特許第6981842号(P6981842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NECプラットフォームズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6981842-出力装置 図000002
  • 特許6981842-出力装置 図000003
  • 特許6981842-出力装置 図000004
  • 特許6981842-出力装置 図000005
  • 特許6981842-出力装置 図000006
  • 特許6981842-出力装置 図000007
  • 特許6981842-出力装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981842
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】出力装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   H02M3/155 C
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-203661(P2017-203661)
(22)【出願日】2017年10月20日
(65)【公開番号】特開2019-80383(P2019-80383A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 憲史
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−303340(JP,A)
【文献】 特開平04−079505(JP,A)
【文献】 特開2013−169051(JP,A)
【文献】 特開平07−135731(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0159857(US,A1)
【文献】 特開2001−045740(JP,A)
【文献】 特開2014−160928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングレギュレータが備える電界効果トランジスタのソースとドレインとの間で消費される電力を表す電力情報を導出する導出部と、
前記電力情報を出力する出力部と、
を備え
前記出力部は、前記ソースと前記ドレインとの間で消費される電力に係る電力波形の振幅が第一閾値を超えた場合に所定の第一情報を出力する、出力装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記ソースと前記ドレインとの間の電圧を表す電圧情報を出力する、請求項1に記載された出力装置。
【請求項3】
前記電圧情報が、前記電圧に係る電圧波形である、請求項2に記載された出力装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記ソースと前記ドレインとの間を流れる電流を表す電流情報を出力する、請求項1又は請求項2に記載された出力装置。
【請求項5】
前記電力情報が、前記ソースと前記ドレインとの間で消費される電力に係る電力波形を含む、請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1に記載された出力装置。
【請求項6】
前記電力情報が、前記ソースと前記ドレインとの間で消費される電力に係る電力波形の振幅を含む、請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1に記載された出力装置。
【請求項7】
スイッチングレギュレータが備える電界効果トランジスタのソースとドレインとの間で消費される電力を表す電力情報を導出する導出部と、
前記電力情報を出力する出力部と、
を備え、
前記出力部は、前記ソースと前記ドレインとの間の電圧に係る電圧波形の振幅が第二閾値を超えた場合に所定の第二情報を出力する出力装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記ソースと前記ドレインとの間の電圧を表す電圧情報を出力する、請求項7に記載された出力装置
【請求項9】
前記出力部は、前記電界効果トランジスタの温度又は前記電界効果トランジスタの近傍の温度を表す情報を出力する、請求項1乃至請求項8のうちのいずれか一に記載された出力装置。
【請求項10】
前記出力部は、前記電界効果トランジスタの温度又は前記電界効果トランジスタの近傍の温度が第三閾値を超えた場合に所定の第三情報を出力する、請求項1乃至請求項8のうちのいずれか一に記載された出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化状況を出力する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電圧をより低い直流電圧に変換する装置として、FETを用いたスイッチングレギュレータが一般的に利用されている(特許文献1及び非特許文献1参照)。ここで、FETは、電界効果トランジスタを意味し、Field effect transistorの略である。
【0003】
ここで、特許文献1は、平滑用の電解コンデンサの寿命が末期であると判定された時にそれを通達するスイッチングレギュレータを開示する。
【0004】
また、非特許文献1は、本発明に関連して、同期整流型のスイッチングレギュレータを開示する。
【0005】
また、非特許文献2は、本発明に関連して、センサIC(Integrated Circuit)を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−201962号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】EDN JAPAN、”同期整流”、[平成29年10月6日検索]、インターネット(http://ednjapan.com/edn/articles/1003/03/news106.html)
【非特許文献2】製品一覧、”0 〜 50A コンダクタ一体型 センサー IC”Allegro MicroSystems, LLC、[平成29年10月6日検索]、インターネット(http://www.allegromicro.com/ja−JP/Products/Current−Sensor−ICs/Zero−To−Fifty−Amp−Integrated−Conductor−Sensor−ICs.aspx)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、電解コンデンサの寿命が末期に近づいた時にその旨を知らせることは可能である。しかしながら、スイッチングレギュレータにおいては、電解コンデンサに代えて寿命の長い固体コンデンサ等が用いられることも多い。その場合は、スイッチングレギュレータの寿命はFETの寿命により決まる場合が多い。しかしながら、これまでのところスイッチングレギュレータにおけるFETの寿命推定方法は知られていない。
【0009】
本発明は、スイッチングレギュレータが備える電界効果トランジスタの劣化状況の把握を支援し得る出力装置等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の出力装置は、スイッチングレギュレータが備える電界効果トランジスタのソースとドレインとの間で消費される電力を表す電力情報を導出する導出部と、前記電力情報を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の出力装置等は、スイッチングレギュレータが備える電界効果トランジスタの劣化状況の把握を支援し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のコンバータ装置の構成例を表す概念図である。
図2】本実施形態の出力装置を適用し得るスイッチングレギュレータの構成例を表す概念図である。
図3】本実施形態の出力装置の構成例を表す概念図である。
図4】FETが理想的なスイッチングを行う場合の、電圧波形、電流波形及び電力波形の例を表すイメージ図である。
図5】劣化の進んだFETにおける電圧波形の例を表すイメージ図である。
図6】劣化の進んだFETにおける、電圧波形と電流波形と電力波形との例を表すイメージ図である。
図7】実施形態の出力装置の最小限の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[構成と動作]
図1は、本実施形態のコンバータ装置の例であるコンバータ装置101の構成を表す概念図である。
【0014】
コンバータ装置101は、図2に表すスイッチングレギュレータ201に、図3に表す出力装置301を組み合わせたものである。ここで、スイッチングレギュレータ201は、本実施形態の出力装置を適用し得るスイッチングレギュレータの例である。また、出力装置301は、本実施形態の出力装置の例である。
【0015】
図2に表すスイッチングレギュレータ201は、周知の、同期整流タイプのスイッチングレギュレータである。同期整流タイプのスイッチングレギュレータについては、非特許文献1に開示がある。
【0016】
端子Aには直流の入力電圧が入力される。端子Cには所定のデューティ比で切り替わるゲート電圧が入力される。また、端子Dには、端子Cに入力されるゲート電圧とは逆相で切り替わるゲート電圧が入力される。これらにより、端子Bからは、前記デューティ比に応じた、前記入力電圧より低い、直流の出力電圧が出力される。当該出力電圧は、外部の負荷に供給されることが想定されている。
【0017】
非特許文献2にも記述があるように、スイッチングレギュレータ201の動作の詳細は周知であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0018】
検出部131aは、経路の前記経路の検出部131aの設置位置の電流の時間変化を継続的に検出し、検出した電流を表す情報である第一電流情報を、順次、処理部146に送付する。検出部131aは、また、前記経路の検出部131aの設置位置の電圧の時間変化を継続的に検出し、検出した電圧を表す情報である第一電圧情報を、順次、処理部146に送付する。
【0019】
検出部131bは、経路の前記経路の検出部131bの設置位置の電流の時間変化を継続的に検出し、検出した電流を表す情報である第二電流情報を、順次、処理部146に送付する。検出部131bは、また、前記経路の検出部131bの設置位置の電圧の時間変化を継続的に検出し、検出した電圧を表す情報である第二電圧情報を、順次、処理部146に送付する。
【0020】
検出部131a及び131bとしては、例えば、市販のセンサICを用いることができる。ここで、ICは、Integrated Circuitの略である。市販のセンサICとしては、例えば、非特許文献2に記載されたものを用いることができる。
【0021】
温度センサ126aは、FET111a及び111bの近傍の温度の時間変化を継続的に測定する。温度センサ126aは、測定した温度を表す情報である温度情報を処理部146に送付する。
【0022】
処理部146は、検出部131aから送付された前記第一電圧情報と検出部131bから送付された前記第二電圧情報とから、FET111aのソース−ドレイン間の電圧である第三電圧を導出する。そして、処理部146は、前記第一電流情報に含まれる第一電流値と前記第三電圧とから、FET111aのソース−ドレイン間で発生する消費電力である第一電力を継続的に導出する。
【0023】
処理部146は、また、第二電圧と第二電流値と前記第三電圧とから、FET111bのソース−ドレイン間で発生する消費電力である第二電力を継続的に導出する。ここで、前記第二電圧は、検出部131bから送付された前記第二電圧情報に含まれるものである。また、前記第二電流値は、同じく検出部131bから送付された前記第二電流情報に含まれものである。
【0024】
処理部146は、以下の七つの出力情報の出力を出力部151に行わせる。
【0025】
第一の前記出力情報は、前記第一電流情報に含まれる第一電流値の時間変化(波形)である。前記第一電流値は、FET111aのソース−ドレイン間を流れる電流に相当する。第一電流値の波形は、FET111aが劣化することにより変化し得る。従い、第一電流値の波形は、FET111aの劣化を表す指標となり得る。
【0026】
第二の前記出力情報は、前記第三電圧の時間変化(波形)である。前記第三電圧は、前述のように、FET111aのソース−ドレイン間の電圧に相当する。FET111aのスイッチング特性が劣化すると、後述のように、ソース−ドレイン間の電圧波形にリンギングノイズが現れる場合があることが経験的に理解されている。リンギングノイズの現れ方の例は、図5を参照して後述する。従い、前記第三電圧の電圧波形は、FET111aの劣化を表す指標となり得る。
【0027】
第三の前記出力情報は、前記第一電力の時間変化である。前記第一電力は、FET111aのソース−ドレイン間での消費電力に相当する。FETの消費電力は、そのFETが理想的なスイッチング動作をするときにはゼロである。しかしながら、FETが劣化して、例えば、スイッチング時の立ち上がりや立下りが鈍るとする。すると、鈍った立ち上がりや立下りのタイミングで、ソース−ドレイン間が電流を遮断しない程度の小さい抵抗値になる時間帯が存在し得る。その場合、その抵抗値のソース−ドレイン間を流れる電流により、ソース−ドレイン間での消費電力が発生し得る。ソース−ドレイン間で消費電力が発生し得る場合の例は、図6を参照して後述する。上記理由により前記第一電力は、FET111aの劣化を表す指標となり得る。
【0028】
第四の前記出力情報は、前記第二電流情報に含まれる第二電流値の時間変化(波形)である。前述の第一電流値の波形についての説明と同様の説明により、第二電流値の波形は、FET111bの劣化を表す指標となり得る。
【0029】
第五の前記出力情報は、前記第二電圧の時間変化(波形)である。前述の第三電圧の波形についての説明と同様の説明により、前記第二電圧の電圧波形は、FET111bの劣化を表す指標となり得る。
【0030】
第六の前記出力情報は、前記第一電力の時間変化(波形)である。前述の第一電力の波形についての説明と同様の説明により、前記第二電力は、FET111bの劣化を表す指標となり得る。
【0031】
第七の前記出力情報は、温度センサ126aから送付されたFET111a及び111bの近傍の温度である。
【0032】
FET111a及び111bのいずれかのソース−ドレイン間での消費電力が増加すると、消費電力が増加し、熱を発する。そのため、FET111a及び111bの近傍の温度は上昇し得る。従い、FET111a及び111bの近傍の温度は、FET111a及び111bの少なくともいずれか一方の劣化を表す指標となり得る。
【0033】
処理部146は、必ずしも、七つの前記出力情報のすべてを出力部に出力させる必要はない。処理部146は、七つの前記出力情報の一部のみを出力させても構わない。
【0034】
処理部146は、また、前記出力情報に代えて又は前記出力情報に加えて、前記出力情報から、各FETの劣化の程度を表す劣化情報を導出し、出力部151に出力させても構わない。
【0035】
前記劣化情報は、例えば、前記第三電圧や前記第二電圧の波形の振幅である。前述のようにFETが劣化すると、前記第三電圧の波形や前記第二電圧の波形にリンギングノイズが生じる場合がある。リンギングノイズが生じると、前記第三電圧や前記第二電圧の振幅は増加する。従い、前記第三電圧又は前記第二電圧の最大値は、各FETの劣化の程度を表す劣化情報として適当である。
【0036】
前記劣化情報は、あるいは、例えば、前記第一電力や前記第二電力の波形の振幅である。前述のように、FETのソース−ドレイン間での消費電力は、FETの劣化の指標となる。従い、前記第一電力や前記第二電力の波形の振幅は、各FETの劣化の程度を表す劣化情報として適当である。
【0037】
なお、前述の温度情報は、前述の説明により前記劣化情報そのものである。
【0038】
処理部146は、一つ以上の前記劣化情報により劣化の程度についての判定結果を導出し、導出した判定結果を、出力部151に出力させても構わない。
【0039】
当該判定結果に係る判定は、例えば、前記第一電力の振幅が閾値Th1以上の場合にFET111aが寿命である旨を判定するものである。ここで、前記閾値Th1は、当該判定のために予め設定された前記第一電力の振幅についての閾値である。
【0040】
前記判定は、あるいは、例えば、前記第一電力の振幅が閾値Th2以上前記閾値Th1未満の場合にFET111aの寿命が近づいている旨を判定するものである。ここで、前記閾値Th2は、当該判定のために予め設定された前記第一電力の振幅についての閾値である。前記閾値Th2は前記Th1より小さい値である。
【0041】
前記判定は、あるいは、例えば、前記第一電力が前記閾値Th1以上であり、かつ、前記第三電圧が閾値Th3以上の場合に、FET111aが寿命である旨を判定するものである。ここで、前記閾値Th3は、当該判定のために予め設定された前記第三電圧の振幅についての閾値である。
【0042】
前記判定は、あるいは、例えば、前記第一電力が前記閾値Th1以上であるか、又は、前記第三電圧が前記閾値Th3以上である場合に、FET111aが寿命である旨を判定するものである。
【0043】
前記判定は、あるいは、例えば、前記第一電力が前記閾値Th1以上であり、かつ、前記第三電圧が前記閾値Th3以上であり、かつ、前記温度が閾値Th4以上の場合に、FET111aが寿命である旨を判定するものである。ここで、前記閾値Th4は、当該判定のために予め設定された前記温度についての閾値である。
【0044】
前記判定は、あるいは、例えば、前記第二電力が前記閾値Th5以上であり、かつ、前記第二電圧が前記閾値Th6以上であり、かつ、前記温度が前記閾値Th4以上の場合に、FET111bが寿命である旨を判定するものである。ここで、前記閾値Th5は、当該判定のために予め設定された前記第二電力についての閾値である。また、前記閾値Th6は、当該判定のために予め設定された前記第二電圧についての閾値である。
【0045】
なお、図1に表す出力部151は、処理部146の指示に従い、処理部146が指示する情報を出力する。出力部151は、例えば、表示装置である。
【0046】
温度センサ126aは、検出部131aの近傍の温度と検出部131b近傍の温度の各々を測定しても良い。その場合、温度センサ126aは、検出部131aの近傍の温度と検出部131b近傍の温度の各々を表す情報を処理部146に送付する。
【0047】
温度センサ126aは、検出部131aの温度と検出部131b近傍の温度の各々を測定しても良い。その場合、温度センサ126aは、検出部131aの近傍の温度と検出部131b近傍の温度の各々を表す情報を処理部146に送付する。
【0048】
次に、図4乃至図6を参照して、FETに劣化の兆候が現れた場合の、電流波形、電圧波形及び電力波形の例を説明する。
【0049】
図4は、FETが理想的なスイッチングを行う場合の、電圧波形、電流波形及び電力波形を表すイメージ図である。ここで、図4に表す電圧波形は、前記第三電圧又は前記第二電圧の波形である。また、図4に表す電流波形は、前記第一電流又は前記第二電流の波形である。また、図4に表す電力波形は前記第一電力又は前記第二電力の波形である。
【0050】
電圧波形は、時間ΔT1の電圧がゼロの期間と時間ΔT2の電圧がV1の期間とを交互に繰り返す。時間ΔT1の電圧がゼロの期間は、FETのゲートに、ソース−ドレイン間を短絡させるためのゲート電圧が印加される期間である。一方、時間ΔT2の電圧がV1の期間は、FETのゲートに前記ゲート電圧が印加されない期間である。FETが理想的なスイッチングを行う場合は、前記ゲート電圧がFETのゲートに印加された瞬間に、そのFETのソース−ドレイン間が短絡される。また、同場合は、前記ゲート電圧の印加が停止された瞬間に、そのFETのソース−ドレイン間が絶縁される。そのため、前記電圧波形は図4に表すものになる。
【0051】
なお、図4は時間ΔT1と時間ΔT2とが近い場合を表すが、時間ΔT1と時間ΔT2とは大きく異なっている場合も想定され得る。また、時間ΔT1と時間ΔT2とが同じ場合も想定され得る。時間ΔT1と時間ΔT2をどのように設定するかは、図1に表す端子Bからの出力電圧値により設定されるものである。
【0052】
一方、図4に表す電流波形は、図4に表す時間ΔT1の期間は増加し、時間ΔT2の期間はゼロになる。時間ΔT1の期間において増加するのは、図1に表すコイル136及びコンデンサ141の影響である。時間Δ1の期間における電流の増加の仕方は、図1に表すコイル136のインダクタンス及びコンデンサ141容量により決まる。
【0053】
一方、図4に表す電力は、常にゼロである。図4に表す時間ΔT1の期間では、ソース−ドレイン間の電圧はゼロであるためソース−ドレイン間に電流が流れてもソース−ドレイン間の電力はゼロである。また、図4に表す時間ΔT2の期間では、ソース−ドレイン間に電流が流れないので、ソース−ドレイン間の電力はゼロである。そのため、ソース−ドレイン間の電力は常にゼロになる。
【0054】
図5は、劣化の進んだFETにおける電圧波形を表すイメージ図である。図5に表す電圧波形は、前記第三電圧又は前記第二電圧の波形である。また、図5に表す時間ΔT1及びΔT2は、図4に表す時間ΔT1及びΔT2と同じものである。
【0055】
時間ΔT1の期間から時間ΔT2の期間に切り替わってからしばらくの間、電圧波形に前述のリンギングノイズが現れる。劣化が進んだFETにおいてこのリンギングノイズが現れることは、経験により理解されている。
【0056】
リンギングノイズが現れると、電圧波形の振幅は、図4に表す理想的な場合の電圧V1から、電圧V2に上昇する。
【0057】
また、図5に表す電圧波形においては、時間ΔT1の期間から時間ΔT2の期間に移行しても、図4に表す場合のように即座に電圧が上昇せず、電圧の立ち上がりが鈍っている。劣化の進んだFETにおける電圧波形の立ち上がりが鈍ることは、経験により理解されている。
【0058】
また、図5に表す電圧波形においては、時間ΔT2の期間から時間ΔT1の期間に移行しても、図4に表す場合のように即座に電圧が下降せず、電圧の立ち下がりが鈍っている。劣化の進んだFETにおける電圧波形の立ち下がりが鈍ることは、経験により理解されている。
【0059】
図6は、劣化の進んだFETにおける、電圧波形と電流波形と電力波形との関係を表すイメージ図である。図6に表す電圧波形は、図5に表す電圧波形の一周期分である。また、図6に表す電力波形は、前記第一電流又は前記第二電流の波形である。また、図6に表す電力波形は、前記第一電力又は前記第二電力の波形である。
【0060】
図5を参照した前述の説明のように、劣化の進んだFETにおいては、時間ΔT1の期間から時間ΔT2の期間に切り替わってもすぐには電圧が上昇せず、電圧波形の立ち上がりが鈍る。これは、前記ゲート電圧の印加が停止されてもソース−ドレイン間が設計通りに絶縁されるまでに時間を要するためである。図6に表す場合は、時刻T1から時刻T2の間で電圧が立ち上がる。
【0061】
この時刻T1と時刻T2の間の期間では、ソース−ドレイン間が設計通りに絶縁されていないためにソース−ドレイン間に電流が流れる。当該電流は、当該期間においてソース−ドレイン間の抵抗値が増大するにつれ、図6に表すように、減少する。
【0062】
ソース−ドレイン間で消費される電力は、図6に表す電圧と電流値との積であるので、例えば、図6に表す、この時刻T1と時刻T2の間の期間の電力のようになる。
【0063】
一方、図5を参照した前述の説明のように、劣化の進んだFETにおいては、時間ΔT2の期間から時間ΔT1の期間に切り替わってもすぐには電圧が下降せず、電圧波形の立ち下がりが鈍る。これは、前記ゲート電圧が印加されてもソース−ドレイン間が設計通りに短絡するまでに時間を要するためである。図6に表す場合は、時刻T3から時刻T4の間で電圧が立ち下がる。
【0064】
時刻T3と時刻T4の間の期間では、ソース−ドレイン間が設計通りに短絡していないためにソース−ドレイン間に電圧が存在する。当該電圧は、当該期間においてソース−ドレイン間の抵抗値の減少が進むにつれ、図6に表すように、減少する。
【0065】
ソース−ドレイン間で消費される電力は、図6に表す電圧と電流値との積であるので、例えば、図6に表す時刻T3と時刻T4の間の期間の電力のようになる。
[効果]
本実施形態の出力装置は、スイッチングレギュレータが備えるFETの、ソース−ドレイン間で消費される電力の電力波形を出力する。当該電力波形は、前記FETの劣化状況を表す情報である。前記出力装置は、当該出力により、前記FETの劣化状況の把握を支援し得る。
【0066】
前記出力装置は、上記に加えて、又は、上記に代えて、ソース−ドレイン間の電圧波形を出力する場合がある。当該電圧波形もまた、前記FETの劣化状況を表す情報である。前記出力装置は、当該出力により、前記FETの劣化状況の一層的確な把握を支援し得る。
【0067】
前記出力装置は、上記に加えて、ソース−ドレイン間の電流波形を出力する場合がある。当該電流波形もまた、前記FETの劣化状況を表す情報である。前記出力装置は、当該出力により、前記FETの劣化状況の一層的確な把握を支援し得る。
【0068】
前記出力装置は、上記に加えて、FET又はFET近傍の温度を表す温度情報を出力する場合がある。当該温度情報もまた、前記FETの劣化状況を表す情報である。前記出力装置は、当該出力により、前記FETの劣化状況の一層的確な把握を支援し得る。
【0069】
前記出力装置は、上記に加えて、FET又はFET近傍の温度を表す温度情報を出力する場合がある。当該温度情報もまた、前記FETの劣化状況を表す情報である。前記出力装置は、当該出力により、前記FETの劣化状況の一層的確な把握を支援し得る。
【0070】
前記出力装置は、上記に加えて、上記の出力情報のうちの少なくとも一部から導出した、FETの劣化状況についての判定結果を表す情報を出力する場合がある。前記出力装置は、当該出力により、前記FETの劣化状況の把握を容易にし得る。
【0071】
以上の説明においては、FETの劣化を表し得る前記FETのソース−ドレイン間で消費される電力についての電力情報として、前記電力についての電力波形及び電力波形の振幅の例を説明した。しかしながら、前記電力情報は、前記電力を表すものであればどのようなものでもよい。前記電力情報は、例えば、前記電力の平均値等であっても構わない。
【0072】
図7は、実施形態の出力装置の最小限の構成である出力装置301xの構成を表すブロック図である。
【0073】
出力装置301xは、導出部146xと、出力部151xとを備える。
【0074】
導出部146xは、スイッチングレギュレータが備える電界効果トランジスタのソースとドレインとの間で消費される電力を表す電力情報を導出する。
【0075】
出力部151xは、前記電力情報を出力する。
【0076】
前記電力は、前記FETの劣化状況を表す情報である。従い、前記出力装置は、当該出力により、前記FETの劣化状況の把握を支援し得る。
【0077】
そのため、出力部151xは、前記構成により、[発明の効果]の項に記載した効果を奏する。
【0078】
なお、導出部146xは、例えば、図1に表す処理部146である。また、出力部151xは、例えば、図1に表す出力部151である。
【0079】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術的思想を逸脱しない範囲で更なる変形、置換、調整を加えることができる。例えば、各図面に示した要素の構成は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。
【0080】
また、前記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記述され得るが、以下には限られない。
【0081】
(付記1)
スイッチングレギュレータが備える電界効果トランジスタのソースとドレインとの間で消費される電力を表す電力情報を導出する導出部と、
前記電力情報を出力する出力部と、
を備える、出力装置。
【0082】
(付記2)
前記電力情報が、前記ソースと前記ドレインとの間の電圧を表す電圧情報と、前記ソースと前記ドレインとの間を流れる電流を表す電流情報とから導出されたものである、付記1に記載された出力装置。
【0083】
(付記3)
前記出力部は、前記ソースと前記ドレインとの間の電圧を表す電圧情報を出力する、付記1又は付記2に記載された出力装置。
【0084】
(付記4)
前記電圧情報が、前記電圧に係る電圧波形である、付記3に記載された出力装置。
【0085】
(付記5)
前記出力部は、前記ソースと前記ドレインとの間を流れる電流を表す電流情報を出力する、付記1乃至付記4に記載された出力装置。
【0086】
(付記6)
前記電流情報が前記電流の電流波形である、付記2又は付記5に記載された出力装置。
【0087】
(付記7)
前記電力情報が、前記ソースと前記ドレインとの間で消費される電力に係る電力波形を含む、付記1乃至付記6のうちのいずれか1に記載された出力装置。
【0088】
(付記8)
前記電力情報が、前記ソースと前記ドレインとの間で消費される電力に係る電力波形の振幅を含む、付記1乃至付記7のうちのいずれか1に記載された出力装置。
【0089】
(付記9)
前記出力部は、前記ソースと前記ドレインとの間で消費される電力に係る電力波形の振幅が第一閾値を超えた場合に所定の第一情報を出力する、付記1乃至付記8のうちのいずれか1に記載された出力装置。
【0090】
(付記10)
前記第一情報が、前記電界効果トランジスタの劣化が進んでいることを表現した情報を含む、付記9に記載された出力装置。
【0091】
(付記11)
前記出力部は、前記ソースと前記ドレインとの間の電圧に係る電圧波形の振幅が第二閾値を超えた場合に所定の第二情報を出力する、付記1乃至付記10のうちのいずれか一に記載された出力装置。
【0092】
(付記12)
前記第二情報が、前記電界効果トランジスタの劣化が進んでいることを表現した情報を含む、付記11に記載された出力装置。
【0093】
(付記13)
前記出力部は、前記電界効果トランジスタの温度又は前記電界効果トランジスタの近傍の温度を表す情報を出力する、付記1乃至付記12のうちのいずれか一に記載された出力装置。
【0094】
(付記14)
前記出力部は、前記電界効果トランジスタの温度又は前記電界効果トランジスタの近傍の温度が第三閾値を超えた場合に所定の第三情報を出力する、付記1乃至付記13のうちのいずれか一に記載された出力装置。
【0095】
(付記15)
前記第三情報が、前記電界効果トランジスタの劣化が進んでいることを表現した情報を含む、付記14に記載された出力装置。
【0096】
(付記16)
前記スイッチングレギュレータは、同期整流タイプのものである、付記1乃至付記15のうちのいずれか一に記載された出力装置。
【0097】
(付記17) 付記1乃至付記16のうちのいずれか一に記載された出力装置と、前記スイッチングレギュレータとを備える、コンバータ装置。
【0098】
(付記18)
スイッチングレギュレータが備える電界効果トランジスタのソースとドレインとの間で消費される電力を表す電力情報により前記電界効果トランジスタの状態を判定する判定方法。
【符号の説明】
【0099】
101 コンバータ装置
111a、111b FET
126a 温度センサ
131a、131b 検出部
136 コイル
141 コンデンサ
146 処理部
146x 導出部
151、151x 出力部
201 スイッチングレギュレータ
301 出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7