特許第6981935号(P6981935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981935モールド金型及びそれを備えた樹脂モールド装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981935
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】モールド金型及びそれを備えた樹脂モールド装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/34 20060101AFI20211206BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20211206BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20211206BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20211206BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20211206BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B29C45/34
   B29C45/26
   B29C43/36
   B29C45/02
   B29C45/14
   B29C43/34
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-156287(P2018-156287)
(22)【出願日】2018年8月23日
(65)【公開番号】特開2020-29045(P2020-29045A)
(43)【公開日】2020年2月27日
【審査請求日】2021年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 祐大
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 高志
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−087453(JP,A)
【文献】 特開2017−164987(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/010319(WO,A1)
【文献】 特開2016−198945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 43/00−43/58
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金型と第二の金型でワークがクランプされ、モールド樹脂が前記第一の金型及び前記第二の金型のいずれかに形成されたキャビティ凹部へ圧送りされるモールド金型であって、
前記キャビティ凹部の底部を形成するキャビティ駒と、前記キャビティ駒の周囲に配置され前記キャビティ凹部の側部を形成するクランパが互いに相対移動可能に設けられ、
前記クランパには、前記キャビティ凹部に接続してエア若しくはモールド樹脂或いは双方の移動通路となるエアベント溝が彫り込まれており、当該エアベント溝を開閉するシャットオフピンがワーク外周端面と金型クランプ面との境界を跨いで前記エアベント溝内に進退動可能に配置されていることを特徴とするモールド金型。
【請求項2】
前記エアベント溝には吸引孔が接続されており、当該吸引孔より前記キャビティ凹部内のエアが吸引されて減圧される請求項1記載のモールド金型。
【請求項3】
円形状の前記ワークの外形である円弧線上に前記シャットオフピンが単数又は複数設けられ、前記クランパに対して相対移動可能に設けられている請求項1又は請求項2記載のモールド金型。
【請求項4】
前記キャビティ凹部及び前記エアベント溝を含む金型クランプ面にはリリースフィルムが吸着保持されている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のモールド金型。
【請求項5】
第一の金型及び第二の金型のいずれかに形成されたキャビティ凹部に連なるエア若しくはモールド樹脂或いは双方の移動通路となるようにワーク端部に重なり配置される架橋部を備えかつ金型クランプ面に対して金型開時は離間するように上動支持された可動駒を具備し、
前記可動駒は、型開放状態で金型クランプ面より離間しており、型閉じ動作により前記可動駒が押し下げられて前記架橋部により前記ワーク端部が挟み込まれてクランプされ、前記架橋部と金型ランナゲート又はエアベントとの間で樹脂路又はエアベント路が形成されることを特徴とするモールド金型。
【請求項6】
前記可動駒は、前記キャビティ凹部に前記架橋部が接続するように形成されたポット駒、ランナゲート駒、エアベント駒のいずれかである請求項5記載のモールド金型。
【請求項7】
少なくとも一つのポット孔が形成されたポット駒が金型クランプ面に対して金型開時に離間するように支持されており、前記ポット駒は前記ワーク端部に重なり配置される架橋部を備え、型閉じ動作によりクランパにより前記ポット駒が押し下げられて前記架橋部により前記ワーク端部が挟み込まれてクランプされ、前記架橋部と金型ランナゲート又はエアベントとの間で樹脂路又はエアベント路が形成される請求項5又は請求項6記載のモールド金型。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のモールド金型を備え、ポット内に装填されたモールド樹脂をキャビティ凹部に圧送りするプランジャの高さ位置に応じて、シャットオフピンがエアベント溝を開放位置から閉鎖位置へ切り替えてトランスファ成形する樹脂モールド装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のモールド金型を備え、金型の高さ位置に応じて、シャットオフピンがエアベント溝を開放位置から閉鎖位置へ切り替えてトランスファ成形若しくは圧縮成形する樹脂モールド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド金型及びそれを備えた樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワークの薄型化が進行し、モールド樹脂が充填されるキャビティが薄くなる一方樹脂モールドエリア(ワークサイズ)が拡大する傾向にある。また、半導体装置の高速化を図る観点から半導体チップ(以下単に「チップ」と称する)を基板にワイヤを介さずにバンプにより端子接続するフリップチップ接続をする製品が多くなってきている。このため、チップと基板間の狭い隙間にアンダーフィルモールドする必要がある。また、チップの発熱を放熱する必要性から、チップ表面を露出させて樹脂モールドするニーズもある。一例として露出させた面に放熱板を接着することで放熱効果が得られる。更には製造コストを下げる狙いから、ワークサイズが例えば100×300mm以下のストリップ基板タイプであったものから、より大型な円形状の半導体ウエハ状の上に配線パターンが形成された基板にチップをフリップチップ接続した例等がある。なお、数々の半導体製造方法があるため、一例を挙げると熱可塑性のテープを半導体ウエハ状の円形キャリアに貼り付けて、更にテープの上にチップを貼り付け、モールド成形後にキャリアとテープを剥がした後に、チップの端子側に再配線層を接続する、所謂eWLB (embedded Wafer Level Ball Grid Array)等もある。この場合、チップ背面側を露出させて樹脂モールドする要求がある。即ち、ワークが円形状のキャリアでありチップの放熱性を高めるためチップ露出を実現した樹脂モールドを行うことが要求されている。なお、今後は更なるコストダウン要求から円形状のワークよりさらに大きな四角形大判ワークでチップ露出成形する要求も出てくると思われる。
【0003】
上述したチップを熱剥離性テープを介してキャリアの上にフリップチップ接続したワークを樹脂モールドする場合、薄く狭い箇所にモールド樹脂を注入するため、樹脂圧を加えやすいトランスファ成形が用いられるが、樹脂の未充填エリアやボイドが発生し易い傾向にある。モールド樹脂の未充填やボイドを発生させないためには、キャビティ凹部内若しくはモールド樹脂から排出されるエア成分を効率よく排出させることが必要になる。このため、キャビティ凹部に接続するエアベント溝を大きく形成して吸引力を高めることが考えられるが、エアベント溝を大きくすると、樹脂漏れが発生し易くなる。そこで、エアを排出し易くかつモールド樹脂を漏れないようにする必要がある。
【0004】
そこで、モールド金型からエアを排出し易くし、かつモールド樹脂を不要な箇所に漏れないようにするため、ワーク(基板)上若しくは金型上に設けられたエアベント上に可動ピン(シャットオフピン)を設けたモールド金型を提案した(特許文献1:特開2012−192532号公報,特許文献2:特開2017−209904号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−192532号公報
【特許文献2】特開2017−209904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、可動ピンを金型上に配置した場合には、モールド樹脂の樹脂路がワーク端部(例えば半導体ウエハやキャリアの外周面)を跨いで形成されているため、面取りしてあるワークの外周面と金型面の隙間に漏れるおそれがある。
また、可動ピンをワーク(半導体ウエハやキャリア)上に配置した場合には、ワークの外周端部近傍までチップが配置されるため、キャビティ凹部が設けられた金型で半導体ウエハの外周端部近傍でクランプすることになり、可動ピンをワーク上に配置することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に述べるいくつかの実施形態に適用される開示は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ワーク上のモールドエリアを可及的に広くすると共に、エアを排出し易くし、かつモールド樹脂を不要な箇所に漏れないようにするモールド金型を提供し、該モールド金型を備えることで樹脂充填性を改善し成形品質を向上させた樹脂モールド装置を提供することにある。
【0008】
以下に述べるいくつかの実施形態に関する開示は、少なくとも次の構成を備える。
即ち、第一の金型と第二の金型でワークがクランプされ、モールド樹脂が前記第一の金型及び前記第二の金型のいずれかに形成されたキャビティ凹部へ圧送りされるモールド金型であって、前記キャビティ凹部の底部を形成するキャビティ駒と、前記キャビティ駒の周囲に配置され前記キャビティ凹部の側部を形成するクランパが互いに相対移動可能に設けられ、前記クランパには、前記キャビティ凹部に接続してエア若しくはモールド樹脂或いは双方の移動通路となるエアベント溝が彫り込まれており、当該エアベント溝を開閉するシャットオフピンがワーク外周端面と金型クランプ面との境界を跨いで前記エアベント溝内に進退動可能に配置されていることを特徴とする。
【0009】
このように、シャットオフピンを金型クランプ面とワーク外周端面との境界を跨いでエアベント溝内に進退動可能に配置されていると、ワーク上に形成されるモールドエリアを可及的に広くすることができる。また、シャットオフピンを開放してキャビティ凹部内からエアベント溝を通じてエアを排出しながらモールド樹脂をキャビティ凹部内に充填し、モールド樹脂がキャビティ凹部よりエアベント溝に溢れ出すとシャットオフピンを閉鎖することでモールド樹脂を不要な箇所に漏れないようにすることができる。
【0010】
前記エアベント溝には吸引孔が接続されており、当該吸引孔より前記キャビティ凹部内のエアが吸引されて減圧されることが好ましい。
これにより、モールド金型が型閉じされるとキャビティ凹部内に減圧空間を形成して樹脂モールドすることができ、モールド金型からエアを排出し易くすることができる。
【0011】
円形状の前記ワークの外形である円弧線上に前記シャットオフピンの中心が配置され、前記クランパに対して相対移動可能に設けられていてもよい。
これにより、ワーク外形線上に沿ってシャットオフピンの中心が配置されるので、シャットオフピンはワークとクランパのクランプ面との境界を跨いでクランパに対して相対移動可能に配置されるので、ワーク上のモールドエリアを可及的に広くするとともにモールド樹脂がワーク端面とモールド金型の隙間に漏れるのを防ぐことができる。
【0012】
前記キャビティ凹部及び前記エアベント溝を含む金型クランプ面にはリリースフィルムが吸着保持されていてもよい。
これにより、フィルムによる金型メンテナンスの簡略化と、シャットオフピンの押圧によりフィルムが弾性変形してワーク外周端面とクランパのクランプ面との境界を押さえるので、樹脂漏れを確実に防ぐことができる。
【0013】
他のモールド金型においては、第一の金型及び第二の金型のいずれかに形成されたキャビティ凹部に連なるエア若しくはモールド樹脂或いは双方の移動通路となるようにワーク端部に重なり配置される架橋部を備えかつ金型クランプ面に対して金型開時は離間するように上動支持された可動駒を具備し、前記可動駒は、型開放状態で金型クランプ面より離間しており、型閉じ動作により前記可動駒が押し下げられて前記架橋部により前記ワーク端部が挟み込まれてクランプされ、前記架橋部と金型ランナゲート又はエアベントとの間で樹脂路又はエアベント路が形成されることを特徴とする。
これにより、キャビティ凹部に連なるエア若しくはモールド樹脂の移動通路に可動駒が配置され、様々な金型のレイアウトを採用しても、ワーク上のモールドエリアを可及的に広くすると共に、エアを排出し易くし、かつモールド樹脂を不要な箇所に漏れないようにすることができる。
この場合、可動駒は、キャビティ凹部に架橋部が接続するように形成されたポット駒、ランナゲート駒、エアベント駒のいずれであってもよい。
【0014】
また、少なくとも一つのポット孔が形成されたポット駒が金型クランプ面に対して金型開時に離間するように支持されており、前記ポット駒は前記ワーク端部に重なり配置される架橋部を備え、型閉じ動作によりクランパにより前記ポット駒が押し下げられて前記架橋部により前記ワーク端部が挟み込まれてクランプされ、前記架橋部と金型ランナゲート又はエアベントとの間で樹脂路又はエアベント路が形成されるようになっていてもよい。
これにより、トランスファ成形を行うにあたり、ポットからキャビティ凹部にモールド樹脂を圧送りする際に、架橋部上を樹脂が通過するのでワーク端面で樹脂漏れするおそれがなくなる。
【0015】
上述したいずれかのモールド金型を備えた樹脂モールド装置においては、ポット内に装填されたモールド樹脂をキャビティ凹部に圧送りするプランジャの高さ位置に応じて、シャットオフピンがエアベント溝を開放位置から閉鎖位置へ切り替えてトランスファ成形することを特徴とする。
或いは、金型の高さ位置に応じて、シャットオフピンがエアベント溝を開放位置から閉鎖位置へ切り替えてトランスファ成形若しくは圧縮成形することを特徴とする。
これにより、高さが低くて広いモールドエリアに樹脂圧を加えながらボイドや未充填エリアが発生することなくモールド樹脂を充填することができ、樹脂充填性を向上させると共に樹脂漏れも発生しないので成形品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
ワーク上のモールドエリアを可及的に広くすると共に、エアを排出し易くし、かつモールド樹脂を不要な箇所に漏れないようにするモールド金型を提供することができる。
また、上記モールド金型を備えることで樹脂充填性を改善し成形品質を向上させた樹脂モールド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】トランスファ成形による樹脂モールド装置のモールド金型を中心とした断面説明図である。
図2図1に続く樹脂モールド工程の説明図である。
図3図2に続く樹脂モールド工程の説明図である。
図4図3に続く樹脂モールド工程の説明図である。
図5図5(a)は上型平面図、図5(b)は下型平面図である。
図6】シャットオフピンとワーク外形位置とのレイアウト構成を示す拡大説明図である。
図7図7(a)(b)はポット駒とワーク外周端部との重なり配置を示す平面図及び断面図である。
図8】他例に係る樹脂モールド装置の断面説明図である
図9図9(a)はランナゲートを可動駒とした樹脂モールド装置の断面説明図、図9(b)はエアベントとランナゲートを可動駒とした樹脂モールド装置の断面説明図である。
図10】エアベントを可動駒とした圧縮成形用の樹脂モールド装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るモールド金型及びそれを備えた樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。尚、モールド金型というときは、モールドベースに各々支持された上型及び下型を指し示すものとし、型開閉機構(プレス装置)を除いたものを指し示すものとする。また、樹脂モールド装置をいうときは、モールド金型とこれを開閉する型開閉機構(一例として電動モータ及びねじ軸、又はトグルリンク機構等のプレス装置;図示せず)を少なくとも備えた装置で、さらに自動化のためには樹脂搬送装置またはワーク搬送装置、成形後のワーク搬出装置を備える装置である。トランスファ成形の場合、ポットに挿入されたプランジャを作動させるトランスファ機構、更には型閉じした際に金型内に減圧空間を形成する減圧機構等を備えているものとする。以下、モールド金型の構成を中心に説明するものとする。また、ワークWは、チップが搭載された半導体ウエハ状の円形形状を樹脂モールドする場合を想定しているが、円形には特に限定されず、四角形や長方形であっても良い。モールド金型は、一例として下型が可動型で上型が固定型として説明するが、上型が可動型で下型が固定型であっても良く、双方が可動型であってもよい。
【0019】
先ず、トランスファ成形用のモールド金型の一例について図1(a)及び図5(a)(b)を参照して説明する。
モールド金型1は、図示しないワーク搬送装置より搬入されたワークW及びモールド樹脂R1(例えば樹脂タブレットであるが、樹脂タブレットに限定されない)を上型2(第一の金型)と下型3(第二の金型)とでクランプして樹脂モールドし、成形後のワークW及び不要樹脂R2を図示しないワーク搬送装置により搬出されるようになっている。
【0020】
先ず上型2の構成について説明する。図1(a)において上型ベース2aには、その外周縁部に沿って上型ブロック2bが環状に吊り下げ支持されている。図5(a)に示すように、上型ブロック2bの下端面には、下型3との位置決め用の上型ロックブロック2cが突設されている。具体的には、矩形環状に形成された上型ブロック2bの2対の対向辺には、上型キャビティ凹部2g(ワークW)の中心を通過する中心線上に上型ロックブロック2c(凸型ブロック)が各々配置されている。なお、必ずしもワークWの中心を通過する中心線上にロックブロックを配置する必要は無く、すくなくとも各辺に設ければ良い。
【0021】
また、図1(a)に示すように、上型ブロック2bに囲まれた上型空間には、矩形状の上型クランパ2d、円形状の上型キャビティ駒2eがコイルばね2fを介して上型ベース2aに各々吊り下げ支持されている。上型キャビティ駒2e(キャビティ底部)及びこれを囲む上型クランパ2d(キャビティ側部)により上型キャビティ凹部2g(図5(a)参照)が形成されている。
【0022】
上型クランパ2dのクランプ面(下端面)には、上型カル2h及びこれに接続する上型ランナゲート2iが上型キャビティ凹部2gに接続するように彫り込まれている。また、上型クランパ2dのクランプ面には、上型キャビティ凹部2gを介して上型ランナゲート2iと反対側に上型キャビティ凹部2gに接続する複数の上型エアベント溝2jが彫り込まれている。各上型エアベント溝2jには、シャットオフピン2kが開閉可能に組み付けられている。シャットオフピン2kは、上型ベース2a内にコイルばね2mを介して下方に向かって付勢された状態で組み付けられ、上型クランパ2dに上下方向に設けられた貫通孔内に挿入されている。これにより、シャットオフピン2kの先端(下端面)は、上型エアベント溝2jの溝底部と略面一となる位置で支持されている。また、上型クランパ2dのクランプ面には上型オーバーフローキャビティ2nが彫り込まれている。上型オーバーフローキャビティ2nは複数の上型エアベント溝2jと接続されている。上型オーバーフローキャビティ2nは、上型エアベント溝2jにエアを集中的に受け入れるようになっている。
【0023】
また、上型キャビティ凹部2gやこれに接続する樹脂路を含む上型クランプ面には、リリースフィルムFが図示しない吸引孔に吸着保持されて覆われる。ワークWに搭載されたチップTの表面を確実に露出成形するためには、上型キャビティ凹部2gに吸着保持されたリリースフィルムFにより覆う必要があるためである。リリースフィルムFは、リール間で長尺状に連続する長尺フィルムであっても、上型クランプ面のサイズに応じて切断された枚葉フィルムのいずれであってもよい。リリースフィルムFは、厚さ50μm程度で耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等を主成分とした単層又は複層膜が好適に用いられる。
【0024】
次に下型3の構成について説明する。
図1(a)において図示しない下型ベースには、その外周縁部に沿って下型ブロック3aが環状に支持されている。下型ブロック3aの上端面には、上型7との位置決め用の下型ロックブロック3b(2個一対の直方体ブロック又は1個の凹型ブロック)が設けられている。図5(b)に示すように矩形環状に形成された下型ブロック3aの2対の対向辺には、ワークWの中心を通過する中心線上に下型ロックブロック3bの凹部3cが各々配置されている。なお、必ずしもワークWの中心を通過する中心線上にロックブロックを配置する必要は無く、少なくとも各辺に設ければ良く、上型ロックブロック2cと下型ロックブロック3bが組みで噛み合えば、対向辺のどこに配置しても良い。
よって、上型ロックブロック2cが下型ロックブロック3bの凹部3cと噛み合うことで、上型2(上型キャビティ凹部2g)と下型3(ワークW)を位置合わせしてクランプするようになっている。
【0025】
下型ブロック3aのクランプ面には、シール材3d(Oリング等)が環状に嵌め込まれている。下型ブロック3aは、対向する上型ブロック2bのクランプ面と当接して金型内空間をシールする。下型ブロック3aには、ポット駒3e(可動駒)の下側に設けられたコイルばね3rにより下型ベースに対して常時上方に付勢されてフローティング支持されている。ポット駒3eは、モールド樹脂R1が装填されるポット孔3fを有しており、ポット孔3f内にはプランジャ3gが昇降可能に挿入されている。また、ポット駒3eの上型ランナゲート2iとの対向面には、外周端部ほど板厚が薄く形成された架橋部3hが形成されている。この架橋部3hは張り出し部となっていて、セット凹部3jにセットされるワークWの外周端部に一部重なり合うように(覆い被さるように)オーバーハング配置され、後述するように、ワーク外周端部上面をクランプするようになっている。ポット駒3eの上端は平坦な金型パーティング面と架橋部3hからなり略中央にポット孔3fが形成されている。
【0026】
また、下型ブロック3aに囲まれた金型空間には、円形状のワーク支持ブロック3iが下型ベースに支持固定されている。ワーク支持ブロック3iの上端面は、その周囲の下型ブロック3aの上端面より高さが、ワークWの板厚に相当する高さ分だけ低くなるように支持されている。これにより、ワークWは、ワーク支持ブロック3iとこれを囲む下型ブロック3aにより形成されたセット凹部3jに載置される。
【0027】
図5(b)に示すように、ポット駒3eの上端部には、セット凹部3jに載置されるワークWの外周端部上に架橋部3hがオーバーハング状に重なり配置される。架橋部3hは、上型ランナゲート2i(図5(a)参照)に対向する位置に設けられており、ワーク側外周縁部ほど板厚が薄くなるようにくさび状に形成されている。これにより、モールド樹脂R1はポット駒3eの上端面である架橋部3hと上型ランナゲート2iとの間を通過して上型キャビティ凹部2gに充填されるため、モールド樹脂R1がワークWの外周端部上を直接通過せずにモールドすることができ、ワーク端部形状に拠らず樹脂漏れが発生することがない。
【0028】
また、図5(b)に示すように、ワークWは円形のワーク端部近傍までフリップチップ接続されたチップTが多数マトリクス配置されている。モールドエリアは薄く面積が広いためチップT間の水平方向の隙間やチップT下の隙間にモールド樹脂R1の未充填エリアを生じないように樹脂の注入バランスを確保する必要がある。このため、モールド樹脂R1の充填性を考慮すると、できるだけキャビティに接続される先端側のランナゲート幅G(図5(a)又は図7参照)を広く確保したい。矩形状のポット駒3eを円形のワークWに重ね合わせると、架橋部3hのオーバーハング量L(ポット駒3eのワーク重なり端部よりワーク外周端部までの重なりの長さ:図7参照)が大きくなりすぎる。よって、上下型が型閉じされると、ポット駒3eの上端面と上型ランナゲート2iとの間に樹脂路が形成される。図5(a)及び図7のランナゲート幅G区間はポット駒3e端を直線にしたが、より多くのチップTを成形する為にはキャビティ円形状の曲線をそのまま延長した曲線凹部形状としても良い。また、ランナゲート幅Gは、上型カル2hより広がる方向に開いた拡幅形状(末広がり形状)の上型ランナゲート2iとなっている。
【0029】
更には、ポット駒3eの架橋部3hは、型開放状態で下型クランプ面より離間しており(図1(a)参照)、図示しないワーク搬送装置により保持されたワークWが架橋部3hの下方でセット凹部3jに位置決めされた後(図2(b)参照)、架橋部3hを当該ワークWの外周端部にオーバーラップするように重ね合わせてワークWがモールド金型1にクランプされる。このように、ワークWを金型構成だけではなくワーク搬送装置Wにより位置決めする構成としたのは、ワークWが円形であるがゆえに、従来の矩形基板の幅寄せ機構のように移動駒等を用いてワーク端部をポット側に押動しようとしてもワークWが大型であるがゆえに移動量(架橋部3hのオーバーハング量L)が多く、位置ずれやワークWの回転が生じやすいためである。なお、下型3には、ワークWに設けられた位置決め用のVノッチに対応する位置決めピン3sを設けることで回り止め兼位置決めを行っても良い(図5(b)参照)。
【0030】
図1(a)において、ワーク支持ブロック3iにはセット凹部3jに載置されるワークWを吸着保持する吸着孔3kが複数箇所に設けられている。吸着孔3kは図示しない吸引装置に接続されている。また、ワーク支持ブロック3iを貫通して移動可能な支持ピン3mが設けられている。支持ピン3mはセット凹部3jの底部よりピン先端部が突設された位置と、ピン先端部がワーク支持ブロック3i内に退避する位置とで移動可能に設けられている。図示しないワーク搬送装置に保持されたワークWがセット凹部3jに受け渡される際に複数の支持ピン3mのピン先端部をセット凹部3jより突設させておくことで、ワークWは支持ピン3mに受け渡される。これにより、ワークWをモールド金型に位置決めする際に金型面と摺動することにより傷つくことがない。尚、支持ピン3mを省略してもよい。
【0031】
また、下型ブロック3aのシール材3dより径方向内側であって、上型オーバーフローキャビティ2nに対向する位置に吸引孔3nが設けられている。吸引孔3nは図示しない吸引装置に接続されている。モールド金型1がシール材3dをクランプした状態で、吸引孔3nよりエア吸引することで、上型キャビティ凹部2g内に残留するエアを上型エアベント溝2j、上型オーバーフローキャビティ2nを通じて排出しながら樹脂モールドすることで、未充填エリアやボイドの発生を防いでいる。
【0032】
図6にシャットオフピン2kとワークWの外形位置とのレイアウト構成を示す。
上型キャビティ凹部2gには、エアベント溝2jが複数箇所(例えば3箇所)に接続され、これらは上型オーバーフローキャビティ2nに接続されている。シャットオフピン2kは、上型クランパ2d内に設けられて、各エアベント溝2jに進退動することで各エアベント溝2jを各々開閉するようになっている。
【0033】
シャットオフピン2kは、ワークWの外周端部を跨いで配置されている。円形状のワークWの外形である円弧線WL上にシャットオフピン2kの中心(円の中心)が位置するように配置され、上型クランパ2dに対して相対移動可能に設けられている。これにより、ワークW上のモールドエリアをワーク外周端部近傍まで可及的に広くするとともにモールド樹脂R1がワークWの外周端面(セット凹部3j)と下型ブロック3aとの界面(隙間)に漏れるのを防ぐことができる。他の従来例として、ワークW上のエアベント溝の途中にエアベントピンを配置した例があるが、ワークWにエアベントピンのスペースが必要になり、より多くのチップTを封止することができない。また、ワークW外までエアベント溝を設けてエアベント溝の途中にシャットオフピンを配置した例があるが、樹脂をワーク外に出さなければならないため、ワークセット凹部とワーク間に樹脂が漏れる可能性が高いため、シャットオフピン2kをワークWに跨るように配置した。
また、シャットオフピン2kを開放して上型キャビティ凹部2g内からエアベント溝2jを通じてエアを排出しながらモールド樹脂R1を上型キャビティ凹部2g内に流入させ、モールド樹脂R1が上型キャビティ凹部2gより上型エアベント溝2j、上型オーバーフローキャビティ2nに溢れ出し始めるとシャットオフピン2kを閉鎖してモールド樹脂R1をそれ以上流出させないようにすることができる。
【0034】
上型エアベント溝2jが接続する上型オーバーフローキャビティ2n(図5(a)参照)に対向する下型3には吸引孔3n(図5(b)参照)が接続されており、当該吸引孔3nより上型キャビティ凹部2g内のエアが吸引されて減圧される。これにより、モールド金型1が型閉じしてシール材3dがクランプされると上型キャビティ凹部2g内に減圧空間が形成されたままモールド樹脂R1が充填されるため、モールド金型1からエアを排出し易くすることができる。
【0035】
上型キャビティ凹部2g及び上型エアベント溝2jを含む上型クランプ面には図示しない吸引孔によりリリースフィルムFが吸着保持されている。これにより、シャットオフピン2kの押圧によりリリースフィルムFが弾性変形してワーク端面とモールド金型との界面を押さえるので樹脂漏れを確実に防ぐことができると共に、モールド後の樹脂との離型が容易にできる。
【0036】
ここで、図1乃至図4を参照して樹脂モールド装置による樹脂モールド動作例について説明する。尚、図1(b)以降には、上型ロックブロック2c及び下型ロックブロック3bの図示が省略されている。以降特に説明に必要ない場合は、図面省略した。図1(a)は、モールド金型1が型開きした状態を示す。上型2のクランプ面にはリリースフィルムF(長尺フィルム若しくは枚葉フィルム)が供給される。また下型3においては、下型ブロック3aより架橋部3hが離間するようにポット駒3eがコイルばね3rにより上方に付勢された状態にある。
【0037】
図1(b)は、型開きしたモールド金型1に図示しないワーク搬送装置によりワークW及びモールド樹脂R1(タブレット樹脂)が搬入された工程を示す。ワークW及びモールド樹脂R1は、ワーク搬送装置に保持され、ワークWは下型3のセット凹部3jに突き出した支持ピン3mに受け渡され、モールド樹脂R1はポット駒3eのポット孔3f内に装填される。尚、ワークWとモールド樹脂R1は同一の搬送装置ではなく、別の搬送装置によりモールド金型1に搬入するようにしてもよい。
【0038】
図示しないワーク搬送装置がモールド金型1外へ退避した後、図2(a)に示すように、上型2のクランプ面には、リリースフィルムFが吸着保持される。また、支持ピン3mがワーク支持ブロック3i内に退避することで、ワークWは、セット凹部3j内に収納され、吸着孔3kに吸着保持される。また、下型3の吸引孔3nからエア吸引を開始する。
【0039】
図2(b)に示すように、型閉じ動作が進行して、上型ブロック2bと下型ブロック3aがシール材3dを挟み込むと、吸引孔3n、上型オーバーフローキャビティ2n、上型エアベント溝2jを通じて上型キャビティ凹部2g内に減圧空間が形成される。また、ワークWは、上型クランパ2dにより半導体ウエハがクランプされチップTの表面は、リリースフィルムFを介して上型キャビティ駒2eに押し当てられる。また、ポット駒3eは、上型クランパ2dにより押し下げられ、架橋部3hがセット凹部3jに供給されたワークWの外周端部とオーバーラップするようにワーク上面端部と一部重ね合わせてクランプされる。
【0040】
図3(a)に示すように、プランジャ3gを上昇させてポット孔3f内で溶融したモールド樹脂R1を上型カル2h、上型ランナゲート2iを通じて上型キャビティ凹部2g内に圧送させる。このとき、モールド樹脂R1は上型ランナゲート2iと架橋部3hとの間に形成された樹脂路を通過して上型キャビティ凹部2g内に圧送され、架橋部3hを介しているためワークWと下型ブロック3aとの界面(隙間)に樹脂漏れすることは無い。モールド金型1をさらにクランプすると最終樹脂圧となり、図3(b)に示すようにシャットオフピン2kの先端が上型クランパ2dより相対的に突出して上型エアベント溝2jを遮断してモールド樹脂R1が加熱加圧されたまま保圧され硬化する。
このようにポット駒3e内に装填されたモールド樹脂R1を上型キャビティ凹部2gに圧送りするプランジャ3gの高さ位置に応じて、シャットオフピン2kがエアベント溝2jを開放位置から閉鎖位置へ切り替わる。なお、プランジャ3gの高さ位置の他、金型のクランプ高さによりシャットオフピン2kの位置を切り替えても良い。これにより、高さが低くて広いモールドエリアに樹脂圧を加えながらボイドや未充填エリアが発生することなくモールド樹脂を充填することができ、樹脂充填性を向上させると共に樹脂漏れも発生しないので成形品質を向上させることができる。
【0041】
樹脂モールドが完了すると、図4(a)に示すように、モールド金型1を型開きする。ポット駒3eがコイルばね3rの付勢によって架橋部3hがワークWより離間するように上方に移動する。ワークWはセット凹部3jに吸着保持されたままであるため、ポット駒3e上の不要樹脂R2(成形品カル)が成形後のワークW(パッケージ部)よりゲートブレイクされて分離する。上型2クランプ面にはリリースフィルムFが吸着保持されている。なお、プランジャ3gは高さ位置が変わっていないため、ポット駒3eの上動と共にプランジャ先端より不要樹脂R2が離型される。さらに、ポット駒3e上の不要樹脂R2は、プランジャ3gが不要樹脂R2を下から突上げるまで上動させて離型させても良い。
【0042】
図4(b)に示すように、セット凹部3jの吸着孔3kの吸着を解除して支持ピン3mが上昇してセット凹部3jからワークWをピン先端に支持したまま押し上げる。この状態で図示しないワーク搬送装置によりワークWを保持すると共に、ポット駒3eより不要樹脂R2(成形品カル)を吸着保持して、モールド金型1外へ搬出する。なお、ワークWと不要樹脂R2は同時に金型より排出しても良いが、別々の装置で排出しても良い。このとき、ワーク搬送装置に設けられたクリーニングブラシ(図示せず)を下型クランプ面に下降してブラシを回転させて下型面を擦りながらエア吸引(集塵)することで樹脂カスを除去しながら退避することが好ましい。また、上型2のクランプ面に吸着保持されていたリリースフィルムFは、吸着を解除され剥離されて新たなリリースフィルムFと交換される。
尚、ワーク搬送装置によりモールド金型1から搬出されたワークW及び不要樹脂R2は各々分別されて回収される。また、ワークWと不要樹脂R2の取り出し動作は別の搬送装置によって行ってもよい。
【0043】
上述した実施例では、ワークWは円形の半導体ウエハを想定していたが、必ずしも円形に限らず、短冊状の基板や大判サイズ(正方形又は長方形)の基板であってもよい。また、下型3に備えたポットはポット駒に対して1か所設けたが、1つのポット駒に複数のポットを配列しても良いし、複数行列で設けても良い。更にポット駒3eを1か所のみ図示したが、ポット駒はワークWに対して複数設けられていてもよい。
【0044】
また、上述した実施例は、上型2に上型キャビティ凹部2g、シャットオフピン2k等を設け、下型3にポット駒3e、セット凹部3j等が設けられていた。図8に示すように、上型2と下型3の構成を反転させてもよい。図8図1(a)に示す上型2と下型3が反転した構造であるので、符号をそのまま援用し´を付与して上下反転したことを示す。上型3´にはポット駒3e´、セット凹部3j´、吸着孔3k´、支持ピン3m´等が設けられ、下型2´には下型キャビティ凹部2g´、下型エアベント溝2j´、下型オーバーフローキャビティ2n´、シャットオフピン2k´等が設けられている。
【0045】
図9(a)は、他の実施例であり、可動駒としてポット駒3eに替えて、ポット3tは固定とし、可動のランナゲート駒3u(可動駒)を備えた樹脂モールド装置の断面説明図である。上述した実施例と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする、上型2の構成は同様であるので、下型3の構成を中心に説明する。
下型3の下型ブロック3aには、筒状の固定されたポット3tが組み付けられ、プランジャ3gが挿入されている。また、ポット3tとセット凹部3jとの間には、下型ランナゲート駒3uが昇降可能に設けられている。下型ランナゲート駒3uは下型ブロック3aを貫通する昇降ロッド3vの上端に連結支持されている。下型ランナゲート駒3uは図示しないコイルばね等により金型開時は上方に付勢されている。
下型ランナゲート駒3uの上面は対向する上型カル2hや上型ランナゲート2iとの間で樹脂路を形成する。特に、上型ランナゲート2iとの対向面は、セット凹部3jに載置されるワークWの上端部にオーバーハング状に重なり配置される架橋部3u1が形成されている。架橋部3u1は、上型キャビティ凹部2gに接続する外周端部ほど、さらにポット3tに接続する外周端部ほど板厚が薄くなるように両端がくさび状に形成されている。
【0046】
図9(b)は、図9(a)にさらに可動駒として上型キャビティ凹部と上型エアベント溝とに接続する下型ブリッジエアベント駒3wを備えた樹脂モールド装置の断面説明図である。下型3の下型ブロック3aには、筒状の固定されたポット3tが組み付けられ、プランジャ3gが挿入されている。下型ブロック3aのポット3tとセット凹部3jとの間には、下型ランナゲート駒3uが昇降可能に設けられている。下型ランナゲート駒3uは下型ブロック3aを貫通する昇降ロッド3vの上端に連結支持されている。下型ランナゲート駒3uは図示しないコイルばね等により金型開時は上方に付勢されている。
【0047】
下型ランナゲート駒3uの上面は対向する上型カル2hや上型ランナゲート2iとの間で樹脂路を形成する。特に、上型ランナゲート2iとの対向面は、セット凹部3jに載置されるワークWの上端部にオーバーハング状に重なり配置される架橋部3u1が形成されている。架橋部3u1は、上型キャビティ凹部2gに接続する外周端部ほど、さらにポット3tに接続する外周端部ほど板厚が薄くなるように両端がくさび状に形成されている。
【0048】
さらに上型クランパ2dには、上型キャビティ凹部2gと上型エアベント溝2jに接続する上型ブリッジエアベント溝2pが彫り込まれている。下型ブロック3aの上型ブリッジエアベント溝2pに対向する位置には、下型ブリッジエアベント駒3w(可動駒)が昇降可能に設けられている。下型ブリッジエアベント駒3wは下型ブロック3aを貫通する昇降ロッド3vの上端に連結支持されている。下型ブリッジエアベント駒3wは図示しないコイルばね等により金型開時は上方に付勢されている。下型ブリッジエアベント駒3wの上面は対向する上型ブリッジエアベント溝2pとの間でエアベント路を形成する。特に、セット凹部3jに載置されるワークWの上端部にオーバーハング状に重なり配置される架橋部3w1が形成されている。架橋部3w1は、上型キャビティ凹部2gに接続する外周端部ほど、さらに上型オーバーフローキャビティ2n側端部ほど板厚が薄くなるように両端がくさび状に形成されている。
このように、セット凹部3jの両側に下型ランナゲート駒3u及び下型ブリッジエアベント駒3wが配置された構成においては、図示しないワーク搬送装置は、図9(b)紙面に垂直方向にスライドしてワークWとセット凹部3jとの位置決め及びワークWの受け渡しが行われる。
【0049】
上述した樹脂モールド装置はトランスファ成形用のモールド金型1を用いていたが、圧縮成形用のモールド金型6を備えた樹脂モールド装置であってもよい。
図10に示す樹脂モールド装置は、図9(b)のモールド金型1の構成のうち下型3の構成を上型2と入れ替えた構成となっている。即ち、図10の上型2″の構成は、図9(b)の下型3の構成を反転させたもので、符号に″を付して示してある。下型3″の構成は、下型ベース3a″と下型ブロック3b″囲まれた構成が異なっている。以下、異なる構成について説明する。
【0050】
下型3″は、下型ベース3a″にその外周縁部に沿って下型ブロック3b″が環状に支持されている。下型ブロック3b″の上端面には、上型2″との位置決め用の下型ロックブロック(図示せず)が突設されている。
また下型ブロック3b″に囲まれた下型空間には、環状の下型クランパ3d″がコイルばね3f″を介して下型ベース3a″にフローティング支持されている。また、下型クランパ3d″に囲まれて下型キャビティ駒3e″が下型ベース3a″に支持固定されている。下型キャビティ駒3e″(キャビティ底部)及びこれを囲む下型クランパ3d″(キャビティ側部)により下型キャビティ凹部3xが形成されている。
【0051】
下型クランパ3d″のクランプ面(上端面)には下型キャビティ凹部3xに接続する下型ブリッジエアベント溝3p″が彫り込まれている。下型ブリッジエアベント溝3p″にはさらに複数の下型エアベント溝3j″が接続している。各下型エアベント溝3j″には、シャットオフピン3k″が開閉可能に組み付けられている。シャットオフピン3k″は、下型ベース3a″内にコイルばね3m″を介して上方に向かって付勢された状態で組み付けられている。これにより、シャットオフピン3k″の先端(上端面)は、下型エアベント溝3j″の溝底部と略面一となる位置で支持されている。下型キャビティ凹部3xを含む下型クランプ面にはリリースフィルムFが吸着保持されていることが好ましい。尚、シャットオフピン3k″による下型エアベント溝3j″の開閉位置の切り替えは、金型のクランプ高さにより行われる。
【0052】
ワークWは上型2″のセット凹部2j″に吸着保持される。図示しないワーク搬送装置は、ワークWの外周端部に上型ブリッジエアベント駒2w″が各々オーバーハングするように重ね合わせて図10の紙面に垂直方向に搬入する。なお、上型ブリッジエアベント駒2w″の両端にはテーパ状の架橋部2w1″が設けられており、ワーク搬送装置には上型ブリッジエアベント駒2w″表面に樹脂残りが付着する可能性があるため、クリーニング機構は無くとも良いが、あった方が良い。
【0053】
尚、モールド樹脂R1は固形樹脂(タブレット樹脂)に限らず、例えば顆粒状樹脂、粉体状樹脂、液状樹脂等を供給してもよい。
【符号の説明】
【0054】
W ワーク 1 モールド金型 2,3´,2″ 上型 2a 上型ベース 2a´,3a″ 下型ベース 2b,2b´,3a´,2a″ 上型ブロック 2c,2b″ 上型ロックブロック 2d 上型クランパ 2d´ 下型クランパ 2e 上型キャビティ駒 2e´ 下型キャビティ駒 2f,2m,2f´,2f″,3r,3m″ コイルばね 2g 上型キャビティ凹部 2g´ 下型キャビティ凹部 2h 上型カル 2i 上型ランナゲート 2j 上型エアベント溝 2j´ 下型エアベント溝 2k,2k´,3k″ シャットオフピン 2n 上型オーバーフローキャビティ 2n´ 下型オーバーフローキャビティ 2p 上型ブリッジエアベント溝 2w″ 上型ブリッジエアベント駒 3,2´,3″ 下型 3a,2b´,3b″ 下型ブロック 3b 下型ロックブロック 3c 凹部 3d,3d´,2d″ シール材 3d″ 下型クランパ 3e,3e´ ポット駒 3e″ 下型キャビティ駒 3f ポット孔 3g,3g´ プランジャ 3h,3u1,2w1″,3w1 架橋部 3i,3i´,2i″ ワーク支持ブロック 3j,3j´,2j″ セット凹部 3j″ 下型エアベント溝 3k,3k´,2k″ 吸着孔 3m,3m´,2m″ 支持ピン 3n,3n´ 吸引孔 3p″ 下型ブリッジエアベント溝 3s 位置決めピン 3t ポット 3u 下型ランナゲート駒 3v,2v″ 昇降ロッド 3w 下型ブリッジエアベント駒 3x 下型キャビティ凹部 R1 モールド樹脂 R2 不要樹脂 F リリースフィルム
図1
図2
図3
図4
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図10