特許第6981861号(P6981861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981861
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/04 20060101AFI20211206BHJP
   F01M 11/03 20060101ALI20211206BHJP
   F01M 13/04 20060101ALI20211206BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   F01M11/04 B
   F01M11/03 J
   F01M11/03 L
   F01M13/04 E
   F02F7/00 P
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-232003(P2017-232003)
(22)【出願日】2017年12月1日
(65)【公開番号】特開2019-100257(P2019-100257A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】由良 直也
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−117372(JP,A)
【文献】 特開2017−180106(JP,A)
【文献】 特開平10−299448(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第2003−0018574(KR,A)
【文献】 中国実用新案第205908324(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/04
F01M 11/03
F01M 13/04
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸線方向から見て左右2つの回転体が配置されたシリンダヘッドの上面に固定されるヘッドカバーのうち、前記左右の回転体のうち一方の回転体によって振り飛ばされたオイルミストが飛散する部位の上方に、オイルフィラーキャップで上から塞がれるオイル注入口が開口しており、
前記ヘッドカバーの内部に設けられたバッフルプレートに、前記回転体によって振り飛ばされたオイルミストが前記オイルフィラーキャップの下面部に向かうように方向変換させるガイド手段を設けている構成であって、
前記ガイド手段、前記オイルミストが斜め上向きでかつ前記オイルフィラーキャップの軸心回り方向に方向変換されるように、前記回転体の回転軸心から遠ざかるに従って高くなるように傾斜しつつ、前記オイルフィラーキャップの軸心回りに曲げられた形態に形成されて、
前記ガイド手段の下端は、前記2つの回転体の上端よりも低く、前記2つの回転体の間に位置している、
内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ヘッドカバーを備えた内燃機関に関する。より詳しくは、オイルフィラーキャップで塞がれるオイル注入口をヘッドカバーに設けている内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、ヘッドカバーにオイル注入口を設けることは広く行われている。この場合、オイル注入口は、ヘッドカバーのうちタイミングチェーンが配置されている側の端部(前端部)に設けることが多い。
【0003】
ところが、ヘッドカバーとシリンダヘッドとの間の空間のうち、前部には、タイミングチェーン等の周回によって発生した微細なオイルミストが浮遊しているため、ヘッドカバーの前端部にオイル注入口を設けると、オイルミストがクリーム状又は泡状に白濁した状態でオイルフィラーキャップの下面等に付着する現象があり、オイル交換やメンテナンスに際してオイルフィラーキャップを外すと、白濁したオイルミストが人目に触れて、人に違和感や不安感を抱かせる場合があった。
【0004】
つまり、ヘッドカバーの内部(動弁室)には水分も存在しているため、微細なオイルミストがオイルフィラーキャップの下面に継続的に付着すると、オイルミストと凝縮した水分との混合物が成長していって、白濁してクリーム状又は泡状の外観を呈するのであった。
【0005】
この点について本願出願人は、特許文献1において、ヘッドカバーに設けたガイド手段によってオイルミストをオイルフィラーキャップの下面に誘導して、オイルミストを油滴化して滴下させることによって、白濁化現象を防止することを開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−180106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のものは簡単な構造でありながら効果があり、実際に車両用エンジンに実施されている。しかし、本願発明者が検討したところ、改善の余地があることが判明した。すなわち、特許文献1では、ガイド手段の例として、回転体の軸心から遠ざかる方向に高くなるように傾斜した平坦なガイド板を採用しているが、オイルミストの勢いなどの様々な影響により、オイルフィラーキャップの下面に、オイルミストの流れの影になる部分ができて、ここに白濁化現象が生じる可能性があることが判った。
【0008】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、特許文献1の考え方を発展させて、オイルフィラーキャップの下面の白濁化防止を確実化せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、
クランク軸線方向から見て左右2つの回転体が配置されたシリンダヘッドの上面に固定されるヘッドカバーのうち、前記左右の回転体のうち一方の回転体によって振り飛ばされたオイルミストが飛散する部位の上方に、オイルフィラーキャップで上から塞がれるオイル注入口が開口しており、
前記ヘッドカバーの内部に設けられたバッフルプレートに、前記回転体によって振り飛ばされたオイルミストが前記オイルフィラーキャップの下面部に向かうように方向変換させるガイド手段を設けている」
という基本構成である。
【0010】
そして、上記基本構成において、
「前記ガイド手段、前記オイルミストが斜め上向きでかつ前記オイルフィラーキャップの軸心回り方向に方向変換されるように、前記回転体の回転軸心から遠ざかるに従って高くなるように傾斜しつつ、前記オイルフィラーキャップの軸心回りに曲げられた形態に形成されて、
前記ガイド手段の下端は、前記2つの回転体の上端よりも低く、前記2つの回転体の間に位置している
という構成になっている。
【0011】
この場合、ガイド手段のガイド面は、全体として1つの平坦な面(二次元の面)になっていてもよいし、全体が曲面(三次元の立体面)になっていてもよい。或いは、多数の小さな平坦面が連続して、曲面状の立体面を形成していてもよい。オイルミストのガイド機能の面からは、曲面又は曲面状の立体面に形成するのが好ましいと云える。
【0012】
ヘッドカバー本体の内部にバッフルプレートを設けた構造も多いが、本願発明は、これを利用して、ガイド手段は、バッフルプレートに設けてもいる。また、ガイド手段は、バッフルプレートに一体成形してもよいし、別体に製造したものをバッフルプレートに取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の基本的な作用は特許文献1と同様であり、オイルミストがオイルフィラーキャップの下面に誘導されることにより、オイルミストが油滴化して速やかに滴下して、オイルミストがオイルフィラーキャップの下面に付着したままになることを防止できる。従って、オイルフィラーキャップの下面にクリーム状の油水混合物が生成することを防止できる。
【0014】
そして、回転体の軸心方向から見て、オイルミストは、オイルフィラーキャップの軸心を挟んだ一方の側から飛散するが、本願発明では、ガイド手段は、オイルフィラーキャップの軸心回りに曲げられた形態になっているため、オイルミストは、上向きに方向変換しつつ、オイルフィラーキャップの軸心回りの方向にも方向変換する。
【0015】
この場合、オイルミストの群がオイルフィラーキャップの軸心回りの方向に方向変換するため、いわば、オイルミストの群が旋回流となるのと同様の現象が生じて、オイルミストがオイルフィラーキャップの下面にまんべんなく付着する。従って、オイルフィラーキャップの下面全体にオイルミストシャワーをかけるような状態になって、オイルミストを速やかに油滴化できる。その結果、オイルフィラーキャップの下面にクリーム状の油水混合物発生することを、しっかりと阻止できる。
【0016】
オイルミスト群が飛散すると、空気が一緒に引かれるため空気流が生成され得るが、本願発明では、オイルミストの群がオイルフィラーキャップの軸心回りに向かうように方向変換することにより、オイルフィラーキャップの軸心回りの旋回流を生成することも可能になる。
【0017】
また、回転体の回転によって遠心方向に向かう(或いは接線方向に向かう)空気流が生成されるが、ガイド手段は、直進性を有する空気流をオイルフィラーキャップの軸心回りに旋回させる機能も有しており、ヘッドカバーの内部に浮遊しているオイルミストがこの旋回流に乗ることにより、オイルミストの旋回流を生成させることができる。これら旋回流の働きによっても、オイルミストをオイルフィラーキャップの下面全体に積極的に付着させる機能を確実化して、クリーム状の油水混合物の発生防止を確実化できる。
【0018】
また、ガイド手段はバッフルプレートに一体化できるため、特許文献1と同様に、構造の複雑化を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の底面図である。
図2】実施形態の平断面図で、図3のII-II 視断面図である。
図3図2のIII-III 視断面図である。
図4】(A)は図2及び図3の IVA-IVA視断面図、(B)は別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明で、方向を示す「前」の文言を使用するが、内燃機関の一般的な呼び方に倣ったもので、クランク軸線方向でかつタイミングチェーンや補機が配置されている側を前としている。
【0021】
(1).概要
内燃機関の基本構成は従来と同様であり、図3及び図4(A)に示すように、シリンダヘッド1とその上面に固定されたヘッドカバー装置2とを備えている。ヘッドカバー装置2は、外観を構成するヘッドカバー本体3と、ヘッドカバー本体3の内部に装着したバッフルプレート4とを備えており、ヘッドカバー本体3には、上下に開口したオイル注入口5が形成されており、オイル注入口5は、オイルフィラーキャップ6で上から塞がれる。
【0022】
バッフルプレート4は広い範囲に亙ってヘッドカバー本体3に装着されており、図面には表れていないが、ヘッドカバー本体3とバッフルプレート4との間には、ブローバイガスからオイル分を捕集するためのブローバイガス通路と、新気(吸気)を動弁室に取り込むための新気通路とが形成されている。
【0023】
図1はヘッドカバー装置の底面図であり、シリンダヘッド1の前部と吸気弁用カム軸7及び排気弁用カム軸8を表示している。両カム軸7,8はシリンダヘッド1の手前に露出しており、この露出部に、タイミングチェーン(図示せず)が巻き掛けされたチェーンスプロケット9,10をそれぞれ取り付けている。更に、吸気弁用カム軸7の露出部には、チェーンスプロケット9を備えたVVT(可変バルブタイミング装置)11を設けており、VVT11は吸気弁用カム軸7と一緒に回転する。本実施形態では、排気弁用カム軸8のチェーンスプロケット10と排気弁用カム軸7のVVT11が回転体の例になっている。
【0024】
オイル注入口5は、その半分程度がヘッドカバー本体3の前端面から手前にはみ出ている。従って、オイルフィラーキャップ6の軸心は、ヘッドカバー本体3の前端の近傍に位置している。オイルフィラーキャップ6は、フランジ6aと摘み6bと嵌入部6cとを有しており、嵌入部6cに、下向きに縮径したテーパ部6dが一体に形成されている。
また。
【0025】
図4(A)に部分的に示すように、シリンダヘッド1(及びシリンだブロック)の前面には、タイミングチェーンやチェーンスプロケット9を囲うフロントカバー12が固定されており、オイル注入口5から流し込んだオイルは、フロントカバー12とシリンダヘッド1及びシリンダブロックとで囲われた空間に流下して、オイルパンに至る。
【0026】
そして、図1〜3のとおり、オイル注入口5は、底面視及び平面視では、吸気弁用カム軸7と排気弁用カム軸8との延長線の間の部位のうち、排気弁用カム軸8の延長線に寄った部位に配置されているが、タイミングチェーンは、吸気弁用チェーンスプロケット9を経由して排気弁用チェーンスプロケット10に向かうように周回するため、VVT11の外周面や外端面に付着したオイルが、遠心力により、オイル注入口5の下方部に向けて飛散する。
【0027】
(2).ガイド手段
そこで、請求項に記載したガイド手段の一例として、バッフルプレート4の端部に、VVT11によって振り飛ばされたオイルミストをオイル注入口5に向かうように方向変換させるガイド板(ガイドリブ)13を一体に設けている。
【0028】
このガイド板13は、図2に示すように、平面視ではVVT11の軸心から遠ざかる方向に長く延びた略帯状であって、図3に示すように、正面視ではVVT11の軸心から遠ざかるに従って高さが高くなるように傾斜(湾曲)しており、かつ、図2のとおり、平面視では、オイルフィラーキャップ6の軸心14の回りに捩じられたような曲がった形態になっている。
【0029】
平面視の形態を正確に述べると、上端面13aが、VVT11の軸心方向に向かってヘッドカバー本体3の外側に向かうほど、オイルフィラーキャップ6の軸心14に近づくように捩じられている。もとより、上端面13aがVVT11の軸心と同心の円弧状であってもよい。要は、オイルミストが当たるガイド面が、オイルフィラーキャップ6の軸心14の側を向く方向に傾斜していたらよい。
【0030】
ガイド板13の下端13bは、VVT11の回転軸心と平行になっているが、図4(A)に示すように、上に行くに従って、オイルフィラーキャップ6の軸心14の側に傾いており、ガイド板13のガイド面は、全体として曲面の状態になっている。また、図3に示すように、ガイド板13の下端13bは、2つのスプロケット8,9の間に位置して、かつ、両スプロケット8,9の上端よりも低い高さになっている。
【0031】
従って、VVT11の回転によって飛散したオイルミストの群は、直進性を持ってガイド板13に当たると、オイルフィラーキャップ6の軸心14の回りのエリアに広く分散して向かうように方向変換される。つまり、個々のオイルミストをみると反射して直線方向に方向変換するが、オイルミストの群全体としてみると、オイルフィラーキャップ6の軸心14の回りを旋回するような動きを呈している。従って、VVT11から飛散したオイルミストを、オイルフィラーキャップ6の下面全体にまんべんなく付着させて、オイルフィラーキャップ6の下面の全体において、オイルミストを油滴化して滴下させることができる。
【0032】
また、図3及び図4(A)に小ドットの群で示すように、ヘッドカバー装置2の内部のうち前部には、主としてタイミングチェーンの周回によって生じた微細なオイルミストが浮遊しているが、VVT11の回転及びタイミングチェーンの周回によって、ガイド板13に向かう空気流が生じており、オイルミストがこの空気流に乗ってガイド板13に誘導される。
【0033】
すると、空気流はガイド板13のガイド作用により、VVT11の軸心14回りを旋回して旋回流となるため、オイルミストの群がオイルフィラーキャップ6の下面全体にまんべんなく付着して、付着したオイルミストは速やかに油滴と化して滴下する。このような空気流の誘導作用によっても、オイルフィラーキャップ6の下面全体に、オイルミストをまんべんなくかつ積極的に付着させることができる。
【0034】
従って、オイルフィラーキャップ6に付着したオイルミストに水分が付着しても、クリーム状の油水混合物に成長するようなことはない(油水混合物に成長する前に、下方に滴下してしまう。)。よって、オイル交換等に際してオイルフィラーキャップ6を取り外したときに、人に不快感や不安を抱かせることはない。
【0035】
図4(B)では、テーパ部6dを備えていないノーマルタイプのオイルフィラーキャップ6を表示しているが、この場合も、上記と同じ効果を奏する。
【0036】
実施形態では、ガイド板13のガイド面は1つの曲面になっているが、多数の平坦面を複合させて曲面のように形成したり、平坦面と曲面とを組み合わせたりすることも可能である。また、ガイド板は、バッフルプレートとは別体に製造して、バッフルプレートに取り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明は、内燃機関に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 シリンダヘッド
2 ヘッドカバー装置
3 ヘッドカバー本体
4 ヘッドカバー装置の一部を構成するバッフルプレート
5 オイル注入口
6 オイルフィラーキャップ
7,8 カム軸
9,10 チェーンスプロケット
11 回転体の一例としてVVT
13 ガイド手段の一例としてのガイド板
図1
図2
図3
図4