特許第6981899号(P6981899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レフィルム加工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6981899-電子レンジ加熱食材用カバーフィルム 図000006
  • 特許6981899-電子レンジ加熱食材用カバーフィルム 図000007
  • 特許6981899-電子レンジ加熱食材用カバーフィルム 図000008
  • 特許6981899-電子レンジ加熱食材用カバーフィルム 図000009
  • 特許6981899-電子レンジ加熱食材用カバーフィルム 図000010
  • 特許6981899-電子レンジ加熱食材用カバーフィルム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981899
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱食材用カバーフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20211206BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   B65D81/34 W
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-41751(P2018-41751)
(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-176722(P2018-176722A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-79425(P2017-79425)
(32)【優先日】2017年4月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】徳田 浩忠
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】三好 克典
(72)【発明者】
【氏名】豊島 裕
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−236910(JP,A)
【文献】 特開2002−335876(JP,A)
【文献】 特開2008−201036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱食材側に位置する内層Aと反対側に位置する外層Bが積層された積層フィルムであって、内層Aは、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のいずれかまたは両方からなる樹脂組成物に、非イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤と有機スルホン酸塩の混合物である界面活性剤を0.07〜1.5重量%含有してなり、外層Bは、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のいずれかまたは両方からなる樹脂組成物に、前記界面活性剤を0.9〜9重量%含有してなり、内層Aが加熱食材に接する状態で被せて用いられることを特徴とする電子レンジ加熱食材用カバーフィルム。
【請求項2】
外層Bの界面活性剤の濃度が内層Aの界面活性剤の濃度よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の電子レンジ加熱食材用カバーフィルム。
【請求項3】
内層Aがポリプロピレン系樹脂からなり、外層Bがポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂からなる、請求項1または2に記載の電子レンジ加熱食材用カバーフィルム。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤が3または4価の脂肪族多価アルコールと炭素数12〜18の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物であり、前記有機スルホン酸塩が炭素数12〜18のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩である、請求項1から3のいずれかに記載の電子レンジ加熱食材用カバーフィルム。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤/前記有機スルホン酸塩の混合重量比が70/30〜100/0の範囲にある、請求項1から4のいずれかに記載の電子レンジ加熱食材用カバーフィルム。
【請求項6】
外層Bが加熱食材とは反対側の積層フィルムの外面を形成する、請求項1からのいずれかに記載の電子レンジ加熱食材用カバーフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジによるマイクロ波加熱時に食材の温度上昇を抑制することができる電子レンジ加熱食材用カバーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジは、簡易的にかつ安全に加熱できる便利な調理器具として急速に普及し、現代生活に不可欠なものとなっている。
【0003】
ところで、電子レンジにより食材を加熱するにあたり、弁当のように様々な食材を一つのプラスチック製容器に入れて、同時に加熱することが一般に行われている。電子レンジによる加熱の原理は、食材に含まれる水分子をマイクロ波の作用で振動させ発熱させることによるものであるため、このように様々な食材を同時に加熱する際は、各食材に含まれる水分量の違いにより、マイクロ波の照射が均一であっても各食材の昇温速度が異なる。更に時間短縮のため、コンビニエンスストアなどで使用される高出力タイプの電子レンジでは、食材の加熱ムラがより大きくなる傾向にある。
【0004】
この課題を解決する方法として、金属蒸着薄膜を用いた過熱調理阻止用マイクロ波加熱調整シートやマイクロ波吸収包装体が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
しかし、上記特許文献1で提供された過熱調理阻止用マイクロ波加熱調整シートを用いた場合、金属薄膜層を有しているため、スパークの危険性があるとともに金属探知機を用いた製品検査に支障をきたす。更に上記特許文献2で提供されたマイクロ波吸収包装体を用いた場合、水蒸気を通気させる開口部があるため、電子レンジ庫内から取り出す際、熱い蒸気が漏れ火傷の危険性があるため、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−198226号公報
【特許文献2】特開2016−94220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、電子レンジのマイクロ波加熱時に食材の部分的な温度上昇を抑制し、食材全体をほぼ均一に加熱することが可能な電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を特徴とするものである。
【0009】
すなわち本発明は、加熱食材側に位置する内層Aと反対側に位置する外層Bが積層された積層フィルムであって、内層Aは、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のいずれかまたは両方からなり、非イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤と有機スルホン酸塩の混合物である界面活性剤を0.07〜1.5重量%含有する樹脂組成物からなり、外層Bは、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のいずれかまたは両方からなり、前記界面活性剤を0.9〜9重量%含有する樹脂組成物からなることを特徴とする加熱食材用カバーフィルムである。
【0010】
本発明において、外層Bの界面活性剤の濃度が内層Aの界面活性剤の濃度よりも高い電子レンジ加熱食材用カバーフィルムが好ましい。
【0011】
本発明において、内層Aがポリプロピレン系樹脂からなり、外層Bがポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂からなる電子レンジ加熱食材用カバーフィルムが好ましい。
【0012】
本発明において、前記非イオン性界面活性剤が3または4価の脂肪族多価アルコールと炭素数12〜18の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物であり、前記有機スルホン酸塩が炭素数12〜18のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩である電子レンジ加熱食材用カバーフィルムが好ましい。
【0013】
本発明において、前記非イオン性界面活性剤/前記有機スルホン酸塩の混合重量比が70/30〜100/0の範囲にある電子レンジ加熱食材用カバーフィルムが好ましい。
【0014】
本発明において、内層Aが加熱食材に直接対向する電子レンジ加熱食材用カバーフィルムが好ましい。
【0015】
本発明において、外層Bが加熱食材とは反対側の積層フィルムの外面を形成する電子レンジ加熱食材用カバーフィルムが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電子レンジ加熱食材用カバーフィルムによれば、電子レンジで複数の異なる食材を同時に加熱する際に、加熱を抑制したい食材に被せることで、その食材の温度上昇を抑制でき、同時に加熱される複数種の食材を望ましい均一な温度に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】界面活性剤の添加量の少ない単層フィルムを食材に被せた場合による加熱抑制効果のない例である。
図2】界面活性剤の添加量の多い単層フィルムを食材に被せた場合による加熱抑制効果のない例である。
図3】界面活性剤の添加量の異なる2層積層フィルムを食材に被せた場合による加熱抑制効果のある例である。
図4】界面活性剤の添加量の異なる2層積層フィルムを食材に被せた場合による加熱抑制効果のない例である。
図5】界面活性剤の添加量の異なる2層積層フィルムで食材を包んだ場合による加熱抑制効果のない例である。
図6】界面活性剤の添加量の異なる2層積層フィルムで食材を包んだ場合による加熱抑制効果のない例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムについて具体的に説明する。
本発明の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムは、少なくとも、加熱食材側に位置する内層Aと反対側に位置する外層Bが積層された積層フィルムである(以下、内層Aのことを単にA層、外層Bのことを単にB層ということがある。)。A層は適度な剛性をフィルムに与えることで製膜性とフィルムの取り扱い性を向上させるために重要である。また、必要に応じて、A層とB層の間に、またはA層側に、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂からなる層を積層し、3種以上の複合積層フィルムとしてもよい。
【0019】
本発明におけるA層を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のいずれかまたは両方からなり、非イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤と有機スルホン酸塩の混合物である界面活性剤を0.07〜1.5重量%含有する樹脂組成物からなることが必要である。この構成にすることで耐熱性に優れ、全体として加熱抑制効果に優れた電子レンジ加熱食材用カバーフィルムとなる。
【0020】
A層中の界面活性剤が0.07重量%未満であると、B層に添加した界面活性剤との濃度差が大きく、B層に添加した界面活性剤がA層側に移行し、結果として加熱抑制効果が悪くなり、食材の均一加熱性に劣る。A層中の界面活性剤が1.5重量%を越えると、やはり加熱抑制効果が小さくなり、またフィルム全体に含有している界面活性剤量が多くなり、製膜時に界面活性剤由来の発煙等が多量に発生し、製膜が困難となる。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、エチレンとプロピレンとのランダムまたはブロックコポリマー、エチレンとブテンとプロピレンとの3元共重合体などを挙げることができるが、耐熱性の観点から融点140〜165℃のものが好ましい。
【0022】
ポリエチレン系樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどを挙げることができる。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂は適宜の割合組成で混合して用いることができるが、ポリプロピレン系樹脂を70重量%以上含有した樹脂組成物とすることで、耐熱性に優れたカバーフィルムとすることができ好ましい。
【0024】
中でもホモポリプロピレンを40重量%以上含有した樹脂組成物とすることで、高い剛性が得られると共に、界面活性剤の層内移動が抑制され、食材の均一加熱性に優れることから特に好ましい。
【0025】
本発明におけるB層を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のいずれかまたはそれらの両方からなり、上記の非イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤と有機スルホン酸塩の混合物である界面活性剤を0.9〜9重量%含有する樹脂組成物からなることが必要である。
【0026】
界面活性剤量が0.9重量%未満では加熱抑制効果が不十分であり、界面活性剤量が9重量%を越えると、界面活性剤がフィルム表面に析出して白粉となり見栄えが悪くなる。
【0027】
本発明の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムにおいては、B層には非イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤と有機スルホン酸塩の混合物である界面活性剤が0.9〜9重量%の範囲内で比較的多量に含有され、A層には、B層側から界面活性剤が移行してB層における界面活性剤の濃度が低下するのを抑制するために、同じ界面活性剤が、B層の濃度よりも低い濃度で0.07〜1.5重量%の範囲内で含有される。
【0028】
B層を構成する樹脂組成物のポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂は、上記A層を構成する樹脂組成物で説明したものを好適に用いることができる。
【0029】
本発明では、内層Aがポリプロピレン系樹脂からなり、外層Bがポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂からなることが特に好ましい。
【0030】
本発明に用いる界面活性剤は、A層を構成する樹脂組成物およびB層を構成する樹脂組成物いずれにおいても、非イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤と有機スルホン酸塩の混合物であり、非イオン性界面活性剤/有機スルホン酸塩の混合重量比は70/30〜100/0の範囲にあることが好ましく、70/30〜90/10の範囲にあることがより好ましい。
【0031】
上記非イオン性界面活性剤としては、3または4価の脂肪族多価アルコールと炭素数12〜18の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物とすることが好ましい。
【0032】
3または4価の脂肪族多価アルコールとしては、グリセリンなどの3価の脂肪族アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタンなどの4価の脂肪族アルコールなどを挙げることができる。
【0033】
また、炭素数12〜18の脂肪族モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸モノカルボン酸や、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノレン酸などの不飽和脂肪族モノカルボン酸を挙げることができ、上記3または4価の脂肪族多価アルコールとの部分エステル化合物として、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルとすることができる。
【0034】
上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、グリセリンモノラウラート、グリセリンジラウラート、グリセリンモノミリスタート、グリセリンジミリスタート、グリセリンモノパルミタート、グリセリンジパルミタート、グリセリンモノステアラート、グリセリンジステアラート、グリセリンモノオレアート、グリセリンジオレアートなどが挙げられる。
【0035】
上記ペンタエリスリトール脂肪酸エステルとしては、具体的には、ペンタエリスリトールモノラウラート、ペンタエリスリトールジラウラート、ペンタエリスリトールモノミリスタート、ペンタエリスリトールジミリスタート、ペンタエリスリトールモノパルミタート、ペンタエリスリトールジパルミタート、ペンタエリスリトールモノステアラート、ペンタエリスリトールジステアラート、ペンタエリスリトールモノオレアート、ペンタエリスリトールジオレアートなどが挙げられる。
【0036】
上記ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ジグリセリンモノラウラート、ジグリセリンモノミリスタート、ジグリセリンモノパルミタート、ジグリセリンモノミリストレアート、ジグリセリンモノステアラート、ジグリセリンモノオレアート、ジグリセリンモノリノレアート、ジグリセリンジラウラート、ジグリセリンジミリスタート、ジグリセリンジパルミタート、ジグリセリンジミリストレアート、ジグリセリンジステアラート、ジグリセリンジオレアート、ジグリセリンジリノレアート、ジグリセリンラウロミリスタート、ジグリセリンミリストパルミタート、ジグリセリンパルミトステアラート、ジグリセリンパルミトオレアート、ジグリセリンステアロパルミトレアート、ジグリセリントリラウラート、ジグリセリントリミリスタート、ジグリセリントリパルミタート、ジグリセリントリミリストレアート、ジグリセリントリステアラート、ジグリセリントリオレアート、ジグリセリントリリノレアート、ジグリセリンジラウロミリスタート、ジグリセリンラウロジミリスタート、ジグリセリンジミリストパルミタート、ジグリセリンミリストジパルミタート、ジグリセリンジパルミトステアラート、ジグリセリンパルミトジステアラート、ジグリセリンジパルミトオレアート、ジグリセリンパルミトジオレアート、ジグリセリンジステアロパルミトレアート、ジグリセリンステアロジパルミトレアート等が挙げられる。
【0037】
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ソルビタンモノラウラート、ソルビタンモノミリスタート、ソルビタンモノパルミタート、ソルビタンモノミリストレアート、ソルビタンモノステアラート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノリノレアート、ソルビタンジラウラート、ソルビタンジミリスタート、ソルビタンジパルミタート、ソルビタンジミリストレアート、ソルビタンジステアラート、ソルビタンジオレアート、ソルビタンジリノレアート、ソルビタンラウロミリスタート、ソルビタンミリストパルミタート、ソルビタンパルミトステアラート、ソルビタンパルミトオレアート、ソルビタンステアロパルミトレアート、ソルビタントリラウラート、ソルビタントリミリスタート、ソルビタントリパルミタート、ソルビタントリミリストレアート、ソルビタントリステアラート、ソルビタントリオレアート、ソルビタントリリノレアート、ソルビタンジラウロミリスタート、ソルビタンラウロジミリスタート、ソルビタンジミリストパルミタート、ソルビタンミリストジパルミタート、ソルビタンジパルミトステアラート、ソルビタンパルミトジステアラート、ソルビタンジパルミトオレアート、ソルビタンパルミトジオレアート、ソルビタンジステアロパルミトレアート、ソルビタンステアロジパルミトレアート等が挙げられる。
【0038】
有機スルホン酸塩としては、アルキルスルホン酸アルカリ金属塩、アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩、1,2−ビス(アルキルオキシカルボニル)−1−エタンスルホン酸アルカリ金属塩などがあるが、中でも炭素数12〜18のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩が食品衛生上好ましい。これらには、ドデシルスルホン酸リチウム、トリデシルスルホン酸リチウム、テトラデシルスルホン酸リチウム、ペンタデシルスルホン酸リチウム、ヘキサデシルスルホン酸リチウム、ヘプタデシルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、トリデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、ヘプタデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、トリデシルスルホン酸カリウム、テトラデシルスルホン酸カリウム、ペンタデシルスルホン酸カリウム、ヘキサデシルスルホン酸カリウム、ヘプタデシルスルホン酸カリウム、オクタデシルスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0039】
なお、A層、B層には本発明の目的を損なわない範囲で、フィルム加工に適した滑り性やラミネート適性を確保するため、特定の添加剤、具体的にはエルカ酸アミドなどの有機滑剤、分子量500以上の酸化防止剤、および、シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウムなどの無機粒子や、ポリメチルメタクリレート架橋粒子などの有機粒子を選択して使用してもよい。また、製膜性を良好にする酸化防止剤、耐熱安定剤、帯電防止剤等を含むことができる。A層、B層のポリマーには本発明の効果を阻害しない範囲であれば、必要に応じて本発明のフィルムを生産する際に生じる耳やスリット屑などを混合使用することができる。
【0040】
本発明の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムの厚さは20〜100μmの範囲が好ましく、A層、B層の2層構成の場合には、A層/B層=2/1〜10/1の範囲のものが好適であり、この範囲を逸脱すると積層ムラが発生し、製膜性が悪くなるおそれがある。
【0041】
本発明の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムの使用方法としては、加熱を抑制したい食材にA層側が対向する(例えば、接する)状態で被せて用いることが好ましい。また、本発明の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを複数枚重ねて使用してもよい。
【0042】
本発明の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムは、そのままのシート状としても使用でき、蓋材などの包装形態に加工しても使用することができる。ただし、以下の基本検討に示すように、加熱抑制効果のある形態で使用する必要がある。
【0043】
また、本発明の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムは、A層側に、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、印刷紙などを必要に応じて単独、または組み合わせて積層して使用してもよい。
【0044】
以下図面を用いて、本発明の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムの発明に至った一連の検討結果について説明する。
【0045】
図1は、界面活性剤の添加量が0.07〜1.5重量%と少ない単層フィルム3を食材(ご飯1)に被せた場合による加熱抑制効果のない例である。ご飯150gをポリプロピレン製のトレー2に入れ、上にフィルム3を被せて、東芝社製電子レンジER−LD7により500Wの表示出力で60秒加熱後、ご飯の温度をタスコジャパン社製接触式温度計TNA−110で測定した。フィルム3を被せない場合と同様、80℃まで温度が上昇し、加熱抑制効果が認められなかった。
【0046】
図2は、界面活性剤の添加量が2〜9重量%と多い単層フィルム4を食材に被せた場合による加熱抑制効果のない例である。フィルム4を被せない場合と同様、80℃まで温度が上昇した。
【0047】
図3は、界面活性剤の添加量の異なる2層積層フィルムを被せた場合による加熱抑制効果のある例である。界面活性剤の添加量が0.07〜1.5重量%と少ない層6と、界面活性剤の添加量が4〜9重量%と多い層5の2層積層フィルムの界面活性剤の添加量の少ない層6をご飯側に向けて被せた場合、温度は70℃までしか上昇せず加熱抑制効果が認められた。
【0048】
図4は、界面活性剤の添加量の異なる2層積層フィルムを被せた場合による加熱抑制効果のない例である。界面活性剤の添加量が0.07〜1.5重量%と少ない層7と、界面活性剤の添加量が2〜9重量%と多い層8の2層積層フィルムの界面活性剤の添加量の多い層8をご飯側に向けて被せた場合、温度は80℃に上昇し、加熱抑制効果が認められなかった。
【0049】
図5は、界面活性剤の添加量の異なる2層積層フィルムで包んだ場合による加熱抑制効果のない例である。界面活性剤の添加量が0.07〜1.5重量%と少ない層11と、界面活性剤の添加量が2〜9重量%と多い層10の2層積層フィルムの界面活性剤の添加量の少ない層11をご飯側に向けて包み、通蒸用の小さな孔9を開けたものを上記と同様の電子レンジ加熱を行った。温度は80℃まで上昇し、加熱抑制効果が認められなかった。
【0050】
図6は、界面活性剤の添加量の異なる2層積層フィルムで包んだ場合による加熱抑制効果のない例である。界面活性剤の添加量が0.07〜1.5重量%と少ない層13と、界面活性剤の添加量が2〜9重量%と多い層14の2層積層フィルムの界面活性剤の添加量の多い層14をご飯側に向けて包み、通蒸用の小さな孔12を開けたものを上記と同様の電子レンジ加熱を行った。温度は80℃まで上昇し、加熱抑制効果が認められなかった。
【0051】
図1〜4の観察結果を検討するに、界面活性剤の添加量の多い層には加熱により食材としてのご飯から蒸発した水蒸気が結露して水膜が形成されやすく、電子レンジによるマイクロ波が水膜に吸収されて食材の加熱抑制効果が期待できると推定される。図1の形態では、界面活性剤の添加量の少ない単層フィルムを被せているので、ご飯から蒸発した水蒸気による水膜が形成されにくく、加熱抑制効果が認められなかったものと推定される。図3の形態では、界面活性剤の添加量の多い外側の層に、加熱直後からご飯から蒸発した水蒸気が回り込んで結露し水膜が形成され、電子レンジによるマイクロ波がその外表面側の水膜に吸収されて食材の加熱が抑制されたと推定される。しかし、図2図4に示した形態では、食材側のフィルム表面にご飯から蒸発した水蒸気による水膜が発生し、その水膜から再蒸発した高温の水蒸気により食材が加熱されるため加熱抑制効果が減少した、あるいは加熱抑制効果が認められなかったものと考えられる。
【0052】
図5、6に示した形態では加熱抑制効果が認められなかったが、これは、図5に示した形態では、食材が2層積層フィルムで包まれているため、ご飯から蒸発した水蒸気が外側の界面活性剤の添加量の多い層の外表面まで回り込めず、その表面での水膜の形成がないことによるものと推定される。図6に示した形態については、フィルムの食材側に形成された水膜からの高温水蒸気による加熱が行われたことによるものと推定される。
【0053】
次に、本発明の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムの製造法の一例を、2層積層フィルムの場合について説明する。
【0054】
2台の押出機を用いて、1台の押出機からMFR(メルトフローレート)5〜10g/10分の範囲のポリプロピレン系樹脂70重量%以上とポリプロピレン系樹脂を主成分とする界面活性剤マスターバッチを混合した樹脂組成物を200〜250℃で押出し(A層)、もう1台の押出機からポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂と上記と同一の界面活性剤マスターバッチを混合した樹脂組成物を200〜250℃で押出し(B層)、共押出多層ダイで積層させ、A層/B層の厚さを例えば43μm/7μmとなるようにしてフィルム状に押出し、25〜50℃の冷却ロールでキャスト冷却固化し積層フィルムとする。続いて、必要に応じA層の表面にコロナ放電処理を施す。
【実施例】
【0055】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明における特性の測定方法並びに効果の評価方法は、次の通りである。
【0056】
(1)樹脂の密度
JIS K7112−1980に規定された密度勾配管法に従い密度を測定した。
【0057】
(2)フィルム厚さ
ダイヤルゲージ式厚さ計(JIS B−7509−1992、測定子5mmφ平型)を用いて、フィルムの長手方向および幅方向に10cm間隔で10点測定して、その平均値とした。
【0058】
(3)各層の厚さ
フィルムの断面をミクロトームにて切り出し、その断面についてデジタルマイクロスコープVHX−100形(株式会社キーエンス製)を用いて1000倍に拡大観察して撮影した断面写真を用いて、各層の厚さ方向の距離を計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚さを求めた。尚、各層の厚さを求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、それらの平均値として算出した。
【0059】
(4)メルトフローレート(MFR)
JIS K−7210に準拠して、ポリエチレン系樹脂は190℃、ポリプロピレン系樹脂は230℃で測定した。
【0060】
(5)融点(T
株式会社島津製作所製の示差走査熱量測定装置DSC(DSC−60A)を使用し、窒素雰囲気下で5mgの試料を10℃/分の速度で200℃まで昇温して5分間保持した後に、10℃/分の冷却速度で10℃まで冷却し、再度10℃/分の速度で昇温していった際に、再度の昇温において、樹脂の融解に伴う吸熱ピークのピーク温度を融点(T)とした。
【0061】
(6)製膜性
積層フィルムを製膜する際、キャスト時にエッジまくれが酷く発生するものを×、巻き取り張力調整が容易でシワが入らないものを○とした。
【0062】
(7)フィルム状態
積層フィルムを製膜した後、フィルム状態を目視および指でフィルム表面を擦り、白粉が確認され使用に耐えないものを×、白粉が確認されるが使用できるものを△、フィルム表面に白粉が発生せず綺麗な状態のものを○とした。
【0063】
(8)電子レンジ加熱評価
2つの食材が接触しないように収納できるサイズ200mm×250mm、高さ25mmのポリプロピレン素材の弁当容器に対して、片側に白米を150g、もう一方にさばの塩焼き100g(ファミリマート社製)、およびセブンゴールド・金のハンバーグ100g(セブンイレブン社製)を設置し、白米の上部に本発明フィルムのA層側がご飯に対向するように被せた。
【0064】
食材を詰めた弁当容器を東芝社製電子レンジER−LD7にて500Wの表示出力で60秒加熱後、各食材の温度をタスコジャパン社製接触式温度計TNA−110で測定することにより、各食材の温度差を評価した。
【0065】
評価項目、評価基準は以下の通りとした。
・白米とさばの塩焼きの温度差
○:10℃未満
×:10℃以上
・白米とハンバーグの温度差
○:10℃未満
×:10℃以上。
【0066】
本実施例で使用した原料は次の通りである。
(1)ホモポリプロピレン(PP−1)
MFR=8.0g/10分、密度=0.900g/cm、T=163℃。
(2)エチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)
MFR=6.0g/10分、密度=0.900g/cm、T=142℃。
(3)界面活性剤マスターバッチ(MB−1、主成分はポリプロピレン系樹脂)
界面活性剤が、非イオン性界面活性剤と有機スルホン酸塩の混合比が82/18であり、非イオン性界面活性剤がグリセリンと炭素数12〜18の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物およびジグリセリンと炭素数12〜18の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物の混合物であり、有機スルホン酸塩が炭素数12〜18のアルキルスルホン酸ナトリウム塩である界面活性剤マスターバッチ。
MFR=7.0g/10分、密度=0.900g/cm、界面活性剤濃度=15重量%。
(4)エチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−3)
MFR=25.0g/10分、密度=0.900g/cm、T=125℃。
(5)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー(E−1)
MFR=3.6g/10分、密度=0.885g/cm
(6)高密度ポリエチレン(HD−1)
MFR=16.0g/10分、密度=0.955g/cm、T=130℃。
(7)直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)
MFR=8.0g/10分、密度=0.920g/cm、T=123℃。
(8)直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)
MFR=2.1g/10分、密度=0.920g/cm、T=123℃。
【0067】
実施例1
A層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)48.5重量部とエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)48.5重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)3重量部を混合した樹脂組成物を用い、B層の樹脂として、エチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)83重量%と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)17重量%を混合した樹脂組成物を用い、これらを押出機2台に各々投入し、各々230℃の押出温度で2層共押出積層のT型口金より押出し、40℃のキャスティングロールで急冷して2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを製膜した。得られた電子レンジ加熱食材用カバーフィルムの総厚さは50μmで、A層/B層の積層比が6/1であった。製膜性は良好で、キャスト時のエッジまくれはなく、滑り性も良好で安定して巻き取ることができた。本発明のフィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0068】
実施例2
B層の樹脂として、エチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−3)83重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)17重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明のフィルムとしての要求特性を全て満足していた。
【0069】
実施例3
B層の樹脂として、エチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)94重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)6重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0070】
実施例4
B層の樹脂として、エチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)47重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)53重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0071】
実施例5
A層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)49.8重量部とエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)49.7重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)0.5重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0072】
実施例6
A層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)50.0重量部とエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)46.7重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)3.3重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0073】
実施例7
A層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)50.0重量部とエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)40.3重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)9.7重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0074】
実施例8
A層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)10重量部とエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)87重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)3重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0075】
実施例9
A層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)87重量部とエチレン・プロピレンコポリマー(PP−2)10重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)3重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0076】
実施例10
B層の樹脂として、エチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−3)33重量部とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー(E−1)20重量部と高密度ポリエチレン(HD−1)20重量部と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)10重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)17重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0077】
実施例11
A層/B層の積層比を2.5/1とし、それ以外を実施例9と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0078】
実施例12
A層/B層の積層比を9/1とし、それ以外を実施例9と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0079】
実施例13
A層の樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)97重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)3重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例9と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0080】
実施例14
B層の樹脂として、エチレン・プロピレンコポリマー(PP−2)70重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)30重量部を混合した樹脂組成物を用い、それ以外を実施例1と同様に2層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。フィルム状態において若干白粉が発生したものの実用上問題なく、本発明フィルムとして要求特性を満足していた。
【0081】
実施例15
A層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)48.5重量%とエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)48.5重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)3重量部を混合した樹脂組成物を用い、B層の樹脂として、エチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)83重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)17重量部を混合した樹脂組成物を用い、C層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)99.5重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)0.5重量部を混合した樹脂組成物を用い、A層とB層の間を中層Cとして、これらを押出機3台に各々投入し、各々230℃の押出温度で3層共押出積層のT型口金より押出し、40℃のキャスティングロールで急冷して3層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを製膜した。得られた電子レンジ加熱食材用カバーフィルムの総厚さは50μmで、A層/C層/B層の積層比が1/8/1であった。製膜性は良好で、キャスト時のエッジまくれはなく、滑り性も良好で安定して巻き取ることができた。本発明のフィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0082】
実施例16
C層の樹脂として、エチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−2)90.3重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)9.7重量部を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例13と同様に3層積層の電子レンジ加熱食材用カバーフィルムを得た。本発明フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0083】
比較例1
A層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)83重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)17重量部を混合した樹脂組成物を用い、B層の樹脂として、エチレン・プロピレンコポリマー(PP−2)97重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)3重量部を混合した樹脂組成物を用い、それ以外を実施例1と同様に製膜を行い、得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。B層へ界面活性剤の添加量が少ないため、電子レンジ加熱評価では、白米とさばの塩焼きの温度差と白米とハンバーグの温度差が10℃以上あり、本発明フィルムとして要求特性を満足するものではなかった。
【0084】
比較例2
A層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)99.6重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)0.4重量部を混合した樹脂組成物を用い、B層の樹脂として、エチレン・プロピレンコポリマー(PP−2)94重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)6重量部を混合した樹脂組成物を用い、それ以外を実施例1と同様に製膜を行い、得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。A層のホモポリプロピレンの剛性が高いため、キャスト時にエッジまくれが大きく製膜性が悪化し、またA層の添加量が少ないため、B層へ添加している界面活性剤がA層へ移行して、B層中の界面活性剤が減り、電子レンジ加熱評価では、白米とさばの塩焼きの温度差と白米とハンバーグの温度差が10℃以上あり、本発明フィルムとして要求特性を満足するものではなかった。
【0085】
比較例3
A層の樹脂として、ホモポリプロピレン(PP−1)48.5重量部とエチレン・プロピレンコポリマー(PP−2)48.5重量部と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)3.0重量部を混合した樹脂組成物を用い、B層の樹脂として、エチレン・プロピレンコポリマー(PP−2)20重量%と界面活性剤マスターバッチ(MB−1)80重量部を混合した樹脂組成物を用い、それ以外を実施例1と同様に製膜を行い、得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。B層に界面活性剤の添加量が多いため、フィルムに白粉が析出し見栄えが悪いものとなり、本発明フィルムとして要求特性を満足するものではなかった。
【0086】
上記実施例1〜16、比較例1〜3の条件と結果を、まとめて表1〜表4に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【符号の説明】
【0091】
1・・・ご飯
2・・・ポリプロピレン製トレー
3・・・界面活性剤の添加量の少ない単層フィルム
4・・・界面活性剤の添加量の多い単層フィルム
5、8、10、14・・・界面活性剤の添加量の多い層
6、7、11、13・・・界面活性剤の添加量の少ない層
9、12・・・通蒸孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6