特許第6981901号(P6981901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981901
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ピエゾ抵抗型センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20211206BHJP
   G01P 15/12 20060101ALI20211206BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G01L9/00 303A
   G01L9/00 303E
   G01L9/00 303F
   G01P15/12 D
   H01L29/84 A
   H01L29/84 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-45377(P2018-45377)
(22)【出願日】2018年3月13日
(65)【公開番号】特開2019-158576(P2019-158576A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】米田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−204408(JP,A)
【文献】 特開平03−004568(JP,A)
【文献】 特開平07−131035(JP,A)
【文献】 特開2007−250869(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0148788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L 27/00−27/02
H01L 29/84
G01P 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層に形成された第1導電型の不純物が導入されたピエゾ抵抗領域と、
前記ピエゾ抵抗領域が形成されている領域の上部を覆って前記半導体層に形成された第2導電型の不純物が導入された保護領域と、
前記ピエゾ抵抗領域に接続し、前記保護領域が形成されている領域以外で前記半導体層の表面に到達して形成された第1導電型の不純物が導入されたコンタクト領域と
を備え、
前記ピエゾ抵抗領域の不純物濃度<前記保護領域の不純物濃度<前記コンタクト領域の不純物濃度とされ
前記コンタクト領域は、前記ピエゾ抵抗領域に接続する第1コンタクト領域と、前記半導体層の表面に到達する第2コンタクト領域とを備え、
前記ピエゾ抵抗領域の不純物濃度<前記保護領域の不純物濃度<前記第1コンタクト領域の不純物濃度<前記第2コンタクト領域の不純物濃度とされていることを特徴とするピエゾ抵抗型センサ。
【請求項2】
請求項1記載のピエゾ抵抗型センサにおいて、
前記半導体層の表面側で前記コンタクト領域にオーミック接続する電極を更に備えることを特徴とするピエゾ抵抗型センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載のピエゾ抵抗型センサにおいて、
前記半導体層に形成された周囲より薄くされたダイヤフラムを備え、
前記ピエゾ抵抗領域は、前記ダイヤフラムに形成されていることを特徴とするピエゾ抵抗型センサ。
【請求項4】
請求項記載のピエゾ抵抗型センサにおいて、
前記ダイヤフラムは、平面視矩形に形成され、
4つの前記ピエゾ抵抗領域が、前記ダイヤフラムの各辺に配置されていることを特徴とするピエゾ抵抗型センサ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のピエゾ抵抗型センサにおいて、
n型の不純物は、リンであり、p型の不純物はホウ素であることを特徴とするピエゾ抵抗型センサ。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のピエゾ抵抗型センサにおいて、
前記半導体層は、シリコンから構成されていることを特徴とするピエゾ抵抗型センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層によるダイヤフラムにピエゾ抵抗領域を備えるピエゾ抵抗型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、圧力を受けたダイヤフラムのたわみ量、すなわち変位より圧力値を出力する圧力センサは、半導体設備をはじめ、工業用途で広く使用されている。この種の圧力センサには、ピエゾ抵抗効果を利用してダイヤフラムの変位を応力として検出し、検出した応力から圧力値を出力するピエゾ抵抗型がある。このような、ピエゾ抵抗効果を利用するピエゾ抵抗型センサは、一般的にはn型の半導体基板に形成されたダイヤフラムに、p型不純物を導入したピエゾ抵抗領域を形成した素子構造を有する。
【0003】
また特許文献1には、上述したピエゾ抵抗領域の上にn型の不純物を導入した領域からなる保護領域を形成し、ピエゾ抵抗領域の上部を覆うことが開示されている。このような素子構造のピエゾ抵抗型センサ(半導体圧力センサ)によれば、半導体基板の表面に設けられる絶縁保護膜(例えば二酸化ケイ素)中や表面に付着するナトリウムイオンなどの汚染物質の影響を受け難くすることができ、ピエゾ抵抗領域の安定化を図って高精度・高感度なセンサ動作特性を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭60−32993号公報
【特許文献2】特開2011−013179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでピエゾ抵抗領域の感度を高めるべくピエゾ抵抗領域におけるp型不純物の濃度を低くした場合、ピエゾ抵抗領域と電極との電気的な接続を実現することが困難となる。このため、ピエゾ抵抗領域に接続してより高濃度にp型不純物を導入したコンタクト領域を形成し、このコンタクト領域に電極を電気的に接続(オーミック接続)することで、電極とピエゾ抵抗領域との電気的な接続が実現されている(特許文献2参照)。
【0006】
しかしながらこれらのピエゾ抵抗領域(高濃度のp型不純物領域および低濃度のp型不純物領域)の表面にn型の不純物領域(保護領域)を形成し、これらのp型不純物領域が保護領域で完全に覆われるようにしようとしても、高濃度のp型不純物領域からなるコンタクト領域の表面を反転させる(n型不純物領域にする)ことは非常に困難である。仮に、保護領域におけるn型の不純物濃度を高くした場合、高濃度のp型不純物領域との間にpn接合が形成されるため、このブレークダウン電圧(逆方向耐電圧)が低くなり、実用に供し得ないと言う新たな問題が生じる。
【0007】
上述したように、従来の技術では、ピエゾ抵抗領域を保護領域で完全に覆う状態とすることが容易ではなく、ピエゾ抵抗型センサの動作特性が不安定になり、例えば、使用温度範囲を狭めていた。
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、ピエゾ抵抗型センサの動作特性をより安定なものにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るピエゾ抵抗型センサは、半導体層に形成された第1導電型の不純物が導入されたピエゾ抵抗領域と、ピエゾ抵抗領域が形成されている領域の上部を覆って半導体層に形成された第2導電型の不純物が導入された保護領域と、ピエゾ抵抗領域に接続し、保護領域が形成されている領域以外で半導体層の表面に到達して形成された第1導電型の不純物が導入されたコンタクト領域とを備え、ピエゾ抵抗領域の不純物濃度<保護領域の不純物濃度<コンタクト領域の不純物濃度とされている
【0010】
上記ピエゾ抵抗型センサにおいて、半導体層の表面側でコンタクト領域にオーミック接続する電極を更に備える。
【0011】
上記ピエゾ抵抗型センサにおいて、半導体層は、例えば、シリコンから構成されていればよい。
【0012】
上記ピエゾ抵抗型センサにおいて、コンタクト領域は、ピエゾ抵抗領域に接続する第1コンタクト領域と、半導体層の表面に到達する第2コンタクト領域とを備え、ピエゾ抵抗領域の不純物濃度<保護領域の不純物濃度<第1コンタクト領域の不純物濃度<第2コンタクト領域の不純物濃度とされている。
【0013】
上記ピエゾ抵抗型センサにおいて、半導体層に形成された周囲より薄くされたダイヤフラムを備え、ピエゾ抵抗領域は、ダイヤフラムに形成されている。例えば、ダイヤフラムは、平面視矩形に形成され、4つのピエゾ抵抗領域が、ダイヤフラムの各辺に配置されている。
【0014】
上記ピエゾ抵抗型センサにおいて、n型の不純物は、リンであり、p型の不純物はホウ素であればよい。
【0015】
上記ピエゾ抵抗型センサにおいて、半導体層は、シリコンから構成されていればよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、第1導電型のピエゾ抵抗領域の上部を覆って第2導電型の保護領域を形成し、ピエゾ抵抗領域に接続する第1導電型のコンタクト領域を形成し、ピエゾ抵抗領域の不純物濃度<保護領域の不純物濃度<コンタクト領域としたので、ピエゾ抵抗型センサの動作特性がより安定にものとなるという優れた効果が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態1におけるピエゾ抵抗型センサの構成を示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1におけるピエゾ抵抗型センサの構成を示す平面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態2におけるピエゾ抵抗型センサの構成を示す断面図である。
図4A図4Aは、本発明の実施の形態2におけるピエゾ抵抗型センサの製造方法の説明における途中工程の状態を示す断面図である。
図4B図4Bは、本発明の実施の形態2におけるピエゾ抵抗型センサの製造方法の説明における途中工程の状態を示す断面図である。
図4C図4Cは、本発明の実施の形態2におけるピエゾ抵抗型センサの製造方法の説明における途中工程の状態を示す断面図である。
図4D図4Dは、本発明の実施の形態2におけるピエゾ抵抗型センサの製造方法の説明における途中工程の状態を示す断面図である。
図4E図4Eは、本発明の実施の形態2におけるピエゾ抵抗型センサの製造方法の説明における途中工程の状態を示す断面図である。
図5図5は、各不純物導入領域の厚さ方向の濃度プロファイルを示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1におけるピエゾ抵抗型センサについて図1を参照して説明する。実施の形態1におけるピエゾ抵抗型センサは、素子領域100に、ピエゾ抵抗領域102、保護領域103、コンタクト領域104a,104b、電極105a,105bを備える。
【0020】
ピエゾ抵抗領域102は、半導体層101に形成された第1導電型の不純物が導入された領域である。半導体層101は、例えば、シリコンから構成されている。半導体層101は、例えば、シリコン基板の表面側の部分である。また、半導体層101は、よく知られたSOI(Silicon on Insulator)の表面シリコン層であってもよい。また、第1導電型は、例えば、p型である。ピエゾ抵抗領域102は、シリコンからなる半導体層101に、p型不純物であるホウ素(B)が導入されたp型の領域である。
【0021】
また、保護領域103は、ピエゾ抵抗領域102が形成されている領域の上部を覆って半導体層101に形成された第2導電型の不純物が導入された領域である。第2導電型は、例えば、n型である。保護領域103は、シリコンからなる半導体層101に、n型不純物であるリン()が導入されたn型の領域である。
【0022】
また、保護領域103は、平面視で、ピエゾ抵抗領域102の全域を覆っている。保護領域103は、平面視で、ピエゾ抵抗領域102以上の面積とされている。なお、保護領域103は、半導体層101の厚さ方向において、ピエゾ抵抗領域102より半導体層101の表面側に形成されていればよい。保護領域103は、ピエゾ抵抗領域102に接して形成されている必要は無い。
【0023】
また、コンタクト領域104a,104bは、ピエゾ抵抗領域102に接続し、保護領域が形成されている領域以外で半導体層101の表面に到達して形成された第1導電型(例えばp型の)の不純物が導入された領域である。電極105a,105bは、半導体層101の表面側で、コンタクト領域104a,104bの各々にオーミック接続する。電極105a,105bは、例えば、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)などの金属から構成されている。
【0024】
また、実施の形態1におけるピエゾ抵抗型センサは、「ピエゾ抵抗領域102の不純物濃度<保護領域103の不純物濃度<コンタクト領域104a,104bの不純物濃度」とされている。なお、各不純物は、例えば、よく知られたイオン注入法により導入することができる。
【0025】
なお、実施の形態1において、半導体層101の表面には、酸化シリコンなどの絶縁材料から構成された絶縁層106が形成されている。電極105a,105bは、絶縁層106の上に形成され、絶縁層106を貫通してコンタクト領域104a,104bにオーミック接続している。
【0026】
このような素子構造のピエゾ抵抗型センサによれば、表面にナトリウムイオン等の汚染物質(プラスイオン)が付着しても、電気的な影響を、半導体層101の表面側に配置されている保護領域103内にとどめることができる。このため、保護領域103より深い方に配置されているピエゾ抵抗領域102は、汚染物質による影響を受けることがない。
【0027】
また、コンタクト領域104a,104bは、ピエゾ抵抗領域102より不純物濃度が高く、また、電極105a,105bとオーミック接続する程度に高い不純物濃度とされている。このため、コンタクト領域104a,104bに上述の汚染物質が付着しても、当該領域に大きな空乏層が形成されることがなく、汚染物質による影響を十分に小さくすることができる。
【0028】
より詳細に説明する。ピエゾ抵抗領域の表面側にナトリウムイオンなどの汚染物質が存在すると、不安定性の原因となる。最も一般的な、p型の不純物領域によるピエゾ抵抗の場合、ナトリウムイオンなどが存在するとピエゾ抵抗領域の表層部で空乏領域が形成され、また、ピエゾ抵抗領域の不純物濃度によっては、反転層が形成される。
【0029】
このように、空乏領域や反転層が形成されると、シート抵抗が変化する。この問題により、ピエゾ抵抗領域の抵抗値が変動する。結果として、センサの出力精度の低下や、出力不安定などの現象を引き起こす。ここで、反転層を形成するための閾値電圧Vthは、以下の式に示される。p型でピエゾ抵抗領域を形成した時、ピエゾ抵抗領域の不純物濃度=NAとなり、閾値電圧Vthはピエゾ抵抗の不純物濃度依存性を持つ。また、ナトリウムイオンによる電荷はVthと同様の効果を持つ。よって、ピエゾ抵抗領域の不純物濃度が低いほど、ナトリウムイオンなど稼動電荷の影響を受け易い。ピエゾ抵抗領域として最も高感度な約1018cm-3付近の濃度の場合、僅かに数V程度に相当する電荷量で影響されることになる。
【0030】
【数1】
【0031】
ここで、電極とのコンタクトのために、単にピエゾ抵抗領域の不純物濃度を高くすると、イオン注入法で異なる導電型の保護領域を形成すると、ピエゾ抵抗領域の全域を保護領域で覆うことが事実上できない。イオン注入法では、周辺部の不純物濃度が中途半端に低下し、上述した汚染物質のイオンの影響を受けやすくなる。また、この影響を抑制するために、保護領域をより高濃度の不純物領域で形成すると、ブレークダウン電圧の著しい低下が起きるため実使用上不可能となる。
【0032】
これに対し、実施の形態によれば、前述したように、「ピエゾ抵抗領域102の不純物濃度<保護領域103の不純物濃度<コンタクト領域104a,104bの不純物濃度」としたので、上述した問題が抑制され、ピエゾ抵抗領域102およびコンタクト領域104a,104bにおけるシート抵抗の変化が最小限に抑制され、動作特性の安定した高感度なピエゾ抵抗型のセンサが実現できる。このような実施の形態1におけるピエゾ抵抗型センサは、例えば圧力センサや加速度センサとして用いることが可能となる。
【0033】
例えば、図2に示すように、半導体層101に、周囲より薄くした平面視矩形のダイヤフラム121を形成し、ダイヤフラム121の4つの辺にピエゾ抵抗領域が配置されるように、4つの素子領域100を配置し、4個のピエゾ抵抗領域をブリッジ接続すれば、ダイヤフラム121を受圧部とする圧力センサとすることができる。圧力を受けたダイヤフラム121の変形に伴う4つのピエゾ抵抗領域の抵抗値の変化を、ブリッジ出力として検出することで、圧力が検出可能となる。加速度センサも、ほぼ同様な構造を有する。
【0034】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2におけるピエゾ抵抗型センサについて図3を参照して説明する。実施の形態2におけるピエゾ抵抗型センサは、素子領域100に、ピエゾ抵抗領域102、保護領域103、コンタクト領域104a,104b、電極105a,105bを備える。また、半導体層101の表面には、絶縁層106が形成されている。これらの構成は、前述した実施の形態1と同様である。
【0035】
実施の形態2では、コンタクト領域104aが、ピエゾ抵抗領域102に接続する第1コンタクト領域141aと、半導体層101の表面に到達する第2コンタクト領域142aとを備える。コンタクト領域104bも同様に、ピエゾ抵抗領域102に接続する第1コンタクト領域141bと、半導体層101の表面に到達する第2コンタクト領域142bとを備える。実施の形態2では、電極105a,105bは、半導体層101の表面側で第2コンタクト領域142a,142bの各々にオーミック接続する。
【0036】
また、「ピエゾ抵抗領域102の不純物濃度<保護領域103の不純物濃度<第1コンタクト領域141a,141bの不純物濃度<第2コンタクト領域142a,142bの不純物濃度」とされている。
【0037】
第1コンタクト領域141a,141bは、半導体層101の厚さ方向において、ピエゾ抵抗領域102と同程度の深さに形成されている。平面視で、ピエゾ抵抗領域102の一端の側に接して第1コンタクト領域141aが形成され、ピエゾ抵抗領域102の他端の側に第1コンタクト領域141bが形成されている。
【0038】
また、第2コンタクト領域142a,142bは、半導体層101の厚さ方向において、保護領域103と同程度の深さに形成されている。
【0039】
実施の形態2よれば、ピエゾ抵抗領域102とコンタクト領域104a,104bとの接触箇所における不純物濃度差をあまり大きくすることなく、コンタクト領域104a,104bと電極105a,105bとのオーミック接続がより良好にとれるようになる。実施の形態2によれば、ピエゾ抵抗領域102−第1コンタクト領域141a,141b−第2コンタクト領域142a,142bの経路の不純物濃度をなだらかにすることができる。
【0040】
以下、実施の形態2におけるピエゾ抵抗型センサの製造方法について、図4A図4Eを参照して説明する。
【0041】
まず、図4Aに示すように、半導体層101の上に開口部201aを備える無機マスク層201を形成する。開口部201aは、コンタクト領域104a,104bを形成する箇所に配置する。例えば、半導体層101の上に、スパッタ法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの堆積法により酸化シリコン(SiO2)などの無機絶縁材料を堆積して酸化シリコン層を形成する。次いで、形成した酸化シリコン層を、公知のフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングすることで、開口部201aを形成して無機マスク層201とすればよい。酸化シリコン層は、半導体層101がシリコンの場合、この表面を熱酸化して形成してもよい。エッチングにおいては、例えば、フッ酸(HF)をエッチャントしたウエットエッチングにより、酸化シリコンを選択的にエッチングすることで、開口部201aを形成することができる。
【0042】
次に、よく知られたイオン注入法により、無機マスク層201を用いて選択的に半導体層101にホウ素をイオン注入することで、p型不純物領域202を形成する。ここでは、前述した第2コンタクト領域142a,142bが形成される領域程度の深さまでp型不純物が導入されるように、所定の注入エネルギーでイオン注入する。
【0043】
次に、図4Bに示すように、イオン注入法により、無機マスク層201を用いて選択的に半導体層101に、再度ホウ素をイオン注入することで、第1コンタクト領域141a,141bおよび第2コンタクト領域142a,142bを形成する。この工程では、第1コンタクト領域141a,141bが形成される程度の深さまでp型不純物が導入されるように、所定の注入エネルギーでイオン注入する。
【0044】
上述した2回のイオン注入により、第2コンタクト領域142a,142b(p型不純物領域202)には、不純物の導入が2回されることになり、不純物濃度がより高濃度となる。1回のイオン注入で、コンタクト領域104a,104bを形成しようとすると、一般的には、半導体層101の表面側の不純物濃度を高くすることが容易ではないが、上述したように2回のイオン注入により、表面側の不純物濃度を、十分に高くすることができる。
【0045】
次に、図4Cに示すように、半導体層101の上に開口部203aを備える無機マスク層203を形成する。開口部203aは、ピエゾ抵抗領域102およびコンタクト領域104a,104bを形成する箇所に配置する。ここで、開口部203aの領域は、前述した無機マスク層201の開口部201aの領域が含まれている。したがって、例えば、無機マスク層201に新たに開口部203aを形成することで、無機マスク層203とすればよい。なお、無機マスク層201を除去した後、前述同様にすることで、新たに無機マスク層203を形成してもよい。
【0046】
次に、イオン注入法により、無機マスク層203を用いて選択的に半導体層101に、再度ホウ素をイオン注入することで、p型不純物領域204を形成する。ここでは、ピエゾ抵抗領域102が形成される領域程度の深さまでp型不純物が導入されるように、所定の注入エネルギーでイオン注入する。p型不純物領域204は、ピエゾ抵抗領域102となる領域である。
【0047】
次に、無機マスク層203を除去した後、図4Dに示すように、半導体層101の上に開口部205aを備える無機マスク層205を形成する。開口部205aは、保護領域103を形成する箇所に配置する。前述同様に、半導体層101の上に、酸化シリコン層を形成し、形成した酸化シリコン層を、公知のフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングすることで、開口部205aを形成して無機マスク層205とすればよい。
【0048】
次に、イオン注入法により、無機マスク層205を用いて選択的に半導体層101にリンをイオン注入することで、n型不純物領域である保護領域103を形成する。これにより、p型不純物領域であるピエゾ抵抗領域102の上を覆う状態に、保護領域103が形成される。ここでは、保護領域103が形成される領域程度の深さまでn型不純物が導入されるように、所定の注入エネルギーでイオン注入する。
【0049】
なお、上述した不純物導入領域の形成においては、イオン注入をした後に、注入したイオンを活性化するための加熱処理を行う。
【0050】
次に、無機マスク層205を除去した後、図4Eに示すように、絶縁層106を形成し、また、絶縁層106に、貫通孔106aを形成する。例えば、所定の堆積法により酸化シリコンを堆積して絶縁層106を形成する。次いで、形成した絶縁層106を、公知のフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングすることで、貫通孔106aを形成すればよい。
【0051】
この後、絶縁層106の上に、電極105a,105bを形成する領域に開口部を有するマスクパターン(不図示)を形成し、このマスクパターンの上に所定の金属を堆積して金属膜を形成する。例えば、よく知られた蒸着法やめっき法により金属膜を形成すればよい。次いで、マスクパターンを除去(リフトオフ)することで、図3に示すように、電極105a,105bを形成する。
【0052】
次に、上述した各不純物導入領域における、半導体層101の深さ方向における濃度プロファイルについて、図5を参照して説明する。各不純物導入領域の不純物濃度は、深さによって変化し、図5に示すようなプロファイルを持つ。
図5において、特性(a)は、平面視でピエゾ抵抗領域102(保護領域103)の領域におけるp型不純物の濃度プロファイルである。特性(b)は、平面視で保護領域103(ピエゾ抵抗領域102)の領域におけるn型不純物の濃度プロファイルである。
【0053】
また、図5において、特性(c)は、平面視で、2回のイオン注入で形成したコンタクト領域104a,104b(実施の形態2)の領域におけるp型不純物の濃度プロファイルである。また、図5において、特性(d)は、平面視で、1回のイオン注入で形成したコンタクト領域104a,104b(実施の形態1)の領域におけるp型不純物の濃度プロファイルである。
【0054】
図5に示すように、イオン注入により形成される不純物領域の不純物濃度は、深さにより変化する。したがって、ピエゾ抵抗領域102においては、所定の深さにおいて不純物ピーク濃度が所定の感度を呈する「ピエゾ抵抗領域不純物濃度」となるように設定する。
【0055】
また、保護領域103においては、表面側の「保護領域不純物濃度」の領域が、ピエゾ抵抗領域102の形成領域が下側となりこの領域を完全に覆うように、「ピエゾ抵抗領域不純物濃度」よりも高く設定される。
【0056】
ところで、コンタクト領域104a,104bにおいては、1回のイオン注入で形成すると、所定の深さにおいて「ピエゾ抵抗領域不純物濃度」よりも高くなるように設定しても、一般的には特性(d)に示すように、表面側の不純物濃度が低下する。これに対し、2回のイオン注入で形成すれば、特性(c)に示すように、所定の深さにおいて「ピエゾ抵抗領域不純物濃度」よりも高くなり、表面側においても充分に高い不純物濃度が得られるようになる。
【0057】
上述した説明から分かるように、複数回のイオン注入により各不純物領域を形成することで、ピエゾ抵抗領域102、保護領域103、コンタクト領域104a,104bにおける所望とする濃度分布の状態が、より容易に実現できる。このように、イオン注入法を用いることで、前述した実施の形態2におけるピエゾ抵抗型センサの各不純物領域が、容易にかつ効果的に形成できる。
【0058】
以上に説明したように、本発明によれば、第1導電型のピエゾ抵抗領域の上部を覆って第2導電型の保護領域を形成し、ピエゾ抵抗領域に接続する第1導電型のコンタクト領域を形成し、ピエゾ抵抗領域の不純物濃度<保護領域の不純物濃度<コンタクト領域としたので、ピエゾ抵抗型センサの動作特性がより安定したものとなる。
【0059】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としてもよいことは、言うまでもない。また、半導体層は、シリコンに限らず、他の半導体から構成されていてもよい。また、各不純物領域は、イオン注入法に限るものではなく、よく知られた拡散法により形成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
100…素子領域、101…半導体層、102…ピエゾ抵抗領域、103…保護領域、104a,104b…コンタクト領域、105a,105b…電極、106…絶縁層。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5