(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の蓄電池モジュー
ルについて、添付図面に示す好適実施形態に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の
蓄電池モジュールを備える蓄電池ユニットを示す分解斜視図、
図2は、蓄電池モジュールの斜視図、
図3は、蓄電池本体の分解斜視図である。
【0021】
なお、各図では、その特徴を判り易くするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。また、以下に例示される材料、寸法等は一例であって、本発明は、それらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
以下では、説明の都合上、
図1〜
図3中の右側を「前側」または「前方」と、左側を「後側」または「後方」と言う。また、
図1〜
図3中の上側を「上側」または「上方」と、上側を「下側」または「下方」と言う。
【0023】
図1に示す蓄電池ユニット100は、複数の蓄電池モジュール1と、複数の蓄電池モジュール1を制御する制御モジュール10と、複数の蓄電池モジュール1および制御モジュール10を積み重ねた状態で収納可能な筐体20とを有している。
【0024】
各蓄電池モジュール1は、
図2に示すように、積層部2と電気接続部3とを備える蓄電池本体4と、蓄電池本体4の側部に設けられた一対のブラケット部材5とを有しており、2つのハンドル6が一対のブラケット部材5に着脱自在に取付可能となっている。
【0025】
図3に示すように、積層部2は、複数のシート状の蓄電池セル21を備え、2つの蓄電池セル21が1つの枠状の支持枠22内に収納されている。各蓄電池セル21は、例えば、リチウムイオン二次電池で構成することができる。
【0026】
また、積層部2は、その最上部に配置された天板23と、最下部に配置された底板24とを備えている。
すなわち、本実施形態の積層部2は、底板24、2つの蓄電池セル21を収納した複数の支持枠22および天板23が、この順で積層されて構成されている。
【0027】
支持枠22、天板23および底板24は、それぞれ比較的硬質の樹脂材料で構成されている。かかる樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ABS等が挙げられる。
また、積層部2を構成する各部の平面視形状は、長方形状をなしており、積層部2および蓄電池本体4の外形は、直方体状をなしている。
【0028】
図2に示すように、天板23の上面には、その長手方向に沿って並ぶ複数の円環状の凸部(第1の係合部)231が形成され、一方、底板24の下面には、図示しないが、凸部231に対応して、その長手方向に沿って並ぶ複数の円環状の凸部(第2の係合部)が形成されている。これらの凸部は、複数の蓄電池モジュール1を積み重ねた際に、一方の凸部が対応する凸部の内側に挿入され、これらが係合する。これにより、上下2つの蓄電池モジュール1が位置決めされる。
【0029】
また、この状態で、上下2つの蓄電池モジュール1の間には隙間が形成される。このため、蓄電池本体4(蓄電池セル21)が発熱しても、その熱が蓄電池モジュール1同士の間に滞留することなく、これらの間の隙間を介して効率よく排出される。これにより、蓄電池モジュール1が蓄熱し、誤作動すること等を防止することができる。
【0030】
なお、前述した天板23および底板24に形成されている凸部(第1、第2の係合部)の形状は、円環状に限らず、例えば、楕円環状、三角環状、四角環状、六角環状、星環状等であってもよく、また、これらの凸部の形状は、互いに同じ(相似形)であってもよいが、互いに異なっていてもよい。
【0031】
また、第1の係合部と第2の係合部とは、それぞれ1つのみ設けるようにしてもよいが、複数個設けることにより、蓄電池モジュール1同士の前後および左右の位置決めをより正確に行うことができる。
【0032】
なお、これらの凸部(第1、第2の係合部)は、必要に応じて設ければよく、省略することができ、この場合、例えば、ネジ止め等により蓄電池モジュール1同士の位置決め(固定)を行えばよい。また、蓄電池モジュール1同士の間に隙間を形成する目的のみであれば、これらの凸部同士が係合していなくてもよいし、第1、第2の係合部のうちのいずれか一方を省略してもよいし、第1、第2係合部の双方を省略し、蓄電池モジュール1同士の間に天板23および底板24とは別体のスペーサーを配置してもよい。
【0033】
各蓄電池セル21は、
図3に示すように、その前方および後方に設けられた一対の端子用タブ211を備えている。積層部2の組立状態において、複数の端子用タブ211は、積層部2から突出している。
【0034】
各蓄電池セル21の上面には、制限素子25が設けられている。この制限素子25は、自身の温度が所定の温度となったとき、蓄電池セル21への給電または蓄電池セル21からの送電を制限(通電を停止または減少させる)する機能を有する。これにより、蓄電池セル21が故障、誤作動等により過昇温したとき、蓄電池セル21への給電または蓄電池セル21からの送電を制限し、事故等を未然に防止することができる。なお、制限素子25およびこれに関する事項については、後に詳述する。
【0035】
積層部2の前方端部および後方端部には、複数の端子用タブ211に電気的に接続されるように、電気接続部3が設けられている。また、前方の電気接続部3の前面には、ケーブルを接続するための2つのコネクタ31、32が設けられている。
【0036】
このような蓄電池本体4の長手方向に沿って延びている両側部には、一対のブラケット部材5が設けられている。すなわち。一対のブラケット部材5は、蓄電池本体4を介して対向配置されている。この状態で、コネクタ31、32は、一対のブラケット部材5同士の間で、前方に突出している。
【0037】
図2に示すように、各ブラケット部材5は、蓄電池本体4の側面、上面縁部、下面縁部、前面縁部および後面縁部を覆う枠状の本体部51と、本体部51の前方側の端部の上下から内側に突出する一対の板片52と、本体部51の後方側の端部の上下から内側に突出する一対の板片53とを備えている。
【0038】
各板片52、53は、蓄電池本体4(本実施形態では、電気接続部3)に対してネジ止めされている。これにより、1対のブラケット部材5および蓄電池本体4が互いに固定され、蓄電池本体4が分解するのを阻止することができる。すなわち、積層部2と電気接続部3とが互いに分離することや、蓄電池セル21、支持枠22、天板23および底板24が互いに分離することを阻止することができる。
【0039】
なお、蓄電池本体4を構成する各部を、例えば、接着剤による接着、ネジ止め等してもよいが、一対のブラケット部材5により、蓄電池本体4の各部を一括して固定すれば、蓄電池モジュール1の構成の簡素化を図るとともに、製造コストを低減することもできる。また、蓄電池モジュール1のメンテナンスの際に、蓄電池本体4を分解することも容易になる。
【0040】
このようなブラケット部材5は、所定の形状に加工された一枚の板材を折り曲げることにより作製することができる。ブラケット部材5の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄等が挙げられる。かかる材料でブラケット部材5を構成することにより、ブラケット部材5を介した放熱効果も期待できる。
【0041】
さらに、各ブラケット部材5(本体部51)の蓄電池本体4の上面縁部を覆う部分には、その長手方向に沿って長孔(第1の貫通孔)513と、この長孔513の近傍に小孔514とが形成されている。各ブラケット部材5では、長孔513と小孔514との組が前後2組設けられている。なお、前側の組と後側の組とでは、長孔513と小孔514との位置関係が逆転している。
【0042】
これらの長孔513および小孔514が、ブラケット部材5にハンドル6を着脱自在に取り付けるための取付部を構成している。
各ハンドル6は、
図2に示すように、手を掛ける帯状の把持部61と、把持部61の両端から下方に延びる一対の脚部62と、下端部(把持部61と反対側の端部)に設けられたU字状をなすフック部63とを備えている。
【0043】
このようなハンドル6は、所定の形状に加工された一枚の板材を折り曲げることにより作製することができる。ハンドル6の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄等が挙げられる。
【0044】
ブラケット部材5の長孔513は、ハンドル6のフック部63を通過可能な大きさを有している。また、小孔514は、フック部63の先端を挿入して係止可能な大きさを有している。
【0045】
このため、ハンドル6の各フック部63を一対のブラケット部材5の対応する長孔513に挿通し、ハンドル6を蓄電池モジュール1に対して前方または後方に若干スライドさせた後、各フック部63の先端が小孔514に挿入されるように、ハンドル6を蓄電池モジュール1から離間させることにより、ハンドル6の一端部が一方のブラケット部材5に、その他端部が他方のブラケット部材5に取り付けられる。これにより、
図2の前方に示すように、蓄電池モジュール1は、ハンドル6を取り付けた取付状態となる。
【0046】
このように、ハンドル6を蓄電池モジュール1に取り付けることにより、蓄電池モジュール1の移動作業や設置作業を、特に狭小スペースであっても、人手により容易に行うことができる。また、ハンドル6は、蓄電池モジュール1から取り外すこともできるため、複数の蓄電池モジュール1を積み重ねて設置する場合でも、蓄電池ユニット100の大きさが増大することを防止することもできる。また、ハンドル6は、ブラケット部材5に対する姿勢が変更可能であり、筐体20内のデッドスペースを有効利用して筐体20内に収めることができる。
【0047】
以上説明したような蓄電池モジュール1が複数個積み重ねられた状態で、筐体20に収納される。このため、蓄電池モジュール1の設置数を変更することにより、蓄電池ユニット100の電池容量を調節することができる。
なお、
図1に示す構成では、筐体20の紙面手前側に2段、紙面奥側に3段で、蓄電池モジュール1を積み重ねて配置するようになっている。
【0048】
筐体20は、
図1に示すように、上部開口201aを備える本体部201と、上部開口201aを塞ぐようにして本体部201に着脱自在に固定される蓋部202とを備えている。
【0049】
また、筐体20の底部内面には、前述した蓄電池モジュール1の下面に形成された図示しない凸部(第2の係合部)が挿入されることにより係合可能な凹部(第3の係合部)2012が設けられている。これにより、最も下側に位置する蓄電池モジュール1を、筐体20(本体部201)に対して位置決めすることができる。
なお、凹部2012(第3の係合部)の形状および大きさは、蓄電池モジュール1の下面に形成された図示しない凸部(第2の係合部)の形状および大きさに応じて決められるものであり、図示の形状および大きさに限定されず、例えば、第3の係合部は、凹部2012に代えて、凸部231と同様の構成の円環状の凸部や、下面に形成された凸部の内側に挿入可能(係合可能)な円柱状の凸部で構成することもできる。
【0050】
積み重ねられた複数の蓄電池モジュール1の上には、
図1に示すように、固定プレート30が配置され、固定プレート30が、図中矢印で示すネジにより、本体部201にネジ止めされる。これにより、複数の蓄電池モジュール1も本体部201に固定される。
かかる構成によれば、蓄電池モジュール1同士をネジ止めすることなく、一括して本体部201(筐体20)に固定することができるため、部品点数の削減を図ることができるとともに、蓄電池ユニット100の設置作業をより簡略化することができる。また、固定プレート30は、筐体20を補強する機能も有する。
【0051】
このような固定プレート30には、蓄電池モジュール1の凸部231が挿入されることにより係合可能な貫通孔(第4の係合部)301が設けられている。これにより、積み重ねられた複数の蓄電池モジュール1をより確実に筐体20に固定することができる。
なお、貫通孔301(第4の係合部)の形状および大きさは、凸部231の形状および大きさに応じて決められるものであり、図示の形状および大きさに限定されず、例えば、第4の係合部は、貫通孔301に代えて、下面に形成された凸部と同様の構成の円環状の凸部や、凸部231の内側に挿入可能(係合可能)な円柱状の凸部で構成することもできる。
【0052】
また、固定プレート30上には、制御モジュール10が配置され、図中矢印で示すネジにより、固定プレート30にネジ止めされる。
制御モジュール10は、各蓄電池モジュール1に電気的に接続されており、例えば、交流電流と直流電流との電力変換を行う機能、蓄電池モジュールの異常の有無をモニターする機能、蓄電池モジュール1の充電量をモニターする機能、異常時の電力遮断機能、外部機器との通信機能等を有している。
【0053】
また、制御モジュール10は、保護回路101を有しており(後述する
図5および
図6参照)、この保護回路101は、過充電時に蓄電池モジュール1への充電を停止する機能と、過放電時に蓄電池モジュール1の放電を停止する機能と、外部短絡等の大電流放電を阻止する機能とを有している。
【0054】
本体部201内に、複数の蓄電池モジュール1および制御モジュール10を収納した状態で、本体部201の上部開口201aを塞ぐように、本体部201に蓋部202が装着される。
蓋部202は、長方形状(上部開口201aに対応した形状)の平板で構成され、四つの角部にそれぞれ貫通孔2021が形成されている。図中矢印で示すネジを貫通孔2021に挿通し、枠体2011のネジ穴に螺合する。これにより、蓋部202が本体部201に固定される。
【0055】
筐体20および固定プレート30の構成材料としては、それぞれ、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄等が挙げられる。かかる材料で筐体20および固定プレート30を構成することにより、これらを介した放熱効果も期待できる。
【0056】
以上のような構成の蓄電池ユニット100が備える蓄電池モジュール1では、前述したように、各蓄電池セル21に制限素子25が設けられており、制限素子25が、所定温度となったときに、蓄電池セル21への給電または蓄電池セル21からの送電を制限する。以下、この点について詳述する。
【0057】
<第1実施形態>
図4は
、第1実施形態に係る蓄電池ユニットの制御系を示すブロック図である。
【0058】
図4に示すように、蓄電池ユニット100では、各蓄電池モジュール1が制御モジュール10に電気的に接続されている。
図4では、1つの蓄電池モジュール1を代表的に図示し、他の蓄電池モジュール1の図示を省略しているが、複数の蓄電池モジュール1は、電気的に、直列または並列に接続されているか、または、直列および並列の組み合わせにより接続されている。
【0059】
各蓄電池モジュール1は、前述したように、複数の蓄電池セル21を有しており、各蓄電池セル21には、制限素子25が設けられている。
図4では、1つの蓄電池モジュール1が有する複数の蓄電池セル21のうち4つの蓄電池セル21を代表的に図示している。また、
図4では、複数の蓄電池セル21が電気的に直列に接続されている場合を図示している。なお、1つの蓄電池モジュール1が有する蓄電池セル21の数は、少なくとも1つであればよく、図示の数に限定されず、任意である。また、複数の蓄電池セル21は、直列に接続されている場合に限らず、並列に接続されていてもよいし、直列および並列の組み合わせにより接続されていてもよい。
【0060】
各制限素子25は、対応する蓄電池セル21と制御モジュール10との間の通電経路の途中に電気的に接続されている。
図4では、制限素子25は、2つの蓄電池セル21を接続する配線の途中に電気的に接続されている。このように、制御モジュール10(または保護回路101)は、制限素子25を介して蓄電池セル21に電気的に接続されている。これにより、制御モジュール10が制限素子25と蓄電池セル21との間に接続されている場合に比べて、蓄電池セル21に対する通電制限を直接的に行うことができ、安全性を高めることができる。
【0061】
なお、制限素子25の接続位置は、蓄電池セル21と制御モジュール10との間の通電経路の途中であれば、図示の位置(2つの蓄電池セル21を接続する配線の途中)に限定されない。例えば、制限素子25は、蓄電池セル21と制御モジュール10とを接続する配線の途中に接続されていてもよい。また、蓄電池セル21と制御モジュール10とを接続する配線の途中に複数の制限素子25を接続する場合、いずれの制限素子25が作動しても、その作動した制限素子25に対応する蓄電池セル21に対する通電制限を行えるようにするためには、当該複数の制限素子25が電気的に直列に接続されていることが好ましい。
【0062】
制限素子25は、所定の温度T2未満の温度下では、蓄電池セル21への給電および蓄電池セル21からの送電を許容し、一方、所定の温度T2以上の温度下では、蓄電池セル21への給電または蓄電池セル21からの送電を制限する機能を有する。すなわち、制限素子25は、所定の温度T2未満の温度下では、通電可能な第1の電気抵抗値を有し、一方、所定の温度T2以上の温度下では、第1の電気抵抗値よりも高い第2の電気抵抗値を有するか、または、通電を遮断する。
このような制限素子25は、所定の温度T2を検出する機能(以下、「温度検出機能」ともいう)と、通電を停止または減少させる機能(以下、「通電制限機能(スイッチ機能)」ともいう)とを有すると言える。
【0063】
かかる制限素子25が蓄電池セル21に設けられていることで、蓄電池セル21が過昇温したとき、制限素子25が蓄電池セル21への給電または蓄電池セル21からの送電を制限し、事故等を未然に防止することができる。なお、制限素子25は、所定の温度T2以上となったとき、制御モジュール10が検出可能な信号を出力するように構成されていてもよい。この場合、制御モジュール10は、例えば、過昇温した蓄電池セル21を特定し、その内容を、図示しない表示部へ表示したり、図示しない記憶部に記憶したりすることができる。
【0064】
また、制限素子25は、各蓄電池セル21毎に設けられているため、いずれの蓄電池セル21が過昇温しても、迅速かつ的確に蓄電池セル21への給電または蓄電池セル21からの送電を制限することができる。
【0065】
ここで、蓄電池セル21の過昇温とは、蓄電池セル21の温度が蓄電池セル21の使用可能温度範囲または正常使用温度範囲よりも高い所定の温度T2に達することである。本発明の蓄電池モジュール1は、屋内に設置されるため、蓄電池モジュール1の外部の温度(環境温度)による蓄電池セル21の温度変動は小さく、蓄電池セル21が過昇温する主な原因は、通常、蓄電池セル21の故障、誤作動等となる。したがって、蓄電池モジュール1は、環境温度の影響を考慮して蓄電池セル21の温度を検出するための広範囲の温度検知や複雑な演算処理が不要であり、蓄電池セル21の温度のみを監視すればよい。そのため、蓄電池セル21の過昇温による事故等を確実に防止しつつ、蓄電池モジュール1が有する回路の構成を簡単化することができる。
【0066】
また、前述した制限素子25の第1の電気抵抗値は、特に限定されないが、例えば、10k〜100kΩ程度であることが好ましく、10k〜20kΩ程度であることがより好ましい。また、前述した制限素子25の第2の電気抵抗値は、第1の電気抵抗値よりも高ければよいが、実質的に通電を遮断し得る電気抵抗値であることが好ましく、例えば、第1の電気抵抗値に対して、10倍以上であることが好ましく、20倍以上であることがより好ましい。
【0067】
図4に示す制限素子25は、例えば、バイメタルスイッチ、温度ヒューズまたはポリスイッチで構成することができる。このような制限素子25は、比較的安価であるため、多数の蓄電池セル21のそれぞれに設けても、蓄電池モジュール1のコスト増を抑えることができる。また、このような制限素子25は、故障し難く、長期にわたって的確な作動が可能である。
【0068】
ここで、制限素子25が温度ヒューズで構成されている場合、制限素子25の温度が温度T2に達すると、温度ヒューズの導体部分が溶断されることで、通電制限機能が働き、その後、制限素子25の温度が温度T2未満となっても、その通電制限機能が維持される。すなわち、この場合、制限素子25の通電制限機能は不可逆的である。これにより、安全性を高めることができる。この場合、必要な修理等とともに、新規な制限素子25と交換することで、蓄電池モジュール1の再使用が可能となる。
【0069】
一方、制限素子25がバイメタルスイッチまたはポリスイッチで構成されている場合、制限素子25の温度が温度T2に達すると、スイッチがオフとなることで、通電制限機能が働き、その後、制限素子25の温度が温度T2未満となると、スイッチがオンとなることで、その通電制限機能が解除される。すなわち、この場合、制限素子25の通電制限機能は可逆的である。これにより、制限素子25の作動が偶発的であって蓄電池セル21の故障等に起因しない場合、修理等の手間を要することなく、蓄電池モジュール1の再使用が可能となる。なお、制限素子25の通電制限機能が繰り返し働く場合、実際に蓄電池セル21に異常と判断できるため、蓄電池モジュール1の修理等を行う。このようなことから、バイメタルスイッチまたはポリスイッチは利便性に優れる。
【0070】
このような制限素子25は、蓄電池セル21に設けられているため、蓄電池セル21の温度変化に対する応答性に優れ、蓄電池セル21が過昇温したときに迅速かつ的確な作動(前述した給電または送電の制限)が可能である。そのため、蓄電池モジュール1は、極めて高い信頼性で、蓄電池セル21の過昇温による事故等を防止することができる。
【0071】
また、
図3に示すように、制限素子25は、蓄電池セル21の中央部付近に設けられている。蓄電池セル21の中央部付近は、特に温度変化が大きいため、制限素子25の蓄電池セル21の温度変化に対する応答性が向上する。なお、制限素子25の設置位置は、前述したような温度検出機能が発揮可能であれば、
図3の位置に限定されず、例えば、蓄電池セル21の外周部であってもよい。
【0072】
また、制限素子25は、蓄電池セル21に接触して設けられていることが好ましい。これにより、制限素子25を蓄電池セル21上に設置するという比較的簡単な構成で、蓄電池セル21の温度変化に対する制限素子25の応答性を高め、蓄電池セル21が過昇温したときに制限素子25の迅速かつ的確な作動が可能である。ここで、このような効果を顕著に発揮させる観点から、制限素子25は、互いに隣り合う2つの蓄電池セル21のうち、対応する一方の蓄電池セル21に対して接触し、他方の蓄電池セル21に対して離間していることが好ましい。
【0073】
蓄電池セル21に対する制限素子25の設置方法(固定方法)としては、特に限定されないが、例えば、接着剤等による方法、ねじ等を用いた方法、2つの蓄電池セル21間で挟み込む方法等が挙げられる。ここで、蓄電池セル21とそれに対応する制限素子25との間には、他の物が介在していてもよいが、当該物(介在物)は、蓄電池セル21の温度変化に対する制限素子25の応答性を高める観点から、金属材料、熱伝導性セラミックス材料等の熱伝導性に優れた材料を用いて構成されていることが好ましい。したがって、例えば、接着剤を用いた固定方法を用いる場合、当該接着剤は、熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性接着剤を用いることが好ましい。
【0074】
また、屋内の温度をT1[℃]とし、制限素子25の通電制限機能が働く所定の温度をT2[℃]としたとき、T2−T1は、65〜150であることが好ましく、65〜120であることがより好ましく、65〜100であることがさらに好ましい。これにより、蓄電池セル21の正常な使用が妨げられることなく(言い換えると、蓄電池セル21の使用可能温度範囲を有効に活用しつつ)、蓄電池セル21の過昇温による事故等を的確かつ未然に防止することができる。
【0075】
これに対し、T2−T1が小さ過ぎると、蓄電池モジュール1の設置環境温度(温度T2)が比較的低い場合、蓄電池セル21の使用可能温度範囲内であっても、制限素子25の通電制限機能が働き、その結果、蓄電池モジュール1の使用可能温度範囲が狭くなってしまう。一方、T2−T1が大き過ぎると、蓄電池モジュール1の設置環境温度(温度T2)が比較的高い場合、蓄電池セル21の使用温度範囲を超えてから制限素子25の通電制限機能が働くまでの温度範囲が広くなり過ぎて、蓄電池セル21の温度変化に対する制限素子25の応答性が低下したり、安全性を確保するための設計の自由度が低下したりする傾向を示す。
【0076】
また、所定の温度T2は、65〜150℃であることが好ましい。これにより、蓄電池セル21が故障、誤作動等により過昇温した的確なタイミングで、制限素子25の通電制限機能を働かせることができる。
一方、屋内の温度T1は、0〜40℃であることが好ましい。これにより、制限素子25が外部温度(環境温度)の影響を受けるのを低減することができる。
【0077】
<第2実施形態>
図5は
、第2実施形態に係る蓄電池ユニットの制御系を示すブロック図である。なお、以下、
図5に示す第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態と同様の事項については、その説明を省略する。
【0078】
図5に示す蓄電池ユニット100Aは、前述した第1実施形態の制限素子25に代えて制限素子25Aを有する。
具体的には、蓄電池ユニット100Aは、制御モジュール10に電気的に接続されている複数の蓄電池モジュール1Aを備えている。
図5では、1つの蓄電池モジュール1Aを代表的に図示し、他の蓄電池モジュール1Aの図示を省略しているが、複数の蓄電池モジュール1Aは、電気的に、直列または並列に接続されているか、または、直列および並列の組み合わせにより接続されている。
【0079】
各蓄電池モジュール1Aは、複数の蓄電池セル21を有しており、各蓄電池セル21には、制限素子25Aが設けられている。
図5では、1つの蓄電池モジュール1Aが有する複数の蓄電池セル21のうち4つの蓄電池セル21を代表的に図示している。また、
図5では、複数の蓄電池セル21が電気的に直列に接続されている場合を図示している。なお、1つの蓄電池モジュール1Aが有する蓄電池セル21の数は、少なくとも1つであればよく、図示の数に限定されず、任意である。また、複数の蓄電池セル21は、直列に接続されている場合に限らず、並列に接続されていてもよいし、直列および並列の組み合わせにより接続されていてもよい。
【0080】
各制限素子25Aは、対応する蓄電池セル21と制御モジュール10との間の通電経路(配線)の途中に電気的に接続されている。
図5では、制限素子25Aは、2つの蓄電池セル21を接続する配線の途中に電気的に接続されている。このように、制御モジュール10(または保護回路101)は、制限素子25Aを介して蓄電池セル21に電気的に接続されている。
【0081】
ここで、制限素子25Aは、蓄電池セル21に設けられているセンサー部251と、蓄電池セル21と制御モジュール10との間の通電経路の途中に接続されているスイッチ部252とを有する。
【0082】
センサー部251は、例えば、熱電対で構成することができ、温度変化に応じた信号(電流信号または電圧信号)を出力する。スイッチ部252は、例えば、ツェナーダイオード、FET(Field effect transistor)等を含んで構成されたスイッチング素子またはスイッチング回路であり、センサー部251からの信号に基づいて、通電を停止または減少させる。
【0083】
このように、制限素子25Aは、温度検出機能を有するセンサー部251と、通電制御機能を有するスイッチ部252とに機能的に分かれた2つの部分で構成されている。このような制限素子25Aによっても、前述した第1実施形態の制限素子25と同様の効果を発揮することができる。また、このような制限素子25Aの通電制限機能は可逆的である。そのため、蓄電池モジュール1Aの利便性を高めることができる。
【0084】
なお、制限素子25A(特にスイッチ部252)は、所定の温度T2以上となったとき、制御モジュール10が検出可能な信号を出力するように構成されていてもよい。この場合、制御モジュール10は、例えば、過昇温した蓄電池セル21を特定し、その内容を、図示しない表示部へ表示したり、図示しない記憶部に記憶したりすることができる。
【0085】
以上、本発明の蓄電池モジュー
ルについて説明したが、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されるものではない。
例えば、本発明の蓄電池モジュー
ルは、それぞれ、前述した実施形態
の構成において、他の任意の構成を追加して有していてもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。