラメータ(チューニング)の選択は、誤差eがシステム入力を形成するために使用されるか、または、使用されないかの実験(それぞれ、閉ループまたは開ループ実験)により、達成される。開ループ実験では、入力はステップ毎に増大し(または、ステップのランダム2進数列で)、システム応答が測定される。閉ループ実験では、積分または微分ゲインがゼロに設定され、比例ゲインは、システムを振動を開始するまで増大し、振動周期が測定される。実験が開または閉ループかどうかにしたがって、PIDパラメータ値は、最初にZiegler及びNicholsによって記載されたルールにしたがって選択しても良い。更に、チューニングルールの改善されたバージョンもあり、コントローラによって自動的に実装可能なものも含まれる(LI,Y.,Ang,K.H.及びChong,G.C.Y.特許,software and hardware for PID control:an overview and analysis of the current art.IEEE Control Systems Magazine,26(1,2006):42〜54;Karl Johan Astrom & Richard M.Murray.Feedback Systems:An Introduction for Scientists and Engineers.Princeton NJ:Princeton University Press,2008;Finn HAUGEN.Tuning of PID controllers(Chapter 10):Basic Dynamics and Control.2009.ISBN 978−82−91748−13−9.TechTeach, Enggravhogda 45,N−3711 Skien,Norway.http://techteach.no.,pp.129〜155;Dingyu XUE,YangQuan Chen,Derek P.Atherton.PID controller design(Chapter 6),:Linear Feedback Control:Analysis and Design with MATLAB.Society for Industrial and Applied Mathematics(SIAM).3600 Market Street, 6th Floor,Philadelphia,PA(2007),pp.183〜235;Jan JANTZEN,Tuning Of Fuzzy PID Controllers,Technical University of Denmark,report 98−H 871,1998年9月30日)。
【0200】
PIDコントローラの市販版が入手可能であり、これらは、全コントロールアプリケーションの90%で用いられている。例えば、このようなコントローラを使用するため、アルファ帯域に対する特別レベルにEEGガンマ帯域を維持しようとすると、積分及び微分ゲインをゼロにセットし、比例ゲイン(刺激の振幅)を、相対ガンマ帯域レベルが振動開始するまで増大し、この後、振動の周期を測定することができる。PIDは、その同調されたパラメータ値にセットされる。
【0201】
伝統的な制御理論は、1または少数のシステム変数のみを有する線形システムに対しては、よく作用するが、システム用に開発された特別な方法は、システムが非線形(すなわち、状態空間表現は非線形の微分方程式を含む)、または、複数の入力/出力変数である。制御すべき生理系は一般的に非線形であり、一般的に複数の出力生理信号が存在するため、このような方法は、本発明にとって重要である。これらの方法は、
図8に示すコントローラに実装しても良いことが理解される(Torkel GLAD及びLennart Ljung.Control Theory.Multivariable and Nonlinear Methods.ニューヨーク:Taylor and Francis,2000;Zdzislaw BUBNICKI.Modern Control Theory.ベルリン:Springer,2005)。
【0202】
図8に示すコントローラは、フィードフォワード方法を使用してもよい(Coleman BROSILOW,Babu Joseph.Feedforward Control(Chapter9):Techniques of Model−Based Control.Upper Saddle River,N.J.:Prentice Hall PTR,2002.pp,221〜240)。したがって、
図8のコントローラは、予測タイプのコントローラ、及び、システムの出力変数の将来価値に基づく基準を最適にするために、可能な入力中で選択する目的で、システムのモデルがシステムの将来の出力を計算するために使用されるとき等、なお他の事情で開発された方法であっても良い。
【0203】
システムコントローラの性能は、PIDコントローラのフィードバック閉ループ制御をフィードフォワード制御に組み合わせることで向上することができ、システムの将来の動さに関する知識は先方に送られ、PID出力と組み合わされシステム全体の性能を改善する。例えば、
図8の検知した環境入力は、このようなシステムに対する環境入力が、遅れてシステムに悪影響を有する場合、コントローラは、この情報を使用してシステムに予測制御入力を付与し、フィードバックのみのコントローラで事後のみ検出される悪影響を回避または軽減する。
【0204】
実施形態では、ローパスフィルタが、所定のカットオフ周波数よりも低い周波数の信号を通し、カットオフ周波数よりも高い周波数の信号を減衰する。ローパスフィルタは、滑らかな信号形成を行い、信号から過渡的及びノイズ信号を除去するために使用される。各周波数に対する減衰量は、フィルタデザインにしたがい、異なる周波数範囲の減衰のために、多段フィルタリングを用いても良い。いくつかの実施形態では、ローパスフィルタは、1つまたは複数のアナログフィルタである。いくつかの実施形態では、ローパスフィルタは、1つまたは複数のデジタルフィルタである。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のローパスフィルタは能動フィルタであり、他の実施形態では、1つまたは複数の実施形態では、ローパスフィルタは受動フィルタである。他の実施形態では、1つまたは複数のローパスフィルタは、上述のアナログ、デジタル、能動及び/または受動フィルタの任意の組み合わせとしても良い。1つまたは複数のフィルタは、回路基板に組み立てられる抵抗器、キャパシタ及びコイル等の基本的な電気素子を有してもよく、または、ICパッケージに集積され素子または上述の任意の組み合わせとしても良い。
【0205】
典型的なローパスフィルタの周波数応答は、
図9Aに示してある。ローパスフィルタ自体は、そのカットオフ周波数及び周波数ロールオフの割合に特徴を有しても良い。
図9Aに示すように、カットオフ周波数では、フィルタは、入力電力を半分または−3dB減衰の後、急速にロールオフする必要がある。ローパスフィルタは、使用意図にしたがって、1次フィルタまたは高次としても良い。より工事のフィルタは、信号をより急速に減衰し、ロールオフをシャープにする。ローパスフィルタは、周波数応答の形状と共に、所要範囲の周波数(通過帯域)に対応する。
【0206】
図9Bは、負荷と直列の抵抗Rと、負荷に並列のキャパシタCとを有する簡単な受動ローパスフィルタ回路を示す。他の簡単な受動ローパスフィルタは、抵抗−コイルローパスフィルタ、または、R−L−Cフィルタまたはこれらの任意の組み合わせとしても良い。当業者であれば、種々の素子及び素子の組み合わせ、または、多くの異なる周波数応答フィルタを、カットオフ閾値より上の周波数を除外するために使用しても良いことが理解される。
【0207】
図9Cは、典型的な能動ローパスフィルタを示す。受動及び能動の双方のフィルタは、同様のフィルタリング特性を有しても良く、能動フィルタは追加ゲインまたはフィルタ済の信号に対する増幅を設けても良い。能動フィルタリングデバイスを使用する場合、能動素子のダイナミックレンジは、増幅器が期待される入力信号で飽和せず、また、それは、ノイズフロアによって圧倒されるような低振幅で動作しないように考慮する必要がある。
【0208】
例えば、脳卒中または一過性脳虚血発作に関する患者の将来の状態に関する予測を行うなど、システム挙動の予測を実行するために、システムの数学的モデルが必要とされる。身体的第1原理(ホワイトボックス)に完全に基づくモデルは、特に生理的システムの場合は、稀である。代わりに、従来のシステムの構造及び機構的理解を用いるほとんどのモデルでは、グレイボックスモデルと呼ばれている。ホワイトまたはグレイボックスモデルを構成するために、システムの機構が十分に理解されていない場合、ブラックボックスモデルを代わりに使用しても良い。このようなブラックボックスモデルは、自己回帰モデル(Tim BOLLERSLEV.Generalized autoregressive condiditional heteroskedasticity.Journal of Econometrics 31(1986):307−327)、または、主要成分を使用するもの(James H.STOCK,Mark W.Watson.Forecasting with Many Predictors,Handbook of Economic Forecasting.Volume 1,G.Elliott,C.W.J.Granger及びA.Timmermann,eds(2006)Amsterdam:Elsevier B.V,pp515−554)、カルマンフィルタ(Eric A.WAN及びRudolph van der Merwe.The unscented Kalman filter for nonlinear estimation,Proceedings of Symposium 2000 on Adaptive Systems for Signal Processing,Communication and Control (AS−SPCC),IEEE,レイク・ルイーズ,アルバータ州,カナダ,2000年10月,pp153〜158)、ウェーブレット変換(O.RENAUD,J.−L.Stark,F.Murtagh.Wavelet−based forecasting of short and long memory time series.Signal Processing 48(1996):51〜65)、隠れマルコフモデル(Sam ROWEIS及びZoubin Ghahramani.A Unifying Review of Linear Gaussian Models.Neural Computation 11(2,1999):305〜345)、または、人口の神経ネットワーク(Guoquiang ZHANG,B.Eddy Patuwo,MichaelY.Hu.Forecasting with artificial neural networks:the state of the art.International Journal of Forecasting 14(1998):35〜62)を備える。
【0209】
本発明に対して、ブラックボックスモデルを使用する必要のある場合、好ましいモデルは、サポートベクターマシンを使用するものである。サポートベクターマシン(SVM)は、管理された学習の大きな背景内での分類の問題に対するアルゴリズム法である。過去、多層誤差逆伝搬神経ネットワークまたはより複雑な方法で解決されてきた多くの分類の問題は、SVMでより容易に解決されることが判明した(Christopher J.C.BURGES.A tutorial on support vector machines for pattern recognition.Data Mining and Knowledge Discovery 2(1998),121−167;J.A.K. SUYKENS,J.Vandewalle,B.De Moor.Optimal Control by Least Squares Support Vector Machines. Neural Networks14(2001):23−35;SAPANKEVYCH,N.and Sankar,R.Time Series Prediction Using Support Vector Machines:A Survey.IEEE Computational Intelligence Magazine 4(2,2009):24−38; PRESS,WH; Teukolsky, SA; Vetterling, WT;Flannery,BP(2007).Section 16.5.Support Vector Machines.:Numerical Recipes:The Art of Scientific Computing(3rd ed.).ニューヨーク:ケンブリッジ大学出版局)。
【0210】
次に、脳卒中または一過性脳虚血発作を予測し、かつ、場合により回避する問題について考える。実施例は、迷走神経刺激が上述のように適用されるが、刺激が適用されるのは、発明のフィードフォワードシステムが、脳卒中または一過性脳虚血発作が起きようとしていることを予測したときのみである。開示した予測方法に対する対象は、最近一過性脳虚血発作を患った人及び数日中に脳卒中の恐れがある人を含む(JOHNSTON SC,Rothwell PM,Nguyen−Huynh MN,Giles MF,Elkins JS,Bernstein AL,Sidney S.Validation and refinement of scores to predict very early stroke risk after transient ischaemic attack.Lancet 369(9558,2007):283〜292)。
【0211】
生理的データのトレーニングセットは、脳卒中または一過性脳虚血発作が進行中であるかどうかを包含する事項を知得する。したがって、患者の状態のバイナリ分類は、脳卒中または一過性脳虚血発作が進行しているかどうかであり、分類するために使用されるデータが知得した生理学的データからなる。トレーニングデータは、単独の個人から取得するのが好ましいが、現実的な事項として、データのトレーニングセットは、通常、外来または病院の生理学的モニタリングのためのボランティアの個人のグループから得られる。一般的に、取得する生理的データが多いほど、予測が好適になる。
【0212】
脳卒中またはTIAが切迫していることの予測は、血栓の形成または動脈塞栓症が起こりそうなことに基づいても良い。それに関して、脳塞栓を監視する移動式監視デバイスが存在する(MacKINNON AD, Aaslid R,Markus HS.Long−term ambulatory monitoring for cerebral emboli using transcranial Doppler ultrasound.Stroke 35(1,2004):73〜8)。これは、経頭蓋ドップラー信号を用いて、典型的には中大脳動脈において、塞栓の通過を測定する。一方、いくつかの脳塞栓は脳卒中の症状を起こし、他の塞栓は症状を起こさず、患者が認識しないことがある。したがって、本発明の1つの実施形態では、上記デバイスによる塞栓の検出が、TIAまたは脳卒中を予測するための入力として使用されるが、塞栓の出現及びそれ自体は、必ずしもTIAまたは脳卒中が差し迫っていることの予測のきっかけにはならない。追加の生理学的変数が、予測するために使用される。
【0213】
追加の生理学的変数は、EEG及びその誘導された特性、心拍(心電図誘導)、血圧(非侵襲的血圧計)、呼吸(例えば、腹部及び胸部プレスチモグラフィ)及び動き(加速度計)を包含するのが好ましい。薬剤及び医薬のモニタリングのため、全身代謝、及び、凝固の変化を監視するため、生体の化学反応が経皮逆イオン導入を用いて非侵襲的に測定しても良い(Leboulanger B,Guy RH,Delgado−Charro MB.Reverse iontophoresis for non−invasive transdermal monitoring.Physiol Meas 25(3,2004):R35〜50)。移動式非侵襲的測定は、皮膚インピーダンス(皮膚電気リード)、二酸化炭素(鼻カニューレによるカプノメトリ)、発生(マイクロホン)、光(光センサ)、外部及び指温度(温度計)等、及び、刺激デバイスのパラメータ、「進行中の脳卒中一過性脳虚血発作」のバイナリ(イエス/ノー)データが取得される時より前のΔ時間単位で評価される全てを包含するのが好ましい。デルタの多くの値は、数秒から数分、数時間と考えても良い。一般的に、デルタの値が増大すると、予測の計算された不確実性も増大する。脳卒中または一過性脳虚血発作の発症は、データ(例えば、EEGデータ)から、及び/または、突然の脱力若しくはしびれ、及び、視力の衰え若しくは喪失等の症状の出現時の患者の活性化されたイベントマーカから推測し得る。
【0214】
移動式非侵襲的測定の選択は、生理的考察により、動機付けしても良い。例えば、ECGは、心房細動の存在(または、予測)、血圧の急上昇の存在の移動式血圧モニタ、並びに、感染及び炎症の存在を監視する体温度計モニタを自動的に監視し得る。自律神経系の状態は、同様に心拍変動(ECGを介して)及び皮膚インピーダンスを通して同様に監視される。EEGは更に、虚血の発症及び経過の証拠を提供し得る(FERREE TC,Hwa RC.Electrophysiological measures of acute cerebral ischaemia、Phys Med Biol 50(17,2005):3927−3939)。しかし、虚血事象の詳細な生理学的メカニズムが完全には理解されておらず、ブラックボックスモデルが予測に用いられるため、虚血に対する不明確な関連を有する生理的変数を監視しても良い。
【0215】
脳卒中または一過性脳虚血発作を経験していない患者に対して、脳卒中または一過性脳虚血発作が起ころうとしていることを、将来におけるΔ時間単位で予測するため、SVMがトレーニングされ、トレーニングセットは上述の生理的信号を含む。SVMは、更に、一過性脳虚血発作の終了を、将来におけるΔ時間単位で予測するためにトレーニングされ、トレーニングセットは、上述の生理的信号から抽出される時間−コースの特徴を含む。SVMのトレーニングの後、コントローラの一部として実装される。コントローラは、脳卒中または一過性脳虚血発作が起こりそうなことの予測があるときはいつでも、予防として迷走神経刺激を適用しても良い。コントローラは、一過性脳虚血発作の終了を検出したときに、迷走神経刺激を止めるようにプログラムしても良い。いずれの事象においても、患者は、医療緊急時として、進行中の何らかの脳卒中または一過性脳虚血発作を治療すべきであり、予防としての迷走神経刺激を用いるにも関わらず緊急治療を直ちに対処すべきことが理解される。脳卒中または一過性脳虚血発作が予想されるだけの場合、迷走神経刺激が事象を阻止し得る予防として使用するにも関わらず、患者は直ちに、最も近い急性脳卒中治療センタまたは緊急質の待合室に直ちに移送し、その位置で待ち、予想される脳卒中または一過性脳虚血発作が起こるかどうか確認する。
【0216】
本発明について、特定の実施形態を参照してここに説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途を説明するだけのものであることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲で画定される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変形を図示の実施形態に施し、他の配置を構成しても良いことが理解される。