(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
印刷用紙の搬送方向と直交する方向であるライン方向に並ぶ複数の印刷素子を有し、該複数の印刷素子により、前記ライン方向に並ぶ複数のドットからなるドットラインを前記印刷用紙上に形成する印刷ヘッドと、
印刷用紙を前記搬送方向に搬送するステッピングモータであって、1つの前記ドットラインである第1のドットラインを印刷する位置から、該第1のドットラインの次のドットラインである第2のドットラインを印刷する位置まで前記印刷用紙を搬送するのに、複数パルスで前記印刷用紙を搬送するステッピングモータと、
前記複数パルスのうちの所定数のパルスの時間内で前記第1のドットラインを形成しつつ前記印刷用紙を第1の速度で搬送し、前記複数パルスのうちの残りのパルスで前記第2のドットラインを印刷する位置まで第2の速度で前記印刷用紙を印刷せずに搬送するように、前記印刷ヘッドと前記ステッピングモータを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、印刷データに基づいて前記第1の速度を求めるとともに、印刷データに基づいて前記第2のドットラインにおける前記所定数のパルスの時間内での搬送速度である第3の速度を求め、前記第1の速度と前記第3の速度とに基づいて、前記第1の速度から前記第3の速度まで滑らかに変化するよう加減速し、且つ前記第1の速度により一定速度で搬送するよりも速くなるような前記第2の速度の変化のパターンを決定することを特徴とするプリンタ。
前記制御手段は、前記第1の速度及び前記第3の速度と、前記第2の速度の変化のパターンとの関係を表すテーブルに基づいて、前記第2の速度の変化のパターンを決定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のプリンタ。
温度センサをさらに備え、前記制御手段は、前記温度センサにより検出された温度に基づいて、前記第2の速度の変化のパターンの決定に用いる前記テーブルを変更することを特徴とする請求項7に記載のプリンタ。
印刷用紙の搬送方向と直交する方向であるライン方向に並ぶ複数の印刷素子を有し、該複数の印刷素子により、前記ライン方向に並ぶ複数のドットからなるドットラインを前記印刷用紙上に形成する印刷ヘッドと、印刷用紙を前記搬送方向に搬送するステッピングモータであって、1つの前記ドットラインである第1のドットラインを印刷する位置から、該第1のドットラインの次のドットラインである第2のドットラインを印刷する位置まで前記印刷用紙を搬送するのに、複数パルスで前記印刷用紙を搬送するステッピングモータと、を備えるプリンタを制御する方法であって、
前記複数パルスのうちの所定数のパルスの時間内で前記第1のドットラインを形成しつつ前記印刷用紙を第1の速度で搬送し、前記複数パルスのうちの残りのパルスで前記第2のドットラインを印刷する位置まで第2の速度で前記印刷用紙を印刷せずに搬送するように、前記印刷ヘッドと前記ステッピングモータを制御する制御工程を有し、
前記制御工程では、印刷データに基づいて前記第1の速度を求めるとともに、印刷データに基づいて前記第2のドットラインにおける前記所定数のパルスの時間内での搬送速度である第3の速度を求め、前記第1の速度と前記第3の速度とに基づいて、前記第1の速度から前記第3の速度まで滑らかに変化するよう加減速し、且つ前記第1の速度により一定速度で搬送するよりも速くなるような前記第2の速度の変化のパターンを決定することを特徴とするプリンタの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のプリンタの実施形態であるモバイルサーマルプリンタについて、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1及び
図2は、本実施形態のモバイルサーマルプリンタの外観斜視図である。
図1は、プリンタから排出された印刷済みの用紙を受ける着脱可能な排紙トレイを外した状態を示している。
図2は、排紙トレイを装着した状態を示している。
【0013】
図1において、モバイルサーマルプリンタ2は、アルミニウムなどの金属あるいは合成樹脂等からなる薄型の直方体状の筐体である本体部4と、本体部4に対してその端部付近に配置されたヒンジ部6により矢印Aの方向に開閉可能に支持された、やはり金属あるいは合成樹脂等からなる蓋部8とを有する。本体部4は、内部に例えばA6サイズなどの印刷用の感熱紙(印刷用紙)を複数枚収容可能な用紙収容部4aと、後述する感熱紙の搬送機構やサーマルヘッド(印刷ヘッド)などを内蔵する印刷機構部4bとを備える。用紙収納部4aには、蓋部8を矢印A方向に開いて複数枚の感熱紙(例えば50枚程度)を重ねて挿入することが可能である。用紙収納部4aに重ねて配置された複数枚の感熱紙は、重なりの一番下から1枚ずつ後述する給紙ローラ56により印刷機構部4bに供給される。供給された感熱紙は、印刷機構部4bにおいてサーマルヘッドが圧接されながらプラテンローラにより搬送されることにより印刷され、蓋部8の先端部分と印刷機構部4bとの間の隙間である排紙口4cからモバイルサーマルプリンタ2の外部、具体的には蓋部8の上面上に排出される。なお、モバイルサーマルプリンタ2の蓋部8の上には、
図2に示すように、プリンタから排出された印刷済みの用紙を受ける排紙トレイ12を取り外し可能に装着することができる。
【0014】
蓋部8のヒンジ6に近い位置の中央部には、透明なプラスチック板などが嵌め込まれた小窓(窓部)18が形成されている。ユーザはこの小窓18から用紙収納部4aの内部を覗くことができ(目視可能)、未使用の感熱紙の残枚数を目視で確認することができる。また、この小窓18内(窓部内)には、用紙収納部4a内に収納されている未使用の感熱紙の残量を表示する不図示の残量インジケータが内蔵されている。また、本体部4の小窓18に近い位置には、3個のLED20a,20b,20cが配置されている。これらのLEDは、モバイルサーマルプリンタ2の動作状態を表示する機能を有する。
【0015】
次に、
図3は、モバイルサーマルプリンタ2の側面図である。
図3において、モバイルサーマルプリンタ2の本体部4の側面には、電源ボタン22、USB端子24、充電端子26、蓋部8の開閉レバー28が配置されている。ユーザは、開閉レバー28を矢印Cの方向に操作することにより、片手で簡単に蓋部8を本体部4から開くことができる。開閉レバー28が矢印Cの方向に操作されると、蓋部8のロックが解除されて蓋部8が
図5に示す用紙押さえバネ9により本体部4から浮き上がる。なお、本体部4の側面にはディンプル30が多数形成されており、ユーザが手で持った時に滑りにくいように配慮されている。
【0016】
次に、
図4は、モバイルサーマルプリンタ2の内部構造を示す側断面図である。
図4(a)は排紙トレイ12を取り外した状態を示し、
図4(b)は排紙トレイ12を装着した状態を示している。
【0017】
図4(a)において、すでに説明したように、本体部4の用紙収納部4aは複数枚の感熱紙Sを重ねて収納できるように構成されている。ユーザは、蓋部8を矢印Aの方向に開くことにより用紙収納部4aに例えばA6などのサイズの感熱紙Sを例えば50枚程度収納することができる。用紙収納部4aの下部には、電源となる充電式のバッテリー52や、電源回路や制御回路などを搭載した回路基板54などが配置されている。用紙収納部4aの図中右側の下部には、感熱紙Sを給送するための給紙ローラ56が配置され、感熱紙Sは、給紙ローラ56の回転と摩擦力により重なりの下から1枚ずつ分離され給送される。なお、給紙ローラ56は、不図示のモータにより回転駆動される。
【0018】
給紙ローラ56の用紙搬送方向下流側には、プラテンローラ58が配置され、プラテンローラ58に給送された感熱紙Sはプラテンローラ58の周囲に配置されるプラテンガイド59により搬送方向が約180度反転される。さらにプラテンローラ58に、サーマルヘッド60が圧接されるように配置され、サーマルヘッド60がプラテンローラ58との間で感熱紙Sを挟んだ状態で加熱することにより印刷が行われる。本実施形態では、用紙収納部4aに載置された感熱紙の下側面に印刷が行われる。印刷された感熱紙Sは、すでに説明したように、蓋部8と印刷機構部4bの間に形成された排紙口4cから排出される。なお、プラテンローラ58は、後述するステッピングモータ76により回転駆動される。
【0019】
このように構成されるモバイルサーマルプリンタ2においては、用紙収納部4aに重ねて載置された感熱紙Sが、1番下の用紙から1枚ずつ給紙ローラ56の摩擦により矢印Dで示す給送方向に給送される。給送された感熱紙Sは、さらにプラテンローラ58に供給され、矢印Eで示すようにプラテンローラ58とプラテンガイド59とにより搬送方向を約180度反転される。反転された感熱紙Sには、サーマルヘッド60が圧接され加熱されて印刷が行われる。印刷された感熱紙Sは、プラテンローラ58によりさらに搬送されて排紙口4cからサーマルプリンタの外部に排出される。
【0020】
この時、モバイルサーマルプリンタ2に、
図4(b)に示すように排紙トレイ12が装着されている場合には、排出された印刷済みの感熱紙Sは、排紙トレイ12に収納される。また、下側トレイ14には開口14aが形成されており、
図4(b)に示すようにユーザが指Fでこの開口14aの上に重なった印刷済みの用紙の部分を下に押すことにより、用紙の先端部Saが下側トレイ14から浮き上がり、用紙が取り出しやすくなる。
【0021】
なお、
図4に示すように、サーマルヘッド60とプラテンローラ58との間から抜けた用紙を本体部4の背面側に付勢する付勢部材61を設けている。付勢部材61はシート材で形成されており、これによって用紙の後端Sbがプラテンローラ58側に付勢され、後続の用紙の先端がサーマルヘッド60とプラテンローラ58との間から抜けたのち、先行する用紙の後端の上側に乗りやすくなり、先行する用紙の後端がカールしていた場合であっても、後続の用紙の先端が先行する用紙の後端に衝突することによって起こるジャムの発生が低減される。
【0022】
次に、
図5は、本体部4に対して蓋部8を開いた状態を示した斜視図である。
【0023】
本体部4の用紙収納部4aは複数枚の感熱紙Sを重ねて収納できるように構成され、用紙の載置部の幅方向両端には、感熱紙Sの種類、及び感熱紙Sの有無を識別するための3つの紙検知センサ42a、42b、42cが配置されている。また、用紙収納部の図中左側の位置には、持ち上げレバー46が配置されている。この持ち上げレバー46は、その操作部46aを下方に押し下げることにより、シーソーの動きで用紙持ち上げ部46bが持ち上がり、感熱紙Sの先端部を持ち上げる。これにより、プリンタから印刷用紙を取り出す必要が生じた場合に、感熱紙Sを取り出しやすくすることができる。
【0024】
紙検知センサ42a、42b、42cは、光を発光する発光部と感熱紙Sで反射された光を受光する受光部とを有する反射型のセンサである。そして、紙検知センサ42a、42b、42cは、受光した反射光の強度が所定の閾値以上か否かにより、「1」あるいは「0」の信号を出力する。感熱紙Sにはその種類によって異なる位置に黒い四角いマークが印刷されている。紙検知センサ42a、42b、42cが、この黒いマークに対向している場合は、反射光が所定の閾値より少なくなり、紙検知センサは「0」の信号を出力する。また、紙検知センサ42a、42b、42cが、この黒いマークが印刷されていない感熱紙の通常の白い面に対向している場合は、反射光が所定の閾値以上となり、紙検知センサは「1」の信号を出力する。そして、これらの信号の組み合わせに基づいて、感熱紙の有無や感熱紙の種類の検知を行うことができる。
【0025】
また、蓋部8は、
図5に示すように、薄型でも強度が保てるようにハニカム構造8aを有する。蓋部8は、内蓋8bと外蓋8cから構成されており、ハニカム構造8aは内蓋8bにおける外蓋8c側(蓋部8を閉じた際の用紙収納部4aの反対側)に設けられており、
図5では内蓋8bの紙面裏側に設けられている。そして、蓋部8の幅方向両端部には、用紙収納部4aに載置された感熱紙Sを弾性的に押さえるための紙押さえ44a、44bが配置されている。また、蓋部8の先端部分には、前述した用紙押さえバネ9が配置されている。
【0026】
次に、
図6は、本実施形態のモバイルサーマルプリンタ2の電気的な構成を示すブロック図である。
【0027】
図6において、モバイルサーマルプリンタ2は、概略的な構成として、温度センサ72、湿度センサ74、感熱紙Sの搬送部76、感熱紙Sへの印刷を行う印刷部78、ユーザーとの間のインターフェイス80、ROM82、RAM84、制御部であるCPU86を備える。
【0028】
温度センサ72はサーミスタ等により構成され、サーマルヘッド60の近くに配置されており、サーマルヘッド60の温度と周囲の環境温度とを測定する。サーマルヘッド60自身の温度は周囲の環境温度に影響され、サーマルヘッド60が感熱紙Sに印刷するために必要なエネルギーは、周囲の環境温度の影響を受ける。そのため、この温度センサ72により検出された温度は、サーマルヘッド60の発熱量の制御のためのパラメータの1つとして使用される。また、湿度センサ74は静電容量変化型センサ等により構成され、サーマルヘッド60の近くに配置されており、サーマルヘッド60の付近の湿度を測定する。
【0029】
搬送部76は、感熱紙Sを検知する用紙検知センサ、プラテンローラ58、プラテンローラ58を回転駆動するステッピングモータ77等を備えて構成され、感熱紙Sの搬送を行う。印刷部78は、サーマルヘッド60等を備え、サーマルヘッド60に配置されている多数の発熱体を発熱させ、感熱紙Sを加熱して印刷を行う。インターフェース80は、ユーザーからの指令をCPU86に伝達したり、各部の状態の問い合わせに返信したりする。ROM82には、CPU86で実行するためのプログラムや制御変数等が記憶されている。RAM84は、ROM82から読み出されたプログラムを展開したり、CPU86の作業領域として使用したり、あるいは各種のセンサの測定データを一時格納するために用いられる。CPU86は、インターフェース80からのコマンド、及びROM82から読み出されてRAM84に展開されたプログラム等に従って、モバイルサーマルプリンタ2全体を制御する。
【0030】
次に、
図7は、サーマルヘッドにおける発熱体の配置と印刷用紙上に印刷されるドットの関係を示した図である。
【0031】
図7において、サーマルヘッド60には、感熱紙Sの搬送方向(矢印Tで示す)と直交するライン方向に、多数の発熱体60aが配置されている。これらの発熱体60aにより感熱紙Sに熱を加えることにより、感熱紙S上に印刷画像を構成する1単位であるドットSdが形成される。発熱体60aを発熱させて感熱紙Sに押し付けながら、プラテンローラ58で感熱紙Sを矢印Tで示す搬送方向に搬送することにより、感熱紙S上にドットSdが複数ラインにわたって形成され印刷が行われる。
【0032】
サーマルヘッド60の各発熱体60aの発熱制御は、1ライン上の印刷するべきドット数によって変化する。例えば、
図7にL1で示したライン(ラインデータ)は、感熱紙Sの幅方向に延びる1ライン上すべてにドットSdを形成する必要がある。そのため、サーマルヘッド60のすべての発熱体60aを発熱させる。ただし、この場合、携帯型のプリンタではサーマルヘッドに供給できる電力に限りがあるため、通常、1ラインに並ぶ発熱体60aを複数のグループに分け、グループごとに時間をずらして発熱させる制御を行う。本実施形態では、例えば、
図7に示すように1ラインに並ぶ発熱体60aをH1とH2の2つのグループに分け、H1のグループとH2のグループを時間的にずらして発熱させるものとする。なお、
図7にL2で示すように、1ライン上に形成するドット数が少ない場合には、発熱体60aをグループ分けする必要はなく、印刷するドットに対応する発熱体60aを同時に発熱させればよい。このグループ分けの数に応じて、後述する加熱時間t1が変化することになる。本実施形態においては、ラインL1で示したように左右の2つに分けて印刷するようにしたものを示しているが、1ラインごとのドット数に応じて3つ以上のグループに分割しても良く、それに応じて加減速パターンの数が増減しても構わない。
【0033】
次に、
図8は、感熱紙Sの搬送動作と発熱パルスの関係を示す図である。
【0034】
本実施形態では、
図8に示すように、1ライン目(1ドット)の印刷を行うための発熱体60aの発熱パルスの時間をt1とする。なお、この加熱時間t1は、印刷データや温度センサ72による温度検出結果などに基づいて決定される。そして、感熱紙Sを1ライン目から2ライン目まで送るのに、ステッピングモータ77を例えば8パルス(複数パルス)で移動させるものとする。
図8は、この8パルス分のタイミングチャートを示している。より具体的には、感熱紙Sのプラテンローラ58による搬送が開始されてから時間t1(以下、加熱時間)の間に1ドットが印刷され、この時間t1(所定数のパルス:本実施形態では1パルス)と残りの7パルス分の時間t2(以下、搬送時間)のトータル時間Tの間に、感熱紙Sが1ライン分搬送される。この時、最初の時間t1の間は、発熱体60aが発熱しつつ、同時に1パルス分ステッピングモータ77が回転するので、印刷されるドットは、モータの1パルス分ずれながら印刷されることとなる。なお、本実施形態では、このようにモータの動きによりずれながらドットが形成されることを、便宜上「滲み」と呼ぶことにする。印刷品質上は、この滲みが無い方が印刷がきれいになるが、実質的には1パルス分の滲みはほとんど目立たないため、本実施形態では、モータ1パルス分の滲みを許容するものとする。
【0035】
図9は、
図8に示したパルスで駆動させた場合の実際のドットの形成状態を示す図である。
図9では、印刷が開始される前の時点では、発熱体60aの中心は感熱紙S上の記号Pで示す位置にあるものとする。
【0036】
まず、
図8の時間t1(加熱時間)の間に、1ライン目のドットSd1が形成される。この時、時間t1の間にステッピングモータ77が1パルス分回転するため、実際に形成されるドットは、破線Sd1’で示すように、1パルス分滲むことになる。そして、時間t1が経過した後には、発熱体60aの中心は、記号P1で示す位置に移動している。ここで、1ライン目の印刷は終わり、その後ステッピングモータ77を7パルス分回転させて、記号P2で示す位置に発熱体60aの中心が来るように、感熱紙Sを搬送する。そして、この位置から2ライン目のドットSd2の印刷が行われる。このように、1ラインごとに発熱体60aによるドットの印刷と、ステッピングモータ77による感熱紙Sの搬送を繰り返すことにより、印刷が行われる。
【0037】
次に、上記で説明したことを前提とする本実施形態における感熱紙Sの搬送制御について説明する。
【0038】
上記の説明では、感熱紙Sを搬送させながら印刷する動作において、ステッピングモータ1パルス分の滲みを許容するものとして説明した。この前提で考えた場合、例えば1ドットを形成するための加熱時間t1が10msec以下であったとすると、ステッピングモータ77は10msecで1パルス駆動されるスピードで感熱紙を搬送することができる。つまり、ステッピングモータ77は、100ppsのスピードで感熱紙Sを搬送しながら印刷を行うことができる。同様に考えると、1ドットを形成するための加熱時間が2.5msec以下であったとすると、ステッピングモータ77は2.5msecで1パルス駆動されるスピード、すなわち400ppsで駆動されることができる。さらに、ステッピングモータの最大速度を例えば1600ppsとした場合、該当ラインに印刷データが無い、すなわち1ドットも印刷する必要がない場合、ステッピングモータ77は1600ppsで感熱紙Sを搬送することができる。また、反対に、1ドットを形成するための加熱時間が10msecより長い場合、ドットの形成中(加熱時間t1中)は、感熱紙Sの搬送を行わない方がよいとも考えられる。
【0039】
このような観点から、本実施形態では、印刷中(ドット形成中:
図8における加熱時間t1の間)の感熱紙Sの搬送速度を以下の4種類に分類する。
(1)印字ドットが無い:最大搬送速度(1600pps)
(2)1ドットの形成時間が2.5msec以下:搬送速度400pps
(3)1ドットの形成時間が10msec以下:搬送速度100pps
(4)1ドットの形成時間が10msecより長い:搬送速度0pps(停止)
そして、本実施形態では、この4種類の加熱時間t1中の搬送速度に基づいて、現在印刷しているラインから次の印刷ラインまでの間(
図8における搬送時間t2)でのステッピングモータ77の加減速制御を以下のように行う。
【0040】
まず、現在のラインでの搬送速度(
図8の加熱時間t1中における搬送速度)について上記の(1)〜(4)の4種類の搬送速度が考えられ、次のラインでの搬送速度(
図8の次のラインでの加熱時間t1中における搬送速度)について、やはり(1)〜(4)の4種類の搬送速度が考えられる。そのため、現在印刷しているラインから次の印刷ラインまでの間(
図8における搬送時間t2)での加減速パターンとして、4×4=16種類のパターンが考えられる。
【0041】
例えば、現在のラインの加熱時間t1中での搬送速度が0ppsで、次のラインの加熱時間中での搬送速度が100ppsだった場合、
図10(a)のような加減速パターンを設定する。この例は、2つのグループ(
図7におけるH1とH2)に分けた発熱体60aを、それぞれ5msec以上加熱しないと1ライン目のドットが形成できない場合であり、1ライン目のトータルの加熱時間が10msecを超える場合である。また、次のラインの印刷では、次のラインのデータを先読みすることにより、次の1ラインの印刷時間が10msec以下に収まることが分かっている。この場合、
図10(a)に示すように、1パルスごとに、0pps→100pps→400pps→800pps→1300pps→1300pps→800pps→400pps→100ppsと、速度を変化させる。加減速のパターンとしては、このパターンに限られるものではないが、現在のラインの加熱時間t1中の搬送速度と次のラインの加熱時間t1中の搬送速度とに基づいて、なるべく滑らかに速度が変化し且つ最高速度をなるべく速くして加減速できるように速度パターンを設定する。これにより、一定速度で感熱紙Sを搬送させる場合よりも効率よく感熱紙Sを搬送でき、印刷速度を向上させることができる。なお、この例においては、加熱時間t1が10msecを超える場合であるから、印刷中の搬送速度は0ppsである。すなわち、印刷完了時点で感熱紙Sが全く搬送されていない状態であり、印刷完了直後に1つ目のパルス(100pps)から搬送が開始され、そこから数えて8つのパルスで現在のラインの搬送が完了する。
【0042】
また、別の例として、現在のラインの加熱時間t1中での搬送速度が400ppsで、次のラインの加熱時間t1中での搬送速度が1600ppsだった場合、
図10(b)のような加減速
パターンを設定する。この例は、1ライン目の加熱時間が2.5msec以下で、次のラインの印刷では、次のラインのデータを先読みすることにより、次の1ラインにデータが無いことが分かっている場合である。この場合、
図10(b)に示すように、1パルスごとに、400pps→800pps→1300pps→1600pps→1600pps→1600pps→1600pps→1600ppsと、速度を変化させる。この場合でもやはり、現在のラインの加熱時間t1中の搬送速度と次のラインの加熱時間t1中の搬送速度とに基づいて加減速パターンを設定することにより、効率よく感熱紙Sを搬送でき、印刷速度を向上させることができる。
【0043】
図11は、現在のラインの加熱時間t1中での4種類の搬送速度v1と、次のラインの加熱時間t1中での4種類の搬送速度v2とに基づいて、パターン0〜パターン15の16種類の加減速パターンを設定したテーブルを示した図である。このテーブルをROM84に記憶しておき、CPU86は、現在のラインの加熱時間t1中での4種類の搬送速度v1と、次のラインの加熱時間t1中での4種類の搬送速度v2とに基づいて、パターン0〜パターン15のどの加減速パターンを用いるかを選択する。なお、
図10(a)に示したパターンは、v1が0ppsでv2が100ppsであるので、
図11におけるパターン14に対応する。同様に、
図10(b)に示したパターンは、v1が400ppsでv2が1600ppsであるので、
図11におけるパターン4に対応する。
【0044】
また、
図11に示すテーブルを複数種類用意しておき、温度センサ72の環境温度の測定値に基づいて、用いるテーブルを変更するようにしてもよい。これにより、環境温度に応じて最適な搬送速度制御を行うことができる。また、温度センサを有していない場合であっても、直前の動作状況などに応じて加熱時間t1を補正しても良く、例えば、直前のラインの印刷データと同じドットもしくは近接するドットの加熱のみによって印刷を行う場合には、加熱時間t1を短くすることなどが可能である。
【0045】
図12は、本実施形態における搬送速度制御の手順を示したフローチャートである。
【0046】
まず、ステップS1では、CPU86は、モバイルサーマルプリンタ2に入力された印刷データをドットラインごとのデータに分解する。そして、これから印刷するドットラインの印刷量(ドット数)を把握し、1ラインの印刷に必要なサーマルヘッド60の加熱時間t1を算出する。さらにCPU86は、算出された加熱時間t1から、この加熱時間t1中でのステッピングモータ77の回転速度v1を算出する。
【0047】
ステップS3では、CPU86は、ステップS1で分解された印刷データのうち次のラインのデータから、次のドットラインの印刷開始時までに印刷量(ドット数)を把握する。そして、次のラインの印刷に必要なサーマルヘッド60の加熱時間t1を算出する。さらにCPU86は、算出された次のラインでの加熱時間t1から、この加熱時間t1中でのステッピングモータ77の回転速度v2を算出する。
【0048】
ステップS5では、CPU86は、ステップS1及びS3で算出されたステッピングモータ77の速度v1、v2を、
図11に一例として示したテーブルに当てはめ、ステッピングモータ77の加減速パターンをパターン0〜パターン15の中から選択する。
【0049】
ステップS7では、ステップS1〜S5で求めた、速度v1、v2、加減速パターンに基づいて、1ライン目の印刷と2ライン目までの感熱紙Sの搬送とを行う。これにより、1ライン目の印刷が終了する。
【0050】
以上、ステップS1〜S7の動作を繰り返すことにより、1ラインずつ印刷が行われ、印刷データに基づく文字や画像などが感熱紙S上に印刷されることとなる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態においては、現在のラインの加熱時間中の搬送速度と次のラインの加熱時間中の搬送速度とに基づいて加減速パターンを設定することにより、効率よく感熱紙Sを搬送でき、印刷速度を向上させることが可能となる。
【0052】
(第2の実施形態)
この第2の実施形態に係るモバイルサーマルプリンタは、外観的構成、及び電気的ブロック構成が、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。本実施形態では、
図6に示す湿度センサ74を用いて、感熱紙Sの湿度に基づく印刷制御を行う点が、第1の実施形態と異なる。
【0053】
従来より、携帯型のプリンタは屋外で使用されることも多く、雨等で濡れた感熱紙が用いられた場合、印刷不良や故障を起こす場合がある。特に用紙を1枚1枚セットする単票型のプリンタでは、構造的に頻繁に感熱紙がプリンタにセットされるため、用紙が濡れる確率が高くなる。この第2の実施形態は、濡れた感熱紙がセットされた場合の対処方法に関するものである。
【0054】
図13は、モバイルサーマルプリンタ2におけるサーマルヘッドの付近の構造を模式的に示す図である。
【0055】
図13において、感熱紙Sは、プラテンローラ58とサーマルヘッド60の間に挟まれて搬送され、印刷が行われる。サーマルヘッド60の付近には、すでに説明した温度センサ72と湿度センサ74が配置されている。湿度センサ74は、すでに説明したように、静電容量変化型センサ等により構成される。また、プラテンローラ58の搬送方向上流側と搬送方向下流側には、感熱紙Sの先端の位置を検知する用紙検知センサ92、94がそれぞれ配置されている。
【0056】
このように構成されるモバイルサーマルプリンタにおける感熱紙Sの濡れ検出動作について、
図14のフローチャートを参照して説明する。
【0057】
まず、CPU86は、ステップS101においてタイマを起動し、感熱紙Sの挿入を待機する。ステップS102において、感熱紙Sの挿入が紙検知センサ92により検知されると、ステップS103において、サーマルヘッド60に感熱紙Sの先端が当たる位置まで感熱紙Sが搬送される。なお、ステップS101において、タイマがタイムアウトになった場合、ステップS123においてユーザにエラーを通知して終了する。
【0058】
ステップS104では、サーマルヘッド60を感熱紙Sが印刷されない程度に加熱し、その時の湿度を湿度センサ74で検出する。ステップS105で検出された湿度が規定値以内か否かを判定し、規定値以内の場合は、感熱紙Sは濡れていないと判断して、ステップS108において通常の印刷処理を実行する。一方、ステップS105で湿度が規定値を上回った場合は、感熱紙Sが濡れていると判断し、ステップS106において、ステップS107でタイマがタイムアウトするまでサーマルヘッド60を加熱させながら湿度を監視する。
【0059】
ステップS106で、タイムアウトまでの間に湿度が規定値以内に低下した場合は、ステップS109において、
図17に示す用紙濡れ印刷処理を実行する。ステップS107でタイムアウトになった場合は、ステップS110において、
図16に示す用紙濡れ処理を実行する。
【0060】
上記の動作をもう少し詳しく説明する。ステップS104において、サーマルヘッド60を印字されない程度に加熱し始めて、一定の検出周期で湿度を監視すると、感熱紙Sの水分がサーマルヘッド60で温められて蒸発し、湿度の検出値が上昇する。その湿度の検出値が規定値を超えている場合は、ステップS105において感熱紙Sが濡れていると判断する。感熱紙Sが濡れていると判定された場合は、タイムアウトまでの湿度変化に応じて処理を変更する。
【0061】
具体的には、用紙が濡れているが印刷可能な場合と、用紙の復旧が不能な場合を判断する。サーマルヘッド60を加熱した場合のタイムアウトまでの湿度は、例えば
図15に示すように変化する。そして、
図15(a)に示すように、タイムアウトまでサーマルヘッド60を加熱した場合に、タイムアウト時間内に規定値以下まで湿度が低下した場合は、感熱紙Sが濡れているが印刷可能と判断する。そして、ステップS109の用紙濡れ印刷処理を実行する。一方、
図15(b)に示すように、タイムアウト時間内に規定値以下まで湿度が低下しない場合は、復旧不能な程度まで感熱紙Sが濡れていると判断し、ステップS110の用紙濡れ処理を実行する。
【0062】
図16は、用紙濡れ処理の動作を示すフローチャートである。この処理は、感熱紙Sが復旧不能なまでに濡れている場合に行われる。
【0063】
まず、ステップS131において感熱紙Sが、用紙検知センサ92または94で検知されている場合、ステップS132でタイムアウトするまでステップS133において一定量の用紙搬送を行う。そして、タイムアウトした後も感熱紙Sが検知されている場合、感熱紙Sが詰まったり貼り付いたりして自動で排出できなくなったと判断する。この場合、ステップS134でユーザに紙詰まり異常を通知して終了する。一方、ステップS133の用紙搬送により、ステップS131で感熱紙Sが検知されなくなった場合は、用紙の排出はできたと判断して、ステップS135においてユーザに、用紙は濡れているが排出はできたことを知らせる用紙濡れ異常を通知して終了する。
【0064】
図17は、用紙濡れ印刷処理の動作を示すフローチャートである。この処理は、感熱紙Sが濡れてはいるが印刷可能な場合に行われる。
【0065】
まず、ステップS141において、感熱紙Sを用紙検知センサ92または94で検知する。感熱紙Sが無い場合は、ステップS153においてユーザにエラーを通知して終了する。一方、感熱紙Sがある場合は、ステップS142において、1ライン分の印刷を行い、ステップS143において1ライン分用紙を搬送する。そして、この用紙の搬送の後に、ステップS144において、印刷が行われない程度にサーマルヘッド60を加熱し、湿度を監視する。ステップS145において、湿度が規定値以内である場合には、ステップS146で1ライン印刷し、ステップS147で印刷終了か否かを判断する。印刷が完了している場合は、そのまま終了し、まだ印刷が完了していない場合は、ステップS143からの動作を繰り返す。
【0066】
ステップS145での湿度の監視中に、ステップS151で一定時間たっても湿度が規定値以下にならない場合は、印刷不能と判断して、
図16の用紙濡れ処理を実行して、用紙を排出する。そしてエラーを通知する。
【0067】
図18は、
図13とは異なる濡れの検出方法を示す図である。
図18に示すように、サーマルヘッド60の後方で感熱紙Sに押し付けられる抵抗値検出センサ96を配置する。この場合、感熱紙Sに接触している電極間の抵抗値の変化を監視することにより感熱紙の濡れを検知することができる。湿度センサ74の検出値の変化の代わりに、抵抗値の変化が規定値以内であることを検出すればよい。
【0068】
以上説明したように、上記の第2の実施形態によれば、濡れた感熱紙がセットされた場合でも、適切な処理を行うことが可能となる。
【0069】
なお、上記の説明では、印刷素子として発熱素子を有するサーマルヘッドとサーマルプリンタについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、インクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタ等にも適用可能である。