特許第6981978号(P6981978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドリームウィーバー・インターナショナル・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000014
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000015
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000016
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000017
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000018
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000019
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000020
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000021
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000022
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000023
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000024
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000025
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000026
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000027
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000028
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000029
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000030
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000031
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000032
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000033
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000034
  • 特許6981978-リチウムイオン電池の製造方法 図000035
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981978
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20211206BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20211206BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20211206BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20211206BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20211206BHJP
   H01G 11/52 20130101ALN20211206BHJP
   H01G 11/56 20130101ALN20211206BHJP
   H01G 11/84 20130101ALN20211206BHJP
【FI】
   H01M10/058
   H01M10/0566
   H01M50/44
   H01M50/46
   H01M50/489
   !H01G11/52
   !H01G11/56
   !H01G11/84
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-530581(P2018-530581)
(86)(22)【出願日】2017年1月10日
(65)【公表番号】特表2019-504443(P2019-504443A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】US2017012797
(87)【国際公開番号】WO2017123519
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2020年1月7日
(31)【優先権主張番号】14/992,993
(32)【優先日】2016年1月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/993,003
(32)【優先日】2016年1月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513292949
【氏名又は名称】ドリームウィーバー・インターナショナル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】モリン,ブライアン ジー.
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−201308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0566 − 10/0587
H01G 11/52
H01G 11/56
H01G 11/84
H01M 4/00 − 4/62
H01M 50/40 − 50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード、アノード、セパレータ、及び液体の電解質を中に備えるリチウムイオン電池の製造プロセスであって、
前記アノード、前記カソード、及び前記セパレータを備える内部容積を含むセルを組み立てる工程と;
前記セルの内部容積に電解質を充填する工程と;
前記アノード及び前記カソードを充電装置に接続する工程と;
前記セルが終端電圧に達するまで、C/4以下のレートで前記セルを充電する工程と;
6時間以上、3.3ボルトより大きい電圧で前記セルを充電する工程と、を備え
前記セパレータは、網目に絡ませたマイクロ繊維及びナノファイバを含み、
前記電解質は、リチウム塩を溶解した溶液であり、
前記リチウムイオン電池は、前記セパレータ上に、前記電解質によって形成された固体電解質界面(SEI)層を含み、
前記SEIによって、初期の前記セパレータのSEM像に存在する全細孔が、実質的に満たされる領域を備えたところをSEM顕微鏡写真下で確かめることができる、リチウムイオン電池の製造プロセス。
【請求項2】
前記セパレータがランダムに配向した繊維を含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池の製造プロセス
【請求項3】
前記ランダムに配向した繊維のうち少なくとも1つが、1.0ミクロン未満の、繊維の長さに垂直な最大寸法、を含む、請求項2に記載のリチウムイオン電池の製造プロセス
【請求項4】
前記セパレータが0.1ミクロン以上の平均流量孔径を示す、請求項1からのうちいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の製造プロセス
【請求項5】
前記SEI層は、前記初期のセパレータのSEM顕微鏡写真に存在する前記ナノファイバが、前記SEI層に埋め込まれたために、存在が観測されない領域を含む、請求項1から4のうちいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の製造プロセス
【請求項6】
前記SEI層は、エネルギー分散型X線分光法によって観測され、1.5%を超えるリン濃度を有することが可能な領域を含む、請求項1からのうちいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の製造プロセス
【請求項7】
SEI層は、エネルギー分散型X線分光法によって観測され、5%を超えるフッ素濃度を有することが可能な領域を含む、請求項1からのうちいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の製造プロセス
【請求項8】
前記セパレータは、最大70%の炭素、少なくとも8%の酸素、少なくとも5%のフッ素、及び少なくとも1.5%のリンの走査型電子顕微鏡下での原子ピークにおけるSEI測定値を示す、請求項1に記載のリチウムイオン電池の製造プロセス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網目状に絡まったマイクロファイバ及びナノファイバの単層からなる絶縁性(非導電性)微多孔ポリマー電池セパレータを備えるリチウムイオン電池の製造方法に関する。全体にわたる生産方法によって、非常に効率的に、電池のアノード上に適切な固体電解質界面(SEI)層が得られる。このようなセパレータの製造方法、電池デバイス内でこのようなセパレータを利用する方法、及び、固体電解質中間層を製造する方法は、本発明の範囲内で全て包含される。
【背景技術】
【0002】
電池は、遠隔地の電気エネルギー貯蔵のために、そして、携帯用アプリケーションのために長年の間利用されてきた。電極間(アノード及びカソード)のイオンの移動を制御することによって、電力回路が作り出され、一方の電極の過剰なイオンが減少し、更なる発電ができなくなるまで、利用可能な電源を、イオンによって提供する。さらに最近では、充電式電池は、一定期間このような電池を他の電源に接続する必要性があるが、このような遠隔電源用により長い寿命を可能にするために作り出されている。しかしながら、全体として、このような電池を再利用する能力は、結果として使用へのより大きな可能性を導き、特に携帯電話及びラップトップコンピュータの使用を通じて導き、更に、単に機能するために電気が必要な自動車の可能性を導く。
【0003】
このような電池は、概して少なくとも5つの異なった構成要素を備える。ケース(又は容器)は、内部環境暴露だけでなく外部漏れも防止する安全かつ信頼できる方法ですべてを収容する。そのケース内では、アノード及びカソードは、効果的にセパレータにより分離され、アノードとカソードとの間にセパレータを通してイオンを輸送する電解質溶液(低粘性液体)も同様に分離される。今日の、そして、おそらく未来の充電式電池は、むしろ小型及び携帯用デバイスの全域にまたがり、充電と充電の間に長期間有効なままであるために相当量の発電の潜在力を有し、一例として、自動車内に存在する非常に大きなタイプには、互いに接触してはならない大きな電極(少なくとも表面積の)と、必要な回路を完成するように、一貫してそして常に膜を通過しなければならない多数のイオンを含み、発電水準の全てが、充分な電気を印加して自動車のモーターを動かすことに貢献する。このように、将来の電池セパレータの能力及び多用性は、未だ現在の産業の中で提供されていない特定の要件を満たさなければならない。
【0004】
一般的に、電池セパレータは、独立セル型電池の出現から利用されて、電力を発生させるセル内でイオンの効果的な輸送ができるようするだけでなく、電極間の不必要な接触から必然的な保護をも実現する。通常、このような材料は、薄膜構造であり、同時に上記で示された必要な特性を与えると共に、電池デバイスの重量及び容積を減らすために十分に薄い。このようなセパレータは、適切な電池機能を可能にするために、同様に他の特性も示めさなければならない。その他の特性には、化学的安定性、イオン種の適切な多孔率、電解質輸送に効率のよい孔径、適切な透過性、有効な機械的強度、並びに高温にさらされた時の寸法安定性及び機能安定性を維持する能力(並びに異常に高い水準まで温度が上昇した場合に停止可能な能力も含む)がある。
【0005】
続いて、より詳細には、セパレータ材料は、充分な強度と数多くの異なる展開に耐えうる構成でなければならない。まず、セパレータは、電池組み立て時の応力により亀裂又は穴あきを起こしてはならない。このように、セパレータ全体の機械的強度は非常に重要であり、特に、材料の引張強度が、機械(縦)および水平(つまり横)の両方向に高いと、製造者は、このような重要な工程の間、セパレータに構造的な不具合や損傷を与えないための厳しいガイドラインから解放され、容易にセパレータを扱えるようになる。さらに、化学的観点から、セパレータは、満充電時には特に、電池自身の内部の酸化環境及び還元環境に耐えなければならない。特に異常なほど大量の電流が流れる構造完全性、または電極を接触させてしまうような使用中の欠陥はいずれも、発電能力を損ない全体的に電池を無効化させる。このため、化学的暴露をしのぐ能力が十分あっても、セパレータは、保管、製造及び使用中も上記と同様の理由により、寸法安定性(すなわち、反り又は溶融)又は機械的強度を失うことがあってはならない。
【0006】
しかし同時に、セパレータは本質的に、電池自身の高いエネルギーと出力密度を助長させるのに適した厚さでなければならない。長い製品寿命を可能とするためには、均一な厚さは極めて重要であり、いかなる不均一な摩耗も、電極の接触を防ぐという観点だけでなく、適切な電解質の通過という観点からも弱い連結となるからである。
【0007】
全てのリチウムイオン電池において、電解質は、アノード(炭素質の)の存在下では不安定である。このことから、電解質は分解し、アノード上に表層を形成し、固体電解質中間層と呼ばれているものが、アノード表面上で分解し重合した電解質により形成される。この層は、電解質の更なる分解を防止し、リチウムイオンに導通し、そして、電池の機能によって絶えず充電及び放電が行われることができる。
【0008】
通常のリチウムイオンセパレータについては、〜0.01ミクロン、又は10nmの孔径を有し、SEI層の形成が、アノード表面に対する電解質の緩やかな変化により、ゆっくりと進行する。このように、セパレータは、SEI層形成プロセスのための調節器として作用する。
【0009】
製造では、製造業者は、可及的速やかにこのプロセスの実行を試み、最小の電流及び最も低い電圧を使用することで、本プロセスの時間及び費用を最小化して、装置の稼働率を最大にするだろう。
【0010】
不織布セパレータについては、10nmより大きく、より多くはおよそ200〜500nm程度の孔径を有し、SEI層の形成は、セパレータの孔径によって調節されず、より急速に進行する。これでは不規則でより開放された層を生成し、アノードが完全に保護されず、更なる分解を許してしまう。このように、不織布セパレータに対してSEI層を形成するのにさらに時間がかかってしまい、セパレータの孔径よりはむしろ、電流の流れによって支配しなければならない。加えて、いくつかの不織布セパレータは、このような材料でできており、SEI層が不織布繊維自体に形成し得るような多孔率を有し、形成プロセスによって、十分な時間及び電流がこの形成を可能にすることができなければならないが、電極上の形成より遅くてもよい。
【0011】
「通常の」形成プロセスが、不織布セパレータ、又は高い多孔率及びより大きな孔径の任意のセパレータを有するリチウムイオン電池に使用される場合、1つの問題がある、それは、SEI層が完全に形成されず、アノードの領域が、依然として電解質にさらされることである。この場合、セルが形成から離れる(電気的に切断される)とき、SEI層は形成し続け、このプロセスがセルから電荷を使い果たす。このSEI層形成の継続は、セルの範囲内で「ソフトショート」と誤解されるか、又は、セルが適切に形成されるまで、大きな自己放電をもたらす場合がある。
【0012】
このようなセパレータを含む電池のため、電池のアノード上に、また、セパレータ自体の繊維上にも充分な固体電解質界面(SEI)層を作り出すために、適切な充電サイクルを利用しなければならない。このようなサイクルは、サイクルの前半部分の間に、第1の電流を電池へ供給して、適切に電解質をアノード上に付着させることを含んでもよい。第2の電流は、サイクルの第2部分において利用されることができる。更に、高電圧の浸漬は、低い初期の自己放電を達成するために、固体電解質中間層の初期形成の間、必要とされ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6110588号明細書
【特許文献2】米国特許第6432347号明細書
【特許文献3】米国特許第6432532号明細書
【特許文献4】米国特許第8936878号明細書
【特許文献5】米国特許第7112389号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
現在までのところ、今日実施されている標準のものは、固体電解質中間層の堆積に関して、このような重要な要件にふさわしくはない。従って、充分な固体電解質中間層が電池のアノードに堆積するのを可能にする堆積に関するパラメータを提供する必要性が未だ存在する。現在では、この領域のこのような製造法は、未だ電池セパレータ業界全体にわたって調査されてはいない。このように、充分な電子輸送及び電解質の堆積を提供する充分な電圧での浸透及び充分な電流を供給するといった観点から、有効でかつ、むしろ単純で直接的な電池製造法は、充電式電池業界内で重んじられ;現在まで、このような方法は開発されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
現在の従来技術に存在する周知のタイプのリチウムイオン電池に内在する前述の不利な点を鑑みて、本発明は、改良されたリチウムイオン電池及びその製造方法を提供し、上述の不利な点及び従来技術の欠点を解決する。このように、本発明で汎用性のものは、より詳細に後に記載され、これまで記載の従来技術の全ての利点、及び、従来技術によってさえ、予想されず、明らかにならず、示唆されず、又は、暗示されないリチウムイオン電池に結果としてなる多くの新規特徴を有する新規で改良されたリチウムイオン電池及び方法を提供することになっており、その中で1つ又は任意の組み合わせのいずれかを提供する。
【0016】
本発明の異なった利点は、効率的に、そして、適切に形成された固体電解質中間層を有するリチウムイオン電池を製造する際の容易さである。別の明らかな利点は、セパレータの孔径ではなく、電流が固体電解質中間層の生成速度を制限することである。別の明らかな利点は、緩やかな方法及び高電圧によって、均一で完全に被覆された電池のアノードを製造することである。
【0017】
リン酸鉄リチウム(LFP)セルは、他のリチウムイオン電池(LIB)と比べて、高いレート性能、良好なサイクル寿命、及び特別な安全装置を備えている。多くの場合、リチウムイオン電池は、例えば電動自転車、バックアップ電力、並びに、無停電電源装置、小さな電気自動車(フォークリフト、ゴルフカートなど)及びグリッドストレージのための電力のようなアプリケーションで鉛蓄電池と競合する。これらのアプリケーションでは、リチウムイオン電池は、サイクル寿命、エネルギー密度、及び電荷受容レートにおいて特別な利点がある。しかしながら、リチウムイオン電池は、コスト及び安全性において欠点を持つ。これらのセルをポリオレフィンセパレータからDreamweaver(DWI)Silverセパレータに切り換えることは、セルの安全性及びコストを上昇させる場合があり、これらの市場においてより競争の激しさが増す。また、この変化は、それらがニッケル水素(NiMH)又は他のLIBと競合する、電動工具、電気バス、その他のような、他の応用においてLFPセルの性能を高めることもできる。
【0018】
しかしながら、直接の置換を行ういくらかの初期の試みは、セルの初期形成後に、結果として高い自己放電が起こった。これらセルは、その他全ての測定基準に関して同等以上の性能を発揮し、それは、サイクル寿命、高温サイクル寿命、最大9Cのさまざまなレートでの放電容量、及び、ホットボックス(150〜190℃)、過充電、過度な短絡、及び釘刺しを含む安全性試験の完全なポートフォリオを含んでいる。また、多数のサイクルの後、セルは低い自己放電を示した。従って、何かがセルの初期寿命において異なることが明らかになり、セルの初期自己放電を改良する可能性のある候補としてSEI層の形成を調査する意味をなした。
【0019】
したがって、本発明は、リチウムイオン電池の製造方法に関する。本方法は、アノード、カソード、及びセパレータを備える内部容積を含むセルを組み立てる工程と;セルの内部容積に電解質を充填する工程と;アノード及びカソードを充電装置に接続する工程と;セルが規定電圧に到達するまで、C/6以下のレートでセルに充電する工程と;6時間を超えて電圧を掛け、セルに充電する工程とを含む。更に、本発明は、電圧が3.4ボルト以上であるような方法を包含する。更に、本発明は、電圧が3.4ボルトを超えるような方法を包含する。
【0020】
このような製造方法は、特に、充電式電池の自己放電を減らし得る、充分な固体電解質中間層を提供する能力といった観点から、充電式電池の技術の範囲内で未だ調査されていない。印加される理想的な電流がC/4より速くはなく、好ましくはC/6より速くはなく、及び、より好ましくはC/10より速くはないように(Cは1時間で全容量をセルに充電するのに必要とされるレートである)、特定のパラメータが充分な固体電解質中間層を提供するような、電流の使用が特に重要である。更に、理想的な電圧が3.3ボルトより大きく、好ましくは3.6ボルトより大きく、及びより好ましくは3.9ボルトより大きい電圧で得られるように、特定のパラメータが充分な固体電解質中間層を提供するような、電圧の使用が非常に重要である。その上、電流を印加する充分な時間が、一度に6時間より長く、好ましくは一度に9時間より長く、より好ましくは一度に12時間より長く実施されるように、3.6ボルト以上の電圧を保ち電流を使用する。このプロセスによって、SEI層が電流(セパレータの孔径でない)によって制限され、更に高電圧で緩やかなプロセスを可能にするレートで形成することができ、いかなる隙間も満たし続けて、アノードに均一で完全な被覆を与える。
【0021】
マイクロファイバ及びナノファイバも合わせて含む単層セパレータは本発明に包含されるが、このような生地構造の多層での利用、又は別種の生地のうち少なくとも1つの他の層を有する本発明のバッテリセパレータの生地の利用は、用いられてもよく、依然として本明細書に記載される発明全体の範囲内にある。
【0022】
本明細書に記載があるように、このようなバッテリセパレータは明らかに一次電池及び充電式電池の技術改良に有用であるが、コンデンサ、スーパーキャパシタ、及びウルトラキャパシタのような、他の形態の電解質が導通するエネルギー貯蔵技術に用いられてもよい。実際、本発明のセパレータの孔径に行った制御により、エネルギー損失、電力の放電率、及びこれらのデバイスのその他の性能における著しい改善が可能となり得る。
【0023】
更に、繊維自体の上にあるSEI層の形成を含むこのような電池セパレータは、良好な分離に必要なより小さな孔径を示す。SEI層がリチウムイオンに導通することは周知であるので、繊維上に形成されるSEI層を有するこれらのセパレータの導電性は、デバイスの速く効果的な充電及び放電に必要な高いイオン伝導度も示す。
【0024】
これらは、本発明の他の目的と共に、本発明を特徴づける規性のさまざまな特徴に加えて、本開示に添付され、本開示の一部を構成する特許請求の範囲において特に指摘される。本発明のより良好な理解、その動作の利点及びその用途によって達成される特定の目的のために、本発明の例示的実施形態がある添付の図面及び説明事項を参照すべきである。
【0025】
開示された主題の特徴と考えられる新規特徴は、出願される任意の特許請求の範囲に記載されるであろう。しかしながら、開示された主題自体、並びに、その好適な使用態様、更なる目的、及び利点は、添付図面と併せて読む場合、以下の例示的実施形態の詳細な説明を参照することで最もよく理解されるであろう。
【0026】
同一参照番号は、様々な図を通して同一部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】リチウムイオン電池の炭素質アノード上の固体電解質界面の概略図である。
図2】マイクロファイバ/ナノファイバ不織布電池セパレータ構造の潜在的に好ましい一実施形態を1000及び2000倍に拡大したSEM顕微鏡写真である。
図3】マイクロファイバ/ナノファイバ不織布電池セパレータ構造の潜在的に好ましい一実施形態を1000及び2000倍に拡大したSEM顕微鏡写真である。
図4】発明のマイクロファイバ/ナノファイバ不織布電池セパレータ構造の潜在的に好ましい別の実施形態を5000及び10000倍に拡大したSEM顕微鏡写真である。
図5】発明のマイクロファイバ/ナノファイバ不織布電池セパレータ構造の潜在的に好ましい別の実施形態を5000及び10000倍に拡大したSEM顕微鏡写真である。
図6】製造業者Aにより電極と共に製作されるセルに対する、自己放電後の容量及び自己放電後の開放セル電圧の比較を表しているグラフである。
図7】セル製造業者A製セルの形成後のセル容量に対する様々な形成効果を表している棒グラフである。
図8】セル製造業者A製セルの形成後のセル容量に対する様々な形成効果を表している棒グラフである。
図9】セル製造業者A製の電極と共に製造されるセルのリチウムイオン電池における最初の充電時間と自己放電との間の相互相関を表示しているグラフである。
図10】セル製造業者B製の電極と共に製作されるセルの自己放電後の容量(mAh)及び自己放電後の電圧(V)との比較を表しているグラフである。
図11】セル製造業者B製セルの形成後のセル容量に対する様々な形成効果を表している棒グラフである。
図12】セル製造業者B製セルの形成後のセル容量に対する様々な形成効果を表している棒グラフである。
図13】セル製造業者B製の電極と共に製造されるセルのリチウムイオン電池における最初の充電時間と自己放電との間の相互相関を表示しているグラフである。
図14】セパレータ上のSEI層の形成が明らかにされていないことを示している、リン酸鉄リチウムセルの分解の前後で撮られた、比較した従来技術であるCELGARD(登録商標)2400セパレータの15000倍に拡大したSEM顕微鏡写真である。
図15】セパレータ上のSEI層の形成が明らかにされていないことを示している、リン酸鉄リチウムセルの分解の前後で撮られた、比較した従来技術であるCELGARD(登録商標)2400セパレータの15000倍に拡大したSEM顕微鏡写真である。
図16】リン酸鉄リチウムセルへの混入の前に撮られたDreamweaver Silver25セパレータの5000倍に拡大したSEM顕微鏡写真である。
図17】セパレータ上のSEI層が顕著に形成されていることを示している、リン酸鉄リチウムセルの分解後に撮られた、Dreamweaver Silver25セパレータの3000及び5000倍に拡大したSEM顕微鏡写真である。
図18】セパレータ上のSEI層が顕著に形成されていることを示している、リン酸鉄リチウムセルの分解後に撮られた、Dreamweaver Silver25セパレータの3000及び5000倍に拡大したSEM顕微鏡写真である。
図19】CELGARD(登録商標)2400と共に製作されたセルをDreamweaver Silverと比較した、2.4〜3.6Vまでサイクルさせたリン酸鉄リチウムセルの2回目及び50回目のサイクルに対する、充電−放電曲線を示しているグラフである。
図20】従来技術のCELGARD(登録商標)2400及び発明のDreamweaver Silver25のセパレータで製作されたセルを比較した、1Cで2.4〜3.6Vまでサイクルさせたリン酸鉄リチウムセルの最初の50サイクル間の容量を表しているグラフである。
図21】従来技術のCELGARD(登録商標)2400及び発明のDreamweaver Silver25のセパレータで製作されたセルを再び比較した、1C、2C、及び4Cでの類似のセルのレート性能を表しているグラフである。
図22】発明の電池セパレータを含む発明の充電式リチウムイオン電池の分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のすべての特徴及びその好ましい実施形態は、以下に例示するが、限定されない図面及び実施例に関連して、十分詳細に記載される。
【0029】
[定義]
固体電解質界面(SEI)層−電解質の分解を通して炭素質アノード上に形成した物質層。
【0030】
形成−SEI層を生成するために使用されるプロセスであり、電流及び電圧を制御することが可能な充電装置にセルを取り付け、決められた電圧及び電流のプロファイルを通してセルを取り出すことによって通常決定されるプロセス。
【0031】
炭素質アノード−リチウムイオン電池産業において一般的に実施されているように、グラファイト、ハードカーボン、活性炭、その他のようなカーボン素材からなり、リチウムイオンを受容可能な電極。アノードは、通常、集電体と呼ばれる電子電流を分配して、集めるために用いられる導体材料上のコーティング材である。アノード集電体として一般的な材料は、銅箔である。
【0032】
カソード−本産業において一般的に実施されているように、通常、リン酸鉄リチウム、炭酸リチウム、マンガン酸ニッケル、及びその他のような、酸化リチウム化合物を含むリチウムイオンが受容可能な電極。その他のものとしては、従来技術において実施されているカソードにとって周知のものとして、イオウ化合物、スピネル、酸化リチウムマンガン、及びその他のものを使用してもよい。カソードは、一般的に、現行ではアルミホイルである集電体も有する。
【0033】
電解質−アノードからカソードまでリチウムイオンを輸送するために使用されるリチウム塩を溶解した溶液。実施例では、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、上記全ての混合物、及びその他が含まれる。電解質は、添加剤、特にSEI層の形成を促進する添加剤もまた含んでもよい。
【0034】
Cレート−セルを最大容量まで充電するのに必要な電流によって決定されるレート。1Cは、必要な電流が、1時間でセルを最大容量まで充電するのに十分なレートであり、通常、セル容量を測り、1時間で割ることによって得られる。このため、1Ahのセルに対して、1Cの充電レートは、1アンペアである。2Cはこのレートの2倍であり、1/2Cはこのレートの半分である。
【0035】
[マイクロファイバ及びナノファイバの作製]
上記のように、必要とされる範囲内で好適なファイバ構造を形成する能力だけでなく、電池セルの内部状態に関連した好適な化学的及び熱的耐性を付与する任意のポリマー(又はポリマーブレンド)から、マイクロファイバを作製してもよい。更に、このようなファイバには、不織布成形加工中に、もつれを促進するために、ファイバ自体の表面積を増加させるフィブリル化又は類似の技術を通じて処理される可能性を有する。このようなファイバは、溶融紡糸、湿式紡糸、溶液紡糸、溶融ブロー成形、及びその他のものといった、長年使用された繊維製造法から製造されてもよい。加えて、このような繊維は、複合繊維として始まり、分裂可能なパイ繊維、海島型繊維、及びその他のように、それらの大きさ及び/又は形状を、更なる処理によって縮小又は変化させてもよい。このような繊維は、更なる加工のために適切な長さに切断されてもよく、そのような長さは、均一な50mm未満、25mm未満、又は、12mm未満でもよい。また、このような繊維は、0.5mm以上、1mm以上、又は、更に2mm以上の長さを有するように、優れた加工又はより高い強度を付与するために長くしてもよい。また、このような繊維は、微小繊維又は有利には湿式不織布を形成する繊維に、フィブリル化されてもよい。
【0036】
本発明に用いられるナノファイバは、海島型、遠心紡糸、電界紡糸、フィルム、又は繊維フィブリル化などのような、いくつかの長年使用された技術により製造されてもよい。Teijin及びHillsの両社は、潜在的に好適な海島型ナノファイバを販売している(500〜700nmの直径を有するNanoFrontファイバとして、Teijinのポリエチレンテレフタレート繊維が販売されている)。Dienes及びFiberRioは、両社とも遠心紡糸技術を用いたナノファイバを提供する装置を販売している。Xanofiは、繊維及び高せん断力液体分散技術を用いて繊維を製造する装置を販売している。ポリアラミドは、優れた高温耐性と同様に他の特に好ましい特性を示すナノファイバ状態で、DuPonによって生産されている。
【0037】
電界紡糸ナノファイバの製造は、DuPont、E−Spin Technologies、又は、Elmarcoによってこの目的のために販売されている装置により実施されている。フィルムからフィブリル化されたナノファイバは、米国特許第6110588号明細書(特許文献1);同第6432347号明細書(特許文献2);及び同第6432532号明細書(特許文献3)に記載され、参照より完全に本明細書に組み込まれる。他の繊維からフィブリル化されたナノファイバは、高い剪断力の研磨処理下で処理されてもよい。フィブリル化したセルロース及びアクリル繊維から製造されるナノファイバは、商標名EFTEC(登録商標)のもとで、Engineered Fiber Technologiesにより販売されている。また、そのようなナノファイバは、繊維を切り離して、湿式不織布加工用にそれらを使用できるように、切断及び高せん断力スラリー加工で更に加工されてもよい。このような高い剪断加工は、必要とされるマイクロファイバの存在下では、行っても行わなくてもよい。
【0038】
通常フィブリル化で製作されるナノファイバフィブリル化により作製されたナノファイバは、通常、典型的な方法(例えば海島型)でナノファイバとして最初に作製された繊維とは異なる横断方向のアスペクト比を有する。そのような横断方向のアスペクト比は、完全に米国特許第6110588号明細書(特許文献1)に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。このように、好適な一実施形態では、ナノファイバは、1.5:1より大きく、好ましくは3.0:1より大きく、より好ましくは5.0:1より大きい横断方向のアスペクト比を有する。
【0039】
このように、アクリル、ポリエステル、セルロース、及びポリオレフィン繊維は、このような目的に対して特に好ましく、フィブリル化したアクリル、及びアセテート繊維については、潜在的に最も好ましい。しかしながら、更に加えて、これは、この目的のための潜在的に好適な種類のポリマーの指標として、単に提示されただけであり、このような目的のために可能性のあるポリマー材料又はポリマーブレンドの範囲を制限することを意図していない。
【0040】
図1は、リチウムイオン電池の炭素質アノード上の固体電解質界面の概略図を提供する。
【0041】
全てのリチウムイオン電池において、電解質は、アノード(炭素質の)の存在下では不安定である。このことから、電解質は分解し、アノード上に表層を形成し、固体電解質中間層と呼ばれているものが、アノード表面上に分解し重合した電解質により形成される。この層は、電解質の更なる分解を防止し、リチウムイオンに導通し、そして、電池の機能によって絶えず充電及び放電が行われることができる。
【0042】
通常のリチウムイオンセパレータについては、〜0.01ミクロン、又は10nmの孔径を有し、SEI層の形成が、アノード表面に対する電解質の緩やかな変化により、ゆっくりと進行する。このように、セパレータは、SEI層形成プロセスのための調節器として作用する。
【0043】
製造では、製造業者は、可及的速やかにこのプロセスの実行を試み、最小の電流及び最も低い電圧を使用することで、本プロセスの時間及び費用を最小化して、装置の稼働率を最大にするだろう。
【0044】
不織布セパレータについては、10nmより大きく、より多くはおよそ200〜500nm程度の孔径を有し、SEI層の形成は、セパレータの孔径によって調節されず、より急速に進行する。これでは不規則でより開放された層を生成し、アノードが完全に保護されず、更なる分解を許してしまう。このように、不織布セパレータに対してSEI層を形成するのにさらに時間がかかってしまう。
【0045】
「通常の」形成プロセスが、不織布セパレータ、又は高い多孔率及びより大きな孔径の任意のセパレータを有するリチウムイオン電池に使用される場合、1つの問題がある、それは、SEI層が完全に形成されず、アノードの領域が、依然として電解質にさらされることである。この場合、セルが形成から離れる(電気的に切断される)とき、SEI層は形成し続け、このプロセスがセルから電荷を使い果たす。このSEI層形成の継続は、セルの範囲内で「ソフトショート」と誤解されるか、又は、セルが適切に形成されるまで、大きな自己放電をもたらす場合がある。
【0046】
マイクロファイバ及びナノファイバの最初の組合せのうち潜在的に好ましい一実施形態は、EFTEC(登録商標)A−010−4のフィブリル化したポリアクリルニトリル繊維(図2及び図3)であり、ナノファイバだけでなく残余のマイクロファイバもまた高い占有率を有する。このような組み合せの範囲内で存在する得られたナノファイバは、最初のマイクロファイバのフィブリル化より生じる。これらの材料で作製された不織布シートは、図2及び図3に示される。一例として、これらの繊維が、基材として使用することが可能であり、不織布の細孔寸法及びその他の性能を制御する方法として、更なるマイクロファイバ若しくは更なるナノファイバを添加することができ、又は、このような材料は、不織布電池セパレータ自体として利用してもよい。加えられる付加的なマイクロファイバを有するこの種のシートの例は、図4および5に示される。アクリルマイクロ/ナノファイバの典型的な特性が、表1において以下に示される。
【0047】
【表1】
【0048】
マイクロファイバ及びナノファイバの最初の組合せのうち潜在的に好ましい別の実施形態は、EFTEC(登録商標)L−010−4のフィブリル化したアセテート繊維(図2及び図3)であり、ナノファイバだけでなく残余のマイクロファイバもまた高い占有率を有する。このような組み合せの範囲内で存在する得られたナノファイバは、最初のマイクロファイバのフィブリル化より生じる。一例として、これらの繊維が、基材として使用することが可能であり、不織布の細孔寸法及びその他の性能を制御する方法として、更なるマイクロファイバ若しくは更なるナノファイバを添加することができ、又は、このような材料は、不織布電池セパレータ自体として利用してもよい。
【0049】
上述したように、パルプ状の配合物に、このような繊維は実際に存在し、それによって、湿式不織布製造方式内の導入を容易にする。
【0050】
[不織布製造方法]
次に、材料の組合せを割り当て、湿式製造プロセスに共に導入する前に両成分の異なる濃度を提供することができる。手抄き紙は、TAPPI試験法T−205に従って作製されることができ、参照により本明細書に組み込まれる(基本的には上記のように、湿式製造法において一般的に使用され、繊維の「精製」として記載されるように、極めて高い水溶性溶媒の濃度で配合し、かつ、大きなせん断力の状態下で共に混合し、最終的に平面に湿った構造体を敷きつめて、溶媒を蒸発させた)。
【0051】
図4及び図5の不織布の構造における類似性(より大きいマイクロファイバ及びより小さいナノファイバ)が明らかにされ、同様に、これらの構造におけるより少量のナノファイバの存在が、これらの顕微鏡写真から明白である。
【0052】
表3で概説されるように、セルを製造し、形成するプロセスであって、次の工程を含む。
【0053】
・エアオーブン、対流式オーブン、強制空気オーブン、真空オーブン、又は当業者に既知の他のオーブンで残留水分を除去するためにセパレータを乾燥させる工程。この工程はあまり必要がなく、更にポリオレフィンセパレータに対して温度が制限される。不織布セパレータのため、残留水分は存在し、100℃で1時間、オーブンで乾燥することで、手漉きシートにて除去されることができる。より好ましくは、この乾燥は3時間、又は、最も好ましくは12時間である。より好ましい温度は110℃、及び最も好ましくは130℃である。ロール上の材料のため、必要とされる時間及び温度は、大きさ次第であり、ロールから示し得るが、一般的に、100℃、12時間で充分であり得る。しかしながら、110℃がより好ましい乾燥温度であり、130℃が最も好ましい場合がある。更に、残留湿気を除去するために、24時間がより好ましく、48時間が最も好ましい。
【0054】
・セルの組み立て工程。これは、当業者に既知のいかなる手順、及び、いかなるセル形式にも応じることができる。手順は、巻取り、積重ね、はり合わせ、又は他の手順を含むことができる。セル形式は、公知技術のさまざまな形状及び大きさの円柱形セルを含んでもよく、また、ポリマーセル及び角柱状セルもまた、公知技術の形状及び大きさのどちらも含んでもよい。
【0055】
・セルの乾燥工程:アノード、カソード、及びセパレータから最後の残留湿気を除去する場合には、セルを乾燥させ、それは、エアオーブン、対流式オーブン、強制的エアオーブン、又は真空オーブンであってもよい。これは、100℃又はより高い温度、好ましくは110℃、最も好ましくは130℃で行われてもよい。
【0056】
・セルに電解質を充填する工程:充填は、セル内部に電解質をもたらすいかなる手段によってもよく、多くの方法は当該技術分野において周知である。電解質は、リチウム及び対イオンの塩だけなく有機溶媒混合物を一般的に含むいかなるリチウムイオン電池の電解質であってもよい。有機溶剤の実施例は、炭酸エチレン、メチレン炭酸塩、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、及び炭酸プロピレンを含む。リチウム塩の実施例は、LiPFである。あるいは、イオン性液体を使用することができ、より高い熱安定性及びより高い電圧での安定性を含む利点を提供してもよい。
【0057】
・形成工程:組み立てられ充填されたセルは、直ちに初期充電プロセスを行い、SEI層を形成し、セルを充電しなければならない。この形成は、上述したさまざまな充電工程を含み、電流及び電圧プロファイルの観点から定めることができる。この形成電流及び電圧プロファイルは、定常電圧又はフローティング電圧であってもよい充電プロファイルのさまざまな位置で、休止期間を含んでもよい。印加される理想的な電流がC/4より速くはなく、好ましくはC/6より速くはなく、及び、より好ましくはC/10より速くはないように(Cは1時間で全容量をセルに充電するのに必要とされるレートである)、特定のパラメータが充分な固体電解質中間層を提供するような、電流の使用が特に重要である。更に、理想的な電圧が3.3ボルトより大きく、好ましくは3.6ボルトより大きく、及びより好ましくは3.9ボルトより大きい電圧で得られるように、特定のパラメータが充分な固体電解質中間層を提供するような、電圧の使用が非常に重要である。その上、電流を印加する充分な時間が、一度に6時間より長く、好ましくは一度に9時間より長く、より好ましくは一度に12時間より長く実施されるように、3.6ボルト以上の電圧を保ち電流を使用する。このプロセスによって、SEI層が電流(セパレータの孔径でない)によって制限され、更に高電圧で緩やかなプロセスを可能にするレートで形成することができ、いかなる隙間も満たし続けて、アノードに均一で完全な被覆を与える。
【0058】
また、このプロセス下で形成されるセルは、SEI層が、まさにアノードよりはむしろ、セパレータ自体に形成するという点で異なり、従来技術のポリオレフィンセパレータでは起こらない。これは、図14及び図15において、従来技術のポリオレフィンセパレータの場合に明らかに確認することができ、セルに封入する前で、LFPセルにて29サイクルの後のCELGARD(登録商標)2400セパレータを示している。不織布セパレータの場合、SEI層は、適切な条件下で作製されて、セパレータ自体に形成することができ、セルの封入の前のセパレータを示す図16と、LFPセルにて29サイクルの後のセパレータを示す図17及び図18との違いで分かるように、セパレータ上のSEI層の形成が明らかである。図19の充電放電曲線、図20のサイクル寿命、及び図21のレート性能に示すように、セパレータ自体にSEI層を包含するとしても、セパレータ及び電解質並びにSEI層の導電性は、CELGARD(登録商標)2400によるものよりも高く、結果として、より高い放電容量、サイクルリング上でのより少ない分解、及びより高いレート性能を得る。
【0059】
セパレータ上のSEI層の包含は、さまざまな形態になることができる。このように、このようなSEI層は、SEM顕微鏡写真下で確認され、初期のセパレータのSEM顕微鏡写真に存在する全細孔が、実質的に満たされた領域を含むことができる。また、SEI層は、初期のセパレータのSEM顕微鏡写真に存在するナノファイバが、SEI層に埋め込まれたために、存在が観測されない領域を含んでもよい。リチウムイオンセルのSEI層は、分解した電解質から作製されることは既知であり、そして、それらの製造に使用するリチウム塩を含み、エネルギー分散型X線分光法、又はEDSによって測定することができる高濃度のフッ素及びリンを含む。このようなセパレータは、1.5%を超えるEDS、好ましくは2.0%を超えるEDS、より好ましくは2.5%を超えるEDSによって測定されるリン濃度を有する領域を含み得る。また、このようなセパレータは、5%を超えるEDS、好ましくは7%を超えるEDS、より好ましくは9%を超えるEDSによって測定されるフッ素濃度を有する領域を含み得る。
【実施例】
【0060】
Dreamweaver Silverセパレータは、米国特許第8936878号明細書(特許文献4)に記載されている方法に従って作製され、参照により本明細書に組み込まれる。これらの試験において使用される実施例は、長さ5mm及び0.3デニール/フィラメントでの、EFTec A−010−04ナノフィブリル化ポリアクリルニトリル繊維、EFTec L−010−04ナノフィブリル化アセテート繊維、及びポリエチレンテレフタラート繊維を含む、Dreamweaver Silver25であった。このセパレータの特性は、以下の表2に示される。
【0061】
【表2】
【0062】
生地は、厚みの測定がされ、それから、リチウムイオン充電式電池セル内への導入に好適な大きさ及び形状に切断された。しかしながら、そのような導入の前に、電池セパレータの生地のサンプルは分析され、適切な電池セパレータとしてそれらの能力に関するさまざまな特性の検査がなされた。その上、米国特許第7112389号明細書(特許文献5)による電池セパレータナノファイバ膜の比較実施例は、参照として本明細書に組み込まれ、同様にCELGARD製の電池セパレータフィルムは、当該特許における試験、及びCELGARD製品の文献から報告されている。
【0063】
[バッテリセパレータ基材分析及び試験]
試験プロトコルは以下の通りである。
【0064】
多孔率は、参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第7112389号明細書(特許文献5)における方法に従って算出された。結果は%で報告され、電池内にあるときの電解質のように、空気又は非固体物質によって充填されているセパレータのバルク部分と関連づけられている。
【0065】
参照として本明細書に組み込まれるTAPPI試験法T460に従って、ガーレー透気度の試験を行った。この試験に使用する機器は、ガーレー透気度試験機モデル4110である。試験を行うために、試料を挿入し、透気度試験機内に固定する。シリンダ勾配を100cc(100ml)ラインまで上げて、それ自体の重量で降下することができる。100ccの空気がサンプルを通過する時間(秒単位)が記録される。結果は、秒/100ccで知らされ、これは100立方センチメートルの空気がセパレータを通過するのに必要とする時間である。
【0066】
ASTM E−1294「自動液体多孔率計を用いたメンブランフィルタの孔径特性標準試験法」に従って平均流量孔径の試験を行ったが、それは毛管流多孔率計を用いたASTM F 316による自動バブルポイント法を使用する。試験は、ニューヨーク州イサカにあるPorous Materials社で実施した。
【0067】
セパレータの空気透過性とは、一定の空気量が弱い圧力下で標準領域中を通過するのに要する時間の測定により表される。その手順はASTM D−726−58に記載されている。
【0068】
[実験:セル製造業者A]
製品のリン酸鉄リチウム電極は、2つの製造業者から得られ、均一の圧力を与える2個のプレキシグラス間に固定された単層パウチセルで試験された。上記セルにおいて、自己放電以外の電気的性質が非常に安定していたが、より完全に他の文献で報告されるだろう。
【0069】
単層パウチセルは、50mm×50mmの大きさで作製された。電極(アノード及びカソードの組合せを整合させている)が、中国のバッテリ製造業者によって商業的に製造された。セルは、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、及び炭酸ジエチルが4:3:3の容積の混合物に、1モルのLiPF6を含むリチウムイオン電池電解質で充填され、以下で見出される表4の変数(具体的には、SEI層形成のためのチャージ率、電圧、カットオフ電流、及びサイクル数、並びに各セルのセパレータに対する乾燥温度)を使用して、表3の手順及び試験パラメータに従って封止され、形成され、試験された。試験は、下記手順を用いたNeware電池テスタで行われた。
【0070】
セル構築プロセスは、セパレータの乾燥、セルの組み立て及び乾燥、電解質の充填及び形成、続いて、30%の充電状態(SoC)での自己放電試験、並びに、完全な充電及び完全な放電を含む最終的な容量試験が含まれる。この試験結果は、以下の表3及び表4に示される。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
製造業者A製の電極から作製されるセルの形成結果(上記で見られる)は、表5において以下に示される。各セルの条件は、2つのセルの平均値であることに注意されたい。
【0074】
【表5】
【0075】
これらの結果から、いくつかの見解を得ることができる。第1のチャージサイクル間のクーロン効率は比較的低く、条件A2の45%から条件A3及びA6の84%の範囲であり、条件A5、A9、及びA12はすべて80%を超えている。充電サイクル時間はクーロン効率と相関し、時間が8:02〜42:55と大きな範囲となっている。極めて長い時間はすべて、1回だけ充電を行ったセル(A2、A8、A11)で生じた。これらの組のセル間の変化は非常に大きく、潜在的な実験誤差を示唆している。実施された第2のサイクルのクーロン効率は、全てのセルに対してまさに100%近くにあり、97.6%〜102.7%の範囲にある。セルの組間の平均差は、0.75%であった。また、第2のサイクルの充電時間は比較的均等であり、5:42〜7:09の時間範囲にある。セルの組間の平均変動は0:30の時間であり、平均について非常にタイトな相関を示している。
【0076】
自己放電試験の結果は、自己放電の後放電を含んでおり、図6と同様に以下に示される表6に挙げられる。ここでも、各セルの条件は、2つのセルの平均値であることに注意されたい。
【0077】
【表6】
【0078】
さらにまた、いくつかの見解を得ることができる。自己放電損失の範囲は、電圧及び容量において非常に大きい。電圧に関しては、14mV〜40mVの損失範囲があり、容量では、0.2mAh〜5.8mAhの範囲がある。図6からは、最終的な自己放電電圧、自己放電上の電圧損失、及び自己放電上の容量損失間の緩やかな相関しかないと推定することができる。その上、最終的な放電容量の範囲は大きいが、プロセスパラメータとの相関は、ほんのわずかである。電極の大きさが小さいことと、誤整列の可能性の両方があるため、大きな実験誤差が存在する可能性がある。組間の高い相関性はなく、組の平均変動は2mAhを超える。
【0079】
[データ分析:セル製造業者A]
データセットは準実験計画法で設計され、部分集合の平均算出が単一変数の分離を可能にし、その変数と関連した各種の測定値における変化を得ることができる。これらの平均及び分離される変数は、表7において以下に示される。
【0080】
【表7】
【0081】
各これらのグループの中のデータを平均することによって、変数がサンプルで最も多数のグループの中で分離されることができ、実験誤差に平均化して、更には第1水準の相互相関を特定する。いずれの場合においても、平均したセルの最小数は、8である(定電圧電流カットオフ及び放電圧カットオフに対して)。測定ごとに得られた平均は、表8において以下に示される。
【0082】
【表8】
【0083】
このデータが、変数(表の最も左の列)によって、結果(表のセル)が変化するかどうか、個々に示すことができる。結果の中で、性能基準としてセルの使用者に重要なことが2つある。これらのうち第1は、自己放電であり、我々が自己放電損失mAhで確認しており、実容量は14日のホールド期間の間に失われる。第2は、最終的な放電容量であり、セルは販売される準備ができているため、セルの初期容量として測れることができる。電荷容量に対して、いくらかの結論を出すことができる。
【0084】
最終的な放電容量は、明らかに低い乾燥温度及び大きな充電カットオフ電圧によって影響を受け、各々3〜4mAh、又は5〜7%だけ容量に影響を及ぼす。これらの関係は図7に示される。その上、自己放電損失(mAh)は、図8に示すように、多くの変数によって明らかに(小さな)影響を受け、その変数は、低い乾燥温度、低い定電流充電レート、小さな定電流カットオフ電流、大きな充電電圧、及び少ないサイクルを含む(これは、これらのセルのクーロン効率が、2つのサイクルを経てセルの第1のサイクルのクーロン効率と相関しないので、実験的な異常であるように思われる)。これらの結果は、本発明の1つの基準であり、小さな定電流カットオフ電流に対応するこの場合では、弱電流、高電圧、及び高電圧での長期の浸漬を用いた形成サイクルを含む。
【0085】
図9は、リチウムイオン電池における最初の充電時間と自己放電との間の相互相関を表示している表である。最も強い相関は、第1の充電サイクルに費やされる総時間と、開放セルで14日後の自己放電残留容量との間にあり、右にチャートで示される。形成条件に基づき、容量損失は、5mV〜2.5mV未満で50%以上減少することができる(セルは、18mV又は自己放電前の30%のSOCまで充電された)。一般的に、より長い充電時間を達成するために用いる変数とは関係なく、形成終了後の自己放電を減らすために、長い初期充電時間を用いることと強い相関があるように見えることが理解できる。
【0086】
[実験:セル製造業者B]
製造業者B製の電極から作製されるセルの形成結果は、表9において以下に示される。各セルの条件は、2つのセルの平均値である。
【0087】
【表9】
【0088】
これらの結果から、いくつかの見解が得られ、製造業者Aのものと非常に類似している。第1の充電サイクル間のクーロン効率は比較的低く、条件B8の13%から条件B12の85%の範囲であり、条件B2、B6、及びB11はすべて80%を超えている。充電サイクル時間はクーロン効率と相関し、8:02〜45:29と大きな時間範囲となっている。製造業者Aと異なり、そこに長い充電時間と形成条件との間に相関があるように思えない。組のいくつかには、良好な整合性があり、他には、幅広い変動と共に、断続的な実験誤差を示している。実施された第2のサイクルのクーロン効率は、2つ(B7−2、B10−2)以外の全てのセルに対してまさに100%近くあり、98.8%〜100.7%の範囲にある。また、第2のサイクルの充電時間は比較的均等であり、6:34〜13:33の時間範囲にある。
【0089】
自己放電試験の結果は、自己放電の後放電を含んでおり、表10に挙げられる。また、各セルの条件は、2つのセルの平均値である。
【0090】
【表10】
【0091】
さらにまた、いくつかの見解を得ることができる。自己放電損失の範囲は、電圧及び容量において非常に大きい。電圧に関しては、37mV〜86mVの損失範囲があり、容量では、2.9mAh〜7.7mAhの範囲がある。最終的な自己放電電圧、自己放電上の電圧損失、及び自己放電上の容量損失間の良好な相関がある。最終的な放電容量の範囲は大きいが、プロセスパラメータとの相関は、ほんのわずかである。ここには、電極の大きさが小さいことと、誤整列の可能性の両方があるため、大きな実験誤差が存在する可能性がある。組間の高い相関性はなく、組の平均変動は2mAhを超える。
【0092】
[データ分析:セル製造業者B]
データは、製造業者Bに関しては同じグループ間で平均化された。測定ごとに得られた平均は、表11において以下に示される。
【0093】
【表11】
【0094】
製造業者Aに関して同一のデータに注目すると、いくつかの結論を出すことができる。最終的な放電容量は非常に安定しており、実際は充電電圧にのみ影響を受ける。これらの関係は図11に示される。自己放電損失(mAh)は、図12に示すように、多くの変数によって明らかに(小さな)影響を受け、これは、 低い乾燥温度、低い定電流充電レート、小さな定電流カットオフ電流、大きな充電電圧、及び多くのサイクルを含む。また、これらの結果によって、高電圧での長時間の浸漬による高電圧でゆっくりとした充電は、優れた特性を有するバッテリを提供するといった結論が支持される。
【0095】
特に自己放電に関しては、相関は、サイクル数を除いて製造業者Aに関するかぎり同一であり、製造業者Aに関して、1サイクル形成対2サイクルとのセル間の第1のサイクルクーロン効率の不整合による、実験上の異常であるように思える。製造業者Bのセルには、この不整合はなかった、結論は、より多くサイクルが自己放電を減らすということであるように、複数の他のセル構築において見られた一般的な挙動と一致する。
【0096】
製造業者Aと同様に、C1時間と自己放電損失との間に、1つの重要な相互相関があり、図13において以下に示される。理解されているように、より長い充電時間を達成するために用いる変数とは関係なく、形成終了後の自己放電を減らすために、より長い初期充電時間を用いることと強い相関があるように見える。
【0097】
形成パラメータと、自己放電と、達成されたセル容量との間には、いくつかのつよい相関が示された。あらゆるセルが単独で最適化されなければならず、これらの結果が他のセルと相関しない場合がある一方で、これらの結果に基づいて、以下の推奨事項により、おそらく結果として最大5%のセル容量の改善と、最大50%の自己放電レートの減少にいたる。
【0098】
結果に基づいて、特定の実施形態では、Dreamweaver Silverセパレータは、最大摂氏110度のセパレータ乾燥温度で乾燥させることが推奨される。更に、SEI層の形成は、セルが部分的に充電されるまで、最大C/6までの小さな初期充電サイクル電流を利用し、セルが部分的に充電された後、より大きなC/6での充電を利用することが推奨される。更に、形成は、いくつかのカソードシステムのために、少なくとも3.6ボルト、又は、4.0ボルトと同程度の安定した高さ、若しくはそれ以上高さで進行することが推奨される。更に、形成には、弱電流(C/60未満)が達成されるか、又は特定の期間(6時間超)の間のいずれかまで、高電圧CV(定電圧)充電が含まれることが推奨される。
【0099】
図22は、外筐体12を含む典型的な電池10の構造を示し、その外筐体12は他の全ての構成要素を包含し、セルからの電解質の漏れだけでなくセル環境の汚染を防ぐよう確実に封止される。このように、アノード14は、カソード16と直列に提供され、その2つの間に少なくとも1つの電池セパレータ18が提供される。電解質20は封止前にセルに加えられて、必要なイオン発生を提供する。このように、セパレータ18は、アノード14及びカソード16の接触を防止するのを助け、同様にセパレータ18によって電解質20から選択されたイオン移動を可能にするのを助ける。電池セルの汎用形態は、この構造表現に従い、内部要素ごとに構造の大きさ及び構成が異なっているにもかかわらず、電池セル自体の大きさ及び構造よって決まる。この状況で、実質的に円形の固体構成要素のボタン電池が、このようなセルの範囲内でセパレータの効果を適切に試験するために作り出された。
【0100】
それから、その目的で、電池の分解後にセパレータの分解及び測定を可能にするために、コイン電池が作り出された。CR2032コイン電池が組み立てられた。LFP及び黒鉛電極は、上記の製造業者Bから使用された市販の電極であり、炭酸エチレン及び炭酸ジエチル(EC/DEC、1:1の体積)の混合物の1.0MのLiPF溶液が、電解質として用いられた。CELGARD2400セパレータが、60℃で乾燥の後に用いられた。DWI Silverセパレータに関しては、セルは、90℃及び120℃で4時間乾燥させたセパレータだけでなく、未乾燥セパレータによっても作製された。セルの組み立ての後、セルは、安定化のため50℃の真空下で終夜保持し続けられた。安定化の後、セルは、Toyo battery cyclerでサイクルさせた(CCCV)。最初に、セルは、2回の形成サイクルの間サイクルさせた後に、1C、2C、4C、2C(各3サイクル)でレート性能試験が続いた。レート性能の後、セルは、1Cレートで50サイクルの間サイクルさせた。これらのサイクル試験の結果は、図19の充電放電曲線、図20のサイクル寿命、及び図21のレート性能として示される。
【0101】
図20に示すように、このような電池は、網目状に絡ませたマイクロファイバ/ナノファイバセパレータ(例えば、DWI Silver 25)によって、その中に予め形成されたSEI層を有して、このようなSEIの形成の全体にわたって存在し、その中に炭酸エチレン/炭酸ジエチレン、及びLiPF6電解質を有する電池は、1C、2C、4C、2C、及び1Cのサイクルの全体にわたって、少なくとも38mAh/gの比容量をサイクルリングさせた後に示す。比較して、CELGARD2500セパレータ型電池(同一の電解質及び全体構造を有する)は、同一サイクル上で、はるかに低い比容量の測定値を示した。同様に、図21は、本発明の電池、及び比較したCELGARD型の比容量の異なった測定値を示している。初期充電から50連続サイクル亘って、予め形成されたSEI層の電池は、全く異なる結果を示した。本発明の電池は、上記のように同じ電解質を有し、このような連続50サイクルに亘って100mAh/gを上回る比容量を示した。顕著に、比較したバッテリは、このような数以下で十分であったが、本発明のタイプに対してより大きな信頼性を示し、おそらく電池セパレータだけでなくアノード上のSEI層の効果的な予備形成に起因する。
【0102】
それから、目的の電池(発明及び比較の)の範囲内で、予め形成されたSEI層の全体の結果を示すために、特定の実施例は、事実上、分解を前提として、セパレータ自体のその中の及びその上のSEI層全体の被覆範囲を決定していた。このように、サイクルリングの完了の後、実施例のコイン電池は、アルゴンに満ちたグローブボックス内で折り曲げられ、SEM及びEDX分析前に真空下で乾燥させた。SEM及びEDX分析の試料は準備され、金/パラジウムでコーティングした。SEM分析には、Carl Zeiss Auriga−BU FIB FESEM顕微鏡が用いられた。EDX分析には、エネルギー分散型分光計(Bruker Nano with XFlash Detector 5030)を有する走査型電子顕微鏡が用いられた。セパレータに実施されたEDXは、結果として表12に示すような原子ピークになった。
【0103】
【表12】
【0104】
これらの測定は、SEI層が、比較のフィルムセパレータ上よりも本発明のセパレータ上のほうがはるかに多く成長した場合を示す。したがって、多くても70の炭素原子ピークの測定値の場合、少なくとも8の酸素原子ピーク、少なくとも5のフッ素原子ピーク、及び少なくとも1.5のリン原子ピークは、この状態おいて重要であり、電池内で成熟したSEI層を提供する。上記のように、このようなSEI層は、特にアノード及びセパレータ上に共に存在する層内に、初期充電及びサイクルリングに対するより大きな信頼性を与える。したがって、このような効果的なSEI層の結果と、サイクリングと初期充電の間、このように被覆しやすいセパレータによって、少なくとも、そこから作製される電池は、上記のように、優れた初期容量を示し、同様に、目的のデバイス(実施例のような携帯電話など)内でこのような初期充電を待つと共に、使用中の大きな信頼性及び潜在的により長い保存寿命を提供する。
【0105】
実施例の方法は、アノード、カソード、及びセパレータを備える内部容積を含むセルを組み立てる工程と、セルの内部容積に電解質を充填する工程と;アノード及びカソードを充電装置に接続する工程と;セルが電圧容量に到達するまで、C/6以下のレートでセルに充電する工程と;6時間超の間に設定された電圧より高い電圧でセルに充電する工程とを含む。更に、本発明は、低いレートの充電工程の最終電圧が、3.4ボルト以上であるような方法を包含する。更に、本発明は、高電圧の充電工程の電圧が、3.4ボルトを超えるような方法を包含する。
【0106】
実施形態は、充分な固体電解質中間層を提供し、印加される理想的な電流は、C/4より速くなく、好ましくはC/6より速くなく、及び、より好ましくはC/10より速くないように(Cは1時間で全容量をセルに充電するのに必要とされるレートである)、特定のパラメータを含んでもよい。更に、理想的な電圧が3.3ボルトより大きく、好ましくは3.6ボルトより大きく、及びより好ましくは3.9ボルトより大きい電圧で得られるように、特定のパラメータが充分な固体電解質中間層を提供するような、電圧の使用が非常に重要である。その上、電流を印加する充分な時間が、一度に6時間より長く、好ましくは一度に9時間より長く、より好ましくは一度に12時間より長く実施されるように、3.6ボルト以上の電圧を保ち電流を使用する。このプロセスによって、SEI層が電流(セパレータの孔径でない)によって制限され、更に高電圧で緩やかなプロセスを可能にするレートで形成することができ、いかなる隙間も満たし続けて、アノードに均一で完全な被覆を与える。上記のように、このようなアノードの被覆範囲は、バッテリ全体の信頼性にとって重要である(そして、おそらく、初期充電前よりも、保存寿命を延ばす)。
【0107】
本開示は、特にその好ましい実施形態及び添付の図面に関して、図と共に説明されてきたが、当業者であれば、形状及び細部の様々な変更が、本開示の趣旨を逸脱することなく、その分野においてなされ得ることが理解されよう。したがって、本開示の範囲は、詳細な説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって規定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22