特許第6981965号(P6981965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6981965-半透膜 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981965
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】半透膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/14 20060101AFI20211206BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20211206BHJP
   B01D 69/06 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B01D71/14
   B01D69/08
   B01D69/06
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-510298(P2018-510298)
(86)(22)【出願日】2017年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2017011922
(87)【国際公開番号】WO2017175600
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2020年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-78342(P2016-78342)
(32)【優先日】2016年4月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-42753(P2017-42753)
(32)【優先日】2017年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 知弘
(72)【発明者】
【氏名】松村 裕之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 徹
(72)【発明者】
【氏名】大野 充
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 ソ連国特許発明第00789538(SU,A)
【文献】 特開昭64−036601(JP,A)
【文献】 特開平10−052630(JP,A)
【文献】 特公昭49−026944(JP,B1)
【文献】 ロシア国特許出願公開第02209658(RU,A)
【文献】 特開2005−247935(JP,A)
【文献】 VYAS M.D., et al.,Development and Characterization of Cellulose Acetate Benzoate Flat Osmotic Membranes,JOURNAL OF APPLIED POLYMER SCIENCE,1994年,V52,P1031-1035,Introduction, Table I-XIV
【文献】 URAGAMI T., et al.,Pervaporation characteristics for benzene/cyclohexane mixtures through benzoylcellulose membranes,MACROMOL. CHEM. PHYS.,1999年,V200,P1985-1990,Summary, P1986 [Benzoylation of cellulose], [Preparation of BzCell membrane]
【文献】 KHAN F. Z., et al.,Perfluoroacylated Ethyl Cellulose: Synthesis, Characterization, and Gas Permeation Properties,MACROMOLECULES,2006年,V39,P9208-9214,P9209 Scheme 1, [Pentafluorobenzoyl Derivative of Ethyl Cellulose (2e)], [Membrane Fabrication], Table 1-8
【文献】 LEE J. S., et al.,Preparation and characteristics of cross-linked cellulose acetate ultrafiltration membranes with high chemical resistance and mechanical strength,REACTIVE AND FUNCTIONAL POLYMERS,2015年12月30日,V99,P114-121,P115 2.2欄及び2.3欄、Fig. 1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 71/14
B01D 69/08
B01D 69/06
B01D 71/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換基を有していてもよいベンゾイル基を有しているセルロースエステルからなる半透膜であって、
前記置換基を有していてもよいベンゾイル基の置換度が2.0〜3.0の範囲のものである、水処理用途の中空糸膜。
【請求項2】
前記置換基を有していてもよいベンゾイル基が、ベンゾイル基、パラ−メチルベンゾイル基、オルソ−メチルベンゾイル基、パラ−メトキシベンゾイル基、オルソ−メトキシベンゾイル基、オルソ−カルボン酸(塩)ベンゾイル基、ジメチルベンゾイル基から選ばれるものである、請求項1記載の水処理用途の中空糸膜。
【請求項3】
逆浸透膜や正浸透膜の分離機能膜である、請求項1または2記載の水処理用途の中空糸膜。
【請求項4】
浄水施設、海水淡水化施設、汚水処理施設を含む水処理用途で使用されるものである、請求項1〜のいずれか1項記載の水処理用途の中空糸膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種分野における水処理用途に使用できる、三酢酸セルロース膜に比べて耐塩素性と耐アルカリ性の良い半透膜に関する。
背景技術
【0002】
膜素材として酢酸セルロースからなる膜を使用した水処理技術が知られている。
特許第5471242号公報には、三酢酸セルロースなどからなる耐塩素性のRO膜(段落番号0031)を使用した水処理方法の発明が記載されている。
特許第5418739号公報には、酢酸セルロースからなる正浸透処理用の中空糸型半透膜の発明が記載されている。段落番号0017には、酢酸セルロースが殺菌剤である塩素に対する耐性があること、耐久性の点で三酢酸セルロースが好ましいことが記載されている。
【0003】
特開平10−52630号公報には、低フラックス、中フラックス又は高フラックス範囲用の平板状膜、管状膜又は中空繊維膜の形の安定かつ貯蔵可能なセルロース透析膜の製法の発明が記載されている。製膜成分として変性されたセルロースを使用することが記載されている。
発明の概要
【0004】
本発明は、三酢酸セルロース膜に比べて耐塩素性と耐アルカリ性が高い、セルロースエステルからなる半透膜を提供することを課題とする。
【0005】
本発明は、セルロースエステルからなる半透膜であって、前記セルロースエステルが、置換基を有していてもよいベンゾイル基を有しているものである、半透膜を提供する。
【0006】
本発明の半透膜は、三酢酸セルロース膜に比べて耐塩素性と耐アルカリ性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1における多孔状フィラメントの製造方法の説明図。
【0008】
発明を実施するための形態
本発明の半透膜は、セルロースエステルからなるものであり、前記セルロースエステルが置換基を有していてもよいベンゾイル基を有しているものである。
置換基を有していてもよいベンゾイル基は、ベンゾイル基、またはオルソ位、メタ位、パラ位の1箇所以上に、メチル基、トリフルオロメチル基、tert-ブチル基、フェニル基、などのアルキル基、メトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、これらの塩などの酸基、ハロゲノ基、シアノ基、ニトロ基などの1種以上の置換基を有しているベンゾイル基である。
これらの中で、耐塩素性と耐アルカリ性が共に高く、且つ入手し易いことからベンゾイル基、パラ−メチルベンゾイル基、オルソ−メチルベンゾイル基、パラ−メトキシベンゾイル基、オルソ−メトキシベンゾイル基、オルソ−カルボン酸(塩)ベンゾイル基、ジメチルベンゾイル基から選ばれるものが好ましい。
置換基を有していてもよいベンゾイル基の置換度は、中空糸膜の耐塩素性と耐アルカリ性を高めるためには0.5〜3.0の範囲が好ましく、1.0〜3.0の範囲がより好ましく、1.5〜3.0の範囲が更に好ましく、2.0〜3.0範囲がより更に好ましく、2.5〜3.0の範囲がより更に好ましい。
本明細書において、セルロースエステルの各置換基の置換度は、1H−NMR及び13C−NMRにより確認することができる。
【0009】
セルロースエステルが、置換基を有していてもよいベンゾイル基ではない他の置換基を有している場合、他の置換基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基などの脂肪酸または脂肪酸エステル由来の基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、カルボキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基などを挙げることができる。
他の置換基は、1種の置換基でもよいし、2種以上の置換基でもよい。
本発明のセルロースエステルにおいて、置換基を有していてもよいベンゾイル基の置換度と、他の置換基の置換度と、置換されていないヒドロキシ基に相当する置換度(ヒドロキシ基置換度)との合計値は、3.0である。
【0010】
セルロースエステルは、置換されていないヒドロキシ基が残っていてもよいが、中空糸膜の耐塩素性を高めるためには置換されていないヒドロキシ基が少ない方が好ましく、置換されていないヒドロキシ基に相当する置換度は1.5以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
【0011】
セルロースエステルは、溶解パラメーター(フェドロス法)が21.5〜25.0(MPa)0.5のものが好ましく、22.5〜25.0(MPa)0.5のものがより好ましい。
溶解パラメーターは、Polymer Engineering and Science, Vol. 14, No.2, P.147-P.154に記載されているR. F. Ferorsによる溶解パラメーターの算出方法(フェドロス法)により算出されたものである。水の溶解パラメーターは47.9(MPa)0.5である。
【0012】
セルロースエステルは、セルロースベンゾエート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネートベンゾエート、セルロースブチレートベンゾエート、メチルセルロースベンゾエート、エチルセルロースベンゾエートなどを使用することができるが、三酢酸セルロース膜と同様の透水性能、低ファウリング性能があることから、セルロースベンゾエート、セルロースアセテートベンゾエートが好ましい。
【0013】
本発明の半透膜は、置換基を有していてもよいベンゾイル基を有しているセルロースエステルを使用して製造されるものであり、前記セルロースエステル、溶媒、および必要に応じて塩類、非溶媒を含む製膜溶液を使用することができる。
溶媒は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を挙げることができるが、N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましい。
非溶媒は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールを挙げることができる。
塩類は、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグシウム、塩化カルシウムを挙げることができるが、塩化リチウムが好ましい。
セルロースエステルと溶媒の濃度は、セルロースエステル10〜35質量%、溶媒65〜90質量%が好ましい。
塩類は、セルロースエステルと溶媒の合計質量100質量部に対して、0.5〜2.0質量部が好ましい。
【0014】
本発明の半透膜は、上記した製膜溶液を使用して、公知の製造方法、例えば特許第5418739号公報の実施例に記載の製造方法を利用して製造することができる。
本発明の半透膜は、中空糸膜、逆浸透膜や正浸透膜の分離機能膜または平膜が好ましい。
実施例
【0015】
製造例1(二酢酸セルロースのケン化とベンゾイル化によるセルロースエステルの製造)
攪拌機、冷却管を備えた丸底フラスコに、アンモニアを含有する水溶液900gをいれ、次にアセチル置換度が2.44の二酢酸セルロース100gをいれ、室温で攪拌した。
24時間後に、吸引ろ過により固形物を集め、セルロースを含むウエットケーキを得た。得られたウエットケーキを、DMSO(N,N−ジメチルスルホキシド)300gに入れて、1時間室温で攪拌し、再度吸引ろ過を実施して固形物を集めた。
続いて、このセルロースを、塩化リチウム56gをDMAC(N,N−ジメチルアセトアミド)460gに溶解させた溶液に加えて、100℃で攪拌し、セルロースを溶解させた。
攪拌機、冷却管を備えた丸底フラスコに、上記のセルロース溶液を入れ、攪拌を開始した。攪拌を継続しながら、セルロースのヒドロキシ基に対して過剰量の塩化ベンゾイルを滴下ロートから滴下した後、80℃に昇温し、攪拌を継続した。
得られた反応混合物を室温まで冷却し、攪拌しながらメタノールを加え、沈殿を形成させた。沈殿物を吸引ろ過により集め、粗セルロースベンゾエートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキに、エタノールを加え、攪拌することにより洗浄し、脱液した。このエタノールによる洗浄操作をさらに3回繰り返した後、水で溶媒置換を行った。熱風乾燥機で乾燥させ、セルローストリベンゾエートを得た。ベンゾイル基の置換度は2.90であった。
置換度は、1H−NMR及び13C−NMRにより確認した。
【0016】
製造例2〜5
表1に示すアセチル基置換度の酢酸セルロースを用い、製造例1と同様にそれぞれの酢酸セルロースのヒドロキシ基に対して過剰量の塩化ベンゾイルを反応させ、セルロースエステルを得た。
【0017】
製造例6
製造例1と同様に過剰量の塩化ベンゾイルを滴下した後、80℃に昇温し、製造例1より長い時間攪拌を継続することにより、ベンゾイル基の置換度が3.00のセルローストリベンゾエートを得た。
置換度は、1H−NMR及び13C−NMRにより確認した。
【0018】
【表1】
【0019】
表1中、製造例1〜6の各セルロースエステルの溶解パラメーターは、Polymer Engineering and Science, Vol. 14, No.2, P.147-P.154に記載されているR. F. Ferorsによる溶解パラメーターの算出方法(フェドロス法)により算出した。
【0020】
実施例1(中空糸膜の製造)
製造例2で得たセルロースアセテートベンゾエートを使用して、中空糸膜(内径/外径=0.8/1.3mm)を製造した。
製膜溶液は、セルロースアセテートベンゾエート/DMSO/LiCl=21.0/78.0/1.0(質量%)を使用した。
製膜方法は、次のとおりである。
製膜溶液を105℃で十分に溶解し、これを二重菅型紡糸口金の外側から、80℃で吐出すると共に、内管から内部凝固液として水を吐出し、50℃の水槽中で凝固させ、洗浄槽で十分に溶剤を除去した。
得られた中空糸膜は、水分を乾燥させないウェット状態のまま保管して、表2に示す各項目を測定した。
【0021】
実施例2(中空糸膜の製造)
製造例6で得たセルローストリベンゾエートを使用して、中空糸膜(内径/外径=0.8/1.3mm)を製造した。
製膜溶液は、セルローストリベンゾエート/NMP(N−メチルピロリドン)/DMSO=20.0/20.0/60.0(質量%)を使用した。
製膜方法は、実施例1と同様に実施した。
【0022】
比較例1
三酢酸セルロースを使用し、実施例1と同様にして中空糸膜(内径/外径=0.8/1.3mm)を製造した。得られた中空糸膜について表2に示す各項目を測定した。
【0023】
比較例2
二酢酸セルロースを使用し、実施例1と同様にして中空糸膜(内径/外径=0.8/1.3mm)を製造した。得られた中空糸膜について表2に示す各項目を測定した。
【0024】
試験例1(中空糸膜耐塩素性試験)
実施例1、比較例1、2の中空糸膜(内径/外径=0.8/1.3mm,長さ1m)をそれぞれ50本使用した。
有効塩素濃度500ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を試験液に用いた。有効塩素濃度は、柴田科学製ハンディ水質計AQUAB,型式AQ-102を使用し測定した。
50本の中空糸膜を、試験液となる液温が約25℃の500ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液1Lを入れたポリ容器に完全に浸かるように浸漬し、7日毎に新たに500ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調整し、試験液を全量交換した。
また、7日毎に10本の中空糸をポリ容器から取り出し、水道水で水洗後、水分を拭き取り湿った状態のまま引張り強さ及び伸びを測定した。
【0025】
試験例2(「引張り強さ」、「伸び」の測定と耐塩素性の判断方法)
小型卓上試験機(島津製作所製EZ‐Test)を用いて、チャック間距離5cmになるようウェット状態の中空糸膜を一本ずつ挟んで、引張り速度20mm/minで測定を実施した。
500ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬させていない中空糸膜の「引張り強さ」の値を基準として、その値が基準値の90%を下回る際の時間(日数)を求めた。なお、各測定時間の「引張り強さ」をプロットし、検量線を作成することで、基準値の90%を下回る際の時間(日数)を求めた。
なお、「引張り強さ」は、同じサンプルで10本測定した「引張り強さ」の最高値と最低値を除いた8本の平均値とした。
【0026】
試験例3(純水透過係数)
実施例1、2および比較例1、2で得た中空糸膜の一端側を閉じた状態で、他端側から純水を0.1MPaで供給し、中空糸膜から一定時間に透過する純水の容量を測定した。この容量を採取時間(h)、中空糸膜内表面の膜面積(m2)で除して、純水透過係数〔L/m2・h(0.1MPa)〕を求めた。
【0027】
【表2】
【0028】
表2中、各実施例1,2及び各比較例1,2の「引張り強さ」と「伸び」は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬させていない中空糸膜の引っ張り強さと伸びをそれぞれ示している。
【0029】
実施例1及び実施例2の中空糸膜の耐塩素性は、それぞれ30日及び70日以上となり、比較例1の三酢酸セルロース、比較例2の二酢酸セルロースの中空糸膜の耐塩素性、それぞれ5日および3日に比べ、格段に優れていた。
【0030】
以下、本発明の中空糸膜の物理的性質の傾向を測定するための多孔状フィラメントの製造方法(紡糸方法)を説明する。
【0031】
参考例1
製造例1で得たセルロースエステルを使用して、図1に示した装置を用い多孔状フィラメントを紡糸した。
丸底フラスコに所定量の溶媒のDMSOを仕込み、スリーワンモーターで攪拌しながら、表3に記載した混合比率でセルロースエステルを添加し、その後、オイルバス加温し、完全に溶解させた。
セルロースエステル溶解液(ドープ)をサンプル瓶へ移液し、室温になるまで放冷し、脱気を行った。
先端に直径約0.5mm口径のノズルをセットした注射器1からシリンジポンプ2を用い、25℃の水を入れたジョッキ4に吐出し(注射液3)、DMSOを水で置換することにより、直径0.5mmの多孔状フィラメントを得た。シリンジポンプ2は、ラボジャッキ5で支持した。
得られた多孔状フィラメントは、水分を乾燥させないウェット状態のまま保管し、下記の各測定を行った。結果を表3に示す。
【0032】
(耐塩素性評価)
多孔状フィラメント(直径=0.5mm,長さ10cm)をそれぞれ50本使用した。
有効塩素濃度500ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液の試験液に用いた。有効塩素濃度は、柴田科学製ハンディ水質計AQUAB,型式AQ-102を使用し測定した。
50本の多孔状フィラメントを、試験液となる液温が約25℃の500ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液1Lを入れた蓋付ポリ容器に完全に浸かるように浸漬し、7日毎に新たに500ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調整し、試験液を全量交換した。
また、7日毎に5本の多孔状フィラメントを蓋付ポリ容器から取り出し、水道水で水洗後、水分を拭き取り湿った状態のまま「引張り強さ」と「伸び」を測定した。
【0033】
(耐アルカリ性評価)
多孔状フィラメント(直径=0.5mm,長さ10cm)をそれぞれ50本使用した。
1Lの純水にNaOHペレット(純度97%以上)を10g入れて溶解し、燐酸を用い、pH値を12.0または13.0に調整した。
50本の多孔状フィラメントを、試験液となる液温が25℃のpH値12.0または13.0のアルカリ水溶液1Lを入れた蓋付ポリ容器に完全に浸かるように浸漬し、7日毎に新たにpH値12.0または13.0のアルカリ水溶液を調整し、試験液を全量交換した。
また、2時間、8時間、24時間、96時間、240時間で、それぞれ5本の多孔状フィラメントを蓋付ポリ容器から取り出し、水道水で水洗後、水分を拭き取り湿った状態のまま「引張り強さ」と「伸び」を測定した。
【0034】
(「引張り強さ」と「伸び」の測定と耐塩素性、耐アルカリ性の判断方法)
小型卓上試験機(島津製作所製EZ‐Test)を用いて、チャック間距離5cmになるようウェット状態の多孔状フィラメントを一本ずつ挟んで、引張り速度20mm/minで測定を実施した。
500ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液や液温が25℃のpH値12又は13のアルカリ水溶液に浸漬させていない製造例1で得られたセルロースエステルの多孔状フィラメントの「引張り強さ」の値を基準として、その値が基準値の90%を下回る際の時間(日数または時間)を求めた。なお、各測定時間の「引張り強さ」をプロットし、検量線を作成することで、基準値の90%を下回る際の時間(日数又は時間)を求めた。
なお、「引張り強さ」は、同じサンプルで5本測定した「引張り強さ」の最高値と最低値を除いた3本の平均値とした。
【0035】
参考例2〜6
製造例2〜6で得られたセルロースエステルを、参考例1と同様に、表3に記載した溶媒とセルロースエステルの混合比率で、それぞれ多孔状フィラメントの紡糸を行った。参考例2〜6の多孔状フィラメントの直径はいずれも0.5mmであった。なお、製造例2〜5の溶媒はDMSOで紡糸を行い、製造例6の溶媒はNMPで紡糸を行った。
得られた多孔状フィラメントを使用して、耐塩素性、耐アルカリ性をそれぞれのセルロースエステルの多孔状フィラメントの「引張り強さ」の値を基準として評価した。結果を表3に示す。
【0036】
比較参考例1、2
比較参考例1として三酢酸セルロースおよび比較参考例2として二酢酸セルロース(共に株式会社ダイセル製)を使用し、参考例1と同様に、表3に記載したDMSO溶媒とセルロースエステルの混合比率で、多孔状フィラメントの紡糸を行い(直径0.5mm)、耐塩素性、耐アルカリ性を評価した。結果を表3に示す。
【0037】
比較参考例3、4
比較参考例2と同様に、二酢酸セルロースを用い、ヒドロキシ基に対して過剰量の酸クロライド(比較参考例3はペンチルクロライド、比較例参考例4はシクロヘキシルカルボン酸クロライド)を反応させセルロースエステルを製造し、表3に記載したDMSO溶媒とセルロースエステルの混合比率で、多孔状フィラメントの紡糸を行い(直径0.5mm)、耐塩素性、耐アルカリ性を評価した。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
表3中、各参考例1〜6及び各比較参考例1〜4の「引張り強さ」と「伸び」は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液又はアルカリ水溶液に浸漬させていない多孔状フィラメントの引っ張り強さと伸びをそれぞれ示している。
【0040】
表3に示す多孔状フィラメントについての参考例1〜6と比較参考例1〜4の測定結果の傾向は、そのまま中空糸膜の測定結果の傾向となるものである。
参考例1の多孔状フィラメントは、耐塩素性は70日、耐アルカリ性は200時間となり、三酢酸セルロース(耐塩素性=6日、耐アルカリ性=5時間)に比べ、格段に優れていた。
参考例2〜6の多孔状フィラメントは、ベンゾイル基の置換度が高い方が、耐塩素性、耐アルカリ性が優れていた。
比較参考例3、4の多孔状フィラメントの耐塩素性は、それぞれ19日、14日であり、同じアセチル基置換度(2.44)のセルロースアセテートベンゾエート(参考例2)の耐塩素性24日に比べ劣っていた。
産業上の利用可能性
【0041】
本発明の中空糸膜は、浄水施設、海水淡水化施設、汚水処理施設などで使用する膜として利用することができる。
図1