特許第6981870号(P6981870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981870
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ポリマー粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/22 20060101AFI20211206BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20211206BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C08F2/22
   C08F2/18
   C08F20/00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-248079(P2017-248079)
(22)【出願日】2017年12月25日
(65)【公開番号】特開2019-112558(P2019-112558A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】福西 智史
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓也
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−363372(JP,A)
【文献】 特開平09−012629(JP,A)
【文献】 特開平11−193310(JP,A)
【文献】 特表2005−517772(JP,A)
【文献】 特開2017−110069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60、6/00−246/00、301/00
C08C 1/14、3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ用ゴム組成物に配合するためのポリマー粒子であり、乳化重合又は乳化剤を用いた懸濁重合により合成されるポリマー粒子の製造方法であって、
重合により得られたラテックスに凝固剤を添加し、凝固物を得る凝固工程と、
得られた凝固物を、sp値が8〜11の有機溶媒で再分散させる処理を行い、処理溶液を得る再分散工程と、
得られた処理溶液に凝固剤を添加し、再凝固処理をする再凝固工程を有し、
前記ポリマー粒子が、(メタ)アクリレート系重合体からなるものである、ポリマー粒子の製造方法。
【請求項2】
前記乳化重合又は懸濁重合が、脂肪酸塩及び過硫酸塩の存在下で行われる、請求項1に記載のポリマー粒子の製造方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート系重合体が、式(1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート単位を構成単位として有する、請求項1又は2に記載のポリマー粒子の製造方法。
【化1】
式中、Rは水素原子又はメチル基であり、同一分子中のRは同一でも異なっていてもよく、Rは炭素数4〜18のアルキル基であり、同一分子中のRは同一でも異なっていてもよい。
【請求項4】
前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、及びキシレンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリマー粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤに用いられるゴム組成物においては、湿潤路面におけるグリップ性能(ウエットグリップ性能)と低燃費性に寄与する転がり抵抗性能を高次元でバランスさせることが求められている。しかし、これらは背反特性であるため、同時に改良することは容易ではない。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1には、ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対し、所定の構成単位を有しかつ反応性シリル基を持たない(メタ)アクリレート系重合体からなる、ガラス転移点が−70〜0℃かつ平均粒径が10nm以上100nm未満の微粒子を、1〜100質量部含有するゴム組成物が開示されている。
【0004】
しかしながら、このような粒子は、乳化重合等により合成されるため、乳化剤などの不純物が含まれることがある。乳化剤などに含まれている金属元素は、組成物中に存在すると発熱の要因となり、製品不良につながるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−110069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、乳化重合や乳化剤を用いた懸濁重合によりポリマー粒子を製造する場合において、金属元素濃度を低減することができる、ポリマー粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るポリマー粒子の製造方法は、タイヤ用ゴム組成物に配合するためのポリマー粒子であり、乳化重合又は乳化剤を用いた懸濁重合により合成されたポリマー粒子の製造方法であって、重合により得られたラテックスに凝固剤を添加し、凝固物を得る凝固工程と、得られた凝固物を、sp値が8〜11の有機溶媒で再分散させる処理を行い、処理溶液を得る再分散工程と、得られた処理溶液に凝固剤を添加し、再凝固処理をする再凝固工程を有し、上記ポリマー粒子が、(メタ)アクリレート系重合体からなるものであるものとする。
【0008】
上記乳化重合又は懸濁重合は、脂肪酸塩及び過硫酸塩の存在下で行われるものとすることができる。
【0010】
上記(メタ)アクリレート系重合体は、式(1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート単位を構成単位として有するものとすることができる。
【0011】
【化1】
【0012】
式中、Rは水素原子又はメチル基であり、同一分子中のRは同一でも異なっていてもよく、Rは炭素数4〜18のアルキル基であり、同一分子中のRは同一でも異なっていてもよい。
【0013】
上記有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、及びキシレンからなる群より選択される少なくとも1種であるものとすることができる。
【0014】
なお、本明細書でいうsp値(溶解パラメータ)とは、例えば、向井淳二、金城徳幸著「技術者のための実学高分子」(講談社、1981年10月1日発行)の71〜77頁に記載のFedorsの式により算出される25℃における値δ[(cal/cm1/2]であり、1(cal/cm1/2=2.05(MJ/m1/2であり、そのため、SP値が10(cal/cm1/2以下とは20.5(MJ/m1/2以下を意味する。
Fedorsの式:
SP値(δ)=(E/v)1/2=(ΣΔe/ΣΔv1/2
:蒸発エネルギー
v:モル体積
Δe:各成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δv:各原子又は原子団のモル体積
上記の式の計算に使用する各原子又は原子団の蒸発エネルギー、モル体積は、F. Fedors, Polym.Eng. Sci., 14, 147 (1974)を参照することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、乳化重合や乳化剤を用いた懸濁重合によりポリマー粒子を製造する場合において、金属元素濃度を低減したポリマー粒子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る製造方法により得られるポリマー粒子は、乳化剤などの金属塩を重合過程で用いる、乳化重合又は懸濁重合によって得られる重合体である。なお、本明細書において、「乳化重合」とは、臨界ミセル濃度以下の乳化剤を用いて重合反応を行う、いわゆる無乳化剤乳化重合も含むものとする。
【0018】
上記乳化剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩などのアニオン性界面活性剤が挙げられる。具体的には、ドデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。このような乳化剤を用いた場合に、本実施形態に係る製造方法の効果が顕著に得られやすい。
【0019】
また、乳化重合又は懸濁重合を行う際には、開始剤を配合してもよく、その種類は、特に限定されないが、過硫酸塩、過酸化物、アゾ化合物、レドックス系開始剤などが挙げられる。このような開始剤を用いた場合に、本実施形態の製造方法の効果が顕著に得られやすい。
【0020】
本実施形態の製造方法は、乳化重合又は乳化剤を用いた懸濁重合により得られたラテックスに凝固剤を添加し、凝固物を得る凝固工程を有する。
【0021】
凝固剤としては、特に限定されないが、メタノールなどのアルコールであることが好ましい。アルコールを用いることにより、ポリマー粒子中の金属元素濃度を低減しやすい。
【0022】
本実施形態の製造方法は、さらに、得られた凝固物を、sp値が8〜11の有機溶媒で再分散処理を行い、処理溶液を得る再分散工程を有する。
【0023】
有機溶媒としては、sp値が8〜11であれば、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、キシレン、メチルイソプロピルケトン、メチルプロピルケトン、エチルベンゼン、ピリジンなどが挙げられる。
【0024】
本実施形態の製造方法は、さらに、得られた処理溶液に凝固剤を添加し、再凝固処理をする再凝固工程を有するものとする。
【0025】
本実施形態の製造方法により得られたポリマー粒子は、金属元素の濃度が低減される。そのメカニズムは定かではないが、sp値が8〜11である有機溶媒を用いて、凝固物を有機溶媒中に再分散させることにより、凝固物中に含まれていた乳化剤などの不純物が、有機溶媒中に溶け出すからであると考えられる。
【0026】
本実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子は、sp値が所定範囲内である有機溶媒に再分散するものであれば、特に限定されないが、そのsp値は、6.0〜11であることが好ましく、8.0〜10であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子は、好ましくは(メタ)アクリレート系重合体であり、より好ましくは、下記一般式(1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート単位を構成単位(繰り返し単位とも称される。)として有する(メタ)アクリレート系重合体からなるものである。
【0028】
【化2】
【0029】
式中、Rは水素原子又はメチル基であり、同一分子中のRは同一でも異なっていてもよく、Rは炭素数4〜18のアルキル基であり、同一分子中のRは同一でも異なっていてもよい。Rのアルキル基は直鎖でも分岐していてもよい。Rは、炭素数6〜16のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数8〜15のアルキル基である。
【0030】
(メタ)アクリレート系重合体は、1種又は2種以上のアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマーを重合してなるものである。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートのうちの一方又は両方を意味する。また、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸のうちの一方又は両方を意味する。
【0031】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ノニル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ウンデシル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸n−トリデシル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ノニル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ウンデシル、及びメタクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸n−アルキル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸イソヘプチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸イソウンデシル、アクリル酸イソドデシル、アクリル酸イソトリデシル、アクリル酸イソテトラデシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸イソヘキシル、メタクリル酸イソヘプチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソウンデシル、メタクリル酸イソドデシル、メタクリル酸イソトリデシル、及びメタクリル酸イソテトラデシル等の(メタ)アクリル酸イソアルキル;アクリル酸2−メチルブチル、アクリル酸2−エチルペンチル、アクリル酸2−メチルヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エチルヘプチル、メタクリル酸2−メチルペンチル、メタクリル酸2−メチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸2−エチルヘプチルなどが挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
ここで、イソアルキルとは、アルキル鎖端から2番目の炭素原子にメチル側鎖を有するアルキル基をいう。例えば、イソデシルとは、鎖端から2番目の炭素原子にメチル側鎖を持つ炭素数10のアルキル基をいい、8−メチルノニル基だけでなく、2,4,6−トリメチルヘプチル基も含まれる概念である。
【0033】
一実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子を構成する、(メタ)アクリレート系重合体は、式(1)で表される構成単位として下記一般式(2)で表される構成単位を有する重合体であることが好ましい。
【0034】
【化3】
【0035】
式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基であり(好ましくはメチル基)、同一分子中のRは同一でも異なってもよい。Zは、炭素数1〜15のアルキレン基であり、同一分子中のZは同一でも異なってもよい。Zは直鎖でも分岐していてもよい。
【0036】
式(2)の構成単位は、式(1)中のRが下記一般式(2A)で表される場合である。
【0037】
【化4】
【0038】
式(2A)中のZは、式(2)のZと同じである。
【0039】
このような構成単位を生じる(メタ)アクリレートとしては、上記の(メタ)アクリル酸イソアルキルが挙げられる。かかるイソアルキル基を有する(メタ)アクリレート(好ましくは、メタクリレート)を用いる場合、これを配合して作製された空気入りタイヤの、ウエットグリップ性能と転がり抵抗性能を高めやすい。また、常温でのゴム組成物の硬度低下を抑えやすく、優れた操縦安定性が得られやすい。また、低温でのゴム組成物の弾性率の上昇を抑えやすく、優れたグリップ性能が得られやすい。式(2)及び(2A)中のZは、炭素数5〜12のアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜10のアルキレン基である。特に好ましくは、炭素数7のアルキレン基であり、一例として、(メタ)アクリレート系重合体は、メタクリル酸イソデシルを含むモノマーの重合体であることが好ましい。
【0040】
他の実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子を構成する、(メタ)アクリレート系重合体は、式(1)で表される構成単位として、下記一般式(3)で表される構成単位を有する重合体でもよく、あるいはまた、式(2)で表される構成単位と式(3)で表される構成単位を有する重合体でもよい。後者の場合、両構成単位の付加形態は、ランダム付加でもブロック付加でもよく、好ましくはランダム付加である。
【0041】
【化5】
【0042】
式(3)中、Rは、水素原子又はメチル基であり(好ましくはメチル基)、同一分子中のRは同一でも異なってもよい。Qは、炭素数1〜6(好ましくは1〜3)のアルキレン基であり、直鎖でも分岐でもよく(好ましくは直鎖)、同一分子中のQは同一でも異なってもよい。Qは、メチル基又はエチル基であり(好ましくはエチル基)、同一分子中のQは同一でも異なっていてもよい。
【0043】
式(3)の構成単位は、式(1)中のRが下記一般式(3A)で表される場合である。
【0044】
【化6】
【0045】
式(3A)中、Q及びQは、それぞれ式(3)のQ及びQと同じである。
【0046】
(メタ)アクリレート系重合体が、このような式(2)の構成単位と式(3)の構成単位との共重合体である場合、これを配合して作製された空気入りタイヤの、ウエットグリップ性能と転がり抵抗性能を高めやすい。また、常温でのゴム組成物の硬度低下を抑えやすく、優れた操縦安定性が得られやすい。また、低温でのゴム組成物の弾性率の上昇を抑えやすく、優れたグリップ性能が得られやすい。
【0047】
ここで、該共重合体において、式(2)の構成単位を生じる(メタ)アクリレートの具体例としては、上記の(メタ)アクリル酸イソアルキルが挙げられ、特に好ましくは、メタクリル酸イソデシルである。また、式(3)の構成単位を生じる(メタ)アクリレートの具体例としては、上記列挙のアルキル(メタ)アクリレートのうち、(メタ)アクリル酸n−アルキルおよび(メタ)アクリル酸イソアルキルを除くものが挙げられ、特に好ましくは、メタクリル酸2−エチルヘキシルである。
【0048】
このような共重合体の場合、式(2)の構成単位と式(3)の構成単位の比率(共重合比)は、特に限定されない。例えば、式(2)の構成単位/式(3)の構成単位のモル比で、30/70〜90/10でもよく、40/60〜85/15でもよい。
【0049】
本実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子を構成する、(メタ)アクリレート系重合体は、上記のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体でもよいが、より好ましい実施形態によれば、アルキル(メタ)アクリレートを、多官能ビニルモノマーの存在によって架橋してなる架橋構造の重合体である。すなわち、好ましい実施形態において、(メタ)アクリレート系重合体は、式(1)で表される構成単位とともに、多官能ビニルモノマーに由来する構成単位を含み、該多官能ビニルモノマーに由来する構成単位を架橋点とする架橋構造を有する。
【0050】
多官能ビニルモノマーとしては、フリーラジカル重合によって重合可能な少なくとも2個のビニル基を有する化合物が挙げられ、例えば、ジオールまたはトリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなど)のジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート;メチレンビス−アクリルアミドなどのアルキレンジ(メタ)アクリルアミド;ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの少なくとも2個のビニル基を持つビニル芳香族化合物などが挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0051】
(メタ)アクリレート系重合体は、基本的には式(1)の構成単位からなり、即ち式(1)の構成単位を主成分とするが、効果を損なわない範囲で他のビニル系化合物を併用してもよい。特に限定するものではないが、(メタ)アクリレート系重合体を構成する全構成単位(全繰り返し単位)に対する式(1)の構成単位のモル比が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上である。式(1)の構成単位のモル比の上限は、特に限定しないが、例えば上記の多官能ビニルモノマーを添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。多官能ビニルモノマーに基づく構成単位のモル比は、0.5〜20モル%でもよく、1〜10モル%でもよく、1〜5モル%でもよい。
【0052】
一実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子を構成する、(メタ)アクリレート系重合体が式(2)の構成単位を有する重合体である場合、当該重合体の全構成単位に対する式(2)の構成単位のモル比は25モル%以上であることが好ましく、より好ましくは35モル%以上であり、50モル%以上でもよく、80モル%以上でもよい。当該モル比の上限は、特に限定しないが、例えば多官能ビニルモノマーを上記のモル比で添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。
【0053】
一実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子を構成する、(メタ)アクリレート系重合体が式(3)の構成単位を有する重合体である場合、当該重合体の全構成単位に対する式(3)の構成単位のモル比は25モル%以上であることが好ましく、より好ましくは35モル%以上であり、50モル%以上でもよく、80モル%以上でもよい。当該モル比の上限は、特に限定しないが、例えば多官能ビニルモノマーを上記のモル比で添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。
【0054】
また、他の実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子を構成する、(メタ)アクリレート系重合体が式(2)の構成単位と式(3)の構成単位の共重合体である場合、当該共重合体の全構成単位に対する式(2)の構成単位のモル比が25〜90モル%で、式(3)の構成単位のモル比が5〜60モル%でもよく、式(2)の構成単位のモル比が35〜85モル%で、式(3)の構成単位のモル比が8〜55モル%でもよい。また、式(2)の構成単位と式(3)の構成単位のモル比の合計で80モル%以上でもよく、90モル%以上でもよく、またその上限は、例えば多官能ビニルモノマーを上記のモル比で添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。
【0055】
本実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子を構成する、(メタ)アクリレート系重合体は、反応性シリル基を持たないものであることが好ましい。すなわち、本実施形態の製造方法により得られる、ポリマー粒子は、タイヤ用ゴム組成物に配合する場合、シリカに代わる補強性充填剤として配合するものではないので、該ポリマー粒子を構成する(メタ)アクリレート系重合体の分子末端又は分子鎖中に反応性シリル基を有していないものであることが好ましい。これにより、優れたウエットグリップ性能と転がり抵抗性能が得られやすい。また、常温でのゴム組成物の硬度低下を抑えやすく、優れた操縦安定性が得られやすい。また、低温でのゴム組成物の弾性率の上昇を抑えやすく、優れたグリップ性能が得られやすい。ここで、反応性シリル基とは、式:≡Si−Xで表される官能基(式中、Xはヒドロキシルまたは加水分解可能な基である。)であり、1〜3個のヒドロキシル基又は加水分解可能な1価の基が4価のケイ素原子に結合した構造を有する基である。Xとしては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、及びハロゲン原子が挙げられる。
【0056】
本実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、−70〜0℃の範囲内であることが好ましく、−50〜−10℃であることが好ましく、より好ましくは−40〜−20℃である。ガラス転移温度の設定は、(メタ)アクリレート系重合体を構成するモノマー組成等により行うことができる。ガラス転移温度が0℃以下である場合、低温性能の悪化をより効果的に抑えやすい。また、ガラス転移温度が−70℃以上である場合、ウエットグリップ性能の改善効果を高めやすい。ここで、ガラス転移温度とは、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分(測定温度範囲:−150℃〜150℃)にて測定される値である。
【0057】
本実施形態の製造方法により得られるポリマー粒子の平均粒径は、特に限定されないが、10nm〜100nmであることが好ましく、より好ましくは20〜90nmであり、更に好ましくは30〜80nmである。上記特定の構成単位を含む(メタ)アクリレート系重合体を、このような微細な粒子としてジエン系ゴム中に添加し、タイヤ用ゴム組成物とする場合、ウエットグリップ性能と転がり抵抗性能の向上効果を高めやすい。また、常温でのゴム組成物の硬度低下を抑えやすく、優れた操縦安定性が得られやすい。また、低温でのゴム組成物の弾性率の上昇を抑えやすく、優れたグリップ性能が得られやすい。ここで、本明細書において、「平均粒径」とは、キュムラント法により求めた値とする。具体的には、動的光散乱法(DLS)により測定される粒度分布における積算値50%での粒径(50%径:D50)であり、光子相関法(JIS Z8826準拠)により測定し(入射光と検出器との角度90°)、得られた自己相関関数からキュムラント法により求めた値である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
〈合成例1〉
15.0gのメタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、0.394gのエチレングリコールジメタクリレート、1.91gのドデシル硫酸ナトリウム、120gの水及び13.5gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.179gの過硫酸カリウムを添加した後、1時間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で8時間保持することにより、ポリマー粒子分散エマルションを合成した。得られた溶液中へのメタノール添加による凝析により、ポリマー粒子Aを得た。
【0060】
〈合成例2〉
15.0gのメタクリル酸2−エチルヘキシル、0.450gのエチレングリコールジメタクリレート、2.18gのドデシル硫酸ナトリウム、120gの水及び13.5gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.204gの過硫酸カリウムを添加した以外は、合成例1と同様の手法により、ポリマー粒子Bを得た。
【0061】
〈合成例3〉
15.0gのメタクリル酸n−ドデシル、0.351gのエチレングリコールジメタクリレート、1.70gのドデシル硫酸ナトリウム、120gの水及び13.5gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.159gの過硫酸カリウムを添加した以外は、合成例1と同様の手法により、ポリマー粒子Cを得た。
【0062】
実施例1では、上記合成例1で得られたポリマー粒子Aを、テトラヒドロフラン溶媒中に浸漬して、溶媒中に再分散させた後、メタノールを添加することにより、再凝固させる処理を行った。実施例2〜5及び比較例2〜5では、実施例1に準じて、表1に記載のポリマー粒子A〜C及び再分散溶媒を用いて、再分散及び再凝固処理を行った。また、上記処理を施していないポリマー粒子A〜Cをそれぞれ比較例1,6,7とした。
【0063】
再分散・再凝固処理を施した各実施例及び比較例について、再分散性及び再凝固性を評価し、各実施例及び比較例について、不純物量を測定した。評価方法及び測定方法は、以下に示す通りである。
【0064】
・再分散性:ポリマー粒子が溶媒中に再分散されるかを目視にて確認し、良好に分散されるものは「○」とし、再分散しないものは「×」とした。
【0065】
・再凝固性:ポリマーが再凝固されるかを目視にて確認し、再凝固されるものは「○」、再凝固されないものは「×」とした。
【0066】
・不純物量([Na+K]):得られたポリマー粒子0.1gに硝酸5mlを加え、マイクロ波により分解し、蒸留水により50mlに希釈、測定溶液とした。パーキンエルマー(株)製「Оptima8300」を用いて、誘電結合プラズマ発光分析(ICP−OES)を行い、ナトリウム濃度、及びカリウム濃度を測定し、その合計値を求めた。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
結果は、表1,2に示す通りであり、実施例1〜3は、比較例1及び比較例2〜5との対比、実施例4は、比較例6との対比、実施例5は、比較例7との対比より、不純物量が大幅に低減していることがわかる。
【0070】
また、比較例4,5では、ポリマー粒子は再分散しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の製造方法により得られたポリマー粒子は、乗用車、ライトトラック・バス等の各種タイヤ用ゴム組成物に用いることができる。