特許第6981803号(P6981803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981803
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】打撃工具
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/24 20060101AFI20211206BHJP
   B25D 11/00 20060101ALI20211206BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B25D17/24
   B25D11/00
   B25F5/02
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-152261(P2017-152261)
(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2018-176411(P2018-176411A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年5月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-82065(P2017-82065)
(32)【優先日】2017年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】特許業務法人勇智国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸
(74)【代理人】
【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行
(74)【代理人】
【識別番号】100125955
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 有三子
(72)【発明者】
【氏名】飯田 斉
(72)【発明者】
【氏名】古澤 正規
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩克
(72)【発明者】
【氏名】梅本 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳宣
(72)【発明者】
【氏名】内藤 晃
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0158170(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0279782(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/192477(WO,A1)
【文献】 特開2000−134897(JP,A)
【文献】 特開2012−090495(JP,A)
【文献】 特開2005−335032(JP,A)
【文献】 特開2004−255542(JP,A)
【文献】 特開2011−131364(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0264894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/24
B25D 11/00
B25F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端工具を直線状に駆動するように構成された打撃工具であって、
モータと、
前記モータの動力によって、前記先端工具を前記打撃工具の前後方向に延在する打撃軸に沿って直線状に駆動する打撃動作を行うように構成された駆動機構と、
前記モータおよび前記駆動機構を収容する第1ハウジングと、
振動を検出するように構成された振動センサとを備え、
前記振動センサは、前記打撃工具に生じる振動のうち、前記打撃動作に起因する第1周波数の振動を検出可能な状態、且つ、前記打撃動作以外の要因に起因する振動であって、前記第1周波数とは異なる第2周波数の振動の伝達が抑制された状態で、少なくとも1つの弾性体を介して前記第1ハウジングに保持されており
前記少なくとも1つの弾性体は、第1弾性体と、前記第1弾性体とは別個の第2弾性体とを含み、
前記振動センサは、前記前後方向において、前記第1弾性体と前記第2弾性体とに挟まれた状態で前記第1ハウジングに保持されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
請求項に記載の打撃工具であって、
前記第1弾性体と前記第2弾性体は、連結部を介して一体状に連結されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項3】
先端工具を直線状に駆動するように構成された打撃工具であって、
モータと、
前記モータの動力によって、前記先端工具を前記打撃工具の前後方向に延在する打撃軸に沿って直線状に駆動する打撃動作を行うように構成された駆動機構と、
前記モータおよび前記駆動機構を収容する第1ハウジングと、
振動を検出するように構成された振動センサとを備え、
前記振動センサは、前記打撃工具に生じる振動のうち、前記打撃動作に起因する第1周波数の振動を検出可能な状態、且つ、前記打撃動作以外の要因に起因する振動であって、前記第1周波数とは異なる第2周波数の振動の伝達が抑制された状態で、少なくとも1つの弾性体を介して前記第1ハウジングに保持されており、
前記少なくとも1つの弾性体は、弾性リングと、一対の弾性体とを含み、
前記弾性リングは、前記振動センサの外周部を取り巻くように前記振動センサに装着されて、前記振動センサの前側と後側で、前記振動センサと前記第1ハウジングの間に介在し、
前記一対の弾性体は、前記振動センサの左側と右側に夫々配置されて、前記振動センサと前記第1ハウジングの間に介在することを特徴とする打撃工具。
【請求項4】
請求項に記載の打撃工具であって、
前記一対の弾性体の各々は、前記左右方向において前記振動センサから離れるにつれて前記上下方向に互いに近づくように傾斜する一対の傾斜面を有し、前記一対の傾斜面を介して前記第1ハウジングに係合していることを特徴とする打撃工具。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1つに記載の打撃工具であって、
前記モータは、ステータと、ロータと、前記ロータから延設されたモータシャフトとを有するブラシレスモータとして構成されており、
前記第2周波数の前記振動は、前記モータの電磁振動に起因する振動であって、
前記第2周波数は、前記ロータに形成された極数に応じて規定される周波数であることを特徴とする打撃工具。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1つに記載の打撃工具であって、
前記モータは、前記モータシャフトの回転軸が前記打撃軸に交差する方向に延在するように配置されており、
前記振動センサの少なくとも一部は、前記回転軸の延在方向に関し、前記モータシャフトの長さの範囲内に配置されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項7】
請求項に記載の打撃工具であって、
前記振動センサは、前記前後方向において、前記モータよりも後方に配置されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1つに記載の打撃工具であって、
使用者による把持が可能に構成された把持部を更に備え、
前記把持部は、前記第1ハウジングに対して相対移動可能に弾性体を介して連結されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1つに記載の打撃工具であって、
前記第1ハウジングに対して相対移動可能に弾性体を介して連結された第2ハウジングと、
前記振動センサの検出結果に基づいて前記モータの駆動を制御するように構成されたコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記第2ハウジングに収容されていることを特徴とする打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端工具を所定の打撃軸に沿って直線状に駆動するように構成された打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
先端工具を所定の打撃軸に沿って直線状に駆動することで、被加工物に対する加工作業を行う打撃工具が知られている。一般的に、かかる打撃工具には、打撃工具の動作を制御するための様々な精密機器が搭載されている。例えば、特許文献1に開示されている打撃工具には、駆動モータ制御用のコントローラが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−131364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の打撃工具では、コントローラは、モータハウジングに固定されたリアカバー内に収容されている。しかしながら、先端工具の駆動に伴って比較的大きな振動が発生する打撃工具では、コントローラのような精密機器に関し、振動からの適切な保護が望まれている。
【0005】
本発明は、先端工具を所定の打撃軸に沿って直線状に駆動する打撃工具において、搭載された精密機器の振動からの合理的な保護に資する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、先端工具を直線状に駆動するように構成された打撃工具が提供される。この打撃工具は、モータと、駆動機構と、振動センサとを備えている。
【0007】
駆動機構は、モータの動力によって、先端工具を打撃工具の前後方向に延在する打撃軸に沿って直線状に駆動する打撃動作を行うように構成されている。振動センサは、振動を検出するように構成されている。更に、振動センサは、打撃工具に生じる振動のうち、打撃動作に起因する第1周波数の振動を検出可能な状態、且つ、第1周波数とは異なる第2周波数の振動の伝達が抑制された状態で配置されている。
【0008】
打撃工具に設けられる精密機器は、一般的には、動作不良の可能性を低減するために、できるだけ振動の伝達が抑制された状態で配置されることが好ましい。しかしながら、振動センサに関しては、一律で振動の伝達を抑制してしまうと、適切な検出結果が得られない可能性が高まってしまう。これに対し、本態様の打撃工具は、振動センサによって、打撃工具において特徴的な振動である打撃動作に起因する第1周波数の振動は検出しつつ、これとは異なる第2周波数の振動からは振動センサを保護することができる。つまり、本態様によれば、打撃工具に搭載された精密機器の一例である振動センサの合理的な保護を実現することができる。なお、ここでいう「第1周波数」および「第2周波数」は、何れも、ある程度の幅を有する周波数帯であってもよい。
【0009】
本発明の一態様によれば、モータは、ステータと、ロータと、ロータから延設されたモータシャフトとを有するブラシレスモータとして構成されていてもよい。そして、第2周波数の振動は、モータの電磁振動に起因する振動であって、第2周波数は、ロータに形成された極数に応じて規定される周波数であってもよい。ブラシレスモータでは、磁力を有するロータが回転することで、ロータの極数に応じた周波数の電磁振動が発生し、これが他の部分に伝達される。この電磁振動に起因する振動は、打撃動作に起因する振動以外で比較的大きい振動であるが、本態様によれば、振動センサをこの振動から適切に保護することができる。
【0010】
本発明の一態様によれば、モータは、モータシャフトの回転軸が打撃軸に交差する方向に延在するように配置されていてもよい。そして、振動センサの少なくとも一部は、回転軸の延在方向に関し、モータシャフトの長さの範囲内に配置されていてもよい。本態様によれば、前後方向に延在する打撃軸に沿って先端工具を駆動する駆動機構に対し、モータシャフトの回転軸が打撃軸に交差する方向に延在するようにモータが配置される打撃工具において、打撃動作に起因する振動を検出しやすく合理的な振動センサの配置を実現することができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、振動センサは、前後方向において、モータよりも後方に配置されていてもよい。前後方向に延在する打撃軸に沿って先端工具を駆動する駆動機構に対し、モータシャフトの回転軸が打撃軸に交差する方向に延在するようにモータが配置される打撃工具では、他の方向に比べてモータの後方にスペースができやすい。本態様では、このスペースを有効活用して、振動センサを配置することができる。
【0012】
本発明の一態様によれば、打撃工具は、モータおよび駆動機構を収容する第1ハウジングを更に備えていてもよい。振動センサは、少なくとも1つの弾性体を介して第1ハウジングに保持されていてもよい。本態様によれば、振動センサを、振動源となるモータおよび駆動機構を収容する第1ハウジングに対し、弾性体を介して保持するという簡便な構成により、打撃動作に起因する第1周波数の振動は検出しつつ、第2周波数の振動からは振動センサを保護することができる。
【0013】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの弾性体は、第1弾性体と、第2弾性体とを含んでもよい。振動センサは、前後方向において、第1弾性体と第2弾性体とに挟まれた状態で第1ハウジングに保持されていてもよい。本態様によれば、振動センサを挟んで前後方向に配置された第1弾性体および第2弾性体によって、第1ハウジングから振動センサへの第2周波数の振動の伝達を効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明の一態様によれば、第1弾性体と第2弾性体は、連結部を介して一体状に連結されていてもよい。振動センサを前後方向において第1弾性体と第2弾性体とで挟んだ状態で第1ハウジングに配置すると、第1弾性体および第2弾性体の一方が振動センサによって隠されてしまい、組み付けられたか否かを目視で確認できない可能性が生じる。これに対し、本態様によれば、第1弾性体および第2弾性体の一方の組付け忘れが生じた場合、組み付け作業者は、組み付け忘れを直ちに視覚的に認識することができる。また、小さな部品になりやすい第1弾性体や第2弾性体の紛失の可能性を低減することができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、打撃工具は、打撃軸に直交する上下方向に対応して延在し、使用者による把持が可能に構成された把持部を更に備えていてもよい。少なくとも1つの弾性体は、前後方向および上下方向に直交する左右方向に関し、振動センサの左右の端部に夫々係合する一対の弾性体を含んでもよい。本態様によれば、振動センサの左右の端部に係合した一対の弾性体によって、第1ハウジングから振動センサへの第2周波数の振動の伝達を効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明の一態様によれば、一対の弾性体の各々は、左右方向において振動センサから離れるにつれて上下方向に互いに近づくように傾斜する一対の傾斜面を有してもよい。そして、一対の弾性体の各々は、一対の傾斜面を介して第1ハウジングに係合していてもよい。本態様によれば、打撃動作に起因する振動とは異なる方向の振動が第1ハウジングから振動センサに伝達されることを効果的に抑制することができる
【0017】
本発明の一態様によれば、打撃工具は、使用者による把持が可能に構成された把持部を更に備えていてもよい。把持部は、第1ハウジングに対して相対移動可能に弾性体を介して連結されていてもよい。本態様によれば、第1ハウジングの振動が、使用者によって把持される把持部へ伝達されるのを効果的に抑制することができる。
【0018】
本発明の一態様によれば、打撃工具は、第1ハウジングに対して相対移動可能に弾性体を介して連結された第2ハウジングと、振動センサの検出結果に基づいてモータの駆動を制御するように構成されたコントローラを更に備えてもよい。そして、コントローラは、第2ハウジングに収容されていてもよい。コントローラは、振動センサと同様、精密機器である。本態様によれば、コントローラは、第1ハウジングからの振動伝達が抑制された第2ハウジングに収容されるため、コントローラを振動から適切に保護することができる。なお、第2ハウジングは、把持部を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るハンマドリルの縦断面図である。
図2】モータの横断面図である。
図3】ハウジングの一部が取り外された状態のハンマドリルの内部構造を背面視で示す説明図である。
図4図3のIV−IV線における断面図である。
図5】弾性介在部材の全体構成を示す説明図である。
図6】第2実施形態に係るハンマドリルの縦断面図である。
図7図6のVII−VII線における断面の斜視図である。
図8】保持部材、弾性介在部材、および弾性リングを説明するための分解斜視図である。
図9】積み重ねられた状態の保持部材の斜視図である。
図10】モータ収容部の下端部の横断面の斜視図である。
図11】モータ収容部の下端部の縦断面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、打撃工具の一例として、ハンマドリルを例示する。
【0021】
[第1実施形態]
以下、図1図5を参照して、第1実施形態に係るハンマドリル1について説明する。本実施形態のハンマドリル1は、ツールホルダ34に装着された先端工具91を所定の駆動軸A1に沿って直線状に駆動する動作(以下、打撃動作という)や、先端工具91を駆動軸A1周りに回転駆動する動作(以下、ドリル動作という)を実行可能に構成されている。
【0022】
まず、図1を参照して、ハンマドリル1の概略構成について説明する。図1に示すように、ハンマドリル1の外郭は、主としてハウジング10によって形成されている。本実施形態のハウジング10は、いわゆる防振ハウジングとして構成されており、第1ハウジング11と、第1ハウジング11に対して相対移動可能に弾性連結された第2ハウジング13とを含む。
【0023】
第1ハウジング11は、モータ2を収容するモータ収容部111と、駆動機構3を収容する駆動機構収容部117とを含み、全体として略L字状に形成されている。駆動機構収容部117は、駆動軸A1方向に延在する長尺状に形成されている。駆動機構収容部117の駆動軸A1方向における一端部には、先端工具91を着脱可能に構成されたツールホルダ34が設けられている。なお、ツールホルダ34は、駆動軸A1周りに回転可能に第1ハウジング11に保持されているとともに、先端工具91を回転不能、且つ、駆動軸A1方向に直線状に移動可能に保持するように構成されている。モータ収容部111は、駆動機構収容部117の駆動軸A1方向におけるもう一方の端部において、駆動機構収容部117に対して相対移動不能に連結固定され、駆動軸A1に交差して、駆動軸A1から離れる方向に突出するように配置されている。モータ収容部111内には、モータ2が、モータシャフト25の回転軸A2が駆動軸A1に交差する方向(詳細には、直交する方向)に延在するように配置されている。
【0024】
なお、以下の説明では、便宜上、ハンマドリル1の駆動軸A1方向をハンマドリル1の前後方向と規定し、ツールホルダ34が設けられている一端部側をハンマドリル1の前側(先端領域側ともいう)、反対側を後側と規定する。また、モータシャフト25の回転軸A2の延在方向をハンマドリル1の上下方向と規定し、駆動機構収容部117からモータ収容部111が突出する方向を下方向、反対方向を上方向と規定する。更に、前後方向および左右方向に直交する方向を、左右方向と規定する。
【0025】
第2ハウジング13は、把持部131と、上側部分133と、下側部分137とを含み、全体として略U字状に形成されている。把持部131は、作業者によって把持可能に構成され、モータシャフト25の回転軸A2方向(つまり上下方向)に延在するように配置される部分である。より詳細には、把持部131は、第1ハウジング11に対して後方に離間して上下方向に延在している。把持部131の前部には、使用者が指で押圧操作(引き操作)可能なトリガ14が設けられている。上側部分133は、把持部131の上端部に接続する部分である。本実施形態では、上側部分133は、把持部131の上端部から前方に延在し、第1ハウジング11の駆動機構収容部117の大部分を覆うように構成されている。下側部分137は、把持部131の下端部に接続する部分である。本実施形態では、下側部分137は、把持部131の下端部から前方に延在し、モータ収容部111の下側に配置されている。下側部分137の前後方向における中央部の下端部には、バッテリ装着部15が設けられている。ハンマドリル1は、バッテリ装着部15に装着されたバッテリ93から供給される電力により動作する。
【0026】
以上の構成によって、ハンマドリル1では、第2ハウジング13に加え、第1ハウジング11のうちモータ収容部111が上側部分133と下側部分137とに上下から挟まれた状態で外部に露出して、ハンマドリル1の外表面を形成している。
【0027】
以下、ハンマドリル1の詳細構成について説明する。まず、図1を参照して、ハウジング10の防振ハウジング構造について簡単に説明する。上述の通り、ハウジング10では、モータ2および駆動機構3を収容する第1ハウジング11に対し、把持部131を含む第2ハウジング13が相対移動可能に弾性的に連結されることで、第1ハウジング11から第2ハウジング13(特に、把持部131)への振動伝達の抑制が図られている。
【0028】
より詳細には、図1に示すように、第1ハウジング11の駆動機構収容部117と、第2ハウジング13の上側部分133との間には、左右一対の第1バネ71が配置されている。更に、第1ハウジング11のモータ収容部111と、第2ハウジング13の下側部分137との間には、第2バネ75が配置されている。本実施形態では、第1バネ71および第2バネ75は、圧縮コイルバネで構成されており、第1ハウジング11と第2ハウジング13とを、駆動軸A1方向において、把持部131が第1ハウジング11から離れる方向に付勢している。これらのバネに加え、駆動機構収容部117の前端部と、上側部分133の円筒状の前側部分の間には、弾性部材で形成されたOリング77が介在状に配置されている。
【0029】
更に、上側部分133および下側部分137は、夫々、モータ収容部111の上端部および下端部に対して摺動可能に構成されている。より詳細には、上側部分133の下面およびモータ収容部111の上端面は、互いに当接した状態で駆動軸A1方向に摺動可能な摺動面として形成されており、上側摺動部81を構成する。また、下側部分137の上面およびモータ収容部111の下端面は、互いに当接した状態で駆動軸A1方向に摺動可能な摺動面として形成されており、下側摺動部82を構成する。上側摺動部81および下側摺動部82は、第1ハウジング11と第2ハウジング13が駆動軸A1方向に相対移動するように案内する摺動ガイドとして機能する。これにより、打撃動作が行われるときに発生する振動のうち、最も大きく且つ支配的な駆動軸A1方向の振動が把持部131に伝達されるのを効果的に抑制することができる。
【0030】
以下、図1図3を参照して、第1ハウジング11の詳細な構成とその内部構造について説明する。
【0031】
まず、モータ収容部111とその内部構造について説明する。図1に示すように、モータ収容部111は、上側が開口した有底の矩形筒状に形成されている。本実施形態では、モータ収容部111には、モータ2が収容されている。本実施形態では、小型で高出力であることから、モータ2として、ステータ21と、ロータ22と、ロータ22から延設されたモータシャフト25とを備えたブラシレスモータが採用されている。上下方向に延在するモータシャフト25は、上下端部において、ベアリングによって回転可能に支持されている。モータシャフト25の上端部は、駆動機構収容部117内に突出しており、この部分に駆動ギア29が形成されている。また、図2に示すように、ロータ22には、回転軸A2周りの周方向に設けられた8つの収容孔に夫々永久磁石221が埋め込まれており、モータ2は、埋込磁石型の8極のブラシレスモータとして構成されている。
【0032】
また、図1および図3に示すように、モータ収容部111には、振動センサユニット4が保持されている。本実施形態では、振動センサユニット4は、上下方向においてモータシャフト25の長さの範囲内に配置され、前後方向において、モータよりも後方に配置されている。より詳細には、モータ収容部111の内部には、前後方向に直交するように配置された(法線が前後方向となる)内部壁112が設けられている。振動センサユニット4は、ステータ21およびロータ22よりも上方、且つ、ステータ21よりも後方において、内部壁112の背面に保持されている。なお、振動センサユニット4の構成とその保持構造については、後で詳述する。
【0033】
駆動機構収容部117とその内部構造について説明する。図1に示すように、駆動機構収容部117は、その後側部分の下端部が、モータ収容部111の上端部内に配置された状態で、モータ収容部111に対して相対移動不能に連結固定されている。駆動機構収容部117には、モータ2の動力によって先端工具91を駆動するように構成された駆動機構3が収容されている。本実施形態では、駆動機構3は、運動変換機構30と、打撃要素36と、回転伝達機構37とを含む。運動変換機構30および打撃要素36は、先端工具91を駆動軸A1に沿って直線状に駆動する打撃動作を行う機構であり、回転伝達機構37は、先端工具91を駆動軸A1周りに回転駆動するドリル動作を行う機構である。
【0034】
運動変換機構30は、モータ2の回転運動を直線運動に変換して打撃要素36に伝達するように構成されている。本実施形態では、運動変換機構30として、クランク機構が採用されている。より詳細には、クランク機構としての運動変換機構30は、クランクシャフト31と、連接ロッド32と、ピストン33と、シリンダ35とを含む。クランクシャフト31は、駆動機構収容部117の後端部にモータシャフト25と平行に配置されている。クランクシャフト31は、駆動ギア29に噛合する被動ギアと、偏心ピンとを有する。連接ロッド32の一端部は偏心ピンに連結され、他端部は連結ピンを介してピストン33に連結されている。ピストン33は、円筒状のシリンダ35内に摺動可能に配置されている。シリンダ35は、駆動機構収容部117の先端領域内に配置されたツールホルダ34の後部に、ツールホルダ34と同軸状に連結固定されている。モータ2が駆動されると、ピストン33は、シリンダ35内で駆動軸A1方向に往復移動される。
【0035】
打撃要素36は、直線状に動作して先端工具91を打撃することで、先端工具91を駆動軸A1に沿って直線状に駆動するように構成されている。本実施形態では、打撃要素36は、ストライカ361と、インパクトボルト363とを含む。ストライカ361は、シリンダ35内に駆動軸A1方向に摺動可能に配置されている。ストライカ361とピストン33との間には、ピストン33の往復移動によって生じる空気の圧力変動を介して、打撃子としてのストライカ361を直線状に移動させるための空気室365が形成されている。インパクトボルト363は、ストライカ361の運動エネルギを先端工具91に伝達する中間子として構成され、ツールホルダ34内に駆動軸A1方向に摺動可能に配置されている。
【0036】
モータ2が駆動され、ピストン33が前方に向けて移動されると、空気室365の空気が圧縮されて内圧が上昇する。このため、ストライカ361は、高速に前方に押し出されてインパクトボルト363に衝突し、運動エネルギを先端工具91に伝達する。これにより、先端工具91は駆動軸A1に沿って直線状に駆動され、被加工物を打撃する。一方、ピストン33が後方へ移動されると、空気室365の空気が膨張して内圧が低下し、ストライカ361が後方へ引き込まれる。運動変換機構30および打撃要素36は、このような動作を繰り返すことで、打撃動作を行う。
【0037】
回転伝達機構37は、モータシャフト25の回転動力をツールホルダ34に伝達するように構成されている。本実施形態では、回転伝達機構37は、複数のギアを含むギア減速機構として構成されており、モータ2の回転動力は、適宜減速された上でツールホルダ34に伝達される。なお、回転伝達機構37の動力伝達経路上には、噛合い式のクラッチ38が配置されている。クラッチ38が係合状態に置かれた場合には、回転伝達機構37は、モータシャフト25の回転動力をツールホルダ34に伝達することで、ツールホルダ34に装着された先端工具91を駆動軸A1周りに回転駆動するドリル動作を行う。一方、クラッチ38の係合状態が解除された場合には(図1は係合解除状態を示している)、回転伝達機構37によるツールホルダ34への動力伝達が遮断され、先端工具91は回転駆動されない。
【0038】
本実施形態のハンマドリル1は、駆動機構収容部117の上端部に回動可能に配置されたモード切替ダイヤル39の操作により、ハンマドリルモードおよびハンマモードの2つの動作モードのうち一方を選択可能に構成されている。ハンマドリルモードは、クラッチ38が係合状態とされ、運動変換機構30および回転伝達機構37が駆動されることで、打撃動作およびドリル動作が行われる動作モードである。ハンマモードは、クラッチ38が係合解除状態とされ、運動変換機構30のみが駆動されることで、打撃動作のみが行われる動作モードである。第1ハウジング11内(詳細には、駆動機構収容部117内)には、モード切替ダイヤル39に接続され、モード切替ダイヤル39でハンマドリル位置またはハンマ位置が選択された場合、選択された切替位置に応じてクラッチ38を係合状態と係合解除状態との間で切り替えるように構成されたクラッチ切替機構が設けられている。かかるクラッチ切替機構の構成については、周知の技術であるため、ここでの詳細な説明および図示は省略する。
【0039】
以下、図1を参照して、第2ハウジング13の詳細な構成とその内部構造について説明する。
【0040】
まず、上側部分133とその内部構造について説明する。図1に示すように、上側部分133の後側部分は、下側が開口した略矩形箱状に形成されており、駆動機構収容部117の後側部分(より詳細には、運動変換機構30および回転伝達機構37が収容されている部分)を上方から覆っている。また、上側部分133の前側部分は、円筒状に形成されており、駆動機構収容部117の前側部分(より詳細には、ツールホルダ34が収容されている部分)の外周を覆っている。上側部分133の後部上面には開口部が形成されており、この開口部から、駆動機構収容部117の上端部に設けられたモード切替ダイヤル39が外部に露出している。
【0041】
把持部131とその内部構造について説明する。図1に示すように、把持部131の前部には、作業者による押圧操作が可能なトリガ14が設けられている。筒状に形成された把持部131の内部には、トリガ14の操作に応じてオン状態とオフ状態との間で切り替えられるスイッチ145が設けられている。
【0042】
下側部分137とその内部構造について説明する。図1に示すように、下側部分137は、上側が一部開口した矩形箱状に形成されており、モータ収容部111の下側に配置されている。下側部分137の内部には、コントローラ6が配置されている。本実施形態では、コントローラ6として、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータで構成された制御回路が採用されている。コントローラ6は、図示しない配線によって、モータ2、スイッチ145、バッテリ装着部15、振動センサユニット4等と電気的に接続されている。
【0043】
コントローラ6は、トリガ14が押圧操作され、スイッチ145がオン状態となると、モータ2への通電(すなわち、先端工具91の駆動)を開始し、トリガ14の押圧操作が解除されて、スイッチ145がオフ状態となると、モータ2への通電を停止するように構成されている。更に、本実施形態では、コントローラ6は、モータ2の駆動開始から無負荷状態の間はモータ2を低回転数で駆動し、モータ2が負荷状態になると、モータ2を高回転数で駆動する制御を行うように構成されている。本実施形態では、駆動機構3の打撃動作に起因する振動が所定範囲を超えた場合に、モータ2が負荷状態になったと判断される。このために、本実施形態では、後述の振動センサユニット4によって、打撃動作に起因する振動が検出される。
【0044】
また、上述の通り、下側部分137の前後方向における中央部の下端部には、充電式のバッテリ93が着脱可能に構成されたバッテリ装着部15が2つ設けられている。本実施形態では、2つのバッテリ装着部15は、前後方向に並設されている。バッテリ93は、バッテリ装着部15に対して左側から右方向にスライド係合されるのとあわせて、バッテリ装着部15に電気的に接続される。なお、2つのバッテリ93がバッテリ装着部15に装着されると、2つのバッテリ93の下面は、面一となる。更に、下側部分137の前側下端部138と後側下端部139は、バッテリ93がバッテリ装着部15に装着された場合に、夫々、バッテリ93の前側と後側に配置され、その下面がバッテリ93の下面と概ね面一となるように構成されており、バッテリ93を外力から保護するバッテリ保護部として機能する。
【0045】
以下、図1および図3図5を参照して、振動センサユニット4の構成と、その保持構造について説明する。
【0046】
図3および図4に示すように、本実施形態では、振動センサユニット4は、センサ本体40と、センサ本体40を保持する保持部材41とを含む。詳細な図示は省略するが、センサ本体40には、振動を検出する振動センサと、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータとが搭載されている。なお、本実施形態では、振動センサとして、周知の加速度センサが採用されているが、振動を検出可能な他のセンサ(速度センサ、変位センサ等)が採用されてもよい。マイクロコンピュータは、振動センサによって検出された振動が所定の閾値を超えたか否かを判断し、判断結果に応じた信号(オフ信号またはオン信号)をコントローラ6(図1参照)に出力するように構成されている。なお、センサ本体40はマイクロコンピュータを備えず、振動センサの検出結果を示す信号をそのままコントローラ6に出力し、コントローラ6が判断を行ってもよい。保持部材41は、全体としては板状に形成されており、背面視矩形状の保持部411と、保持部411から左右方向に突出する一対のアーム部413とを有する。センサ本体40は、保持部411に形成された凹部内に保持されている。アーム部413には、夫々、貫通孔415が形成されている。
【0047】
モータ収容部111の内部壁112は、ステータ21およびロータ22よりもやや上方の領域に、左右に離間して配置され、後方へ突出する一対の円筒部113を有する。一対の円筒部113の離間距離は、保持部材41に設けられた一対の貫通孔415の離間距離に概ね等しく、また、円筒部113の外径は、保持部材41のアーム部413に設けられた貫通孔415よりも僅かに小さい。円筒部113の突出長さ(前後方向の長さ)は、保持部材41のアーム部413の厚みよりも大きい。円筒部113の内周面にはネジ穴114が形成されている。
【0048】
振動センサユニット4は、2つの弾性介在部材45を介して内部壁112に保持されている。図5に示すように、本実施形態では、各弾性介在部材45は、紐状の連結部455によって一体状に連結された環状の第1弾性体451および第2弾性体453で構成されている。本実施形態では、各弾性介在部材45は、ゴムによって一体成形された一部品として構成されている。なお、ゴムの硬度は概ね50度である。また、図4に示すように、第1弾性体451と第2弾性体453は、断面が概ね円形に形成されている。すなわち、本実施形態の弾性介在部材45は、紐で繋がった2つのOリングであると言い換えることもできる。
【0049】
振動センサユニット4が内部壁112に連結されるときには、まず、弾性介在部材45の第1弾性体451が、夫々、円筒部113の外周部に嵌め込まれる。このとき、図4に二点鎖線で示すように、第2弾性体453は、連結部455で第1弾性体451に連結されているために、円筒部113の近傍にぶらさがった状態となる。その後、円筒部113が、夫々、振動センサユニット4の保持部材41の貫通孔415に挿通される。更に、弾性介在部材45の第2弾性体453が、夫々、円筒部113の外周部に嵌め込まれる。つまり、振動センサユニット4(保持部材41)が、前後方向において、第1弾性体451と第2弾性体453とで挟まれた状態となる。この状態で、ワッシャ47を介して円筒部113のネジ穴114にネジ48が螺合されることで、振動センサユニット4が内部壁112に保持される。なお、ネジ48が螺合されると、第1弾性体451および第2弾性体453は、僅かに圧縮された状態で保持される。また、第1弾性体451と第2弾性体453を連結する連結部455は、アーム部413の側方に配置される。
【0050】
このような構造により、振動センサユニット4は、内部壁112に対して前後方向に(つまり、駆動軸A1方向に)相対移動可能に保持されている。なお、内部壁112の背面には、凹部115が形成されている。
【0051】
ところで、本実施形態では、センサ本体(振動センサ)40は、第1ハウジング11に生じる振動のうち、モータ2が負荷状態となったか否かの判断基準として用いられる打撃動作に起因する振動を確実に検出する必要がある。そこで、センサ本体40を含む振動センサユニット4は、振動源である駆動機構3を収容する第1ハウジング11に保持されている。一方で、その他の振動に関しては、精密機器であるセンサ本体40の動作不良の可能性を低減するために、センサ本体40には、できるだけ振動が伝達されないことが好ましい。
【0052】
一般的に、打撃動作に起因する振動は、比較的低周波の振動である。本実施形態のハンマドリル1では、打撃動作に起因する振動の周波数(以下、打撃周波数ともいう)は、50Hz程度である。一方、モータ2(図2参照)が駆動されると、磁力を有するロータ22が回転することで、ロータ22の極数(本実施形態では8)に応じて規定される周波数の電磁振動が発生し、第1ハウジング11に伝達される。この電磁振動に起因する振動は、打撃動作に起因する振動以外で比較的大きい振動であり、より高周波の振動である。本実施形態では、モータ2の電磁振動に起因する振動の周波数(以下、電磁振動周波数ともいう)は、2,400Hz程度である。
【0053】
そこで、振動センサユニット4は、上述のように構成された弾性介在部材45を介して、第1ハウジング11に生じる振動のうち、駆動機構3の打撃動作に起因する第1周波数の振動(詳細には、打撃周波数とその次数成分を中心とした一定の幅を有する周波数帯の振動)を検出可能、且つ、モータ2の電磁振動に起因する第2周波数の振動(詳細には、電磁振動周波数とその次数成分を中心とした一定の幅を有する周波数帯の振動)の伝達は抑制された状態で、内部壁112に保持されている。つまり、センサ本体40には、打撃動作に起因する第1周波数の振動が確実に伝達される一方、センサ本体40は、モータ2の電磁振動に起因する第2周波数の振動からは保護されている。
【0054】
以下、ハンマドリル1の動作について説明する。
【0055】
使用者がハンマドリルモードまたはハンマモードをモード切替ダイヤル39で選択し、トリガ14を押圧操作すると、コントローラ6は、低回転数でモータ2の駆動を開始する。なお、上述のように、ハンマドリルモードが選択された場合には、駆動機構3は、打撃動作およびドリル動作を行い、ハンマモードが選択された場合には、駆動機構3は、打撃動作のみを行う。これにより、第1ハウジング11には、打撃動作に起因する振動や電磁振動に起因する振動が生じるが、上述の弾性介在部材45の効果により、センサ本体40が検出する電磁振動に起因する第2周波数の振動は、打撃動作に起因する第1周波数の振動に比べると無視できる程度に小さくなっており、センサ本体40の振動センサは、打撃動作に起因する第1周波数の振動を確実に検出することができる。振動センサによって所定の閾値を超えた振動が検出されると、センサ本体40のマイクロコンピュータからコントローラ6に対して、振動が閾値を超えた場合の特定の信号が出力される。コントローラ6は、この信号に応じて、モータ2の回転数を高回転数に切り替える。使用者がトリガ14の押圧操作を解除すると、コントローラ6はモータ2の駆動を停止する。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態のハンマドリル1によれば、振動センサユニット4(センサ本体40)によって、ハンマドリル1において特徴的な振動である、駆動機構3の打撃動作に起因する第1周波数の振動(詳細には、打撃周波数とその次数成分を中心とした一定の幅を有する周波数帯の振動)は検出することができる。一方で、モータ2の電磁振動に起因する第2周波数の振動(詳細には、電磁振動周波数とその次数成分を中心とした一定の幅を有する周波数帯の振動)からは、センサ本体(振動センサ)40を保護することができる。このように、本実施形態では、精密機器の一例であるセンサ本体(振動センサ)40の合理的な保護が実現されている。
【0057】
本実施形態では、振動センサユニット4は、夫々が2つの弾性体(第1弾性体451と第2弾性体453)を含む2つの弾性介在部材45を介して、モータ2と駆動機構3を収容する第1ハウジング11(内部壁112)に保持されている。つまり、振動センサユニット4と第1ハウジング11との間に弾性介在部材45を介在状に配置するという簡便な保持構造により、打撃動作に起因する第1周波数の振動は検出しつつ、電磁振動に起因する第2周波数の振動からはセンサ本体(振動センサ)40を保護することができる。
【0058】
また、振動センサユニット4は、前後方向において、第1弾性体451と第2弾性体453とに挟まれた状態で、第1ハウジング11に保持されている。よって、本態様によれば、振動センサユニット4を挟んで前後方向に配置された第1弾性体451および第2弾性体453によって、第1ハウジング11から振動センサユニット4への第2周波数の振動の伝達を効果的に抑制することができる。特に、本実施形態のように、概ね円形の断面形状を有する第1弾性体451と第2弾性体453は、断面が矩形状の弾性体に比べて弾性変形しやすいため、振動伝達の抑制には好適である。なお、第1弾性体451と第2弾性体453の断面形状は、真円のみならず、若干歪んだ形状の円や、楕円であってもよい。
【0059】
更に、第1弾性体451と第2弾性体453は、連結部455を介して一体状に連結されている。第1弾性体451と第2弾性体453とが連結されておらず、別個の部品として扱われる場合には、上述のような組み付け作業時に、先に円筒部113に嵌め込まれる第1弾性体451が振動センサユニット4によって隠されてしまい、組み付けられたか否かを目視で確認できない可能性が生じる。これに対し、弾性介在部材45によれば、第1弾性体451および第2弾性体453の一方の組付け忘れが生じた場合、組み付け作業者は、組み付け忘れを直ちに視覚的に認識することができる。また、小さな部品になりやすい第1弾性体451や第2弾性体453の紛失の可能性を低減することができる。
【0060】
本実施形態では、モータ2は、回転軸A2が駆動軸A1に交差する(詳細には、直交する)方向に延在するように配置されている。そして、振動センサユニット4は、回転軸A2の延在方向(上下方向)に関し、モータシャフト25の長さの範囲内において、モータ2の後方に配置されている。特に、本実施形態のように、運動変換機構30にクランク機構を採用する駆動機構3と、回転軸A2が駆動軸A1に交差する方向に配置されたモータ2とを備えたハンマドリル1では、クランク機構の下方、且つ、モータ2の後方に空きスペースが生じやすい。本実施形態の振動センサユニット4は、この空きスペースを有効活用して配置されている。これにより、打撃動作に起因する振動を検出しやすく合理的な振動センサユニット4の配置が実現されている。
【0061】
本実施形態では、ハンマドリル1のハウジング10は、第1ハウジング11と、第1ハウジング11に対して相対移動可能に弾性連結された第2ハウジング13とを含む。このようないわゆる防振ハウジング構造により、第1ハウジング11の振動が、使用者が把持する把持部131を含む第2ハウジング13へ伝達されるのを効果的に抑制することができる。また、本実施形態では、コントローラ6は、第2ハウジング13(詳細には、下側部分137)に収容されているため、精密機器であるコントローラ6を、第1ハウジング11に生じるすべての振動から適切に保護することができる。
【0062】
本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。ハンマドリル1は、本発明の「打撃工具」に対応する構成例である。駆動軸A1は、本発明の「打撃軸」に対応する構成例である。モータ2、ステータ21、ロータ22、モータシャフト25、回転軸A2は、夫々、本発明の「モータ」、「ステータ」、「ロータ」、「モータシャフト」、「モータシャフトの回転軸」に対応する構成例である。駆動機構3(運動変換機構30および打撃要素36)は、本発明の「駆動機構」に対応する構成例である。振動センサユニット4(センサ本体40)は、本発明の「振動センサ」に対応する構成例である。第1ハウジング11は、本発明の「第1ハウジング」に対応する構成例である。第1弾性体451および第2弾性体453は、本発明の「少なくとも1つの弾性体」に対応する構成例である。また、第1弾性体451、第2弾性体453、連結部455は、夫々、本発明の「第1弾性体」、「第2弾性体」、「連結部」に対応する構成例である。第2ハウジング13、把持部131は、本発明の「第2ハウジング」、「把持部」に対応する構成例である。第1バネ71、第2バネ75、Oリング77は、各々、本発明の「弾性体」に対応する構成例である。コントローラ6は、本発明の「コントローラ」に対応する構成例である。
【0063】
[第2実施形態]
以下、図6図11を参照して、第2実施形態に係るハンマドリル100について説明する。なお、本実施形態で例示するハンマドリル100は、第1実施形態のハンマドリル1と同様、打撃動作やドリル動作を実行可能に構成されており、ハンマドリル1と共通する構成を含む。よって、以下では、ハンマドリル1と共通する構成については同じ符号を付して説明を省略または簡略化し、主に異なる構成について、図を参照して説明する。
【0064】
まず、図6を参照して、ハンマドリル100の概略構成について説明する。図6に示すように、本実施形態では、ハンマドリル100の外郭は、主として、本体ハウジング16とハンドル17によって形成されている。
【0065】
本体ハウジング16とその内部構造について説明する。本実施形態では、本体ハウジング16は、主に、駆動機構収容部161と、モータ収容部163と、コントローラ収容部169の3つの部分を含み、全体としては側面視略Z字状に形成されている。
【0066】
駆動機構収容部161は、本体ハウジング16のうち、駆動軸A1に沿って前後方向に延在する部分である。駆動機構収容部161の基本的な内部構造は、第1実施形態の駆動機構収容部117の内部構造(図1参照)と同様である。つまり、駆動機構収容部161は、前端部にツールホルダ34を備え、運動変換機構300と、打撃要素36と、回転伝達機構37とを含む駆動機構3を収容している。なお、第1実施形態では、クランク機構として構成された運動変換機構30が採用されているのに対し、本実施形態では、揺動部材を用いた運動変換機構300が採用されている。運動変換機構300の構成については周知であるため、ここでの説明は省略する。
【0067】
モータ収容部163は、本体ハウジング16のうち、駆動機構収容部161の後端部に接続して概ね上下方向に延在する部分である。モータ収容部163の上下方向における中央部には、モータ2が収容されている。第1実施形態とは異なり、モータ2は、モータシャフト25の回転軸が駆動軸A1に対して斜めに交差するように配置されている。より詳細には、モータシャフト25の回転軸は、駆動軸A1に対して斜め下前方に延在している。このため、モータシャフト25から運動変換機構300および回転伝達機構37への動力の伝達は、平歯車ではなくベベルギアを介して行われる。
【0068】
コントローラ収容部169は、本体ハウジング16のうち、モータ収容部163の上下方向の略中央部(モータ2が収容されている領域)から後方に延在する部分である。コントローラ収容部169には、コントローラ6が収容されている。また、コントローラ収容部169の下側には、バッテリ装着部15が2つ設けられている。第1実施形態と同様、2つのバッテリ装着部15は、前後方向に並設されている。
【0069】
なお、モータ収容部163の下端部164は、バッテリ93がバッテリ装着部15に装着された場合に、バッテリ93の前側に配置され、その下面がバッテリ93の下面と概ね面一となるように構成されている。下端部164は、バッテリ93を外力から保護するバッテリ保護部としても機能する。つまり、下端部164は、平面上にハンマドリル100を載置したときの安定性の確保およびバッテリ93の外力からの保護を考慮して、モータ2の下側に延設された部分である。このような構成の下端部164の内部空間は、デッドスペースとなりやすい。そこで、本実施形態では、このデッドスペースを有効活用して、振動センサユニット5が配置されている。振動センサユニット5の構成とその保持構造については、後で詳述する。
【0070】
ハンドル17について説明する。ハンドル17は、把持部171と、上側連結部173と、下側連結部175とを含み、全体としては略C字状に形成されている。把持部171は、本体ハウジング16の後方に離間して概ね上下方向に延在する部分である。把持部171には、トリガ14およびスイッチ145が設けられている。上側連結部173は、把持部171の上端部から前方に延在し、本体ハウジング16の上後端部に連結される部分である。下側連結部175は、把持部171の下端部から前方に延在し、本体ハウジング16の中央後端部に連結される部分である。また、下側連結部175は、コントローラ収容部169の上側に配置されている。
【0071】
本実施形態では、ハンドル17は、本体ハウジング16に対して相対移動可能に弾性的に連結されている。より詳細には、上側連結部173の前端部と駆動機構収容部161の後端部の間には、付勢バネ174が介在配置されている。一方、下側連結部175は、左右方向に延在する支持シャフト177を介してモータ収容部163に対して回動可能に支持されている。このような構成によって、本体ハウジング16からハンドル17(把持部171)への振動伝達の抑制が図られている。
【0072】
以下、振動センサユニット5の構成と、その保持構造について説明する。
【0073】
図7に示すように、振動センサユニット5は、第1実施形態の振動センサユニット4と同様のセンサ本体40と、センサ本体40を保持する保持部材51とを含む。また、振動センサユニット5は、保持部材51の左右の端部に係合された2つの弾性介在部材55を介して、モータ収容部163の下端部164に保持されている。
【0074】
図8に示すように、本実施形態では、保持部材51は、全体としては、前面が開口し、左右方向に長い直方体箱状に形成されている。より詳細には、保持部材51は、後壁(底壁)511と、後壁511の外縁から前方に突出し、外縁を取り巻く周壁とを有する。周壁は、左右一対の二重壁部513と、上下一対の側壁518とを含む。センサ本体40は、後壁511と周壁によって規定される凹部内に保持されている(図10参照)。
【0075】
保持部材51の左右の端部を構成する二重壁部513は、夫々、後述する弾性介在部材55を係合可能に構成されている。より詳細には、各二重壁部513は、内壁514と外壁515と、これらの間に形成された空間部521を有する。なお、外壁515は、上下方向において内壁514よりも短く、外壁515の上下端部は内壁514に接続されている。一方、内壁514と外壁515の前後端部は開放されている。つまり、内壁514と外壁515の間の空間部521は、二重壁部513を前後方向に貫通する貫通孔として形成されている。また、内壁514と外壁515の間には、空間部521を上下方向の2つの空間部に仕切る仕切り壁523が設けられている。更に、外壁515には、仕切り壁523を挟んで上側と下側に、空間部521と保持部材51の外部とを連通させる2つの開口524が形成されている。開口524には、後述の弾性介在部材55の係合突起555が嵌合される。
【0076】
また、保持部材51の四隅には、凹部526が形成されている。より詳細には、上下一対の側壁518の各々の左右の端部は、夫々、左右一対の内壁514よりも左方および右方へ(外壁515側へ)突出するように形成されている。凹部526は、側壁518の左右端部と、二重壁部513の上下端部とによって規定される凹部であって、左右方向において内側に凹んでいる。凹部526内には、保持部材51の外周に装着された弾性リング57が保持される。
【0077】
ところで、保持部材51に保持されたセンサ本体40(図10参照)は、打撃動作に起因する振動を正確に検出するために、本体ハウジング16(モータ収容部163)に正しい向きで取り付けられる必要がある。そこで、保持部材51には、本体ハウジング16(モータ収容部163)に対する保持部材51の向きを合わせるための目印として、突起531が設けられている。より詳細には、突起531は、上側の側壁518の右前端部から前方に突出している。また、上側の側壁518において、突起531の後側には、突起531に対応する形状の係合凹部532が設けられている。このため、センサ本体40が保持部材51に組み付けられる前には、図9に示すように、保持部材51の突起531が別の保持部材51の係合凹部532に係合された状態で、複数の保持部材51を積み重ねることができる。これにより、複数の保持部材51の運搬時や保管時のスペースの無駄を省くことができ、また、突起531の損傷の可能性を低減することができる。
【0078】
図8に示すように、本実施形態では、各弾性介在部材55は、全体としては略等脚台形状の底面を有する角柱状に形成されている。角柱の側面のうち最大面積を有する側面(台形の下底に対応する側面)は、弾性介在部材55が保持部材51に係合されたときに二重壁部513(詳細には外壁515)の外面に当接するように配置される面(以下、当接面551という)である。台形の脚に対応する2つの側面は、当接面551から離れるにつれて互いに近づくように傾斜する一対の傾斜面552を構成する。なお、当接面551と傾斜面552の間には、当接面551に平行な面553を含む段差部が設けられている。台形の上底に対応する当接面551に平行なもう1つの側面は、弾性介在部材55が保持部材51に係合されたときに突出端面554を構成する。なお、弾性介在部材55の上下方向の長さは外壁515と概ね等しく、弾性介在部材55の前後方向の幅は、保持部材51よりも大きく設定されている。
【0079】
当接面551からは、外壁515に形成された2つの開口524に夫々嵌合可能な2つの係合突起555が突出している。更に、係合突起555の前面と後面には、前方および後方に夫々突出する係止片556が設けられている。図10に示すように、各係合突起555の前後方向の中心線に対して、前側と後側の係止片556は対称状に配置されている。各係止片556は、断面三角形状に形成されており、係合突起555の突出端側から根元側に向けて外側に傾斜する傾斜面と、傾斜面と係合突起555とを接続し、当接面551に概ね平行な係止面とを有する。
【0080】
以上のように構成された弾性介在部材55は、係合突起555および係止片556を含む全体が、ゴムによって、一部品として一体成形される。2つの弾性介在部材55は、夫々、2つの係合突起555が左右の外壁515の2つの開口524に嵌めこまれることで、左右の二重壁部513に係合されている。係合突起555が開口524に嵌め込まれるときには、係止片556は弾性変形しつつ開口524を通過して、空間部521内に配置される。係止片556が空間部521内で復元すると、係止片556の係止面が外壁515の内面に当接し、係合突起555が開口524から抜けるのを防止する。左右の二重壁部513に係合された2つの弾性介在部材55は、夫々、左方および右方に突出する。弾性介在部材55の傾斜面552は、左右方向において振動センサユニット5から離れるにつれて上下方向に互いに近づくように斜めに配置される。また、当接面551に平行な段差部の面553および突出端面554は、左右方向に直交するように配置される。
【0081】
図8に示すように、弾性リング57は、弾性材料(例えばゴム)によって形成された環状部材である。本実施形態では、2つの弾性リング57が保持部材51の外周部に装着される。弾性リング57のうち一方は、保持部材51の左上端部および右上端部に設けられた2つの凹部526に係合されて、保持部材51の上端部の外周部を取り巻くように装着される。弾性リング57のもう一方は、保持部材51の左下端部および右下端部に設けられた2つの凹部526に係合されて、保持部材51の下端部の外周を取り巻くように装着される。保持部材51に装着された状態において、2つの弾性リング57の一部は、夫々、保持部材51の前側および後側に配置される。
【0082】
図6図10および図11に示すように、モータ収容部163の下端部164の後端部には、振動センサユニット5を配置するためのセンサ保持部165が形成されている。センサ保持部165は前方に開口する凹部として形成されており、センサ保持部165の左右の端部は、保持部材51の左右の端部(二重壁部513)に取り付けられた弾性介在部材55が嵌合可能な嵌合部166として構成されている。より詳細には、嵌合部166は、弾性介在部材55の傾斜面552に対応し、左右方向において外側に向かうにつれて上下方向に互いに近づくように傾斜する傾斜面と、弾性介在部材55の突出端面554に対応し、左右方向に直交する面とで規定されている。
【0083】
弾性介在部材55は、上下方向および左右方向に圧縮された状態で嵌合部166に嵌合される。これにより、弾性介在部材55は、上下方向および左右方向において、一対の傾斜面552を介して本体ハウジング16(モータ収容部163)に係合する。つまり、振動センサユニット5は、弾性介在部材55を介して本体ハウジング16に対して上下方向および左右方向に連結されている。このような構成により、モータ収容部163から振動センサユニット5に上下方向および左右方向の振動(典型的には、打撃動作に起因する駆動軸A方向(前後方向)の振動とは異なる方向の振動)が伝達されることを効果的に抑制することができる。また、弾性介在部材55が嵌合部166に嵌合されると、傾斜面552に隣接して弾性介在部材55の上下の端部に設けられた段差部の面553は、嵌合部166の上側と下側で、センサ保持部165を規定する左右の壁面に当接する。このような構成により、モータ収容部163に対し、振動センサユニット5が前後方向に延在する軸周りに回動するのを抑制することができる。
【0084】
また、弾性介在部材55は、センサ保持部165の後壁167と、センサ保持部165の上前端部と下前端部に沿って左右方向に延在する一対のリブ168によって前後方向の移動が規制されている。上述のように、弾性介在部材55の前後方向の幅は、保持部材51よりも大きく設定されているため、振動センサユニット5は、後壁167およびリブ168からは離間している(図10参照)。また、保持部材51に装着された弾性リング57の一部が、後壁167と振動センサユニット5(保持部材51)の間およびリブ168と振動センサユニット5(保持部材51)の間に介在している。このような構成により、振動センサユニット5は、モータ収容部163に対して前後方向に相対移動可能とされている。弾性リング57は、駆動機構3の打撃動作等によって振動センサユニット5がモータ収容部163に対して前後方向に相対移動することを許容するとともに、所定量を超えた相対移動を防止する。
【0085】
なお、本実施形態では、モータ収容部163は、駆動軸A1(図1参照)に沿って2分割された左右の半割体(以下、左側シェル16Aおよび右側シェル16Bという)を互いに接合することで形成されている。よって、振動センサユニット5の左右の端部に係合された2つの弾性介在部材55を、左側シェル16Aおよび右側シェル16Bの嵌合部166に夫々嵌合させた状態で左側シェル16Aと右側シェル16Bとを接合することで、振動センサユニット5を容易にセンサ保持部165内に配置することができる。このとき、弾性介在部材55とセンサ保持部165とを、左右方向において外側に向かうにつれて上下方向に互いに近づくように傾斜する一対の傾斜面を介して連結することで、弾性介在部材55を上下方向および左右方向に圧縮しつつ嵌合部166に容易に嵌合させることができ、また、上下方向および左右方向の位置合わせを容易に行うことができる。
【0086】
第1実施形態の振動センサユニット4と同様、振動センサユニット5は、上述のように構成された弾性介在部材55を介して、本体ハウジング16に生じる振動のうち、駆動機構3の打撃動作に起因する第1周波数の振動(詳細には、打撃周波数とその次数成分を中心とした一定の幅を有する周波数帯の振動)を検出可能、且つ、モータ2の電磁振動に起因する第2周波数の振動(詳細には、電磁振動周波数とその次数成分を中心とした一定の幅を有する周波数帯の振動)の伝達は抑制された状態で、モータ収容部163の下端部164に保持されている。つまり、センサ本体40には、打撃動作に起因する第1周波数の振動が確実に伝達される一方、センサ本体40は、モータ2の電磁振動に起因する第2周波数の振動からは保護されている。このように、本実施形態においても、センサ本体(振動センサ)40の合理的な保護が実現されている。
【0087】
本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。ハンマドリル100は、本発明の「打撃工具」に対応する構成例である。振動センサユニット5(センサ本体40)は、本発明の「振動センサ」に対応する構成例である。本体ハウジング16は、本発明の「第1ハウジング」に対応する構成例である。2つの弾性介在部材55は、本発明の「少なくとも1つの弾性体」および「一対の弾性体」に対応する構成例である。把持部171は、本発明の「把持部」に対応する構成例である。一対の傾斜面552は、本発明の「一対の傾斜面」に対応する構成例である。
【0088】
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る打撃工具は、例示されたハンマドリル1の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示すハンマドリル1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
【0089】
例えば、上記実施形態では、打撃工具の一例として、打撃動作に加えてドリル動作が可能なハンマドリル1、100が挙げられているが、打撃工具は、打撃動作のみが可能な(つまり、駆動機構3が回転伝達機構37を備えない)電動ハンマであってもよい。また、ハンマドリル1の駆動機構3には、クランク機構式の運動変換機構30が採用されているが、揺動部材式の運動変換機構が採用されてもよい。反対に、ハンマドリル100にクランク機構式の運動変換機構300が採用されてもよい。
【0090】
また、上記実施形態のモータ2は、埋込磁石型の8極のブラシレスモータとして構成されているが、モータ2のタイプや極数は、この例に限られるものではない。例えば、モータ2は、表面磁石型のブラシレスモータとして構成されてもよい。また、埋込磁石型が採用される場合、永久磁石221の配置や埋め込み方法も、適宜、変更が可能である。
【0091】
なお、上述のように、モータ2の電磁振動周波数は、ロータ22に形成された極数に応じて規定されるため、振動センサユニット4、5を保持する弾性介在部材45、55は、採用される極数に応じた電磁振動周波数に基づき、その数、材質、形状、弾性係数等が変更されればよい。例えば、弾性介在部材45は、1つのみが設けられてもよいし、ゴム以外の弾性体(バネ等)で形成されてもよい。また、第1弾性体451と第2弾性体453は、必ずしも連結部455で一体状に連結されている必要はなく、別個の2部品として、振動センサユニット4の前後に配置されてもよい。弾性介在部材45に代えて、例えば、油圧式のダンパ等が採用されてもよい。何れの場合も、振動センサユニット4が、打撃動作に起因する振動は検出可能な状態、且つ、電磁振動に起因する振動の伝達は抑制された状態で配置されていればよい。また、弾性介在部材45またはその他の機構の伝達抑制対象は、電磁振動以外の要因に起因する振動(電磁振動周波数とは異なる周波数の振動)であってもよい。弾性介在部材55についても、同様に、適宜変更が可能である。
【0092】
弾性介在部材45、55の変更と同様、振動センサユニット4、5の構成や配置位置も、上記実施形態の例に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、第1実施形態では、振動センサユニット4は、全体が、上下方向において、モータシャフト25の長さの範囲内におさまるように配置されているが、振動センサユニット4の一部がモータシャフト25の上端より上側に、または下端よりも下側に突出するように配置されていてもよい。また、例えば、振動センサユニット4は、モータ収容部111の内部壁112ではなく、駆動機構収容部117の後壁に保持されていてもよい。この場合、振動センサユニット4は、全体が、上下方向において、モータシャフト25の長さの範囲外にあってもよい。また、第2実施形態の振動センサユニット5は、モータ収容部163内の他の位置に配置されていてもよいし、コントローラ収容部169内に配置されていてもよい。
【0093】
第1実施形態では、ハウジング10は、第1ハウジング11と第2ハウジング13を含む防振ハウジングとして構成されているが、ハウジング10は必ずしも防振ハウジングである必要はない。また、第1ハウジング11と第2ハウジング13の弾性連結構造は、適宜変更されてもよい。また、上記実施形態では、把持部131は第2ハウジング13の一部であるが、例えば、使用者によって把持可能に構成された把持部(ハンドル)のみが、モータ2や駆動機構3を収容するハウジング部に対して弾性要素を介して連結されていてもよい。振動からの保護の観点からは、精密機器であるコントローラ6は、第2ハウジング13に収容されることが好ましいが、第1ハウジング11に収容されることが排除されるものではない。
【符号の説明】
【0094】
1、100:ハンマドリル
10:ハウジング
11:第1ハウジング
111:モータ収容部
112:内部壁
113:円筒部
114:ネジ穴
115:凹部
117:駆動機構収容部
13:第2ハウジング
131:把持部
133:上側部分
137:下側部分
138:前側下端部
139:後側下端部
14:トリガ
145:スイッチ
15:バッテリ装着部
16:本体ハウジング
161:駆動機構収容部
163:モータ収容部
164:下端部
165:センサ保持部
166:嵌合部
167:後壁
168:リブ
169:コントローラ収容部
17:ハンドル
171:把持部
173:上側連結部
174:付勢バネ
175:下側連結部
177:支持シャフト
2:モータ
21:ステータ
22:ロータ
221:永久磁石
25:モータシャフト
29:駆動ギア
3:駆動機構
30、300:運動変換機構
31:クランクシャフト
32:連接ロッド
33:ピストン
34:ツールホルダ
35:シリンダ
36:打撃要素
361:ストライカ
363:インパクトボルト
365:空気室
37:回転伝達機構
38:クラッチ
39:モード切替ダイヤル
4:振動センサユニット
40:センサ本体
41:保持部材
411:保持部
413:アーム部
415:貫通孔
45:弾性介在部材
451:第1弾性体
453:第2弾性体
455:連結部
47:ワッシャ
48:ネジ
5:振動センサユニット
51:保持部材
511:後壁
513:二重壁部
514:内壁
515:外壁
518:側壁
521:空間部
523:仕切り壁
524:開口
526:凹部
531:突起
532:係合凹部
55:弾性介在部材
551:当接面
552:傾斜面
553:面
554:突出端面
555:係合突起
556:係止片
57:弾性リング
6:コントローラ
71:第1バネ
75:第2バネ
77:Oリング
81:上側摺動部
82:下側摺動部
91:先端工具
93:バッテリ
A1:駆動軸
A2:回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11