特許第6981998号(P6981998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981998パルス中性子により発生し放出される即発ガンマ線による表面欠陥検出および分析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981998
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】パルス中性子により発生し放出される即発ガンマ線による表面欠陥検出および分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/22 20180101AFI20211206BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20211206BHJP
   G01N 23/2202 20180101ALI20211206BHJP
   G21K 5/02 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G01N23/22
   G01T1/24
   G01N23/2202
   G21K5/02 N
【請求項の数】15
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-555744(P2018-555744)
(86)(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公表番号】特表2019-521313(P2019-521313A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】US2017027326
(87)【国際公開番号】WO2017200666
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年3月6日
(31)【優先権主張番号】15/156,757
(32)【優先日】2016年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ヘイベル、マイケル、ディー
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04851687(US,A)
【文献】 特表2015−521372(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/046078(WO,A1)
【文献】 Pugliesi,R. et al.,Study of cracking in concrete by neutron radiography,Applied Radiation and Isotopes,1997年,Vol.48, No.3,pages 339-344,https://www.ipen.br/biblioteca/1997/06186.pdf,DOI https://doi.org/10.1016/S0969-8043(96)00229-1
【文献】 Elizondo-Decanini,Juan M. et al.,Novel Surface-Mounted Neutron Generator,IEEE Transactions on Plasma Science,2012年,Vol.40, No.9, (2012),pages 2145-2150,https://www.researchgate.net/profile/Jm_Elizondo/publication/258657463_Novel_Surface-Mounted_Neutron_Generator/links/555cb98608ae8c0cab2a6575.pdf,DOI: 10.1109/TPS.2012.2204278
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
G01N 23/00− G01N 23/2276、
G01T 1/00−G01T 1/16、
G01T 1/167−G01T 7/12
・JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を浴びた材料(20)の表面の構造欠陥(22)を非破壊検査により検出する方法であって、
定まったエネルギーの高速中性子捕獲即発ガンマ線放出反応断面積が比較的大きい化学種を含む非腐食性ひび割れ浸透液(30)の混合物を検査対象となる当該材料(20)の当該表面に塗布するステップと、
中性子パルス発生器(12)により当該材料の当該表面を照射するステップと、
活性領域(42)と当該検査対象の表面との間に位置する犠牲材料層(36)が光電効果により発生させる電子の当該定まったエネルギーに調整された複数のベータ線検出器(24)を、当該混合物を塗布した当該材料の当該表面上に規則的なパターンで配置して、当該複数のベータ線検出器の各々により、対応する1つの観察表面領域で放出される当該定まったエネルギーの即発ガンマ線(38)の検出を示す出力を提供させるようにするステップと、
当該検出出力を用いて当該欠陥(22)の特性をマッピングするステップと
から成る方法。
【請求項2】
前記特性は、前記表面(20)における前記欠陥(22)の位置、長さおよび深さのうちの少なくとも1つである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記欠陥(22)の深さを前記検出出力の強度から求める、請求項2の方法。
【請求項4】
前記混合物(30)は毛細管吸収によって前記表面(20)に吸収される、請求項1の方法。
【請求項5】
前記中性子パルス発生器(12)はneutristor型中性子パルス発生器である、請求項1の方法。
【請求項6】
前記ベータ線検出器(24)の調整は、前記検査対象の表面(20)と前記ベータ線検出器の活性部(42)との間に電子放射体として機能する原子番号の大きい犠牲材料(36)を配置することによって実現されることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項7】
前記ベータ線検出器(24)は炭化ケイ素(SiC)検出器であり、放出される前記所望の即発ガンマ線エネルギー(38)の光電吸収により発生する電子の大部分が当該SiC検出器の活性領域(42)内で完全に阻止されるように、前記ベータ線検出器の前記犠牲材料層(36)の厚さ、当該検出器活性領域(24)からの距離、および使用材料の種類が選択されることを特徴とする、請求項6の方法。
【請求項8】
前記犠牲材料(36)が白金またはタングステンの層である、請求項6の方法。
【請求項9】
放射線を浴びた材料(20)の表面の欠陥(22)を非破壊検査により検出して特性を評価するための装置であって、
高濃度の窒素を含むか、または定まった光電エネルギーの高速中性子捕獲即発ガンマ線放出反応断面積が比較的大きい化学種を混合した、非腐食性ひび割れ浸透液の混合物(30)を検査対象の当該表面に散布し塗布するように構成されたスプレー系(18)と、
当該材料(20)の表面を照射するように構成された中性子パルス発生器(12)と、
それぞれが、活性領域(42)と当該検査対象の表面(20)との間に位置する犠牲材料層(36)が光電効果により発生させる電子の当該定まったエネルギーに調整され、当該混合物を塗布した当該材料の当該表面上に規則的なパターンで配置され、対応する1つの観察表面領域で放出される当該定まったエネルギーの即発ガンマ線(38)の検出を示す出力を提供する複数のベータ線検出器(24)と、
当該検出出力を用いて当該欠陥(22)の特性をマッピングするベータ線検出器出力装置と
から成る装置。
【請求項10】
前記特性が、前記表面(20)における前記欠陥(22)の位置、長さおよび深さのうちの少なくとも1つである、請求項9の装置。
【請求項11】
前記欠陥(22)の深さを前記検出出力の強度から求める、請求項10の装置。
【請求項12】
前記中性子パルス発生器(12)がneutristor型中性子パルス発生器である、請求項9の装置。
【請求項13】
前記ベータ線検出器(24)は、前記検査対象の表面(20)と前記ベータ線検出器の活性部(42)との間に置かれた電子放射体として機能する原子番号の大きい犠牲材料(36)を含むことを特徴とする、請求項9の装置。
【請求項14】
前記ベータ線検出器(24)は炭化ケイ素(SiC)検出器であり、放出される前記所望の即発ガンマ線エネルギー(38)の光電吸収により発生する電子の大部分が当該SiC検出器の活性領域(42)で完全に阻止されるように、前記ベータ線検出器の前記犠牲材料層(36)の厚さ、当該検出器活性領域からの距離、および使用材料の種類が選択されることを特徴とする、請求項13の装置。
【請求項15】
前記犠牲材料(36)が白金またはタングステンの層である、請求項13の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して中性子照射による表面のひび割れ検出に関し、具体的には、放射線を浴びた構成機器の構造欠陥を突き止めるための非破壊検査に関する。
【背景技術】
【0002】
高い放射能を帯びた構成機器または放射性物質の容器を操作しなければならない場合、かかる構成機器や容器の構造健全性を確実に評価して、放射性物質の制御および封じ込め機能が失われる可能性を最小限に抑えることが重要である。高レベル放射線場に置かれた放射性構成機器または放射性物質容器の構造健全性は、放射線場が機器のアクセスおよび操作性に影響を及ぼすため、標準的な目視法および超音波非破壊検査(NDE)法による評価が困難である。高放射線環境に適した手法および装置を用いた、放射性構成機器および放射性物質容器の構造健全性を評価する手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本願は、定まったエネルギーの即発ガンマ線を放出する、好ましくは窒素濃度の高い、または高速中性子捕獲即発ガンマ線放出反応断面積が比較的大きい同位体を高比率で含むスカンジウム、バナジウム、マンガンまたはチタンなどの化学種を混合した、ひび割れ浸透液を材料表面に塗布するステップから成る、放射線を浴びた材料表面の構造欠陥を非破壊検査により検出する方法を開示する。次のステップとして、当該材料表面に中性子パルス発生器により中性子を照射すると、当該定まったエネルギーに調整され、当該混合物を塗布した当該表面上に規則的なパターンで配置された複数のベータ線検出器がそれぞれ対応する観察表面領域において放出される当該定まったエネルギーの即発ガンマ線の検出を示す出力を提供する。このガンマ線検出出力を用いて、当該欠陥の特性をマッピングする。一実施態様において、この特性は、当該表面における当該欠陥の位置および長さである。別の実施態様において、この特性は、当該表面における当該欠陥の深さである。当該欠陥の深さは、検出出力の強度から求めるのが好ましい。
【0004】
そのような一実施態様において、当該混合物は毛細管吸収によって当該表面に吸収される。当該中性子パルス発生器は、neutristor型中性子パルス発生器であるのが望ましい。当該ベータ線検出器の調整は、当該表面と当該ベータ線検出器の活性部との間に、電子放射体として機能する原子番号の大きい犠牲材料を配置することによって実現するのが好ましい。当該ベータ線検出器は、放出される当該所望の即発ガンマ線エネルギーの光電吸収により発生する電子の大部分が活性領域内で完全に阻止されるように、ベータ線検出器の犠牲材料層の厚さ、当該検出器活性領域からの距離、および使用材料の種類が選択された炭化ケイ素(SiC)検出器であるのが望ましい。そのような一実施態様において、犠牲材料は白金またはタングステンである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0006】
図1】本発明の装置の概略配置図である。
【0007】
図2図1のSiC検出器アレイに用いるSiC検出器および前置増幅器の概略配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の動作原理は、染料浸透によるひび割れの検出、中性子起源の即発ガンマ線の検出、および二次元コンピュータ断層撮影(CT)法の新しい組み合わせに基づく。このシステムはまた、SiCの調整による新規なガンマ線強度検出方法およびSiCの微弱な信号出力のために固体真空管技術を採用した前置増幅器を使用する。好ましい実施態様において、好ましくは窒素濃度が高い非腐食性ひび割れ浸透液、または高速中性子捕獲即発ガンマ線放出反応断面積が比較的大きい同位体を高比率で含むスカンジウム、バナジウム、マンガンまたはチタンなどの化学種を混合したひび割れ浸透液(例えばジョージア州カータースビルに所在のダイナフラックス・クオリティ・プロダクツ社から入手できるDynaflux Visible Dye Penetrantなど)を、検査対象の表面に到達したとき確実に液体の状態を保つのに必要な、制御された温度・圧力下で塗布する。本願で説明するシステムは、システムのハードウェアを検査対象の表面に実際に接触させずに、当該表面に混合物を高圧で散布し塗布する能力を有する。次いで、サンディア国立研究所で開発され、測定アセンブリに格納された、neutristor型中性子パルス発生器(NPG)アセンブリ(サンディア国立研究所、「Innovation Marketplace」、2014年9月、第1巻、第3号)を、操作員が表面から1インチ以内で、表面上の固定基準点から0.1mm以内の既知の半径方向位置に近づける。NPGアセンブリは、特別に構成されたSiC放射線検出器アレイ(例えば、2013年2月18日提出の「Solid State Radiation Detector With Enhanced Gamma Radiation Sensitivity」と題する米国特許出願第13/769,401号に記載されたような1mmの検出器の100×100正方行列)に取り囲まれており、それらの検出器は、図1に略示するように、NPGアセンブリ上の基準点から0.05mm以内の既知の位置にあって、ひび割れ浸透液混合物中の即発ガンマ線を放出する同位体から放出されるガンマ線とSiC検出器の活性部との間にある物質中で光電吸収によって発生する電子の強度を主に測定するように調整されている。
【0009】
本発明の非破壊検査システム10は、検査対象の材料表面20上を移動して当該表面にひび割れ浸透溶液30を散布できるスプレー装置18を有する。中性子パルス発生器12からの中性子パルスの流れがひび割れ浸透溶液30中の同位体と反応すると即発ガンマ線が放出され、このガンマ線がSiC放射線検出器24によって検出される。SiC放射線検出器の出力は前置増幅器26に送られ、当該前置増幅器の出力は、検出信号の強度や変動を分析してひび割れの存在、位置、長さおよび深さを突き止める処理電子回路に送られる。SiCのベータ線エネルギー感度は、表面とSiC検出器の活性部との間に、電子放射体として機能する白金やタングステンのような原子番号の大きい犠牲材料を配置することによって調整される。放出される所望の即発ガンマ線エネルギーの光電吸収によって犠牲材料層中で発生する電子の大部分がSiC検出器の活性領域内で完全に阻止されるように、検出器の犠牲材料層の厚さ、検出器活性領域からの距離、および使用材料の種類を選択する。これは、最大エネルギーに満たないガンマ線起源の電子がSiC検出器の活性領域に到達して当該領域内で阻止される可能性がほとんどないように、電子放射体の表面と、ショットキー界面領域を覆うSiCアルミニウムの前面との間の距離を適切に調節することで、当業者によって実現できる。これにより、測定された検出器出力が、各検出器によって観察されるひび割れ中の浸透材の量に、すなわちひび割れの寸法特性に比例するようになる。図2は、SiC検出器および関連するアレイ形状の概要を示す。
【0010】
SiC検出器24は、犠牲材料36が光電吸収により即発ガンマ線38を変換して発生させる電子を受け取るが、当該犠牲材料とショットキー接触面の距離(d)を変えることによって所望のすべての電子が捕捉されるようにする。電子は、この例では厚さ約10μmのNドープSiC40の中を移動して基材42に到達し、そこで、金で裏打ちされたオーム接点44によって捕集される結果、出力電流28が前置増幅器26を介して処理電子回路46へ送られる。中性子パルス発生器が1回以上作動した後に、検出器アレイの中のそれぞれ正確に位置づけされた非常に小型の各SiC検出器から得られる相対強度測定データにより欠陥の寸法特性が突き止められる。検出器の出力信号は、2016年1月15日提出の「In−Containment Ex−Core Detector System」と題する米国特許出願第14/996,667号に記載されているような小型化され中性子パルス発生器構造体に組み込まれた個々の前置増幅器に入力される。次に、検出器出力を増幅した電流信号が、高放射線領域の外の便利な場所に配置された測定・解析システムに送信される。SiC検出器アレイの形状および各検出器の相対測定値から、二次元CTアルゴリズムを用いて、所望のひび割れ寸法特性の測定値(例えば深さ、幅、長さ)間の使用例に特化した相関関係が求められる。
【0011】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。
図1
図2