(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶加材を溶融及び凝固させて形成される溶着ビードにより積層体を積層造形し、前記積層体を機械加工して目標形状の造形物を形成する際の、前記積層体の余肉量を設定する方法であって、
前記積層体の造形後の熱収縮量を予測する熱収縮予測工程と、
前記造形物の前記目標形状の外縁を表す目標プロファイルを、前記熱収縮量に応じて膨張させた熱変形補正プロファイルを求める熱収縮補正工程と、
前記積層体の機械加工後の解放ひずみによる弾性変形量を予測する解放ひずみ予測工程と、
前記熱変形補正プロファイルを、前記解放ひずみによる変形方向の逆方向に前記弾性変形量に応じて変形させた弾性変形補正プロファイルを求める弾性変形補正工程と、
前記弾性変形補正プロファイルから前記積層体の外縁までの余肉量が、予め定めた基準範囲に収まるように、前記積層体の外縁形状を調整する余肉量設定工程と、
を備える余肉量設定方法。
前記余肉量設定工程において、前記余肉量が前記基準範囲に収まらない場合に、前記積層体の外縁形状を、前記溶着ビードの本数、ビード長さの少なくとも一方を変更して調整する請求項1又は2に記載の余肉量設定方法。
前記余肉量設定工程において、前記溶着ビードの積層方向の前記余肉量を、前記溶着ビードの1層当たりの厚さ以下に設定する請求項1〜3のいずれか一項に記載の余肉量設定方法。
前記積層体の外縁形状を示す積層体プロファイルと、前記熱変形補正プロファイル、前記弾性変形補正プロファイルの少なくとも一方と、を表示部に重ねて表示させる工程と、
前記積層体の造形領域の変更指示を受け付ける入力工程と、
入力された前記変更指示に応じて前記積層体の外縁形状を変更し、変更された前記積層体の前記積層体プロファイルを前記表示部に表示させる工程と、
を更に備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の余肉量設定方法。
溶加材を溶融及び凝固させて形成される溶着ビードにより積層体を積層造形し、前記積層体を機械加工して目標形状の造形物を形成する際の、前記積層体の余肉量を設定する余肉量設定装置であって、
前記積層体の造形後の熱収縮量を予測する熱収縮予測部と、
前記造形物の前記目標形状の外縁を表す目標プロファイルを、前記熱収縮量に応じて膨張させた熱変形補正プロファイルを求める熱収縮補正部と、
前記積層体の機械加工後の解放ひずみによる弾性変形量を予測する解放ひずみ予測部と、
前記熱変形補正プロファイルを、前記解放ひずみによる変形方向の逆方向に前記弾性変形量に応じて変形させた弾性変形補正プロファイルを求める解放ひずみ補正部と、
前記弾性変形補正プロファイルから前記積層体の外縁までの余肉量が、予め定めた基準範囲に収まるように、前記積層体の外縁形状を調整する余肉量設定部と、
を備える余肉量設定装置。
請求項1〜8のいずれか一項に記載の余肉量設定方法により設計された前記積層体を、前記溶着ビードにより積層造形し、前記機械加工を施して、前記目標形状の造形物に形成する造形物の製造方法。
溶加材を溶融及び凝固させて形成される溶着ビードにより積層体を積層造形し、前記積層体を機械加工して目標形状の造形物を形成する際の、前記積層体の余肉量を設計する余肉量設定方法の手順を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記積層体の造形後の熱収縮量を予測する熱収縮予測手順と、
前記造形物の前記目標形状の外縁を表す目標プロファイルを、前記熱収縮量に応じて膨張させた熱変形補正プロファイルを求める熱収縮補正手順と、
前記積層体の機械加工後の解放ひずみによる弾性変形量を予測する解放ひずみ予測手順と、
前記熱変形補正プロファイルを、前記解放ひずみによる変形方向の逆方向に前記弾性変形量に応じて変形させた弾性変形補正プロファイルを求める弾性変形補正手順と、
前記弾性変形補正プロファイルから前記積層体の外縁までの余肉量が、予め定めた基準範囲に収まるように前記積層体の外縁形状を調整する余肉量設定手順と、
を実行させるプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の余肉量設定装置を示すブロック図である。
本構成の余肉量設定装置100は、造形計画部11と、解析部13と、余肉量設定部15と、表示部17と、入力部19とを備える。余肉量設定装置100は、溶接装置を用いて溶着ビードを重ねて積層造形する手順を決定する。
【0014】
造形計画部11は、詳細については後述するが、溶着ビードを重ねて積層造形した積層体を機械加工して作製される造形物の目標形状の外縁を表す目標プロファイルPmと、機械加工前の積層体の外形を表す積層体プロファイルPsとを作成する。
【0015】
解析部13は、熱収縮予測部21と、熱収縮補正部23と、解放ひずみ予測部25と、解放ひずみ補正部27とを備える。
【0016】
熱収縮予測部21は、溶着ビードを重ねて積層造形した積層体の造形後の熱収縮量を予測する。
【0017】
熱収縮補正部23は、造形物の目標形状の外縁を表す目標プロファイルPmを、熱収縮予測部21によって予測された熱収縮量に応じて膨張させた熱変形補正プロファイルPmnを求める。
【0018】
解放ひずみ予測部25は、積層体に対して機械加工を行った後の解放ひずみによる弾性変形量を予測する。
【0019】
解放ひずみ補正部27は、熱収縮補正部23によって求められた熱変形補正プロファイルPmnを、解放ひずみによる変形方向の逆方向に、解放ひずみ予測部25で予測された弾性変形量に応じて変形させた弾性変形補正プロファイルPmdを求める。
【0020】
余肉量設定部15は、解析部13の解放ひずみ補正部27によって求められた弾性変形補正プロファイルPmdから積層体の外縁までの余肉量が、予め定めた基準範囲に収まるように、積層体の外縁形状を調整する。
【0021】
表示部17は、造形計画部11で作成された造形計画を表示する。また、この表示部17では、積層体の外縁形状を示す積層体プロファイルPsと、熱変形補正プロファイルPmn、弾性変形補正プロファイルPmdの少なくとも一方を重ねて表示する。
【0022】
入力部19では、作製しようとする積層造形物の形状を表す3次元モデルデータ(CADデータ等)や、各種の指示情報が入力される。また、入力部19は、積層体の造形領域の変更指示が入力可能となっている。入力部19から変更指示が入力されると、入力された変更指示に応じて積層体の外縁形状が変更され、変更された積層体の積層体プロファイルPsが表示部17に表示される。
【0023】
ところで、積層造形物の溶接変形及び残留応力は、一般に、有限要素法(Finite Element Method:FEM)を用いた熱弾塑性解析法又は弾性解析等を利用したコンピュータシミュレーションによって解析される。
【0024】
熱弾塑性解析法では、多数の微小時間ステップごとに各種の非線形要素まで考慮して現象を計算するので、高精度な解析をすることができる。一方、弾性解析では、線形要素のみを考慮して解析をするため、短時間で解析をすることができる。
【0025】
ビードを積層する積層造形によって造形物を造形すると、造形物の全箇所が金属の溶融・凝固プロセスを経ることになる。金属が溶融・凝固すると、造形物に固有ひずみ(塑性ひずみ、熱ひずみ)が発生する。この固有ひずみに起因した残留応力が造形物の内部に発生する。
【0026】
解析部13は、このような積層造形による形状変化を解析的に求める。解析部13は、例えば、部分モデル熱弾塑性解析部と、全体モデル弾性解析部とを備えた構成であってもよい。
【0027】
部分モデル熱弾塑性解析部は、入力された解析条件(積層造形条件,材料物性条件)に基づいて、造形物の部分的なモデルを用いて熱弾塑性解析をして固有ひずみ(塑性ひずみ、熱ひずみ)を算出する(熱収縮予測部21,熱収縮補正部23に相当)。
【0028】
全体モデル弾性解析部は、算出した固有ひずみに基づいて造形物の全体モデルについて弾性解析をして残留応力等を導出する(解放ひずみ予測部25,解放ひずみ補正部27に相当)。
【0029】
解析に使用される条件としては、熱源の出力、熱源の種類、ビームプロファイル、走査速度、走査シーケンス、ラインオフセット又は予熱温度等をパラメータとする積層造形条件と、材料のヤング率、耐力、線膨張係数、加工硬化指数等の機械的物性値と、熱伝導率又は比熱等の熱物性値等の材料物性条件とがある。
【0030】
このような解析処理は、プログラムに沿ってコンピュータで実行される。つまり、解析部13は、CPU等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、を具備するコンピュータとして構成することができる。この場合、
図1に示す各部の機能は、記憶装置に記憶された所定のプログラムをプロセッサが実行することによって実現することができる。
【0031】
次に、上記の余肉量設定装置100による造形計画に基づいて積層体を積層造形する溶接装置の一例を説明する。
図2は溶接装置の概略構成図である。
溶接装置200としては、例えば、
図2に示すアーク溶接装置等が利用できる。
【0032】
溶接装置200は、電源装置35と、先端軸にトーチ37が設けられたトーチ移動機構としての溶接ロボット39と、トーチ37に溶加材(溶接ワイヤ)Fmを供給する溶加材供給部41と、溶接ロボット39の駆動を制御する制御部43と、を有する。制御部43は、インターフェースを介して余肉量設定装置100とデータ通信される。
【0033】
溶接ロボット39は、例えば6軸の自由度を有する多関節ロボットであり、ロボットアームの先端軸に取り付けたトーチ37には、溶加材Fmが連続供給可能に支持される。トーチ37の位置や姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
【0034】
トーチ37は、溶加材Fmを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Fmの先端からアークを発生する。トーチ37は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給されるようになっている。アーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する積層造形物に応じて適宜選定される。例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Fmがコンタクトチップに保持される。
【0035】
溶加材Fmは、あらゆる市販の溶接ワイヤを用いることができる。例えば、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ(JIS Z 3312)、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ(JIS Z 3313)等で規定されるワイヤを用いることができる。
【0036】
溶加材Fmは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構により、溶加材供給部41からトーチ37に送給される。そして、制御部43からの指令により、溶接ロボット39はトーチ37を移動しつつ、連続送給される溶加材Fmを溶融及び凝固させる。これにより、溶加材Fmの溶融凝固体であるビードが形成される。
【0037】
具体的には、制御部43がプログラムを実行すると、溶接ロボット39や電源装置35等がプログラムされた所定の手順に従って駆動される。溶接ロボット39は、制御部43からの指令により、プログラムされた軌道軌跡に沿ってトーチ37を移動させるとともに、溶加材Fmを所定のタイミングでアークにより溶融させて、所望の位置にビードを形成する。
【0038】
溶加材Fmを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。アークを用いる場合は、シールド性を確保しつつ、素材、構造によらずに簡単にビードを形成できる。電子ビームやレーザにより加熱する場合は、加熱量を更に細かく制御でき、溶着ビードの状態をより適正に維持して、積層造形物の更なる品質向上に寄与できる。
【0039】
次に、溶接装置200を用いて造形する造形物の一例について説明する。
図3溶接装置によって製造される積層造形物の斜視図である。
図4は積層造形物における積層体及び造形物を示す積層造形物の断面図である。
図5は溶接装置によって造形する積層体及び造形物を示す説明図である。
【0040】
図3及び
図4に示すように、一例として示す積層造形物51は、円柱状の軸体53と、軸体53の外周に径方向外側へ突出する複数条(図示例では6条)の螺旋状のブレード55とを備える。複数のブレード55は、軸体53の軸方向中間部で、周方向に沿って等間隔に設けられたスクリュー形状となっている。
【0041】
図5に示すブレード55からなる造形物61は、軸体53となるベース62に複数層の溶着ビード63を積層して積層体65を造形し、この積層体65に対して機械加工で切削することで形成される。この造形物61は、溶着ビード63の積層方向に向かって側方へ偏ったオーバーハング形状となる部分を有している。
【0042】
積層体65に対して行う機械加工としては、最初に行われる荒削り用の工具(又は機械)で切削する荒加工と、荒加工後に仕上げ用の工具(又は機械)で切削する仕上げ加工とがある。仕上げ加工は、荒加工に対して遅い切削速度で行われるため、単位切り込み量当たりの加工時間が長い。
【0043】
次に、余肉量設定装置100による余肉設定の手順について説明する。
図6は造形物の造形計画を作成するまでの手順を示すフローチャートである。
図7は積層体及び造形物の熱収縮の様子を示す説明図である。
図8は造形物の熱収縮補正について説明する説明図である。
図9は造形物の解放ひずみの様子を示す説明図である。
図10は造形物の解放ひずみ補正について説明する説明図である。
図11は本発明の余肉設定方法による余肉量の補正について説明する説明図である。
【0044】
まず、
図1に示す入力部19から造形物61の形状を表す3次元モデルデータであるCADデータを入力する(S11)。CADデータには、造形物61の外縁の座標等、種々の寸法情報の他、必要に応じて参照される材料の種類や最終仕上げ等の情報も含まれる。
【0045】
入力部19から入力されたCADデータに基づいて、造形計画部11が、造形計画を作成する(S12)。具体的には、溶着ビード63を重ねて積層造形する積層体65の外形を表す積層体プロファイルPs及び積層体65を機械加工して作製される造形物61の目標形状の外縁を表す目標プロファイルPmを作成する。さらに、造形計画部11は、作成した積層体プロファイルPs及び目標プロファイルPmに基づいて、機械加工を施す前の造形体の周囲に設ける余肉量を算出する(S13)。
【0046】
図7に示すように、溶着ビード63からなる積層体65は、造形後に冷却されることで熱収縮する。つまり、積層体65の外形を表す積層体プロファイルPsが収縮し、これに伴い、目標プロファイルPmも収縮する。そこで、解析部13の熱収縮予測部21は、溶着ビード63を積層造形する積層体65における積層体プロファイルPsの造形後の熱変形を予測し(S14)、さらに、この熱変形による目標プロファイルPmの熱収縮量である変位δAを算出する(S15)。
【0047】
そして、解析部13の熱収縮補正部23が、
図8に示すように、目標プロファイルPmを熱収縮量に応じて膨張させた熱変形補正プロファイルPmnを求める。次に、余肉量設定部15が、造形計画部11で算出した余肉量と、熱収縮予測部21で予測された熱収縮量である変位δAとを比較する。そして、この余肉量が変位δAより大きく、かつ許容量αを加算した許容変位δA+α以下であるか否か(δA<余肉量≦δA+α)を判定する(S16)。ここで、許容量αは、余肉量に上限を持たせて過剰な余肉の機械加工を最小限に抑えるために予め設定した値である。
【0048】
造形計画部11で算出した余肉量が、変位δAより大きく、かつ許容変位δA+α以下の条件から外れている場合は、この条件を満たす余肉量に補正する。そして、造形計画部11は、熱変形補正プロファイルPmnに補正した余肉量を付加した積層体プロファイルPsを改めて作成する。補正前の余肉量が、変位δAより大きく、かつ許容変位δA+α以下の条件を満たしている場合は、その余肉量を含む積層体プロファイルPsを維持させる。
【0049】
図8に示すように、熱変形補正プロファイルPmnに補正することで、この熱変形補正プロファイルPmnの一部が作成当初の積層体プロファイルPsの最上部から突出されて余肉が確保できなくなることがある。また、熱変形補正プロファイルPmnに補正することで、例えば、積層体プロファイルPsの第1層の溶着ビード63の部分に長さが不足して余肉が確保できなくなることがある。そのような場合、造形計画部11は、最上部に1層分の溶着ビード63を追加し、さらに、第1層部分の溶着ビード63を延長した積層体プロファイルPsを改めて作成する(
図8中のハッチング部分63a,63b参照)。積層体プロファイルPsを修正する場合、溶着ビード63の積層方向の余肉量を溶着ビード63の1層当たりの厚さ以下に設定する。
【0050】
また、
図9に示すように、溶着ビード63からなる積層体65は、機械加工による荒加工を行うことで、残留応力が解放されて変形する。これにより、熱収縮補正部23で補正された熱変形補正プロファイルPmnは、解放ひずみによって変形することになる(
図9中ハッチングなしのPm参照)。
【0051】
そこで、解析部13の解放ひずみ予測部25は、荒加工後の変形を予測し(S17)、この変形による熱変形補正プロファイルPmnの弾性変形量(第1弾性変形量)である変位δcRを算出する(S18)。そして、解析部13の解放ひずみ補正部27は、
図10に示すように、熱変形補正プロファイルPmnを、解放ひずみによる変形方向の逆方向に弾性変形量に応じて変形させた第1弾性変形補正プロファイルPmd1を求める。次に、余肉量設定部15が、造形計画部11で算出した余肉量と、解放ひずみ予測部25で予測された弾性変形量である変位δcRを含む変位δA+δcRとを比較する。
【0052】
そして、余肉量が変位δA+δcRより大きく、かつ予め設定した許容量βを加算した許容変位δA+δcR+β以下であるか否か(δA+δcR<余肉量≦δA+δcR+β)を判定する(S19)。ここで、許容量βは、余肉量に上限を持たせて過剰な余肉の機械加工を最小限に抑えるために予め設定した値である。
【0053】
造形計画部11で算出した余肉量が、変位δA+δcRより大きく、かつ許容変位δA+δcR+β以下の条件から外れている場合は、この条件を満たす余肉量に補正する。造形計画部11は、第1弾性変形補正プロファイルPmd1に補正した余肉量を付加した積層体プロファイルPsを改めて作成する。補正前の余肉量が、変位δA+δcRより大きく、かつ許容変位δA+δcR+β以下の条件を満たしている場合は、その余肉量を含む積層体プロファイルPsを維持させる。
【0054】
さらに、荒加工後に仕上げ加工を行う場合にも、残留応力が解放されて僅かに変形する。つまり、第1弾性変形補正プロファイルPmd1は、仕上げ加工での解放ひずみによって変形されることとなる。そこで、解析部13の解放ひずみ予測部25は、仕上げ加工後の変形を予測し(S20)、この変形による第1弾性変形補正プロファイルPmd1の弾性変形量(第2弾性変形量)である変位δcFを算出する(S21)。
【0055】
解析部13の解放ひずみ補正部27は、前述と同様に、第1弾性変形補正プロファイルPmd1を、解放ひずみによる変形方向の逆方向に弾性変形量に応じて変形させた第2弾性変形補正プロファイルPmd2を求める。次に、余肉量設定部15が、造形計画部11で算出した余肉量と、解放ひずみ予測部25で予測された弾性変形量である変位δcFを含む変位δA+δcR+δcFとを比較する。そして、余肉量が変位δA+δcR+δcFより大きく、かつ予め設定した許容量γを加算した許容変位δA+δcR+δcF+γ以下であるか否か(δA+δcR+δcF<余肉量≦δA+δcR+δcF+γ)を判定する(S22)。ここで、許容量γは、余肉量に上限を持たせて過剰な余肉の機械加工を最小限に抑えるために予め設定した値である。
【0056】
造形計画部11で算出した余肉量が、変位δA+δcR+δcFより大きく、かつ許容変位δA+δcR+δcF+γ以下の条件から外れている場合は、この条件を満たす余肉量に補正する。そして、造形計画部11は、第2弾性変形補正プロファイルPmd2に補正した余肉量を付加した積層体プロファイルPsを改めて作成する。補正前の余肉量が、変位δA+δcR+δcFより大きく、かつ許容変位δA+δcR+δcF+γ以下の条件を満たしている場合は、その余肉量を含む積層体プロファイルPsを維持させる。
【0057】
このようにして、第2弾性変形補正プロファイルPmd2を求めた後、余肉量設定部15は、最終造形計画として、この第2弾性変形補正プロファイルPmd2に余肉を付加した積層体プロファイルPsを作成する。
【0058】
図11は積層体の各プロファイルを重ねて示す説明図である。余肉量設定装置100は、目標プロファイルPmに対して、熱収縮による変位δAを反映させた熱変形補正プロファイルPmnを作成し、この熱変形補正プロファイルPmnを、機械加工による変位δcR及び変位δcFを反映させた第2弾性変形補正プロファイルPmd2を作成する。そして、第2弾性変形補正プロファイルPmd2に余肉量を付加した領域を含む積層体プロファイルPsを作成する。
【0059】
以上、説明したように、上記の制御によれば、目標形状の外縁を表す目標プロファイルPmを、予測した熱収縮量に応じて膨張させ、さらに、予測した機械加工による解放ひずみの弾性変形量に応じて変形させることで、余肉量を適切に設定できる。これにより、造形後の熱変形と機械加工後の解放ひずみとを考慮した精度の高い造形及び機械加工ができ、また、機械加工にかかる時間を抑えて加工効率を高めることができる。
【0060】
これにより、アークを熱源として溶加材Fmを溶融させて溶着ビード63を積層して造形物61を造形する際に、溶着ビード63の熱による影響を考慮して造形物61を高い精度で造形できる。
【0061】
しかも、荒加工における解放ひずみと仕上げ加工における解放ひずみを考慮して余肉量を設定することで、より細かい余肉調整が可能となり、より高い精度の造形が可能となる。
【0062】
また、余肉量に応じて溶着ビード63の本数やビード長さを調整することで、設定した余肉量を確実に確保できる。
【0063】
また、溶着ビード63の積層方向の余肉量を溶着ビード63の1層当たりの厚さ以下に設定することで、積層する溶着ビード63の無駄となる部分が極力抑えられ、効率よく造形物を造形できる。
【0064】
特に、機械加工による解放ひずみの影響が顕著に生じるオーバーハング形状となる部分を有する造形物61を造形する際に、解放ひずみを考慮して余肉量を適切に設定できる。したがって、オーバーハング形状となる部分を有する造形物61を高い精度で造形できる。
【0065】
以上は、自動的に造形計画を作成する方式であるが、人為的な調整を加えることもできる。
【0066】
次に、人為的に造形計画を調整する方式について説明する。
図12は人手による修正を行う場合の造形物の造形計画を作成するまでの手順を示すフローチャートである。
【0067】
入力部19から造形物61の形状を表す3次元モデルデータであるCADデータを入力すると(S31)、このCADデータに基づいて、造形計画部11が造形計画を作成する(S32)。
【0068】
解析部13の熱収縮予測部21が、作成された造形計画における積層体65の造形形状の熱変形を予測する(S33)。そして、造形計画部11で作成された積層体65の造形形状である積層体プロファイルPsと、目標プロファイルPmに予測した熱収縮を反映させた熱変形補正プロファイルPmnとが表示部17に重ねて表示される(S34)。
【0069】
作業者は、表示部17に表示された造形形状に基づいて、余肉量を修正する必要があるか否かを判断する(S35)。余肉量の修正が必要と判断した場合は、入力部19を操作して、積層体プロファイルPsを修正するように変更指示を行う(S36)。造形計画部11では、入力された変更指示に応じて積層体65の外縁形状を変更し、変更された積層体65の積層体プロファイルPsを表示部17に表示させる。
【0070】
次に、解析部13の解放ひずみ予測部25が、積層体65に荒加工を行うことによる解放ひずみを予測する(S37)。そして、積層体プロファイルPsと、熱変形補正プロファイルPmnに予測した弾性変形を反映させた第1弾性変形補正プロファイルPmd1とが表示部17に重ねて表示される(S38)。
【0071】
作業者は、表示部17に表示された造形形状に基づいて、余肉量を修正する必要があるか否かを判断する(S39)。その結果、余肉量の修正が必要と判断した場合は、入力部19を操作して、積層体プロファイルPsを修正するように変更指示を行う(S36)。造形計画部11では、入力された変更指示に応じて積層体65の外縁形状を変更し、変更された積層体65の積層体プロファイルPsを表示部17に表示させる。
【0072】
次に、解析部13の解放ひずみ予測部25が、荒加工後に仕上げ加工を行うことによる解放ひずみを予測する(S40)。そして、積層体プロファイルPsと、第1弾性変形補正プロファイルPmd1に予測した弾性変形を反映させた第2弾性変形補正プロファイルPmd2とが表示部17に重ねて表示される(S41)。
【0073】
作業者は、表示部17に表示された造形形状に基づいて、余肉量を修正する必要があるか否かを判断する(S42)。その結果、余肉量の修正が必要と判断した場合は、入力部19を操作して、積層体プロファイルPsを修正するように変更指示を行う(S36)。造形計画部11では、入力された変更指示に応じて積層体65の外縁形状を変更し、変更された積層体65の積層体プロファイルPsを表示部17に表示させる。
【0074】
熱収縮、荒加工による解放ひずみ及び仕上げ加工による解放ひずみが反映された積層体64の造形形状である積層体プロファイルPsを最終造形計画として決定する(S43)。
【0075】
以上のように、作業者が表示部17の表示を確認しながら必要に応じて入力部19から手入力して変更指示を行うことで、熱収縮、荒加工による解放ひずみ及び仕上げ加工による解放ひずみが反映された最終造形計画を、作業者の経験に基づいて変更できる。そのため、造形計画を一層効率よく作成できる。さらに、表示部17に表示される変更された積層体65の積層体プロファイルPsの表示から、変更状態を容易に確認することができる。
【0076】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0077】
本発明は、ブレード55のようにオーバーハング形状を有する造形物の製造に用いて好適であるが、造形物としては、ブレード55に限らない。
【0078】
例えば、本発明は、
図13(A)に示すように、一方の側面が上方へ向かって次第に他方の側面から離間する方向へ傾斜するオーバーハング形状を有する造形物61や、
図13(B)に示すように、上方へ向かって両側面が同一方向へ傾斜する造形物61等の、弾性復帰する変形が生じやすい造形物の造形計画に用いて好適である。また、
図13(C)に示すように、上部に両側方へ突出する延出部分を有する断面視T字状の造形物61では、延出部分が上方に反る。このため、このような造形物61にも本発明を好適に用いることができる。
【0079】
なお、上記の例では、オーバーハング形状となる部分を含む造形物61の全体の造形領域を本発明の余肉設定方法によって調整したが、オーバーハング形状となる部分のみの造形領域の余肉調整を行ってもよい。この場合、オーバーハング形状となる部分のみの造形領域の余肉を調整するので、余肉の調整に要する時間を短縮させることができる。
【0080】
また、上記の例では余肉設定装置100が、溶接装置200とは別に設けられたコンピュータに備わり、コンピュータが、設定された余肉量の造形計画に基づいて、溶接装置200を駆動するプログラムを生成する態様となっている。余肉設定装置100は、このような態様に限らず、
図2に示す溶接装置200の制御部43に備わる態様であってもよい。
【0081】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させて形成される溶着ビードにより積層体を積層造形し、前記積層体を機械加工して目標形状の造形物を形成する際の、前記積層体の余肉量を設定する方法であって、
前記積層体の造形後の熱収縮量を予測する熱収縮予測工程と、
前記造形物の前記目標形状の外縁を表す目標プロファイルを、前記熱収縮量に応じて膨張させた熱変形補正プロファイルを求める熱収縮補正工程と、
前記積層体の機械加工後の解放ひずみによる弾性変形量を予測する解放ひずみ予測工程と、
前記熱変形補正プロファイルを、前記解放ひずみによる変形方向の逆方向に前記弾性変形量に応じて変形させた弾性変形補正プロファイルを求める弾性変形補正工程と、
前記弾性変形補正プロファイルから前記積層体の外縁までの余肉量が、予め定めた基準範囲に収まるように、前記積層体の外縁形状を調整する余肉量設定工程と、
を備える余肉量設定方法。
この余肉量設定方法によれば、目標形状の外縁を表す目標プロファイルを、予測した熱収縮量に応じて膨張させ、さらに、予測した機械加工による解放ひずみの弾性変形量に応じて変形させることで、余肉量を適切に設定できる。これにより、造形後の熱変形と機械加工後の解放ひずみとを考慮した精度の高い造形及び機械加工ができ、また、機械加工にかかる時間を抑えて加工効率を高められる。
【0082】
(2) 前記機械加工は、荒加工と仕上加工とを含み、
前記解放ひずみ予測工程は、前記荒加工による解放ひずみによって生じる第1弾性変形量と、前記仕上加工による解放ひずみによって生じる第2弾性変形量とをそれぞれ予測し、
前記弾性変形補正工程は、前記熱変形補正プロファイルを、前記第1弾性変形量に応じて変形させた第1弾性変形補正プロファイルと、前記第1弾性変形補正プロファイルを前記第2弾性変形量に応じて変形させた第2弾性変形補正プロファイルとを求める(1)に記載の余肉量設定方法。
この余肉量設定方法によれば、荒加工における解放ひずみと仕上げ加工における解放ひずみを考慮して余肉量を設定することで、より細かい余肉調整が可能となり、より高い精度の造形が可能となる。
【0083】
(3) 前記余肉量設定工程において、前記余肉量が前記基準範囲に収まらない場合に、前記積層体の外縁形状を、前記溶着ビードの本数、ビード長さの少なくとも一方を変更して調整する(1)又は(2)に記載の余肉量設定方法。
この余肉量設定方法によれば、余肉量に応じて溶着ビードの本数やビード長さを調整することで、設定した余肉量を確実に確保できる。
【0084】
(4) 前記余肉量設定工程において、前記溶着ビードの積層方向の前記余肉量を、前記溶着ビードの1層当たりの厚さ以下に設定する(1)〜(3)のいずれか一つに記載の余肉量設定方法。
この余肉量設定方法によれば、溶着ビードの積層方向の余肉量を溶着ビードの1層当たりの厚さ以下に設定することで、積層する溶着ビードの無駄となる部分が極力抑えられ、効率よく造形物を造形できる。
【0085】
(5) 前記積層体の外縁形状を示す積層体プロファイルと、前記熱変形補正プロファイル、前記弾性変形補正プロファイルの少なくとも一方と、を表示部に重ねて表示させる工程と、
前記積層体の造形領域の変更指示を受け付ける入力工程と、
入力された前記変更指示に応じて前記積層体の外縁形状を変更し、変更された前記積層体の前記積層体プロファイルを前記表示部に表示させる工程と、
を更に備える(1)〜(4)のいずれか一つに記載の余肉量設定方法。
この余肉量設定方法によれば、表示部に表示された積層体プロファイルに重ねて表示された熱変形補正プロファイル及び弾性変形補正プロファイルの少なくとも一方を確認し、積層体の造形領域の変更指示を入力することができる。これにより、熱収縮、機械加工による解放ひずみが反映された造形計画を効率よく作成できる。さらに、表示部に表示される変更された積層体の積層体プロファイルの表示から、変更状態を容易に確認できる。
【0086】
(6) 前記造形物は、前記溶着ビードの積層方向に向かってオーバーハング形状となる部分を有する(1)〜(5)のいずれか一つに記載の余肉量設定方法。
この余肉量設定方法によれば、機械加工による解放ひずみの影響が顕著に生じるオーバーハング形状となる部分を有する造形物を造形する際に、解放ひずみを考慮して余肉量を適切に設定できる。したがって、オーバーハング形状となる部分を有する造形物を高い精度で造形できる。
【0087】
(7) 前記積層体の前記造形物の前記オーバーハング形状となる部分のみ前記積層体の外縁形状を調整する(6)に記載の余肉量設定方法。
この余肉量設定方法によれば、機械加工による解放ひずみの影響が顕著に生じるオーバーハング形状となる部分を造形する際に、解放ひずみを考慮して余肉量を適切に設定できる。したがって、オーバーハング形状となる部分を高い精度で造形できる。また、オーバーハング形状となる部分のみの造形領域の余肉を調整するので、余肉の調整に要する時間を短縮できる。
【0088】
(8) 前記溶着ビードは、アークを熱源として前記溶加材を溶融させて形成する(1)〜(7)のいずれか一つに記載の余肉量設定方法。
この余肉量設定方法によれば、アークを熱源として溶加材を溶融させて溶着ビードを積層して造形物を造形する際に、溶着ビードの熱による影響を考慮して造形物を高い精度で造形することができる。
【0089】
(9) 溶加材を溶融及び凝固させて形成される溶着ビードにより積層体を積層造形し、前記積層体を機械加工して目標形状の造形物を形成する際の、前記積層体の余肉量を設定する余肉量設定装置であって、
前記積層体の造形後の熱収縮量を予測する熱収縮予測部と、
前記造形物の前記目標形状の外縁を表す目標プロファイルを、前記熱収縮量に応じて膨張させた熱変形補正プロファイルを求める熱収縮補正部と、
前記積層体の機械加工後の解放ひずみによる弾性変形量を予測する解放ひずみ予測部と、
前記熱変形補正プロファイルを、前記解放ひずみによる変形方向の逆方向に前記弾性変形量に応じて変形させた弾性変形補正プロファイルを求める解放ひずみ補正部と、
前記弾性変形補正プロファイルから前記積層体の外縁までの余肉量が、予め定めた基準範囲に収まるように、前記積層体の外縁形状を調整する余肉量設定部と、
を備える余肉量設定装置。
この余肉量設定装置によれば、造形後の熱変形と機械加工後の解放ひずみとを考慮した精度の高い造形及び機械加工ができ、また、機械加工にかかる時間を抑えて加工効率を高められる。
【0090】
(10) (1)〜(8)のいずれか一つに記載の余肉量設定方法により設計された前記積層体を、前記溶着ビードにより積層造形し、前記機械加工を施して、前記目標形状の造形物に形成する造形物の製造方法。
この造形物の製造方法によれば、余肉量を適切に設定した積層体を溶着ビードで造形し、その積層体を機械加工して目標形状とした造形物を、効率よく高精度に製造できる。
【0091】
(11) 溶加材を溶融及び凝固させて形成される溶着ビードにより積層体を積層造形し、前記積層体を機械加工して目標形状の造形物を形成する際の、前記積層体の余肉量を設計する余肉量設定方法の手順を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記積層体の造形後の熱収縮量を予測する熱収縮予測手順と、
前記造形物の前記目標形状の外縁を表す目標プロファイルを、前記熱収縮量に応じて膨張させた熱変形補正プロファイルを求める熱収縮補正手順と、
前記積層体の機械加工後の解放ひずみによる弾性変形量を予測する解放ひずみ予測手順と、
前記熱変形補正プロファイルを、前記解放ひずみによる変形方向の逆方向に前記弾性変形量に応じて変形させた弾性変形補正プロファイルを求める弾性変形補正手順と、
前記弾性変形補正プロファイルから前記積層体の外縁までの余肉量が、予め定めた基準範囲に収まるように前記積層体の外縁形状を調整する余肉量設定手順と、
を実行させるプログラム。
このプログラムによれば、目標形状の外縁を表す目標プロファイルを、予測した熱収縮量に応じて膨張させ、さらに、予測した機械加工による解放ひずみの弾性変形量に応じて変形させることで、余肉量を適切に設定することができる。これにより、造形後の熱変形と機械加工後の解放ひずみとを考慮した精度の高い造形及び機械加工ができ、また、機械加工にかかる時間を抑えて加工効率を高められる。