(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
未加硫タイヤの下サイドウォール部を主に型付けする下モールドの上方に設置され、未加硫タイヤの上サイドウォール部を主に型付けする上モールドを接離機構により下降させて、該上モールドを下モールドに接近させる一方、下、上モールドの半径方向外側に設置され、未加硫タイヤのトレッド部を主に型付けするとともに、周方向に並べられた複数の弧状を呈するセクターモールドを同期移動機構により半径方向内側に同期移動させることで、これら下、上モールドおよびセクターモールドからなる加硫金型を閉止し、該加硫金型内に未加硫タイヤを収納する工程と、前記加硫金型により未加硫タイヤを加硫し、前記セクターモールドに設けられ、基端部が該セクターモールドに埋設されるとともに、残部がセクターモールドの型付け面から突出した薄肉の細溝ブレードによりトレッド部に細溝を設ける一方、前記細溝ブレードの突出部に複数形成され、その先端から型付け面に向かって延びるスリットにより、細溝の両側側壁同士を一体的に繋ぐ橋渡し体を形成する工程と、前記加硫後にタイヤを加硫金型から脱型する工程とを備え、該タイヤを加硫金型から脱型する際、前記スリットの長手方向一側に設けられ、長手方向に対して一方向に傾斜した帯板状の一側舌片と、前記スリットの長手方向他側に設けられ、長手方向に対して他方向に傾斜した帯板状の他側舌片とが前記スリットを介して形成された細溝ブレードの前記一側舌片と他側舌片との先端部同士を、細溝ブレードの倒れ込みによって接近させることで、前記橋渡し体に半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体を細溝の幅方向に分割するとともに、その両側壁同士が密着している切れ目を形成するようにしたことを特徴とするタイヤ加硫方法。
未加硫タイヤの下サイドウォール部を主に型付けする下モールドの上方に設置され、未加硫タイヤの上サイドウォール部を主に型付けする上モールドを接離機構により下降させて、該上モールドを下モールドに接近させる一方、下、上モールドの半径方向外側に設置され、未加硫タイヤのトレッド部を主に型付けするとともに、周方向に並べられた複数の弧状を呈するセクターモールドを同期移動機構により半径方向内側に同期移動させることで、これら下、上モールドおよびセクターモールドからなる加硫金型を閉止し、該加硫金型内に未加硫タイヤを収納する工程と、前記加硫金型により未加硫タイヤを加硫し、前記セクターモールドに設けられ、基端部が該セクターモールドに埋設されるとともに、残部がセクターモールドの型付け面から突出し、薄肉である複数のブレード片を重なり合わせることで構成された薄肉の細溝ブレードによりトレッド部に細溝を設ける一方、2枚のブレード片が重なり合った重合部に形成された肉厚方向に延びる貫通孔により、細溝の両側側壁同士を一体的に繋ぐ橋渡し体を形成する工程と、前記加硫後にタイヤを加硫金型から脱型する工程とを備え、該タイヤを加硫金型から脱型する際、前記細溝ブレードの倒れ込みによりブレード片同士が高さ方向にずれることで、前記橋渡し体に半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体を細溝の幅方向に分割するとともに、その両側壁同士が密着している切れ目を形成するようにしたことを特徴とするタイヤ加硫方法。
未加硫タイヤの下サイドウォール部を主に型付けする下モールドと、該下モールドの上方に設置され、未加硫タイヤの上サイドウォール部を主に型付けする上モールドと、該上モールドを下モールドに接近離隔させる接離機構と、下、上モールドの半径方向外側に設置され、未加硫タイヤのトレッド部を主に型付けするとともに、周方向に並べられた複数の弧状を呈するセクターモールドと、該セクターモールドを半径方向内側に同期移動させることで、前記下、上モールドおよびセクターモールドからなる加硫金型を閉止し、該加硫金型内に収納された前記未加硫タイヤを加硫するようにした同期移動機構とを備え、前記セクターモールドに基端部が埋設され、残部がセクターモールドの型付け面から突出した薄肉の細溝ブレードを設けるとともに、該細溝ブレードの突出部にその先端から型付け面に向かって延びる複数のスリットを形成し、該細溝ブレードによってトレッド部に細溝を設けるとともに、スリットによって細溝の両側側壁同士を一体的に繋ぐ橋渡し体を形成するようにしたタイヤ加硫装置において、前記細溝ブレードに、前記スリットの長手方向一側に設けられ、長手方向に対して一方向に傾斜した帯板状の一側舌片と、前記スリットの長手方向他側に設けられ、長手方向に対して他方向に傾斜した帯板状の他側舌片とをスリットを介して形成し、加硫後にタイヤを加硫金型から脱型する際、前記細溝ブレードの一側舌片と他側舌片との先端部同士を細溝ブレードの倒れ込みによって接近させることで、前記橋渡し体に半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体を細溝の幅方向に分割するとともに、その両側壁同士が密着している切れ目を形成するようにしたことを特徴とするタイヤ加硫装置。
未加硫タイヤの下サイドウォール部を主に型付けする下モールドと、該下モールドの上方に設置され、未加硫タイヤの上サイドウォール部を主に型付けする上モールドと、該上モールドを下モールドに接近離隔させる接離機構と、下、上モールドの半径方向外側に設置され、未加硫タイヤのトレッド部を主に型付けするとともに、周方向に並べられた複数の弧状を呈するセクターモールドと、該セクターモールドを半径方向内側に同期移動させることで、前記下、上モールドおよびセクターモールドからなる加硫金型を閉止し、該加硫金型内に収納された前記未加硫タイヤを加硫するようにした同期移動機構とを備え、前記セクターモールドに基端部が埋設され、残部がセクターモールドの型付け面から突出した薄肉の細溝ブレードを設け、該細溝ブレードによってトレッド部に細溝を設けるようにしたタイヤ加硫装置において、前記細溝ブレードを、薄肉である複数のブレード片を重なり合わせることで構成するとともに、2枚のブレード片が重なり合った重合部に肉厚方向に延びる貫通孔を形成することで、細溝の両側側壁同士を一体的に繋ぐ橋渡し体を形成する一方、加硫後にタイヤを加硫金型から脱型する際、前記細溝ブレードが倒れ込んでブレード片同士が高さ方向にずれることで、前記橋渡し体に半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体を細溝の幅方向に分割するとともに、その両側壁同士が密着している切れ目を形成するようにしたことを特徴とするタイヤ加硫装置。
前記重合部における貫通孔を2枚のブレード片にそれぞれ形成された片側孔から構成するとともに、少なくともいずれか一方のブレード片に形成された片側孔を2枚のブレード片が接する内面に向かうに従い先細りとした請求項4または7記載のタイヤ加硫装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年、車両走行時の安全性、快適性がさらに求められるようになってきたため、本発明者は鋭意研究を重ね、前述のようなタイヤにおいて操縦安定性を維持しながら、排水性、氷雪性、耐ハイドロプレーニング性をさらに向上させることができるタイヤを開発した。
【0006】
この発明は、操縦安定性を維持しながら排水性、氷雪性等をさらに向上させることができるタイヤ並びにタイヤ加硫方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、請求項1に記載のように、トレッド部に形成された陸部に細溝が設けられるとともに、前記細溝に該細溝の両側側壁同士を一体的に繋ぐ橋渡し体を形成したタイヤにおいて、前記橋渡し体にその半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体を細溝の幅方向に分割する切れ目を形成するとともに、該切れ目の両側壁同士を密着させるようにしたタイヤにより、達成することができる。
【0008】
また、請求項2に記載のように、未加硫タイヤの下サイドウォール部を主に型付けする下モールドの上方に設置され、未加硫タイヤの上サイドウォール部を主に型付けする上モールドを接離機構により下降させて、該上モールドを下モールドに接近させる一方、下、上モールドの半径方向外側に設置され、未加硫タイヤのトレッド部を主に型付けするとともに、周方向に並べられた複数の弧状を呈するセクターモールドを同期移動機構により半径方向内側に同期移動させることで、これら下、上モールドおよびセクターモールドからなる加硫金型を閉止し、該加硫金型内に未加硫タイヤを収納する工程と、前記加硫金型により未加硫タイヤを加硫し、前記セクターモールドに設けられ、基端部が該セクターモールドに埋設されるとともに、残部がセクターモールドの型付け面から突出した薄肉の細溝ブレードによりトレッド部に細溝を設ける一方、前記細溝ブレードの突出部に複数形成され、その先端から型付け面に向かって延びるスリットにより、細溝の両側側壁同士を一体的に繋ぐ橋渡し体を形成する工程と、前記加硫後にタイヤを加硫金型から脱型する工程とを備え、該タイヤを加硫金型から脱型する際、前記スリットの長手方向一側に設けられ、長手方向に対して一方向に傾斜した帯板状の一側舌片と、前記スリットの長手方向他側に設けられ、長手方向に対して他方向に傾斜した帯板状の他側舌片とが前記スリットを介して形成された細溝ブレードの前記一側舌片と他側舌片との先端部同士を、細溝ブレードの倒れ込みによって接近させることで、前記橋渡し体に半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体を細溝の幅方向に分割するとともに、その両側壁同士が密着している切れ目を形成するようにしたタイヤ加硫方法により、達成することができる。
【0009】
さらに、請求項3に記載のように、未加硫タイヤの下サイドウォール部を主に型付けする下モールドの上方に設置され、未加硫タイヤの上サイドウォール部を主に型付けする上モールドを接離機構により下降させて、該上モールドを下モールドに接近させる一方、下、上モールドの半径方向外側に設置され、未加硫タイヤのトレッド部を主に型付けするとともに、周方向に並べられた複数の弧状を呈するセクターモールドを同期移動機構により半径方向内側に同期移動させることで、これら下、上モールドおよびセクターモールドからなる加硫金型を閉止し、該加硫金型内に未加硫タイヤを収納する工程と、前記加硫金型により未加硫タイヤを加硫し、前記セクターモールドに設けられ、基端部が該セクターモールドに埋設されるとともに、残部がセクターモールドの型付け面から突出し、薄肉である複数のブレード片を重なり合わせることで構成された薄肉の細溝ブレードによりトレッド部に細溝を設ける一方、2枚のブレード片が重なり合った重合部に形成された肉厚方向に延びる貫通孔により、細溝の両側側壁同士を一体的に繋ぐ橋渡し体を形成する工程と、前記加硫後にタイヤを加硫金型から脱型する工程とを備え、該タイヤを加硫金型から脱型する際、前記細溝ブレードの倒れ込みによりブレード片同士が高さ方向にずれることで、前記橋渡し体に半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体を細溝の幅方向に分割するとともに、その両側壁同士が密着している切れ目を形成するようにしたタイヤ加硫方法により、達成することができる。
【0010】
また、請求項4に記載のように、未加硫タイヤの下サイドウォール部を主に型付けする下モールドと、該下モールドの上方に設置され、未加硫タイヤの上サイドウォール部を主に型付けする上モールドと、該上モールドを下モールドに接近離隔させる接離機構と、下、上モールドの半径方向外側に設置され、未加硫タイヤのトレッド部を主に型付けするとともに、周方向に並べられた複数の弧状を呈するセクターモールドと、該セクターモールドを半径方向内側に同期移動させることで、前記下、上モールドおよびセクターモールドからなる加硫金型を閉止し、該加硫金型内に収納された前記未加硫タイヤを加硫するようにした同期移動機構とを備え、前記セクターモールドに基端部が埋設され、残部がセクターモールドの型付け面から突出した薄肉の細溝ブレードを設けるとともに、該細溝ブレードの突出部にその先端から型付け面に向かって延びる複数のスリットを形成し、該細溝ブレードによってトレッド部に細溝を設けるとともに、スリットによって細溝の両側側壁同士を一体的に繋ぐ橋渡し体を形成するようにしたタイヤ加硫装置において、前記細溝ブレードに、前記スリットの長手方向一側に設けられ、長手方向に対して一方向に傾斜した帯板状の一側舌片と、前記スリットの長手方向他側に設けられ、長手方向に対して他方向に傾斜した帯板状の他側舌片とをスリットを介して形成し、加硫後にタイヤを加硫金型から脱型する際、前記細溝ブレードの一側舌片と他側舌片との先端部同士を細溝ブレードの倒れ込みによって接近させることで、前記橋渡し体に半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体を細溝の幅方向に分割するとともに、その両側壁同士が密着している切れ目を形成するようにしたタイヤ加硫装置により、達成することができる。
【0011】
さらに、請求項5に記載のように、未加硫タイヤの下サイドウォール部を主に型付けする下モールドと、該下モールドの上方に設置され、未加硫タイヤの上サイドウォール部を主に型付けする上モールドと、該上モールドを下モールドに接近離隔させる接離機構と、下、上モールドの半径方向外側に設置され、未加硫タイヤのトレッド部を主に型付けするとともに、周方向に並べられた複数の弧状を呈するセクターモールドと、該セクターモールドを半径方向内側に同期移動させることで、前記下、上モールドおよびセクターモールドからなる加硫金型を閉止し、該加硫金型内に収納された前記未加硫タイヤを加硫するようにした同期移動機構とを備え、前記セクターモールドに基端部が埋設され、残部がセクターモールドの型付け面から突出した薄肉の細溝ブレードを設け、該細溝ブレードによってトレッド部に細溝を設けるようにしたタイヤ加硫装置において、前記細溝ブレードを、薄肉である複数のブレード片を重なり合わせることで構成するとともに、2枚のブレード片が重なり合った重合部に肉厚方向に延びる貫通孔を形成することで、細溝の両側側壁同士を一体的に繋ぐ橋渡し体を形成する一方、加硫後にタイヤを加硫金型から脱型する際、前記細溝ブレードが倒れ込んでブレード片同士が高さ方向にずれることで、前記橋渡し体に半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体を細溝の幅方向に分割するとともに、その両側壁同士が密着している切れ目を形成するようにしたタイヤ加硫装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明においては、橋渡し体にその半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体を細溝の幅方向に分割する切れ目を形成しているが、該切れ目はその両側壁同士が密着しているので、該橋渡し体は切れ目が形成されていても通常は一体物として機能し、この結果、細溝の両側の陸部は一体的に繋がれて接地時における陸部の倒れ込み量が容易に低減され、これにより、操縦安定性を維持しながら排水性、氷雪性、耐ハイドロプレーニング性を向上させることができる。また、前述した橋渡し体は該橋渡し体により区画された両側の細溝(区画室)の水が互いに流れ込む事態を制限するが、接地時に陸部が倒れ込むことで切れ目が部分的に開いて該切れ目の側壁間に間隙が生じ、これにより、前記橋渡し体の両側の区画室間で水の流れが円滑となる。この結果、両側の区画室に侵入した水の量が異なっている場合には、溢れそうになった区画室から流入量の少ない区画室に前記間隙を通じて水が流れるため、細溝内への水の合計流入量が増加し、これにより、タイヤの排水性等をさらに向上させることができる。
【0013】
また、請求項2〜5に記載のように構成すれば、加硫後においてタイヤを加硫金型から脱型させる際、細溝ブレードによって橋渡し体に前述のような切れ目を脱型作業と同時に自動的に形成することができる。この結果、加硫金型からタイヤを取り出した後に特別な切れ目形成手段を用いて切れ目を形成する必要がなく、作業能率が格段に向上するとともに、装置全体を構造簡単で小型、安価とすることができる。
【0014】
さらに、請求項6に記載のように構成すれば、細溝に切れ目を有する橋渡し体を簡単に複数個設置することができるとともに、細溝のエッジ長を簡単に長くすることもできる。また、請求項7に記載のように構成すれば、スリット間に位置する細溝ブレードの曲げ剛性が低減し、この結果、細溝ブレードが加硫済みタイヤから抜け出る際に該細溝ブレードからトレッド部のゴムに付与される変形力が小さくなり、脱型時におけるゴム変形量を容易に低減させることができる。さらに、請求項8に記載のように構成すれば、細溝ブレードの曲げ剛性が小さくなって脱型時における倒れ込み変形が容易となるとともに、細溝に切れ目が形成された橋渡し体を複数個同時に設置することができる。また、請求項9に記載のように構成すれば、先細りとなった片側孔の内端に鋭角のエッジが形成されるため、貫通孔内のゴムはブレード片の境界において該鋭角エッジにより円滑に切断され、橋渡し体に切断面が綺麗な切れ目を容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2、3、4において、11は乗用車やトラック・バス等の車両に装着されて使用される加硫済みの空気入りタイヤであるが、これらの図面は後述のタイヤ加硫装置との位置関係を理解し易くするため、横置きの状態で描かれている。前記タイヤ11は、
図5に示すように、同軸で環状を呈する一対のビード部12と、該ビード部12から略半径方向外側に向かって延びる一対のサイドウォール部13と、該サイドウォール部13に軸方法両端が連続する略円筒状のトレッド部14とから構成されている。前記トレッド部14の外周面(踏面)にはタイヤ周方向に連続して直線状に延びる複数本(4本)の周溝(主溝)15が形成され、これらの周溝15のうち、半数の2本はタイヤ赤道(トレッドセンター)16の一側に、残りの2本はタイヤ赤道16の他側に該タイヤ赤道16から等距離離れてそれぞれ配置されている。この結果、前記トレッド部14にはトレッド端17と周溝15との間、および、隣接する周溝15間に、周方向に延びるとともにタイヤ幅方向に離れた複数本(5本)のリブ18が画成される。なお、この発明においては、前記周溝は2、3本あるいは5本以上形成されていてもよく、さらには、直線状ではなくジグザグ状に折れ曲がっていてもよい。
【0017】
前述の各リブ18にはタイヤ周方向に離れ直線状に延びる複数の横溝21がそれぞれ形成され、これら横溝21は周溝15に交差しながら互いに平行に延びるとともに、隣接する2つの周溝15をそれぞれ接続しており、この結果、トレッド部14(リブ18)には横溝21によってタイヤ周方向に離れた陸部としての複数のブロック22がそれぞれ形成される。なお、この発明においては、前記横溝21は例えばV字状であったり、ジグザグ状に折れ曲がっていたり、弧状に湾曲していてもよい。また、この発明においては、陸部をタイヤ周方向に連続して延びるリブ、タイヤ周方向に離れたラグ溝間に位置するラグ、あるいは、リブ、ラグ、ブロックの混合から構成してもよい。前記各ブロック22にはほぼタイヤ幅方向に延びる細溝としてのサイプ溝23が周方向に離れて複数本設けられ、これらのサイプ溝23は両端がタイヤ幅方向両側の周溝15にそれぞれ、または、タイヤ幅方向内端が周溝15に、タイヤ幅方向外端がトレッド端17にそれぞれ開口している。なお、この発明においては、前記細溝は少なくとも長手方向片側端が周溝15に開口しているが、長手方向両端が周溝15に届かずブロック22の途中で終了していてもよい。ここで、前記サイプ溝23は接地時に閉じる、即ち、接地領域内においては閉じる一方、接地領域から離脱すると開くもので、その幅は一般的には 0.5mm〜 3mmの範囲内である。
【0018】
また、前記サイプ溝23の長手方向中央部は開口部を含む深さ方向の全領域において、一定の波長、振幅でジグザグ状に屈曲している。このようにサイプ溝23の開口部がジグザグ状に屈曲していると、該サイプ溝23の開口エッジ、即ちブロック22の外表面とサイプ溝23の側壁との交線の長さが長くなって路面のグリップ力が向上し、タイヤの駆動、制動性能が向上する一方、サイプ溝23が深さ方向の全領域においてジグザグ状に屈曲していると、該サイプ溝23の容積が増大して吸い上げる水量が増大する。そして、このようにサイプ溝23の開口部がジグザグ状に屈曲していると、これらサイプ溝23には対応する後述のセクターモールド46において周方向内側(周方向中央に近接する側)に向かう突出端である内側突出端23aと、対応するセクターモールド36において周方向外側(周方向端に近接する側)に向かう突出端である外側突出端23bとが該サイプ溝23の長手方向に交互に繰り返し複数設けられる。なお、この発明においては、サイプ溝23が長手方向の全域でジグザグ状に屈曲していてもよい。
【0019】
26は一側端が前記サイプ溝23のタイヤ周方向一側側壁に、他側端が前記サイプ溝23のタイヤ周方向他側側壁にそれぞれ連続することで、サイプ溝23の両側側壁同士(サイプ溝23の両側に位置するブロック22)を一体的に繋ぐ複数の橋渡し体であり、これらの橋渡し体26はブロック22と同一のゴム種から構成されるとともに、前記内側、外側突出端23a、23bの近傍にそれぞれ設けられている。ここで、前記橋渡し体26は内側、外側突出端23a、23bと重なり合う位置、即ち橋渡し体26の両側面間に内側突出端23aまたは外側突出端23bが位置するよう設けられるとともに、サイプ溝23の長手方向に一定距離だけ、ここではサイプ溝23の波長の 1/2に等しい距離だけ離れて配置することが好ましい。また、これら橋渡し体26はサイプ溝23の開口位置からサイプ溝23の溝底まで延びており、この結果、これら橋渡し体26が突っ張りとなって接地時におけるサイプ溝23の倒れ込みが低減され、タイヤ走行時におけるサイプ溝23の側壁同士の接触が容易に抑制される。これにより、橋渡し体26の容積減少が抑制されるとともに接地面積の減少が抑制され、排水性、氷雪性、耐ハイドロプレーニング性および操縦安定性が向上する。ここで、サイプ溝23の開口端部(半径方向外端部)における橋渡し体26には、
図4に示すような、円柱状を呈する円柱部27が設けられている。
【0020】
また、前述したサイプ溝23の内側、外側突出端23a、23bおよび橋渡し体26は共に、サイプ溝23の開口位置から溝底に向かって同一位相、同一振幅、同一波長でジグザグ状に屈曲している。このように溝底に向かってジグザグ状に屈曲していると、橋渡し体26の長さは、該橋渡し体が溝底に向かって直線状に延びている場合に比較し、長くなり、これにより、橋渡し体26の突っ張り効果が高くなって前述の排水性等がさらに向上する。29は後述のセクターモールド46の周方向両端部に対応する位置に設けられた橋渡し体26のうち、内側突出端23aに設けられた橋渡し体26aに形成された切れ目であり、これらの切れ目29は前記橋渡し体26aの半径方向外端(サイプ溝23では開口)から半径方向内側に向かって延びている。そして、これら切れ目29は橋渡し体26aの厚さ方向中央部(サイプ溝23では幅方向中央部)をサイプ溝23の側壁に沿って延在しているため、該切れ目29が設けられている橋渡し体26aはサイプ溝23の幅方向に2分割される。ここで、前述した切れ目29により分割されたサイプ溝23の分割面は平滑面であり、該切れ目29の両側壁(両方の分割面)同士は密着し、これら両側壁間のクリアランスはゼロとなる。
【0021】
このように橋渡し体26aに、その半径方向外端から半径方向内側に向かって延び、該橋渡し体26aをサイプ溝23の幅方向に分割する切れ目29を形成するとともに、該切れ目29の両側壁同士を密着させるようにすれば、該橋渡し体26aは切れ目29が形成されていても通常は一体物として機能し、この結果、サイプ溝23の両側のブロック22は一体的に繋がれて接地時におけるブロック22の倒れ込み量が容易に低減され、これにより、操縦安定性を維持しながら排水性、氷雪性、耐ハイドロプレーニング性を向上させることができる。また、前述した橋渡し体26aは該橋渡し体26aにより区画された両側のサイプ溝23(区画室30)の水が互いに流れ込む事態を制限するが、接地時にブロック22が倒れ込むことで、切れ目29が部分的に開いて該切れ目29の側壁間に間隙が生じ、これにより、前記橋渡し体26aの両側の区画室30間で水の流れが円滑となる。
【0022】
この結果、橋渡し体26aの両側に位置する区画室30に侵入した水の量が異なっている場合、溢れそうになった区画室30から流入量の少ない区画室30に前記間隙を通じて水が流れる。これにより、サイプ溝23内への水の合計流入量が増加し、タイヤ11の排水性等をさらに向上させることができる。なお、この実施形態においては、長手方向に1個おきの橋渡し体26(ここでは26a)に切れ目29を形成するようにしたが、この発明においては、全ての橋渡し体26(セクターモールドの周方向中央部に対応する位置の橋渡し体26を含む)に対し切れ目を形成するようにしてもよく、また、このような切れ目は後述するような脱型時におけるサイプブレードの倒れ込みにより形成する以外に、タイヤ11を加硫装置から取り出した後、カッター装置を作動することで形成するようにしてもよい。
【0023】
次に、前述のようなタイヤ11の製造(加硫)に好適なタイヤ製造装置(タイヤ加硫装置)について説明する。
図5、6、7において、35はタイヤ加硫装置であり、このタイヤ加硫装置35は下プラテンを含む下基台36を有し、この下基台36の上面には下モールド37が固定されている。そして、この下モールド37は加硫時に未加硫タイヤ34の下サイドウォール部13aを主に、加えて下ビード部12を型付けすることができる。38は下基台36、下モールド37の上方に設置された上基台であり、この上基台38は図示していないシリンダの作動により昇降し、下基台36に対して離隔、接近することができる。39は上基台38の直下に設置された上部プレートであり、この上部プレート39は図示していないシリンダが作動してピストンロッド40が突出したり引っ込んだりすると、上基台38と別個に昇降することができる。この上部プレート39の下面には上モールド41が固定され、この上モールド41は加硫時に未加硫タイヤ34の上サイドウォール部13bを主に、加えて上ビード部12を型付けすることができる。前述の上基台38を昇降させるシリンダおよびピストンロッド40を有する前記シリンダは全体として、上モールド41を下モールド37に接近離隔させる接離機構42を構成する。なお、この発明においては、接離機構として、モータと、該モータにより駆動されるねじ機構、ラック・ピニオン機構等を用いるようにしてもよい。
【0024】
45は下モールド37および下降限における上モールド41の半径方向外側に設置され、周方向に並べられた複数、例えば9個の弧状を呈するスライダであり、これらのスライダ45は上モールド41より半径方向外側の上部プレート39の下面に半径方向に移動可能に支持されている。そして、これらスライダ45の外周には下方に向かうに従い拡開した截頭円錐面状の傾斜面45aが形成されている。46は各スライダ45の内周にそれぞれ固定された弧状のセクターモールドであり、これらのセクターモールド46は加硫時に未加硫タイヤ34のトレッド部14を主に型付けすることができる。この結果、前述した複数の弧状を呈するセクターモールド46は周方向に並べられて配置されるとともに、下モールド37および下降限における上モールド41の半径方向外側に設置され、未加硫タイヤ34のトレッド部14を主に型付けすることができる。
【0025】
47は上部プレート39を半径方向外側から囲むように設置されたアウターリングであり、このアウターリング47は前記上基台38の半径方向外端部下面に固定されるとともに、その内周には下方に向かうに従い拡開し、前記傾斜面45aと同一勾配である截頭円錐面状の傾斜面47aが設けられ、前記傾斜面45aと傾斜面47aとはあり継手48によって連結されながら摺動可能に係合している。この結果、前記アウターリング47が上基台38と共に昇降すると、スライダ45、セクターモールド46は上部プレート39に支持されながら前記傾斜面45a、47aの楔作用によって半径方向に同期移動する。そして、これらセクターモールド46は、アウターリング47が下降することで傾斜面45a、47aの楔作用により半径方向内側限まで同期移動したとき、円周方向端面46aが互いに密着して連続リング状を呈する。このとき、セクターモールド46は下降限の上モールド41および下モールド37に密着するため、これら下、上モールド37、41およびセクターモールド46からなる加硫金型51は閉止して、内部に未加硫タイヤ34を収納する加硫空間を形成する。
【0026】
前述した上基台38を昇降させるシリンダ、アウターリング47は全体として、セクターモールド46を半径方向内側に同期移動させることで、前記下、上モールド37、41およびセクターモールド46からなる加硫金型51を閉止する同期移動機構52を構成するが、前述した上基台38を昇降させるシリンダは、前記接離機構42、同期移動機構52において共用されている。そして、前記同期移動機構52により加硫金型51が閉止されたとき、該加硫金型51内に収納された前記未加硫タイヤ34を加硫する。なお、この発明においては、前記同期移動機構を、モータと、該モータにより駆動されるリンク機構等から構成するようにしてもよい。53は下基台36の中央部に挿入された円筒体であり、この円筒体53の上端部外周には下クランプリング54が取り付けられている。前記円筒体53内にはセンターポスト55が摺動可能に挿入され、このセンターポスト55は図示していないシリンダにより昇降可能である。このセンターポスト55の上端外周には上クランプリング56が取り付けられ、この上クランプリング56と前記下クランプリング54とには屈曲可能な加硫ブラダ57の上端部と下端部とがそれぞれ気密状態で把持されている。そして、この加硫ブラダ57の内部に加硫媒体が注入されると、該加硫ブラダ57は未加硫タイヤ34内でドーナツ状に膨張し、該未加硫タイヤ34を閉止された加硫金型51に押し付け、型付けしながら加硫する。
【0027】
図5、6、7において、前述の各セクターモールド46は内周にタイヤ11の踏面を型付けする型付け面60を有しているが、このセクターモールド46の型付け面60には半径方向内側に突出し前記周溝15と同数の周骨61が設けられ、これら周骨61はタイヤ周方向に連続して直線状に延びるとともに、前記周溝15と補完関係にある。また、このセクターモールド46の型付け面60には前記横溝21と同数で半径方向内側に向かって突出している横骨62が設けられ、これら横骨62は周方向に離れ互いに平行に直線状に延びるとともに、周骨61と交差することで隣接する2つの周骨61をそれぞれ接続し、前記横溝21と補完関係にある。この結果、各セクターモールド46には周骨61、横骨62に囲まれた複数のブロック空間63が画成されるが、これらブロック空間63に流入した未加硫ゴムはタイヤ11のブロック22となる。
【0028】
図6、7、8、9において、各ブロック空間63における型付け面60にはほぼタイヤ幅方向に延びる薄肉の細溝ブレードとしてのサイプブレード64がタイヤ周方向に離れて複数本設けられ、これらのサイプブレード64は、この実施形態1では、少なくとも長手方向片端部が周骨61内に埋設されているが、長手方向両端が周骨61に届かず途中で終了していてもよい。そして、未加硫ゴムが前記ブロック空間63に流入すると、該未加硫ゴムにはサイプブレード64によって、該サイプブレード64と補完関係にある前記サイプ溝23が形成される。また、これらサイプブレード64の肉厚は、一般的に前記サイプ溝23の幅と同一の 0.5mm〜 3mmの範囲内である。そして、これらサイプブレード64は、通常セクターモールド46に対して半径方向(型付け面60に対して法線方向)に延びているが、その基端部64a(半径方向外端部)はセクターモールド46内に埋設(前記型付け面60より半径方向外側に位置)され、一方、前記基端部64aを除く残部64bはセクターモールド46の型付け面60から半径方向内側に突出している。
【0029】
また、前記残部64bを含むサイプブレード64はその長手方向中央部(タイヤ幅方向中央部)が前記サイプ溝23と同様に一定の波長、振幅でジグザグ状に屈曲している。このようにサイプブレード64の残部64bがジグザグ状に屈曲していると、サイプ溝23もジグザグ状に屈曲するため、前述と同様に路面のグリップ力が向上してタイヤ11の駆動、制動性能が向上するとともに、サイプ溝23の容積が増大して吸い上げる水量が増大するのである。そして、前述のように残部64bがジグザグ状に屈曲していると、該残部64bにはタイヤ周方向内側への突出端である内側突出端64cと、タイヤ周方向外側への突出端である外側突出端64dとが残部64bの長手方向に交互に繰り返し複数設けられる。67はサイプブレード64の残部64bに形成された複数のスリットであり、これらのスリット67は残部64bの先端から型付け面60に向かって半径方向外側に延びている。
【0030】
そして、この実施形態では、前述したスリット67を残部64b全体、即ち先端から型付け面60に到るまで形成しているが、この発明においては、サイプブレード64(残部64b)の少なくとも先端部に形成すればよい。さらに、前記スリット67はサイプブレード64の長手方向に一定距離だけ、ここではサイプブレード64の波長の 1/2に等しい距離だけ離れて配置されているが、その詳細位置については後述する。また、前記スリット67の基端部には前記スリット67の幅より大径のクロスベントホール68が形成されているが、これらクロスベントホール68は未加硫ゴムがブロック空間63に侵入してきたとき、サイプブレード64の両側の空間を連通することで残留しているエアの排出を円滑に行う。そして、前述のように未加硫ゴムがブロック空間63に侵入してくると、スリット67内、クロスベントホール68内にも未加硫ゴムが侵入するが、スリット67内に侵入したゴムはサイプ溝23の両側側壁同士を一体的に繋ぐ前述の橋渡し体26となる一方、クロスベントホール68に侵入したゴムは前述の円柱部27となる。この結果、前記スリット67と橋渡し体26、クロスベントホール68と円柱部27とは補完関係となる。
【0031】
そして、前述のようなタイヤ加硫装置35を用いてタイヤ11を加硫(製造)する場合には、
図5、6、7、8、9、10に示すように、未加硫タイヤ34をタイヤ加硫装置35に搬入して円筒状をした加硫ブラダ57の外側に嵌合するとともに、横置き状態で下側のサイドウォール部13、ビード部12を下モールド37に接触させる。次に、センターポスト55、上クランプリング56を下降させながら加硫ブラダ57内に流体を供給して該加硫ブラダ57を徐々にドーナツ状に膨張させ未加硫タイヤ34内に侵入させる。次に、上基台38、アウターリング47、上部プレート39、ピストンロッド40、上モールド41、スライダ45、セクターモールド46を一体的に下降させ、上モールド41を未加硫タイヤ34に接近させる。そして、この上基台38の下降途中において、セクターモールド46が下降限に到達しスライダ45の下端が、
図5に仮想線で示すように、下基台36の上面に当接するとともに、上モールド41が上クランプリング56、未加硫タイヤ34の上側のサイドウォール部13、ビード部12に当接すると、上部プレート39、上モールド41、スライダ45、セクターモールド46の下降が停止する。
【0032】
このようにして上モールド41、セクターモールド46は下降を停止するが、その後も上基台38、アウターリング47は継続して下降するため、スライダ45、セクターモールド46は上部プレート39に支持されながら前記傾斜面47a、45aの楔作用によって押され、これにより、スライダ45、セクターモールド46は同期移動機構52により半径方向内側に同期移動する。このとき、上部プレート39はシリンダのピストンロッド40が引っ込むことで同一高さ位置を保持する。そして、周方向に隣接するセクターモールド46の円周方向端面46a同士が密着してリング状を呈するとともに、これらセクターモールド46が下降限の上モールド41および下モールド37に密着すると、前記加硫金型51は閉止するが、このとき、閉止状態の加硫金型51内に未加硫タイヤ34が収納される。
【0033】
次に、加硫ブラダ57内に高温、高圧の加硫媒体が供給されるが、このとき、未加硫タイヤ34は加硫ブラダ57により加硫金型51の内面に押し付けられる。この結果、未加硫ゴムが全てのブロック空間63に侵入して周骨61、横骨62およびサイプブレード64の残部64bを包み込み、未加硫タイヤ34のトレッド部14踏面に周溝15、横溝21、サイプ溝23をそれぞれ形成する。この状態で未加硫タイヤ34は一定時間保持され、タイヤ加硫装置35により型付けされながら加硫される。このようにしてトレッド部14には周骨61、横骨62、サイプブレード64によって周溝15、横溝21、サイプ溝23がそれぞれ設けられるが、このとき、各サイプ溝23には前記スリット67により該サイプ溝23の両側側壁同士を一体的に繋ぐ橋渡し体26が、また、前記クロスベントホール68により円柱状を呈する円柱部27が形成される。次に、このような未加硫タイヤ34の加硫後、加硫ブラダ57内から加硫媒体を排出するとともに、センターポスト55、上クランプリング56を上昇させて加硫ブラダ57を円筒状に収縮変形させる一方、上基台38、アウターリング47、上部プレート39、上モールド41を上昇させることで、半径方向内側限に位置していたスライダ45、セクターモールド46を半径方向外側に向かって同期移動させ、未加硫タイヤ34を加硫金型51から脱型させる。
【0034】
ここで、前述のスリット67は、後述の一側、他側舌片71、72の曲げ剛性を小さな値に保持するため、内側、外側突出端64c、64dの近傍に設けている。これに対し、前述のスリット67を内側、外側突出端64c、64dの中間位置近傍に設けると、一側、他側舌片71、72の曲げ剛性は大きな値となり過ぎるため、前述の中間位置近傍は避けることが好ましい。ここで、この実施形態においては、前記スリット67を内側、外側突出端64c、64dと重なり合う位置に配置、即ちスリット67の両側壁間に内側、外側突出端64c、64dが位置するよう両者の位置関係を規定している。この結果、前記スリット67のうち、内側突出端64cに重なり合うスリット67をスリット67aとすると、該スリット67aの長手方向一側における残部64bには、該サイプブレード64の長手方向に対して一方向に傾斜、ここではサイプブレード64の長手方向一側に向かうに従いセクターモールド46の周方向外側に傾斜するとともに、長手方向一端がスリット67bにより規定された帯板状の一側舌片71が、一方、前記スリット67の長手方向他側における残部64bには、該サイプブレード64の長手方向に対して他方向(前記一方向に対し逆の方向)に傾斜、ここではサイプブレード64の長手方向他側に向かうに従いセクターモールド46の周方向外側に傾斜するとともに、長手方向他端がスリット67bにより規定された帯板状の他側舌片72が形成される。
【0035】
そして、この実施形態においては、前述のような一側、他側舌片71、72、スリット67a、67bを1個のユニットとしたとき、これらユニットがサイプブレード64の長手方向に複数個繰り返し設けられている。このとき、スリット67bは隣接するユニットにおいて共用されるとともに、サイプブレード64の周方向外側端である外側突出端64dと重なり合う位置に配置される。そして、前述のように一側、他側舌片71、72を含む前記ユニットをサイプブレード64の長手方向に繰り返し連続して設けるようにすれば、切れ目29が形成された橋渡し体26aを簡単にサイプ溝23に複数個設置することができるとともに、サイプ溝23のエッジ長を簡単に長くすることができる。なお、この発明においては、サイプブレード64に前記ユニット(一側、他側舌片71、72、スリット67)を1個だけ形成してもよい。また、サイプブレード64は加硫の度に繰り返し倒れ込み変形を受けるため、マルエージング鋼、マルテンサイト鋼、クロム−モリブデン鋼等の超強靱鋼を用いて疲労寿命を長期化することが好ましい。また、このようなサイプブレード64は、例えばレーザー加工機、プレス加工機等を用いて製造することができる。
【0036】
ここで、前述したサイプブレード64の延在方向(高さ方向)と、脱型時における各セクターモールド46の移動方向M(セクターモールド46の周方向中央を通過する半径方向)とが異なっていると、
図11、12、13に示すように、脱型時にセクターモールド46とタイヤ11との間のサイプブレード64は、トレッド部14の加硫済みゴムに押されてセクターモールド46の周方向外側に向かって弧状を呈しながら倒れ込む。このため、前述のようにジグザグ状に屈曲したサイプブレード64の内側、外側突出端64c、64dにスリット67をそれぞれ形成することで、スリット67の長手方向一側に位置し該長手方向に対して一方向に傾斜した一側舌片71と、スリット67の長手方向他側に位置し該長手方向に対して他方向に傾斜した他側舌片72とを形成し、これにより、加硫後にタイヤ11を加硫金型51から脱型させる際、前記一側、他側舌片71、72をいずれも、
図13に仮想線で示す位置から、セクターモールド46の周方向外側に向かって該一側、他側舌片71、72の厚さ方向、即ち一側、他側舌片71、72の表裏面に直交する方向に、
図13に実線で示す位置まで倒れ込ませ、これにより、内側突出端64cの両側において隣接する一側、他側舌片71、72の先端部同士を互いに接近させる一方、外側突出端64dの両側において隣接する一側、他側舌片71、72の先端部同士を互いに離隔させたのである(
図12参照)。
【0037】
このとき、セクターモールド46の周方向両端部に設けられたサイプブレード64は、その延在方向(高さ方向)とセクターモールド46の移動方向Mとの間に比較的大きな角度差が存在するため、サイプブレード64は大きく倒れ込んで、内側突出端64cの両側において隣接する一側、他側舌片71、72の先端部の一部(互いに近接する端部)が互いに接触しながら厚さ方向に重なり合うのである。これにより、一側、他側舌片71、72がはさみとして機能し、橋渡し体26(内側突出端64cのスリット67aに侵入したゴム)は厚さ方向中央部において切断される。このようにして内側突出端23aに位置する橋渡し体26aには切れ目29が形成され、該橋渡し体26aはサイプ溝23の幅方向に2分割される。このとき、前記一側、他側舌片71、72は薄肉の帯板状で曲げ剛性が比較的低いため、脱型時における周囲のゴムの変形を抑制することができ、これにより、製品タイヤへの過剰負荷の印加を抑制することができる。ここで、前述した一側、他側舌片71、72により切断された切れ目29の分割面は、はさみによって切断された平滑面であるため、該切れ目29の両側壁(両方の分割面)同士は密着し、これら両側壁間のクリアランスはゼロとなる。このようにタイヤ加硫装置35を用いて橋渡し体26aを2分割する切れ目29を形成するとともに、該切れ目29の両側壁同士を密着させるようにすれば、前述のように操縦安定性を維持しながら排水性等を向上させることができる。
【0038】
また、このような切れ目29は、一部が重なり合うことで構成された一側、他側舌片71、72によるV字形の刃により橋渡し体26aが徐々に切断されることでサイプ溝23の開口まで進行し、最終的には橋渡し体26aの大部分を切断する。このようにして橋渡し体26aには半径方向外端から半径方向内側に向かって延びる切れ目29が形成される。そして、前述のように構成すれば、加硫後においてタイヤ11を加硫金型51から脱型させる際、サイプブレード64によって橋渡し体26(橋渡し体26a)に前述のような切れ目29を脱型作業と同時に自動的に形成することができる。この結果、加硫金型51からタイヤ11を取り出した後に特別な切れ目形成手段を用いて切れ目を形成する必要がなく、作業能率が格段に向上するとともに、装置全体を構造簡単で小型、安価とすることができる。また、前述したサイプブレード64の内側、外側突出端64c、64dおよびスリット67は共に、サイプブレード64(残部64b)の先端から基端(型付け面60)に向かって同一位相、同一振幅、同一波長でジグザグ状に屈曲している。このようにすれば、一側、他側舌片71、72の曲げ剛性が低減し、この結果、サイプブレード64が加硫済みのタイヤ11から抜け出る際に該サイプブレード64からトレッド部14のゴムに付与される変形力がさらに小さくなり、脱型時における周囲のゴムの変形をさらに抑制することができる。
【0039】
ここで、セクターモールド46の周方向中央部に設けられたサイプブレード64は該サイプブレード64の延在方向(高さ方向)とセクターモールド46の移動方向Mとが近似しているため、脱型時における倒れ込み量が少なく、この結果、橋渡し体26に切れ目29を形成することができない場合がある。このような場合には、サイプブレード64を、セクターモールド46の周方向中央を通過する半径方向線(法線)、即ちセクターモールド46の脱型時における移動方向Mに対し、周方向内側あるいは周方向外側に向かって傾斜させた状態でセクターモールド46に設置し、該サイプブレード64の延在方向(高さ方向)とセクターモールド46の移動方向Mとの間に比較的大きな角度差を設けることで対処することができる。また、この発明は、橋渡し体が設けられた細溝がタイヤ周方向にジグザグしながら延在する周方向細溝である場合にも適用することができる。この場合には、スリットが形成された細溝ブレードを、セクターモールドの移動方向に対し、比較的大きな角度で傾斜させながらセクターモールドに設けるようにすればよい。
【0040】
図14は、この発明の実施形態2を示す図であり、タイヤにおける前記
図2と同様の露出したサイプ溝の図面である。ここで、この実施形態2は前記実施形態1と多くが同様であるので、異なる箇所のみを説明するとともに、前記実施形態1と同一部品には同一番号を付して詳細説明を省略する。この実施形態2においては、タイヤ11におけるトレッド部14の各ブロック22に前記実施形態1で説明したサイプ溝23と同様の、ジグザグ状に屈曲しながらタイヤ幅方向に延びる細溝としてのサイプ溝75を複数形成している。そして、この実施形態2においても、各サイプ溝75に前記橋渡し体26と同様で、サイプ溝75の両側側壁同士を一体的に繋ぐとともに、前述の切れ目29と同様の切れ目が形成された複数の橋渡し体76を内側、外側突出端75a、75bの位置においてそれぞれ形成しているが、これら橋渡し体76はサイプ溝75の開口から溝底に向かって直線状に延びている。また、この実施形態2では、前記内側突出端75aの位置に設けられた橋渡し体76の途中には厚肉部76aが設けられているが、このように構成すれば、橋渡し体76を強力な突っ張りとして機能させることができ、接地時におけるブロック22の倒れ込み量をさらに低減させることができる。
【0041】
図15、16は前記実施形態2のタイヤ加硫(製造)に好適な加硫装置を示す図である。この実施形態2においても前記実施形態1と同様に各セクターモールド46に複数のサイプブレード79が設けられるが、これらサイプブレード79の残部79bは前記橋渡し体76が設けられたサイプ溝75と補完関係にある。この結果、前記橋渡し体76を形成するためのスリット80が内側、外側突出端79c、79dの位置にそれぞれ形成されているが、これらスリット80は先端から基端に向かって直線状に延びているため、脱型時に橋渡し体76がサイプブレード79によってサイプ溝75の長手方向に変形するようなことはなく、該橋渡し体76がブロック22から切り離されるようなことはない。また、前記内側突出端79cの位置に設けられたスリット80の途中には幅広部80aが設けられているが、このようにスリット80の途中に幅広部80aを設けるようにすれば、幅広部80aより先端側に位置する狭い部位の一側、他側舌片71、72が切断刃となるため、橋渡し体76の切断を容易に行うことができる。なお、この発明においては、前述のような幅広部80aを省略し、スリットの幅を半径方向位置に拘わらず同一幅としてもよい。また、この実施形態2における他の構成、作用は前記実施形態1と同様である。
【0042】
図17、18は、この発明の実施形態3を示す図であり、タイヤにおける前記
図2、3と同様のサイプ溝の図面である。ここで、この実施形態3は前記実施形態1と近似しているため、異なる箇所のみを説明するとともに、前記実施形態1と同一部品には同一番号を付して詳細説明を省略する。この実施形態3においては、タイヤ11におけるトレッド部14の各ブロック22に、前記実施形態1で説明したサイプ溝23と同様のタイヤ幅方向に延びる細溝としてのサイプ溝83を複数形成しているが、これらサイプ溝83はタイヤ幅方向に対して同一方向に同一角度で交差した複数の薄板状を呈するサイプ溝片84を部分的に重ね合わせながらタイヤ幅方向に繰り返し配置することで構成されている。この結果、各サイプ溝片84の長手方向端には段差量がサイプ溝83の溝幅の 1/2である段差85が形成されるが、これらの段差85は半径方向に対して同一方向に同一角度で傾斜している。
【0043】
86は前述したサイプ溝片84の底部に設けられ円柱状を呈する複数の橋渡し体であり、これらの橋渡し体86はサイプ溝83の両側側壁同士を一体的に繋いでいる。そして、各橋渡し体86にはその半径方向外端から半径方向内側に向かって延びる切れ目87が形成されているが、これら切れ目87は前記橋渡し体86をサイプ溝83の溝幅方向に2分割する一方、これら切れ目87の両側壁同士は密着している。そして、この実施形態3のものは前述のように構成しているので、前記実施形態1と同様に操縦安定性を維持しながら排水性等を効果的に向上させることができる。しかも、サイプ溝83内に侵入した水の長手方向への流れは橋渡し体86がある程度制限されるが、接地時に該橋渡し体86に形成された切れ目87が部分的に開いて隙間が生じるため、橋渡し体86の両側における区画室間での水の流れが円滑となる。
【0044】
図19、20は、前記実施形態3のタイヤ加硫(製造)に好適な加硫装置を示す図である。この実施形態3においても、前記実施形態1と同様の下モールド、上モールド、セクターモールド、接離機構、同期移動機構が設けられるが、これらは前記実施形態1と同様であるので、異なる箇所のみを説明するとともに、前記実施形態1と同一部品には同一番号を付して詳細説明を省略する。そして、この実施形態3においても、前記実施形態1と同様に各セクターモールド46に半径方向に伸びる複数のサイプブレード90が設けられるが、これら細溝ブレードとしてのサイプブレード90の残部90bは前記橋渡し体86が設けられたサイプ溝83と補完関係にある。ここで、前記サイプブレード90は薄肉等厚である複数のブレード片91をサイプブレード90の長手方向に 1/2長分ずつずらした状態で重ね合わせることにより構成しているため、これらブレード片91の互いに重なり合った重合部94は厚さ方向にずれながらサイプブレード90の長手方向に繰り返し形成される。
【0045】
ここで、前記ブレード片91は、前述のような傾斜した段差85の形成のために、半径方向に延びるのではなく、半径方向に対して同一方向に同一角度で傾斜しているとともに、前述のサイプ溝片84と補完関係にある。また、この実施形態3では、隣接する2枚のブレード片91が重なり合った前記重合部94にサイプブレード90の肉厚方向に延びる円形の貫通孔93を形成しているが、これら貫通孔93は一方のブレード片91に形成された片側孔93aと、残り他方のブレード片91に形成された片側孔93bとからなり、これら片側孔93aと片側孔93bとは同一径で同軸上に配置されている。この結果、未加硫タイヤ34を閉型された加硫金型51に収納したとき、前記貫通孔93内に未加硫ゴムが流入すると、該ゴムはサイプ溝83の両側側壁同士を一体的に繋ぐ前記橋渡し体86を形成する。なお、この発明においては、サイプブレードを、複数のブレード片91をずらしながら重ね合わせることで構成せず、長手方向に連続した2枚の平坦な薄肉のブレード片のみを重ね合わせることで構成するようにしてもよい。
【0046】
次に、このような未加硫タイヤ34に対し加硫を施した後、加硫済みのタイヤ11を加硫金型51から脱型させるが、このような脱型に到るまでの作業は、前記実施形態1と同様である。そして、この脱型時においては、セクターモールド46の周方向両側部に設けられているサイプブレード90の延在方向(高さ方向)は、
図21、22に示すように、セクターモールド46の脱型時における移動方向Mと異なっているため、
図23、24に示すように、該サイプブレード90の残部90bはトレッド部14の加硫済みゴムによってセクターモールド46の周方向外側に向かって弧状を呈しながら倒れ込む。このとき、重なり合ったブレード片91のうち、セクターモールド46の周方向内側に位置するブレード片91の曲率半径は、周方向外側に位置するブレード片91の曲率半径より大となるため、これら隣接する2枚のブレード片91同士は互いに摺接しながら高さ方向にずれる。
【0047】
この結果、脱型前にはこれら2枚のブレード片91の先端91aは、
図21、22に示すように同一面上に位置していたが、脱型時には、
図23、24に示すように、周方向内側のブレード片91の先端91aが周方向外側のブレード片91の先端91aよりセクターモールド46側に変位する。このように脱型時の倒れ込みによって2枚のブレード片91の間に高さ方向のずれが生じると、貫通孔93により形成された橋渡し体86は両ブレード片91の摺接面(境界面)によりサイプ溝83の溝幅方向に2分割される。これにより、該橋渡し体86にはその半径方向外端から半径方向内端に向かって延び該橋渡し体86の大部分または全体を2分割する切れ目87が形成される。このとき、前記切れ目87の分割面は平滑であるため、該切れ目87の両側壁同士は密着し、これら切れ目87の両側壁間のクリアランスがゼロとなる。このように薄肉である複数のブレード片91をサイプブレード90の長手方向にずらしながら重ね合わせることで、重合部94を有するサイプブレード90を構成し、前記重合部94をサイプブレード90の長手方向に繰り返し配置するようにすれば、ブレード片91の曲げ剛性が低くなって脱型時における倒れ込み変形が容易となるとともに、切れ目87が形成された橋渡し体86をサイプ溝83に簡単に複数個設置することができる。なお、この実施形態3に記載のものは、前記実施形態1で説明した対策を施すことで、タイヤ幅方向に延びる細溝ブレードがセクターモールドの周方向中央部に設けられていたり、あるいは、タイヤ周方向に延びる細溝ブレードがセクターモールドに設けられたものにも適用することができる。また、この実施形態3における他の構成、作用は前記実施形態1と同様である。
【0048】
図25は、この発明の実施形態4を示す図であり、前記実施形態3における
図19と同様の図面である。そして、この実施形態4では細溝ブレードとしてのサイプブレード96を構成する複数のブレード片97を半径方向に延在させるとともに、その側端面97aをジグザグ状に屈曲させている。そして、このように各ブレード片97の側端面97aをジグザグ状に屈曲させれば、ゴム隣接面間の干渉効果を容易に大きくすることができる。また、この実施形態4においては、ブレード片97の重合部98に形成された貫通孔99を、平行四辺形および矢羽根状としているが、このように貫通孔99を平行四辺形や矢羽根状とすると、該貫通孔99の側壁が半径方向に対し傾斜するため、橋渡し体への切れ目の形成が容易となる。なお、この実施形態4における他の構成、作用は前記実施形態3と同様である。
【0049】
図26、27は、この発明の実施形態5を示す図である。ここで、
図26は実施形態3における
図19と同様の図面であり、この実施形態5においては、前記実施形態3と同様に、重合部 102における貫通孔 103を、サイプブレード 101を構成する2枚のブレード片 104にそれぞれ形成された片側孔 105a、 105bから構成しているが、これらブレード片 104のうち、少なくともいずれか一方のブレード片 104に形成された片側孔、ここでは両方のブレード片 104に形成された片側孔 105a、 105bを、2枚のブレード片 104が接する摺接面(境界面)に向かうに従い先細りとなった形状、ここでは截頭円錐形としている。このように両方の片側孔 105a、 105bを先細り形状とすると、該片側孔 105a、 105bの互いに近接する内端に鋭角のエッジが形成されるため、貫通孔 103内のゴム(橋渡し体)はブレード片 104同士の摺接面(境界面)において該鋭角エッジにより円滑に切断され、橋渡し体に切断面が良好な切れ目を容易に形成することができる。なお、この実施形態5における他の構成、作用は前記実施形態3と同様である。