特許第6981892号(P6981892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981892ワイヤハーネス及びワイヤハーネス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981892
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス及びワイヤハーネス製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20211206BHJP
   H01B 13/012 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01B7/00 301
   H01B13/012 B
   H01B13/012 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-19873(P2018-19873)
(22)【出願日】2018年2月7日
(65)【公開番号】特開2019-139871(P2019-139871A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2021年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】島津 博一
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−111122(JP,U)
【文献】 特開2015−072884(JP,A)
【文献】 特開2010−283935(JP,A)
【文献】 特開2006−310066(JP,A)
【文献】 特開2012−156396(JP,A)
【文献】 特開平08−008596(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0139084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端側に屈曲部が設けられる複数の電線と、
前記屈曲部を外部に露出させ複数の前記電線の外周を覆う外装部材と、
複数の前記電線の前記外装部材に覆われる部分に設けられ前記外装部材の長さより長い余長部分を有する外装取付部と、
前記外装取付部の両側で前記外装部材の外部に露出する部分に設けられ前記外装取付部の余長部分を前記外装部材の外部に配置させ前記外装取付部の長さを前記外装部材の長さと同等に保持する一対の固定部と、
を有することを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
一対のフォーク治具の間に前記フォーク治具の間より長い余長部分を有して複数の電線を配置させる第1工程と、
ならし治具によって複数の前記電線の余長部分を一対の前記フォーク治具側に向けて移動させる第2工程と、
一対の前記フォーク治具の近傍に前記ならし治具によって成形された複数の前記電線の状態を保持する一対の固定部を設ける第3工程と、
一対の前記固定部の間に位置する複数の前記電線の外周に外装部材を組付ける第4工程と、
を有することを特徴とするワイヤハーネス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス及びワイヤハーネス製造方法に関する。詳細には、少なくとも一端側に屈曲部が設けられた複数の電線の外周が外装部材によって覆われるワイヤハーネス及びワイヤハーネス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスとしては、少なくとも一端側に屈曲部が設けられる複数の電線と、屈曲部を外部に露出させ複数の電線の外周を覆う外装部材としてのコルゲートチューブとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このワイヤハーネスでは、複数の電線のコルゲートチューブに覆われる部分が、コルゲートチューブの長さより長い余長部分を有するように設定されており、余長部分によって屈曲部で屈曲される複数の電線にかかる負荷を吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−6210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のようなワイヤハーネスでは、複数の電線の外装部材に覆われる部分である外装取付部が、外装部材の長さより長い余長部分を有するので、外装部材の内部で外装取付部が弛んだ状態で配置されている。
【0006】
このような外装部材の内部における電線の弛みは、外装部材の内部で電線に突っ張りが生じ、外装部材の内径より複数の電線の外径が張り出してしまい、外装取付部に外装部材を組付け難くするなど、外装部材に悪影響を及ぼす恐れがあった。
【0007】
そこで、この発明は、外装部材への影響を抑制することができるワイヤハーネス及びワイヤハーネス製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、少なくとも一端側に屈曲部が設けられる複数の電線と、前記屈曲部を外部に露出させ複数の前記電線の外周を覆う外装部材と、複数の前記電線の前記外装部材に覆われる部分に設けられ前記外装部材の長さより長い余長部分を有する外装取付部と、前記外装取付部の両側で前記外装部材の外部に露出する部分に設けられ前記外装取付部の余長部分を前記外装部材の外部に配置させ前記外装取付部の長さを前記外装部材の長さと同等に保持する一対の固定部とを有することを特徴とするワイヤハーネスである。
【0009】
このワイヤハーネスでは、外装取付部の両側で外装部材の外部に露出する部分に、外装取付部の余長部分を外装部材の外部に配置させ外装取付部の長さを外装部材の長さと同等に保持する一対の固定部が設けられているので、外装部材の内部に外装取付部の余長部分が配置されることがない。
【0010】
従って、このようなワイヤハーネスでは、外装部材の内部で電線が弛むことがなく、外装部材と電線との干渉を防止することができ、外装部材への影響を抑制することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、一対のフォーク治具の間に前記フォーク治具の間より長い余長部分を有して複数の電線を配置させる第1工程と、ならし治具によって複数の前記電線の余長部分を一対の前記フォーク治具側に向けて移動させる第2工程と、一対の前記フォーク治具の近傍に前記ならし治具によって成形された複数の前記電線の状態を保持する一対の固定部を設ける第3工程と、一対の前記固定部の間に位置する複数の前記電線の外周に外装部材を組付ける第4工程とを有することを特徴とするワイヤハーネス製造方法である。
【0012】
このワイヤハーネス製造方法では、一対のフォーク治具の近傍に、ならし治具によって成形された複数の電線の状態を保持する一対の固定部を設けるので、一対の固定部の間に位置する複数の電線が弛むことがない。
【0013】
従って、このようなワイヤハーネス製造方法では、複数の電線が弛んでいない一対の固定部の間に外装部材が組付けられるので、外装部材と電線との干渉を防止することができ、外装部材への影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外装部材への影響を抑制することができるワイヤハーネス及びワイヤハーネス製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスの斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスの複数の電線の外装取付部を一対のフォーク治具間に配置したときの斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスの複数の電線の外装取付部をならし治具でならすときの斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスの複数の電線の外装取付部に一対の固定部を設けたときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図4を用いて本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス及びワイヤハーネス製造方法について説明する。
【0017】
本実施の形態に係るワイヤハーネス1は、少なくとも一端側に屈曲部が設けられる複数の電線3と、屈曲部を外部に露出させ複数の電線3の外周を覆う外装部材5と、複数の電線3の外装部材5に覆われる部分に設けられ外装部材5の長さより長い余長部分を有する外装取付部7とを備えている。
【0018】
そして、外装取付部7の両側で外装部材5の外部に露出する部分には、外装取付部7の余長部分を外装部材5の外部に配置させ外装取付部7の長さを外装部材5の長さと同等に保持する一対の固定部9,9が設けられている。
【0019】
また、本実施の形態に係るワイヤハーネス製造方法は、一対のフォーク治具11,11の間にフォーク治具11,11の間より長い余長部分を有して複数の電線3を配置させる第1工程と、ならし治具13によって複数の電線3の余長部分を一対のフォーク治具11,11側に向けて移動させる第2工程と、一対のフォーク治具11,11の近傍にならし治具13によって成形された複数の電線3の状態を保持する一対の固定部9,9を設ける第3工程と、一対の固定部9,9の間に位置する複数の電線3の外周に外装部材5を組付ける第4工程とを有する。
【0020】
図1図4に示すように、ワイヤハーネス1は、複数の電線3を束ねた電線束からなり、車両ボディ(不図示)に配索される。
【0021】
このワイヤハーネス1の複数の電線3は、車両ボディに配索された状態で、屈曲部(不図示)を介して屈曲され、車両に搭載された電源や機器などに電気的に接続される。
【0022】
このようなワイヤハーネス1では、複数の電線3の外周に、屈曲部を外部に露出するように、コルゲートチューブなどの長さ方向に沿ってスリット(不図示)が設けられた外装部材5が組付けられる。
【0023】
この外装部材5によって覆われる部分である複数の電線3の外装取付部7は、外装部材5の長さより長い余長部分を有するように設定されている。
【0024】
ここで、ワイヤハーネス1では、複数の電線3の屈曲部が位置する部分において、内側の電線3と外側の電線3とでは曲率半径が異なる。
【0025】
このため、例えば、複数の電線3を屈曲部を介して屈曲させて電源や機器などに接続する場合には、内側の電線3では電線3の長さを短く、外側の電線3では電線3の長さを長く設定する必要がある。
【0026】
そこで、外装取付部7に外装部材5の長さより長い余長部分をもたせることにより、複数の電線3の長さを同一長さに設定しても、屈曲部における内側の電線3と外側の電線3との必要な長さの違いを余長部分によって吸収することができ、ワイヤハーネス1の組付けにおける複数の電線3にかかる負荷を吸収することができる。
【0027】
しかしながら、外装取付部7は、その余長部分によって弛みが生じてしまうので、外装部材5の内径より複数の電線3の外径が張り出してしまい、外装取付部7に外装部材5を組付け難くしていた。
【0028】
この外装取付部7の弛みを無くすために、余長部分を外装取付部7の長さ方向の外側に移動するように、作業者が手で外装取付部7の外周をならしていたが、作業者によって出来栄えにバラツキが生じていた。
【0029】
また、外装取付部7をならしても、そのならされた外装取付部7の状態を保持しながら外装部材5を組付けなければならず、組付性が低下していた。
【0030】
そこで、ワイヤハーネス1の外装取付部7は、ならし治具13によってならされ、ならし治具13によってならされた後、外装取付部7の長さ方向の両側に一対の固定部9,9が設けられる。
【0031】
ならし治具13は、操作部15と、ならし部17と、変換部19とを備えている。
【0032】
操作部15は、治具台上に配置された一対のフォーク治具11,11間に配置された複数の電線3の外装取付部7の上方に上下方向に移動可能に配置され、作業者などによって下方に向けて押圧して操作される。
【0033】
ならし部17は、複数の電線3の外周を覆うようにコ字状に一対形成され、外装取付部7の長さ方向の両側にそれぞれ移動可能に配置され、複数の電線3と当接して移動により、外装取付部7の余長部分を外装取付部7の長さ方向の両側に向けて移動させ、外装取付部7の弛みをならす。
【0034】
変換部19は、操作部15と一体に設けられた支柱21と、支柱21に第1関節23を介して回動可能に設けられた第1アーム25及び第2アーム27と、第1アーム25に第2関節29を介して回動可能に設けられた第3アーム31と、第2アーム27に第3関節33を介して回動可能に設けられた第4アーム35とを有し、一対のならし部17,17が第4関節37及び第5関節39を介して回動可能に第3アーム31及び第4アーム35と連結されている。
【0035】
このならし治具13は、操作部15の押圧操作により、変換部19で押圧力が一対のならし部17,17の移動力に変換され、一対のならし部17,17によって外装取付部7の余長部分が長さ方向の両側に位置する一対のフォーク治具11,11側に向けて移動され、外装取付部7の弛みをならす。
【0036】
このようなならし治具13によって外装取付部7の弛みをならすことにより、ワイヤハーネス1の外装取付部7の出来栄えにバラツキが生じることがなく、製品の均一化を図ることができる。
【0037】
このようにならし治具13によってならされた外装取付部7の両側で外装部材5の外部に露出する部分には、一対の固定部9,9が設けられる。
【0038】
一対の固定部9,9は、外装取付部7の両側で外装部材5の外部に露出する部分に配置され、複数の電線3の外周にテープを巻き付けることによって形成される。
【0039】
この一対の固定部9,9は、外装取付部7をならし治具13によってならした後、余長部分が外装部材5の外側に移動された外装取付部7の長さを外装部材5の長さと同等とするように、外装取付部7の状態を保持する。
【0040】
このように一対の固定部9,9を設けることにより、ならされた外装取付部7に弛みが生じることがなく、容易に外装取付部7に外装部材5を組付けることができ、組付性を向上することができる。
【0041】
このようなワイヤハーネス1の製造方法は、まず、治具板上に配置された一対のフォーク治具11,11間に、複数の電線3の余長部分を有する外装取付部7を配置する(第1工程)。
【0042】
次に、外装取付部7に対してならし治具13を配置し、操作部15を押圧し、ならし部17によって複数の電線3の外装取付部7における余長部分を一対のフォーク治具11,11側に向けて移動させ、外装取付部7をならす(第2工程)。
【0043】
次に、一対のフォーク治具11,11の近傍において、ならし治具13によって成形された複数の電線3の外装取付部7に対して、テープ巻きを施して一対の固定部9,9を形成させ、外装取付部7の状態を保持する(第3工程)。
【0044】
そして、一対の固定部9,9間に位置する複数の電線3の外装取付部7に対して、外装部材5を組付け、外装取付部7における複数の電線3の外周を外装部材5で覆い、ワイヤハーネス1の製造を完了する(第4工程)。
【0045】
このようなワイヤハーネス1では、外装取付部7の両側で外装部材5の外部に露出する部分に、外装取付部7の余長部分を外装部材5の外部に配置させ外装取付部7の長さを外装部材5の長さと同等に保持する一対の固定部9,9が設けられているので、外装部材5の内部に外装取付部7の余長部分が配置されることがない。
【0046】
従って、このようなワイヤハーネス1では、外装部材5の内部で電線3が弛むことがなく、外装部材5と電線3との干渉を防止することができ、外装部材5への影響を抑制することができる。
【0047】
また、ワイヤハーネス製造方法では、一対のフォーク治具11,11の近傍に、ならし治具13によって成形された複数の電線3の状態を保持する一対の固定部9,9を設けるので、一対の固定部9,9の間に位置する複数の電線3が弛むことがない。
【0048】
従って、このようなワイヤハーネス製造方法では、複数の電線3が弛んでいない一対の固定部9,9の間に外装部材5が組付けられるので、外装部材5と電線3との干渉を防止することができ、外装部材5への影響を抑制することができる。
【0049】
なお、本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス製造方法では、ならし治具が、操作部と、ならし部と、変換部とを有して構成されているが、これに限らず、複数の電線の弛みを均一にならすことができるものであれば、ならし治具はどのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ワイヤハーネス
3…電線
5…外装部材
7…外装取付部
9…固定部
11…フォーク治具
13…治具
図1
図2
図3
図4