(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981960
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】流体を送り届けるシステムにおける流体特性の変化を受け入れるための気体を充填した多層化された嚢体
(51)【国際特許分類】
F16L 55/053 20060101AFI20211206BHJP
F15B 1/10 20060101ALI20211206BHJP
B32B 1/00 20060101ALI20211206BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
F16L55/053
F15B1/10
B32B1/00 Z
B32B27/00 Z
【請求項の数】23
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-503166(P2018-503166)
(86)(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公表番号】特表2018-523790(P2018-523790A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】US2016043316
(87)【国際公開番号】WO2017015448
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年6月26日
(31)【優先権主張番号】14/806,205
(32)【優先日】2015年7月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507293446
【氏名又は名称】アムトロール ライセンシング インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100094651
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 晃
(72)【発明者】
【氏名】コグリアーチ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・ハーレン,クリストファー,エー.
【審査官】
岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05709248(US,A)
【文献】
米国特許第05117873(US,A)
【文献】
特開平04−039496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/053
F15B 1/10
B32B 1/00
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を送り届けるシステムで使用するための吸収器であって、
a)内部室を画定する筐体と、
b)流体を送り届ける前記システムに前記筐体を連結するための前記内部室と流体連通する前記筐体から延びた連結器と、
c)流体を送り届ける前記システムにおける流体特性の変化を受け入れる前記筐体の前記内部室のなかに配設された気体を充填した少なくとも一つの嚢体と
を備え、
気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体は、一つの殻層が機能しない場合に殻を通り抜ける漏れ経路が形成されるのを防ぐ重合体の比較的薄い複数の殻層が連続したものを含む可撓性の重合体の多層化された前記殻を有し、
気体を充填した複数の嚢体が、前記筐体のなかに配設され、複数の前記嚢体のうちの一つ以上が機能しない場合に動作を継続するための冗長性を提供し、
気体を充填した複数の前記嚢体は、異なる構造を有し、可撓性又は剛性が異なる、
吸収器。
【請求項2】
請求項1記載の吸収器において、
前記筐体は、気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体が、流体を送り届ける前記システムにおける流体圧力の変化を受け入れるよう、流体を送り届ける前記システムに連結される、
吸収器。
【請求項3】
請求項1記載の吸収器において、
前記筐体は、気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体が、流体を送り届ける前記システムにおける流体体積の変化を受け入れるよう、流体を送り届ける前記システムに連結される、
吸収器。
【請求項4】
請求項1記載の吸収器において、
前記筐体は、気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体が、逆浸透濾過システムにおける流体体積の変化を受け入れて、流体を貯蔵する体積を提供するよう、流体を送り届ける前記システムに連結される、
吸収器。
【請求項5】
請求項1記載の吸収器において、
気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体は、概して球状の構成を有する、
吸収器。
【請求項6】
請求項5記載の吸収器において、
前記筐体は、概して球状の構成を有し、内径が、気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体の外径よりも大きい、
吸収器。
【請求項7】
請求項1記載の吸収器において、
前記筐体から延びる前記連結器は、ねじ継手である、
吸収器。
【請求項8】
請求項1記載の吸収器において、
気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体は、約5psiから約40psiの間の所定の事前装填圧力を有する、
吸収器。
【請求項9】
請求項1記載の吸収器において、
気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体が、空気又は窒素で事前装填されている、
吸収器。
【請求項10】
請求項1記載の吸収器において、
隣接した殻層が、異種材料から形成されている、
吸収器。
【請求項11】
請求項1記載の吸収器において、
重合体の多層化された前記殻は、エチレンビニルアルコール(EVOH)と、ポリエステルと、ポリエーテルと、ポリウレタンと、ポリエーテルウレタンと、ポリエステルウレタンと、エチレン酢酸ビニル/ポリエチレン共重合体と、ポリエステルエラストマー(ハイトレル)と、エチレン酢酸ビニル/ポリプロピレン共重合体と;ポリエチレンと、ポリプロピレンと、ネオプレンと、天然ゴムと、ダクロン/ポリエステルと、ポリ塩化ビニルと、熱可塑性ゴムと、ニトリルゴムと、ブチルゴムと、硫化ゴムと、ポリ酢酸ビニルと、メチルゴムと、ブナNと、ブナSと、ポリスチレンエチレンプロピレンと、ポリブタジエンと、ポリプロピレンと、シリコーンゴムとからなる群から選択された少なくとも一つで形成された重合体の層が連続したものを含む、
吸収器。
【請求項12】
請求項1記載の吸収器において、
重合体の多層化された前記殻は、重合体の層が七十二個も連続したものを含む、
吸収器。
【請求項13】
請求項1記載の吸収器において、
重合体の多層化された前記殻における最も外側の重合体の層は、その吸湿特性により、エチレンビニルアルコールEVOH以外の材料から形成されている、
吸収器。
【請求項14】
請求項1記載の吸収器において、
気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体は、殻の全体の厚さが、形成後において約0.035インチである、
吸収器。
【請求項15】
請求項1記載の吸収器において、
前記殻を形成する多層化された前記材料は、初めの厚さが、約0.065インチと0.075インチとの間の厚さのシートである、
吸収器。
【請求項16】
流体を送り届けるシステムで使用するための吸収器であって、
a)内部室を画定する概して球状の筐体と、
b)流体を送り届ける前記システムに前記筐体を連結するための前記内部室と流体連通する前記筐体から半径方向外側へ向けて延びたねじ継手と、
c)流体を送り届ける前記システムにおける水の圧力及び体積の変化を受け入れる前記筐体の前記内部室のなかに配設された空気を充填した概して球状の嚢体と
を備え、
前記嚢体は、約20から30psiの間の所定の事前装填圧力と、重合体の複数の殻層が連続したものを含む可撓性の重合体の多層化された殻とを有し、
隣接した重合体の殻層は、一つの殻層が機能しない場合に前記殻を通り抜ける漏れ経路が形成されるのを防ぐ異種の重合体材料から形成され、
概して球状の前記嚢体は、外径が、概して球状の前記筐体の内径よりも小さく、
気体を充填した複数の嚢体が、前記筐体のなかに配設され、複数の前記嚢体のうちの一つ以上が機能しない場合に動作を継続するための冗長性を提供し、
気体を充填した複数の前記嚢体は、異なる構造を有し、可撓性又は剛性が異なる、
吸収器。
【請求項17】
請求項16記載の吸収器において、
気体を充填した複数の前記嚢体は、前記殻層の数が異なる、
吸収器。
【請求項18】
請求項16記載の吸収器において、
気体を充填した複数の前記嚢体は、前記殻層の材料と相対的配列とのうち少なくとも一つが異なる、
吸収器。
【請求項19】
請求項16記載の吸収器において、
重合体の多層化された前記殻は、エチレンビニルアルコール(EVOH)と、ポリエステルと、ポリエーテルと、ポリウレタンと、ポリエーテルウレタンと、ポリエステルウレタンと、エチレン酢酸ビニル/ポリエチレン共重合体と、ポリエステルエラストマー(ハイトレル)と、エチレン酢酸ビニル/ポリプロピレン共重合体と;ポリエチレンと、ポリプロピレンと、ネオプレンと、天然ゴムと、ダクロン/ポリエステルと、ポリ塩化ビニルと、熱可塑性ゴムと、ニトリルゴムと、ブチルゴムと、硫化ゴムと、ポリ酢酸ビニルと、メチルゴムと、ブナNと、ブナSと、ポリスチレンと、エチレンプロピレンと、ポリブタジエンと、ポリプロピレンと、シリコーンゴムとからなる群から選択された少なくとも一つで形成された重合体の層が連続したものを含む、
吸収器。
【請求項20】
請求項16記載の吸収器において、
重合体の多層化された前記殻は、重合体の層が七十二個も連続したものを含む、
吸収器。
【請求項21】
請求項16記載の吸収器において、
重合体の多層化された前記殻における最も外側の重合体の層は、その吸湿特性により、
エチレンビニルアルコール(EVOH)以外の材料から形成されている、
吸収器。
【請求項22】
請求項16記載の吸収器において、
前記嚢体は、殻の全体の厚さが、形成後において約0.035インチである、
吸収器。
【請求項23】
請求項16記載の吸収器において、
前記殻を形成する多層化された前記材料は、初めの厚さが、約0.065インチと0.075インチとの間の厚さのシートである、
吸収器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国出願第14/806,205号(2015年7月22日出願)の利益を主張する。米国出願第14/806,205号は、米国出願第14/282,539号(2014年5月20日出願)の一部継続出願である。これは、現在、米国特許第9,366,373号として発行されている。この開示は、ここに参照により全体として組み入れられる。
【0002】
本主題発明は、流体を送り届けるシステムのための吸収器に関する。もっと詳細に言うと、気体を充填した多層化された嚢体に関する。これは、流体を送り届けるシステムのなかに存在する前記流体の特性の変化を受け入れるためのものである。これは、例えば、流体を送り届ける前記システムにおける水の加熱による体積の膨張を吸収し、水を送り届ける前記システムを通じて伝播する衝撃波若しくは水撃と関連した圧力サージを抑制し若しくは阻止し、又は、逆浸透水濾過システムにおける体積の膨張を受け入れて流体を貯蔵する体積を提供することを含む。
【背景技術】
【0003】
非圧縮性の流体(水など)は、特定の条件のもと、体積的な影響を生み出す。例えば、加熱されると、水は、体積が膨張する。固定され収容されたシステムにおいて、水のこの加熱された膨張によって、前記システムにおける前記圧力が増加する。別の体積の影響は、供給における流れが素早くかつ不意に閉じたとき、又は、流れにおける力が突然変化したとき、流体システムにおいて衝撃波が生起することである。前記流体システムは、通常、液体システムであるが、気体システムであることもある。そのような衝撃波は、配管システムの端部で弁を閉じたときに生起することがよくある。これにより、前記配管のなかで伝播する圧力波が生じる。これは、一般に、水撃と呼ばれる。
【0004】
流体を送り届けるシステムにおける圧力の変化(熱膨張、又は、供給の閉鎖若しくは前記流れの運動量の突然の変化による)は、重大な問題を引き起こし得る。例えば、水の流れの渋滞を生成し得る。これにより、圧力スパイクが生じる。これは、前記配管を物理的にガタガタ動かし得る。これにより、騒音及び振動が起きる。この騒音及び振動は、しばしば、住居又は建物のなかで聞こえ感じられ得る。前記水撃は、また、前記配管システムにおける前記配管及び部品に加わる応力を生み出す。これにより、前記システムにおける機能不全及び水による被害が起こり得る。
【0005】
前記水撃現象が存在することは、配管の配置を計画するときには予想できない場合があるが、訂正することはできる。特に、激しい配管の騒音、システムの機能不全及び損傷を防ぐために、装置が開発されてきた。これは、交互経路を提供する。これは、流体を送り届けるシステムにおける高い圧力スパイクを放散するなどして吸収する。
【0006】
例えば、衝撃抑制器が開発されてきた。これは、流体を送り届けるシステムにおける前記圧力スパイクを低減する。そのような衝撃抑制器は、水撃阻止器とも呼ばれ、空気の事前装填を利用して、空気小室又は空気クッションを提供する。これは、前記システムにおける前記圧力衝撃を吸収する。そのような装置の一例は、空気室を含む。これは、栓又は弁の近くに位置する地点で配管の壁のなかに位置する垂直な配管の形をしている。
【0007】
前記空気室は、クッションとして作用する。これにより、前記水と前記配管との間の衝突を防ぐ。前記圧力衝撃が前記衝撃抑制器に入ると、前記空気クッションが圧縮し、前記空気の圧力が増加して、前記衝撃を吸収する。この衝撃抑制器は、弁などのようなシステム部品のなかへ組み入れてもよい。そして、一般に、可動ピストンを含んでもよい。これは、前記配管の前記内径に封接している。前記ピストンの一方の側に空気を装填することにより、前記ピストンの他方の側における水の圧力が前記空気装填圧力を超えて増加するまで、前記水の圧力に対する抵抗を提供する。これが生起した場合、膨張した前記水が前記ピストンを押して前記配管に入る。
【0008】
可撓性の隔膜を含む衝撃吸収器も開発されてきた。これは、前記衝撃吸収器に入る前記水流から前記空気クッションを分離する。これは、配管システムにおける適切な位置に配置してもよい。これにより、前記システムにおいて水の流れが不意に停止し又は変化した場合、前記水が前記衝撃吸収器に入ることができる。前記水は、前記衝撃吸収器に入ると、前記隔膜と接触する。これを、前記水の側とは反対の側にある前記空気クッションへ向けて押して、前記空気クッションを圧縮する。前記隔膜と接触し前記空気クッションを圧縮することにより、前記圧力衝撃を吸収する作用をする。
【0009】
そのような衝撃抑制器は、水撃を低減し、それから生じる問題に対処することができるが、時間が経つにつれ、圧力衝撃及び体積膨張を吸収する能力を失いやすい。特に、前記隔膜は、しばしば、弱くなり、機能しなくなる。例えば、前記隔膜に沿った内側部分又は外縁においてである。この機能不全により、前記衝撃抑制器が水及び圧力の衝撃を吸収する能力が低減し、しばしば消滅する。
【0010】
更に、前記隔膜が機能せず、水が前記空気クッションの側のなかへ浸入することを許すと、一般的に保護されていない金属筐体であるものに前記水が接触する。これにより、前記システムにおける腐蝕及び錆が起こる。したがって、この種の衝撃吸収器の定期的な整備が必要であり、しばしば、前記システム全体を置き換える必要が生じる。加えて、この種の衝撃抑制器では、前記空気クッションを提供するため空気を事前装填する必要がある。これにより、前記衝撃吸収器の設計及び適用及び整備が複雑になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、また、改良された体積膨張吸収器を提供する。これは、システムから水の体積を吸収する。例えば、システムにおける水は、加熱したとき膨張する。これにより、前記システムにおける水の体積が増加し、その分を受け入れる必要がある。前記吸収器は、この増加した水の体積を容易に受け入れる。本発明は、また、吸収器を提供する。これは、逆浸透水濾過システムにおける体積的な膨張を受け入れる。これにより、流体を貯蔵する体積を提供する。これは、その後、栓又は蛇口に送り届けられ、消費される。
【0012】
本主題発明は、新規で有用な吸収器を対象とする。これは、流体を送り届けるシステムにおいて使用される。前記吸収器は、筐体を含む。これは、内部室を画定する。そして、連結器を含む。これは、前記筐体から延びている。これは、前記内部室と流体連通している。これは、流体を送り届ける前記システムに前記筐体を連結するためのものである。そして、気体を充填した少なくとも一つの嚢体を含む。これは、前記筐体の前記内部室のなかに配設されている。これにより、流体を送り届ける前記システムにおける流体特性の変化を受け入れる。気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体は、可撓性の重合体の多層化された殻を有する。これは、重合体の比較的薄い複数の殻層が連続したものを含む。これにより、一つの殻層が機能しない場合に、前記殻を通り抜ける漏れ経路が形成されるのを防ぐ。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記筐体は、気体を充填した前記嚢体が、流体を送り届ける前記システムにおける流体圧力の変化を受け入れるよう、流体を送り届ける前記システムに連結される。本発明の別の実施形態において、前記筐体は、気体を充填した少なくとも一つの前記嚢体が、流体を送り届ける前記システムにおける流体体積の変化を受け入れるよう、流体を送り届ける前記システムに連結される。本発明の更に別の実施形態において、前記筐体は、気体を充填した前記嚢体が、逆浸透濾過システムにおける流体体積の変化を受け入れて、流体を貯蔵する体積を提供するよう、流体を送り届ける前記システムに連結される。
【0014】
本主題発明の好ましい実施形態において、前記吸収器は、衝撃抑制器又は水撃阻止器として構成される。そして、筐体を含む。これは、内部室を画定する。そして、連結継手を含む。これは、前記筐体から半径方向外側へ向けて延びている。これは、前記内部室と流体連通している。そして、空気が充填された少なくとも一つの嚢体を含む。これは、前記筐体の前記内部室のなかに配設される。
【0015】
空気を充填した前記嚢体又は小室は、空気の圧力が約20から30psiの間である所定の事前装填を有する。これにより、流体を送り届ける前記システムのなかで伝播する圧力波を吸収したり、加熱又は井戸ポンプの活動に起因する、流体を送り届ける前記システムにおける体積的な膨張を受け入れたりする。事前装填された前記空気嚢体により、本主題発明の前記吸収器は、本質的に整備不要である。
【0016】
本主題発明の好ましい実施形態によれば、前記嚢体又は空気小室は、重合体の多層化された殻を有する。これは、重合体の比較的薄い複数の殻層が連続したものを含む。これにより、一つの殻層が機能しない場合に、前記殻を通り抜ける漏れ経路が形成されるのを防ぐ。好ましくは、前記筐体及び前記嚢体は、ともに、概して球状の構成を有する。しかし、前記筐体及び嚢体は、他の幾何学的構成を有してもよい。例えば、卵形構成などである。更に、前記筐体は、好ましくは、二つの半球状部分を含む。これは、スピン溶接によって組み立てられる。前記嚢体の前記外径は、好ましくは、前記筐体の前記内径よりわずかに小さい。これにより、前記嚢体は、前記筐体の前記内部室のなかで自由に動き回ることができる。
【0017】
好ましくは、前記嚢体の隣接する重合体の殻層は、異種の重合体材料から形成される。考えられるのは、重合体の多層化された殻が、一群から形成された重合体の層が連続したものを含んでもよいことである。これは、エチレンビニルアルコール(EVOH)と、ポリエステルと、ポリエーテルと、ポリウレタンと、ポリエーテルウレタンと、ポリエステルウレタンと、エチレン酢酸ビニル/ポリエチレン共重合体と、ポリエステルエラストマー(ハイトレル)と、エチレン酢酸ビニル/ポリプロピレン共重合体と;ポリエチレンと、ポリプロピレンと、ネオプレンと、天然ゴムと、ダクロン/ポリエステルと、ポリ塩化ビニルと、熱可塑性ゴムと、ニトリルゴムと、ブチルゴムと、硫化ゴムと、ポリ酢酸ビニルと、メチルゴムと、ブナNと、ブナSと、ポリスチレンエチレンプロピレンと、ポリブタジエンと、ポリプロピレンと、シリコーンゴムとからなる。
【0018】
また、考えられるのは、重合体の多層化された前記殻が、重合体の層が七十二層も連続したものを含んでもよいことである。しかしながら、重合体の多層化された前記殻における最も外側の重合体の層は、好ましくは、その吸湿特性により、エチレンビニルアルコールEVOH以外の材料から形成される。前記嚢体は、重合体材料の多層化されたシートから形成されたのち、好ましくは、殻の全体の厚さが約0.035インチである。これに関して、前記殻を形成する多層化された前記材料は、好ましくは、初めの厚さが約0.065インチと0.075インチとの間の厚さのシートである。
【0019】
考えられるのは、本主題発明の前記吸収器が、複数の空気嚢体又は小室を含んでもよいことである。ここで、前記空気嚢体のそれぞれが同様の構造を有し、又は、前記空気嚢体のうち一つ以上が異なる構造を有する。気体を充填した複数の前記嚢体は、複数の前記嚢体のうち一つ以上が機能しない場合に動作を継続するための冗長性を提供する。
【0020】
本主題発明の前記装置、システム及び方法のこのような特徴は、以下の記載から当業者にもっと容易に明らかになるだろう。これにより、以下に記載するいくつかの図面とともに本主題発明の好ましい実施形態が実施できるようになる。
【0021】
本主題発明が属する分野における当業者が、過度の実験をせずに本主題発明の前記吸収器をいかにして作製し使用するかを容易に理解できるよう、いくつかの図を参照しつつ、その好ましい実施形態を詳細にここで以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】流体を送り届けるシステムの説明図。このなかに、本主題発明の好ましい実施形態にしたがって構築された吸収器が設置され、前記システムにおける前記流体特性の変化を受け入れる。これは、圧力サージ及び体積的な膨張を含む。
【
図2】本主題発明の前記吸収器の分解斜視図。図示を容易にするため、部品を分離している。
【
図3】前記空気嚢体又は小室の重合体の多層化された前記殻の前記壁の断面図。これは、本主題発明の前記吸収器の一部を形成する。
【
図4】流体を送り届けるシステムの説明図。これは、本主題発明にしたがって構築された吸収器を有する逆浸透水濾過サブシステムを含む。これは、流体体積の膨張を吸収して、水を貯蔵する体積を提供するよう配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、図面を参照する。似た参照番号は、本主題発明の同様の構造的要素又は特徴を識別する。
図1に示すのは、流体を送り届けるシステム10である。これは、住宅のなかに位置する配管網からなる。これは、温水及び冷水を前記家全体にわたって送り届けるためのものである。図示したとおり、本主題発明の好ましい実施形態にしたがって構築された圧力/体積吸収器20は、冷水を送り届ける配管12及び温水を送り届ける配管14の双方と連繋して、流体を送り届ける前記システム10とともに流体特性の変化を受け入れる。
【0024】
使用時において、前記圧力/体積吸収器20は、流体を送り届ける前記システム10の前記配管12,14における圧力の変化及び体積の膨張を受け入れる。例えば、前記吸収器20は、様々な状況のもとで圧力の変化を受け入れてもよい。これは、前記配管における振動を低減するなどして防止するためである。これは、騒音を発生させ、時間が経つにつれ前記システムを損傷する場合がある。これにより、機能不全及び前記住居への水による被害が起こり得る。流体を送り届ける前記システムに連結された水栓又は弁を閉じたとき、圧力の変化が起こり得る。これは、前記システムの前記配管のなかで急速な圧力の蓄積を引き起こす。前記吸収器20は、また、体積的な膨張を受け入れてもよい。これは、流体を送り届ける前記システム10のなかの水が加熱され、又は、井戸ポンプの活動により水の圧力が増加したときに生起し得る。
【0025】
ここで、
図1,2を参照する。前記吸収器20は、概して球状の筐体22を含む。これは、概して半球状であり実質的に剛性の上側及び下側の二つの筐体部分24,26から形成されている。上側及び下側の前記筐体部分24,26は、対応する円周鍔部34,36を有する。図示したとおり、上側の前記筐体部分24の前記円周鍔部34は、下側の前記筐体部分26の前記円周鍔部36の上にわずかに重なるよう寸法設定され構成されている。これは、前記筐体22の最終的な組立を助ける。当業者が理解するだろうことは、これを逆にして、上側の前記鍔部の上に下側の前記鍔部が重なるようにしてもよいことである。
【0026】
組立をしている間、筐体22の上側及び下側の前記筐体部分24,26は、スピン溶接加工など、当分野で知の接合加工によって、対応する上側及び下側の前記鍔部34,36に沿って互いに接合される。非限定的な例により、組み立てられた前記筐体22は、高さが約4インチ1/2、外径が約3インチ1/2である。当業者が容易に理解するだろうことは、前記筐体の前記全体寸法が、前記システムの要件又は用途に応じて変わることである。
【0027】
前記筐体22は、内径(I.D.)を有する内部室28を画定する。連結継手又はねじ付きステム連結部30が、下側の半球状の前記筐体部分26から半径方向外側へ向けて延びている。前記連結継手30は、前記内部室28と流体連通している。そして、流体を送り届ける前記システム10に前記筐体22を連結するよう構成されている。これは、例えば
図1に示すとおりである。非限定的な例により、前記連結継手は、NPT連結サイズが1/2インチである。当業者が容易に理解するだろうことは、前記連結継手30が、図に示す前記雄ねじとは対照的に、雌ねじを有するよう構成してもよいことである。更に、前記連結継手は、システム設計要件に応じて標準の又は特殊な配管部品と連結するよう構成し適合してもよい。
【0028】
引き続き、
図2を参照する。本主題発明の前記圧力吸収器20は、更に、概して球状で気体を充慎し好ましくは空気を充填した嚢体又は小室50を含む。これは、前記筐体22の前記内部室28のなかに配設されている。これにより、体積的な膨張を受け入れたり、流体を送り届ける前記システム10のなかで伝播する圧力波を吸収したりする。
【0029】
大きさに応じて、前記嚢体50は、空気の圧力(又は窒素など同様の不活性気体状物質)が約20から30psiの間である所定の事前装填を有する。更に、空気の圧力が20psiの範囲である事前装填を、もっと大きさが小さい嚢体に使用してもよく、30psiの範囲にもっと近い事前装填圧力を、もっと大きさが大きい嚢体に使用してもよい。この差は、システム圧力の問題ではなく、むしろ、流体を送り届ける前記システム10のなかの特定の大きさの配管又は導管のなかで衝撃を引き起こす前記圧力の問題である。当業者が容易に理解すべきことは、前記嚢体又は小室50が、事前装填された前記圧力を調節する手段を持っていないことである。したがって、前記吸収器20は、本質的に整備不要である。これは、従来技術の圧力吸収器とは対照的あでる。これは、設置時に空気ステムを通して加圧される。これは、漏れ経路となる可能性があるものを画定する。
【0030】
図3に最もよく見えるとおり、前記嚢体50は、可撓性の重合体の多層化された殻52を有する。これは、重合体の比較的薄い複数の殻層54
(1〜n)が連続したものを含む。これにより、一つの殻層54が機能しない場合に、前記殻52を通り抜ける漏れ経路が形成されるのを防ぐ。隣接する殻層54
(1〜n)は、異種の材料から形成される。これにより、漏れ経路が前記殻52を通り抜けて一つの層から隣接する次の前記層に伝播するのが難しくなる。重合体の多層化された前記殻52は、重合体の層が七十二層も連続したものを含む。したがって、層54
(1〜72)である。
【0031】
前記殻52を形成する重合体の前記層54
(1〜n)は、一群の重合体材料から選択される。これは、エチレンビニルアルコール(EVOH)と、ポリエステルと、ポリエーテルと、ポリウレタンと、ポリエーテルウレタンと、ポリエステルウレタンと、エチレン酢酸ビニル/ポリエチレン共重合体と、ポリエステルエラストマー(ハイトレル)と、エチレン酢酸ビニル/ポリプロピレン共重合体と;ポリエチレンと、ポリプロピレンと、ネオプレンと、天然ゴムと、ダクロン/ポリエステルと、ポリ塩化ビニルと、熱可塑性ゴムと、ニトリルゴムと、ブチルゴムと、硫化ゴムと、ポリ酢酸ビニルと、メチルゴムと、ブナNと、ブナSと、ポリスチレンエチレンプロピレンと、ポリブタジエンと、ポリプロピレンと、シリコーンゴムとを含む。
【0032】
嚢体50の前記殻52の最も外側の層54
(1)は、水と接触するので、好ましくは、その材料の前記吸湿特性により、エチレンビニルアルコールEVOH以外の材料から形成される。更に、EVOHは、良好な耐浸透性を提供する一方、ポリエステルは、強度及び耐摩耗性を提供し、ポリエーテルは、水吸収を減少し、寿命を延ばす。ポリウレタンは、可撓性と耐摩耗性を提供する。
【0033】
非限定的な例により、選択された材料の組合せにより、気温−40Fから140F、水温30Fから180F、最小破裂圧力900psigで機能する嚢体が生じ得る。
【0034】
前記嚢体又は小室50は、実質的に同一の半球状部分62,64からまで構築される。これは、赤道上の継ぎ目に沿って、スピン溶接加工など、当分野で公知の接合技術により、互いに接合される。したがって、前記材料の選択は、前記嚢体50が前記継ぎ目において比較的良好な熱かしめ溶接性を有し、形状及び強度を維持するようにしなければならない。
【0035】
本主題発明の好ましい実施形態において、前記嚢体又は小室50は、半球状の二つの前記殻部分を形成し接合したのち、殻の全体の厚さが約0.035インチである。前記殻52を形成する材料の多層化された前記シートは、初めの厚さが約0.065から0.075インチの間である。一般に、球状の前記嚢体50は、形成されたとき、外径(O.D.)が前記筐体22の前記内部の内径(I.D.)よりわずかに小さい。
【0036】
前記嚢体又は小室50は、撓んで体積の膨張や圧力を吸収するよう構成されている。これは、例えば
図1の前記温水の側に示すとおりである。前記嚢体50を構築する多層化された前記材料は、抵抗力を提供する。これは、前記嚢体50の前記内部が、前記外部における前記衝撃圧力に対して基準圧力を維持するからである。したがって、前記衝撃による外部圧力の増加により、多層化された前記材料を、中空な前記球の前記基準圧力の内側へ向けて撓ませ、これにより、システムの前記衝撃圧力を吸収する。
【0037】
考えられるのは、複数の嚢体又は小室50を前記吸収器20の前記筐体22のなかに配設してもよいことである。いくつかの実施形態において、この複数の嚢体は、形状及び大きさが同一であり、同一の材料から構築してもよい。これにより、同様の圧力/水吸収能力を有する。他の実施形態において、複数の前記嚢体に、異なる形状や大きさや材料や圧力/水吸収能力を設けてもよい。そのような実施形態は、もっと大きい水の体積膨張が予想されるならば、有益である。これは、複数の前記嚢体が互いへ向けて圧縮することにより、第一の吸収容量を生じさせることができ、個々の嚢体それぞれが、更に、ある量の圧力や水体積を吸収することにより、第二の吸収容量を生じさせることができるからである。
【0038】
更に、前記嚢体のうちの一つが機能しない場合において、前記装置は、ある程度機能し続けられる。これは、残りの前記嚢体がまだ機能して、圧力や水の体積を吸収できるからである。複数の前記嚢体により、タンクが破滅的に「死ぬ」のを防ぐ。これは、前記冗長性によって、機能が(低下するものの)継続でき、前記システムにおける動作を維持するからである。これにより、製品の信頼性が向上するという利益が得られる。ただ一つの嚢体のタンクで空気小室又は嚢体が機能しなくなると、前記製品は、機能しなくなる。複数の空気小室又は嚢体があれば、一つの小室が機能しない場合、前記製品は、ある程度機能し続け、前記製品の寿命が延びる。適切に整備すれば、前記機能の低下により、前記システムのいずれかの部品が深刻な機能不全を起こす前に前記製品を交換することを通知できる。
【0039】
前記嚢体又は小室50は、前記抵抗力が、それと接触する前記水の圧力に整合し、それを吸収するよう構成されている。前記嚢体50は、更に、壁の厚さが、前記嚢体を形成するのに使用される前記材料とともに、必要に応じて圧力衝撃や水の体積膨張を制御し吸収するのに必要な特性を提供するよう形成されている。
【0040】
前記嚢体50は、水の体積や圧力を吸収したとき変形し、その後、圧力がかからなかったり、水の前記体積の増加を吸収していなかったりしたとき元の形状に戻るよう構成されている。前記嚢体50は、また、水の体積の増加や圧力を受けていないとき、元の形状に戻らないよう構成してもよい。いずれの場合でも、前記嚢体50は、元の形状又は変形した形状において、前記システムにおけるその後の圧力の変動や水の体積の変動を繰り返し吸収できる耐性が備わるよう組立てられる。
【0041】
前記嚢体50は、その所望の用途に応じて、多少の可撓性を有するよう組立ててもよい。例えば、可撓性がもっと大きな嚢体50により、水の体積の吸収能力がもっと大量になる。これは、撓む能力がもっと大きいからである。他方、剛性がもっと大きな嚢体50により、水の体積の吸収能力がもっと劣った量になる。これは、撓む能力がもっと少ないからである。前記簔体の前記殻に含まれる層の数や使用される前記材料及びその相対的配列は、所望の可撓性を達成するよう選択してもよい。
【0042】
ここで、
図4を参照する。図示されているのは、流体を送り届けるシステム100である。これは、住宅用台所のなかに位置する。流体を送り届ける前記システム100は、逆浸透水濾過サブシステム110を含む。これは、カウンタートップ蛇口112及び吸収器20と連通している。これは、本主題発明にしたがって構築されている。水送達システム100において、吸収器20の前記筐体22は、そのなかに位置する空気を充填した前記嚢体50が、前記逆浸透サブシステム110における流体の体積の変化を受け入れ、要求に応じて前記蛇口112にすぐに送り届けられる水を貯蔵する体積を提供するよう連結されている。そのような構成において、吸収器20の前記筐体22は、外径が約8インチ以上である。これは、濾過された水を少なくとも1ガロン以上貯蔵する体積を提供するためである。この構成において、空気を充填した前記嚢体50は、用途やシステム要件に応じて、約5から40psiの間の事前装填を有する。
【0043】
本主題発明を、いくつかの好ましい実施形態を参照しつつ、示し記述してきたが、当業者が容易に理解するだろうことは、添付の請求項によって定義されるとおりの本主題発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、そこに様々な変更や修正をしてもよいことである。