(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スラスタから噴出される燃焼ガスの量を調整する弁に設けられた弁体に加える作用力と、噴出される前記燃焼ガスから前記弁体に加えられる流体力とのバランスに基づき、前記弁が開かれている割合を示す前記弁の推定開度を推定するステップと、
前記推定開度に基づき、前記弁の開度を制御するための制御開度を決定するステップと、
を含み、
前記推定開度を推定するステップは、
前記弁体の加速度と、前記作用力とに基づき、前記流体力を算出することと、
前記流体力に基づき、前記推定開度を算出することと、
を含む
スラスタ制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スラスタの駆動時には、スラスタに設けられた弁は高温になり変形する。スラスタの推進力等を精度よく制御するには、各弁の開度を把握する必要がある。しかし、弁の変形により、スラスタの駆動中に開度を把握するのは難しい。そこで、この変形を考慮して開度を設定するため、熱による変形の影響を事前に燃焼試験で取得し、すべての弁に共通に補正を行う方法が行われている。しかし、実際の飛しょう体の軌道、姿勢などを制御する場合と燃焼試験とでは、燃焼時間、環境などが異なるため、開度に誤差が生じる。
【0007】
以上のような状況を鑑み、本発明は、スラスタの駆動中において、精度よくスラスタの推進力を制御することを目的の1つとする。他の目的については、以下の記載及び実施の形態の説明から理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係るスラスタ制御装置は、開度推定部(61)と、開度制御部(62)とを備える。開度推定部(61)は、スラスタ(1)から噴出される燃焼ガスの量を調整する弁(31)に設けられた弁体(32)に加える作用力と、噴出される燃焼ガスから弁体(32)に加えられる流体力(41)とのバランスに基づき、弁(31)が開かれている割合を示す弁(31)の推定開度を推定する。開度制御部(62)は、推定開度に基づき、弁(31)の開度を制御するための制御開度を決定する。
【0010】
前述の開度推定部(61)は、弁体(32)の加速度と、作用力とに基づき、流体力(41)を算出してもよい。この場合、流体力(41)に基づき、推定開度を算出する。
【0011】
前述の開度推定部(61)は、噴出される燃焼ガスから弁体(32)に加えられる流体力(41)に対する弁(31)の開度を示す開度データを保持してもよい。この場合、前述の開度推定部(61)は、加速度に基づき、弁(31)に加速度を与えることのできる加速力を算出する。また、加速力を、作用力から減算することで、流体力(41)を算出する。前述の開度推定部(61)は、開度データに基づき、流体力(41)から推定開度を推定する。
【0012】
前述のスラスタ制御装置は、弁体制御部(100)をさらに備えてもよい。この弁体制御部(100)は、駆動部(55)と検知部(51)とを備えてもよい。駆動部(55)は、弁体(32)に作用力を加えて、弁(31)の開閉を制御してもよい。検知部(51)は、弁体(32)の速度を検知してもよい。この場合、開度推定部(61)は、速度に基づき、加速度を算出する。また、駆動部(55)は、制御開度に基づき、弁(31)の開閉を制御する。
【0013】
前述のスラスタ制御装置は、前述の弁体制御部(100)を複数備えてもよい。開度推定部(61)は、各々の弁体制御部(100)に対して推定開度を推定してもよい。開度制御部(62)は、各々の弁体制御部(100)に対して制御開度を決定してもよい。
【0014】
前述のスラスタ制御装置は、燃焼室(12)と、圧力検知部(13)とを備えてもよい。燃焼室(12)は、スラスタから噴出される燃焼ガスを内部に備えてもよい。圧力検知部(13)は、燃焼室(12)の内部の圧力値を検知してもよい。また、開度制御部(62)は、圧力値と、各々の弁体制御部(100)に対する推定開度とに基づき、各々の弁体制御部(100)に対する制御開度を決定してもよい。
【0015】
前述の開度制御部(62)は、各々の弁体制御部(100)の駆動部(55)の作用力により設定された弁(31)の設定開度を保持してもよい。また、圧力値から、設定されている圧力値を減算し、圧力補正値を算出してもよい。さらに、各々の弁体制御部(100)に対して、推定開度から設定開度を減算して得られる、各々の弁体制御部(100)に対する補正開度を算出してもよい。また、開度制御部(62)は、圧力補正値と、補正開度の総和に対する各々の補正開度の割合とに基づき、各々の弁体制御部(100)に対する制御開度を決定してもよい。
【0016】
前述の開度制御部(62)は、圧力補正値と補正開度の総和に対する各々の補正開度の割合との積と、弁(31)を開くべき割合を示す目標開度とに基づき、制御開度を算出してもよい。
【0017】
前述の駆動部(55)は、電流を流して作用力を発生させるモータを備えてもよい。開度推定部(61)は、電流の値に基づき、作用力を算出してもよい。
【0018】
前述の推定開度は、推定される弁体(32)の位置により規定してもよい。また、制御開度は、弁体(32)を移動すべき位置により規定してもよい。
【0019】
本発明の第2の態様に係るスラスタの制御方法は、スラスタから噴出される燃焼ガスの量を調整する弁(31)に設けられた弁体(32)に加える作用力と、噴出される燃焼ガスから弁体(32)に加えられる流体力(41)とのバランスに基づき、弁(31)が開かれている割合を示す弁(31)の推定開度を推定するステップと、推定開度に基づき、弁(31)の開度を制御するための制御開度を決定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、スラスタの推進力の制御を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態)
実施の形態に係るスラスタ1は、
図1、2に示すように、ガスジェネレータ10と、複数のノズル30−1、30−2、30−3、・・・と、制御部60とを備える。複数のノズル30−1、30−2、30−3、・・・を総称して、ノズル30と呼ぶ。ガスジェネレータ10には、燃焼ガスが満たされ、ノズル30に供給される。ノズル30に供給される燃焼ガスの量を制御部60が制御する。この結果、飛しょう体の軌道、姿勢などが制御される。
【0023】
ガスジェネレータ10の内部には、燃焼室12が設けられ、固体燃料11が配置されている。飛しょう体の軌道、姿勢などを制御するとき、固体燃料11を燃焼させ、発生する燃焼ガスをノズル30に供給する。具体的には、固体燃料11が燃焼すると、燃焼ガスが発生する。このため、燃焼室12は燃焼ガスで満たされる。燃焼ガスは、燃焼室12の壁面12bに設けられた通気口から排出され、ノズル30に供給される。
【0024】
また、ガスジェネレータ10の内部には、圧力検知部13が設けられ、燃焼室12の内部の圧力値を検知する。検知した圧力値は、制御部60に通知され、ノズル30から噴射される燃焼ガスの量の制御に用いられる。
【0025】
燃焼室12は、ノズル30に燃焼ガスを供給するための通気口を備える壁面12bと、壁面12bに対抗して設けられた壁面12aとを備える。燃焼室12は、例えば、壁面12aを底面とする柱状の空間である。
【0026】
固体燃料11は、燃焼室12の内部に配置され、燃焼室12の壁面12aに接触している。また、固体燃料11と燃焼室12の壁面12bとの間に空間が設けられている。飛しょう体の軌道、姿勢などを制御するときに、固体燃料11は、ノズル30側の端面に着火される。つまり、固体燃料11の燃焼面は、ノズル30側の端面から壁面12aの方向に進む。
【0027】
圧力検知部13は、燃焼室12の内部に、ノズル30側の壁面12bに設けられている。このため、固体燃料11の燃焼面の位置によらず、燃焼室12の内部の圧力値を検知することができる。
【0028】
各々のノズル30は、
図2に示すように、弁31と、弁体制御部100とを備える。燃焼室12から供給される燃焼ガスは、弁31に供給される。弁体制御部100は弁31の開閉を制御する。弁31を開閉することで、ノズル30から噴射される燃焼ガスの量を制御する。
【0029】
弁体制御部100は、駆動部55と、検知部51とを備える。駆動部55は、弁31の弁体32の位置を移動させることで、弁31の開閉を制御する。検知部51は、弁体32の速度を検知する。
【0030】
駆動部55は、アクチュエータ53と、カムシャフト52とを備える。アクチュエータ53は、カムシャフト52に接続され、制御部60からの制御信号305に応じて、カムシャフト52の回転を制御する。カムシャフト52を回転させることで、弁体32の位置がその長手方向(
図2に記載の移動方向)に移動し、弁31が開閉する。弁31が開くことで、燃焼室12から供給される燃焼ガスが、ノズル30から噴射される。
【0031】
アクチュエータ53は、モータを備える。モータに電流を流すことで、カムシャフト52を回転するための駆動力42を発生させる。この駆動力42により、弁体32が移動する。
【0032】
弁31は、ノズル30の噴出孔に設けられ、ノズル30から噴出される燃料ガスの量を調整する。弁31は、例えば、ピントル弁である。
図3に示すように、弁31は、弁座33と、弁座33に対して移動可能に設けられた弁体32とを備える。弁体32が弁座33に当接すると、弁31は閉じられ、燃焼ガスはノズル30から噴射されない。弁体32が弁座33から離れると、弁31は開かれ、燃焼ガスはノズル30から噴射される。弁座33から弁体32の端部までの距離Lが大きくなるほど、噴射される燃焼ガスの量が増加する。つまり、距離Lが大きいほど、弁31の開度は大きい。ここで、開度とは、弁31が開かれている割合を示す。つまり、弁31が閉じている場合、開度は0になる。
【0033】
弁体32には、燃焼ガスがノズル30から噴射される際に、燃焼ガスから弁31の開度を大きくする方向に流体力41が加えられる。また、アクチュエータ53が発生させる駆動力42が、その逆方向に加えられる。このため、弁体32は、流体力41と駆動力42とのバランスに応じて位置を移動させる。ここで、弁体32に加えられる流体力41は、
図4に示すように、距離Lに応じて変化する。具体的には、距離Lが大きくなるに従い、流体力41は小さくなる。このため、流体力41に対する距離Lの関係を示す距離推定データ45を用いて、流体力41に基づき、距離Lを推定することができる。
【0034】
制御部60は、
図5に示すように、弁31の開度を推定する機能を有する開度推定部61と、弁31の開度を制御する機能を有する開度制御部62とを備える。
【0035】
開度推定部61は、弁体32の速度を含む速度信号302を検知部51から受信する。取得した速度の変化から弁体32の加速度を算出する。算出した加速度に基づき、弁体32の加速力を算出する。ここで、加速力とは、弁体32に算出した加速度を与えることのできる力をいう。また、アクチュエータ53が発生させる駆動力42を含む作用力信号301を駆動部55から受信する。ここで、弁体32は、流体力41と駆動力42とがつり合う位置に移動する。このため、弁体32の加速力と流体力41とを可算した合力と、駆動力42とが等しくなる。よって、駆動力42から弁体32の加速力を減算することで、流体力41を算出することができる。
図4に示すように、流体力41に対する距離Lの関係を示す距離推定データ45を用いて、流体力41から距離Lを推定する。ここで、スラスタ1の駆動時は弁31が変形しているため、推定した距離Lは、実際の弁座33から弁体32の端部までの距離と異なり、弁31の開度を示す指標である。このため、開度推定部61は、流体力41から距離Lを推定することで、弁31の開度を推定開度として推定する。弁31−1、31−2、31−3、31−4のそれぞれに対して、この推定開度を推定し、弁31の推定開度を含む推定信号303を生成する。ここで、距離推定データ45は、設計時の弁31の形状から算出される。また、シミュレーションを用いて、最適な値を決定してもよい。以上のように、推定開度は、弁体に加えられる駆動力42と、燃焼ガスから弁体に加えられる流体力41とのバランスに基づき推定される。
【0036】
開度制御部62は、推定信号303に含まれる弁31の推定開度を抽出する。抽出した推定開度から、駆動部55に設定している弁31の設定開度を減算し、補正開度を算出する。設定開度とは、制御信号305により、現在、駆動部55に設定している弁31の開度である。例えば、駆動部55に指示している距離Lである。補正開度は、駆動部55に設定している弁31の開度と、弁31の変形により生じた、弁31の実際の開度との差の推定値である。また、補正開度は、弁31ごとに算出される。
【0037】
また、開度制御部62は、圧力検知部13から、燃焼室12内部の圧力値を含む圧力信号304を受信する。受信した圧力値から、設定している圧力値を減算し、圧力補正値を算出する。ここで、弁31の開度を制御することで、燃焼室12内の圧力を制御する。設定している圧力値とは、この圧力の目標値を示す。つまり、圧力補正値は、圧力の目標値と、実際の圧力値との差である。
【0038】
また、圧力補正値は、複数の弁31における全体の開度を表す指標である。燃焼室12には複数の弁31が接続され、弁31が開くことで燃焼室12内の燃焼ガスが噴出される。このため、弁31の開度によって、燃焼室12内部の圧力は変化する。つまり、圧力補正値は、燃焼ガスの噴出すべき量と、実際に噴出した量との差を表す指標と言える。
【0039】
つまり、開度制御部62は、各弁31の補正開度と、複数の弁31における全体の開度を表す圧力補正値とを取得する。取得した補正開度と、圧力補正値とに基づき、弁31の変形により各弁31の開度の補正値を算出する。具体的には、各弁31に対して、複数の弁31の補正開度の総和に対する各弁31の補正開度の割合をそれぞれ算出する。算出した割合に圧力補正値を乗算することで、各弁31に対する補正値を取得する。
【0040】
補正開度は、各弁31に応じた補正値を取得できるが、検知部51と、駆動部55とで生じるノイズの影響を受けやすい。一方、圧力補正値は、弁31の全体の開度を表すことができるが、各弁31に応じた補正値を取得できない。このため、各弁31の変形により生じる開度の変化の割合として補正開度を用いる。この結果、検知部51と、駆動部55とで生じるノイズの影響を低減することができる。
【0041】
開度推定部61と、開度制御部62とを機能する制御部60は、
図6に示すように、演算装置400と、記憶装置401と、通信部402とを備える。演算装置400は、スラスタ1を制御するための演算を行う。例えば、
図5に示す開度推定部61と、開度制御部62とにおいて実行される演算を行う。記憶装置401は、開度推定部61と、開度制御部62とにおいてデータを保持する際に利用される。例えば、記憶装置401は、
図4に示すような距離推定データ45を保持する。通信部402は、検知部51と、駆動部55と、圧力検知部13とのデータの送受信に用いられる。ここで、演算装置400は、開度推定部61と開度制御部62との処理の両方を行う中央演算装置(CPU)を用いてもよい。また、開度推定部61と、開度制御部62とにおいて専用の演算回路を用いてもよい。また、制御部60は、データを入出力するための、入力部403と、出力部404とを備えていてもよい。入力部403には、マウス、キーボードなどが例示される。出力部404には、ディスプレイ、スピーカなどが例示される。
【0042】
(制御方法)
スラスタ1において、弁31の開度を制御する方法を、
図7を用いて説明する。ステップS10において、開度推定部61は、弁体32の加速力と、弁体32への駆動力42とを取得する。弁体32の加速力は、検知部51が検知する速度の変化に基づき算出される。開度推定部61は、検知部51が検知した速度を速度信号302として受信する。例えば、検知部51は、アクチュエータ53に設けられたモータの角速度を検出する。開度推定部61は、検出した角速度を速度信号302として受信する。受信した角速度の変化量から、モータの角加速度を算出する。算出した角加速度と、モータ軸周りのイナーシャとの積により、弁体32の加速力を算出する。モータ軸周りのイナーシャは、カムシャフト52の形状、モータのイナーシャなどにより決定され、例えば、設計時に算出される。また、駆動力42を駆動部55から取得する。例えば、駆動力42は、アクチュエータ53が備えるモータに流れる電流とモータのトルク定数との積により算出する。
【0043】
次に、ステップS20において、開度推定部61は、各々の弁31の開度を推定する。ステップS10で算出した駆動力42から加速力を減算することで、燃料ガスから弁体32に加えられている流体力41を取得する。
図4に示すような、流体力41に対する距離Lの関係を示す距離推定データ45を用いて、取得した流体力41から距離Lを取得する。距離Lと弁31の開度とは比例するため、距離Lを弁31の推定開度として用いる。
【0044】
ステップS30において、開度制御部62は、各弁31の開度の補正値として、補正開度を算出する。開度制御部62は、開度推定部61から推定開度を取得する。各弁31に設定している設定開度から、ステップS20で算出した推定開度を減算することで、補正開度を算出する。ここで、開度制御部62は、駆動部55に対して設定開度を指定しているため、設定開度を保持している。例えば、
図8に示すように、開度制御部62は、弁31−1の開度を70に、弁31−2の開度を10に、弁31−3の開度を10に、弁31−4の開度を10に設定していると仮定する。この設定値が設定開度に相当する。この結果、各ノズル30の駆動部55は、弁31の開度を設定開度に応じて設定している。この開度は距離Lであってもよい。開度推定部61は、ステップS20の処理により、
図9に示すように、弁31−1の推定開度を75と、弁31−2の推定開度を17と、弁31−3の推定開度を14と、弁31−4の推定開度を12と推定したと仮定する。この場合、補正開度は、推定開度から設定開度を減算するため、
図10に示すように、弁31−1は5を、弁31−2は8を、弁31−3は4を、弁31−4は3を示す。このように、開度制御部62は、補正開度を算出する。
【0045】
ステップS40において、開度制御部62は、燃焼室12内の圧力値を取得する。圧力検知部13は、燃焼室12内の圧力値を検出し、検出した圧力値を含む圧力信号304を生成する。開度制御部62は、圧力信号304を受信し、圧力値を抽出する。
【0046】
ステップS50において、開度制御部62は、取得した圧力値から圧力の目標値を減算し、圧力補正値を算出する。例えば、圧力の目標値が100MPaであると仮定する。このとき、燃焼室12内の圧力値が90MPaであると仮定する。このときの圧力補正値は−10になる。この値は一例であり、算出した値に予め決定した定数を乗算してもよい。この乗算する定数を、設計時に決定してもよい。また、シミュレーションを用いて、最適な値に設定してもよい。また、圧力の目標値は、開度制御部62が、現在、弁31の開度を設定するために用いている値である。また、圧力の目標値は、飛しょう体の軌道、姿勢を制御するために、開度制御部62の外部で決定された値であってもよい。この場合、開度制御部62は外部から、圧力の目標値を取得する。
【0047】
ステップS60において、開度制御部62は、各弁31に設定すべき開度を算出する。具体的には、各弁31の補正開度の合計値に対する各弁31の補正開度の割合を算出する。算出した割合に圧力補正値を乗算することで、各弁31の補正値を算出する。算出した補正値に、設定すべき開度、つまり目標開度を加算することで、各弁31の制御に用いる制御開度を算出する。算出した制御開度を駆動部55に送信する。例えば、
図10に示すような補正開度である場合、補正開度の合計値を算出すると20になる。このため、各弁31の補正開度の合計値に対する弁31−1の補正開度の割合は5/20である。同様に、弁31−2の補正開度の割合は8/20、弁31−3の補正開度の割合は4/20、弁31−4の補正開度の割合は3/20である。これらに、圧力補正値を乗算すると、
図11に示すように、弁31−1は−10×5/20=−2.5、弁31−2は−10×8/20=4、弁31−3は−10×4/20=−2、弁31−4は−10×3/20=1.5になる。ここで、開度制御部62は、
図8に示すように、弁31−1の目標開度を70に、弁31−2の目標開度を10に、弁31−3の目標開度を10に、弁31−4の目標開度を10に設定すると仮定する。この場合、
図12に示すように、弁31−1の開度を67.5に、弁31−2の開度を6に、弁31−3の開度を8に、弁31−4の開度を8.5に設定する制御信号305を生成する。ここでは、目標開度は、開度制御部62が、現在、設定している開度を例に説明した。飛しょう体の軌道、姿勢を制御するために、開度制御部62の外部で決定された値であってもよい。この場合、開度制御部62は外部から、目標開度を取得する。
【0048】
ステップS70において、開度制御部62は、生成した制御信号305を駆動部55に送信し、駆動部55に開度を設定する。これにより、駆動部55は、指定された開度に基づき、弁体32を移動する。この結果、各弁31が変形した場合でも、弁31の開度を推定することで、精度よくスラスタ1を制御することができる。
【0049】
(性能評価)
4つの弁31を有する飛しょう体について、従来の補正方法と、上記実施の形態に係る補正方法とで、シミュレーションによる性能評価を実施した。従来の補正方法として、燃焼試験のシミュレーション結果を用いて補正データを取得し、すべての弁31に共通に補正を行う方法を採用した。弁31−1の開度が10%増加し、弁31−2の開度が40%増加し、弁31−3の開度が20%増加し、弁31−4の開度が30%増加するものとした。また、燃焼室12内の圧力の目標値は、
図13に示すように、シミュレーションを開始してから4秒経過するまで17MPaとした。4秒経過してから8秒経過するまでを5MPaとし、8秒経過してから12秒経過するまでを20MPaとした。弁31−1を備えるノズル30−1の推力の目標値は、
図14に示すように、1秒単位で150Nから1000Nの範囲で変化させた。弁31−2を備えるノズル30−2の推力の目標値は、
図15に示すように、1秒単位で50Nから1000Nまで変化させた。
【0050】
図13を参照すると、燃焼室12の圧力について、従来の補正方法より、上記実施の形態に係る補正方法の方が、目標値との誤差が小さいことがわかる。特に、シミュレーションを開始してから3秒経過した後のB1においては、従来の補正方法では誤差が+15%であったが、上記実施の形態の補正方法では+1%まで減少している。
【0051】
図14を参照すると、ノズル30−1の推力についても、従来の補正方法より、上記実施の形態に係る補正方法の方が、目標値との誤差が小さいことがわかる。特に、シミュレーションを開始してから3秒経過した後のB2においては、従来の補正方法では誤差が+41%であったが、上記実施の形態の補正方法では−1%まで減少している。ここで、シミュレーションを開始してから4秒経過したときに目標値は、350Nから250Nに減少しているにも関わらず、従来の補正方法と上記実施の形態の補正方法との両方において推力が増加している。これは、シミュレーションを開始してから4秒経過したときに、燃焼室12の圧力の目標値を17MPaから5MPaに減少するため、弁31−1の開度を大きくする必要があったからである。シミュレーションを開始してから8秒経過したときに、目標値の推力が増加しているのに対して、従来の補正方法と上記実施の形態の補正方法との両方において推力が減少しているのも、燃焼室12の圧力を制御するためである。
【0052】
図15を参照すると、ノズル30−2の推力についても、従来の補正方法より、上記実施の形態に係る補正方法の方が、目標値との誤差が小さいことがわかる。特に、シミュレーションを開始してから10秒経過した後のB3において、従来の補正方法では誤差が−22%であったが、上記実施の形態の補正方法では−2%まで減少している。また、シミュレーションを開始してから4秒経過したときに、目標値が減少しているのに対して、両補正方法が増加しているのは、ノズル30−1と同じ理由である。
【0053】
(変形例)
上記実施の形態では、検知部51が弁体32の速度を検知し、開度推定部61が弁体32の加速力を算出する例を示したが、これに限定されない。開度推定部61が弁体32の加速力を算出できれば、任意の方法を選択することができる。例えば、検知部51が弁体32の加速度を検知し、開度推定部61が検知した加速度に基づき加速力を算出してもよい。
【0054】
上記実施の形態では、駆動部55は、アクチュエータ53によりカムシャフト52を回転させることで弁体32に駆動力42を与える例を示したが、これに限定されない。駆動部55が弁体32に作用力を与えて弁体32を移動でき、この作用力を検知できればよく、任意の方法を選択することができる。例えば、駆動部55はリニアモータを備え、リニアモータの駆動力により弁体32を移動させてもよい。
【0055】
上記実施の形態では、弁31は、ピントル弁である例を示したが、これに限定されない。弁31を通過する燃料ガスにより弁体32に流体力41が加えられ、流体力41と弁体32に加える作用力とがつり合うことで弁31の開度を制御できるものであれば、任意に選択することができる。例えば、
図16に示すように、ポペット弁であってもよい。この場合、弁31を開く方向に流体力41と駆動力42とが加えられる。その逆方向にバネ34による弾性力43が加えられる。つまり、流体力41と駆動力42とを加算した合力と、弾性力43とがつり合う位置に、弁体32は移動する。
【0056】
上記実施の形態では、弁座33から弁体32の端部までの距離Lを用いて、弁31の開度を規定する例を示したが、これに限定されない。弁31の開度を弁体32の位置を用いて規定できればよく、任意の方法を選択することができる。例えば、弁体32の任意の位置に基準点を設定し、弁31が閉じているときの基準点の位置と、現在の基準点の位置との距離を用いて、31の開度を規定してもよい。この基準点として、例えば、弁座33とは逆方向にある弁体32の端部でもよい。
【0057】
上記実施の形態では、弁体32の位置を用いて弁31の開度を規定する例を示したが、これに限定されない。弁31の開度を制御できるパラメータであれば、任意に選択することができる。
【0058】
上記実施の形態では、弁31の開度を推定するために用いる開度データの例として、
図4に示す距離推定データ45を示したが、これに限定されない。流体力41から弁31の開度を推定できればよく、任意の方法を選択することができる。例えば、
図17に示すように、流体力41の値と、それに対応した弁31の開度が格納された推定データ46でもよい。この場合、算出した流体力41に最も近い値を推定データ46から選択し、対応する弁31の開度を取得する。
【0059】
上記実施の形態では、ステップS50において、補正開度の割合に圧力補正値を乗算することで、各弁31の補正値を算出する例を示したが、さらに、予め決められた定数を乗算してもよい。この定数は、設計時に決定してもよい。また、シミュレーションを用いて、最適な値を算出してもよい。
【0060】
上記実施の形態では、圧力検知部13で検知した圧力値に基づき、弁31の開度を補正する例を示したが、この処理を省略してもよい。この場合、
図7に示す処理において、ステップS40と、ステップS50とを行わない。また、各弁31の開度の補正値は、
図10に示す算出した補正開度の符号を反転した値、または補正開度に予め決められた定数を乗算した値を用いる。ここで、予め決められた定数は、設計時に決定した値である。また、シミュレーションを用いて、最適な値を決定してもよい。
【0061】
以上において説明した処理は一例であり、各ステップの順番、処理内容は、機能を阻害しない範囲で変更してもよい。また、説明した構成は、機能を阻害しない範囲で、任意に変更してもよい。