(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981764
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】持続型帯電防止架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20211206BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04CES
C08L23/00
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2017-70236(P2017-70236)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172468(P2018-172468A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177380
【氏名又は名称】三和化工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神野 裕幸
【審査官】
芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−117739(JP,A)
【文献】
特開2002−194158(JP,A)
【文献】
特開平10−176079(JP,A)
【文献】
特開2010−037423(JP,A)
【文献】
特開平06−107963(JP,A)
【文献】
特開昭62−153326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
B29C 44/00−44/60,67/20
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂100重量部に対しアニオン系界面活性剤を充填剤の表面にコーティングした帯電防止剤80重量部と発泡剤、架橋剤を添加混練して発泡性樹脂組成物を密閉金型中に充填して130kg/cm2の加圧下に165℃で60分間加熱し、発泡剤及び架橋剤を分解させた後除圧して、発泡させてなる持続型帯電防止架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項2】
ポリオレフィン樹脂100重量部に対しアニオン系界面活性剤を充填剤の表面にコーティングした帯電防止剤80重量部と発泡剤、架橋剤を添加混練して発泡性樹脂組成物を密閉金型中に充填して130kg/cm2の加圧下に165℃で60分間加熱し、発泡剤及び架橋剤を分解させた後除圧して、発泡させる持続型帯電防止架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン系界面活性剤をブレンドした充填剤を添加することで、表面抵抗値が1×10
12Ω/□以下とした架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られた架橋ポリオレフィン系発泡体製品は、その優れたクッション性により輸送時の緩衝材として使用されている。
【0003】
しかし、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は絶縁体であるため、摩擦等で蓄電することでほこり等が吸着し汚染されてしまう。
【0004】
そこで表面抵抗値が1×10
12Ω/□以下の持続型帯電防止架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の要望が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−37423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の帯電防止発泡体は、界面活性剤をポリオレフィン樹脂に添加して帯電防止性を得ていた。しかしながら、製造時に界面活性剤が液化して作業性に問題が起きることがある。本発明者らは作業性を改善するとともに1×10
12Ω/□以下の表面抵抗値を発揮する持続型帯電防止架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は基材となるポリオレフィン樹脂100重量部に対しアニオン系界面活性剤を充填剤の表面にコーティングした帯電防止剤を50〜80重量部と発泡剤、架橋剤を添加混練して発泡性樹脂組成物を密閉金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤及び架橋剤を分解させた後除圧して、発泡させてなるものである。
【0008】
本発明に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は基材となるポリオレフィン樹脂100重量部に対しアニオン系界面活性剤を充填剤の表面にコーティングした帯電防止剤を50〜80重量部と発泡剤、架橋剤を添加混練して発泡性樹脂組成物を密閉金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤及び架橋剤を分解させた後除圧して、発泡させてなる製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、1×10
12Ω/□以下の表面抵抗値を有する持続型帯電防止架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で使用した帯電防止剤は、一般的なアニオン系界面活性剤4wt%を充填剤の表面にコーティングしたものである。
充填剤は炭酸カルシウム等のプラスチック、ゴム用の配合剤が用いられる。
【0011】
本発明においては、熱可塑性樹脂とは例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリブテン等を本発明の目的を損なわない範囲において1種または多種を用いることが出来る。
【0012】
本発明でいう有機過酸化物とは、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキシー3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α、α―ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等である。
【0013】
本発明でいう発泡剤とは、アゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等である。
【0014】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。発泡助剤としては尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。
【0015】
本発明においては、使用する組成物の物性の改良あるいは価格の低下を目的として、架橋結合に著しい悪影響を与えない配合剤、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、あるいはパルプ等の繊維物質、または各種染料、顔料並びに蛍光物質、その他常用のゴム配合剤等を必要に応じて添加することができる。
【0016】
本発明のポリエチレン系発泡体の製造方法は、用いた有機過酸化物や発泡剤などによる発泡温度や架橋開始温度などにより、従来公知の方法及び適宜の条件で行うことができる。
【0017】
本発明でいう表面抵抗値は、高抵抗計(商品名:ハイレスタ−UP、三菱化学(株)製)を用いて測定した。
【0018】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例により何等限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
低密度ポリエチレン (商品名:ノバテックLF441、密度0.924g/cm3、メルトフローレート2.0g/10min、三菱化学株式会社製)100重量部にアニオン系界面活性剤を充填剤の表面にコーティングした帯電防止剤(商品名:ACP1550、三共精粉株式会社製)80重量部、アゾジカルボンアミド4.5重量部、亜鉛華4.0重量部、ジクミルパーオキサイド0.8重量部をミキシングロールにて練和して得られた組成物を、19t ×160×160mmのプレス金型中に充填し、130kg/cm2 の外圧をかけて、165℃で60分間加熱した後、除圧して発泡体を得た。
【0020】
得られた発泡体は、みかけ密度140kg/m3 で、表面抵抗率を測定したところ3×10
10Ω/□であり、帯電防止性を有していた。
また、3ヶ月放置後表面抵抗率を測定したところ、1×10
11Ω/□であり、帯電防止性が維持できていた。
【実施例2】
【0021】
アニオン系界面活性剤を充填剤の表面にコーティングした帯電防止剤の添加量を50重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0022】
得られた発泡体は、みかけ密度130kg/m3 で、表面抵抗率を測定したところ3×10
10Ω/□であり、帯電防止性を有していた。
また、3ヶ月放置後表面抵抗率を測定したところ、2×10
11Ω/□であり、帯電防止性が維持できていた。
比較例1
【0023】
アニオン系界面活性剤を充填剤の表面にコーティングした帯電防止剤の添加量を30重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0024】
得られた発泡体は、みかけ密度130kg/m3 で、表面抵抗率を測定したところ5×10
10Ω/□であり、帯電防止性を有していた。
しかしながら、3ヶ月放置後表面抵抗率を測定したところ、4×10
13Ω/□になり、帯電防止性が維持できていなかった。
比較例2
【0025】
アニオン系界面活性剤を充填剤の表面にコーティングした帯電防止剤の添加量を100重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0026】
得られた発泡体は、みかけ密度140kg/m3 で、表面抵抗率を測定したところ5×10
10Ω/□であり、帯電防止性を有していたが形状がいびつであり、緩衝材の用途に向かなかった。
【0027】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明の方法によれば、持続性に優れた帯電防止架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造できる。本発明の方法によって製造された帯電防止架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、静電気によるゴミの付着などの汚れが問題になる、電気製品や電子機器の断熱材、緩衝材等に適用できる。