特許第6981913号(P6981913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981913
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   G01N27/409 100
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-74482(P2018-74482)
(22)【出願日】2018年4月9日
(65)【公開番号】特開2019-184385(P2019-184385A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2020年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】納土 慶一
(72)【発明者】
【氏名】野田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】深野 竜太
(72)【発明者】
【氏名】石黒 靖浩
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 正二
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−003076(JP,A)
【文献】 特開2003−050224(JP,A)
【文献】 特開2017−020984(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0033986(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/092347(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象を検出するセンサ素子と、軸線方向に延びる筒状のケースと、を備えるセンサ本体部と、
前記センサ素子と電気的に接続されて、前記ケースの内部から外部へ延びるリード線と、
前記ケースの後端部の内側に配置され、前記リード線が挿通されるシール部材と、
前記ケースの外面に係止され、かつ前記ケースの後端から後方に延びる筒状の遮熱チューブであって、前記シール部材の全体及び前記リード線の周囲を包囲する遮熱チューブと、
を備えるセンサであって、
前記遮熱チューブの後方への移動を規制すると共に、弾性部材からなる筒状のチューブキャップを備え、
前記チューブキャップは前記リード線を挿通するリード線挿通孔を有し、縮径して前記リード線に保持され
前記チューブキャップの少なくとも後端側が前記遮熱チューブよりも後端側に露出し、この露出したチューブキャップの外面には、該チューブキャップを縮径させて前記リード線に保持させる締結部材が嵌合され、
前記チューブキャップの先端側には、前記遮熱チューブの後端向き面に接して該遮熱チューブの後方への移動を規制する先端向き面、又は前記遮熱チューブの後端部に挿入されて該遮熱チューブの側壁に係合して該遮熱チューブの後方への移動を規制する挿入部が設けられてなることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
被測定対象を検出するセンサ素子と、軸線方向に延びる筒状のケースと、を備えるセンサ本体部と、
前記センサ素子と電気的に接続されて、前記ケースの内部から外部へ延びるリード線と、
前記ケースの後端部の内側に配置され、前記リード線が挿通されるシール部材と、
前記ケースの外面に係止され、かつ前記ケースの後端から後方に延びる筒状の遮熱チューブであって、前記シール部材の全体及び前記リード線の周囲を包囲する遮熱チューブと、
を備えるセンサであって、
前記遮熱チューブの後方への移動を規制すると共に、弾性部材からなる筒状のチューブキャップを備え、
前記チューブキャップは前記リード線を挿通するリード線挿通孔を有し、縮径して前記リード線に保持され、
前記チューブキャップの少なくとも先端側の挿入部が前記遮熱チューブの後端部に挿入され、当該挿入部にて前記遮熱チューブが前記チューブキャップと共に外側から縮径されて加締め部が形成され、前記チューブキャップが前記リード線に保持され、
前記チューブキャップの先端側に、前記遮熱チューブの後端向き面に接して該遮熱チューブを保持する先端向き面を有することを特徴とするセンサ。
【請求項3】
被測定対象を検出するセンサ素子と、軸線方向に延びる筒状のケースと、を備えるセンサ本体部と、
前記センサ素子と電気的に接続されて、前記ケースの内部から外部へ延びるリード線と、
前記ケースの後端部の内側に配置され、前記リード線が挿通されるシール部材と、
前記ケースの外面に係止され、かつ前記ケースの後端から後方に延びる筒状の遮熱チューブであって、前記シール部材の全体及び前記リード線の周囲を包囲する遮熱チューブと、
を備えるセンサであって、
前記遮熱チューブの後方への移動を規制すると共に、弾性部材からなる筒状のチューブキャップを備え、
前記チューブキャップは前記リード線を挿通するリード線挿通孔を有し、縮径して前記リード線に保持され、
前記チューブキャップの少なくとも先端側の挿入部が前記遮熱チューブの後端部に挿入され、当該挿入部にて前記遮熱チューブが前記チューブキャップと共に外側から縮径されて加締め部が形成され、前記チューブキャップが前記リード線に保持され
前記チューブキャップの後端側が前記遮熱チューブの後端側に露出し、この露出したチューブキャップの外面には、該チューブキャップを縮径させて前記リード線に保持させる締結部材が嵌合されていることを特徴とするセンサ。
【請求項4】
前記リード線挿通孔が前記リード線と同一個数形成され、各リード線挿通孔に前記リード線が一本ずつ個々に挿通される請求項1又は2に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ等の被測定対象を検出するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気管には、被測定ガスの濃度を検出するセンサが取付けられている。
このようなセンサは、自身の後端側にゴム製のシール部材を配置して内外を封止すると共に、リード線をシール部材に挿通させて外部に引き出している。ところが、シール部材は一般に耐熱性が低いため、センサが高温環境下で長時間使用されると、シール部材が輻射熱を受けて劣化し、センサのシールが損なわれるおそれがある。又、リード線が熱を受けて絶縁被覆が溶けると、絶縁性を損なってしまう。
【0003】
そこで、シール部材とリード線とを遮熱チューブで包囲し、さらに耐熱樹脂からなる筒状の固定部品(リテーナ)を遮熱チューブの後端側に挿入し、リテーナ内にリード線を挿通させることで、遮熱チューブとリード線を非接触で固定する技術が開発されている(非特許文献1)。この技術では、リテーナの後端に引き出されたリード線に結束バンドを固定し、結束バンドをリテーナの後端側へ当接させてリテーナの移動を規制している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】発明協会公開技法公技番号2011−500826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的な結束バンドは耐熱性が低いため、高温での使用が困難になったり、高温で結束バンドが緩んで抜け落ち、リテーナ及び遮熱チューブが後落するおそれがある。
又、リテーナは硬質で変形しないため、リテーナ自身によりリード線を保持することが困難であり、結束バンドが緩むと、リテーナがリード線に対して容易に動いてしまい、遮熱チューブも動いてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、遮熱チューブを確実に保持して耐熱性を向上させたセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様のセンサは、被測定対象を検出するセンサ素子と、軸線方向に延びる筒状のケースと、を備えるセンサ本体部と、前記センサ素子と電気的に接続されて、前記ケースの内部から外部へ延びるリード線と、前記ケースの後端部の内側に配置され、前記リード線が挿通されるシール部材と、前記ケースの外面に係止され、かつ前記ケースの後端から後方に延びる筒状の遮熱チューブであって、前記シール部材の全体及び前記リード線の周囲を包囲する遮熱チューブと、を備えるセンサであって、前記遮熱チューブの後方への移動を規制すると共に、弾性部材からなる筒状のチューブキャップを備え、前記チューブキャップは前記リード線を挿通するリード線挿通孔を有し、縮径して前記リード線に保持され、前記チューブキャップの少なくとも後端側が前記遮熱チューブよりも後端側に露出し、この露出したチューブキャップの外面には、該チューブキャップを縮径させて前記リード線に保持させる締結部材が嵌合され、前記チューブキャップの先端側には、前記遮熱チューブの後端向き面に接して該遮熱チューブの後方への移動を規制する先端向き面、又は前記遮熱チューブの後端部に挿入されて該遮熱チューブの側壁に係合して該遮熱チューブの後方への移動を規制する挿入部が設けられてなることを特徴とする。
【0008】
このセンサによれば、チューブキャップがリード線1を挿通しつつ縮径しているので、弾性部材であるチューブキャップのリード線挿通孔の内壁がリード線の外面にしっかりと密着してリード線に保持される。このため、軸線方向に外力が働いてもチューブキャップがリード線からズレ難く、チューブキャップ、ひいてはチューブキャップに後方への移動を規制された遮熱チューブを確実に保持してセンサの耐熱性を向上させることができる。
【0009】
また、第1の態様のセンサによれば、締結部材によりチューブキャップを強く縮径させることができ、チューブキャップがリード線により確実に保持され、遮熱チューブをさらに確実に保持できる。
【0010】
本発明の第2の態様のセンサは、被測定対象を検出するセンサ素子と、軸線方向に延びる筒状のケースと、を備えるセンサ本体部と、前記センサ素子と電気的に接続されて、前記ケースの内部から外部へ延びるリード線と、前記ケースの後端部の内側に配置され、前記リード線が挿通されるシール部材と、前記ケースの外面に係止され、かつ前記ケースの後端から後方に延びる筒状の遮熱チューブであって、前記シール部材の全体及び前記リード線の周囲を包囲する遮熱チューブと、を備えるセンサであって、前記遮熱チューブの後方への移動を規制すると共に、弾性部材からなる筒状のチューブキャップを備え、前記チューブキャップは前記リード線を挿通するリード線挿通孔を有し、縮径して前記リード線に保持され、前記チューブキャップの少なくとも先端側の挿入部が前記遮熱チューブの後端部に挿入され、当該挿入部にて前記遮熱チューブが前記チューブキャップと共に外側から縮径されて加締め部が形成され、前記チューブキャップが前記リード線に保持され、前記チューブキャップの先端側に、前記遮熱チューブの後端向き面に接して該遮熱チューブを保持する先端向き面を有する
このセンサによれば、遮熱チューブごとチューブキャップを縮径させるので、部品点数が減少し、生産も容易となる。
また、このセンサによれば、遮熱チューブごとチューブキャップを縮径させる形態において、さらにチューブキャップの先端向き面で遮熱チューブを保持するので、遮熱チューブをさらに確実に保持できる。
【0013】
本発明の第3の態様のセンサは、被測定対象を検出するセンサ素子と、軸線方向に延びる筒状のケースと、を備えるセンサ本体部と、前記センサ素子と電気的に接続されて、前記ケースの内部から外部へ延びるリード線と、前記ケースの後端部の内側に配置され、前記リード線が挿通されるシール部材と、前記ケースの外面に係止され、かつ前記ケースの後端から後方に延びる筒状の遮熱チューブであって、前記シール部材の全体及び前記リード線の周囲を包囲する遮熱チューブと、を備えるセンサであって、前記遮熱チューブの後方への移動を規制すると共に、弾性部材からなる筒状のチューブキャップを備え、前記チューブキャップは前記リード線を挿通するリード線挿通孔を有し、縮径して前記リード線に保持され、前記チューブキャップの少なくとも先端側の挿入部が前記遮熱チューブの後端部に挿入され、当該挿入部にて前記遮熱チューブが前記チューブキャップと共に外側から縮径されて加締め部が形成され、前記チューブキャップが前記リード線に保持され、前記チューブキャップの後端側が前記遮熱チューブの後端側に露出し、この露出したチューブキャップの外面には、該チューブキャップを縮径させて前記リード線に保持させる締結部材が嵌合されてい
このセンサによれば、遮熱チューブごとチューブキャップを縮径させる形態において、締結部材によりチューブキャップを強く縮径させることができ、チューブキャップがリード線により確実に保持され、遮熱チューブをさらに確実に保持できる。
本発明の第1〜2の態様のセンサであって、前記リード線挿通孔が前記リード線と同一個数形成され、各リード線挿通孔に前記リード線が一本ずつ個々に挿通されてもよい。
このセンサによれば、チューブキャップを縮径させると、リード線一本ずつの外面にリード線挿通孔の内壁が密着するので、チューブキャップがリード線により確実に保持され、遮熱チューブをさらに確実に保持できる。


【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、遮熱チューブを確実に保持して耐熱性を向上させたセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係るセンサの軸線方向に沿う半断面図である。
図2】チューブキャップ及び金属リングの斜視図である。
図3】第1の実施形態に係るセンサにおいて、チューブキャップが遮熱チューブの側壁に係合する形態を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るセンサの軸線方向に沿う半断面図である。
図5】第2の実施形態に係るセンサにおいて、チューブキャップの外面に金属リングを嵌合する形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る酸素センサ(センサ)100の軸線O方向に沿う半断面図、図2はチューブキャップ150及び金属リング140の斜視図を示す。
この酸素センサ100は、自動車の排気管(図示しない)に取り付けられ、排ガス中の酸素濃度を検知するものである。排気管は、排ガスの熱により例えば800℃という高温状態になる可能性があるため、酸素センサ100も高温になる。また、外部からの熱が酸素センサ100に加わることもある。従って、酸素センサ100には、このような熱に対する対策が要求される。
【0017】
図1に示すように、酸素センサ100は、先端側に設けられたセンサ本体部200と、後端側に設けられた遮熱チューブ130と、を備える。センサ本体部200は、軸線O方向に延びる筒状に形成された金属製のケース160と、ケース160内に収容されるセンサ素子192と、を備える。
ケース160は、先端側に位置する筒状の主体金具180と、主体金具180の後端側の開口に連通するように溶接された外筒170と、を備える。
【0018】
主体金具180は、ステンレス鋼などの耐熱性金属材料を用いて構成されており、酸素センサ100を排気管などに固定するためのネジ部181と、ネジ部181の後端側に位置する工具係合部182と、を備える。工具係合部182は、軸線O方向に垂直な面(以下、垂直面)において、その外径がネジ部181の外径よりも大きな径に形成されており、酸素センサ100の取り付け作業時に、取り付け作業に用いる工具が係合される。
ケース160の内側には、軸線O方向に沿って、測定対象の酸素を検出する素子であるセンサ素子192が収容されている。センサ素子192は、軸線O方向に延びる板形状の積層部材であり、検出部を含む素子部と、素子部を加熱するためのヒータ部と、を備える。センサ素子192は、その先端部分がネジ部181から先端側へ露出した状態で、主体金具180の内部に固定されている。
【0019】
主体金具180の先端側には、ネジ部181から露出したセンサ素子192の先端部分を覆うように、プロテクタ190が配置されている。プロテクタ190は、ステンレス鋼などの耐熱性金属材料を用いて構成されている。プロテクタ190は、開口がネジ部181の開口に連通した筒状の後端部と、後端部よりも垂直面における外径が小さいキャップ状の先端部とを備える。プロテクタ190に後端部には、排ガスの通過が可能な複数の通過孔191が形成されている。
【0020】
外筒170は、ステンレス鋼などの耐熱性金属材料を用いて構成されており、先端側に位置する大径部171と後端側に位置する小径部173とが一体的に形成されている。大径部171は、その先端部分が主体金具180の後端部分に溶接されている。大径部171には、軸線O方向の中央よりもやや後端側に、径方向内側に屈曲するように加締められた先端加締め部172が形成されている。小径部173は、垂直面において、その外径が、大径部171の外径よりも小さな径に形成されている。
小径部173には、その後端部分に、径方向内側に加締められた後端加締め部174が形成されている。
【0021】
外筒170の後端部の内側には、グロメット110が配置されており、外筒170の後端側の開口は、グロメット110によって閉塞されている。グロメット110は、フッ素ゴムなどの弾性材料を用いて略円柱形状に構成されている。グロメット110は、先端部分が外筒170の後端部分に挿入され、後端部分が外筒170から後端側へ突出している。そして、外筒170に形成された後端加締め部174によって、グロメット110は外筒170の後端部の内側に保持されている。
グロメット110が特許請求の範囲の「シール部材」に相当する。
【0022】
また、外筒170の内側には、グロメット110の位置よりも先端側に、アルミナなどの絶縁性材料で構成された、図示しない絶縁セパレータが配置されている。この絶縁セパレータは、外筒170に形成された先端加締め部172によって、外筒170の内側に保持されている。
【0023】
さらに、酸素センサ100は、複数のリード線123を備える。本実施形態では、リード線123は5本のリード線を含む。リード線123は、センサ素子192によって検出された検出信号を取り出すとともに、酸素センサ100を駆動するための駆動信号を伝達するための信号線である。リード線123は、その第1端がセンサ素子192に電気的に接続されており、ケース160の内部から外部へ延びている。そして、リード線123は、グロメット110の挿通孔(図示せず)に挿通されるとともに、グロメット110の後端面111からケース160の外部へ引き出され、その第2端が図示しないコネクタに接続されている。このコネクタは、車両内に配置されるセンサ制御装置に接続される。
【0024】
遮熱チューブ130は、軸線O方向に延びる筒状の部材である。遮熱チューブ130の外表面及び内表面は、グロメット110よりも熱伝導性の高い材料で構成されている。具体的には、遮熱チューブ130は、アルミニウム箔などの金属箔でガラス繊維の断熱層を挟んで構成された積層体が、蛇腹状に幾重にも折り曲げられて構成されている。
遮熱チューブ130は、その先端がグロメット110の配置位置よりも先端側の位置で、外筒170に当接している。具体的には、遮熱チューブ130は、その先端が外筒170に形成されている後端加締め部174のテーパ部分に遊嵌している。そして、遮熱チューブ130は、グロメット110から径方向に離間して、グロメット110の全体及びグロメット110の後端のリード線123の周囲を包囲している。
【0025】
遮熱チューブ130は、外表面が金属箔を用いて構成されているため、酸素センサ100の周囲の環境が高温環境になっても、外部の熱線を反射して、内部のグロメット110やリード線123への熱の伝達を抑制することができる。また、遮熱チューブ130は、外表面と内表面との間に断熱層を備えるため、外表面から内表面への熱の伝達を抑制することができる。なお、遮熱チューブ130の内表面は、ガラス繊維を用いて構成される。
【0026】
遮熱チューブ130の後端部には、フッ素ゴム等の弾性部材からなる略円柱状のチューブキャップ150が取り付けられている。図2に示すように、チューブキャップ150には、5本の各リード線123を一本ずつ個々に挿通させる5個のリード線挿通孔150hが軸線O方向に貫通し、個々のリード線123がリード線挿通孔150hに挿通されると共にチューブキャップ150の後端側に引き出されている。
そして、チューブキャップ150には金属リング140が加締め嵌合され、金属リング140によってチューブキャップ150が縮径してリード線123に保持され、遮熱チューブ130の後方への移動を規制する。
金属リング140が特許請求の範囲の「締結部材」に相当する。
【0027】
具体的には、チューブキャップ150の後端側が遮熱チューブ130よりも後端側に露出し、この露出したチューブキャップ150の外面に金属リング140が嵌合されている。又、図2に示すように、チューブキャップ150の先端側が遮熱チューブ130よりも大径のフランジ部150fを形成し、フランジ部150fの先端向き面150aが遮熱チューブ130の後端向き面130eに接している。
これにより、遮熱チューブ130の先端が後端加締め部174のテーパ部分に係止され、遮熱チューブ130の後端がフランジ部150fに係止されることで、遮熱チューブ130の先後への移動を規制する。
【0028】
さらに、チューブキャップ150の後端に引き出された複数のリード線123は、一つにまとめられて保護チューブ120によって被覆されている。保護チューブ120は、ガラス繊維を用いて構成された筒状の編組であり、可撓性を備えている。
【0029】
第1の実施形態においては、チューブキャップ150がリード線123を挿通しつつ縮径しているので、弾性部材であるチューブキャップ150のリード線挿通孔150hの内壁がリード線123の外面にしっかりと密着してリード線123に保持される。このため、軸線O方向に外力が働いてもチューブキャップ150がリード線123からズレ難く、チューブキャップ150、ひいてはチューブキャップ150に後方への移動を規制された遮熱チューブ130を確実に保持してセンサ100の耐熱性を向上させることができる。
【0030】
なお、図1の例では、チューブキャップ150は、リード線123を一本ずつ個々に挿通させる5個のリード線挿通孔150hを有する。これにより、チューブキャップ150を縮径させると、リード線123一本ずつの外面にリード線挿通孔150hの内壁が密着するので、軸線O方向に外力が働いたときにチューブキャップ150がリード線123からより一層ズレ難くなる。
但し、例えばリード線挿通孔を1個設け、複数のリード線123をまとめてリード線挿通孔に挿通する場合も、本発明に含まれる。
【0031】
又、図1の例では、チューブキャップ150の先端向き面150aが遮熱チューブ130の後端向き面130eに接することで、遮熱チューブ130がチューブキャップ150に係止されたが、図3に示すように、チューブキャップ152が遮熱チューブ130の側壁130iに係合してもよい。
図3において、チューブキャップ152の先端側は遮熱チューブ130の後端部に挿入される先端部(挿入部)152wを有し、先端部152wは径方向に突出しつつ周方向に繋がる複数の突起が形成されたタケノコ形状をなしている。この突起は、軸線O方向の断面が先端に向かって窄まるテーパ状のカエシを有し、遮熱チューブ130に挿入した先端部152wが抜けるのを防止している。
【0032】
図3の例では、先端部152wが遮熱チューブ130の側壁130iに係合し、遮熱チューブ130を確実に保持する。チューブキャップ152においてもリード線挿通孔152hにリード線123を挿通した状態で、金属リング140が加締め嵌合されてチューブキャップ152が縮径している。
なお、チューブキャップ152の先端部152wを遮熱チューブ130の側壁130iに係合させる形態は、タケノコ形状に限らず、先端部152wと側壁130iの間の摩擦力を高める形態(例えば、先端部152wに細かい凹凸を付ける等)であればよい。
【0033】
次に、図4を参照し、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は本発明の第2の実施形態に係る酸素センサ(センサ)100Bの軸線O方向に沿う半断面図を示す。
酸素センサ100Bは、先端側に設けられたセンサ本体部200と、後端側に設けられた遮熱チューブ132と、を備える。センサ本体部200(ケース160及びセンサ素子192)は第1の実施形態と同一であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
図4において、遮熱チューブ132の後端部には、フッ素ゴム等の弾性部材からなる略円柱状のチューブキャップ154の先端部(挿入部)154tが挿入され、チューブキャップ154のリード線挿通孔154hにはリード線123が挿通されている。そして、この先端部154tにて遮熱チューブ132がチューブキャップ154と共に外側から縮径されて加締め部132sが形成されている。これによって縮径されたチューブキャップ154がリード線123に保持され、遮熱チューブ132の後方への移動を規制する。
これにより、遮熱チューブ132の先端が後端加締め部174のテーパ部分に係止され、遮熱チューブ132の後端がチューブキャップ154の先端部154tに係止されることで、遮熱チューブ132の先後への移動を規制する。
【0035】
さらに、第1の実施形態と同様、チューブキャップ154の後端に引き出された複数のリード線123は、一つにまとめられて保護チューブ120によって被覆されている。
【0036】
第2の実施形態においても、チューブキャップ154がリード線123を挿通しつつ縮径しているので、弾性部材であるチューブキャップ154のリード線挿通孔154hの内壁がリード線123の外面にしっかりと密着してリード線123に保持される。このため、軸線O方向に外力が働いてもチューブキャップ154がリード線123からズレ難く、チューブキャップ154、ひいてはチューブキャップ154に後方への移動を規制された遮熱チューブ132を確実に保持してセンサ100Bの耐熱性を向上させることができる。
【0037】
なお、第2の実施形態では、チューブキャップ154の外側から遮熱チューブ132を加締めているが、遮熱チューブ132は強度が低い場合もあり、あまり加締めを強くすると遮熱チューブ132が破れるおそれがある。
そのため、遮熱チューブ132が破れない程度に加締め力を制限する必要があり、外力によってチューブキャップ154がリード線123からズレたり、遮熱チューブ132がチューブキャップ154からズレる可能性がある。
そこで、図5に示すように、第1の実施形態と同様、チューブキャップ154の後端側を遮熱チューブ132よりも後端側に露出させ、この露出したチューブキャップ154の外面に金属リング140を加締め嵌合すれば、チューブキャップ154をリード線123により確実に保持させることができる。
さらに、第1の実施形態と同様、チューブキャップ154に遮熱チューブ132を係止するフランジ部154f及び先端向き面154a(図1の先端向き面150aと同様なもの)を設ければ、遮熱チューブ132をチューブキャップ154により確実に係止させることができる。
【0038】
本発明の実施形態に係るセンサ100は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、リード線123をチューブキャップ150及びグロメット110に挿通すると共に、グロメット110を遮熱チューブ130及び外筒170内に配置する。
そして、グロメット110の先端側に突出させたリード線123を、外筒170内に配置された絶縁セパレータ(図示せず)に挿通し、リード線123の先端の被覆を除去した芯線に端子金具(図示せず)を加締める。
一方、予め、主体金具180にセンサ素子192やプロテクタ190を組み付けたアッセンブリを用意し、このアッセンブリのセンサ素子192を絶縁セパレータ内に収容すると、センサ素子192の電極パッドが絶縁セパレータ内の端子金具に電気的に接続される。
そして、主体金具180に外筒170を嵌合して溶接することで、センサ本体部200を組み付ける。
最後に、チューブキャップ150の先端向き面150aを遮熱チューブ130の後端向き面130eに当接させた状態で、チューブキャップ150に嵌めた金属リング140を加締める。さらにチューブキャップ150の後端側に引き出されたリード線123を保護チューブ120によって被覆する。
【0039】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【0040】
チューブキャップの形状等は上記実施形態に限定されない。チューブキャップが縮径される形態も限定されないし、チューブキャップにより遮熱チューブの後方への移動を規制する形態も限定されない。
締結部材としては、上記した金属リングの他、ワイヤ等が挙げられる。
センサ素子は板型素子に限らず、筒型素子でもよい。
又、センサの種類も限定されず、酸素センサの他、NOxセンサ、全領域センサが挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
100、100B センサ
110 シール部材
123 リード線
130,132 遮熱チューブ
130e 遮熱チューブの後端向き面
130i 遮熱チューブの側壁
132s 加締め部
140 締結部材
150、152、154 チューブキャップ
150h、152h、154h リード線挿通孔
150a チューブキャップの先端向き面
152w、154t チューブキャップの挿入部
160 ケース
192 センサ素子
200 センサ本体部
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5