(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981976
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】シリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20211206BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
A61M5/31 534
A61M5/315 510
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-524273(P2018-524273)
(86)(22)【出願日】2016年11月10日
(65)【公表番号】特表2018-533426(P2018-533426A)
(43)【公表日】2018年11月15日
(86)【国際出願番号】EP2016077307
(87)【国際公開番号】WO2017081178
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年10月10日
(31)【優先権主張番号】1560823
(32)【優先日】2015年11月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591052505
【氏名又は名称】ゲルベ
【氏名又は名称原語表記】GUERBET
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100210686
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム カクラン
【審査官】
伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−175444(JP,A)
【文献】
特表2012−525231(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0087125(US,A1)
【文献】
特表2012−517860(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0097096(US,A1)
【文献】
特開2013−164109(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102218176(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0008750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 被注入物質を入れることを意図したリザーバを形成する長尺状の中空本体(3)であって、接続装置を受け入れることを意図した先端部(30)と、前記先端部(30)に対して前記本体(3)の反対側の端部に配置された開口部(32)とを含む、本体(3)、
− 前記本体(3)に設けられた把持部材(34、36)、および
− 前記本体(3)に摺動式に装着されるピストン(5)であって、前記ピストン(5)が前記先端部(30)において当接する引込み位置と、前記ピストン(5)が前記開口部(32)において当接する引き出し位置との間で、シリンジの縦軸(X3)に沿って平行移動するように可動である、ピストン(5)、
を含む、シリンジ(1)において、
前記ピストン(5)は、
−開口部(32)を経て前記本体(3)から突出するロッド(52)、
−前記ロッド(52)の一方の端部に配置され、前記本体(3)に含まれる被注入物質と接触するように設計される表面(570)が設けられたヘッド(57)、および
−前記ヘッド(57)に対して前記ロッド(52)の反対側の端部に配置された把持部材(50)、
を含み、
前記本体(3)に設けられた前記把持部材(34、36)は、使用者の指(In、M、P)用の支持ゾーン(34a、36a)を含み、それらの支持ゾーン(34a、36a)は、前記ピストン(5)の前記把持部材(50)に向けられており、
前記ピストン(5)の前記把持部材(50)が、前記使用者の指(In、M、P)用の少なくとも1つの支持ゾーン(50a)を含み、その少なくとも1つの支持ゾーン(50a)は、前記本体(3)に設けられた前記把持部材(34、36)に対面して配置されており、前記ピストン(5)のロッド(52)の各側に設けられる、前記ピストンの凹状構成を含み、
前記ピストン(5)が、ヤング率が3000MPa超の材料から作製される一つの部品において前記ロッド(52)、前記ヘッド(57)および前記把持部材(50)を含み、前記縦軸(X3)に沿って、前記把持部材(50)から前記ヘッド(57)の前記表面(570)まで、非弾性ゾーンを有していること、及び、
前記ピストン(5)の前記凹状構成が、前記ピストン(5)の4個のリブ(51)上に構成され、前記ロッド(52)を前記把持部材(50)に接続し、前記ロッド(52)の周りで互いに対して90°に向けられたことを特徴とする、シリンジ(1)。
【請求項2】
前記ピストン(5)が、前記シリンジ(1)の前記縦軸(X3)の周りで前記本体(3)に対して回転式に可動であることを特徴とする、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記ピストン(5)の前記把持部材(50)が、前記ピストン(5)の前記ヘッド(57)から見て外方に向いて配置される支持ゾーン(50b)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のシリンジ。
【請求項4】
前記本体(3)の前記先端部(30)が周辺フランジ(38)を含み、その外面が、前記シリンジ(1)の前記縦軸(X3)に対して平行に延在する把持用リブ(38a)を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリンジ。
【請求項5】
前記ピストン(5)の前記ヘッド(57)が周辺溝(54)を含み、前記シリンジ(1)が、さらに、前記溝(54)に装着されかつ前記ピストン(5)と前記本体(3)の内壁との間に延在するOリングシール(56)を含み、前記シリンジ(1)を非漏出とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリンジ。
【請求項6】
前記ピストン(5)の前記引込み位置では、前記ピストン(5)の前記把持部材(50)が、前記本体(3)に設けられる前記把持部材(34、36)から、少なくとも15mmに等しい距離だけ離間していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリンジ。
【請求項7】
前記本体(3)に設けられた前記把持部材(34、36)の前記支持ゾーン(34a、36a)が、前記本体(3)の前記開口部(32)の各側に設けられかつ前記ピストン(5)の少なくとも1つの前記支持ゾーン(50a)に対面する、前記本体(3)の凹状構成を含み、これらの前記本体(3)の凹状構成は、前記本体(3)に設けられた前記把持部材(34、36)の一方をそれぞれ形成する2つの半径方向タブ上に構成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリンジ。
【請求項8】
前記本体(3)に設けられた前記把持部材(34、36)が、1つの部品(37)上に構成され、この部品(37)は、前記本体(3)に、前記シリンジの前記縦軸(X3)の周りで回転可能に装着されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリンジ。
【請求項9】
2つの凹状の支持ゾーン(40)が、前記本体(3)に設けられた前記把持部材(34、36)が構成される前記部品(37)上、これらの把持部材(34、36)を接続する部分上に、構成されることを特徴とする、請求項8に記載のシリンジ。
【請求項10】
前記2つの凹状の支持ゾーン(40)が、前記把持部材(50)の方向に向けられ、前記使用者の指を、前記シリンジの前記縦軸(X3)に対して半径方向に支えることを可能にすること特徴とする、請求項9に記載のシリンジ。
【請求項11】
前記ピストン(5)の前記把持部材(50)が卵形形状を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシリンジ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
医療処置中に、特に画像下治療(interventional radiology)においては、加圧流体を注入するために、医療従事者によって、手動操作のシリンジが使用されている。この種のシリンジは、充填および注入を伴う反復的な処置の場合に、または小型カテーテルまたはマイクロカテーテルを通した注入の場合に、使用され得る。そのようなシリンジは、患者に注入される物質を入れている中空本体と、注入ピストンと、本体およびピストンに設けられた把持手段とを含む。
【0003】
特に米国特許第6616634号明細書および同第8412310号明細書から公知のシリンジは、片手では簡単に充填できず、および厄介な把持手段を使用する。さらに、この種のシリンジでは、注入の終了はあまり実用的ではない。なぜなら、ピストンを押す施術者の親指が、人差し指と中指によって形成される平面に近い平面に達し、それにより、注入の終了をあまり効果的に制御できないためである。
【0004】
従来技術のほとんどのシリンジを使用する際、これらのシリンジに入れられている物質を注入するために、使用者によって供給される注入力に関する情報は、前記シリンジの把持部材と使用者が接触していることによって使用者に十分に伝達されるわけではない。それゆえ、シリンジを使用する人は、その人が適用する力を、注入する際にその人が受け取る情報に従って、微調整できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの欠点を、操作がより実用的である新規のシリンジを利用可能にすることによって、より具体的に克服しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は:
− 被注入物質を入れることを意図したリザーバを形成する長尺状の中空本体であって、接続装置を受け入れることを意図した先端部と、先端部に対して本体の反対側の端部に配置されている開口部とを含む、本体、
− 本体内に摺動可能に装着されるピストンであって、ピストンが先端部において当接する引込み位置と、ピストンが開口部において当接する引き出し位置との間で、シリンジの縦軸に沿って平行移動するように可動であるピストン、
− 本体に設けられた複数の把持部材、およびピストンのヘッドに対してピストンの反対側の端部に設けられた把持部材
を含む、シリンジに関する。
【0007】
このシリンジは、本体に設けられた複数の把持部材が、使用者の複数の指用の複数の支持ゾーンを含み、これらの支持ゾーンが、ピストンの把持部材の方に向けられていること、ピストンの把持部材が、使用者の複数の指用の少なくとも1つの支持ゾーンを含み、その支持ゾーンが、本体に設けられた複数の把持部材に対面して配置されていること、ピストンが、ヤング率が3000MPa超の材料で作製される単一部品として形成されていること、およびピストンが、その把持部材と被注入物質との間に非弾性ゾーンを有していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、シリンジは、注入および充填のために、片手で簡単に使用でき、および施術者は、ピストンの本体および指置きに設けられる複数の把持部材が回転する可能性があることによって、シリンジの保持を簡単に調整できる。
【0009】
本発明の、好都合であるが非義務的な態様によれば、そのようなシリンジは、以下の特徴のうちの1つ以上を、任意の技術的に許容できる組み合わせで、組み込む:
− ピストンは、本体に対して、シリンジの縦軸の周りで回転式に可動である。
− ピストンの把持部材は、ピストンのヘッドから見て外方に向いて配置される支持ゾーンを含む。
− 本体の先端部は周辺フランジを含み、その外面は、シリンジの縦軸に対して平行に延在する複数の把持用リブを備える。
− 本体に設けられた複数の把持部材に対面して配置されるピストンの把持部材の支持ゾーンは、ピストンのロッドの各側に設けられる複数の凹状構成を含む。
− ピストンの引込み位置において、ピストンの把持部材は、本体に設けられる複数の把持部材から、少なくとも15mmに等しい距離だけ離間している。
− 本体に設けられた複数の把持部材の複数の支持ゾーンは、中空本体の開口部の各側に設けられかつピストンの支持ゾーンに対面する複数の凹状構成を含み、これらの凹状構成は、本体に設けられた複数の把持部材のうちの1つをそれぞれ形成する2つの半径方向タブ上に構成されている。
− 本体に設けられた複数の把持部材は、1つの部品上に構成され、この部品は、本体上に、シリンジの縦軸の周りで回転可能に装着されている。
− 2つの凹状の支持ゾーンは、本体に設けられた複数の把持部材が構成されている部品上の、これらの把持部材を接続する複数の部分上に構成される。
− 2つの凹状の支持ゾーンは把持部材の方向に向けられ、使用者の指を、シリンジの縦軸に対して半径方向に支えることを可能にするようにする。
− ピストンの把持部材は卵形形状を有する。
【0010】
本発明は、より良好に理解され、およびその他の利点は、その原理に従うシリンジの以下の説明に照らして、より明確になり、前記説明は、非限定的な例としておよび添付図面を参照して与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1からのシリンジの別の角度の斜視図である。
【
図4】
図1〜3からのシリンジのピストンの斜視図である。
【
図5】指の位置が、破線で引かれた円によって表わされている、
図4からのピストンの側面図である。
【
図6】指の位置が、破線で引かれた円によって表わされている、
図1からのシリンジの把持部材の側面図である。
【
図7】指の位置が、破線で引かれた円によって表わされている、第2の構成にある、
図1からのシリンジの一部の側面図である。
【
図8】異なる指の位置が、破線で引かれた円によって表わされている、
図7と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、手で操作するのに好適なシリンジ1を示す。シリンジ1は、シリンジ1の縦軸も形成する縦軸X3に中心がある長尺状の中空本体3を含む。本体3は、被注入物質を入れることを意図したリザーバを形成する。本体3は、接続装置を受け入れることを意図した先端部30を含む。この先端部30は、好都合なことに、ルアーコーンとし得、ルアー接続は、ISO594およびISO80369などの規格に準拠するが、これらの規格に関する言及は、限定ではない。先端部30と向かい側の本体3の端部において、本体3は開口部32を含む。
【0013】
シリンジ1は、同様に、本体3に装着されたピストン5を含み、ピストンは、
図1および
図3に示す、ピストン5が先端部30において当接する引込み位置と、ピストン5が開口部32において当接する引き出し位置との間で、軸X3に沿って平行移動するように可動となるようにする。ピストン5は、シリンジ1の開口部32を経て本体3から突出するロッド52を含む。ピストン5は、その端部の一方には、本体3に存在する被注入物質と接触するように配置されるのに好適なヘッド57を含み、および、その端部の他方には、把持部材50を有する。ピストン5が部分的に本体3から引き出されている中間位置にあるシリンジ1が、
図7および
図8に示されている。ピストン5は、シリンジの縦軸X3の周りで本体3に対して回転式に可動である。
【0014】
シリンジ1は複数の把持部材を含み、これらの把持部材により、施術者は、シリンジに物質を充填しかつ患者に物質を投与するための、シリンジの操作が可能となる。この目的のために、本体3は、開口部32の周りに設けられかつ軸X3に対して半径方向に延出しているタブによってそれぞれ形成される把持部材34および36を含む。ヘッド57に対してピストン5の反対側の端部に設けられた把持部材50は、シリンジ1の複数の把持部材に含まれる。把持部材50は、全体的にロッド52に対して半径方向に延出する卵形プレートによって形成される。
【0015】
好ましくは、本体3に設けられた把持部材34および36は、シリンジ1の軸X3の周りで本体3に対して回転式に可動である。
【0016】
本発明によれば、本体3に設けられた把持部材34および36は、使用者の複数の指用の支持ゾーン34aおよび36aを含み、これらの支持ゾーンは、ピストン5の把持部材50の方向に向けられており、およびピストン5の把持部材50は、使用者の複数の指用の少なくとも1つの支持ゾーン50aを含み、この支持ゾーン50aは、本体3の把持部材34および36に対面して配置されている。支持ゾーン34aおよび36aは、本体3の開口部32の各側に、把持部材34および36のそれぞれに設けられた複数の凹状構成を含む。
【0017】
複数の特徴のこの組み合わせによって、シリンジを充填している間、すなわち、矢印F1で示す方向に、ピストン5が長尺状本体3から次第に引き出されて、シリンジ1のリザーバに物質を吸引するようにするときに、シリンジ1を片手で操作可能にするように、把持部材34および36と把持部材50との間に使用者の複数の指を配置可能にする。本体3に対する把持部材34および36の回転の可能性(両矢印R1によって示す)によって、患者に対する使用者の位置に応じて、使用者が、使用者の手および複数の指をより快適に位置決めできるようにし、および使用者がシリンジ1をより簡単かつより安全に操作可能にする。
【0018】
把持部材34および36は、好ましくは、軸X3の周りで回転可能に本体3に装着される1つの部品37上に構成される。部品37は、好ましくは、本体3とは無関係に製造される。部品37は、好ましくは、先端部30の方向から開口部32のところまで本体3に取り付けられ、およびこの開口部32に、クリッピングによって取り付けられる。部品37は、好ましくは、この部品の弾性変形によって、本体3に取り付けられる。
【0019】
支持ゾーン50aは、ロッド52の各側に設けられた複数の凹状構成を含む。これらの凹状構成は、好ましくは、ロッド52を把持部材50に接続する複数のリブ51上に構成される。ピストン5は、好ましくは、4個のリブ51を含み、これらリブは、ロッド52の周りで互いに対して90°に向けられた複数の支持ゾーン50aを形成する。
【0020】
本体3はまた、開口部32の周囲に設けられかつ把持部材34と36との間に位置する2つの凹状の支持ゾーン40を含む。これらの凹状の支持ゾーン40は、把持部材50の方向に向けられ、かつ使用者の指を、軸X3に対して半径方向に支える。支持ゾーン40は、好ましくは、部品37上、把持部材34と36とを接続する複数の部分上に、構成される。支持ゾーン40は、好都合には、軸X3に中心がある丸いビーズによって形成される。
【0021】
それゆえ、シリンジ1を充填するとき、使用者の親指Pは、支持ゾーン40の1つに配置され得る一方で、使用者の中指Mおよび人差し指Inは、ピストン5の支持ゾーン50aに配置される。これら指のこの位置付けを
図7に示す。
【0022】
あるいは、シリンジ1を充填する際、使用者の親指Pは支持ゾーン50aに配置され得る一方で、使用者の薬指Aおよび人差し指Inは、それぞれ支持ゾーン34aおよび36aに配置される。指のこの位置付けを
図8に示す。
【0023】
把持部材34および36は、同様に、支持ゾーン34aおよび36aの反対側に位置する、すなわち本体3の先端部30の方向に向けられた、支持ゾーン34bおよび36bを含む。支持ゾーン34bおよび36bは、物質の注入の際に人差し指Inおよび中指Mを配置するために使用される。
【0024】
ピストン5の第1の引込み位置では、把持部材50は、少なくとも15mmに等しい、好ましくは少なくとも20mmに等しい距離だけ、把持部材34および36から離間している。これは、患者への製品の注入が完了したときに、把持部材34および36に配置された使用者の複数の指およびピストン5に配置された使用者の親指が、互いにあまり近くにされすぎず、使用者が、使用者の手技およびシリンジ1の保持をより良好に制御できるようにすることを意味する。これは、同様に、
図3に示すように、シリンジ1を再度充填する必要があるときに、使用者の複数の指、例えば人差し指Inおよび中指Mを、ピストン5と本体3との間に配置できるようにする。
【0025】
ピストン5のヘッド57は、好ましくは、周辺溝54、および溝54に装着されかつピストン5と本体3の内壁との間に延在するOリングシール56を含み、シリンジ1の非漏出性を保証するようにする。この実施形態を
図5に示す。
【0026】
ピストン5は、好ましくは、把持部材50と、ピストン5のヘッド57が接触する注入可能な物質との間に非弾性ゾーンを有している。
【0027】
ピストン5は、好ましくはヤング率が3000MPa超、一層好ましくは7000MPa超、さらに一層好ましくは11000MPa超の材料で作製される、好ましくは1つの非常に剛性の部品として設計される。ピストン5の剛性によって、およびピストンが1つの部品として設計されていることによって、好ましくは触覚情報である、注入力に関する情報が、使用者の手に直接伝達されるため、使用者は、シリンジの操作を制御できるようになり、かつ注入をより良好に制御できるようになる。さらに、ピストン5のヘッド57にOリングシール56を使用することによって、一般的に従来技術の場合のような、被注入物質と接触しているピストン5の端部にプラスチック製のシーリング本体が無くても、行うことを可能にする。プラスチック製シーリング本体、および/またはいくつかの部品で構成されたピストンおよび/またはあまり剛性のない材料で作製されたピストンの使用は、被注入物質と使用者の親指との間に、縦軸X3に沿って、1つ以上のゾーン、特に弾性ゾーンを生じ、それらの弾性ゾーンでは、注入力に関する触覚情報の一部が失われてしまうという大きな欠点がある。
【0028】
さらに一層好ましくは、ピストン5は、1つの部品として設計され、かつヤング率が3000MPa超の材料で作製され、およびこのピストン5は、その把持部材50と被注入物質との間に非弾性ゾーンを有している。換言すると、ピストン5は、把持部材50と、被注入物質と接触するように設計されるヘッド57の表面570との間に、縦軸X3に沿って、目に見えるほど変形できる部分を含まない。それゆえ、これらの好ましい実施形態では、注入力に関する触覚情報は保たれるため、使用者によって直接感じられる。
【0029】
把持部材50は、ピストン5のヘッド57から見て外方を向くように配置される支持ゾーン50bを含む。図示の例では、この支持ゾーン50bは凹状であり、例えば親指Pを支える。図示しない実施形態によれば、この支持ゾーン50bは凸状にでき、それにより、ピストン5を本体3内へと押すために手のひらを使用できるようにする。
【0030】
先端部30は、周辺フランジ38によって取り囲まれており、その外面は、軸X3に対して平行に延在する複数の把持用リブ38aを備える。これらの把持用リブは、例えばルアーコネクタが先端部30に取り付けられるときに、指によってシリンジ1を回転できるようにする。