【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.展示会 (1)大阪 (ア)展示日 平成29年6月20日 (イ)展示会名,開催場所 2017夏・秋のダイワ新製品展示会 JEC日本研修センター江坂(大阪府吹田市江坂町1−13−41 SRビル江坂4F・5F・6F) (ウ)公開者 グローブライド株式会社 (エ)出品内容 本件特許出願に係る発明を具現化したワカサギ釣り用電動リールとして、下記の製品名のワカサギ釣り用電動リールを上記の展示会で公開した。・クリスティア ワカサギ CR PTIIα ・クリスティア ワカサギ CR PTII+ ・クリスティア ワカサギ CRIII+ (2)東京 (ア)展示日 平成29年7月3日〜5日 (イ)展示会名,開催場所 2017夏・秋のダイワ新製品展示会 グローブライド株式会社本社大会議室5F(東京都東久留米市前沢3丁目14番16号) (ウ)公開者 グローブライド株式会社 (エ)出品内容 本件特許出願に係る発明を具現化したワカサギ釣り用電動リールとして、下記の製品名のワカサギ釣り用電動リールを上記の展示会で公開した。・クリスティア ワカサギ CR PTIIα ・クリスティア ワカサギ CR PTII+ ・クリスティア ワカサギ CRIII+ 2.刊行物 (1)公開者 グローブライド株式会社 (2)刊行物名 Crystia WAKASAGI DAIWA FISHING TACKLE 2017 (3)発行年月日 平成29年8月3日 (4)公開された発明の内容 本件特許出願に係る発明を具現化したワカサギ釣り用電動リールとして、下記の製品名のワカサギ釣り用電動リールを上記の刊行物で公開した。・クリスティア ワカサギ CR PTIIα ・クリスティア ワカサギ CR PTII+・クリスティア ワカサギ CRIII+ 3.電気通信回線を通じての公開 (1)公開者 グローブライド株式会社 (2)ウェブサイト掲載日 平成29年8月3日 (3)掲載アドレス http://www.daiwa.com/jp/http://www.daiwa.com/jp/fishing/item3/reel/wakasagi/index.html http://www.daiwa.com/jp/fishing/item/terminal_tackle/wakasagi/crystia_wakasagi_crpt2_alpha
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の操作スイッチにより構成され、前記電動モータが寸動駆動される寸動駆動モードと、前記電動モータが連続駆動される連続駆動モードと、前記通常巻き取りモードと、前記低速巻き取りモードとを切り換えるモード切り換え信号を入力するためのモード入力部と、
前記モード入力部からのモード切り換え信号に応じて前記電動モータの動作を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のワカサギ釣り用電動リール。
前記電動モータの正逆回転駆動によって前記スプールが正逆回転されて前記スプールに対して釣糸が巻き取られ及び/又は繰り出され、前記モード入力部は、前記スプールによる釣糸の巻き取り及び繰り出しを所定のパターンで繰り返す複数種の誘いモードの入力を可能にすることを特徴とする請求項3に記載のワカサギ釣り用電動リール。
前記通常巻き取りモードにおける釣糸巻き取り速度は70〜140cm/秒であり、前記低速巻き取りモードにおける釣糸巻き取り速度は2〜5cm/秒であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のワカサギ釣り用電動リール。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るワカサギ釣り用電動リール(以下、単に魚釣用リールという)の一実施形態について具体的に説明する。
なお、本発明に係るワカサギ釣り用電動リールは、後述するようにリール本体に釣竿を直接に装着でき(竿装着部を有する)、電動モータの出力軸がスプールに対して動力伝達可能に係合される(電動モータの出力軸が例えばスプールの回転軸と直交した状態でスプールの側面に対して係脱可能に当て付けられることによって電動モータからスプールへの動力の伝達が継脱される)とともに、ギアによる変速を行なうことなく電動モータに対する印加電圧を制御することによりその回転速度及びトルクが変えられるという特徴を有する点で、その他の魚釣用電動リールとは一線を画される。
【0014】
図1〜
図3に示されるように、魚釣用リール4は、リール本体5を備える。リール本体5は、その外郭を構成する筐体6を有する。筐体6は、例えばABS樹脂、ポリカーボーネートのような合成樹脂材料により形成される。
【0015】
筐体6は、やや湾曲した縦長の(前後方向に長い)箱体であり、
図2に示されるように釣人が右手又は左手(
図2では右手)で掴むことができる程度の大きさを有する。
図3に示されるように、筐体6は、ロアケース7とトップカバー8とで構成される。
【0016】
トップカバー8は、ネジ止め或いは嵌め込み等の手段によりロアケース7に固定されて、ロアケース7との間に電動モータ44を収容するためのモータ収容室を画定する。更に、リール本体5内、本実施形態ではロアケース7には、電動モータ44に電力を供給するための例えば乾電池や再充電可能なバッテリー等を着脱自在に収容できる収容部Sを画定する内部電源ハウジング71が設けられる。
【0017】
なお、リール本体5、本実施形態ではロアケース7には、内部電源ハウジング71の収容部S(本実施形態では、収容部Sを含めてモータ44等を全体的に露出させるためのロアケース7の開口)を外部に対して閉じるためのカバー部材77が着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0018】
筐体6は、一対の脚16を有する。脚16は、例えば筐体6よりも柔らかいゴム状弾性体で形成される。脚16は、ロアケース7の底壁に固定されるとともに、リール本体5の左右方向に互いに離間する。脚16は、例えば氷結した湖面上に据え付けられる釣用の台の上にリール本体5を置いた際に、この台の上面に接触する接地部として機能する。
【0019】
筐体6の前端部には合成樹脂製の支持台26がネジ止め等により固定されており、この支持台26は、釣竿40が装着可能な竿装着部としての竿受け部27と、スプール受け部28とを備える。
【0020】
竿受け部27は、筐体6の前端の左右方向(前後方向に対して直交する幅方向)に沿う中央部に位置している。竿受け部27は、筐体6の前方に向けて開口する支持孔29を有するとともに、釣糸ガイド30を支持する。釣糸ガイド30は、竿受け部27の上方に突出するように垂直に起立する待機位置と、この待機位置から筐体6の後方に倒れ込む動作位置との間で回動可能であり、通常は待機位置に保持されている。また、支持台26のスプール受け部28は、トップカバー8の開口部21の下方で水平に配置されている。
【0021】
図3に示されるように、ロアケース7の底壁の軸支部13にはスプール軸33が支持される。スプール軸33は、ロアケース7の底壁から垂直に起立するとともに、スプール受け部28を貫通してスプール受け部28の上に突出する。
【0022】
スプール軸33の上部には合成樹脂材又は金属材製のスプール34が回転可能に支持される。スプール34は、リール本体5の前部において、リール本体5の上面の前方側の左右方向の中央部に位置する。なお、スプール34の直ぐ後側には、筐体6の上面(トップカバー8上)に位置して、液晶表示装置90(
図1〜
図3参照)が設けられる。
【0023】
スプール34は、釣糸が巻回される釣糸巻回胴部36と、一対のフランジ37a,37bとを有しており、垂直なスプール軸33を中心として回転する。フランジ37a,37bは、釣糸巻回胴部36と同軸の円盤状を成すとともに、釣糸巻回胴部36を間に挟んで上下方向に向かい合う。この場合、下側フランジ37bがスプール受け部28の上面に載置される。
【0024】
スプール軸33は、釣糸巻回胴部36を同軸状に貫通して上側フランジ37aの上に突出する。スプール軸33の上端には袋ナット38がねじ込まれる。袋ナット38は、スプール受け部28との間でスプール34を挟み込んでおり、これにより、スプール34がリール本体5の前部に回転自在に支持される。なお、スプール34は、トップカバー8の開口部21の内側に位置する。
【0025】
図3に示されように、竿受け部27の支持孔29には釣竿40が嵌め込まれるようになっている。釣竿40は、例えば全長が15cm程度の短いものでよく、リール本体5の前端から前方に向けて水平に突き出る。
【0026】
釣竿40の外周面には複数の釣糸ガイド(図示せず)が取り付けられる。これらの釣糸ガイドは、釣竿40の長手方向に間隔を存して一列に設けられる。スプール34から繰り出された釣糸(図示せず)は、リール本体5の釣糸ガイド30から釣竿40の釣糸ガイドを経由して釣竿40の先端に導かれた後、釣竿40の先端から例えば湖面に開けた穴を通じて水中へ導かれる。
【0027】
トップカバー8とロアケース7との間に形成される前述したモータ収容室内の電動モータ44は、電気的制御により正逆回転可能になっており、ステータ及びロータを収容するモータハウジング(図示せず)と、このモータハウジングの前端から突出する金属製の出力軸46とを有する。電動モータ44は、出力軸46を筐体6の前後方向に沿わせた横置きの姿勢でスプール34の後方に設置される。
【0028】
モータ44の出力軸46は、スプール軸33の直後に位置するとともに、このスプール軸33と直交するような位置関係を保っている。出力軸46の前端部は、スプール34の下側フランジ37bの下方に位置する。
【0029】
出力軸46の外周には円筒状のトルク伝達部材47が取り付けられる。トルク伝達部材47は、例えばスプール34よりも柔らかい合成樹脂材又はゴム状弾性体により形成される。
図3に示される状態では、トルク伝達部材47の外周面がスプール34の下側フランジ37bの下面に接している。
【0030】
電動モータ44のモータハウジング(したがって、電動モータ44)は、図示しないピボット軸を支点として、
図3に示される水平な第1の位置と、前方下方に傾斜する第2の位置(図示せず)との間で回動可能となっている。第1の位置では、
図3に示されるように電動モータ44の出力軸46が筐体6の前後方向に沿って水平に延びており、トルク伝達部材47の外周面がスプール34の下側フランジ37bの下面に当接する。このように当接することにより、フランジ37bとトルク伝達部材47との当接部分に摩擦抵抗が付与され、電動モータ44の出力軸46とスプール34との間が機械的に接続される。この結果、摩擦抵抗によりスプール34の自由な回転が阻止される。この状態で更に電動モータ44が正逆回転駆動されると、出力軸46のトルクがトルク伝達部材47を介してスプール34に伝わり、スプール34が釣糸を巻き取る方向又は釣糸を繰り出す方向に回転する。すなわち、この構成において、電動モータ44は、その出力軸46がスプール34に対して動力伝達可能に係合されており、電動モータ44の正逆回転駆動によってスプール34が正逆回転されてスプール34に対して釣糸が巻き取られ及び/又は繰り出される。
【0031】
一方、第2の位置では、電動モータ44の出力軸46が前下がりとなって、トルク伝達部材47の外周面がスプール34の下側フランジ37bの下面から離れる。これにより、電動モータ44の出力軸46とスプール34との機械的な接続が解除され、トルク伝達部材47とスプール34との間に摩擦抵抗が付与されなくなる。そのため、スプール34は、釣糸35を巻き取る方向及び繰り出す方向の自由な回転が許容されるフリーな状態に移行する。
【0032】
なお、電動モータ44は、図示しない引っ張りコイルスプリングを介して常に第1の位置に向けて弾性的に付勢されている。したがって、モータ44が第1の位置にある限り、トルク伝達部材47の外周面がスプール34の下側フランジ37bの下面に弾性的に押し付けられる。
【0033】
また、電動モータ44(モータハウジング)の第1の位置と第2の位置との間の切り換えは、トップカバー8から突出して設けられる操作体22(
図1及び
図3参照)によって行なわれる。この操作体22は、その下端がトルク伝達部材47と対向しており、下向きに押圧操作されることにより、トルク伝達部材47とともに電動モータ44の出力軸46を下方に(第2の位置へ)に押圧する。これにより、電動モータ44の出力軸46とスプール34との機械的な接続が解除される。また、操作体22の押圧操作力を解除すると、前述した引っ張りコイルスプリングによる付勢力によって電動モータ44が第1の位置へ復帰する。
【0034】
すなわち、操作体22は、電動モータ44の出力軸46とスプール34とを機械的に接続する状態と、これらの接続を解除する状態とに切り換える、すなわち、電動モータの動力をスプール34に伝えることができる動力伝達状態と、電動モータ44からスプール34への動力伝達が遮断される動力遮断状態とを切り換えるためのクラッチ機構としての機能を果たす。
【0035】
前述したように、筐体6の内部電源ハウジング71の収容部S内には、モータ44の駆動用電源となる例えば2本の乾電池52a,52bが着脱自在に収容される。
図4に示されるように、乾電池52a,52bの正極にはそれぞれ正側電源ライン53a,53bが接続される。正側電源ライン53a,53bは、正側共通電源ライン54を介して電動モータ44の正側端子に接続される。乾電池52a,52bの負極にそれぞれ負側電源ライン55a,55bが接続される。負側電源ライン55a,55bは、負側共通電源ライン56を介して電動モータ44の負極端子に接続される。そのため、各電源ライン53a,53b,54,55a,55b,56は、電動モータ44を乾電池52a,52bに並列に接続する一つの電源回路57を構成する。
【0036】
正側電源ライン53a,53bと正側共通電源ライン54との間には常開形の連続巻きスイッチ58が接続される。一方の正側電源ライン53aと正側共通電源ライン54との間には常開形の一時巻きスイッチ59aが接続される。
【0037】
連続巻きスイッチ58は、筐体6の内部に収容されるとともに、筐体6の左右側壁にそれぞれ設けられる操作スイッチ70,72のうちのいずれか一方を長押し操作することによって開閉操作され、閉じられることにより電動モータ44の連続駆動を可能にする。一方、一時巻きスイッチ59aは、例えば筐体6の下方に配置されるとともに、筐体6の左右側壁にそれぞれ設けられる操作スイッチ70,72のうちのいずれか一方を長押しすることなく瞬間的な短い時間だけ押圧操作することによって開閉操作され、閉じられることにより電動モータ44の寸動駆動を可能にする。
【0038】
なお、本実施形態において、操作スイッチ70,72は、例えば同じ機能を有しており、
図2に示されるようにリール本体5を把持する手の2つの指(例えば、親指及び人差し指)で同時に操作可能なリール本体5の左右側面の位置にそれぞれ設けられる。特に、本実施形態において、操作スイッチ70,72は、電動モータ44の駆動のON/OFF、駆動形態(連続駆動及び寸動駆動)、並びに、その駆動速度の段階的変化を実現するための操作手段として設けられ、電動モータ44の連続駆動には3段階以上の複数の駆動速度(例えば、超低速段階の駆動速度2〜5cm/秒、第1段階の通常駆動速度70cm/秒;第2段階の通常駆動速度95cm/秒;第3段階の通常駆動速度110cm/秒;第4段階の通常駆動速度140cm/秒の5段階の駆動速度)が設定されている。
【0039】
正側共通電源ライン54には常閉形の船べり停止スイッチ60が配置される。船べり停止スイッチ60は、筐体6の前端に位置する釣糸ガイド30と対向する。船べり停止スイッチ60は、釣糸ガイド30が待機位置から動作位置に回動されたときに、釣糸ガイド30によって開方向に操作される。
【0040】
負側共通電源ライン56には常開形のメインスイッチ61が配置される。メインスイッチ61は、筐体6の底壁の下方に露出されて釣人が手の指先で操作し得るようになっている。そのため、本実施形態では、メインスイッチ61を閉じた状態で連続巻きスイッチ58又は一時巻きスイッチ59aを閉じると、乾電池52a,52bから電動モータ44に電流が流れ、電動モータ44が回転する。
【0041】
前述したように、電動モータ44のトルクは、出力軸46からトルク伝達部材47に伝わる。トルク伝達部材47は、前述した引っ張りコイルスプリングの付勢力によりスプール34のフランジ37bの下面に押し付けられているため、トルク伝達部材47とフランジ37bとの間の接触部分に生じる摩擦力により電動モータ44のトルクがスプール34に伝わる。この結果、連続巻きスイッチ58又は一時巻きスイッチ59aを閉じた場合、スプール34は電動モータ44のトルクを受けて連続的に又は断続的に釣糸巻き取り方向及び/又は操出方向に回転する。
【0042】
図5には、魚釣用リール4の制御系の概略構成がブロック図として示される。図示のように、魚釣用リール4は、電動モータ44が寸動駆動される寸動駆動モードと、電動モータ44が連続駆動される連続駆動モードと、所定の速度の前記連続駆動により釣糸がスプール34に巻き取られる通常巻き取りモードと、所定の速度よりも2段階以上低い速度の前記連続駆動により釣糸がスプール34に巻き取られる低速巻き取りモードとを切り換えるモード切り換え信号を入力するためのモード入力部96と、モード入力部96からのモード切り換え信号に応じて電動モータ44の動作を制御する制御部92と備える。この場合、モード入力部96は、前述した複数の操作スイッチ70,72及び液晶表示装置90の直ぐ後側(筐体6の上面)に配置される操作スイッチ82,84から構成され、操作スイッチ82,84により、スプール34による釣糸の巻き取り及び繰り出しを所定のパターンで繰り返す複数種の誘いモードの入力も可能にする(誘いモードについては後述する)。
【0043】
以上のような構成の魚釣用リール4を用いてワカサギを釣る場合には、まず、リール本体5に釣竿40を装着して、釣糸に仕掛けをセットした後、メインスイッチ61を閉じる。次に、魚釣用リール4を釣場に設置された台の上に置き、例えば
図2に示されるように筐体6の上面に右手を添えるように宛がう。
【0044】
次に、釣人は、釣人は、例えば人差し指で操作体22を押圧操作し、クラッチ機構をOFFにしてスプール34から釣糸を繰り出して仕掛けを所望の棚まで落とす。すなわち、操作体22を押圧操作すると、引っ張りコイルスプリングの付勢力に抗してトルク伝達部材47が下方へ押圧され、トルク伝達部材47がスプール34のフランジ37bから離脱する。この結果、スプール34がフリーとなり、スプール34に巻き付けられた釣糸が仕掛けにより引っ張られてスプール34から繰り出される。
【0045】
或いは、釣人は、例えば左右側面の操作スイッチ70,72のいずれかを押圧操作することにより、電動モータ44を逆回転駆動させ、電動モータ44による駆動力によって釣糸をスプール34から自動的に所定の速度で繰り出す。この場合、操作スイッチ70,72を数回押圧操作することにより、3段階以上ある複数の駆動速度の中から所望の速度を選択して釣糸を繰り出してもよい。
【0046】
このとき、繰り出し当初の釣糸繰り出し速度が通常の速度よりも遅くなるように予め設定されていてもよく、又は、操作スイッチ70,72,82,84のうちの対応する操作スイッチ、例えば操作スイッチ82を押圧することにより低速繰り出しが実現されてもよい(いずれにしても、制御部92が電動モータ44の出力を制御してスプール34の回転速度を制御する)。このようにすると、初期の糸ふけを防止できる(バックラッシュを未然に防止できる)とともに、仕掛けを急激に高速で魚の群れの層まで落とし込んで魚の警戒心を煽ってしまうという事態を回避できる。
【0047】
その後、所定期間経過後に自動的に通常の繰り出し速度に戻ってもよく、或いは、対応する操作スイッチの手動操作により通常繰り出し速度への復帰が行なわれてもよい。また、この繰り出し中(後述する巻き取り中も同様)、左右側面の操作スイッチ70,72のいずれかを長押し操作すると、電動モータ44が連続駆動されて、釣糸が連続的に繰り出される(巻き取りの場合も同様に、連続的に巻き取られる)とともに、左右側面の操作スイッチ70,72のいずれかを長押しすることなく瞬間的な短い時間だけ押圧操作すると、電動モータ44が寸動駆動されて、釣糸が断続的に繰り出される(巻き取りの場合も同様に、断続的に巻き取られる)。
【0048】
仕掛けが狙った水深(棚)に達したところで、操作体22の押圧を解除して引っ張りコイルスプリングの付勢力によりトルク伝達部材47をスプール34のフランジ37bに押し付けてクラッチON状態にする、或いは、例えば左右側面の操作スイッチ70,72のいずれかを押圧操作することにより、電動モータ44の逆回転を停止させる。そして、このままの状態で魚のアタリを待つ。
【0049】
或いは、単にアタリを待つのではなく、液晶表示装置90に隣接する筐体6の上面の操作スイッチ82,84を用いて誘いモードによる魚の誘い操作を行なってもよい。この操作は、例えば、いずれか一方の操作スイッチ82,84、例えば操作スイッチ82を所定時間(例えば2秒)だけ押圧して、液晶表示装置90の表示画面上に誘いモードの種類を表示させ、それを選択することにより行なわれる。本実施形態では、この誘いパターンが3種類存在するが、その種類の数は限定されない。そして、所定の誘いモードを選択したら、例えば両方の操作スイッチ82,84を同時に押圧操作することにより、誘いモードが開始される。
【0050】
例えば、誘いモード1が選択されると、制御部92は、所定のプログラムにしたがって電動モータ44の正逆回転を制御して、
図7の(a)の動作波形に示されるように、現在の水深位置(誘い開始棚)から釣糸(仕掛け)を例えば10cm巻き上げた後に10cm繰り出して3秒停止する動作周期を例えば5回繰り返した後、続いて30cm巻き上げ、その後、30cm繰り出して3秒停止する。この一連の誘い動作は、例えば左右側面の操作スイッチ70,72のいずれかを押圧操作することにより電動モータ44を正回転させて釣糸をスプール34に巻き取り始めるまで行なわれる。また、誘いモードを一旦停止させた後に、誘いを始めた開始棚まで仕掛けを落下させることにより自動的に誘いモードが再開されるようになっていてもよい。更に、誘い操作中に操作スイッチ82,84の一方を押圧操作すると、誘い動作速度がアップし、誘い操作中に操作スイッチ82,84の他方を押圧操作すると、誘い動作速度がダウンするようになっていてもよい(以下、後述する誘いモード2,3においても同様)。これらの動作形態は全て制御部92のメモリ内にプログラムとして記憶される。
【0051】
また、誘いモード2が選択されると、制御部92は、所定のプログラムにしたがって電動モータ44の正逆回転を制御して、
図7の(b)の動作波形に示されるように、現在の水深位置(誘い開始棚)から例えばモータ寸動駆動により10cmの釣糸巻き上げを断続的に3回繰り返した後(30cm巻き上げた後)に一気に30cm繰り出して3秒停止する動作周期を例えば5回繰り返した後、続いて60cm巻き上げ、その後、60cm繰り出して3秒停止する。この一連の誘い動作は、例えば左右側面の操作スイッチ70,72のいずれかを押圧操作することにより電動モータ44を正回転させて釣糸をスプール34に巻き取り始めるまで行なわれる。
【0052】
また、誘いモード3が選択されると、制御部92は、所定のプログラムにしたがって電動モータ44の正逆回転を制御して、
図7の(c)の動作波形に示されるように、現在の水深位置(誘い開始棚)から例えばモータ寸動駆動により10cmの釣糸巻き上げを断続的に5回繰り返した後(50cm巻き上げた後)に一気に50cm繰り出して3秒停止する動作周期を例えば5回繰り返した後、続いて90cm巻き上げ、その後、90cm繰り出して3秒停止する。この一連の誘い動作は、例えば左右側面の操作スイッチ70,72のいずれかを押圧操作することにより電動モータ44を正回転させて釣糸をスプール34に巻き取り始めるまで行なわれる。
【0053】
このような誘い中に魚(ワカサギ)のアタリが来たら、そのまま例えば左右側面の操作スイッチ70,72のいずれかを押圧操作することにより電動モータ44を正回転させて釣糸を通常の巻き取り速度でスプール34に巻き取り始めてもよい(通常巻き取りモード;
図6のステップS4参照)が、可能な限り多くの釣針に魚を掛けるために、ワカサギの遊泳層の全体にわたって仕掛けを上下させて追い食いをさせる追い食い操作を行なってもよい。この追い食い操作は、左右側面の操作スイッチ70,72を同時に押圧操作する(
図6のステップS1,S2参照)ことにより自動的に開始され、通常の巻き取り速度(所定の速度;例えば110cm/秒)よりも2段階以上低い速度(例えば、2〜5cm/秒)で行なわれる(低速巻き取りモード:
図6のステップS3参照)。すなわち、操作スイッチ70,72を同時に押圧操作することにより、通常巻き取りモードから低速巻き取りモードへと切り換えられる。なお、このような低速巻き取りモードは、例えば電動モータ44の出力を減少させることによって行なわれる。具体的には、デューティ比を制御するデューティ制御などのような制御形態が挙げられる。
【0054】
或いは、低速巻き取りモードによらず、通常巻き取りモードのまま、例えば操作スイッチ70,72のうちのいずれかを押圧操作して電動モータ44を寸動駆動させることにより釣糸を断続的に巻き上げて(
図6のステップS4,S5,S7参照)追い食いを狙ってもよい。
【0055】
その後、十分な魚が仕掛けに掛かった感触を得た段階で、例えば左右側面の操作スイッチ70,72のいずれかを再度押圧操作することにより電動モータ44を正回転させて連続駆動により釣糸を通常の巻き取り速度で巻き取る(
図6のステップS6参照)。
【0056】
釣糸をスプール34に巻き取っているときに、釣糸の先端側に位置する重りや撚り戻しのようなストッパが魚釣用リール4の直前に達すると、ストッパが待機位置に保持された釣糸ガイド30を通過できずに、この釣糸ガイド30に引っ掛かる。このため、釣糸ガイド30が釣糸の巻き取り動作に追従して待機位置から動作位置に向けて倒れ込む。釣糸ガイド30が動作位置に達すると、この釣糸ガイド30によって船べり停止スイッチ60が開かれ、モータ44に対する電流の供給が断たれる。この結果、釣糸の巻き取りが停止され、仕掛けはスプール34に巻き込まれることなく魚釣用リール4の直前で停止する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の操作スイッチ70,72を同時に操作する1回の操作だけで、駆動速度が複数段階低い低速巻き取りモードへと一気に切り換わるため、この低速巻き取りモードにおける釣糸巻き取り速度を例えば2〜5cm/秒に設定することにより、魚を追い食いさせるのに適した釣糸巻き取り操作を自動で即座に行なうことができる。すなわち、追い食いを促す巻き取り操作を簡単且つ迅速に行なえる。
【0058】
また、本実施形態によれば、従来から常用されている寸動駆動用の操作スイッチ及び連続駆動用の操作スイッチ70,72をモード切り換えスイッチ(通常巻き取りモードから低速巻き取りモードへ切り換えるモード切り換えスイッチ)として兼用しているため、追い食い操作を可能にする別機能の低速巻き取り動作を部品点数を増やすことなく簡単且つ効率的に実現できる。
【0059】
特に、本実施形態では、複数ある操作スイッチの少なくとも一部、すなわち、操作スイッチ70,72の機能を同一にし、しかも、そのような同じ機能を有するこれらの2つの操作スイッチ70,72を、リール本体5を把持する手の2つの指で同時に操作可能なリール本体5の左右側面の位置にそれぞれ設けているため、リール4を左右共用にする(右手操作用及び左手操作用の両方を兼ねるようにする)こともでき、左右のいずれの手でも同じ態様で操作スイッチ70,72を操作できるようになる。これは、特に、左右の複数の竿を同時に操作して釣りを行なう場合に、とりわけこれらの左右の複数の竿に同時に魚のアタリが出た場合に、釣りの一連の動作の一環の中で追い食いのための仕掛けの上下操作を簡単且つ左右同時にスムーズに行なうことができるため、有益である。
【0060】
以上、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、左右側面の操作スイッチ70,72が同一の機能を有していたが、2つのスイッチ70,72の機能が異なっていてもよい。この場合、操作スイッチ70,72の機能の設定を例えば液晶表示装置90の近傍の操作スイッチ82,84等によって行なうことができるようになっていてもよい。また、前述した実施形態では、操作スイッチ70,72がリール本体5の左右側面の位置にそれぞれ設けられているが、操作スイッチ70,72が設けられる位置は限定されない。
【0061】
また、前述した実施形態では、操作スイッチ70,72の同時操作により通常巻き取りモードから低速巻き取りモードへモードが切り換えられたが、同時操作の対象となる操作スイッチはこれらの操作スイッチ70,72に限らず、他の操作スイッチ、例えば操作スイッチ82,84であってもよい。この場合は、操作スイッチ82,84が電動モータの連続駆動及び/又は寸動駆動を可能にしてもよい。また、前述した実施形態では、電動モータの逆回転による釣糸巻き取りが可能であるが、電動モータが逆回転せず、釣糸の繰り出しが専らクラッチ機構のOFF状態によって行なわれても構わない。