【実施例1】
【0012】
<構成>以下、構成について説明する。
先ず、建物について説明する。
【0013】
住宅などの建物を、予め工場で製造した建物ユニットを現場へ輸送して、現場で組み立てることにより、短期間で構築できるようにしたユニット建物などとする。
【0014】
図1に示すように、この建物1を、4本の金属製の柱2の上端部間に4本の金属製の天井梁3を矩形状に取付けると共に、この4本の金属製の柱2の下端部間に4本の金属製の床梁4を矩形状に取付けてなる直方体状のユニットフレームを備えた建物ユニット11,12を複数組み合わせて構成される鉄骨系のユニット建物とする。
【0015】
ここで、柱2は、上下方向zへ延びる矩形断面の角型鋼管(管体)で主に構成されている。天井梁3および床梁4は、水平方向(桁方向xおよび妻方向y)へ延びる溝形鋼で主に構成されている。溝形鋼はユニットフレームの内側へ開くほぼC字状の断面を有している。柱2と、天井梁3および床梁4とは、例えば、ジョイントピースを介して溶接固定されている。
【0016】
そして、鉄骨系のユニット建物は、複数の建物ユニット11,12を上下に積み重ねた状態で、
図2(
図3)に示すように、上下の柱2を締結部材13でボルト締結することによって連結する。
【0017】
この際、下側の建物ユニット11の柱2(一方の管体)が、その端面(上端面)に締結部材13を螺着可能な締結孔部14を有し、上側の建物ユニット12の柱2(他方の管体)が、その端面(下端面)に締結部材13を通す通孔15を有している。
【0018】
次に、締結孔部14および締結部材13の周辺構造について説明する。
【0019】
建物ユニット11,12の柱2の上下の端面には、
図3に示すように、金属製の端板21,22が溶接などによって取付けられている。金属製の端板21,22は、対向部が互いに当接可能な平坦面となっている。
【0020】
そして、建物ユニット11,12(例えば、下側の建物ユニット11)の柱2の上端面(の端板21)は、上下方向zに貫通する貫通孔23を有している。端板21の下面側には、ナット部材24が溶接などによって取付けられている。貫通孔23およびナット部材24には、位置決め部材25が装着されている。
【0021】
貫通孔23は、端板21の中心位置に設けられている。ナット部材24は、貫通孔23と同径の雌ネジ部24aを有して、貫通孔23と同心に取付けられている。
【0022】
位置決め部材25は、貫通孔23および雌ネジ部24aよりも大径の頭部25aと、貫通孔23などと同径の胴部25bとを有しており、胴部25bに雄ネジ部25cを設けることでネジ部材(位置決め用ネジ部材)となっている。このように、位置決め部材25をネジ部材とすることにより、位置決め部材25を端板21に対して正確且つ確実に取付けることが可能になる。
【0023】
位置決め部材25の頭部25aは、平面視で多角形状(例えば、六角形状)をした外周面部を有すると共に、外周面部の上側に上方へ向かって細くなる截頭円錐面状のガイドテーパ部25dを有している。そして、頭部25aの頂面に上記した締結孔部14が設けられている。締結孔部14は、貫通孔23などと同心で、頭部25aの上下寸法よりも深い雌ネジ孔となっている。なお、頭部25aの外周面部は、平面視で円形や小判型などとしても良い。
【0024】
また、位置決め部材25の頭部25aは、後述するように、上側の柱2の位置決めを行い得るようになっている。このように、位置決め部材25の胴部25bよりも大径の頭部25aを位置決めに用いることで、位置決め精度を向上することができる。
【0025】
位置決め部材25の胴部25bは、上側に貫通孔23とほぼ同径でほぼ同一長さの円柱状部分を有しても良い。この場合、位置決め部材25の雄ネジ部25cは、円柱状部分の下側に位置してナット部材24の雌ネジ部24aへ螺着可能なものとされる。なお、胴部25bは、円柱状部分をなくして全体を雄ネジ部25cのみで構成するようにしても良い。
【0026】
そして、建物ユニット11,12(例えば、上側の建物ユニット12)の柱2の下端面(の端板22)は、上下方向zに貫通する貫通孔を位置決め孔28として有している。端板22の上面には、頭部収容部材29が溶接などによって取付けられている。
【0027】
位置決め孔28は、位置決め部材25の頭部25aを若干のクリアランス(例えば、2,3mm程度)を有して収容可能な径(頭部25aの最大径部分とほぼ同じか若干大きい径)で、貫通孔23などと同心に設けられる。
【0028】
頭部収容部材29は、その下面側に、位置決め部材25の頭部25aの位置決め孔28よりも上方へ突出した部分を収容可能な大きさ(内径および深さ)の凹部29aを有する座金部材とされている。凹部29aは、位置決め孔28と同径且つ同心に設けられる。
【0029】
そして、頭部収容部材29には、上記した通孔15が設けられている。通孔15は、頭部収容部材29の上面と凹部29aとの間を上下方向zに連通する連通孔となっている。通孔15は、位置決め孔28と同心で且つ位置決め孔28や貫通孔23よりも小径とされている。
【0030】
締結部材13は、通孔15よりも大径の頭部13aと、通孔15とほぼ同径の胴部13bを有しており、胴部13bに雄ネジ部25cを設けることでネジ部材となっている。締結部材13の頭部13aは、六角形状や円形状など、どのような形状としても良い。締結部材13の胴部13bは、上側に通孔15とほぼ同径でほぼ同一長さの円柱状部分を有しても良い。この場合、締結部材13の雄ネジ部13cは、円柱状部分の下側に位置して位置決め部材25の締結孔部14へ螺着可能なものとされる。なお、胴部13bは、円柱状部分をなくして全体を雄ネジ部13cのみで構成するようにしても良い。
【0031】
次に、上下の柱2のボルト締結について説明する(以下、
図2、
図3も併せて参照)。
【0032】
まず、工場で、建物ユニット11,12の柱2の上端部と下端部に対し、端板21,22をそれぞれ溶接などによって取付ける。この際、
図4Aに示すように、柱2の上端部の端板21の下面に、予め溶接などによってナット部材24を取付けておく。そして、
図4Bに示すように、端板21の貫通孔23とナット部材24の雌ネジ部24aに対して上方から位置決め部材25を螺着する。同様に、柱2の下端部の端板22の上面には、予め溶接などによって頭部収容部材29を取付けておく。
【0033】
次に、建築現場で建物ユニット11,12を組み立てる(
図1参照)。この際、下側の建物ユニット11の上に上側の建物ユニット12を積み重ねて、下側の建物ユニット11の柱2と、上側の建物ユニット12の柱2とを位置合わせする。
【0034】
下側の建物ユニット11の柱2と上側の建物ユニット12の柱2との位置合わせは、
図4Cに示すように、下側の柱2の上端部から突出した位置決め部材25の頭部25aを、上側の柱2の下端部に設けた位置決め孔28および頭部収容部材29の凹部29aへ収容することによって行う。この頭部25aの位置決め孔28および凹部29aへの収容によって、水平方向の位置決めが行われる。この際、頭部25aの外周部の上側にガイドテーパ部25dを設けたことによって、頭部25aと位置決め孔28および凹部29aとの嵌合をガイドテーパ部25dで案内することができる。
【0035】
最後に、
図4D、
図4Eに順に示すように、下側の建物ユニット11の柱2と、上側の建物ユニット12の柱2とをボルト締結する。ボルト締結には、締結部材13を用いる。締結部材13は、通孔15を通して位置決め部材25の頭部25aに設けた締結孔部14(雌ネジ孔)へ上方から螺着する。この際、締結部材13は、長尺締結工具31などの締結工具(
図4D参照)にセット(装着)した状態で、
図5に示すように、上側の建物ユニット12の柱2の上端部から上側の柱2の内部へ挿入すると共に、上側の建物ユニット12の柱2の上端部の位置から長尺締結工具31を操作することで、建物ユニット12の高さ分だけ離れた下側に位置する締結孔部14へ締結することになる。
【0036】
そして、以上のような基本的または全体的な構成に対し、この実施例は、以下のような構成を備えている。
【0037】
(1)先ず、長尺締結工具31について説明する。
図6(a)(b)に示すように、長尺締結工具31は、角型断面を有する長尺の工具本体32を有している。この工具本体32が、熱処理された高強度鋼材で構成される。そして、
図7に示すように、工具本体32は、先端部に長尺締結工具31を回転可能な回転伝達部を有している。
【0038】
ここで、長尺締結工具31は、長尺締結工具31を操作する位置からボルト締結箇所(締結孔部14および通孔15)まで達する長さを有するものとする。そのため、長尺締結工具31は、少なくとも建物ユニット11,12一基分の高さと同じかそれよりも長いものとなる。例えば、長尺締結工具31は、ほぼ2500mm〜3000mmの長さのものとなる。これにより、長尺締結工具31は、建物ユニット11,12専用のユニット締結用工具などとすることができる。
【0039】
角型断面は、3角形以上の多角形断面とすることができる。この実施例では、例えば、六角形断面などとしている。工具本体32は、全長に渡って同一断面(同じ形状および同じ太さ)を有して直線的に延びる棒状のものとすることができる。
【0040】
熱処理された高強度鋼材には、例えば、例えば、クロムバナジウム鋼またはクロムモリブデン鋼などの機械構造用合金鋼材料を使用することができる。
【0041】
工具本体32の先端部は、締結部材13を取付ける側の端部のことである。これに対し、工具本体32の基端部は、ボルト締結力を加える側の端部のことである。この実施例の場合には、先端部が下端部となり、基端部が上端部となるように使用している。
【0042】
そして、回転伝達部は、主に、長尺締結工具31を直接回転可能なものを想定している。長尺締結工具31は、長尺の工具本体32を角型断面とすることにより、工具本体32の先端部を、そのまま工具本体32の回転を締結部材13へ伝達可能な回転伝達部としている。
【0043】
(2)また、工具本体32は、先端部に長尺締結工具31を保持可能な締結部材保持部33を有しても良い。締結部材保持部33は、
図8Aに示すように、工具本体32の先端部側面から突出収納可能なプランジャ部34としても良い。
【0044】
ここで、締結部材保持部33は、締結部材13を工具本体32から外れないように工具本体32の長手方向に保持するものである(抜け止め部)。締結部材保持部33は、締結部材13を確実に長手方向に保持できるのであればどのようなものとしても良い。締結部材保持部33は、例えば、工具本体32を磁化して工具本体32の先端部を、締結部材13を磁力で吸着保持可能なマグネットなどとしても良い。
【0045】
プランジャ部34は、位置決めや保持などのために用いられている機械的部品または機械的構成である。プランジャ部34は、工具本体32の先端部側面に対して突出収納可能に設置された突起部34aと、この突起部34aを突出方向へ常時付勢するバネなどとを有するボールプランジャなどとすることができる。プランジャ部34は、工具本体32の先端部における、締結部材13へ嵌合する部分に設ける。なお、プランジャ部34は工具本体32のマグネット化などと組み合わせることができる。
【0046】
(3)工具本体32は、熱処理による焼戻し硬さが43HRC〜45HRCのものとするのが好ましい。
【0047】
ここで、HRCは、ロックウェル硬さの単位である。工具本体32の焼戻し硬さを上記値とすることにより、工具本体32は、締結部材13の頭部13aより細くしても所要の剛性が確保されて、ねじれや撓みなどの変形が発生し難いものとなるので、工具本体32の基端側に加えた力を効率良く先端部に伝えて、離れた位置に対する締結部材13のボルト締結を容易に行うことが可能になる。
【0048】
(4)
図6に示すように、工具本体32は、基端側にトルクレンチ41を装着可能なレンチ嵌合部42を有しても良い。
【0049】
ここで、トルクレンチ41は、規定のトルク値で締め付けるための工具のことである。レンチ嵌合部42は、トルクレンチ41を装着して使用できるようにするための部分のことである。レンチ嵌合部42は、少なくとも工具本体32の基端側に有していれば良いが、上記したように工具本体32を角型断面のものとすることで、工具本体32は全体がトルクレンチ41を直接装着可能なレンチ嵌合部42となる。
【0050】
(5)
図8Bに示すように、工具本体32は、先端部に締結部材13の外周面部を保持すると共に、締結部材13を回転可能なソケット部49を、着脱可能に設置できるようにしても良い。
【0051】
ここで、ソケット部49は、工具本体32の側に、工具本体32の先端部を嵌合可能な角穴49aおよびプランジャ部34(の突起部34a)を収容可能な凹部49bを有し、締結部材13の側に、締結部材13の外周面部に外嵌可能で、締結部材13を回転可能な凹部49c(回転伝達部)を有するものとすることができる。角穴49aは、締結部材13の頭部13aに設ける角穴51と同じものとする。凹部49bは、締結部材13の角穴51に設ける凹部52と同じものとする。凹部49cは、締結部材13の頭部13aの外周面部と同じ形状および大きさとする。ソケット部49は、例えば、マグネット化することによって、締結部材保持部としての機能を持たせることができる。なお、工具本体32のプランジャ部34(の突起部34a)を収容可能な凹部49bについては、例えば、ソケット部49をマグネット化すれば、必ずしも角穴49a内に設ける必要はない。
【0052】
また、ソケット部49は、締結部材保持部として、例えば、凹部49cの内側に突出収納可能なプランジャ部49dを設けることができる。プランジャ部49dは、上記したプランジャ部34と同様のものとすることができる。または、ソケット部49は、締結部材保持部として、摩擦力が大きく圧縮が可能なゴムや発泡ウレタンなどの弾性体などを凹部49cの内側に貼り付けることができる。あるいは、プランジャ部49dや弾性体などと同様の構成は、ソケット部49に装着する締結部材13の外周面部の側に設けることもできる。
【0053】
また、ソケット部49は、締結部材13の外周面部の大きさや形状に合わせて、大きさの異なるものを複数用意することができる。この場合、角穴49a、凹部49cは、六角穴などとすることができる。
【0054】
(6)工具本体32は、基端側に位置測定部45を有しても良い。
【0055】
ここで、位置測定部45は、寸法目盛りなどとすることができる。寸法目盛りは、工具本体32の基端側の側面に沿って直接刻設するようにしても良いし、または、工具本体32の基端側に沿って物差しや差し金などの測定具を取付けるようにしても良い。
【0056】
(7)工具本体32は、先端側に照明部47を有しても良い。
【0057】
ここで、照明部47は、工具本体32の先端部およびその周辺を照らすことができるものとする。照明部47には、LED照明などを用いることができる。照明部47は、所要の明るさを有すると共に、可能な限り小型のものを使用するのが好ましい。照明部47は、工具本体32の先端側に、バンドなどの固定部材やマグネットや接着剤などを用いて固定することができる。
【0058】
なお、上記した(1)〜(7)の各構成は、必要に応じて適宜組み合わせることが可能である。
【0059】
(8)次に、管体締結構造について説明する。この実施例の管体締結構造は、
図2に示すように、一対の管体を、端面どうしを突き合わせて締結部材13で締結するものである。
一方の管体が端面に締結部材13を螺着可能な締結孔部14を有し、他方の管体が端面に締結部材13を通す通孔15を有する。
そして、締結部材13を、上記した長尺締結工具31の先端部にて保持可能なものとする。
【0060】
ここで、管体は、主に、建物ユニット11,12の柱2を対象としている。但し、管体は建物ユニット11,12の柱2に限るものではない。
【0061】
端面は、管体(柱2など)の端部に取付けた端板21,22のことである。締結部材13については後述する。締結孔部14は、上記したように、位置決め部材25の頭部25aに設けた雌ネジ孔となる。通孔15は、上記したように、他方の管体の端部に取付けた頭部収容部材29の上面と凹部29aとの間を上下方向zに連通する連通孔となる。
【0062】
長尺締結工具31の先端部にて保持可能な締結部材13は、長尺締結工具31の先端部の形状に応じた締結具(長尺締結工具用締結部材)などとなる。長尺締結工具用締結部材は、長尺締結工具31の先端部によって保持できるのであれば、どのようなものでも良いが、好ましくは、以下のようなものとする。なお、長尺締結工具用締結部材は、長尺締結工具31によって締結作業が行い得る程度に保持されるものとする。
【0063】
(9)
図9に示すように、締結部材13は、長尺締結工具31の先端部を嵌合可能な角穴51を有しても良い。
【0064】
ここで、角穴51は、締結部材13の頭部13aの頂面に設けられる。角穴51は、長尺締結工具31の工具本体32の断面形状と同じ形状および同じ大きさのものとする。この実施例では、例えば、六角形状の角穴51などとなる。
【0065】
(10)締結部材13が、角穴51の内部に、長尺締結工具31の先端部側面に突出収納可能に設けたプランジャ部34を収容可能な凹部52を有しても良い。
【0066】
ここで、凹部52は、プランジャ部34の突起部34aを収容可能な溝部などとすることができる。この溝部は、プランジャ部34の突起部34aと同じ形状のもの(例えば、半球状の孔)としても良いし、または、突起部34aよりも若干大きいもの(例えば、半円筒状の溝孔)などとしても良い。この溝部は、角穴51の面のうちの少なくとも1つに設けるようにすれば良いが、プランジャ部34と凹部52との位置合わせの煩わしさをなくすためには、角穴51の全ての面に対して設けるのが好ましい。これにより、凹部52は、角穴51の周方向へ連続または不連続に延びる周溝などとなる。
【0067】
(11)以下、建物1について説明する。この実施例の建物1は、上記した管体締結構造を有するものとする。
【0068】
ここで、建物1は、既に上記したような下側の建物ユニット11の柱2と、上側の建物ユニット12の柱2とをボルト締結することで連結するようにしたユニット建物とするのが最も好ましいが、上記した管体締結構造を有していれば、どのようなものであっても良い。例えば、中空の柱2をボルト締結によって連結する構造を有する鉄骨系の建物1とすることができる。
【0069】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0070】
長尺締結工具31を使用する場合には、工具本体32の先端部に締結部材13をセットする。この際、締結部材13の角穴51へ工具本体32の先端部を差し込むことによって、工具本体32の先端部に締結部材13を保持させる。即ち、締結部材13の角穴51に工具本体32の先端部を差し込むと、工具本体32の先端部側面に設けた締結部材保持部33としてのプランジャ部34の突起部34aが、角穴51内で適宜収納動および突出動して、バネなどの付勢力によって角穴51の内面を押圧することになる。このプランジャ部34の押圧力によって締結部材13は内側から保持される。更に、プランジャ部34が、角穴51の内部に設けた凹部52へ嵌合することによって、締結部材13は工具本体32の先端部に確実に係止保持される。
【0071】
こうして、工具本体32の先端部に締結部材13をセットしたら、工具本体32の先端側の照明部47を点灯して、
図5に示すように、上側の建物ユニット12の柱2の上端側から、上側の柱2の内部へ工具本体32を挿入して、
図4D、
図4Eに示すように、上側の柱2の下端部の通孔15を通して下側の柱2の上端側の締結孔部14へ締結部材13を螺着する。この際、工具本体32の焼戻し硬さを43HRC〜45HRCとすることで、工具本体32の剛性を高めて、工具本体32を最大限に細型化することができる。よって、長尺締結工具31を通すための専用の工具孔を不要化して、
図10に示すような、上側の柱2の上端部(の端板21)に設けた貫通孔23から長尺締結工具31を挿入することが可能になる。
【0072】
また、工具本体32を細型化したことや、工具本体32の先端側に照明部47を取付けていることなどから、
図11に示すように、通孔15を目視しながら締結孔部14への締結部材13の挿入作業を行うことが可能になる。そして、上側の柱2の上端部(の端板21)から専用の工具孔をなくして貫通孔23のみとすることで、その分、貫通孔23を大きくすることができ、且つ、貫通孔23を端板21の中心位置に配置することができる。よって、貫通孔23を大きくして大きめのナット部材24を取付けた分だけ、下側の建物ユニット11の柱2の上端面の剛性を向上することができる。
【0073】
そして、締結孔部14に対する締結部材13の締結作業は、工具本体32の基端側のレンチ嵌合部42にトルクレンチ41を嵌合した状態でトルクレンチ41を用いて行う。これにより、締結部材13は、規定のトルク値で締め付けられる。締結部材13の締め付け力が規定のトルク値となったら、工具本体32の基端側に設けた位置測定部45でその時の工具本体32の基端部の位置(または高さ)を測定する。次に、締結部材13の角穴51から工具本体32の先端部を引き抜いて、
図12に示すように、工具本体32の先端部を頭部収容部材29の上面に当接する。そして、この時の工具本体32の基端部の位置(または高さ)を位置測定部45で測定する。なお、上記した各位置の測定は、例えば、
図13に示すように、上側の柱2の上端部の位置を基準にして測定することができる。この場合には、位置測定部45は、上側の柱2の上端部の位置周辺に設けるようにする。
【0074】
最後に、2つの測定値を比較する。2つの測定値の差が締結部材13の頭部13aの上下寸法から角穴51の深さを引いた残りの寸法と一致したら、ボルト締結が正しくなされたことになる。
【0075】
このようにすることで、締結部材13の締め付け力と、締結部材13の締め付け位置との二重チェックによりボルト締結の合否判定を行い、判定精度を上げると共に、締結対象物(柱2や管体など)に製品バラ付きによる微妙な誤差があっても正確な測定を行うことが可能になる。
【0076】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0077】
(効果1)長尺締結工具31は、工具本体32を角型断面の長尺材にした。これにより、工具本体32は、離れた位置にある締結孔部14に対して(角穴51を有する)締結部材13の締結を行うのに、構成を追加することなくそのまま使うことができる。
【0078】
即ち、工具本体32を角型断面とすることにより、工具本体32の先端部が、そのまま締結部材13を直接セットして締結作業を行うことが可能な回転伝達部となるため、締結部材13を締結するための治具や機構などの構成を工具本体32に対して別途取付ける必要をなくすことができ、長尺締結工具31を構造が簡易で安価なものとすることができる。また、締結部材13を締結するための治具や機構などの構成を取付けるために溶接などを行う必要のない構造とすることができ、これにより、長尺締結工具31を熱処理された高強度鋼材(例えば、クロムバナジウム鋼またはクロムモリブデン鋼などの機械構造用合金鋼材料)で構成することが可能になる。
【0079】
そして、工具本体32を熱処理された高強度鋼材で構成することで、工具本体32を軽量化しつつ剛性を高めて、工具本体32を締結部材13の角穴51の大きさにまで細型化することができる。そのため、長尺締結工具31が、軽くて扱い易く使い勝手の良いものになると共に、工具本体32や工具本体32の先端部が視界の妨げになり難くい太さとなることから、離れた位置にある通孔15や締結孔部14やその周辺部を目視確認することも可能となり、作業効率を向上して、作業時間を短縮できるようになる。例えば、通孔15などを直接目視確認できることで、締結孔部14に対して締結部材13を締結するのに要する時間が短くなり、施工性が良くなる。また、例えば、締結孔部14に対して締結部材13を締結できなかった際の原因特定が容易にできるので、対処時間が短くなる。
【0080】
また、工具本体32を細型化して締結孔部14を直接目視確認できるようにすることで、手探り作業をなくせるので、手探り作業を補助するためのガイド機構なども設ける必要をなくすことができる。
【0081】
(効果2)工具本体32は、先端部に長尺締結工具31を保持可能な締結部材保持部33を有しても良い。これにより、締結部材保持部33によって、長尺締結工具31を工具本体32の先端部に保持することができる。よって安定した状態で締結作業を行うことができる。
【0082】
特に、工具本体32の先端部側面に締結部材保持部33として、プランジャ部34を突出収納可能に設けても良い。これにより、工具本体32の先端部に締結部材13をセットするだけで、締結部材13をプランジャ部34によって簡単確実に係止保持して締結部材13の脱落を防止することができる。よって安定した状態で確実に締結作業を行うことができる。また、プランジャ部34は、構造が簡単で小型なものであるため、工具本体32の先端部にボルト締結作業の妨げとならないように容易に設置することができる。
【0083】
(効果3)工具本体32の焼戻し硬さは、43HRC〜45HRCとするのが好ましい。これにより、工具本体32の剛性を高めて、工具本体32を最大限に細型化することができる。
【0084】
(効果4)工具本体32の基端部にトルクレンチ41を装着可能なレンチ嵌合部42を設けても良い。これにより、工具本体32の基端部に直接トルクレンチ41を装着してボルト締結を行うと共に、トルクレンチ41で締め付けトルクの管理を行うことができる。
【0085】
(効果5)工具本体32は、先端部に締結部材13の外周面部を保持すると共に、締結部材13を回転可能なソケット部49を着脱可能に備えても良い。これにより、ソケット部49を用いることで、角穴51を有していない締結部材13を用いた管体締結構造の締結も(同一の長尺締結工具31によって)取り扱うことが可能になる。
【0086】
例えば、
図14に示すように、下側の柱2の上端部が端板21および(端板21に溶接固定された)ナット部材24のみで構成され、上側の柱2の下端部が端板22のみで構成されて、端板22の位置決め孔28を通孔15にして上方から締結部材13としてのネジ部材13Aをナット部材24へ螺着するようにした管体締結構造の場合に、長尺締結工具31の先端部にソケット部49を取付けることで、対応することができるようになる。なお、
図14の管体締結構造の場合には、角穴51を有するネジ部材(締結部材13)を用いることもできるので、その場合にはソケット部49は必要ない。
【0087】
また、例えば、
図15に示すように、下側の柱2の上端部が端板21および(端板21に溶接固定された)ナット部材24に対して位置決め部材25として(上下に分かれたネジ部を有する)無頭のネジ部材25A(位置決め用ネジ部材)に形成された下側のネジ部を上方から螺着した構成とされ、上側の柱2の下端部が端板22のみで構成されて、端板22の位置決め孔28から突出したネジ部材25Aに形成された上側のネジ部に上方から締結部材13としてのナット部材13Bを螺着するようにした管体締結構造の場合などに、長尺締結工具31の先端部にソケット部49を取付けることで、対応することができるようになる。なお、
図14のネジ部材13Aや
図15のナット部材13Bの外周面部には、ソケット部49のプランジャ部49dを収容可能な凹部を設けても良い。
【0088】
(効果6)工具本体32の基端側に位置測定部45を設けても良い。これにより、位置測定部45で締結後の高さを正確に測定することができる。よって、締結対象物(柱2や管体など)に製品バラ付きによる微妙な誤差がある場合でも、誤差の影響を受けずに正確に締結状態の合否を判定することができる。
【0089】
(効果7)工具本体32の先端側に照明部47を設けても良い。これにより、照明部47で工具本体32の先端部を照らすことで、離れた暗い場所でも、締結孔部14の位置や、締結作業の過程や、締結後の状態などを明瞭に目視確認することが可能になる。また、照明部47を小型のものにすることで、工具本体32の先端部を目視する際に視界の妨げになり難くすることができる。
【0090】
(効果8)管体締結構造は、一対の管体を、長尺締結工具31を用いて締結部材13で締結固定したものである。この際、締結部材13に、長尺締結工具31の先端部にて保持可能なものを使用する。これにより、長尺締結工具31によって、支障なくボルト締結作業を行うことができる。
【0091】
そして、一対の管体を、端面どうしを突き合わせ(て位置合わせし)た後に、別部品で構成した締結部材13を用いて締結することにより、例えば、管体の一方の端面に予め締結部材13が一体に取付けられている場合のように、一対の管体の端面どうしを突き合わせる際に、締結部材13(のネジ山など)が損傷してしまうおそれがなくなり、締結部材13の損傷を確実に防止することができる。
【0092】
また、一対の管体が、傾いた状態で突き合わせられてしまったような場合であっても、突き合わせ状態が正しくなるように徐々に修正しながら締結部材13を螺着して行くようにすれば、一対の管体を確実にボルト締結することが可能となる。
【0093】
(効果9)締結部材13は、角穴51を有しても良い。これにより、角型断面を有する長尺締結工具31の先端部を締結部材13の角穴51へ嵌合することができると共に、長尺締結工具31の先端部を締結部材13の角穴51へ嵌合することで、長尺締結工具31のプランジャ部34の押圧力によって締結部材13を保持することができ、長尺締結工具31を用いて締結部材13を締結孔部14へ締め込む作業を効率良く行うことが可能になる。
【0094】
(効果10)締結部材13の角穴51の内部に凹部52を設けても良い。これにより、凹部52へ長尺締結工具31の先端部側面に突出収納可能に設けたプランジャ部34を収容することができる。よって、締結部材13はプランジャ部34が凹部52へ入ることによって係止され、長尺締結工具31の先端部から不用意に脱落しないように締結部材13を確実に保持することができる。
【0095】
(効果11)建物1は、上記管体締結構造を備えることにより、管体締結構造と同様の作用効果を得ることができる。即ち、建物1の上下方向zに対する力の伝達は、柱2を介して行われるため、上下の柱2の間に、上記管体締結構造を用いることで、理想的な構造を得ることができる。
【0096】
これに対し、上記管体締結構造を用いない場合には、上下の梁(下側の建物ユニット11の天井梁3と上側の建物ユニット12の床梁4)どうしを締結する必要があるが、このようにすると、上下の梁どうしの締結スペースを確保するために、床のコーナー部に切欠部などを設ける必要があった。しかし、床のコーナー部に切欠部を設けた場合、狭い締結スペースでの上下の梁どうしの締結作業や、締結後に切欠部を塞ぐ作業などが必要になるため、現場負担が大きくなっていた。しかも、上記各作業が終了するまでは、切欠部の周辺を空けておく必要があるため、切欠部の周辺に設ける設備は、上記各作業が終了するまでの間施工を待たなければならなかったので、その分、作業工程に無駄が生じたり、工期が遅くなって現場負担が増加したりするなどの問題を生じることになる。
【0097】
この際、建物1が複数の建物ユニット11,12で構成されるユニット建物である場合に、上記した長尺締結工具31を用いることで、上側の建物ユニット12の柱2の上端側から目視しながらのボルト締結作業が可能になるので、上側の建物ユニット12の柱2の内部を通して、上側の建物ユニット12の柱2の下端面と下側の建物ユニット11の柱2の上端面とをボルト締結する作業が容易になる。また、上側の建物ユニット12の柱2の上端側からボルト締結が確実に行われていることを確認することができる。
【0098】
しかも、長尺締結工具31は、細型化されているため、長尺締結工具31を、上側の建物ユニット12の柱2の上端面に設けた貫通孔23へ通して使用することができ、長尺締結工具31を通すための専用の工具孔を不要化できるので、上側の建物ユニット12の柱2の上端面の剛性低下を防止することができる。よって、その分、上側の建物ユニット12の柱2の上端面の板厚を薄くすることができる。