(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981927
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】一体のネックサポート及び指板ブレイスを有する弦楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 3/06 20200101AFI20211206BHJP
G10D 1/08 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
G10D3/06
G10D1/08
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-115462(P2018-115462)
(22)【出願日】2018年6月18日
(65)【公開番号】特開2019-3195(P2019-3195A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年6月18日
(31)【優先権主張番号】15/626,432
(32)【優先日】2017年6月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516315845
【氏名又は名称】テイラー − リスタグ、インコーポレイテッド ドゥーイング ビジネス アズ テイラー ギターズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー テイラー パワーズ
【審査官】
中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−092211(JP,A)
【文献】
特開2000−187481(JP,A)
【文献】
米国特許第05900561(US,A)
【文献】
米国特許第06051766(US,A)
【文献】
Fretsireland Custom Instruments,[online],2015年12月10日,[2021年2月26日検索], インターネット <URL:https://web.archive.org/web/20151210112132/https://fretsireland.com/custom-guitars-mandolins/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/00−3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギターサイドと、
互いに対して固定して取り付けられたネックサポート及び指板ブレイスを備え、前記指板ブレイスがブレイス面及び2つの端部をもつ長尺のボディを有し、前記指板ブレイスが前記2つの端部において前記ギターサイドに取り付けられる、ネックサポート・指板ブレイスユニットと、を備えるギターボディであって、
前記ネックサポートは、
上面、前面及び2つの側部を有する上部であって、前記指板ブレイスが前記前面から延在し、組み立てられたときにギタートップが前記上面に取り付けられ、前記上部の各側部が、前記ギターボディの縦軸線に対して斜めに形成された、上部と、
ギターバックに取り付けるための底面を有する底部と、を備え、
前記ギタートップは、前記ギターサイドに取り付けられてサウンドボックスを形成し、組み立てられたときに、前記指板ブレイスの前記ブレイス面が、前記ギタートップの内側面に取り付けられる、
ギターボディと、
前記ネックサポート・指板ブレイスユニットにおいて前記ギターボディに取り付けられたギターネックと、
を備えるギター。
【請求項2】
前記ネックサポート及び前記指板ブレイスが、一体ボディとして形成された、請求項1に記載のギター。
【請求項3】
前記指板ブレイスの側面が、前記ネックサポートの前記前面に取り付けられた、請求項1に記載のギター。
【請求項4】
前記指板ブレイスが、前記ネックサポートに接着された、請求項3に記載のギター。
【請求項5】
前記ギタートップが、ネックノッチを有し、組み立てられたときに、前記ギターネックが、前記ネックノッチにより露出する前記ネックサポートの前記上面の部分において、前記ネックサポートに取り付けられる、請求項1に記載のギター。
【請求項6】
前記ギターネックと前記ネックサポートの前記上面との間に配置されたトップスペーサを更に備える、請求項5に記載のギター。
【請求項7】
前記ネックサポートがヒール面を有し、前記ギターネックのヒールが前記ヒール面に取り付けられた、請求項1に記載のギター。
【請求項8】
前記ギターネックの前記ヒールと前記ヒール面との間に配置されたヒールスペーサを更に備える、請求項7に記載のギター。
【請求項9】
指板ブレイスに接続されたネックサポートを有するネックサポート・指板ブレイスユニットを形成することであって、前記ネックサポートは、上面を有する上部と、底面を有する底部とを有する、ネックサポート・指板ブレイスユニットを形成することと、
ギタートップを前記ネックサポート・指板ブレイスユニットに取り付けることであって、前記ネックサポートの前記上部は前記ギタートップに取り付けられ、前記上部は、上面、前面及び2つの側部を有し、前記上部の各側部が、ギターの縦軸線に対して斜めに形成される、ギタートップを前記ネックサポート・指板ブレイスユニットに取り付けることを含む、ギターの製造方法。
【請求項10】
前記ネックサポート・指板ブレイスユニットの前記ギタートップを取り付ける前に、前記指板ブレイスユニットをギターサイドに取り付けることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ネックサポート・指板ブレイスユニットを形成することが、前記ネックサポート及び前記指板ブレイスを有する一体ボディを形成することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ネックサポート・指板ブレイスユニットを形成することが、前記指板ブレイスを前記ネックサポートに固定して取り付けることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記指板ブレイスを前記ギターサイドに取り付ける前に、前記指板ブレイスを前記ネックサポートに取り付ける、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ネックサポートを前記ギターサイドに取り付けることと、
前記指板ブレイスを前記ギターサイド及び前記ネックサポートに同時に取り付けることとを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記指板ブレイスを前記ギターサイドに取り付けることが、前記指板ブレイスの2つの端部を前記ギターサイドに取り付けることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記指板ブレイスを前記ギターサイドに取り付けることが、
前記指板ブレイスの2つの端部を、前記ギターサイドに取り付けられた2つのライナーサポートに取り付けることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
指板ブレイスをギターサイドに取り付けることであって、前記指板ブレイスの2つの端部を、前記ギターサイドに取り付けられた2つのライナーサポートに取り付けることを含む、指板ブレイスをギターサイドに取り付けることと、
その後ギタートップを前記ギターサイド及び前記指板ブレイスに取り付けてギターボディを形成することとを含む、ギターの製造方法。
【請求項18】
前記指板ブレイスに接続されたネックサポートを有するネックサポート・指板ブレイスユニットを形成することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記上部の各側部は、傾斜され、又は湾曲される、請求項1に記載のギター。
【請求項20】
ギタートップとギターバックとを有するギターボディと、
上面と底面とを有するネックサポートであって、前記上面は前記ギタートップに取り付けられ、前記底面は前記ギターバックに取り付けられ、前記上面は第1の側部と第2の側部とを有し、前記上面の各側部は、前記ギターボディの縦軸線に対して斜めに形成され、前記第1の側部と前記第2の側部は、傾斜され、又は湾曲され、前記ギタートップが木目に沿って割れるのを避けるために、前記ギタートップの木目と交差する、ネックサポートと、
前記ネックサポートにおいて前記ギターボディに取り付けられるギターネックと、
を備える、ギター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施例は、概して、弦楽器の構成及び構造に関する。より具体的には、本開示は、一体のネックサポート及び指板ブレイスを有する弦楽器並びにその弦楽器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ギターは典型的に、2つの主部品であるネック及びボディを有する。奏者は、弦のピッチを変更するために、ギターの弦を、ネック上にあるフレットに対して押し付ける。
【0003】
ギターネックをギターのボディに接続する方法は、基本的に1世紀近く変わっていない。
図1に示すように、ギター100は、ボディ104に取り付けられたネック102を有する。ネック102は、ヒール106と共に形成される。ヒール106は、ボディ104のギターサイド108の外側面に接着されるかボルトで固定される。ボルトで固定される場合、ネック102の長さに対して平行に延在する1つ以上のボルトを使用できる。単にギターサイド108の外側面に対して載置する代わりに、ヒール106の一部分を、ボディ102のほぞ穴内に受容させることができる。このような構成において、両矢印110で示される前後方向にネックが移動しないように、ヒールとほぞ穴とを蟻継ぎすることができる。
【0004】
平坦な下側を有するフレットボード112が、ネック102の平坦な上面に接着される。フレットボード112には典型的に、ネック102の遠位端にあるナット114までの間に20のフレットが設けられる。20番目のフレット116が、ボディ104の中心に最も近い。ヒール106がボディ104に接する位置118は典型的に、14番目のフレットである。短いネック102を有するギターの場合、ヒール106がボディ104に接する位置118は、12番目のフレットである。位置118と、20番目のフレット116に隣接するフレットボード112の近位端との間のフレットボード112の領域が、「テール」部120である。テール部120は、ボディ104の前面122に接着される。ネック102は、テール部120の前で終端するため、テール部120に支持を与えない。
【0005】
フレットボード112は通常、プラスチックや木材等の堅い材料で作られており、製造時や経時的に曲がったり損傷したりする。
図2は、フレットボード112及びネック103の損傷の一例を概略的に示す。理想的には、フレットボード112は、線124でしめすように、ナット114と20番目のフレット116との間において完全な直線であるべきである。しかしながら、ナット114と位置118との間には、弦の張力、湿気及び/又は何らかの他の要因のために、曲がった又は凹んだ領域126が生じることがよくある。損傷によって、凹んだ領域126の中央に高さの低いスポットが生じて、ギターを演奏するのが困難になったり、さらにはギターの調子が外れたりする。フレットボード112のテール部120は、ネックサポート130によって支持されていて屈曲しないため、弦の張力、湿気及び/又は何らかの他の要因のために、フレットボード112によって位置118の近傍にクリース(しわ)128が形成される可能性がある。クリース128によって、17番目や18番目、19番目、20番目のフレット等、テール部120にある高いフレットが、より低いフレットで演奏する際に、弦と接触してしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ギターにおいて改良されたネックサポートが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、概して弦楽器、より具体的にはギターに関する。
【0008】
一実施例は、ギターを提供する。このギターは、ギターサイド、互いに固定して取り付けられたネックサポート及び指板ブレイスを備え、指板ブレイスがブレイス面及び2つの端部をもつ長尺のボディを有し、指板ブレイスが2つの端部においてギターサイドに取り付けられた、ネックサポート・指板ブレイスユニット、及び、ギターサイドに取り付けられてサウンドボックスを形成するギタートップであって、組み立てられたときに、指板ブレイスのブレイス面が、内側面に取り付けられるギタートップを含むギターボディを含む。このギターは、ネックサポート・指板ブレイスユニットにおいてギターボディに取り付けられたギターネックを更に含む。
【0009】
他の実施例は、ギターの製造方法を提供する。この方法は、指板ブレイスに接続されたネックサポートを有するネックサポート・指板ブレイスユニットを形成することと、その後ギタートップをそのネックサポート・指板ブレイスユニットに取り付けることとを含む。
【0010】
他の実施例は、ギターの製造方法を提供する。この方法は、指板ブレイスをギターサイドに取り付けることと、その後ギタートップをギターサイド及び指板ブレイスに取り付けてギターボディを形成することとを含む。
【0011】
本開示の上述の特徴を詳細に理解できるよう、上に簡潔に要約した本開示のより詳細な説明を、その幾つかを添付の図面において例示した実施例を参照することにより行う。しかしながら、添付の図面が本開示の典型的な実施例のみを例示しており、従ってその範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示が、等しく有効な他の実施例を許容しうることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】先行技術のギターに生じる損傷を概略的に示す。
【
図3A】本開示の一実施例に係るギターの概略分解図である。
【
図3B】ギタートップをギターサイドに取り付ける前の、ギターサイドに取り付けられた指板ブレイスを示す、
図3Aのギターの部分側断面図である。
【
図3C】他の実施例に係るギターサイドに取り付けられた指板ブレイスを示す部分側断面図である。
【
図4A】本開示の一実施例に係るネックサポート・指板ブレイスユニットの概略上面図である。
【
図4B】
図4Aのネックサポート・指板ブレイスユニットの概略底面図である。
【
図4C】
図4Aのネックサポート・指板ブレイスユニットの概略側面図である。
【
図4D】
図4Aのネックサポート・指板ブレイスユニットの概略側面図である。
【
図4E】異なる形状の側部を有するネックサポート・指板ブレイスユニットの概略上面図である。
【
図4F】異なる形状の側部を有するネックサポート・指板ブレイスユニットの概略上面図である。
【
図4G】異なる形状の側部を有するネックサポート・指板ブレイスユニットの概略上面図である。
【
図4H】異なる形状の側部を有するネックサポート・指板ブレイスユニットの概略上面図である。
【
図5A】本開示の他の実施例に係るネックサポート・指板ブレイスユニットを示す、トップを取り外した状態のギターの部分斜視図である。
【
図5B】
図5Aのネックサポート・指板ブレイスユニットを示す、ボトムを取り外した状態のギターの部分斜視図である。
【
図5C】
図5Aのネックサポート・指板ブレイスユニットの概略上面図である。
【
図5D】
図5Aのネックサポート・指板ブレイスユニットの概略底面図である。
【
図5E】
図5Aのネックサポート・指板ブレイスユニットの概略側面図である。
【
図5F】
図5Aのネックサポート・指板ブレイスユニットの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施例は、ネックサポート・指板ブレイスユニットを有する、ギター等の弦楽器に関する。ネックサポート・指板ブレイスユニットは、一体ユニットとして形成されるか、あるいは、指板ブレイスをギタートップに取り付ける前に、ネックサポートをその指板ブレイスに固定して取り付けることによって形成される。ネックサポートと指板ブレイスとの間の堅い接続によって、ギターサイドに載置された指板ブレイスが、ギターネックに支持を与え、それによってギターネック及びフレットボードの変形を低減できる。
【0014】
図3Aは、本開示の一実施例に係るギター300の概略分解図である。ギター300は、ギタートップ部310、ギターボディ部330及びギターネック部360を含む。
【0015】
ネック部360は、フレットボード362を支持するネックブランク368を含む。ネックブランク368は、1片の木材、金属、プラスチック又は他の剛性材料で作ることができる。あるいは、ネックブランク368は、2片又は3片の木材を含んでもよい。フレットボード362は、滑らかで平坦な面となるようにかんな掛けできる木材、金属、プラスチック又は他の剛性材料で作ることができる。ネック部360は、ヒール364を含んでもよい。組み立てると、ヒール364は、ギターボディ部330に合わせられる。ネックブランク368には、ペグヘッド366が取り付けられてもよい。
【0016】
ギタートップ部310は、表板322を含む。表板322は、組み立てたときにギターネック部360に対向するネック端312と、ネック端312の反対側を向くヒール部318とを有する。表板322は、サウンドポート316を有する。ネック端312には、ギターネック部360を受容するように、ネックノッチ314が形成されていてもよい。複数のブレイス320を、表板322の内側面に取り付けることができる。ブレイス320は、表板322に構造的な支持を与えるように戦略的に位置決めされる。ブレイス320は、目標とする音響効果を実現できるように様々な配置構成で配置することができる。ブレイス320は、ギタートップ部310をギターボディ部330に取り付ける前に、表板322に取り付けられる。典型的に、サウンドポート316とネックノッチ314との間の表板312には、指板ブレイスが位置付けられる。本開示の実施例によれば、指板ブレイスは、表板312に取り付けられる前に、まずネックサポートに取り付けられる。
【0017】
ギターボディ部330は、底板332とギターサイド334とを含む。底板332は、接着剤によってギターサイド334に接合できる。複数の下側ライナーサポート338をギターサイド334の下側縁部に沿って載置して、底板332とギターサイド334との取り付けを補強してもよい。複数の上側ライナーサポート336をギターサイド334の上側縁部に配置して、ギタートップ部310とギターボディ部330との取り付けを補強してもよい。
【0018】
ネックサポート・指板ブレイスユニット340が、ギターボディ部330の内部に配置される。ネックサポート・指板ブレイスユニット340は、指板ブレイス342とネックサポート344とを含む。指板ブレイス342は、ネックサポート344に固定して取り付けられるか、あるいはネックサポート344と一体に形成される。指板ブレイス342は、ギターボディ部330に亘って延在し、上側ライナーサポート336のような支持構造をギターサイド334上に載置する。ネックサポート344及び指板ブレイス342を固定して接続することによって、組み立てたときに、ギターサイド334が、ネックサポート344に取り付けられたネック部360に構造的な支持を与えることができる。
【0019】
図3Bは、ギターサイド334に取り付けられた指板ブレイス342を示す、ギター300の部分側断面図である。指板ブレイス342の端部は、上側ライナーサポート336の上面に載置される。一実施例において、指板ブレイス342の端部と上側ライナーサポート336の上面とは、接着剤により互いに接合される。上側ライナーサポート336の側面は、ギターサイド334に接着される。この結果、上側ライナーサポート336は、指板ブレイス342に上方の支持を与える。ギタートップ部310は、指板ブレイス342がギターサイド334に取り付けられた後に、指板ブレイス342に取り付けられる。
【0020】
図3Cは、他の実施例に係るギターサイド334に取り付けられた指板ブレイス342を示す、ギター300の部分側断面図である。サポートフィンガー350が、上側ライナーサポート336と置き換えられて、指板ブレイス342に追加の支持を与えることができる。サポートフィンガー350は、ギターサイド334に取り付けられる長尺の木片とすることができる。指板ブレイス342の端部は、サポートフィンガー350の上面に載置される。一実施例において、サポートフィンガー350の上面と指板ブレイス342の端部とは、接着剤により互いに接合される。サポートフィンガー350は、ギターボトム332又は下側ライナーサポート338まで、ギターサイド334の高さに沿って延在する。
【0021】
ギター300を組み立てるために、ネックサポート・指板ブレイスユニット340をまず形成し、ギターサイド334に取り付けることができる。一実施例において、ネックサポート・指板ブレイスユニット340は、1片の木材から製造される。そして、一体のネックサポート・指板ブレイスユニット340を、ギターボトム332をギターサイド334に取り付ける前又は取り付けた後に、ギターサイド334に取り付ける。
【0022】
他の実施例において、ネックサポート・指板ブレイスユニット340は、2片以上の木材から形成してもよい。例えば、ネックサポート344をより密度が高く堅い木材で形成する一方で、指板ブレイス342をより密度が低く柔らかい木材で形成してもよい。そして、ネックサポート344及び指板ブレイス342を、例えば接着剤又は締結具により、互いに固定接合する。一実施例において、まず指板ブレイス342をネックサポート344に取り付けてネックサポート・指板ブレイスユニット340を形成してから、その形成されたユニットをギターボディ部330に取り付けてもよい。他の実施例において、まずネックサポート344をギターボディ部330に取り付けてから、指板ブレイス342をネックサポート344に取り付けてもよい。
【0023】
ネックサポート・指板ブレイスユニット340をギターボディ部330に取り付けた後、接着剤をネックサポート・指板ブレイスユニット340及び上側ライナーサポート336の上面に塗布して、ギタートップ部310及びギターボディ部330を接合する。
【0024】
ネック部360は、ギタートップ部310をギターボディ部330に取り付ける前又は取り付けた後に、ギターボディ部330に取り付けることができる。ネック部360は、締結具、接着剤又はそれらの組み合わせにより、ギターボディ部310に取り付けることができる。
図3Aに示すように、ネック部360が、複数のボルトによりギターボディ部330に取り付けられる。
図3Aには、4つのボルト孔が示されている。2つのボルト孔352が、ヒール364との接続のために、ギターサイド344側へネックサポート344を貫通して形成されている。2つのボルト孔354が、ネックブランク368との接続のために、ギタートップ部310側へネックサポート344を貫通して形成されている。一実施例において、任意のスペーサ346,348をギターネック部360とギターボディ部330との間に使用して、所望の配向を確保するようにしてもよい。
【0025】
図4A〜4Dは、本開示の一実施例に係るネックサポート・指板ブレイスユニット340を示す。
図4Aは、ネックサポート・指板ブレイスユニット340の概略上面図である。
図4Bは、ネックサポート・指板ブレイスユニット340の概略底面図である。
図4Cは、ネックサポート・指板ブレイスユニット340の概略側面図である。
図4Dは、ネックサポート・指板ブレイスユニット340の別の概略側面図である。
【0026】
ネックサポート・指板ブレイスユニット340は、上側部403と下側部406とを含む。指板ブレイス342は、上部403の前面420に取り付けられるか、あるいはそこから延在する。指板ブレイス342の端部418は、ギターサイドに取り付けられるように構成されている。上部403及び指板ブレイス342は、略平坦な上面402を形成している。上面402は、ギタートップに取り付けることができる。
【0027】
上側部403は、中央軸線401に対して角度422を有して形成される傾斜側部410を有する平坦な板とすることができる。一実施例において、上側部403は、台形状を有することができる。これは、ギタートップが典型的に、中央軸線401に対して平行な方向424に木目を有する薄い木製パネルで作られるためである。傾斜側部410が、ギタートップの木目と交差していることによって、ギタートップが木目に沿って割れるのを防止する。一実施例において、角度422は、約10度〜約45度である。
【0028】
代えて、上側部403の側部410は、上部403の縁部を木目と交差させることができる任意の形状とすることができる。
図4E〜4Hは、他の形状の側部の幾つかの例を概略的に示す。例えば、この側部は、
図4Eに示すように木目方向424と交差する湾曲線410aや、
図4Fに示すように木目方向424と交差する逆に傾けた直線410b、
図4Gに示すように木目方向424と交差する異なる角度を組み合わせた線410c、
図4Hに示すように木目方向424と交差する波線410dとしてもよい。また、2つの側部410は、異なる形状を有してもよい。
【0029】
下側部406は、上部403の下側面404から延在する。下側部406の底面416は、組み立てたときに、ギターボトムと接触するように構成されている。底面416は、上面402よりも面積が小さい。底部406は、ネック部のヒールに接続されるように構成されたヒール面412を有する。
【0030】
1つ以上のボルト孔354が、ネック部の背面側との接続のために、上部403を貫通して形成されている。1つ以上のボルト孔352が、ネック部のヒールとの接続のために、下側部406を貫通して形成されている。
【0031】
指板ブレイス342、上側部403及び下側部406は、1片の木材から作ることができる。あるいは、指板ブレイス342、上側部403及び下側部406は、2片以上の木材から作り、互いに接合してユニットを形成するようにしてもよい。
【0032】
図5A〜5Fは、本開示の他の実施例に係るネックサポート・指板ブレイスユニット540を概略的に示す。
図5Aは、ネックサポート・指板ブレイスユニット540を示す、トップを取り外した状態のギター500の部分斜視図である。
図5Bは、ネックサポート・指板ブレイスユニット540を示す、ボトムを取り外した状態のギター500の部分斜視図である。ギター500は、カットアウトボディスタイルのギターである。ネックサポート・指板ブレイスユニット540は、カッタウェイボディスタイルに適合した湾曲側部を有することを除いて、ネックサポート・指板ブレイスユニット340と同様である。
【0033】
図5Cは、ネックサポート・指板ブレイスユニット540の概略上面図である。
図5Dは、ネックサポート・指板ブレイスユニット540の概略底面図である。
図5Eは、ネックサポート・指板ブレイスユニット540の概略側面図である。
図5Fは、ネックサポート・指板ブレイスユニット540の別の概略側面図である。
【0034】
ネックサポート・指板ブレイスユニット540は、上側部503、下側部506及び指板ブレイス542を含む。指板ブレイス542は、上側部503の前面518に取り付けられるか、あるいはそこから延在する。指板ブレイス542の端部518は、ギターサイドに取り付けられるように構成されている。上側部503及び指板ブレイス542は、略平坦な上面502を形成している。上面502は、ギタートップに取り付けることができる。
【0035】
上側部503は、1つの傾斜側部510と1つの湾曲側部512とを有する平坦な板とすることができる。傾斜側部510は、ギタートップの木目と交差することによって、ギタートップが木目に沿って割れるのを防止するようにしてもよい。側部410と同様に、側部510は、ギタートップの木目方向と交差する任意の形状とできる。湾曲側部512は、カッタウェイを形成するように成形される。
【0036】
下側部506は、上側部503の下側面504から延在する。下側部506の底面516は、組み立てたときに、ギターボトムと接触するように構成されている。底部506は、ギターボディのカッタウェイに追加の支持を与える湾曲側部514を有してもよい。
【0037】
指板ブレイス542、上側部503及び下側部506は、1片の木材から作ることができる。あるいは、指板ブレイス542、上側部503及び下側部506は、2片以上の木材から作り、互いに接合してユニットを形成するようにしてもよい。
【0038】
本開示の実施例によれば、指板ブレイスは、ネックサポートと一体に形成されるか、あるいはネックサポートに固定して取り付けられる。指板ブレイスは、まずギターサイドに取り付けられ、それからギター前部に取り付けられる。指板ブレイスの端部がギターサイドに取り付けられることで、ギターサイドは、指板ブレイスを介してギターネックに構造的な支持を与える。この結果、ギターネックは、弦の張力、湿気及び/又は幾つかの他の要因のために曲がったりクリースを形成したりする傾向が低下する。
【0039】
本開示の実施例は、ギターボディとギターネックとを含むギターを提供する。ギターボディは、ギターサイド、互いに対して固定して取り付けられたネックサポート及び指板ブレイスを含み、指板ブレイスがブレイス面及び2つの端部をもつ長尺のボディを有し、指板ブレイスが2つの端部においてギターサイドに取り付けられる、ネックサポート・指板ブレイスユニット、及び、ギターサイドに取り付けられてサウンドボックスを形成するギタートップであって、組み立てられたときに、指板ブレイスのブレイス面が、内側面に取り付けられるギタートップを含む。ギターネックが、ネックサポート・指板ブレイスユニットにおいてギターボディに取り付けられる。
【0040】
1つ以上の実施例において、ネックサポート及び指板ブレイスは、一体ボディとして形成される。
【0041】
1つ以上の実施例において、指板ブレイスの側面は、指板ブレイスの前面に取り付けられる。
【0042】
1つ以上の実施例において、指板ブレイスは、ネックサポートに接着される。
【0043】
1つ以上の実施例において、ネックサポートは、上面、前面及び2つの側部を有する上部であって、指板ブレイスが前面から延在し、組み立てられたときにギタートップが前面に取り付けられる、上部と、ギターバックに取り付けるための底面を有する底部とを含む。
【0044】
1つ以上の実施例において、上部の各側部は、ギターボディの縦軸線に対して斜めに形成される。
【0045】
1つ以上の実施例において、ギタートップは、ネックノッチを有し、組み立てられたときに、ギターネックが、そのネックノッチにより露出するネックサポートの上面の部分において、ネックサポートに取り付けられている。
【0046】
1つ以上の実施例において、このギターは、ギターネックとネックサポートの上面との間に配置されたトップスペーサを更に含む。
【0047】
1つ以上の実施例において、ネックサポートは、ヒール面を有し、ギターネックのヒールが、そのヒール面に取り付けられている。
【0048】
1つ以上の実施例において、このギターは、ギターネックのヒールとヒール面との間に配置されたヒールスペーサを更に含む。
【0049】
他の実施例は、指板ブレイスに接続されたネックサポートを有するネックサポート・指板ブレイスユニットを形成することと、その後ギタートップをそのネックサポート・指板ブレイスユニットに取り付けることとを含む、ギターの製造方法を提供する。
【0050】
1つ以上の実施例において、この方法は、ネックサポート・指板ブレイスユニットのギタートップを取り付ける前に、指板ブレイスユニットをギターサイドに取り付けることを更に含む。
【0051】
1つ以上の実施例において、ネックサポート・指板ブレイスユニットを形成することは、ネックサポート及び指板ブレイスを有する一体ボディを形成することを含む。
【0052】
1つ以上の実施例において、ネックサポート・指板ブレイスユニットを形成することは、指板ブレイスをネックサポートに固定して取り付けることを含む。
【0053】
1つ以上の実施例において、この方法は、指板ブレイスをギターサイドに取り付ける前に、その指板ブレイスをネックサポートに取り付けることを含む。
【0054】
1つ以上の実施例において、この方法は、ネックサポートをギターサイドに取り付けることと、指板ブレイスをギターサイド及びネックサポートに同時に取り付けることとを更に含む。
【0055】
1つ以上の実施例において、指板ブレイスをギターサイドに取り付けることは、指板ブレイスの2つの端部をギターサイドに取り付けることを含む。
【0056】
1つ以上の実施例において、指板ブレイスをギターサイドに取り付けることは、指板ブレイスの2つの端部を、ギターサイドに取り付けられた2つのライナーサポートに取り付けることを含む。
【0057】
本開示の他の実施例は、指板ブレイスをギターサイドに取り付けることと、その後ギタートップをギターサイド及び指板ブレイスに取り付けてギターボディを形成することとを含む、ギターの製造方法を提供する。
【0058】
1つ以上の実施例において、この方法は、指板ブレイスに接続されたネックサポートを有するネックサポート・指板ブレイスユニットを形成することを更に含む。
【0059】
以上の説明は、本開示の実施例を対象とするものであるが、本開示の他の実施例及び更なる実施例は、その範囲及び添付の特許請求の範囲により規定される範囲から逸脱することなく想到できよう。