【文献】
MOLECULAR THERAPY - METHODS & CLINICAL DEVELOPMENT,2015年10月21日,VOL:2,PAGE(S):15039-1/15,http://dx.doi.org/10.1038/mtm.2015.39,& Supplementary Material
【文献】
PASCALE BOUILLE; ET AL,TRANSIENT NON-VIRAL RNA DELIVERY MEDIATED BY A LENTIVIRAL PARTICLE,MOLECULAR THERAPY,2016年 5月 4日,VOL:24, NR:S1,PAGE(S):S215,#538,http://dx.doi.org/10.1016/S1525-0016(16)33346-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
目的の配列を有する少なくとも1つの第3のカプシド形成された非ウイルスRNAをさらに含み、前記目的の配列が、ガイドRNAの第2の認識エレメントに対応するか、又は付加的なガイドRNAに対応する、請求項1又は2に記載のレトロウイルス粒子。
カプシド形成配列として12回反復したMS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを含むカプシド形成された非ウイルスRNAが、Cas9をコードするRNAであり、かつ、第2のカプシド形成された非ウイルスRNAが、ガイドRNAの少なくとも1つの認識エレメントに対応するRNA、又はガイドをコードするRNAであり、前記カプシド形成された非ウイルスRNAが、カプシド形成配列として2回反復したMS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを含む、請求項6に記載のレトロウイルス粒子。
【背景技術】
【0002】
標的細胞への複数のRNAの導入は、研究開発及び遺伝子治療における主要な課題である。
【0003】
ウイルスに由来するベクターの使用は、遺伝子導入のための重要な方法となっている。現在、ウイルスベクターは以下の2つの主要なカテゴリーに分けることができる:
−受容者のゲノム中に組み込む、組み込みベクター、並びに
−通常、染色体外遺伝エレメントを形成する、非組み込みベクター。
【0004】
組み込みベクター、例えばガンマ−レトロウイルスベクター(RV)及びレンチウイルスベクター(LV)は安定に組み込まれる。非組み込みベクター、例えばアデノウイルスベクター(ADV)及びアデノ随伴ベクター(AAV)は、急速に分裂する細胞から迅速に排除される。特定のベクターの選択に影響を与える特定の要因は、そのカプシド形成(encapsidation)能力、その標的又は宿主細胞の範囲、その遺伝子発現プロファイル、その形質導入効率、及び、反復した形質導入が必要である場合に特に問題となるその免疫応答を誘導するための能力を含む。
【0005】
遺伝子治療又は多くのインビトロ、エクスビボ及びインビボ用途におけるような特定の用途は、非組み込みベクターの使用を必要とする。例として、以下のものが挙げられる:
・多能性細胞に特殊化した細胞の再プログラミングの誘導、並びに幹細胞又は多能性細胞の特殊化細胞への分化の誘導、
・標的細胞における同時の、抗原又はタンパク質(毒性又は非毒性)の発現、
・ゲノム工学システムの発現、例えばCREタンパク質、TALENシステム、Zn Finger Nuclease又はCRISPR、あるいはタンパク質又はRNAの発現を必要とする任意の他のシステムの発現。
【0006】
標的細胞にRNAを導入する1つの方法は、レトロウイルス科(Retroviridae)(レトロウイルスファミリー又はRNAウイルスとも称される)に属するウイルスに基づくウイルスベクターを用いる。実際に、その複製サイクル中に、レトロウイルス科のウイルスは、RNAによって構成されたそのゲノムを二本鎖DNAへと変換する能力を有し、この二本鎖DNAは、標的細胞のゲノムに組み込まれることになる。このレトロウイルスのファミリーの具体例は、ガンマレトロウイルス及びレンチウイルスである。
【0007】
レトロウイルスの複製サイクルは、膜受容体への固定を介する標的(又は宿主)細胞の認識の第1フェーズを含む。この認識フェーズは、膜融合後に、宿主細胞へのレトロウイルスの侵入をもたらす。次に、レトロウイルスRNAは、レトロウイルスによってコードされた逆転写酵素によって二本鎖DNAへとコピーされ、次に宿主細胞のゲノムに組み込まれる。次に、このウイルスゲノムは、細胞の他の全ての遺伝子と同様に、宿主細胞によって転写及び翻訳される。このゲノムは、他のウイルスの産生を可能にするタンパク質及び配列の全てをコードしている。
【0008】
より具体的には、3つの遺伝子:gag、pol及びenv、がレトロウイルスの全てに共通している。
【0009】
Gagはポリタンパク質をコードする遺伝子であり、切断によってこのポリタンパク質に由来するタンパク質は、複製時にウイルスの構築に関与する構造タンパク質である。これら構造タンパク質は、より具体的には、マトリックス(MA)タンパク質、カプシド(CA)タンパク質及びヌクレオカプシド(NC)タンパク質である。
【0010】
Polは、酵素のインテグラーゼ、逆転写酵素及びプロテアーゼをコードする遺伝子である。
【0011】
Envは、エンベロープ糖タンパク質をコードする遺伝子である。
【0012】
したがって、これら3つの遺伝子は、レトロウイルスRNAを二本鎖DNAへとコピーし、このDNAを宿主細胞のゲノムに組み込み、次に、新たに合成されたレトロウイルスの構造:エンベロープ、カプシド及びヌクレオカプシドタンパク質、を生成することを可能にする。しかしながら、新たに合成されたレトロウイルスが完全であるためには、これら構造のそれぞれにおいてレトロウイルスRNAの2つのコピーをカプシド形成することが必要である。この構造におけるレトロウイルスRNAの2つのコピーのカプシド形成は、レトロウイルスRNAのコピーによって運ばれるPsi(パッケージングシグナル(Packaging Signal))と呼ばれるカプシド形成配列のヌクレオカプシドタンパク質による認識によって達成される。
【0013】
レトロウイルスに由来するウイルスベクターが遺伝子治療の目的で使用される場合、gag、pol及び/又はenvのコード領域の少なくとも1つの部分が、カプシド形成システムと目的の配列の発現システムとの間で解離する。gag及びpolコード配列は、例えば、ウイルスベクターの産生に必要なタンパク質をtransで供給するカプシド形成プラスミドによって運ばれる。カプシド形成配列及び目的の配列は、レトロウイルスを非複製にするために、独立したシステムによって運ばれる。
【0014】
しかしながら、特定の場合には、宿主細胞のゲノムへのランダムな目的のRNA配列の組み込みは、オープンリーディングフレームを阻害し、かつ重要な遺伝子の発現をブロックし得る。また、特定の用途、例えば細胞の再プログラミング又は幹細胞の分化のために、一過性の方法で目的の配列の発現を行うべきであることが推奨される。
【0015】
国際公開第2007/072056号の出願はウイルスベクターシステムについて記載しており、斯かるウイルスベクターシステムは、env、gag、任意によりgag/pol、並びに、gag又はgag/polに関連した対応するRNA結合ドメインによって認識される異種カプシド形成シグナルを含むRNA配列を含む。このシステムは、非組み込みであり、かつ一過性発現を可能にするものとして、当該出願に記載されている。
【0016】
しかしながら、そのようなシステムは依然として有効性が限定されている。特に、標的細胞がこれらシステムによって運ばれる目的のRNAを発現するためには、一般に、細胞に目的のRNAのいくつかのコピーを導入し、その結果、高い感染多重度(「感染多重度(multiplicity of infection)」、MOI)を使用することが必要である。MOIは、導入されたベクターシステムの数と、感染される細胞の数との比に対応する。高いMOIは実際に、細胞に目的のRNAのいくつかのコピーを導入することを可能にし、1つの同じ細胞がいくつかの感染を受けることを可能にする。現在、運ばれる目的のRNAの発現レベルを改善することは可能であるが、細胞が受ける複数の感染のために、高いMOIの使用はいくらかの毒性も生じる。
【0017】
上述したように、このタイプのシステムはまた、ゲノム工学、特に遺伝子治療の用途に興味深い。
【0018】
現在、標的細胞へのゲノム工学システムの導入は、依然として複雑であり、かつ上述したゲノム工学システムの実施の成功のための主要な挑戦となる。
【0019】
実際に、ゲノム工学システムが機能するためには、少なくとも、DNAを切断することができる酵素、又はヌクレアーゼが、標的細胞に導入される必要がある。遺伝子治療における用途はさらに、望ましくない切断を引き起こすことなく、所与の遺伝子を正確に標的化するためのDNA切断の特異性を必要とする。したがって、TALEN、ZnFinger及びCRISPRシステムの使用のために、一般に、DNAに認識エレメントを導入することが必要である。結果として、このようなシステムは、形質導入された細胞に導入されることになる、少なくとも1つのヌクレアーゼ、及び好ましくは問題の工学システムの2つの構成エレメントを必要とする。
【0020】
さらに、これらゲノム工学システムは、毒性を誘発することなくシステムの十分な効果を可能にするために、標的細胞に導入された遺伝物質の発現の持続時間及び強度などのパラメータを考慮しなければならない。
【0021】
これらゲノム工学システムの送達のための現在の方法は、主に、以下の通りである:
−DNAのトランスフェクション、
−RNAのエレクトロポレーション、及び
−ウイルスベクターの使用。
【0022】
しかしながら、これら方法の各々には重大な欠点がある。
【0023】
実際に、DNAのトランスフェクションは、初代細胞又は感受性細胞に対して非常に低い有効性を有する方法であり、それは、DNAの転移に関連した高い毒性、プラスミド中の細菌配列の存在、及び/又はトランスフェクトされた細胞のゲノムへのプラスミドのランダム組み込みのためである。
【0024】
その一部について、メッセンジャーRNAのエレクトロポレーションは、初代細胞又は感受性細胞においてエクスビボで好ましくは使用される方法であるが、これもまた、標的細胞の膜の不安定化に起因する高い毒性のために、有効性に関して良好な結果をもたらさない。
【0025】
ウイルスベクターの使用は、細胞毒性を最小限に抑えながら送達の有効性を高めるために最も有望な方法であると思われる。しかしながら、レンチウイルスベクターは有効なツールであるが、それらは標的細胞のゲノムに組み込まれて、導入遺伝子の安定な発現をもたらし、これは制御不能な反応をもたらし得る。さらに、インテグラーゼ欠損型レンチウイルスベクター(integration deficient lentiviral vectors)(IDLV)は、ヌクレアーゼの発現の持続時間を制限するために使用することができるが、標的細胞のゲノムへの組み込みの完全な欠如を保証するものではない。
【0026】
他の選択肢は、インビボでの用途のためにAAVアデノウイルスシステムを使用することであるが、アデノウイルスシステムのカプシド形成能は、CRISPR又はTALENシステムと不適合な4.8kb未満のサイズに制限されているため、このタイプのツールは減少したサイズのヌクレアーゼの使用を含む(Chen、2015)。
【0027】
従って、より効率的かつ低毒性であるウイルスベクターシステムが依然として必要とされている。
【0028】
本発明者らの研究は、単一の感染で同一の細胞にいくつかの目的のRNAを送達することができるベクターシステムを考案することを可能にした。
【0029】
したがって、本発明は、Gagポリタンパク質に由来するタンパク質、エンベロープタンパク質、任意によりインテグラーゼ及び少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAを含むレトロウイルス粒子であって、カプシド形成された非ウイルスRNAがそれぞれ、カプシド形成配列に連結された目的のRNA配列を含み、各カプシド形成配列が、Gagポリタンパク質に由来するタンパク質に及び/又はインテグラーゼに導入された結合ドメインによって認識され、かつ、カプシド形成された非ウイルスRNAの目的の配列の少なくとも1つが、ヌクレアーゼをコードする部分を含む、レトロウイルス粒子に関する。
【0030】
本発明に係るレトロウイルス粒子は、単一の感染により細胞に、少なくとも2つの非ウイルスRNA、好ましくは3つの非ウイルスRNAを導入することを可能にする。これら粒子は、インビボ、インビトロ又はエクスビボの方法によって、細胞に導入することができる。
【0031】
「Gagポリタンパク質に由来するタンパク質」とは、Gagポリタンパク質の切断により生じる任意のタンパク質を意味する。より具体的には、それは、ヌクレオカプシドタンパク質、マトリックスタンパク質(例えば、MoMuLVタイプのマウスウイルスに由来するレトロウイルス粒子における)又はガンマレトロウイルスに特異的なタンパク質p12である。
【0032】
「エンベロープタンパク質」とは、シュードタイピング(pseudotyping)エンベロープタンパク質を含む、任意のエンベロープタンパク質を意味する。例として、両性(Ampho)エンベロープタンパク質、同種指向性エンベロープタンパク質、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)のエンベロープタンパク質、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)のエンベロープタンパク質、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)のエンベロープタンパク質、マウス乳がんウイルス(MuMTV)のエンベロープタンパク質、ラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma virus)(RSV)のエンベロープタンパク質、麻疹ウイルス(MV)のエンベロープタンパク質、テナガザル白血病ウイルス(Gibbon ape leukaemia virus)のエンベロープタンパク質(GALV)、ネコ内在性ウイルス(feline endogenous virus)(RD114)のタンパク質、又は水胞性口炎ウイルス(VSV−G)のエンベロープタンパク質、が挙げられる。より具体的には、エンベロープタンパク質は、両性エンベロープタンパク質、同種指向性エンベロープタンパク質、モロニーマウス白血病ウイルスウイルス(MoMuLV)のエンベロープタンパク質、ネコ免疫不全ウイルスウイルス(FIV)のエンベロープタンパク質、ハーベイマウス肉腫ウイルスウイルス(HaMuSV)のエンベロープタンパク質、マウス乳がんウイルス(MuMTV)のエンベロープタンパク質、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のエンベロープタンパク質、麻疹ウイルス(MV)のエンベロープタンパク質、テナガザル白血病ウイルスのエンベロープタンパク質(GALV)又は水胞性口炎ウイルス(VSV−G)のエンベロープタンパク質である。したがって、エンベロープタンパク質は、特定の細胞型又は特定の用途(エンベロープタンパク質としての表面受容体の使用)を標的とするために修飾されてもよい。
【0033】
特定の受容体及び/又は細胞型を標的化するために、抗体、糖脂質及び/又は特定のリガンドによりエンベロープタンパク質を修飾することもできる。
【0034】
好ましくは、エンベロープタンパク質は、VSV−Gタンパク質である。
【0035】
「インテグラーゼ」とは、pol遺伝子によってコードされた酵素タンパク質を意味し、これは、当該レトロウイルスの複製時にレトロウイルスによって感染した細胞のDNAにおけるレトロウイルスDNAの組み込みを可能にする。
【0036】
「カプシド形成配列」とは、結合ドメインによって特異的に認識されるRNAモチーフ(配列及び三次元構造)を意味する。好ましくは、カプシド形成配列は、ステム−ループモチーフである。さらにより好ましくは、レトロウイルス粒子のカプシド形成配列は、MS2バクテリオファージのRNA又はPP7ファージのRNAのステム−ループモチーフ、例えば、それぞれ、配列ctagaaaacatgaggatcacccatgtctgcag(配列番号1)又は(ctagaaaggagcagacgatatggcgtcgctccctgcag 配列番号2)から生じるステム−ループモチーフである。ステム−ループモチーフ、より具体的には、MS2バクテリオファージのRNAのステム−ループモチーフ、又はPP7ファージのRNAのステム−ループモチーフは、単独で、又は数回、好ましくは2〜25回、より好ましくは2〜18回、例えば6〜18回反復して使用され得る。
【0037】
「結合ドメイン」とは、目的のRNA配列に連結されたカプシド形成配列に特異的に結合するタンパク質の全て又は一部を意味する。より具体的には、それは、カプシド形成配列に特異的に結合する三次元構造で定義された、突然変異又は非突然変異タンパク質である。好ましくは、結合ドメインは異種ドメインである。より好ましくは、結合ドメインは、MS2バクテリオファージ、PP7ファージ又はQβファージのコートタンパク質、プロファージHK022のNunタンパク質、U1Aタンパク質、あるいはhPumタンパク質である。
【0038】
より好ましくは、結合ドメインは、MS2バクテリオファージのコートタンパク質又はPP7ファージのコートタンパク質である。
【0039】
さらにより好ましくは、結合ドメインがPP7ファージのコートタンパク質である場合、その配列は、アミノ酸67から75の欠失のために、自己構築に不十分である(PCPΔFG)(Chaoら、2008)。好ましくは、PP7ファージのコートタンパク質の配列は、ヒト細胞のためにコドン最適化されており、すなわち、DNAの塩基が、好ましくはヒト種に存在するアミノ酸をコードするために選択されている。
【0040】
「各配列」とは、これらカプシド形成配列が、同一又は異なる結合ドメインによって認識されるかどうかに応じて、カプシド形成配列が同一又は異なってもよいことを意味する。実際に、本発明に係るレトロウイルス粒子は、1つ又は複数の結合ドメインを含み得る。いくつかの結合ドメインが導入される場合、それらは、Gagポリタンパク質に及び/又はインテグラーゼに導入され得る。
【0041】
結合ドメインは、カプシド形成配列の認識を可能にするだけでなく、粒子中にカプシド形成配列を運ぶRNAの(又は本件の場合、カプシド形成配列に結合した非ウイルスRNAの)カプシド形成も可能にする。
【0042】
「カプシド形成」とは、ウイルス粒子のウイルスカプシドにおけるRNAのパッケージングを意味する。本発明においては、非ウイルスRNAのカプシド形成は、特にPsi以外の、非ウイルスカプシド形成シグナルの認識によって行われることに留意すべきである。
【0043】
「目的の配列」とは、ユーザーの目的の機能をコードするか又は有する配列を意味する。より具体的には、2つのカプシド形成された非ウイルスRNAのそれぞれによって運ばれる目的の配列は、同一又は異なっていてもよい。
【0044】
本発明に係る粒子を用いることで、同一又は異なる非ウイルスRNAを標的細胞に転移させることができる。
【0045】
カプシド形成されたRNAが非ウイルス性である場合、これらRNAは、pol遺伝子によってコードされたタンパク質の認識部位を有さない。
【0046】
実際に、これら非ウイルスRNAは、レトロウイルスの複製サイクルの初期段階に含まれない、すなわち、以下:
−逆転写酵素による二本鎖DNAへの一本鎖ウイルスRNAのコピー;
−インテグラーゼによるLTR末端の認識による二本鎖ウイルスDNAの成熟、及び、細胞質プレインテグレーション複合体(pre-integration complex)の核プレインテグレーション複合体への成熟、
に含まれない。
【0047】
したがって、pol遺伝子によってコードされたこれらウイルスタンパク質(逆転写酵素、インテグラーゼ)は、粒子において任意であり、したがってpol遺伝子は、存在するか、あるいは部分的に又は完全に欠失しているかのいずれかであり得る。好ましくは、pol遺伝子は、存在するか、あるいは部分的に欠失しているかのいずれかである。
【0048】
本発明に係るレトロウイルス粒子は、ウイルス及び非ウイルスの両方の遺伝物質を含むことに留意すべきである:
−gag遺伝子、これはウイルス性又はキメラであってもよい。より具体的には、結合ドメイン又はドメイン(複数)が後者に導入される場合、gag遺伝子はキメラである。
−任意により、pol遺伝子、これはウイルス性又はキメラであってもよい。pol遺伝子がいくつかの酵素をコードする場合、これら酵素に関連する配列は、完全に又は部分的に欠失しているか、存在しかつ非機能的であるか、あるいは存在しかつ機能的であり得る。より具体的には、結合ドメイン又はドメイン(複数)がインテグラーゼに導入される場合、pol遺伝子はキメラである。
−少なくとも2つの非ウイルスRNA、各非ウイルスRNAは、目的の配列及びカプシド形成配列を有する。より具体的には、これら非ウイルスRNAはウイルス配列を欠いている。
【0049】
より具体的には、本発明に係るレトロウイルス粒子は、標的細胞に、以下を誘導することができるRNAを導入することを可能にする:
・標的細胞の目的の1つ又は複数の内因性又は外因性コーディング配列の転移、
・例えばshRNA、miRNA、sgRNA、LncRNA又はcircRNAによる、遺伝子発現に対する影響を誘導することができるRNAのような、1つ又は複数の非コーディングRNAの転移。
・細胞RNA、メッセンジャーRNAタイプ又はその他(miRNA等)、RNAウイルスのサブゲノムレプリコン(HCV等)あるいはRNAウイルスの完全なゲノムの転移、
・標的細胞の内因性又は外因性コーディング又は非コーディング配列の同時発現、
・ゲノム工学システム、例えばCRISPRシステムによる、標的細胞ゲノムの修飾における関与。
【0050】
「ヌクレアーゼ」とは、DNAの1本鎖又は2本鎖を切断する能力を有する酵素を意味し、ヌクレアーゼは、2つのヌクレオチドの核酸のホスホジエステル結合の切断を開始する能力を有する。
【0051】
有利には、ヌクレアーゼはエンドヌクレアーゼであり、すなわち、それはDNA鎖をその内部で切断する。
【0052】
さらに、ヌクレアーゼは、粘着末端(sticky ends)又は非粘着末端(non-sticky ends)を生じ得る。有利には、ヌクレアーゼは粘着末端を生じる。
【0053】
ヌクレアーゼは、その天然型(WT)、突然変異型、最適化型、短縮型、又はノックアウト型であり得る。実際に、天然ヌクレアーゼを突然変異させて、核酸のホスホジエステル結合を切断するその能力をノックアウトすることが可能である。
【0054】
カプシド形成された非ウイルスRNAの目的の配列の少なくとも1つが、ヌクレアーゼをコードする部分を含む。すなわち、このRNA配列は、ヌクレアーゼをコードするRNA配列のみを含むか、又は代替的に、ヌクレアーゼをコードするRNA配列及び1つ又は複数の他のRNA配列を含んでもよく、かつ、これら他のRNA配列は、例えば、少なくとも1つのタンパク質、同一又は異なった、あるいは非コーディングRNA配列をコードし得る。
【0055】
より具体的には、ヌクレアーゼは、CRISPRシステムに関連するヌクレアーゼ、TALENシステムのヌクレアーゼ、Zn Fingerシステムのヌクレアーゼ、及びナトロノバクテリウム・グレゴリー・アルゴノート(ナトロノバクテリウム・グレゴリー・アルゴノート(ナトロノバクテリウム・グレゴリー・アルゴノート(Natronobacterium gregoryi Argonaute)))(NgAgo)ヌクレアーゼによって構成される群から選択される。
【0056】
CRISPR/Cas9ゲノム工学システムは大きな可能性を秘めた遺伝子工学ツールとなった。それは、以下の2種類の構成要素を含む:
−CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)、これは、一般に単一の20〜40塩基対であるいわゆる「スペーサー」配列によって規則的に間隔が置かれた、(21〜37塩基対の)一連の短い直接反復を特徴とする;
−CRISPRシステムに関連するヌクレアーゼの1つ、好ましくはCas9ヌクレアーゼ(CRISPR関連タンパク質9)、すなわち、2つの活性切断ゾーン(二重らせんの各鎖につき1つ)でDNAを切断するための特殊な酵素。例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)は、バクテリオファージのDNA又はプラスミドDNAの侵入のような外来DNAを検出し、排除するためにツールCas9を使用する。Cas9は、外来DNAを巻き戻して、ガイドRNAの約20塩基対の長いスペーサー領域との相補性を確認することによって、この検出を行う。DNA配列がガイドRNAに関連する場合、Cas9は侵入DNAを切断する。
【0057】
このシステムは、動物及び植物細胞のゲノムを迅速かつ容易に改変するために使用される。ガイドRNA及びDNAの相補性に由来するが、タンパク質それ自体の修飾(TALEN及びジンクフィンガーヌクレアーゼのような)には由来しないというCas9の標的の特異性のために、Cas9ツールは新しいDNAを非常に容易に標的化することができる。
【0058】
TALENゲノム工学システムは人工ヌクレアーゼを使用し、斯かる人工ヌクレアーゼは、TALEと呼ばれるDNA結合ドメインと、TALENと呼ばれるDNAを切断する能力を有するドメインとの融合によって生成される。アミノ酸配列とDNA結合ドメインによって認識されるDNA配列との単純な関係は、個別化タンパク質の合成を可能にする。これらシステムは、DNA標的TALEの認識ドメインとDNA切断ドメインとを組み合わせることによって、標的DNAのほとんどの特異的配列を固定するために設計され得る。
【0059】
TALエフェクター(TALE)は、細菌のキサントモナス属(Xanthomonas)によって天然に分泌されるタンパク質であり、非常に可変なアミノ酸12及び13を除いて、33又は34個の同一アミノ酸の繰り返しによって構成されるDNA結合ドメインを含み、この結合ドメインは特異的ヌクレオチドの認識を与える。アミノ酸配列とDNAの認識とのこの単純な関係は、適切な可変残基を含む反復セグメントの集合体を選択することによって、配列の特異的DNA結合ドメインを生成することを可能にする。配列のこれら特異的DNA結合ドメインは、迅速にほとんどの所望のDNA配列を固定するために設計され得る。
【0060】
エンドヌクレアーゼFok1の非特異的DNA切断ドメインは、ハイブリッドヌクレアーゼを構築するために使用することができ、斯かるハイブリッドヌクレアーゼは、酵母における試験、植物細胞及び動物細胞で有効であることが判明している。TALENに関する最初の研究は、Fok1の元のドメイン、あるいは、DNA切断のより高い特異性又は有効性を有するFok1の変異体で行われた。
【0061】
Fok1ドメインは二量体の形態で機能し、これは、頭尾配向と正確な間隔とを有するゲノムの部位に対して指向されたDNA結合ドメインを有する2つのコンストラクトを必要とする。
【0062】
したがって、TALEドメインとDNA切断ドメイン(DNA鎖を切断することになる)とを組み合わせることによって、任意のDNA配列のための特異的な制限酵素を作製することが可能である。
【0063】
Zn Fingerシステムは、ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用し、かつ、2つのタンパク質の組み合わせからなり、斯かるタンパク質はそれぞれ、DNA認識のために3つの特異的に選択されたジンクフィンガー、及びエンドヌクレアーゼFok Iの触媒ドメインを含む。
【0064】
ジンクフィンガーを構成するアミノ酸の性質は、3つのヌクレオチドのDNAの特異的配列の認識をもたらすことになる。したがって、3つの特異的ジンクフィンガーをそれぞれ含む2つのタンパク質を使用することによって、認識が18ヌクレオチドの特異的配列に対して行われ、ゲノムに認識特異性を与えることになる。
【0065】
使用されるエンドヌクレアーゼは、酵素Fok Iのエンドヌクレアーゼドメインであり、かつ二量体形態で作用する。
【0066】
Fok1ドメインは二量体の形態で機能し、これは、頭尾配向と正確な間隔とを有するゲノムの部位に対して指向されたDNA結合ドメインを有する2つのコンストラクトを必要とする。
【0067】
有利には、数ヌクレオチド離れた配列を認識する3つのジンクフィンガー構造をそれぞれ含む2つのタンパク質が使用される。そのそれぞれの配列に対する2つのジンクフィンガータンパク質の結合は、それらに関連した2つのエンドヌクレアーゼを互いに近づける。この互いに近づくことにより、エンドヌクレアーゼの二量体化、次いでDNA二本鎖の切断を可能にする。
【0068】
好ましくは、ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ、TALENヌクレアーゼ、及びZn Fingerヌクレアーゼによって構成される群から選択される。
【0069】
「CRISPRシステムに関連するヌクレアーゼ」については、非限定的な例として、Cas9ヌクレアーゼの野生型バージョン(Cas9 WT)、その2つの活性部位のうちの1つが突然変異したCas9ヌクレアーゼ(Cas9N又はCas9 Nickase)、又はその2つの活性部位が突然変異したCas9ヌクレアーゼ(dCas9)、並びにCpf1ヌクレアーゼが挙げられる。
【0070】
Cas9(CRISPR関連タンパク質9)ヌクレアーゼは、2つの活性切断領域(二重らせんの各鎖に対して1つ)でDNAを切断するための特殊な酵素である。例えば、化膿レンサ球菌は、バクテリオファージのDNA又はプラスミドDNAの侵入のような外来DNAを検出し排除するためにCas9ツールを使用する。
【0071】
TALENヌクレアーゼ(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(転写 activator-like effector nuclease))は、TALEと呼ばれるDNA結合ドメインと、例えばFok1又はFok1の変異体の触媒ドメインのようなDNAを切断する能力を有する酵素ドメインとの融合によって生成される。
【0072】
「Fok1の変異体」とは、DNA配列5′−GGATG(N)
9−3′を切断することを可能にする任意のタンパク質ドメインを意味する。
【0073】
Zn Fingerシステムのヌクレアーゼは、DNA結合ドメイン、ジンクフィンガー型の、及びDNA切断触媒ドメインの、例えばFok1又はFok1の変異体の触媒ドメインの融合によって形成される、人工酵素である。
【0074】
本発明に係る第1のタイプのレトロウイルス粒子によれば、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAの目的の配列は、ヌクレアーゼをコードする部分を含み得る。
【0075】
これら粒子は、TALEN及びZnFingerゲノム工学システムに特に興味深く、そのヌクレアーゼは二量体形態で作用する。また、好ましくは、目的の配列は、TALENヌクレアーゼ又はジンクフィンガーヌクレアーゼ、より好ましくはFok1又はFok1の変異体の触媒ドメインをコードする部分を含む。
【0076】
第2のタイプのレトロウイルス粒子によれば、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAは、その目的の配列によって異なる。
【0077】
より具体的には、この第2のタイプにおいて:
−少なくとも1つのRNAの目的の配列は、ヌクレアーゼをコードする部分及び3′でのDNA認識システムをコードする部分を含み、かつ
−少なくとも1つのRNAの目的の配列は、ヌクレアーゼをコードする部分及び5′でのDNA認識システムをコードする部分を含む。
【0078】
目的の配列のDNA認識システムをコードする部分は、有利には、DNAの特異的配列を認識することができるタンパク質をコードするRNAに対応する。
【0079】
有利には、この第2のタイプによるレトロウイルス粒子において、目的の配列は、FokIヌクレアーゼ、又はFokIヌクレアーゼの変異体の触媒ドメインをコードする部分を含む。
【0080】
このFokIヌクレアーゼの触媒ドメインは、有利には、それぞれTALEN又はZnFinger ゲノム工学システムを実施するための、TALEN組み換えヌクレアーゼ及びジンクフィンガーヌクレアーゼを構築するために使用される。
【0081】
例として、本発明に係るレトロウイルス粒子は、異なる目的の配列を有する2つのカプシド形成された非ウイルスRNAを含んでもよく:
−第1の目的の配列は、FokIヌクレアーゼをコードする部分、及びTALE 3′をコードする部分を含み、並びに
−第2の目的の配列は、FokIヌクレアーゼをコードする部分、及びTALE 5′をコードする部分を含み;
あるいは、本発明に係るレトロウイルス粒子は、異なる目的の配列を有する2つのカプシド形成された非ウイルスRNAを含んでもよく:
−第1の目的の配列は、FokIヌクレアーゼをコードする部分、及び3′でのDNA配列の認識のための3つのジンクフィンガーをコードする部分を含み、並びに
−第2の目的の配列は、FokIヌクレアーゼをコードする部分、及び5′でのDNA配列の認識のための3つのジンクフィンガーをコードする部分を含む。
【0082】
特定の実施形態によれば、本発明に係るレトロウイルス粒子において、カプシド形成された非ウイルスRNAの少なくとも1つの目的の配列は、ヌクレアーゼをコードする。
【0083】
有利には、この特定の実施形態において、ヌクレアーゼはCas9である。
【0084】
より具体的には、この特定の実施形態に係るレトロウイルス粒子において、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAは、その目的の配列によって異なり、かつ他のカプシド形成された非ウイルスRNAの目的の配列は、ガイドRNAの少なくとも1つの認識エレメントに対応する。
【0085】
ガイドRNAは、2つの認識エレメントを一般に含むRNA配列に対応する:
−3〜40塩基の範囲の非コーディングRNAであって、DNAの特異的配列に塩基相補性によってハイブリダイズすることができるRNA、並びに
−「トランス活性化因子(transactivator)」(「足場」)と呼ばれる非コーディングRNA、これはヌクレアーゼをDNA上に固定させる。
【0086】
RNA配列は、特異的DNA切断部位の特異的標的化を可能にする。
【0087】
目的の配列は、同一又は異なる1つ又は複数のガイドRNAに対応する1つ又は複数の部分(複数)を含み得る。
【0088】
有利には、第2のカプシド形成された非ウイルスRNAの目的の配列は、ガイドRNAに対応する。ガイドRNAは、DNA認識部分と、ヌクレアーゼの固定を可能にする部分との両方を含む。
【0089】
好ましくは、ガイドRNAはsgRNAである。さらにより好ましくは、ガイドRNAは、カプシド形成配列の2つの反復を含むキメラsgRNAである。
【0090】
好ましくは、粒子は、異なる目的の配列を有する2つのRNAを含む:
−Cas9ヌクレアーゼをコードする第1の目的の配列、並びに
−ガイドRNAに対応する第2の目的の配列。
【0091】
有利には、この特定の実施形態に係るレトロウイルス粒子は、少なくとも1つの第3のカプシド形成された非ウイルスRNAをさらに含み、斯かる第3のカプシド形成された非ウイルスRNAは、ガイドRNAの第2の認識エレメントに又は付加的なガイドRNAに対応する目的の配列を有する。
【0092】
有利には、粒子は、異なる目的の配列を有する3つのRNAを含む:
−Cas9ヌクレアーゼをコードする第1の目的の配列、
−ガイドRNAに対応する第2の目的の配列、並びに
−第2の目的の配列と同一又は異なるガイドRNAに対応する第3の目的の配列。
【0093】
有利には、本発明に係るレトロウイルス粒子は、ヌクレオカプシドタンパク質、エンベロープタンパク質、任意によりインテグラーゼ及び少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAを含み、カプシド形成された非ウイルスRNAがそれぞれ、カプシド形成配列に連結された目的のRNA配列を含み、各カプシド形成配列が、ヌクレオカプシドタンパク質に及び/又はインテグラーゼに導入された結合ドメインによって認識される。
【0094】
「ヌクレオカプシドタンパク質」とは、gag遺伝子によってコードされた構造NCのタンパク質を意味する。結合ドメインがヌクレオカプシドタンパク質に導入される場合、このタンパク質は、キメラgag遺伝子に由来するキメラタンパク質である。
【0095】
結合ドメインがインテグラーゼに導入される場合、インテグラーゼは、キメラpol遺伝子に由来するキメラタンパク質である。
【0096】
「キメラタンパク質」とは、いくつかの異なる融合タンパク質配列を含む組み換えタンパク質を意味する。
【0097】
第1の実施形態によれば、本発明に係るレトロウイルス粒子において、結合ドメインはヌクレオカプシドタンパク質に導入され、かつ、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAはそれらのRNA配列によって異なる。
【0098】
この第1の実施形態は、標的細胞のゲノムにおける関連した組み込みイベントなしに、目的のRNAの早期の一過性発現を可能にする。
【0099】
実際に、この第1の実施形態に係る粒子を標的細胞と接触させると、レトロウイルス粒子の膜と標的細胞の膜とが融合することになり、粒子の内容物が標的細胞中に放出される。次に、RNAが細胞質内に放出され、細胞機構によってこれらRNAが直接タンパク質(複数)に翻訳される、すなわち、逆転写、核内への移行、又は標的細胞のゲノムへの組み込みなどの付加的なステップ無しに翻訳される。
【0100】
より具体的には、少なくとも2つの非ウイルスRNAは同じカプシド形成配列を有する。この場合、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAはそれらの目的のRNA配列によって異なる、すなわち、2つのカプシド形成された非ウイルスRNAに含まれる目的のRNA配列は異なっている。「異なる(different)」とは、同一ではないか、あるいは、自然突然変異から生じたものでないか、又は操作者によって意図的に選択されたものでない違いを有する、目的の配列を意味する。
【0101】
あるいは、少なくとも2つの非ウイルスRNAは2つの異なるカプシド形成配列を有する。次に、これら少なくとも2つのカプシド形成配列は、少なくとも2つの異なる結合ドメインによって認識され、これらドメインの少なくとも1つがヌクレオカプシドタンパク質に導入される。この場合、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAは、同一又は異なる目的の配列を含んでもよい。
【0102】
少なくとも2つの非ウイルスRNA、好ましくは3つの非ウイルスRNAをカプシド形成することが可能である。
【0103】
第1の実施形態の特定の実施形態によれば、第2の結合ドメインは、本発明に係るレトロウイルス粒子のヌクレオカプシドタンパク質に導入される。
【0104】
例として、第1の結合ドメインがPP7ファージの「コート」タンパク質である場合、第2の結合ドメインはMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質であり得る、あるいは、第1の結合ドメインがMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質である場合、第2の結合ドメインはPP7ファージの「コート」タンパク質であり得る。
【0105】
この場合、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAは、異なるカプシド形成配列を有し、各カプシド形成配列は、ヌクレオカプシドタンパク質に導入された第1及び第2の結合ドメインにそれぞれ対応する。
【0106】
より具体的には、3つの非ウイルスRNAがカプシド形成される場合:
−カプシド形成された非ウイルスRNAの少なくとも2つが、第1の結合ドメインに対応する同じカプシド形成配列を有し、かつそれらの目的のRNA配列によってのみ異なり、
−第3のカプシド形成された非ウイルスRNAは、同一又は異なるカプシド形成配列を有する。カプシド形成配列が異なっている場合、後者はヌクレオカプシドタンパク質に導入された第2の結合ドメインに対応し得る。
【0107】
他の結合ドメインがまた、ヌクレオカプシドタンパク質に導入されてもよい。
【0108】
ヌクレオカプシドタンパク質に導入された結合ドメイン又はドメイン(複数)に加えて、結合ドメインをインテグラーゼに導入することも可能である。
【0109】
次に、インテグラーゼは、キメラpol遺伝子に由来するキメラタンパク質である。
【0110】
好ましくは、結合ドメインがインテグラーゼに導入される場合、インテグラーゼの配列は、結合ドメインの配列を挿入するために、C−末端ドメインのレベルで突然変異している。さらにより好ましくは、インテグラーゼの配列は、MS2バクテリオファージ又はPP7ファージの「コート」タンパク質の配列を導入するように、C−末端ドメインのレベルで突然変異している。
【0111】
この場合、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAは、異なるカプシド形成配列を有し、各カプシド形成配列は、それぞれヌクレオカプシドタンパク質に及びインテグラーゼに導入された結合ドメインに対応する。
【0112】
より具体的には、3つの非ウイルスRNAがカプシド形成される場合:
−カプシド形成された非ウイルスRNAの少なくとも2つが、第1の結合ドメインに対応する同じカプシド形成配列を有し、かつ、それらの目的のRNA配列によってのみ異なり、
−第3のカプシド形成された非ウイルスRNAは、異なるカプシド形成配列を有し、斯かるカプシド形成配列は、インテグラーゼに導入された第2の結合ドメインに対応する。
【0113】
他の結合ドメインがまた、インテグラーゼに導入されてもよい。
【0114】
有利には、本発明に係るレトロウイルス粒子は、レンチウイルス粒子である。
【0115】
好ましくは、そのようなレンチウイルス粒子において:
−結合ドメインは、MS2バクテリオファージの「コート」タンパク質であり、
−非ウイルスRNAのカプシド形成配列は、MS2のステム−ループ配列であり、
−ヌクレオカプシドタンパク質は、キメラのGagポリタンパク質に属するHIVのヌクレオカプシド(NC)タンパク質であり、そのNC配列は、MS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を挿入するために、第2のジンクフィンガーのレベルで突然変異している。
【0116】
有利には:
−エンベロープタンパク質は、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gタンパク質である。
−カプシド形成配列は、MS2のステム−ループ配列の2〜25回の反復を含み、好ましくは ステム−ループ配列の6〜18回の反復、さらにより好ましくは10〜14回、例えば12回の反復を含む。好ましくは、ステム−ループ配列は、以下のものである:ctagaaaacatgaggatcacccatgtctgcag(配列番号1)。
【0117】
あるいは、好ましくは、そのようなレンチウイルス粒子において:
−結合ドメインは、PP7ファージの「コート」タンパク質であり、
−非ウイルスRNAのカプシド形成配列は、PP7のステム−ループ配列であり、
−ヌクレオカプシドタンパク質は、キメラのGagポリタンパク質に属するHIVのヌクレオカプシド(NC)タンパク質であり、そのNC配列は、PP7ファージの「コート」タンパク質の配列を挿入するために、第2のジンクフィンガーのレベルで突然変異している。
【0118】
有利には:
−エンベロープタンパク質は、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gタンパク質である。
−カプシド形成配列は、PP7のステム−ループ配列の2〜25回の反復を含み、好ましくはステム−ループ配列の2〜18回の反復、さらにより好ましくは2〜12回、例えば6回の反復を含む。好ましくは、ステム−ループ配列は以下のものである:ctagaaaggagcagacgatatggcgtcgctccctgcag(配列番号2)。
【0119】
有利には、配列番号2は、ステム−ループのフォールディングを促進するように最適化され得る。特に、配列番号2及び配列番号4を連続して挿入することが有利であり得ることが見出された。フォールディングを促進するためのこの配列番号2と配列番号4(ctagaaaccagcagagcatatgggctcgctggctgcag)との交換は、コーディングRNAの場合に特に有利である。他方で、非コーディングRNAの場合、PP7の各ステム−ループモチーフは、有利には、ステム−ループ配列の配列番号5(ggagcagacgatatggcgtcgctcc)及びステム−ループ配列の配列番号6(ccagcagagcatatgggctcgctgg)を連続して挿入することによって得られる。
【0120】
任意により、第1の結合ドメインがMS2バクテリオファージのコートタンパク質である場合、インテグラーゼに導入された第2の結合ドメインはPP7ファージのコートタンパク質であってもよく、あるいは、第1の結合ドメインがPP7ファージのコートタンパク質である場合、インテグラーゼに導入された第2の結合ドメインはMS2バクテリオファージのコートタンパク質であってもよい。
【0121】
第2の実施形態によれば、本発明は、Gagポリタンパク質に由来するタンパク質、好ましくはヌクレオカプシドタンパク質、エンベロープタンパク質、インテグラーゼ及び少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAを含むレトロウイルス粒子であって、カプシド形成された非ウイルスRNAがそれぞれ、カプシド形成配列に連結された目的のRNA配列を含み、各カプシド形成配列が、インテグラーゼに導入された結合ドメインによって、及び任意により、Gagポリタンパク質に由来するタンパク質、好ましくはヌクレオカプシドタンパク質に導入された結合ドメインによって認識される、レトロウイルス粒子に関する。
【0122】
この第2の実施形態は、標的細胞のゲノムにおける関連した組み込みイベントなしに目的のRNAの一過性発現を可能にする。
【0123】
好ましくは、この第2の実施形態において、インテグラーゼの配列は、結合ドメインの配列を挿入するために、C−末端ドメインのレベルで突然変異している。
【0124】
有利には、結合ドメインは異種ドメインである。より具体的には、結合ドメインは、MS2バクテリオファージ、PP7ファージ又はQβファージのコートタンパク質、プロファージHK022のNunタンパク質、U1Aタンパク質、あるいはhPumタンパク質である。
【0125】
好ましくは、インテグラーゼの配列は、MS2バクテリオファージ又はPP7ファージの「コート」タンパク質の配列を導入するように、C−末端ドメインのレベルで突然変異している。
【0126】
少なくとも2つの非ウイルスRNAは、同じカプシド形成配列を有しても又は有さなくてもよい。
【0127】
同様に、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAは、同じ目的のRNA配列を有しても又は有さなくてもよい。
【0128】
好ましくは、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAは、それらの目的のRNA配列によって異なり、すなわち2つのカプシド形成された非ウイルスRNAに含まれる目的のRNA配列は、異なっている。
【0129】
より具体的には、少なくとも2つの非ウイルスRNAは同じカプシド形成配列を有し、後者はインテグラーゼに導入された結合ドメインによって認識される。
【0130】
少なくとも2つの非ウイルスRNA、好ましくは3つの非ウイルスRNAをカプシド形成することが可能である。
【0131】
第2の実施形態の特定の実施形態によれば、第2の結合ドメインは、本発明に係るレトロウイルス粒子のインテグラーゼに導入される。
【0132】
例として、第1の結合ドメインがPP7ファージの「コート」タンパク質である場合、第2の結合ドメインはMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質であり得る、あるいは、第1の結合ドメインがMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質である場合、第2の結合ドメインはPP7ファージの「コート」タンパク質であり得る。
【0133】
この場合、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAは、異なるカプシド形成配列を有し、各カプシド形成配列は、インテグラーゼに導入された第1及び第2の結合ドメインにそれぞれ対応する。
【0134】
より具体的には、3つの非ウイルスRNAがカプシド形成される場合:
−カプシド形成された非ウイルスRNAの少なくとも2つが、第1の結合ドメインに対応する同じカプシド形成配列を有し、これら2つの非ウイルスRNAは、任意により、それらの目的のRNA配列によって異なり得る、
−第3のカプシド形成された非ウイルスRNAは、同一又は異なるカプシド形成配列を有し得る。カプシド形成配列が異なっている場合、後者はインテグラーゼに導入された第2の結合ドメインに対応し得る。
【0135】
他の結合ドメインがまた、インテグラーゼに導入されてもよい。
【0136】
インテグラーゼに導入された結合ドメイン又はドメイン(複数)に加えて、ヌクレオカプシドタンパク質に結合ドメインを導入することも可能である。
【0137】
次に、ヌクレオカプシドタンパク質は、キメラgag遺伝子に由来するキメラタンパク質である。
【0138】
この場合、少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAは、異なるカプシド形成配列を有してもよく、各カプシド形成配列は、それぞれインテグラーゼに及びヌクレオカプシドタンパク質に導入された結合ドメインに対応する。
【0139】
より具体的には、3つの非ウイルスRNAがカプシド形成される場合:
−カプシド形成された非ウイルスRNAの少なくとも2つは、インテグラーゼに導入された第1の結合ドメインに対応する同じカプシド形成配列を有し、かつ、これら非ウイルスRNAは、任意により、それらの目的のRNA配列によって異なり得る、
−第3のカプシド形成された非ウイルスRNAは、異なるカプシド形成配列を有し、斯かるカプシド形成配列は、ヌクレオカプシドタンパク質に導入された第2の結合ドメインに対応する。
【0140】
他の結合ドメインがまた、ヌクレオカプシドタンパク質に導入されてもよい。
【0141】
有利には、本発明に係る粒子がヌクレオカプシドタンパク質を含む場合、結合ドメインは、ヌクレオカプシドタンパク質に導入されてもよく、かつ第2の結合ドメインは、ヌクレオカプシドに及び/又はインテグラーゼに導入されてもよい。
【0142】
好ましくは、次に、本発明に係るレトロウイルス粒子は、ヌクレオカプシドタンパク質、エンベロープタンパク質、任意によりインテグラーゼ及び少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAを含み、カプシド形成された非ウイルスRNAはそれぞれ、カプシド形成配列に連結された目的のRNA配列を含み、少なくとも1つのカプシド形成配列は、12回反復したMS2バクテリオファージのステム−ループモチーフ(又はステム−ループ配列)であり、このモチーフは、ヌクレオカプシドタンパク質に導入されたMS2バクテリオファージのコートタンパク質によって認識される。
【0143】
ステム−ループモチーフは有利には、配列番号1の配列である。
【0144】
例として、本発明に係るそのような粒子は、以下の実施例に記載される、粒子MS2(NC)−RLP 12Xである。
【0145】
このレトロウイルス粒子において、カプシド形成配列として、12回反復したMS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを含むカプシド形成された非ウイルスRNAは、有利には、Cas9をコードするRNAであり、かつ、第2のカプシド形成された非ウイルスRNAは、ガイドRNAの少なくとも1つの認識エレメントに対応するRNA、又はガイドをコードするRNAであり、カプシド形成された非ウイルスRNAは、カプシド形成配列として、2回反復したMS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを含む。
【0146】
例として、本発明に係るそのような粒子は、以下の実施例に記載される、粒子MS2(NC)−RLP 12X 2Xである。
【0147】
代替的に又は併せて、本発明に係るレトロウイルス粒子は、ヌクレオカプシドタンパク質、エンベロープタンパク質、任意によりインテグラーゼ及び少なくとも2つのカプシド形成された非ウイルスRNAを含み、カプシド形成された非ウイルスRNAはそれぞれ、カプシド形成配列に連結された目的のRNA配列を含み、少なくとも1つのカプシド形成配列は、2回反復したPP7バクテリオファージのステム−ループモチーフであり、このモチーフは、ヌクレオカプシドタンパク質に導入されたPP7バクテリオファージのコートタンパク質によって認識される。
【0148】
有利には、ステム−ループモチーフは、配列番号2の配列である。あるいは、ステム−ループモチーフは、特にコーディングRNAについて、配列番号2と配列番号4との交換、又は特に非コーディングRNAについて、配列番号5と配列番号6との交換である。
【0149】
例として、本発明に係る粒子が、カプシド形成配列として、2回反復したPP7バクテリオファージのステム−ループモチーフのみを含む場合、そのような本発明に係る粒子は、以下の実施例に記載される、粒子PP7(NC)−RLP 2Xである。
【0150】
例として、本発明に係る粒子が併せて、カプシド形成配列として、12回反復したMS2バクテリオファージのステム−ループモチーフ及び2回反復したPP7バクテリオファージのステム−ループモチーフを含む場合、そのような本発明に係る粒子は、以下の実施例に記載される、粒子MS2/PP7(NC)− RLP 12X 2Xである。
【0151】
あるいは、本発明に係るレトロウイルス粒子において、結合ドメインは、インテグラーゼに導入されてもよく、かつ第2の結合ドメインは、ヌクレオカプシドに及び/又はインテグラーゼに導入されてもよい。
【0152】
有利には、本発明に係るレトロウイルス粒子は、レンチウイルス粒子である。
【0153】
レトロウイルス粒子がレンチウイルス粒子である場合、標的細胞、特に静止細胞のゲノムにおける関連した組み込みイベントなしに、目的のRNAを一過的に発現することが可能である。
【0154】
実際に、組み込み反応それ自体のその役割に加えて、インテグラーゼ(IN)は、レトロウイルスの複製サイクルの様々な段階、例えばウイルス粒子の形態形成、逆転写及びプレインテグレーション複合体(PIC)の核内輸送に関与する。
【0155】
より具体的には、レンチウイルスにおいて、インテグラーゼは、PICによって核内にその局在を可能にする核局在配列(NLS)を含む。結果として、非ウイルスRNAのカプシド形成が、レンチウイルスのインテグラーゼによって運ばれた結合ドメインによって行われる場合、カプシド形成された非ウイルスRNAは、標的細胞の核内に輸送されることになる。実際に、第2の実施形態に係るレンチウイルス粒子を標的細胞と接触させると、粒子の膜と標的細胞の膜とが融合することになり、標的細胞におけるカプシドの内容物の放出を可能にする。次に、インテグラーゼはRNAを引き受けて、PICを介して、核内へのRNAの取り込みを可能にすることになる。この引き受けは特に特定の用途、例えば静止細胞における発現に有利である。レンチウイルス以外のレトロウイルス粒子の場合、インテグラーゼはこれらNLSを含まず、従って細胞質に局在する。しかしながら、インテグラーゼの核局在、結果としてこのインテグラーゼによって引き受けられるRNAの核局在を誘導するために、このタイプのインテグラーゼにNLS配列を追加することが可能である。
【0156】
この引き受けはまた、標的細胞のゲノムに特異的にハイブリダイズすることになるガイドRNAを用いる、CRISPRシステムに特に有用である。一度ハイブリダイズすると、これらガイドRNAは、エンドヌクレアーゼ(Cas9)をガイドし、それは標的細胞のゲノムの特定の遺伝子座の改変を可能にすることになる。より具体的には、そのようなレンチウイルス粒子において:
−結合ドメインは、MS2バクテリオファージの「コート」タンパク質であり、
−非ウイルスRNAのカプシド形成配列は、MS2のステム−ループ配列であり、
−インテグラーゼは、キメラ酵素タンパク質であり、その配列は、MS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を挿入するためにC−末端ドメインのレベルで突然変異している。
【0157】
ここで、より具体的には、そのようなレンチウイルス粒子において:
−結合ドメインは、PP7ファージの「コート」タンパク質であり、
−非ウイルスRNAのカプシド形成配列は、PP7のステム−ループ配列であり、
−インテグラーゼは、キメラ酵素タンパク質であり、その配列は、PP7ファージの「コート」タンパク質の配列を挿入するために、C−末端ドメインのレベルで突然変異している。
【0158】
任意により、第1の結合ドメインがMS2バクテリオファージのコートタンパク質である場合、ヌクレオカプシドに導入された第2の結合ドメインは、PP7ファージのコートタンパク質であり得る、あるいは、第1の結合ドメインがPP7ファージのコートタンパク質である場合、インテグラーゼに導入された第2の結合ドメインは、MS2バクテリオファージのコートタンパク質であり得る。
【0159】
実際に、インテグラーゼ(IN)は、3つの別々の機能ドメインから構成され、それぞれが完全な組み込み反応を確実にするために不可欠である。N−末端ドメインは、ジンクフィンガー型のモチーフを含み、これはINのフォールディング構造を安定化し、かつ酵素の触媒活性を増加させる。INの中央ドメインはアミノ酸モチーフDDEを含み、酵素の触媒活性はこれに起因する。この中央ドメインはまた、レトロウイルスDNAの各末端で保存されたヌクレオチド配列の認識にも関与する。C−末端ドメインは、レトロウイルスのファミリーの中で最も保存されていない。それは、DNA結合活性を有し、かつ鎖転移の3′末端の成熟反応に不可欠である。組み込み反応それ自体におけるその役割に加えて、INは、レトロウイルスの複製サイクルの様々な段階、例えばウイルス粒子の形態形成、逆転写及びプレインテグレーション複合体(PIC)の核内輸送に関与する。
【0160】
Petitらによって記載されたように(1999; J. Virol. P5079-5088)、INのC−末端における外因性配列の挿入は、標的細胞の産生及び形質導入のステップを妨げないが、N−末端における同じ挿入は、形質導入イベントの検出を可能にしない。
【0161】
従って、レトロウイルス粒子は、インテグラーゼのタンパク質と融合したMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質(
図I参照)又はPP7ファージの「コート」タンパク質(
図XXXVII参照)を含むように改変された。p8.74カプシド形成プラスミドは、インテグラーゼのタンパク質をコードするpol遺伝子を有し、斯かるプラスミドは、アセンブリPCRによってインテグラーゼのC−末端にコートタンパク質をコードする配列を挿入するために改変される。p8.74プラスミドはPCRによって線状化され、次に、PCRによって先に増幅されたCoat配列が、末端から末端に直接、又はリンカーに加えてのいずれかで、インテグラーゼのC−末端レベルにクローニングされる。
【0162】
有利には:
−エンベロープタンパク質は、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gタンパク質である。
【0163】
−カプシド形成配列は、導入される結合ドメインに応じて、MS2の及び/又はPP7のステム−ループ配列の2〜25回の反復を含み、好ましくはステム−ループ配列の2〜18回の反復、より好ましくは2〜18回の反復、例えば6〜18回の反復、さらにより好ましくはMS2のステム−ループ配列について、10〜14回、例えば12回の反復を含む。
【0164】
−好ましくは、結合ドメインがMS2のコートタンパク質である場合、ステム−ループ配列は、以下:ctagaaaacatgaggatcacccatgtctgcag(配列番号1)であり、及び/又は、結合ドメインがPP7のコートタンパク質である場合、ステム−ループ配列は、以下:ctagaaaggagcagacgatatggcgtcgctccctgcag(配列番号2)である。
【0165】
本発明に係るレンチウイルス粒子のいくつかの例を、以下に記載し、そのうちのいくつかについては続く実施例でより詳細に記載する:
−MS2RLP又はMS2(NC)−RLP 12X粒子は、ヌクレオカプシドへのMS2バクテリオファージのコートタンパク質の挿入によって、12回反復した、MS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−MS2(NC)−RLP 2X粒子は、ヌクレオカプシドへのMS2バクテリオファージのコートタンパク質の挿入によって、2回反復した、MS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−MS2RLP 12X 2X又はMS2(NC)−RLP 12X 2X粒子は、ヌクレオカプシドへのMS2バクテリオファージのコートタンパク質の挿入によって、12回反復したMS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを有する少なくとも1つの第1のRNAと、2回反復したMS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを有する少なくとも1つの第2のRNAとのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−MS2(NC)−RLP 6X粒子は、ヌクレオカプシドへのMS2バクテリオファージのコートタンパク質の挿入によって、6回反復した、MS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−MS2(IN)−RLP 2X粒子は、インテグラーゼへのMS2バクテリオファージのコートタンパク質の挿入によって、2回反復した、MS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−MS2(IN)−RLP 6X粒子は、インテグラーゼへのMS2バクテリオファージのコートタンパク質の挿入によって、6回反復した、MS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−MS2(IN)−RLP 12X粒子は、インテグラーゼへのMS2バクテリオファージのコートタンパク質の挿入によって、12回反復した、MS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−PP7RLP又はPP7(NC)−RLP 2X粒子は、ヌクレオカプシドへのPP7ファージのコートタンパク質の挿入によって、2回反復した、PP7ファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−PP7(NC)−RLP 6X粒子は、ヌクレオカプシドへのPP7ファージのコートタンパク質の挿入によって、6回反復した、PP7ファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−PP7RLP又はPP7(NC)−RLP 12X粒子は、ヌクレオカプシドへのPP7ファージのコートタンパク質の挿入によって、12回反復した、PP7ファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−PP7(IN)−RLP 2X粒子は、インテグラーゼへのPP7ファージのコートタンパク質の挿入によって、2回反復した、PP7ファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−PP7(IN)−RLP 6X粒子は、インテグラーゼへのPP7ファージのコートタンパク質の挿入によって、6回反復した、PP7ファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子であり、
−PP7(IN)−RLP 12X粒子は、インテグラーゼへのPP7ファージのコートタンパク質の挿入によって、12回反復した、PP7ファージのステム−ループモチーフを有するRNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子である。
−MS2/PP7RLP又はMS2/PP7(NC)−RLP 12X 2X粒子は、ヌクレオカプシドへのMS2バクテリオファージのコートタンパク質の挿入によって、12回反復したMS2バクテリオファージのステム−ループモチーフを有するRNAと、ヌクレオカプシドへのPP7ファージのコートタンパク質の挿入によって、2回反復したPP7ファージのステム−ループモチーフを有するRNAとのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子である。
【0166】
好ましくは、RNAのカプシド形成によって形成されたレンチウイルス粒子は、2〜25回、より好ましくは2、6又は12回反復したMS2バクテリオファージ又はPP7ファージのステム−ループモチーフを有する。
【0167】
さらにより好ましくは、本発明に係る粒子は、MS2(NC)−RLP 12X、MS2(NC)−RLP 12X 2X、PP7(NC)−RLP 6X、PP7(NC)−RLP 2X、MS2(IN)−RLP 12X、PP7(IN)−RLP 6X及びPP7(IN)−RLP 2X、MS2/PP7(NC)−RLP 12X 2Xから選択される。
【0168】
本発明はまた、本発明に係る粒子を含有する組成物に関する。
【0169】
より具体的には、本発明に係る組成物は、濃縮された組成物である。有利には、組成物はまた、精製される。これら組成物は、国際公開第2013/014537号の出願に記載の方法によって濃縮及び精製されてもよい。
【0170】
典型的には、本発明に係る組成物は、粗上清に対して、30%未満のDNA夾雑物及び45%未満のタンパク質夾雑物を含有する。より具体的には、本発明に係る組成物は、粗上清に対して、30%未満のDNA夾雑物及び2%未満のタンパク質夾雑物を含有する。
【0171】
「粗上清」とは、清澄化後の、本発明に係るレトロウイルス粒子を含む細胞培養物(複数)の上清を意味する。そのような清澄化ステップは、より具体的には、以下の本発明に係る粒子を製造するための方法に記載される。上清の回収が数回行われる場合、粗上清は、回収され、合わされ(又は「プールされ」)、次に清澄化された上清の全てに対応する。
【0172】
任意により、本発明に係る組成物は、粗上清に対して、1%未満のDNA夾雑物及び1%未満のタンパク質夾雑物を含有する。
【0173】
本発明はまた、本発明に係る粒子を生産するためのキット、及びそれらキットの製造方法に関する。
【0174】
より具体的には、本発明は、本発明に係る粒子を生産するためのキットであって、以下:
(i)少なくとも1つの目的の配列を含む発現プラスミドであって、この配列の上流、下流、又は配列内に、カプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、
(ii)Gagポリタンパク質に由来するタンパク質及び/又はキメラインテグラーゼをコードするカプシド形成プラスミド、ここで、当該Gagポリタンパク質に由来するタンパク質及び/又はキメラインテグラーゼは、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに、
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミド、
を含む、キットに関する。
【0175】
そのようなキットはまた、キットに含まれるプラスミドの使用のための指示書を含んでもよい。
【0176】
より具体的には、キットが、第1の実施形態に係る粒子を生産するためのキットである場合、このキットは、以下:
(i)少なくとも2つの異なる非ウイルスRNA配列を含む発現プラスミドであって、各RNA配列は目的の配列を含み、この目的の配列の上流、下流又は配列内にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、あるいは代替的に、第1及び第2の発現プラスミドであって、それぞれ目的の配列を含み、その上流又は下流にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、
(ii)キメラヌクレオカプシドタンパク質をコードするカプシド形成プラスミド、ここで、斯かるキメラヌクレオカプシドタンパク質は、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに、
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミド、
を含む。
【0177】
目的の配列が異なる、及び/又はカプシド形成配列が異なるために、少なくとも2つの非ウイルスRNA配列は異なっている。
【0178】
プラスミドはDNA構造であるので、「少なくとも2つの非ウイルスRNA配列を含む発現プラスミド」とは、少なくとも2つの非ウイルスRNA配列をコードする発現プラスミドを意味することがよく知られている。
【0179】
実際に、キットの発現プラスミドは、転写によって少なくとも1つの非ウイルスRNAを得るのに必要な全てのDNA配列を含む。発現プラスミドは、少なくとも1つのプロモーター、次いで、DNA目的の配列(非ウイルスRNAに転写されることになるcDNA又はDNA)、及びカプシド形成配列(MS2又はPP7反復モチーフについてのDNAコーディング例)、及び任意によりRNA安定化配列、を含む。
【0180】
好ましくは、第1の実施形態に係る粒子を生産するためのキットは、以下:
(i)少なくとも2つの目的の配列を含む発現プラスミドであって、これら配列のそれぞれの上流、下流又は配列内にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、あるいは代替的に、第1及び第2の発現プラスミドであって、それぞれ目的の配列を含み、その上流又は下流にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、
当該目的の配列は異なっており、かつ当該カプシド形成配列は同一である、
(ii)キメラヌクレオカプシドタンパク質をコードするカプシド形成プラスミド、ここで、斯かるキメラヌクレオカプシドタンパク質は、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに、
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミド、
を含む。
【0181】
有利には、キットは、レンチウイルス粒子を生産する。
【0182】
好ましくは:
−発現プラスミドにおいて、カプシド形成配列は、MS2のステム−ループ配列の2〜25回の反復を含み、好ましくはステム−ループ配列の6〜18回の反復、さらにより好ましくは10〜14回、例えば12回の反復を含む。有利には、ステム−ループ配列は、以下:ctagaaaacatgaggatcacccatgtctgcag(配列番号1)である。
−カプシド形成プラスミドにおいて、ヌクレオカプシドタンパク質は、Gagポリタンパク質に属するHIVのヌクレオカプシド(NC)タンパク質であり、当該NCは、MS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を挿入するために、第2のジンクフィンガーのレベルで突然変異している。
−エンベローププラスミドにおいて、エンベロープタンパク質は、水胞性口炎ウイルスエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gタンパク質である。
【0183】
あるいは、好ましくは:
−発現プラスミドにおいて、カプシド形成配列は、PP7のステム−ループ配列の2〜25回の反復を含み、好ましくはステム−ループ配列の2〜18回の反復、さらにより好ましくは2〜12回、例えば6回の反復を含む。有利には、ステム−ループ配列は、以下:ctagaaaggagcagacgatatggcgtcgctccctgcag(配列番号2)である。
−あるいは、ステム−ループ配列は、特にコーディングRNAについて、配列番号2と配列番号4との交換、又は特に非コーディングRNAについて、配列番号5と配列番号6との交換である。
−カプシド形成プラスミドにおいて、ヌクレオカプシドタンパク質は、Gagポリタンパク質に属するHIVのヌクレオカプシド(NC)タンパク質であり、当該NCは、PP7ファージの「コート」タンパク質の配列を挿入するために、第2のジンクフィンガーのレベルで突然変異している。
−エンベローププラスミドにおいて、エンベロープタンパク質は、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gタンパク質である。
【0184】
任意により、キットは、キメラインテグラーゼをコードする第2のカプシド形成プラスミドを含み、斯かるキメラインテグラーゼは、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む。第2の結合ドメインは、キメラヌクレオカプシドタンパク質の結合ドメインと同一又は異なってもよい。
【0185】
種々の結合ドメインの例として:
−ヌクレオカプシドに導入された結合ドメインは、MS2のコートタンパク質であってもよく、かつインテグラーゼに導入された結合ドメインは、PP7のコートタンパク質であってもよい、あるいは
−ヌクレオカプシドに導入された結合ドメインは、PP7のコートタンパク質であってもよく、かつインテグラーゼに導入された結合ドメインは、MS2のコートタンパク質であってもよい。
【0186】
いくつかの結合ドメインが、キメラタンパク質のそれぞれに導入されてもよい。
【0187】
あるいは、キットが、第2の実施形態に係る粒子を生産するためのキットである場合、このキットは、以下:
(i)少なくとも1つの目的の配列を含む発現プラスミドであって、この配列の上流、下流、又は配列内に、カプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、
(ii)キメラインテグラーゼをコードするカプシド形成プラスミド、ここで、斯かるキメラインテグラーゼは、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに、
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミド、
を含む。
【0188】
有利には、本発明に係るキットの発現プラスミドに用いられるプロモーターは、EF1であり、特に目的の配列がヌクレアーゼ、例えばCas9、及びU6である場合、特に目的の配列が、ガイドRNAの少なくとも1つの認識エレメントであるか又はガイドRNAである場合。
【0189】
有利には、本発明に係る生産キットは、第2のカプシド形成プラスミドをさらに含んでもよく、斯かる第2のカプシド形成プラスミドは:
−第1のカプシド形成プラスミドが、キメラGagポリタンパク質に由来するタンパク質をコードする場合には、野生型Gagポリタンパク質に由来するタンパク質をコードし、及び/又は
−第1のカプシド形成プラスミドがキメラインテグラーゼをコードする場合には、野生型インテグラーゼをコードする。
【0190】
本発明に係るキットのための製造方法も提案される。典型的には、本発明に係るキットを製造するための方法は、以下:
(i)少なくとも1つの目的の配列を含む発現プラスミドであって、この配列の上流、下流、又は配列内に、カプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミドを調製し、
(ii)Gagポリタンパク質に由来するタンパク質及び/又はキメラインテグラーゼをコードするカプシド形成プラスミドを調製し、ここで、当該Gagポリタンパク質に由来するタンパク質及び/又はキメラインテグラーゼは、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミドを調製すること、
を含む。
【0191】
より具体的には、方法が、第1の実施形態に係る粒子を生産するためのキットに関する場合、当該方法は、以下:
(i)少なくとも2つの異なる非ウイルスRNA配列を含む発現プラスミド、各RNA配列は目的の配列を含み、この目的の配列の上流、下流又は配列内にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミドあるいは代替的に、第1及び第2の発現プラスミドであって、それぞれ目的の配列を含み、その上流又は下流にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、を調製し、
(ii)キメラヌクレオカプシドタンパク質をコードするカプシド形成プラスミドを調製し、ここで、斯かるキメラヌクレオカプシドタンパク質は、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに、
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミドを調製すること、
を含む。
【0192】
目的の配列が異なる及び/又はカプシド形成配列が異なるために、少なくとも2つの非ウイルスRNA配列は異なっている。
【0193】
好ましくは、当該方法は、以下:
(i)少なくとも2つの目的の配列を含む発現プラスミドであって、これら配列のそれぞれの上流、下流又は配列内にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、あるいは代替的に、第1及び第2の発現プラスミドであって、それぞれ目的の配列を含み、その上流又は下流にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、を調製し
当該目的の配列は異なっており、かつ当該カプシド形成配列は同一である、
(ii)キメラヌクレオカプシドタンパク質をコードするカプシド形成プラスミドを調製し、ここで、斯かるキメラヌクレオカプシドタンパク質は、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミド
を調製すること、
を含む。
【0194】
あるいは、方法が、第2の実施形態に係る粒子を生産するためのキットに関する場合、当該方法は、以下:
(i)少なくとも1つの目的の配列を含む発現プラスミドであって、この配列の上流、下流、又は配列内に、カプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミドを調製し
(ii)キメラインテグラーゼをコードするカプシド形成プラスミドを調製し、ここで、斯かるキメラインテグラーゼは、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに、
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミドを調製すること、
を含む。
【0195】
本発明はまた、本発明に係る粒子のための製造方法に関する。
【0196】
そのような方法は、以下:
(i)少なくとも1つの目的の配列を含む発現プラスミドであって、この配列の上流、下流、又は配列内に、カプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、
(ii)Gagポリタンパク質に由来するタンパク質及び/又はキメラインテグラーゼをコードするカプシド形成プラスミド、ここで、斯かるGagポリタンパク質に由来するタンパク質及び/又はキメラインテグラーゼは、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに、
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミド、
による細胞のコトランスフェクションのステップ、並びに、
粒子を含むトランスフェクトされた細胞からの上清の回収のステップ、
を含む。
【0197】
本発明に係る粒子のための製造方法に利用される細胞は、プロデューサー細胞であり、すなわち、レトロウイルス粒子の形成に必要な遺伝物質を有するプラスミドで一度トランスフェクトされた細胞が、当該粒子の形成を可能にする。プロデューサー細胞の例として、HEK293Tが挙げられる。
【0198】
「コトランスフェクションのステップ」とは、粒子を製造するための方法のプラスミドの全てとプロデューサー細胞とを接触させることによってトランスフェクションが行われる、トランスフェクションのステップを意味する。
【0199】
より具体的には、製造方法の目的が第1の実施形態に係る粒子を生産することである場合、それは、以下:
(i)少なくとも2つの異なる非ウイルスRNA配列を含む発現プラスミドであって、各RNA配列が目的の配列を含み、この目的の配列の上流、下流又は配列内にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、あるいは代替的に、第1及び第2の発現プラスミドであって、それぞれ目的の配列を含み、その上流又は下流にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、
(ii)キメラヌクレオカプシドタンパク質をコードするカプシド形成プラスミド、ここで、斯かるキメラヌクレオカプシドタンパク質は、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに、
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミド、
による細胞のコトランスフェクションのステップ、並びに、
粒子を含むトランスフェクトされた細胞からの上清の回収のステップ、
を含む。
【0200】
目的の配列が異なる及び/又はカプシド形成配列が異なるために、少なくとも2つの非ウイルスRNA配列は異なっている。
【0201】
好ましくは、この粒子を製造するための方法は、以下:
(i)少なくとも2つの目的の配列を含む発現プラスミドであって、これら配列のそれぞれの上流、下流又は配列内にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、あるいは代替的に、第1及び第2の発現プラスミドであって、それぞれ目的の配列を含み、その上流又は下流にカプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、
当該目的の配列は異なっており、かつ当該カプシド形成配列は同一である、
(ii)キメラヌクレオカプシドタンパク質をコードするカプシド形成プラスミド、ここで、斯かるキメラヌクレオカプシドタンパク質は、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに、
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミド、
による細胞のコトランスフェクションのステップ、並びに、
粒子を含むトランスフェクトされた細胞からの上清の回収のステップ、
を含む。
【0202】
あるいは、製造方法の目的が、第2の実施形態に係る粒子を生産することである場合、この方法は、以下:
(i)少なくとも1つの目的の配列を含む発現プラスミドであって、この配列の上流、下流、又は配列内に、カプシド形成配列が挿入されている、発現プラスミド、
(ii)キメラインテグラーゼをコードするカプシド形成プラスミド、ここで、斯かるキメラインテグラーゼは、カプシド形成配列の認識を可能にする結合ドメインを含む、並びに、
(iii)エンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミド、
による細胞のコトランスフェクションのステップ、並びに
粒子を含むトランスフェクトされた細胞からの上清の回収のステップ、
を含む。
【0203】
有利には、本発明に係る製造方法において、発現プラスミドは、コトランスフェクションに利用される全プラスミド数の少なくとも50%を表す。
【0204】
本発明に係る製造方法において、コトランスフェクションのステップは、さらに第2のカプシド形成プラスミドによって行われてもよく、斯かる第2のカプシド形成プラスミドは:
−第1のカプシド形成プラスミドがキメラGagポリタンパク質に由来するタンパク質をコードする場合、野生型Gagポリタンパク質に由来するタンパク質をコードし、及び/又は、
−第1のカプシド形成プラスミドがキメラインテグラーゼをコードする場合、野生型インテグラーゼをコードする。
【0205】
有利には、第2のカプシド形成プラスミドと第1のカプシド形成プラスミドとの比は、[10:90]〜[60:40]の範囲、好ましくは[20:80]〜[50:50]の範囲である。
【0206】
第2のカプシド形成プラスミドの使用に関連する利点、より具体的には上記で定義した比に関連する利点は、実施例13でより十分に記載する。
【0207】
好ましくは、本発明に係る粒子のための全ての製造方法は、国際公開第2013/014537号に記載の方法によって行われる。
【0208】
より具体的には、粒子のためのこれら製造方法は、血清を含まない培地で培養されたプロデューサー細胞に対して行われ、かつ酪酸ナトリウムによる誘導は行われない。
【0209】
有利には、上清は数回、例えば3〜6回、特定の時間間隔で、例えばレトロウイルス粒子の半減期のオーダーの次間隔で、回収される。典型的には、上清の回収は、4〜5回、6〜18時間、好ましくは8〜16時間、例えば8時間、12時間及び/又は16時間のオーダーの時間間隔で行われる。好ましくは、当該回収は、細胞の培養培地の交換後に行われ、この交換は好ましくは、トランスフェクション後24時間で行われる。
【0210】
本発明に係る粒子のための製造方法はまた、上清が清澄化されるステップを含む。
【0211】
好ましくは、上清は、遠心分離によって清澄化される。
【0212】
さらにより好ましくは、本発明に係る粒子のためのこれら製造方法はさらに、上清が濃縮及び/又は精製されるステップを含む。
【0213】
好ましくは、濃縮及び精製は、遠心分離ユニットでの正面(frontal)限外濾過によって行われる。
【0214】
有利には、上清は、1つ又は複数の付加的な精製ステップを受ける。これら精製ステップは好ましくは、接線(tangential)限外濾過及び/又は透析濾過によって行われる。さらにより好ましくは、上清は、接線限外濾過のステップに次いで、透析濾過のステップを受ける。
【0215】
接線限外濾過は有利には、ポリスルホン中空繊維カートリッジで行われる。
【0216】
任意により、組成物は次に、イオン交換クロマトグラフィー、特に陰イオン交換クロマトグラフィーのステップを受けてもよい。このクロマトグラフィーステップからの溶出液を回収し、次に中央遠心分離ユニットでの正面限外濾過によって再度濃縮する。当該方法から得られる組成物は、粗上清に対して、1%未満のDNA夾雑物及び1%未満のタンパク質夾雑物を含有する。
【0217】
本発明はまた、本発明に係る粒子のための製造方法のいずれか一つによって得られる組成物に関する。
【0218】
典型的には、これら組成物は、粗上清に対して、30%未満のDNA夾雑物及び45%未満のタンパク質夾雑物を含有する。より具体的には、本発明に係る組成物は、粗上清に対して、30%未満のDNA夾雑物及び2%未満のタンパク質夾雑物を含有する。
【0219】
任意により、本発明に係る組成物は、粗上清に対して、1%未満のDNA夾雑物及び1%未満のタンパク質夾雑物を含有する。
【0220】
最後に、本発明は、細胞の形質導入のための、本発明に係る粒子、又は本発明に係る組成物の使用に関する。
【0221】
本発明に係る粒子及び組成物の使用は、それらを一過的に改変するために、初代細胞及び不死化株の形質導入に特に有利である。細胞は、哺乳動物細胞であるか又は他の真核生物由来であってもよい。特に、これら細胞の形質導入は、インビボ、インビトロ又はエクスビボで行われ得る。
【0222】
細胞は、本発明に係る粒子による1回又は2回の連続した形質導入を受けてもよい。
【0223】
細胞の形質導入のための本発明に係る粒子の使用は、DNA修復のメカニズムによって細胞が応答するDNAの二本鎖の切断を誘導するその能力のために、ゲノムに突然変異を導入することを可能にする。例えば、修復は、二本鎖切断から生じるDNA、この目的のために導入されたか又は細胞内で利用可能なRNAの、2つの末端を再連結するための非ホモログ末端の挿入によって行われ得る。
【0224】
これらゲノム工学システムはまた、遺伝子ノックアウト、すなわち遺伝子発現のノックアウトを行うために用いられてもよく、又はさらに、標的遺伝子に応じて細胞死を誘導してもよい。
【0225】
本発明に係る粒子が細胞に導入された後、次にそれらは、インビボ、インビトロ又はエクスビボで、ゲノムを改変するために使用することができる。
【0226】
本発明は、以下にそれぞれ示す図面を参照して、例示により後に示される実施例から、よりよく理解されるであろう:
【実施例】
【0228】
実施例1:ILV又は本発明に係るMS2RLP粒子によるHCT116細胞の特定のクローンの形質導入後のCas9をコードするRNAの転移の比較
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
この例でのみ、使用されるCas9はCas9 Nickase(突然変異型)である。以下の実施例では、特に記載がない限り、その野生型のCas9(WT)が使用され、プロトコルは変更されないままである。
【0229】
1.1 本発明に係るMS2−(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、イントロン配列又はRNA安定化配列を含むか又は含まない発現カセット(
図I)を有する。レンチウイルス粒子にRNAを輸送するために、MS2 RNAのステム−ループモチーフの12回の反復(ctagaaaacatgaggatcacccatgtctgcag、配列番号1)を、Cas9 酵素の配列の下流の発現カセットに挿入した。使用されたプロモーターは、EF1プロモーター(
図I)であるが、他のプロモーターが使用されてもよい。目的のプラスミド配列は、Cas9タンパク質であって、その野生型(WT)又はその突然変異型(N)の、例えばNickaseのRNAをコードするDNA(
図I)である。
【0230】
・カプシド形成プラスミド:
レンチウイルス粒子を、第2のZn fingerドメインの代わりに、ヌクレオカプシドタンパク質内にMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。MS2RLP粒子の生産のために使用された、構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図IIaに示した戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによってMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質により置換されて、プラスミドp8.74ΔZF−MS2−Coatを生成する。これは、
図IIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、MS2RLPの機能を変更することなく、例えば逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような、特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異していてもよい。
【0231】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0232】
これらプラスミドは、本発明に係るMS2−(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−Cas9 12Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0233】
1.2 組み込みレンチウイルスベクターILVを生産するためのプラスミド
1.2.1. 対照組み込みレンチウイルスベクターILVCas9を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、発現カセットを有する(
図IV)。このプラスミドは他のエレメント、例えば天然配列WPRE(Woodchuck Hepatitis Virus Posttranscriptional Regulatory Element)又はcPPT/CTS配列を含んでもよい。ウイルスの病原性は、導入遺伝子によるレトロウイルス複製に必要とされるウイルスゲノムの領域の置換によって排除されている。使用されるプロモーターはEF1プロモーターであるが、他のプロモーターが使用されてもよい。目的のプラスミド配列は、その野生型(WT)又はその突然変異型(N)の、Cas9タンパク質のRNAをコードするDNAである(
図IV)。
【0234】
・カプシド形成プラスミド:
構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドが、組み込みレンチウイルスベクターの生産のために使用される(
図VI)。
【0235】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、MS2RLPレンチウイルス粒子を生産するために使用されるエンベローププラスミドと同一である(
図III)。
【0236】
1.2.2. HCT116−GFP Clone D2標的細胞を生成するためのILV−GFP組み込みレンチウイルスベクターを生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、発現カセットを有する(
図Va)。このプラスミドは他のエレメント、例えば天然配列WPRE(Woodchuck Hepatitis Virus Posttranscriptional Regulatory Element)又はcPPT/CTS配列を含んでもよい。ウイルスの病原性は、導入遺伝子によるレトロウイルス複製に必要とされるウイルスゲノムの領域の置換によって排除されている。使用されるプロモーターはEF1プロモーターであるが、他のプロモーターが使用されてもよい。目的の配列は、GFP蛍光タンパク質である(
図Va)。
【0237】
・カプシド形成プラスミド:
構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドが、組み込みレンチウイルスベクターの生産のために使用される(
図VI)。
【0238】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、MS2RLPレンチウイルス粒子を生産するために使用されるエンベローププラスミドと同一である(
図III)。
【0239】
1.2.3. 標的細胞HTC116−GFP Clone D2−H1−GuideU3−U6−GuideD1を生成するための組み込みレンチウイルスベクターILV−H1−GuideU3−U6−GuideD1を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、
図Vbに記載の発現カセットを有する。このプラスミドは他のエレメント、例えば天然配列WPRE(Woodchuck Hepatitis Virus Posttranscriptional Regulatory Element)又はcPPT/CTS配列を含んでもよい。ウイルスの病原性は、導入遺伝子によるレトロウイルス複製に必要とされるウイルスゲノムの領域の置換によって排除されている。使用されるプロモーターはH1及びU6であるが、他のプロモーターが使用されてもよい。目的の配列は、GFPの配列を標的化する2つの非コーディングRNA、以後、ガイドU3及びガイドD1と呼ぶ(sgRNA=ガイドRNA)(
図Vb)。
【0240】
・カプシド形成プラスミド:
構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドが、組み込みレンチウイルスベクターの生産のために使用される(
図VI)。
【0241】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、MS2RLPレンチウイルス粒子を生産するために使用されるエンベローププラスミドと同一である(
図III)
【0242】
2.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの生産
プロデューサー細胞に対するプラスミドのトランスフェクション後に、上清を採取し、粗生成物で使用するか、又は国際公開第2013/014537号の出願に記載された以下に述べる方法の1つに従って濃縮/精製して使用した。
【0243】
2.1 レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターの生産
5%のCO
2で湿潤雰囲気下、37℃で、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のウルトラグルタミン(PAA)で補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco、Paisley、UK)で培養した、HEK293Tプロデューサー細胞(ATCC、CRL−11268)を用いて10−スタックの細胞TACK(6360cm
2、Corning)で、生産を行う。各バッチ(MS2−(NC)−RLP 12X及びILV)について、トランスフェクション混合物は、以下の3つのプラスミドからなる:
−粒子(MS2−(NC)−RLP 12X)又はベクター(ILV)が形成されているかに応じて、上述の発現プラスミドの1つ、
−p8.74ΔZF Coat(MS2−(NC)−RLP 12X)又はp8.74(ILV)
−エンベロープVSV−Gを有するpENV。
【0244】
より具体的には、バッチMS2RLP−Cas9 12Xについて、トランスフェクション混合物は、以下の3つのプラスミドからなる:
−pcDNA−EF1−Cas9−MS2 12X発現プラスミド(その発現カセットを
図Iに示す)
−p8.74ΔZF−MS2 Coatプラスミド(その発現カセットを
図IIbに示す)
−エンベロープVSV−Gを有するpENVプラスミド(その発現カセットを
図IIIに示す)。
【0245】
より具体的には、バッチILV−GFP、ILV−H1−GuideU3−U6−GuideD1又はILV−Cas9について、トランスフェクション混合物は、以下の3つのプラスミドからなる:
−それぞれ、発現プラスミドpILV−EF1−GFP−WPRE(その発現カセットを
図Vaに示す)又はpILV−H1−GuideU3−U6−GuideD1−WPRE(その発現カセットを
図Vbに示す)又はpILV−EF1−Cas9−WPRE(その発現カセットを
図IVに示す)、
−p8.74プラスミド(その発現カセットを
図VIに示す)
−エンベロープVSV−Gを有するpENVプラスミド(その発現カセットを
図IIIに示す)。
【0246】
プラスミドのそれぞれの割合は、以下の通りである:40%の発現プラスミド、30%のp8.74プラスミド(又はp8.74ΔZF)、30%のpENVプラスミド。
【0247】
リン酸カルシウムによる標準的なトランスフェクションから24時間後に、培養上清を新鮮な未補充DMEM培地で交換する。プロデューサー細胞を、37℃/5%CO
2でインキュベートする。培地の交換後に、上清を4回採取する(トランスフェクション後32時間、48時間、56時間及び72時間)。各回収物を、5分間の3000gでの遠心分離によって清澄化した後に、0.45μmのフィルター(Stericup(登録商標)、Millipore)で精密ろ過する。次に全ての回収物をプールして、粗上清を構成する。
【0248】
2.2 レンチウイルスベクター及びレンチウイルス粒子の濃縮及び精製
ベクター及び粒子を以下の2つの方法の1つにより濃縮及び精製する:
・方法P1は、中央遠心分離ユニットでの上清の正面限外濾過を想定する。
・方法P2は、上清の接線限外濾過、次いで透析濾過を想定する。粗上清を、ポリスルホン中空繊維カートリッジを用いた接線限外濾過によって、濃縮及び精製する。上清を、DMEM又はTSSM緩衝液に対して連続モードで20ダイアボリューム(diavolumes)での透析濾過によって処理する。透析濾過後に、保持液を回収し、次に中央遠心分離ユニットでの正面限外濾過によって再度濃縮する。
【0249】
実施例1について、上清は、回収され、方法P1に従って濃縮/精製されて使用される。
【0250】
3.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの滴定
3.1 qPCRによる機能性粒子の滴定
HCT116滴定細胞(ATCC、CCL−247)を、10%FCS、100μg/mLのストレプトマイシン、100U/mLのペニシリン及び2mMのL−Gln(L−グルタミン)で補充した、100μLのDMEM中の96−ウェルプレートに播種し、次に、37℃/5%CO
2で24時間インキュベートする。各ベクター並びに内部標準について6連希釈を行う。滴定細胞を、Polybrene(登録商標)8μg/mL(Sigma)の存在下でこれらの連続希釈液により形質導入し、次に、37℃/5%CO
2で3日間インキュベートする。一連の試料のそれぞれについて、形質導入されていない細胞のウェルを対象として加える。次に、滴定細胞をトリプシン処理し、gDNA抽出キット(Macherey-Nagel)を用いてゲノムDNAの抽出後に、力価(形質導入ユニット(Transduction Unit)/mL)を、qPCRによって決定する。qPCRによって得られた力価(TU/mL)を、その力価がFACSによって予め決定された内部標準によって正規化する。
【0251】
3.2 ELISA p24アッセイによる物理的粒子の定量化
p24カプシド タンパク質は、HIV-1 p24 ELISA kit(Perkin Elmer)を用いて、その推奨に従って、ウイルス上清で直接検出される。捕捉されたp24 タンパク質は、ビオチン化ポリクローナル抗体と複合体化され、次に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたストレプトアビジンによって検出される。得られた複合体は、捕捉されたp24タンパク質の量に正比例する黄色の着色を生じるオルトフェニレンジアミン−HCl基質(OPD)とのインキュベーション後に分光光度法によって検出される。各ウェルの吸光度を、Synergy H1 Hybridプレートリーダー(Biotek)で定量化し、標準範囲のp24タンパク質の吸光度に対して較正する。1mlあたりの物理的粒子として表されるウイルス力価は、得られたp24タンパク質の濃度から計算され、1pgのp24タンパク質は、10
4個の物理的粒子に対応することがわかる。
【0252】
4.標的細胞の生成、及び本発明に係るMS2−(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子による形質導入
この例は、非組み込みMS2RLP粒子を介してCas9ヌクレアーゼをコードするRNAを転移させることが可能であること、及びこのRNA転移の終わりに、標的遺伝子のノックアウトを可能にする二本鎖DNA切断を生じることを示すことを目的とする。
【0253】
4.1 HCT116−GFP Clone D2標的細胞
HCT116−GFP Clone D2標的細胞は、GFPを発現する組み込みレンチウイルスベクター(ILV)による、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、MOI20でのHCT116細胞(ATCC、CCL 247)の形質導入によって得られる。HCT116−GFP Clone D2標的モノクローナル株は、GFPをコードするDNAの単一コピーのみを含み、斯かる株は、HCT116−GFPポリクローナル株(
図Vaにおける発現プラスミドから調製された)の限界希釈(limit dilution)、並びに定量的PCRによるGFP配列の統合されたコピーの数の定量によるクローンのスクリーニングによって得られた。
【0254】
4.2 HCT116−GFP CloneD2−H1−GuideU3−U6−GuideD1標的細胞、及び本発明に係るMS2−(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子による形質導入
HCT116−GFP Clone D2標的細胞を、24ウェルプレートに25000細胞/cm
2で播種し、37℃/5%CO
2で24時間インキュベートする。最初に、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、ILV−H1−GuideU3−U6−GuideD1ベクター(
図Vbにおける発現プラスミドから調製した)によりMOI40で、細胞を形質導入する。形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。
【0255】
ILV−H1−GuideU3−U6−GuideD1による形質導入の1週間後、HCT116−GFP CloneD2−H1−GuideU3−U6−GuideD2標的細胞を、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、MOI40でのILV−EF1−Cas9 ベクター(
図IVにおける発現プラスミドから調製した)又は10pg p24/細胞の用量でのMS2RLP−Cas9 粒子によって、形質導入する。MS2RLP粒子の場合には、細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)を6μMの濃度で使用する。形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。形質導入後D14で、細胞を回収し、GFPを発現する細胞のパーセンテージをサイトメトリー(Macs Quant VYB、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0256】
II.結果
本実験の目的は、ILV−Cas9ベクター又はMS2RLP−Cas9 12X粒子によるHCT116−GFP−CloneD2−H1−GuideU3−U6−GuideD1標的細胞の形質導入によって、Cas9をコードするRNAの転移の有効性を比較することである。最初に、
図IXに提示された結果は、非形質導入(NT)HCT116細胞は蛍光性ではないが(<0.4%のGFP陽性細胞)、一方で、99%のHCT116−GFP−CloneD2−H1−GuideU3−U6−GuideD1標的細胞が蛍光性であることを示している。ILV−Cas9ベクターによって形質導入されたHCT116−GFP−CloneD2−H1−GuideU3−U6−GuideD1標的細胞の13%のみが、依然として蛍光性である。HCT116−GFP−CloneD2−H1−GuideU3−U6−GuideD1標的細胞が、MS2RLP−Cas9 12X粒子によって形質導入される場合、57%ほどの蛍光細胞数の減少が観察される。これは、57%の細胞がそれらのゲノム中のGFP配列のノックアウトを受けたことを示す。従って、ステム−ループ配列の12回の反復を含むMS2−(NC)−RLP 12X粒子は、Cas9ヌクレアーゼをコードするmRNAの転移に有効であり、従ってゲノムの編集を行うのに有効である。
【0257】
実施例2:HCT116細胞の第2の特定のクローンの形質導入後のMS2(NC)−RLP 2X粒子におけるガイドRNAのカプシド形成のためのMS2反復モチーフの位置の比較
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
1.1 本発明に係るMS2(NC)−RLP 2Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、イントロン配列又はRNA安定化配列を含むか又は含まずに、
図VII又はVIIIに記載の発現カセットを有する。レンチウイルス粒子にRNAを輸送するために、MS2 RNAのステム−ループモチーフの2回の反復(ctagaaaacatgaggatcacccatgtctgcag、従来のガイドD1についての配列番号1、ggccaacatgaggatcacccatgtctgcagggccキメラガイドD1についての配列番号3)を、ガイドRNAの下流の発現カセットに挿入するか(従来のガイドD1、
図VII)、又はガイドの足場の部分に含めた(キメラガイドD1、
図VIII)。使用されたプロモーターはH1プロモーターであるが、他のプロモーター、例えばU6プロモーターが使用されてもよい。RNA pol III依存型のプロモーター、例えばH1又はU6の使用は、転写末終結シグナル(Term)の存在を必要とする。目的の配列は、GFPの配列を標的化する非コーディングRNAである(sgRNA=ガイドRNA)。
【0258】
・カプシド形成プラスミド:
レンチウイルス粒子を、第2のZn fingerドメインの代わりに、ヌクレオカプシドタンパク質内にMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。MS2RLP 2X粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドは、
図IIaに示された戦略に従って改変される:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによってMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質により置換されて、プラスミドp8.74ΔZF−MS2−Coatを生成する。これは、
図IIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、例えばMS2RLP 2Xの機能を変更することなく逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような、特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異されてもよい。
【0259】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0260】
これらプラスミドは、本発明に係るMS2−(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。より具体的には、これらプラスミドは、レンチウイルス粒子MS2RLP−GuideD1Classical 2X及びMS2RLP−GuideD1Chimeric 2Xの生産のために使用される。
【0261】
1.2 組み込みレンチウイルスベクターILVを生産するためのプラスミド
1.2.1. 対照組み込みレンチウイルスベクターILV−GuideD1を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、
図Vcに記載の発現カセットを有する。このプラスミドは他のエレメント、例えば天然配列WPRE(Woodchuck Hepatitis Virus Post-transcriptional Regulatory Element)又はcPPT/CTS配列を含んでもよい。ウイルスの病原性は、導入遺伝子によるレトロウイルス複製に必要とされるウイルスゲノムの領域の置換によって排除されている。使用されるプロモーターはH1及びU6であるが、他のプロモーターが使用されてもよい。目的の配列はガイドである(
図Vc)。
【0262】
・カプシド形成プラスミド:
構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドが、組み込みレンチウイルスベクターの生産のために使用される(
図VI)。
【0263】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、 MS2RLP レンチウイルス粒子を生産するために使用されるエンベローププラスミドと同一である(
図III)。
【0264】
1.2.2. HCT116−GFP Clone D2標的細胞を生成するためのILV−GFP組み込みレンチウイルスベクターを生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。
【0265】
1.2.3 HCT116−GFP Clone D2−EF1−Cas9WT標的細胞を調製するためのILV−Cas9組み込みレンチウイルスベクターを生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。
【0266】
2.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの生産
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを実施例1に記載のように生産し、そして、実施例1に記載の方法P1に従って濃縮及び精製する。
【0267】
より具体的には、バッチMS2RLP−GuideD1Classical 2X及びMS2RLP−GuideD1Chimeric 2Xについて、トランスフェクション混合物は、以下の3つのプラスミドからなる:
−pcDNA−H1−GuideD1−MS2 2X発現プラスミド(その発現カセットを
図VIIに示す)又はpcDNA−H1−GuideD1Chimeric−MS2 2Xプラスミド(その発現カセットを
図VIIIに示す)
−p8.74ΔZF−MS2 Coatプラスミド(その発現カセットを
図IIbに示す)
−エンベロープVSV−Gを有するpENVプラスミド(その発現カセットを
図IIIに示す)。
【0268】
使用したプラスミドの割合は実施例1と同じである。
【0269】
3.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの滴定
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載のように滴定する。
【0270】
4.標的細胞の生成及び本発明に係るMS2−(NC)−RLP 2Xレンチウイルス粒子による形質導入
本実施例の目的は、MS2RLP粒子におけるガイドRNAのカプシド形成のためのMS2反復ステム−ループモチーフの位置が、標的遺伝子のノックアウトのための粒子の有効性に影響を与えるかを決定することである。
【0271】
4.1 HCT116−GFP CloneD2標的細胞
このクローンは実施例1と同一の方法によって調製される。
【0272】
4.2 本発明に係るMS2−(NC)−RLP 2Xレンチウイルス粒子によるHCT116−GFP cloneD2−Cas9標的細胞及び形質導入
HCT116−GFP Clone D2細胞を、24ウェルプレートに25000細胞/cm
2で播種し、37℃/5%CO
2で24時間インキュベートする。最初に、細胞を、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、ILV−Cas9ベクターによりMOI40で形質導入する。形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。ILV−Cas9ベクターによる形質導入の1週間後、HCT116−GFP CloneD2 −Cas9標的細胞を、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、10pg p24/細胞の用量での抗GFPガイドRNA(古典的又はキメラ)を送達するMS2(NC)−RLP 2X粒子によって、あるいは、MOI40でのILV−GuideD1ベクターによって、形質導入する。MS2RLP粒子の場合には、細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)を6μMの濃度で使用する。形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。MS2RLP−guides−MS2 2Xによる形質導入後D14で、細胞を回収し、GFPを発現する細胞のパーセンテージをサイトメトリー(Macs Quant VYB、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0273】
II.結果
本実験の目的は、形質導入後のMS2RLP 2X粒子におけるガイドRNAのカプシド形成のためのMS2反復モチーフの位置を比較することである。最初に、
図Xに提示された結果は、非形質導入(NT)HCT116細胞が蛍光性でなく(<0.16%のGFP陽性細胞)、一方で、HCT116−GFP CloneD2標的細胞の99%超が蛍光性であることを示している。ILV−GuideD1ベクターによって形質導入されたHCT116−GFP CloneD2−Cas9標的細胞のわずか13%が、依然として蛍光性である。HCT116−GFP cloneD2−Cas9標的細胞がMS2RLP 2X −Guide粒子によって形質導入される場合、2%の蛍光細胞数のごくわずかな減少が、古典的ガイドを輸送するMS2RLP−GuideD1Classical 2Xについて観察され、かつ10%程のより多くの減少が、キメラガイドを輸送するMS2RLP−GuideD1Chimeric 2Xについて観察される。従って、MS2反復モチーフの位置は、MS2RLP 2X粒子の有効性に影響を与える。消失のパーセンテージは中程度であるが、この結果は、MS2RLP 2X粒子が、ガイドRNAの転移、従ってゲノム編集を可能にすることを示している。
【0274】
実施例3:HCT116細胞の第2のクローンの形質導入のためのMS2(NC)−RLP 2X粒子におけるガイドRNAを有する発現プラスミドの単量又は倍量の影響
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
1.1 組み込みレンチウイルスベクターILVを生産するためのプラスミド
1.1.1 HCT116−GFP Clone D2−EF1−Cas9標的細胞の調製用のILV−Cas9組み込みレンチウイルスベクターを生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。
【0275】
1.1.2 HCT116−GFP Clone D2標的細胞の生成用のILV−GFP組み込みレンチウイルスベクターを生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。
【0276】
1.1.3 ガイドのための対照組み込みレンチウイルスベクターILV(ILV−GuideD1)を生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例2と同一の方法によって調製される。
【0277】
1.2 本発明に係るMS2(NC)−RLP 2Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。より具体的には、MS2RLP−GuideD1Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を生産するために用いられるプラスミドを使用する。
【0278】
2.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの生産
2.1 レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターの生産
5%のCO
2で湿潤雰囲気下、37℃で、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のウルトラグルタミン(PAA)で補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco、Paisley、UK)で培養した、HEK293Tプロデューサー細胞(ATCC、CRL−11268)を用いて10−スタックの細胞TACK(6360cm
2、Corning)で、生産を行う。MS2RLP 2X粒子を、以下の3つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−上述の発現プラスミドの1つ、これは、粒子が形成されているか(MS2−(NC)−RLP 2X)に応じて単量又は倍量で、あるいは組み込みベクター(ILV)については単量で、使用する、
−p8.74ΔZF Coat(MS2−(NC)−RLP 2X)又はp8.74(ILV);
−エンベロープVSV−Gを有するpENV。
【0279】
より具体的には、MS2RLP−GuideD1Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を、以下の3つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−pcDNA−H1−GuideD1Chimeric−MS2 2X発現プラスミド(その発現カセットを
図VIIIに示す)、これは、単量又は倍量で使用される、
−p8.74ΔZF Coat−MS2 Coat(その発現カセットを
図IIbに示す)
−エンベロープVSV−Gを有するpENV(その発現カセットを
図IIIに示す)。
【0280】
プラスミドの割合は以下の通りである:40%の発現プラスミド、30%のp8.74又はp8.74ΔZFプラスミド、30%のpENVプラスミド、60%の発現プラスミド、20%のp8.74又はp8.74ΔZFプラスミド、20%のpENVプラスミド、生産が単一の発現プラスミドを含む場合、この量は二倍になる。
【0281】
リン酸カルシウムによる標準的なトランスフェクションから24時間後に、培養上清を新鮮な未補充DMEM培地で交換する。プロデューサー細胞を、37℃/ 5%CO
2でインキュベートする。培地の交換後に、上清を4回採取する(トランスフェクション後32時間、48時間、56時間及び72時間)。各回収物を、5分間の3000gでの遠心分離によって清澄化した後に、0.45μmのフィルター(Stericup(登録商標)、Millipore)で精密ろ過する。次に全ての回収物をプールして、粗上清を構成する。
【0282】
ILV−Cas9レンチウイルスベクターは、実施例1に記載したように生産される。
【0283】
ILV−GFPレンチウイルスベクターは、実施例1に記載したように生産される。
【0284】
ILV−GuideD1レンチウイルスベクターは、実施例2に記載したように生産される。
【0285】
2.2 レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターの濃縮及び精製
ベクター及び粒子を、実施例1に記載の方法P1に従って濃縮及び精製する。
【0286】
3.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの滴定
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載のように滴定する。
【0287】
4.
本発明に係るMS2−(NC)−RLP 2Xレンチウイルス粒子による標的細胞の生成及び形質導入
本実施例の目的は、Cas9酵素を構成的に発現するHCT116−GFP cloneD2−EF1−Cas9細胞に含まれるGFPをコードする配列を標的化するguideD1Chimeric RNAを有する発現プラスミドの単量又は倍量を用いて生産された粒子による、標的遺伝子のノックアウトのためのMS2(NC)−RLP 2X粒子の有効性を比較することである。
【0288】
4.1 HCT116−GFP cloneD2標的細胞
このクローンは実施例1と同一の方法によって調製される。
【0289】
4.2 HCT116−GFP cloneD2− Cas9標的細胞及び本発明に係るMS2−(NC)−RLP 2Xレンチウイルス粒子による形質導入
HCT116−GFP Clone D2細胞を、24ウェルプレートに25000細胞/cm
2で播種し、37℃/5%CO
2で24時間インキュベートする。最初に、細胞を、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、MOI40でのILV−Cas9ベクターにより形質導入する。このベクターは実施例2で調製したものである。形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。ILV−Cas9による形質導入の1週間後、HCT116−GFP CloneD2− Cas9細胞を、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、キメラガイドD1を送達するMS2RLP粒子によって(発現プラスミドの単用量又は倍用量で生産された)又は10pg p24/細胞の用量でのベクターILV−GuideD1によって形質導入する。細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)を、MS2(NC)−RLP 2X粒子の場合に6μMの濃度で使用する。形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。形質導入後D14で、細胞を回収し、及びGFPを発現する細胞のパーセンテージ並びに蛍光強度をサイトメトリー(Macs Quant VYB(登録商標)、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0290】
II.結果
本実験の目的は、発現プラスミドの単量又は倍量を用いて生産されたガイドRNAを送達するMS2RLP粒子の生産を比較することである。最初に、
図XIに提示された結果は、非形質導入(NT)HCT116細胞が蛍光性でなく(<0.2%のGFP陽性細胞)、一方で、99%超のHCT116−GFP CloneD2標的細胞が蛍光性であることを示している。ベクターILV−GuideD1によって形質導入されたHCT116−GFP CloneD2− Cas9標的細胞の9%未満が、依然として蛍光性である。HCT116−GFP CloneD2− Cas9標的細胞が、MS2RLP−GuideD1Chimeric 2Xによって形質導入される場合、蛍光細胞の数の6%の減少が、発現プラスミドの単用量で生産されたキメラガイドを輸送するMS2RLP 2X粒子について観察される。発現プラスミドの倍用量により生産されたキメラガイドを輸送するMS2RLP 2X粒子について、この減少は二倍になる(13%のHCT116−GFP CloneD2− Cas9陰性標的細胞)。従って、MS2RLP 2X粒子の生産のために使用される発現プラスミドの倍用量は、guideD1 RNAのカプシド形成の程度を改善し、それゆえ、GFP配列のノックアウトにおけるより良好な有効性につながる可能性がある。
【0291】
実施例4:HCT116−GFP細胞におけるCRISPR/Cas9システム(ガイドRNA+Cas9をコードするRNA)を送達する際のMS2RLP粒子の有効性
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
1.1 MS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
その発現カセットが実施例1(
図I、pcDNA−EF1−Cas9−MS2 12X)及び実施例2(
図VIII、pcDNA−H1−GuideD1 Chimeric−MS2 2X)に記載されている発現プラスミドを、標的細胞(HCT116−GFP CloneD2)のゲノムに組み込まれたCas9をコードするRNAとGFPの配列を標的化するガイドRNAとの両方を、同じMS2RLP12X−2X粒子において、同時カプシド形成(co-encapsidating)に使用した。
【0292】
・カプシド形成プラスミド:
レンチウイルス粒子を、第2のZn fingerドメインの代わりに、ヌクレオカプシドタンパク質内にMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。MS2RLP 12X−2X粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図IIaに示された戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによってMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質により置換されて、プラスミドp8.74ΔZF−MS2−Coatを生成する。これは、
図IIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、MS2RLPの機能を変更することなく、例えば逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような、特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異していてもよい。
【0293】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0294】
これらプラスミドは、本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X及び2X(又はMS2RLP 12X 2X)レンチウイルス粒子を生産するために使用される。より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−Cas9 12X −GuideD1Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0295】
1.2. HCT116−GFP Clone D2標的細胞の生成用のILV−GFP組み込みレンチウイルスベクターを生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。
【0296】
2.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの生産
プロデューサー細胞に対するプラスミドのトランスフェクション後に、上清を採取し、粗生成物で使用するか、あるいは国際公開第2013/014537号の出願に記載された前述の方法P1又はP2の1つに従って濃縮/精製して使用した。
【0297】
2.1 レンチウイルス粒子の生産
5%のCO
2で湿潤雰囲気下、37℃で、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のウルトラグルタミン(PAA)で補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco、Paisley、UK)で培養した、HEK293Tプロデューサー細胞(ATCC、CRL−11268)を用いて10−スタックの細胞TACK(6360cm
2、Corning)で、生産を行う。
【0298】
MS2(NC)−RLP 12X−2X粒子を、以下の4つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−上述の2つの発現プラスミド、pcDNA−H1−GuideD1Chimeric−MS2 2Xプラスミド(
図VIII)が、pcDNA−EF1−Cas9−MS212Xプラスミドの二倍の量で使用される;
−p8.74ΔZF−MS2−Coat;
−エンベロープVSV−Gを有するpENV。
【0299】
より具体的には、MS2RLP−Cas9 12X −GuideD1Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を、以下の4つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−上述の2つの発現プラスミド、プラスミドpcDNA−H1−GuideD1Chimeric−MS2 2X(その発現カセットを
図VIIIに示す)が、プラスミドpcDNA−EF1−Cas9−MS212X(その発現カセットを
図Iに示す)の二倍の量で使用される;
−p8.74ΔZF−MS2−Coat(その発現カセットを
図IIbに示す);
−エンベロープVSV−Gを有するpENV(その発現カセットを
図IIIに示す)。
【0300】
リン酸カルシウムによる標準的なトランスフェクションから24時間後に、培養上清を新鮮な未補充DMEM培地で交換する。プロデューサー細胞を、37℃/5%CO
2でインキュベートする。培地の交換後に、上清を4回採取する(トランスフェクション後32時間、48時間、56時間及び72時間)。各回収物を、5分間の3000gでの遠心分離によって清澄化した後に、0.45μmのフィルター(Stericup(登録商標)、Millipore)で精密ろ過する。次に全ての回収物をプールして、粗上清を構成する。
【0301】
従って、この生産は、2つの発現プラスミド、カプシド形成プラスミド及びエンベローププラスミドを含む。使用されるプラスミドの割合は以下の通りである:
−33%のガイドをコードする発現プラスミド、
−17%のCas9をコードする発現プラスミド(ガイドをコードする発現プラスミドの量は、 Cas9をコードする発現プラスミドの量に対して二倍である)、
−25%のp8.74ΔZFプラスミド、並びに
−25%のpENVプラスミド。
【0302】
ILV−GFPレンチウイルスベクターは、実施例1に記載したように生産される。
【0303】
2.2 レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターの濃縮及び精製
粒子及びベクターを、実施例1に記載された方法P1に従って濃縮及び精製する。
【0304】
3.ELISA p24アッセイによる物理的粒子の滴定
p24カプシドタンパク質は、HIV-1 p24 ELISA kit(Perkin Elmer)を用いて、その推奨に従って、ウイルス上清で直接検出される。捕捉されたp24タンパク質は、ビオチン化ポリクローナル抗体と複合体化され、次に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたストレプトアビジンによって検出される。得られた複合体は、捕捉されたp24タンパク質の量に正比例する黄色の着色を生じるオルトフェニレンジアミン−HCl基質(OPD)とのインキュベーション後に分光光度法によって検出される。各ウェルの吸光度を、Synergy H1 Hybrid(登録商標)プレートリーダー(Biotek)で定量し、p24タンパク質の標準範囲の吸光度に対して較正する。p24タンパク質の1pgが10
4個の物理的粒子に対応することを知ることによって、1ml当たりの物理的粒子として表されたウイルス力価を、得られたp24タンパク質の濃度から計算する。
【0305】
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載のように滴定する。
【0306】
4.標的細胞の生成及び本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子による形質導入
この例は、標的細胞のゲノムに組み込まれた、Cas9をコードするRNA及びGFPの配列を標的化するガイドRNAの両方を、同じMS2RLP 12X−2X粒子において、同時カプシド形成し、次いで、これら異なるRNAを、MS2RLP−Cas9 12X−GuideD1Chimeric 2X粒子を介して標的細胞のHCT116−GFP cloneD2へと転移させることが可能であることを示すことを目的とする。このRNAの転移の最後に、CRISPR/Cas9システムは機能的であり、かつ、CRISPR/Cas9システムの2つの構成要素の転移のための1つの同じツールを用いて、標的遺伝子のノックアウトを可能にする二本鎖DNAの切断を生じ、及び結果として、GFP+細胞をGFP−細胞へと変換すべきである。
【0307】
4.1 HCT116−GFP cloneD2標的細胞
このクローンは実施例1と同一の方法によって調製される。
【0308】
4.2 本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子によるHCT116−GFP CloneD2標的細胞の形質導入
HCT116−GFP Clone D2細胞を、24ウェルプレートに25000細胞/cm
2で播種し、37℃/5%CO
2で24時間インキュベートする。HCT116−GFP CloneD2細胞を、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、10pg p24/細胞の用量でのCas9及びキメラガイドD1の両方を送達するMS2RLP 12X−2X粒子によって形質導入する。細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)を、MS2RLP 12X−2X粒子の場合には6μMの濃度で使用する。形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。第1の形質導入の6日後に、第2の形質導入を同じ条件下で行った(
図XX)。最後に、第1の形質導入の12日後に、第3の形質導入を同じ条件下で行った(
図XII)。最後の形質導入の14日後に、細胞を回収し、GFPを発現する細胞のパーセンテージをサイトメトリー(Macs Quant VYB、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0309】
II.結果
本実験の目的は、標的細胞におけるCRISPR/Cas9システムの機能性を測定することによって、MS2RLP 12X 2X粒子を介してCas9をコードするRNA及びガイドRNAを同時に転移させる可能性を研究することである。最初に、
図XIIに提示された結果は、非形質導入(NT)HCT116細胞が蛍光性でなく(<0.2%のGFP+細胞)、一方で、HCT116−GFP CloneD2標的細胞は96%超が蛍光性であることを示している。標的細胞が、完全なCRISPR/Cas9システムを送達するMS2(NC)−RLP 12X−2X粒子で形質導入される場合、細胞の第3の形質導入の14日後に、蛍光細胞の数に38%の減少が見られる。従って、Cas9ヌクレアーゼ及び抗GFPガイドの両方を送達するMS2RLP 12X 2X粒子による38%程のGFP遺伝子のノックアウトが存在する。従って、CRISPR/Cas9システムによる標的遺伝子の消失は、Cas9ヌクレアーゼのRNA及びガイドRNAをそれぞれ輸送する粒子の2つのバッチが形質導入の際に加えられる場合よりも、標的細胞が、ヌクレアーゼ及びガイドRNAをそれぞれ発現する2種の発現プラスミドのコトランスフェクションによって産生されたMS2RLP粒子の単一バッチによって形質導入される場合に、3倍効果的である(
図XII及び
図XI)。従って、CRISPR Cas9システムは、それぞれ複数のCas9をコードするRNA及びガイドRNAを輸送する粒子でより効果的である。
【0310】
図XXに提示された結果は、非形質導入(NT)HCT116細胞が蛍光性でなく(<0.2%のGFP+細胞)、一方で、HCT116−GFP cloneD2標的細胞は99%超が蛍光性であることを示している。標的細胞が、完全なCRISPR/Cas9システムを送達するMS2(NC)−RLP 12X 2X粒子で形質導入される場合、細胞の第2の形質導入の14日後に、蛍光細胞の数に57%の減少が見られる。従って、Cas9ヌクレアーゼ及び抗GFPガイドの両方をコードするRNAを送達するMS2RLP 12X−2X粒子により、57%程のGFP遺伝子のノックアウトが存在する。確認として、Cas9が構成的に発現され、かつガイドRNAがMS2RLP粒子によって供給される場合、GFPを発現する細胞のパーセンテージは12.8%減少することが分かる(
図XI)。従って、GFPを発現する細胞のパーセンテージは、MS2RLP粒子が、2回の形質導入後にCas9をコードするRNA及びガイドRNAの両方を送達する場合に、5倍低い(
図XX)。MS2RLP−Cas9 12X−GuideD1Chimeric 2X粒子による3回の形質導入に対して2回の形質導入後に依然としてGFPを発現する細胞の分析は、CRISPRシステムが、3回の形質導入後(38%の有効性、
図XII)よりも、2回の形質導入後(57%の有効性、
図XX)により有効であるようにみえることを示している。この差異は、CRISPRシステムが標的細胞(HCT116−GFP CloneD2)内に送達される場合、当該システムが、標的配列、すなわちタンパク質GFPをコードする配列のレベルでだけでなく、非特異的に他の配列に対しても二本鎖DNAの切断を生じることになるという事実によって説明され得る。実際に、CRISPRシステムは、「オフターゲット効果」と呼ばれる特定のレベルの非特異的切断を有し、DNA修復システム(非相同末端結合(Non Homologous End Joining)についてのNHEJシステム)も受ける二本鎖DNA切断の発生を可能にし、これは特異的に生じた二本鎖DNA切断と同様である。より多くのCRISPRシステムが標的細胞に送達されるほど、それは「オフターゲット効果」をより多く示すことになり、同じ標的細胞で生じた二本鎖DNA切断が存在することになる。このシステムは、NHEJシステムが飽和し、かつDNAがもはや修復されない限界に達する。この場合、ゲノムDNAの非修復は、形質導入細胞の死を誘導する。これは、MS2RLP−Cas9 12X−GuideD1Chimeric 2X粒子によって3回形質導入された細胞で観察されるものである。実際に、3回形質導入された細胞は培養フラスコ内で最終的に死滅する。
【0311】
したがって、形質導入されておらず、従ってタンパク質GFPの消失を可能にするCRISPRシステムによって影響を受けていない細胞は、3回形質導入された細胞に対して増殖上の利点を有し、GFPを発現する細胞のレベルが、2回の形質導入後よりもMS2RLP−Cas9 12X−GuideD1Chimeric 2X粒子による3回の形質導入後に高い理由を説明する。
【0312】
結論として、これらMS2RLP 12X 2X粒子は、ゲノム編集の有効性に従って、かつ細胞タイプにも同様に従って、1回又は2回の形質導入後に、粒子のただ1つのバッチを用いて、それら自身をCRISPR/Cas9システムを同時送達するための最良のツールにする。
【0313】
実施例5:TALENシステムのための本発明に係るレンチウイルス粒子
ゲノム編集戦略におけるTALENシステムの使用は、生成した二本鎖DNAの切断部位の上流に固定されている第1のTALEN(TALEN 5′)、並びに生成した二本鎖DNAの切断部位の下流に固定されている第2のTALEN(TALEN 3′)の使用を必要とする。
【0314】
図XIIIaは、生成した二本鎖DNAの切断の上流(5′側)に固定されているTALENを発現するMS2RLP 12X粒子の産生を可能にする発現プラスミドを示す。
【0315】
図XIIIbは、生成した二本鎖DNAの切断の下流(3′側)に固定されているTALENを発現するMS2RLP 12X粒子の産生を可能にする発現プラスミドを示す。
【0316】
図XIVaは、生成した二本鎖DNAの切断の上流(5′側)に固定されているTALENを発現する組み込み粒子ILVの産生を可能にする発現プラスミドを示す。
【0317】
図XIVbは、生成した二本鎖DNAの切断の下流(3′側)に固定されているTALENを発現する組み込み粒子ILVの産生を可能にする発現プラスミドを示す。
【0318】
実施例6:Zn Finger Nucleaseシステムのための本発明に係るレンチウイルス粒子
ゲノム編集戦略におけるZn Finger Nucleaseシステムの使用は、生成した二本鎖DNAの切断部位の上流に固定されている第1のZn Finger(ZFP 5′)、並びに生成した二本鎖DNAの切断部位の下流に固定されている第2のZn Finger(ZFP 3′)の使用を必要とする。
【0319】
図XVaは、生成した二本鎖DNAの切断の上流(5′側)に固定されているZn Fingerを発現するMS2RLP 12X粒子の産生を可能にする発現プラスミドを示す。
【0320】
図XVbは、生成した二本鎖DNAの切断の下流(3′側)に固定されているZn Fingerを発現するMS2RLP 12X粒子の産生を可能にする発現プラスミドを示す。
【0321】
図XVIaは、生成した二本鎖DNAの切断の上流(5′側)に固定されているZn Fingerを発現する組み込み粒子ILVの産生を可能にする発現プラスミドを示す。
【0322】
図XVIbは、生成した二本鎖DNAの切断の下流(3′側)に固定されているZn Fingerを発現する組み込み粒子ILVの産生を可能にする発現プラスミドを示す。
【0323】
実施例7:インテグラーゼの改変によるPP7(IN)−RLPレンチウイルス粒子の構築
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、イントロン配列若しくはRNA安定化配列を含むか又は含まない発現カセットを有する(
図XVII参照)。mRNAをレンチウイルス粒子に輸送するために、PP7 RNA(ctagaaaggagcagacgatatggcgtcgctccctgcag 配列番号2)のステム−ループモチーフの12回の反復を、レポーター遺伝子の下流の発現カセットに挿入した(
図XVII)。
【0324】
使用されたプロモーターはCMV又はEF1プロモーターであってもよいが(
図XVII)、他のプロモーターが使用されてもよい。目的の配列は、レポータータンパク質、例えば天然ホタルルシフェラーゼ(
図XVII)、緑色(ZsGreenI)、赤色(mCherry)若しくは青色(mtBFP)蛍光タンパク質をコードするDNA、又はタンパク質、例えばCREタンパク質をコードするcDNAであり得る。目的の配列はまた、shRNA、miRNA、sgRNA、LncRNA又はcircRNAの配列であり得る。
【0325】
・カプシド形成プラスミド:
レンチウイルス粒子を、インテグラーゼ内にバクテリオファージPP7の「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。PP7(IN)−RLP粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図XVIIIに示された戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、PP7ファージのタンパク質CoatがインテグラーゼのC末端ドメインと融合しているプラスミドを生成するために使用される。HpaIクローニングによって得られるこの融合は、P8.74− POL−PP7 Coatプラスミドの生成を可能にする。これは、
図XIXに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、特定の機能的エレメント、例えば逆転写酵素(RT)をコードする配列において欠失又は突然変異されてもよい。
【0326】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0327】
2.レンチウイルス粒子の生産、濃縮/精製及び滴定
レンチウイルス粒子は、実施例1に記載したように、方法P1に従って生産される。
【0328】
3.ルシフェラーゼ発現動態
HCT116細胞(ATCC、CCL−247)を、96−ウェルプレートに播種し、37℃/5%CO
2で24時間インキュベートする。方法P1に従って生産されたPP7(IN)−RLP−Luc 12X粒子による形質導入を、8μg/mLのPolybreneの存在下で、2.8pg p24/細胞の用量で行う。形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。形質導入後4時間、8時間、24、32、及び48時間に、細胞を回収し、ルシフェラーゼ発現を、供給業者の推奨に従ってOneGlo Luciferaseアッセイキット(Promega)を用いて、及びSynergy H1 Hybridプレートリーダー(Biotek)を用いて、分析する。このアッセイは三連で行う。形質導入されていないHCT116細胞を対照として使用する。
【0329】
II.結果
インテグラーゼ内にPP7−Coatを有するレンチウイルス粒子にRNAを輸送することが可能である。最大ルシフェラーゼ発現は8時間で達成される。8時間後に、ルシフェラーゼ活性は低下する。従って、PP7(IN)−RLP 粒子はRNAの送達を可能にする。
【0330】
実施例8:プロデューサー細胞におけるガイドRNAの転写を可能にするプロモーターの機能としての、HCT116−GFP細胞にCRISPR/Cas9システム(ガイドRNA+Cas9をコードするRNA)を送達する際のMS2RLP粒子の有効性
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
1.1 MS2(NC)−RLP 12X及び2Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
実施例1(
図I、pcDNA−EF1−Cas9−MS2 12X)及び
図XXI、pcDNA−U6−GuideD1 Chimeric−MS2 2Xに記載された発現プラスミドを、標的細胞(HCT116−GFP CloneD2)のゲノム中に組み込まれるGFPの配列を標的化する、U6プロモーターの制御下でCas9をコードするRNA及びガイドRNAのD1の両方を、同じMS2RLP 12X−2X粒子において、同時カプシド形成するために使用した。
【0331】
・カプシド形成プラスミド:
レンチウイルス粒子を、第2のZn fingerドメインの代わりに、ヌクレオカプシドタンパク質内にMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。MS2RLP 12X−2X粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図IIaに示された戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによりMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質によって置換され、p8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドを生成する。これは、
図IIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、MS2RLPの機能を変更することなく、例えば逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような、特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異していてもよい。
【0332】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0333】
より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−Cas9 12X−GuideD1Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0334】
1.2. HCT116−GFP Clone D2標的細胞の生成用のILV−GFP組み込みレンチウイルスベクターを生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。
【0335】
2.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの生産
プロデューサー細胞に対するプラスミドのトランスフェクション後に、上清を採取し、粗生成物で使用するか、あるいは国際公開第2013/014537号の出願に記載された前述の方法P1又はP2に従って濃縮/精製して使用した。
【0336】
2.1 レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターの生産
5%のCO
2で湿潤雰囲気下、37℃で、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のウルトラグルタミン(PAA)で補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco、Paisley、UK)で培養した、HEK293Tプロデューサー細胞(ATCC、CRL−11268)を用いて10−スタックの細胞TACK(6360cm
2、Corning)で、生産を行う。
【0337】
MS2(NC)−RLP 12X 2X粒子を、以下の4つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−上述の2つの発現プラスミド、pcCDNA−U6−GuideD1Chimeric−MS2 2Xプラスミド(その発現カセットを
図XXIに示す)が、pcDNA−EF1−Cas9−MS2 12Xプラスミド(その発現カセットを
図Iに示す)の二倍の量で使用される;
−p8.74ΔZF−MS2−Coat;
−エンベロープVSV−Gを有するpENV。
【0338】
リン酸カルシウムによる標準的なトランスフェクションから24時間後に、培養上清を新鮮な未補充DMEM培地で交換する。プロデューサー細胞を、37℃/5%CO
2でインキュベートする。培地の交換後に、上清を4回採取する(トランスフェクション後32時間、48時間、56時間及び72時間)。各回収物を、5分間の3000gでの遠心分離によって清澄化した後に、0.45μmのフィルター(Stericup(登録商標)、Millipore)で精密ろ過する。次に全ての回収物をプールして、粗上清を構成する。
【0339】
MS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子は、実施例4に記載したように生産される。
【0340】
ILV−GFPレンチウイルスベクターは、実施例1に記載したように生産される。
【0341】
2.2 レンチウイルス粒子の濃縮及び精製
粒子を、実施例1に記載の方法P1に従って濃縮及び精製する。
【0342】
3.ELISA p24アッセイによる物理的粒子の滴定
p24カプシドタンパク質は、HIV-1 p24 ELISA kit(Perkin Elmer)を用いて、その推奨に従って、ウイルス上清で直接検出される。捕捉されたp24タンパク質は、ビオチン化ポリクローナル抗体と複合体化され、次に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたストレプトアビジンによって検出される。得られた複合体は、捕捉されたp24タンパク質の量に正比例する黄色の着色を生じるオルトフェニレンジアミン−HCl基質(OPD)とのインキュベーション後に分光光度法によって検出される。各ウェルの吸光度を、Synergy H1 Hybrid(登録商標)プレートリーダー(Biotek)で定量し、p24タンパク質の標準範囲の吸光度に対して較正する。p24タンパク質の1pgが10
4個の物理的粒子に対応することを知ることによって、1ml当たりの物理的粒子として表されたウイルス力価を、得られたp24タンパク質の濃度から計算する。
【0343】
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載のように滴定する。
【0344】
4.標的細胞の生成及び
本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子による形質導入
この例は、標的細胞のゲノムに組み込まれたCas9をコードするRNA及びGFPの配列を標的化するguideD1のRNAの両方を、同じMS2RLP 12X−2X粒子において、同時カプシド形成し、次いでこれら異なるRNAをMS2(NC)−RLP 12X−2X粒子を介して標的細胞のHCT116−GFP cloneD2へと転移させることが可能であることを示すことを目的とする。このRNAの転移の最後に、CRISPR/Cas9システムは、機能的であり、かつ標的遺伝子のノックアウトを可能にする二本鎖DNAの切断を生じ、及び結果として、CRISPR/Cas9システムの2つの構成要素の転移のための1つの同じツールを用いて、GFP+細胞をGFP−細胞へと変換すべきである。
【0345】
4.1 HCT116−GFP cloneD2標的細胞
このクローンは実施例1と同一の方法によって調製される。
【0346】
4.2 本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子によるHCT116−GFP CloneD2標的細胞の形質導入
HCT116−GFP Clone D2細胞を、24ウェルプレートに25000細胞/cm
2で播種し、37℃/5%CO
2で24時間インキュベートする。HCT116−GFP CloneD2細胞を、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、10pg p24/細胞の用量での、Cas9及びガイドD1の両方を送達するMS2RLP 12X 2X粒子によって形質導入する。細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)を、MS2RLP 12X 2X粒子の場合には6μMの濃度で使用する。形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。形質導入後D14で、細胞を回収し、GFPを発現する細胞のパーセンテージをサイトメトリー(Macs Quant VYB、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0347】
II.結果
本実験の目的は、Cas9をコードするRNA及びガイドRNAを同時に送達するMS2RLP粒子を生成するためのガイドRNAの発現を可能にするプロモーターの影響を評価することである。
【0348】
本実施例において、2つのプロモーター:H1及びU6、を試験する。
【0349】
最初に、
図XXIIに提示された結果は、非形質導入(NT)HCT116細胞が蛍光性でなく(<0.1%のGFP+細胞)、一方で、HCT116−GFP cloneD2標的細胞は99%超が蛍光性であることを示している。標的細胞が、完全なCRISPR/Cas9システムを送達するMS2(NC)−RLP 12X 2X粒子で形質導入される場合、細胞の第2の形質導入の14日後に、H1プロモーターを有するプラスミドから開始して生成された粒子の場合、46.2%の蛍光細胞数の減少が見られ、U6プロモーターを有するプラスミドから開始して生成された粒子の場合、81.9%の減少が見られる。したがって、81.9%程のGFP遺伝子の最も強いノックアウトが、2回の形質導入後のU6プロモーターを有するプラスミドから開始して生成されたMS2RLP 12X 2X粒子により観察される。従って、GFPを発現する細胞のパーセンテージは、U6プロモーターを有するプラスミドから開始して生成された粒子の場合に、H1プロモーターを有するプラスミドから開始して生成された粒子よりも、ほぼ2倍低い。結論として、MS2RLP粒子にカプシド形成されることになるガイドRNAを生成するために使用されるプロモーターの性質は、CRISPR/Cas9システムを送達するMS2RLP粒子の有効性に影響を及ぼす。
【0350】
実施例9:PD1遺伝子のノックアウトのために、活性化初代Tリンパ球にCRISPR/Cas9システム(ガイドRNA + Cas9をコードするRNA)を送達する際のMS2RLP粒子の有効性
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
1.1 本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
実施例1に記載の発現プラスミド(その発現カセットを
図I、pcDNA−EF1−Cas9−MS2 12Xに示す)及び発現カセットが
図XXIIIに示された発現プラスミド、pcDNA−U6−Guide_antiPD1Chimeric−MS2 2Xを、初代Tリンパ球のゲノム中に組み込まれたPD1遺伝子の配列を標的化する、U6プロモーターの制御下でCas9をコードするRNA及びガイドRNAの両方を、同じMS2RLP 12X−2X粒子において、同時カプシド形成するために使用した。
【0351】
・カプシド形成プラスミド:
レンチウイルス粒子を、第2のZn fingerドメインの代わりに、ヌクレオカプシドタンパク質内にMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。MS2RLP 12X−2X粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図IIaに示された戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによりMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質によって置換され、p8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドを生成する。これは、
図IIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、MS2RLPの機能を変更することなく、例えば逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような、特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異していてもよい。
【0352】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0353】
これらプラスミドは、本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−Cas9 12X−GuideantiPD1Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0354】
1.2 本発明に係る対照MS2−(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。より具体的には、これらプラスミドは、実施例1の段落1.1に記載されたように、MS2RLP−Cas9 12Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0355】
1.3 対照ILVCas9+guideantiPD1組み込みレンチウイルスベクターを生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、
図IVに記載の発現カセット及び
図XXXIIに記載の発現カセットを有する。これらプラスミドは、他のエレメント、例えば天然配列WPRE(Woodchuck Hepatitis Virus Posttranscriptional Regulatory Element)又はcPPT/CTS配列を含み得る。ウイルスの病原性は、導入遺伝子によるレトロウイルス複製に必要とされるウイルスゲノムの領域の置換によって排除されている。第1のプラスミドについて、使用されるプロモーターはEF1プロモーターであるが、他のプロモーターが使用されてもよい。目的のプラスミド配列は、その野生型(WT)又はその突然変異型(N)の、Cas9タンパク質のRNAをコードするDNAである(
図IV)。
【0356】
第2のプラスミドについて、使用されるプロモーターはU6又はH1であるが、他のプロモーターが使用されてもよい。目的の配列は、抗PD1ガイドである(
図XXXII)。
【0357】
・カプシド形成プラスミド:
構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドが、組み込みレンチウイルスベクターの生産のために使用される(
図VI)。
【0358】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、MS2RLPレンチウイルス粒子を生産するために使用されるエンベローププラスミドと同一である(
図III)。
【0359】
2.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの生産
細胞に対するプラスミドのトランスフェクション後に、上清を採取し、粗生成物で使用するか、あるいは国際公開第2013/014537号の出願に記載された前述の方法P1又はP2に従って濃縮/精製して使用した。
【0360】
2.1 レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターの生産
5%のCO
2で湿潤雰囲気下、37℃で、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のウルトラグルタミン(PAA)で補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco、Paisley、UK)で培養した、HEK293Tプロデューサー細胞(ATCC、CRL−11268)を用いて10−スタックの細胞TACK(6360cm
2、Corning)で、生産を行う。
【0361】
MS2(NC)−RLP 12X 2X粒子を、以下の4つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−上述の2つの発現プラスミド、pcDNA−U6−Guide_antiPD1Chimeric−MS2 2Xプラスミド(その発現カセットを
図XXIIIに示す)が、pcDNA−EF1−Cas9−MS2 12Xプラスミド(その発現カセットを
図Iに示す)の二倍の量で使用される;
−p8.74ΔZF−MS2−Coat;
−エンベロープVSV−Gを有するpENV。
【0362】
MS2(NC)−RLP 12X 2X粒子は、実施例4に記載の方法によって生産される。
【0363】
より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−Cas9 12X−GuideantiPD1Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0364】
リン酸カルシウムによる標準的なトランスフェクションから24時間後に、培養上清を新鮮な未補充DMEM培地で交換する。プロデューサー細胞を、37℃/5%CO
2でインキュベートする。培地の交換後に、上清を4回採取する(トランスフェクション後32時間、48時間、56時間及び72時間)。各回収物を、5分間の3000gでの遠心分離によって清澄化した後に、0.45μmのフィルター(Stericup(登録商標)、Millipore)で精密ろ過する。次に全ての回収物をプールして、粗上清を構成する。
【0365】
対照MS2(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子は、実施例4に記載したように生産される。
【0366】
CRISPR/Cas9システム(ガイドRNA+Cas9)を発現する対照レンチウイルスベクターILVの生産、精製及び滴定を、方法P2に従って実施例1と同じ条件下で行う。
【0367】
2.2 レンチウイルス粒子の濃縮及び精製
粒子を、実施例1に記載の方法P2に従って濃縮及び精製する。
【0368】
3.ELISA p24アッセイによる物理的粒子の滴定
p24カプシドタンパク質は、HIV-1 p24 ELISA kit(Perkin Elmer)を用いて、その推奨に従って、ウイルス上清で直接検出される。捕捉されたp24タンパク質は、ビオチン化ポリクローナル抗体と複合体化され、次に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたストレプトアビジンによって検出される。得られた複合体は、捕捉されたp24タンパク質の量に正比例する黄色の着色を生じるオルトフェニレンジアミン−HCl基質(OPD)とのインキュベーション後に分光光度法によって検出される。各ウェルの吸光度を、Synergy H1 Hybrid(登録商標)プレートリーダー(Biotek)で定量し、p24タンパク質の標準範囲の吸光度に対して較正する。p24タンパク質の1pgが10
4個の物理的粒子に対応することを知ることによって、1ml当たりの物理的粒子として表されたウイルス力価を、得られたp24タンパク質の濃度から計算する。
【0369】
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載のように滴定する。
【0370】
4.標的細胞の調製及び本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子による形質導入
この例は、Cas9をコードするRNA及びPD1遺伝子の配列を標的化するガイドRNAの両方を、同じMS2RLP 12X 2X粒子において、同時カプシド形成し、次いでこれら異なるRNAを、MS2(NC)−RLP 12X 2X粒子を介して標的細胞である活性化初代Tリンパ球に転移させることが可能であることを示すことを目的とする。このRNAの転移の最後に、CRISPR/Cas9システムは、機能的であり、かつCRISPR/Cas9システムの2つの構成要素の転移のための1つの同じツールを用いて、標的PD1遺伝子のノックアウトを可能にする二本鎖DNAの切断を生じるべきである。
【0371】
4.1 標的細胞の活性化初代Tリンパ球の調製
標的細胞であるTリンパ球を、末梢血試料から調製する。末梢血からの単核細胞を、Ficoll勾配遠心分離によって単離し、次いで、T75フラスコ中で37℃/5%CO
2で2時間接着させる。懸濁液中の細胞を回収し、Tリンパ球を、磁性ビーズ(Pan T細胞単離キット、Miltenyi Biotec)を用いたネガティブセレクションによって精製する。精製したTリンパ球を、(Dynabeads(登録商標) Human T-Activator CD3/CD28、ThermoFisher)37℃/5%CO
2で24時間活性化する。
【0372】
4.2 標的細胞である活性化初代Tリンパ球の形質導入
標的細胞である活性化初代Tリンパ球を、1000000細胞/mLで96−ウェルプレートに播種し、そして、Cas9及びガイドの両方を送達するMS2RLP 12X 2X粒子によって、又はCas9のみを送達するMS2RLP 12X粒子(陰性対照)によって、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、異なる用量(0.1;0.5;1又は5pg p24/細胞)で、あるいは、Cas9及びガイドを送達するILV粒子(陽性対照)によって、異なる用量(MOI 5、10、25、50)で、形質導入する。細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)を、MS2RLP 12X 2X及びMS2RLP 12X粒子の場合には6μMの濃度で使用する。
【0373】
形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。48時間後、第2の形質導入を、第1の形質導入と同じ条件下で行う。第2の形質導入から4日後に、細胞を回収し、PD1を発現する細胞のパーセンテージを、抗PD1抗体(Miltenyi Biotec)による細胞の免疫標識後にサイトメトリー(Macs Quant VYB、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0374】
細胞のFACS分析の直前にViobility(商標)Fixable Dyes(Miltenyi Biotec)を添加することによって生存率を分析し、リンパ球の表現型決定を、抗TCR及び抗CD25抗体(Miltenyi Biotec)による細胞の免疫標識によって行う。
【0375】
II.結果
本実験の目的は、初代細胞の内因性遺伝子、例えば活性化初代Tリンパ球におけるPD1遺伝子のノックアウトのために、MS2RLP粒子によって送達されるCRISPR/Cas9システムの有効性を評価することである(
図XXIV)。
【0376】
PD1の発現の消失は免疫システムによる腫瘍細胞の認識を可能にするので、PD1遺伝子は腫瘍の状況で特に注目を集めている。
【0377】
細胞が、完全なCRISPR/Cas9システムを送達するMS2(NC)−RLP 12X 2X粒子により形質導入される場合、第2の形質導入から4日後に、第1の用量(0.1pg p24/細胞)の場合31%、第2の用量(0.5pg p24/細胞)の場合60%、第3の用量(1pg p24/細胞)の場合75%、及び第4の用量(5pg p24/細胞)の場合86%の、タンパク質PD1を発現する細胞数の減少が見られる。並行して、Cas9のみを発現するMS2RLPを、PD1遺伝子のノックアウトの陰性対照として使用する。結果は、CRISPR/Cas9システムを送達するMS2RLP 12X 2X粒子のどの用量が使用されても、PD1タンパク質を発現する細胞のパーセンテージが安定であることを示している。
【0378】
図XXVは、MS2RLP 12X 2X粒子を用いてCRISPR/Cas9システムを送達するために使用される条件と同等の条件下での、PD1遺伝子のノックアウトのためにCRISPR/Cas9システムを送達する際のILV粒子の有効性を示す。使用された最も高いMOIでは(MOI 50)、42%の細胞がPD1遺伝子を発現するが、最高用量のMS2RLP(5pg p24/細胞)では、PD1遺伝子を発現する細胞は14%しか残らない。従って、MS2RLP粒子は、CRISPR/Cas9システムを送達し、内因性標的の効果的なノックアウトを可能にする最良のツールである。
【0379】
図XXIV及びXXVは、初代細胞であり、従って任意の操作に敏感かつ繊細である活性化ヒトTリンパ球の形質導入から得られた。
図XXVIは、CRISPR/Cas9システムを送達するMS2RLP 12X−2X粒子による第1及び第2の形質導入後の、Tリンパ球の生存率の測定を示す。
図XXVIは、活性化Tリンパ球の生存率に影響を与えることなく効果的なPD1遺伝子のノックアウト(
図XXIV、75%のPD1遺伝子のノックアウト)を得るための、1pg p24/細胞に対応するCRISPR/Cas9システムを送達するMS2RLP 12X 2X粒子の最適用量の決定を可能にする。
【0380】
図XXVIIは、TCR及びCD25活性化マーカーの発現を測定することによる、CRISPR/Cas9システムを送達するMS2RLP 12X−2X粒子による第2の形質導入後の、Tリンパ球の表現型の分析を示す。結果は、どの用量のMS2RLP粒子が使用されても、TCR及びCD25を発現する細胞のパーセンテージが安定であることを示している。
【0381】
結論として、
図XXIV、XXVI及びXXVIIは、MS2RLP粒子が、形質導入されたTリンパ球の生存率及び表現型を保存しながらCRISPR/Cas9システム(ガイドRNA+Cas9をコードするRNA)を送達するための最良のツールであることを示している。
【0382】
実施例10:CXCR4遺伝子のノックアウトのために、活性化初代Tリンパ球にCRISPR/Cas9システム(ガイドRNA+Cas9をコードするRNA)を送達する際のMS2RLP粒子の有効性
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
1.1 本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
実施例1(その発現カセットを
図I、pcDNA−EF1−Cas9−MS2 12Xに示す)及び
図XXVIII、pcDNA−U6−Guide_antiCXCR4Chimeric−MS2 2X、に記載の発現プラスミドを、初代Tリンパ球のゲノム中に組み込まれたCXCR4遺伝子の配列を標的化する、U6プロモーターの制御下で、Cas9をコードするRNA及びガイドRNAの両方を、同じMS2RLP 12X 2X粒子において、同時カプシド形成するために使用した。
【0383】
・カプシド形成プラスミド:
レンチウイルス粒子を、第2のZn fingerドメインの代わりに、ヌクレオカプシドタンパク質内にMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。MS2RLP 12X−2X粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図IIaに示された戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによりMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質によって置換され、p8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドを生成する。これは、
図IIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、MS2RLPの機能を変更することなく、例えば逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような、特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異していてもよい。
【0384】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0385】
これらプラスミドは、本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−Cas9 12X−GuideantiCXCR4Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0386】
1.2 本発明に係る対照MS2−(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。より具体的には、これらプラスミドは、実施例1の段落1.1に記載されたように、MS2RLP−Cas9 12Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0387】
2.レンチウイルス粒子のバッチの生産
プロデューサー細胞に対するプラスミドのトランスフェクション後に、上清を採取し、粗生成物で使用するか、あるいは、国際公開第2013/014537号の出願に記載された前述の方法P1又はP2の1つに従って濃縮/精製して使用した。
【0388】
2.1 レンチウイルス粒子の生産
5%のCO
2で湿潤雰囲気下、37℃で、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のウルトラグルタミン(PAA)で補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco、Paisley、UK)で培養した、HEK293Tプロデューサー細胞(ATCC、CRL−11268)を用いて10−スタックの細胞TACK(6360cm
2、Corning)で、生産を行う。
【0389】
MS2(NC)−RLP 12X−2X粒子を、以下の4つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−上述の2つの発現プラスミド、pcDNA−U6−Guide_antiCXCR4Chimeric−MS2 2Xプラスミド(その発現カセットを
図XXVIIIに示す)が、pcDNA−EF1−Cas9−MS2 12Xプラスミド(その発現カセットを
図Iに示す)の二倍の量で使用される;
−p8.74ΔZF−MS2−Coat;
−エンベロープVSV−Gを有するpENV。
【0390】
使用されるプラスミドの割合は、実施例4における割合と同一である。
【0391】
より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−Cas9 12X−GuideantiCXCR4Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0392】
リン酸カルシウムによる標準的なトランスフェクションから24時間後に、培養上清を新鮮な未補充DMEM培地で交換する。プロデューサー細胞を、37℃/5%CO
2でインキュベートする。培地の交換後に、上清を4回採取する(トランスフェクション後32時間、48時間、56時間及び72時間)。各回収物を、5分間の3000gでの遠心分離によって清澄化した後に、0.45μmのフィルター(Stericup(登録商標)、Millipore)で精密ろ過する。次に全ての回収物をプールして、粗上清を構成する。
【0393】
対照MS2−(NC)RLP 12Xレンチウイルス粒子は、実施例1に記載したように生産される。
【0394】
2.2 レンチウイルス粒子の濃縮及び精製
粒子を、実施例1に記載の方法P2に従って濃縮及び精製する。
【0395】
3.ELISA p24アッセイによる物理的粒子の滴定
p24カプシドタンパク質は、HIV−1 p24 ELISA kit(Perkin Elmer)を用いて、その推奨に従って、ウイルス上清で直接検出される。捕捉されたp24タンパク質は、ビオチン化ポリクローナル抗体と複合体化され、次に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたストレプトアビジンによって検出される。得られた複合体は、捕捉されたp24タンパク質の量に正比例する黄色の着色を生じるオルトフェニレンジアミン−HCl基質(OPD)とのインキュベーション後に分光光度法によって検出される。各ウェルの吸光度を、Synergy H1 Hybrid(登録商標)プレートリーダー(Biotek)で定量し、p24タンパク質の標準範囲の吸光度に対して較正する。p24タンパク質の1pgが10
4個の物理的粒子に対応することを知ることによって、1ml当たりの物理的粒子として表されたウイルス力価を、得られたp24タンパク質の濃度から計算する。
【0396】
4.標的細胞の調製及び本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子による形質導入
この例は、Cas9をコードするRNA及びCXCR4遺伝子の配列を標的化するガイドRNAの両方を、同じMS2RLP 12X 2X粒子において、同時カプシド形成し、次いでこれら異なるRNAを、MS2(NC)−RLP 12X 2X粒子を介して標的細胞である活性化初代Tリンパ球に転移させることが可能であることを示すことを目的とする。このRNAの転移の最後に、CRISPR/Cas9システムは、機能的であり、かつCRISPR/Cas9システムの2つの構成要素の転移のための1つの同じツールを用いて、標的CXCR4遺伝子のノックアウトを可能にする二本鎖DNAの切断を生じるべきである。
【0397】
4.1 標的細胞の活性化初代Tリンパ球の調製
Tリンパ球標的細胞を末梢血試料から調製する。末梢血の単核細胞を、Ficoll勾配遠心分離によって単離し、次いで、T75フラスコ中で37℃/5%CO
2で2時間接着させる。懸濁液中の細胞を回収し、Tリンパ球を、磁性ビーズ(Pan T細胞単離キット、Miltenyi Biotec)を用いたネガティブセレクションによって精製する。精製したTリンパ球を、(Dynabeads(登録商標) Human T-Activator CD3/CD28、ThermoFisher)37℃/5%CO
2で24時間活性化する。
【0398】
4.2 標的細胞である活性化初代Tリンパ球の形質導入
標的細胞である活性化初代Tリンパ球を、1000000細胞/mLで96−ウェルプレートに播種し、そして、異なる用量(0.1;0.5;1又は5pg p24/細胞)で、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、Cas9及びガイドの両方を送達するMS2RLP 12X 2X粒子によって、あるいはCas9のみを送達するMS2RLP 12X粒子(陰性対照)によって、形質導入する。細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)、を、MS2RLP 12X 2X及びMS2RLP 12X粒子の場合には6μMの濃度で使用する。
【0399】
形質導入上清を4時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。48時間後、第2の形質導入を、第1の形質導入と同じ条件下で行う。第2の形質導入から4日後に、細胞を回収し、CXCR4を発現する細胞のパーセンテージを、抗CXCR4抗体(Miltenyi Biotec)による細胞の免疫標識後に、サイトメトリー(Macs Quant VYB、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0400】
細胞のFACS分析の直後にViobility(商標)Fixable Dyes(Miltenyi Biotec)を添加することによって生存率を分析し、リンパ球の表現型決定を、抗TCR及び抗CD25抗体(Miltenyi Biotec)による免疫標識によって行う。
【0401】
II.結果
本実験の目的は、初代細胞の内因性遺伝子、例えば活性化初代Tリンパ球におけるCXCR4遺伝子のノックアウトのために、MS2RLP粒子によって送達されるCRISPR/Cas9システムの有効性を評価することである(
図XXIX)。
【0402】
CD4+Tリンパ球におけるその発現の消失はHIV−1ウイルスによる感染の阻止を可能にするため、CXCR4遺伝子は興味深い標的である。
【0403】
細胞が、完全なCRISPR/Cas9システムを送達するMS2(NC)−RLP 12X 2X粒子により形質導入される場合、第2の形質導入から4日後に、第1の用量(0.1pg p24/細胞)の場合92%、第2の用量(0.5pg p24/細胞)の場合97%、第3の用量(1pg p24/細胞)の場合98%、及び第4の用量(5pg p24/細胞)の場合99%の、CXCR4タンパク質を発現する細胞数の減少が見られる。
【0404】
並行して、Cas9のみを発現するMS2RLPを、CXCR4遺伝子ノックアウトの陰性対照として使用する。結果は、Cas9タンパク質のみを送達するMS2RLP 12X粒子のどの用量が使用されても、CXCR4タンパク質を発現する細胞のパーセンテージが安定であることを示している。
【0405】
図XXX及びXXXIは、初代細胞であり、従って任意の操作に敏感かつ繊細である活性化ヒトTリンパ球の形質導入から得られた。
図XXXは、CRISPR/Cas9システムを送達するMS2RLP 12X−2X粒子による第1及び第2の形質導入後の、Tリンパ球の生存率の測定を示す。Tリンパ球の生存率は、どの用量が使用されてもMS2RLP 12X 2X粒子での形質導入(複数)によって変更されないことが観察される。
【0406】
CRISPR/Cas9システムを送達するMS2RLP 12X 2X粒子の最適用量は、5pg p24/細胞に相当し、活性化Tリンパ球の生存率に影響を及ぼすことなく、CXCR4遺伝子の効果的なノックアウトを得ることを可能にする(
図XXIX、CXCR4遺伝子の99%のノックアウト)。
【0407】
図XXXIは、TCR及びCD25活性化マーカーの発現を測定することによる、CXCR4遺伝子のノックアウトのためのCRISPR/Cas9システムを送達するMS2RLP 12X 2X粒子による第2の形質導入後の、Tリンパ球の表現型の分析を示す。結果は、MS2RLP粒子のどの用量が使用されても、TCR及びCD25を発現する細胞のパーセンテージが安定であることを示している。
【0408】
結論として、
図XXIX、XXX及びXXXIは、MS2RLP粒子が、形質導入されたTリンパ球の生存率及び表現型を保存しながらCRISPR/Cas9システム(ガイドRNA+Cas9をコードするRNA)を送達するための最良のツールであることを示している。
【0409】
実施例11:HCT116−GFP細胞におけるCRISPR/Cas9システム(ガイドRNA+Cas9をコードするRNA)を送達するMS2RLP粒子の用量効果
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
1.1 本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例8と同一の方法によって調製される。より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−Cas9 12X −GuideD1Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0410】
1.2 HCT116−GFP Clone D2標的細胞の生成用のILV−GFP組み込みレンチウイルスベクターを生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。
【0411】
2.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの生産
プロデューサー細胞に対するプラスミドのトランスフェクション後に、上清を採取し、粗生成物で使用するか、あるいは、国際公開第2013/014537号の出願に記載された前述の方法P1又はP2の1つに従って濃縮/精製して使用した。
【0412】
2.1 レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターの生産
MS2RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子は、実施例4に記載の方法により生産される。
【0413】
ILV−GFPレンチウイルスベクターは、実施例1に記載したように生産される。
【0414】
2.2 レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターの濃縮及び精製
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載の方法P1に従って濃縮及び精製する。
【0415】
3.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの滴定
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載の方法によって滴定する。
【0416】
4.標的細胞の生成及び本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子による形質導入
本実施例の目的は、標的細胞においてCRISPR Cas9システムを送達するMS2RLP 12X 2X粒子が、ゲノム編集の有効性に対して用量効果を有することを示すことである。このRNAの転移の最後に、CRISPR/Cas9システムは、機能的であり、かつ、CRISPR/Cas9システムの2つの構成要素の転移のための1つの同じツールを用いて、標的遺伝子のノックアウトを可能にする二本鎖DNAの切断を生じ、従ってGFP+細胞をGFP−細胞へと変換すべきである。
【0417】
4.1 HCT116−GFP cloneD2標的細胞
このクローンは実施例1と同一の方法によって調製される。
【0418】
4.2 本発明に係るMS2(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子によるHCT116−GFP CloneD2標的細胞の形質導入
HCT116−GFP CloneD2標的細胞を、24ウェルプレートに25000細胞/cm
2で播種し、37℃/5%CO
2で24時間インキュベートする。HCT116−GFP CloneD2標的細胞を、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、異なる用量(0.5;1;5又は10pg p24/細胞)で、Cas9及びキメラガイドD1の両方を送達するMS2RLP−Cas9 12X−GuideD1Chimeric 2X粒子によって形質導入する。細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)を、MS2RLP 12X 2X粒子の場合には6μMの濃度で使用する。形質導入上清を5時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。第1の形質導入の6日後に、第2の形質導入を同じ条件下で行った(
図XXXIII)。最後の形質導入から7日後に、細胞を回収し、GFPを発現する細胞のパーセンテージをサイトメトリー(Macs Quant VYB、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0419】
II.結果
本実験の目的は、ゲノム編集に対する用量効果を誘導する、本発明に係るMS2RLP 12X 2X粒子の能力を研究することであり、これは、様々な濃度でCas9をコードするRNA及びガイドRNAを同時に転移させ、第1の形質導入(
図XXXIII、T1陽性細胞の%)及び第2の形質導入(
図XXXIII、T2陽性細胞の%)でのHCT116−GFP CloneD2のものにおけるGFPの消失を測定することによって行われる。
【0420】
最初に、
図XXXIIIに提示された結果は、HCT116−GFP CloneD2標的細胞は100%蛍光性であるが、非形質導入(NT)HCT116細胞は蛍光性でないことを示している。細胞が、完全なCRISPR/Cas9システムを送達するMS2RLP 12X 2X粒子で形質導入される場合、細胞の第2の形質導入から7日後(
図XXXIII、T2陽性細胞の%)、用量効果に従った蛍光細胞数の減少が見られる。pg p24/細胞のどの用量(0.5、1、5又は10)であっても、第1の形質導入後よりも第2の形質導入後にGFPのより強い消失が観察される。
【0421】
第2の形質導入後に、0.5pg p24/細胞の用量について33%程のGFP遺伝子ノックアウト、1pg p24/細胞について39%程のGFP遺伝子のノックアウト、5pg p24/細胞について58%程のGFP遺伝子のノックアウト、及び最終的に10pg p24/細胞で65%程のGFP遺伝子のノックアウトが見られる。従って、第2の形質導入は、GFPのノックアウトの有効性を、第1の形質導入に対して増加させる。MS2RLP 12X 2X粒子の用量が高くなるほど、GFPのノックアウトが大きくなる。
【0422】
実施例12:HCT116−GFP細胞におけるCRISPR/Cas9システム(ガイドRNA+Cas9をコードするRNA)を送達するPP7RLP粒子の有効性
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
1.1 本発明に係るPP7(NC)−RLP 2Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
本実施例では、PP7(NC)−RLP 2X粒子は、PP7ステム−ループモチーフの2つの異なるシリーズ(第1シリーズのモチーフ:配列番号2に続いて配列番号4、及び第2シリーズのモチーフ:配列番号5に続いて配列番号6)を含むため、PP7(NC)−RLP 2X 2Xと呼ばれることになる。
【0423】
・目的の配列のための発現プラスミド:
第1の発現プラスミドは、イントロン配列若しくはRNA安定化配列を含むか又は含まない
図XXXIVに記載された発現カセットを有する(pcDNA−EF1−Cas9−PP7 2X)。レンチウイルス粒子内にmRNAを輸送するために、PP7 RNAのステム−ループモチーフの2回の反復(ctagaaaggagcagacgatatggcgtcgctccctgcag 配列番号2及びctagaaaccagcagagcatatgggctcgctggctgcag 配列番号4)を、Cas9酵素の配列の下流の発現カセットに挿入した(
図XXXIV)。使用されたプロモーターはEF1プロモーターであるが(
図XXXIV)、他のプロモーターが使用されてもよい。目的のプラスミド配列は、その野生型(WT)又はその突然変異型(N)における、Cas9タンパク質のRNAをコードするDNAである(
図XXXIV)。
【0424】
第2の発現プラスミドは、イントロン配列若しくはRNA安定化配列を含むか又は含まない
図XXXVに記載された発現カセットを有する(pcDNA−U6−GuideD1Chimeric−PP7 2X)。レンチウイルス粒子内にガイドRNAを輸送するために、PP7 RNAのステム−ループモチーフの2回の反復(ggagcagacgatatggcgtcgctcc 配列番号5及びccagcagagcatatgggctcgctgg 配列番号6)を、ガイドの足場の部分における発現カセットに挿入した(キメラガイド、
図XXXV)。使用されたプロモーターはU6であるが、他のプロモーターが使用されてもよい、例えばプロモーターH1。RNA pol III依存型のプロモーター、例えばH1又はU6の使用は、転写末終結シグナル(Term)の存在を必要とする。目的の配列は、GFPの配列を標的化する非コーディングRNAである(sgRNA=ガイドRNA)。
【0425】
これら発現プラスミドは、標的細胞(HCT116−GFP CloneD2)のゲノム内に組み込まれたCas9をコードするRNA及びGFPの配列を標的化するガイドRNAの両方を、同じPP7RLP 2X粒子において、同時カプシドするために使用された。
【0426】
・カプシド形成プラスミド:
レンチウイルス粒子を、ヌクレオカプシドタンパク質内に、第2のZn fingerドメインの代わりに、バクテリオファージPP7の「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。PP7RLP 2X粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図XXXVIaに示された戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによってPP7バクテリオファージの「コート」タンパク質により置換されて、p8.74ΔZF−PP7−Coatプラスミドを生成する。これは、
図XXXVIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、PP7RLP 2X 2Xの機能を変更することなく、例えば逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異されてもよい。
【0427】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0428】
より具体的には、これらプラスミドは、PP7RLP Cas9 2X−GuideD1Chimeric 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0429】
1.2 HCT116−GFP Clone D2標的細胞の生成用のILV−GFP組み込みレンチウイルスベクターを生産するためのプラスミド
これらプラスミドは、実施例1と同一の方法によって調製される。
【0430】
2.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの生産
プロデューサー細胞に対するプラスミドのトランスフェクション後に、上清を採取し、粗生成物で使用するか、あるいは、国際公開第2013/014537号の出願に記載された前述の方法P1又はP2の1つに従って濃縮/精製して使用した。
【0431】
2.1 レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターの生産
5%のCO
2で湿潤雰囲気下、37℃で、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のウルトラグルタミン(PAA)で補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco、Paisley、UK)で培養した、HEK293Tプロデューサー細胞(ATCC、CRL−11268)を用いて10−スタックの細胞TACK(6360cm
2、Corning)で、生産を行う。
【0432】
PP7(NC)−RLP 2X 2X粒子、好ましくはPP7RLP−Cas9 2X−GuideD1Chimeric 2Xを、以下の4つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−上述の2つの発現プラスミド、pcDNA−U6−GuideD1Chimeric−PP7 2Xプラスミド(その発現カセットを
図XXXVに示す)が、pcDNA−EF1−Cas9−PP7 2Xプラスミド(その発現カセットを
図XXXIVに示す)の二倍の量で使用される;
−p8.74ΔZF−PP7−Coat(その発現カセットを
図XXXVIbに示す);
−エンベロープVSV−Gを有するpENV(その発現カセットを
図IIIに示す)。
【0433】
PP7(NC)−RLP 2X 2X粒子は、実施例4に記載の方法により生産される。リン酸カルシウムによる標準的なトランスフェクションから24時間後に、培養上清を新鮮な未補充DMEM培地で交換する。プロデューサー細胞を、37℃/5%CO
2でインキュベートする。培地の交換後に、上清を4回採取する(トランスフェクション後32時間、48時間、56時間及び72時間)。各回収物を、5分間の3000gでの遠心分離によって清澄化した後に、0.45μmのフィルター(Stericup(登録商標)、Millipore)で精密ろ過する。次に全ての回収物をプールして、粗上清を構成する。
【0434】
ILV−GFPレンチウイルスベクターは、実施例1に記載したように生産される。
【0435】
2.2 レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターの濃縮及び精製
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載の方法P1に従って濃縮及び精製する。
【0436】
3.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの滴定
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載のように滴定する。
【0437】
4.標的細胞の生成及び本発明に係るPP7(NC)−RLP 2X 2Xレンチウイルス粒子による形質導入
本実施例の目的は、標的細胞へとCRISPR Cas9システムを送達するPP7RLP粒子が、ゲノム編集の有効性に対する用量効果を有することを示すことである。このRNAの転移の最後に、CRISPR/Cas9システムは、機能的であり、かつ、CRISPR/Cas9システムの2つの構成要素の転移のための1つの同じツールを用いて、標的遺伝子のノックアウトを可能にする二本鎖DNAの切断を生じ、従ってGFP+細胞をGFP−細胞へと変換すべきである。
【0438】
4.1 HCT116−GFP cloneD2標的細胞
このクローンは実施例1と同一の方法によって調製される。
【0439】
4.2 本発明に係るPP7(NC)−RLP 2X 2Xレンチウイルス粒子によるHCT116−GFP CloneD2標的細胞の形質導入
HCT116−GFP CloneD2標的細胞を、24ウェルプレートに25000細胞/cm
2で播種し、37℃/5%CO
2で24時間インキュベートする。HCT116−GFP CloneD2標的細胞を、8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、異なる用量で(0.5;1;5又は10pg p24/細胞)、Cas9及びガイドD1キメラの両方を送達するPP7RLP 2X 2X粒子によって形質導入する。細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)、を、PP7RLP 2X 2X粒子の場合には6μMの濃度で使用する。形質導入上清を17時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。第1の形質導入の6日後に第2の形質導入を同じ条件下で行った(
図XXXVII)。最後の形質導入から7日後に、標的細胞を回収し、GFPを発現する細胞のパーセンテージをサイトメトリー(Macs Quant VYB、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0440】
II.結果
本実験の目的は、ゲノム編集に対する用量効果を誘導するPP7RLP粒子の能力を研究することであり、これは、様々な濃度でCas9をコードするRNA及びタンパク質GFPをコードする配列を標的化するガイドRNAを同時に転移させることによって、そして第1の形質導入(
図XXXVII、T1陽性細胞の%)及び第2の形質導入(
図XXXVII、T2陽性細胞の%)でのサイトメトリーによってHCT116−GFP CloneD2におけるGFPの消失を測定することによって行われる。
【0441】
最初に、
図XXXVIIに提示された結果は、非形質導入(NT)HCT116細胞は蛍光性でないが、HCT116−GFP cloneD2標的細胞が100%蛍光性であることを示している。HCT116−GFP cloneD2細胞が、完全なCRISPR/Cas9システムを送達するPP7RLP 2X粒子で形質導入される場合、標的細胞の第1及び第2の形質導入から7日後に(
図XXXVII、T2陽性細胞の%)、用量効果に従った蛍光細胞数の減少が見られる。MS2RLP粒子の場合と同様に、どのpg p24/細胞数(0.5、1、5又は10)であっても、第2の形質導入後に、第1の形質導入後よりもGFPの強い消失が観察される。
【0442】
第2の形質導入後に、0.5pg p24/細胞の用量について33%程のGFP遺伝子ノックアウト、1pg p24/細胞について54%程の、5pg p24/細胞について85%程の、最後に10pg p24/細胞で75%程のGFP遺伝子ノックアウトが見られる。従って、第2の形質導入は、GFPのノックアウトの有効性を、第1の形質導入に対して増加させる。PP7RLP粒子の用量が高くなるほど、GFPのノックアウトは大きくなり、5pg p24/細胞の用量で最大の消失有効性に達する。また、PP7RLP粒子は、PP7RLP粒子の5pg p24/細胞及び10pg p24/細胞の用量間で、実施例4に記載された「オフターゲット効果」を有する。従って、使用される形質導入の用量及び数は、完全なCRISPR/Cas9システムを送達する際のPP7RLP粒子の有効性について考慮されるべき重要な因子である。
【0443】
PP7RLP粒子は、HCT116−GFP cloneD2標的細胞においてMS2RLP粒子よりも高いGFPのパーセンテージ消失を与える(それぞれ
図XXXVII及び
図XXII)。各粒子の最適用量で、PP7RLP粒子の5pg p24/細胞について85%程のGFP遺伝子のノックアウトに対し、MS2RLP粒子の10pg p24/細胞について82%であることが注目され、又はPP7RLP粒子よりも2倍多い用量である。PP7RLP粒子の有効性は、特に、いくつかの形質導入に感受性であり得る繊細な初代細胞において、CRISPR/Cas9 RNA転移を最適化することができる。結論として、これらPP7RLP粒子は、単一タイプの粒子の使用により、CRISPR/Cas9システムを同時送達するための最良のツールであることを明らかにする。
【0444】
実施例13:有効なMS2RLP−CRISPR/Cas9粒子(ガイドRNA+Cas9をコードするRNA)の最適化の観点からMS2RLP−ZsGreen1 12X粒子の生産のための野生型GAG−POL前駆体の影響
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
1.1 本発明に係るMS2RLP 12Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、イントロン配列若しくはRNA安定化配列を含むか又は含まない発現カセット(
図XXXVIIIに記載)を有する。レンチウイルス粒子にRNAを輸送するために、MS2 RNAのステム−ループモチーフの12回の反復(ctagaaaacatgaggatcacccatgtctgcag、配列番号1)を、ZsGreenIタンパク質の配列の下流の発現カセットに挿入した。使用されたプロモーターはEF1プロモーターであるが、他のプロモーターが使用されてもよい。目的のプラスミド配列は、ZsGreenIタンパク質のRNAをコードするDNAである。
【0445】
・カプシド形成プラスミド:第1のカプシド形成プラスミドは、発現カセットが
図IIbに記載されているp8.74ΔZFプラスミドであり、これは、
図IIaに示された戦略に従って、かつ実施例1に記載されたように、ヌクレオカプシドタンパク質内に、第2のZn fingerドメインに代えて、MS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を含むように、p8.74カプシド形成プラスミドを改変することによって得られた。
【0446】
第2のカプシド形成プラスミドは、
図VIに示されたように野生型構造的及び機能的タンパク質(Gag、Pol)をコードする遺伝子を有するp8.74プラスミドである。
【0447】
・エンベローププラスミド(pENV):このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSVGであり得る(
図III)。
【0448】
より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−ZsGreenI12Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0449】
1.2 対照組み込みレンチウイルスベクターILV−ZsGreenIを生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、
図XXXXIに記載の発現カセットを有する。このプラスミドは他のエレメント、例えば天然配列WPRE(Woodchuck Hepatitis Virus Posttranscriptional Regulatory Element)又はcPPT/CTS配列を含んでもよい。ウイルスの病原性は、導入遺伝子によるレトロウイルス複製に必要とされるウイルスゲノムの領域の置換によって排除されている。使用されるプロモーターはEF1プロモーターであるが、他のプロモーターが使用されてもよい。目的のプラスミド配列は、ZsGreenIタンパク質のRNAをコードするDNAである。
【0450】
・カプシド形成プラスミド:
構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、組み込みレンチウイルスベクターの生産のために使用する(
図VI)。
【0451】
・エンベローププラスミド(pENV):
このプラスミドは、MS2RLPレンチウイルス粒子を生産するために使用されるエンベローププラスミドと同一である(
図III)。
【0452】
2.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの生産
2.1 レンチウイルス粒子の生産
5%のCO
2で湿潤雰囲気下、37℃で、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のウルトラグルタミン(PAA)で補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco、Paisley、UK)で培養した、HEK293Tプロデューサー細胞(ATCC、CRL−11268)を用いて10−スタックの細胞TACK(6360cm
2、Corning)で、生産を行う。
【0453】
MS2RLP 12X粒子を、以下の4つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−上述した発現プラスミド、発現カセットが
図XXXVIIIに示されている;
−p8.74ΔZF−MS2−Coat(その発現カセットを
図IIbに示す)及びp8.74プラスミド(その発現カセットを
図VIに示す)、2つのカプシド形成プラスミドの4つの異なる比を用いる、それぞれ[100%−0%];[90%−10%];[80%−20%]及び[50%−50%];
−エンベロープVSV−Gを有するpENV(その発現カセットを
図IIIに示す)。
【0454】
MS2RLP−ZsGreenI 12Xレンチウイルス粒子は、実施例1に記載したように、すなわち以下のプラスミドのそれぞれの割合で生産される:40%の発現プラスミド、30%のp8.74プラスミド(又はp8.74ΔZF)、30%のpENVプラスミド(比[100%−0%])。
【0455】
より具体的には、プラスミドのそれぞれの割合は以下の通りである:
−比[90%−10%]:40%の発現プラスミド、27%のp8.74ΔZFプラスミド、3%のp8.74プラスミド、30%のpENVプラスミド;
−比[80%−20%]:40%の発現プラスミド、24%のp8.74ΔZFプラスミド、6%のp8.74プラスミド、30%のpENVプラスミド;
−比[50%−50%]:40%の発現プラスミド、15%のp8.74ΔZFプラスミド、15%のp8.74プラスミド、30%のpENVプラスミド。
【0456】
完全なCRISPR/Cas9システムを転移させるためのMS2(NC)−RLP 12X 2X粒子の生産の場合、粒子は、実施例8に記載された方法によって生産される。より具体的には、プラスミドのそれぞれの割合は以下の通りである:33%のガイドをコードする発現プラスミド、17%のCas9をコードする発現プラスミド(ガイドをコードする発現プラスミドの量は、Cas9をコードする発現プラスミドの量に対して二倍である)、25%のp8.74ΔZFプラスミドにおいて、25%のpENVプラスミド(比[100%−0%])。
【0457】
より具体的には、プラスミドのそれぞれの割合は、以下の通りである:
−比[90%−10%]:40%の発現プラスミド、22.5%のp8.74ΔZFプラスミド、2.5%のp8.74プラスミド、30%のpENVプラスミド;
−比[80%−20%]:40%の発現プラスミド、20%のp8.74ΔZFプラスミド、5%のp8.74プラスミド、30%のpENVプラスミド
−比[50%−50%]:40%の発現プラスミド、12.5%のp8.74ΔZFプラスミド、12.5%のp8.74プラスミド、30%のpENVプラスミド。
より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−ZsGreenI 12Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0458】
EF1−ZsGreenI発現カセットを含む組み込みレンチウイルスベクターILV−ZsGreenIを、対照として生産する。
【0459】
ILV−ZsGreenIのバッチについて、トランスフェクション混合物は、以下の3つのプラスミドからなる:
−その発現カセットが
図XXXXに示されている発現プラスミド
−p8.74プラスミド(その発現カセットが
図VIに示されている)
−エンベロープVSV−Gを有するpENVプラスミド(その発現カセットが
図IIIに示されている)。
【0460】
リン酸カルシウムによる標準的なトランスフェクションから24時間後に、培養上清を新鮮な未補充DMEM培地で交換する。プロデューサー細胞を、37℃/5%CO
2でインキュベートする。培地の交換後に、上清を4回採取する(トランスフェクション後32時間、48時間、56時間及び72時間)。各回収物を、5分間の3000gでの遠心分離によって清澄化した後に、0.45μmのフィルター(Stericup(登録商標)、Millipore)で精密ろ過する。次に全ての回収物をプールして、粗上清を構成する。
【0461】
2.2 レンチウイルス粒子の濃縮及び精製
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載の方法P1に従って濃縮及び精製する。
【0462】
3.レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターのバッチの滴定
レンチウイルス粒子及びレンチウイルスベクターを、実施例1に記載のように滴定する。
【0463】
4.標的細胞の調製及び本発明に係るMS2RLP 12Xレンチウイルス粒子による形質導入
Jurkat標的細胞(ATCC TIB−152)を、96ウェルプレートに200000細胞/mLで播種し、4μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下で、2つの用量(2及び10pg p24/細胞)でのMS2RLP 12X粒子によって、又はMOI40での対照ILV−ZsGreenIレンチウイルスベクターによって形質導入し、次いで37℃/5%CO
2でインキュベートする。細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)、を、MS2RLP 12X粒子の場合には6μMの濃度で使用する。形質導入上清を5時間後に除去し、新鮮な補充培地と交換する。形質導入後24時間に、標的細胞を回収し、ZsGreenIを発現する細胞のパーセンテージを、サイトメトリー(Macs Quant VYB、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0464】
5.抗p24ウェスタンブロットによるMS2RLPウイルス粒子の成熟の分析
MS2RLP 12X粒子を生産するためのプラスミドによるプロデューサー細胞(HEK293T)のトランスフェクションから48時間後に、培養上清を回収し、次いで実施例1に記載された方法P1に従って濃縮し、実施例1に記載されたp24タンパク質の定量化によって滴定する。p24の15ngの当量を、p8.74ΔZF−MS2−Coat/p8.74プラスミドの比の各条件についてSDS−PAGE 4/12%変性ゲル上にロードし、次いでMOPS1X緩衝液中で200Vで1時間移動させる。ナイロンメンブレンに移した後、タンパク質を抗p24抗体[clone 39/5.4A、Abcam)でハイブリダイズする。ウェスタンブロットをPierce(商標)Fast Western Blot Kit、ECL Substrate(Pierce)を用いて展開する。バンドはオートラジオグラフィーフィルム上での化学発光によって可視化される。
【0465】
II.結果
この例は、MS2RLP 12X粒子の生産に関する概念の証明によって実証された、粒子の生産中のGAG前駆体の成熟を改善することによってMS2RLP粒子の機能性を改善することが可能であることを示すことを目的とする。p8.74ΔZF−MS2プラスミドは、ヌクレオカプシドタンパク質第2のジンクフィンガーの代わりにバクテリオファージコートタンパク質を含むGAG前駆体の発現を可能にする。このコートタンパク質は、以下の3つのタンパク質に切断される際に、GAG前駆体の成熟を妨害する可能性が高い:マトリックスタンパク質、カプシドタンパク質及びヌクレオカプシドタンパク質。これら3つのタンパク質は、ウイルス粒子の構造に不可欠である。
【0466】
MS2RLP−ZsGreen1 12X粒子の生産中のp8.74ΔZF−MS2−Coatカプシド形成プラスミドに加えてp8.74プラスミドによる野生型GAG前駆体の供給は、p8.74ΔZF−MS2プラスミドに起因して発現されるGAG前駆体の成熟の増強を可能にし、従ってMS2RLP粒子の機能性を増大し得る。
【0467】
本実験の目的は、MS2RLP 12X粒子のプロデューサー細胞において、それがコトランスフェクトされた場合のp8.74プラスミドの影響、同時にGAG前駆体の成熟を改善することを可能にするp8.74ΔZF−MS2−Coatカプシド形成プラスミドとしての影響を評価すること、並びに従って最終粒子を標的細胞の形質導入のためにより機能的にすることである。
【0468】
本実施例では、p8.74ΔZF−MS2−Coat/p8.74カプシド形成プラスミドの4つの比:100/0;90/10;80/20及び50/50、を試験する。ZsGreenIを発現する組み込みベクターILVを対照として使用する。細胞を、p24/ml:2pg p24/細胞(
図XXXXI)及び10pg p24/細胞(
図XXXXII)の2つの量で形質導入する。
【0469】
最初に、
図XXXXIに提示された結果は、形質導入されなかった細胞について、蛍光細胞のパーセンテージが0に非常に近く、一方でMS2RLP−ZsGreenI 12X粒子によって形質導入された細胞は、カプシド形成プラスミドのどの比が使用されても99%超が蛍光性であることを示している。ZsGreenIの蛍光強度は、 p8.74プラスミドの量の増加の関数として増加することに注意することが重要である。50%のp8.74ΔZF−MS2−Coatカプシド形成プラスミド及び50%のp8.74プラスミドで生産されたMS2RLP−ZsGreenI 12X粒子によって形質導入された細胞は、7.76の蛍光強度を有するが、p8.74ΔZF−MS2−Coatカプシド形成プラスミドのみで生産されたMS2RLP−ZsGreenI 12X粒子によって形質導入された細胞の蛍光強度は、3.5である。
【0470】
図XXXXIIは形質導入された細胞のパーセンテージに関して同じ結果を示す。蛍光強度に関して、p8.74プラスミドの量が増加すると、
図XXXXIに示されたように蛍光強度が増大する。50%のp8.74ΔZF−MS2−Coatカプシド形成プラスミド及び50%のp8.74プラスミドで生産されたMS2RLP−ZsGreenI 12X粒子によって形質導入された細胞は、60.67の蛍光強度を有するが、p8.74ΔZF−MS2−Coatカプシド形成プラスミドのみで生産されたMS2RLP−ZsGreenI 12X粒子によって形質導入された細胞の蛍光強度は、11.48である。
【0471】
これは、2pg及び10pg p24/細胞の用量で、粒子が50%のp8.74ΔZF−MS2−Coatカプシド形成プラスミド及び50%のp8.74プラスミドで生産される場合に、粒子がp8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドのみで生産されるよりも、得られた蛍光はそれぞれ2倍及び5倍大きいことを意味する。
【0472】
従って、MS2RLP粒子の生産におけるp8.74プラスミドの使用は、p8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドでのコトランスフェクションにおいて、MS2RLP粒子の最適化を目的とするMS2RLP−ZsGreenI 12X粒子の機能性の改善に関する利益をもたらした。
【0473】
図XXXXIIIは、粒子を含む生産上清においてp24タンパク質を検出することによって、MS2RLP−ZsGreenI 12X粒子の生化学的な成熟を示す。オートラジオグラフィーフィルムの2つの暴露時間、1分(
図XXXXIIIa)及び15秒(
図XXXXIIIb)での、抗p24ウェスタンブロットによるウイルス上清の分析に対応する。
【0474】
カプシド形成プラスミドとしてのp8.74プラスミドのみで生産されたHIVに由来する組み込みレンチウイルス粒子の場合、p24タンパク質は、以下の4つのレベルで検出可能である:
−p160タンパク質前駆体(GAG−POL)において
−p55タンパク質前駆体(GAG)において
−成熟タンパク質状態(p24)において
−成熟の過程における他の中間タンパク質前駆体(p160とp55との間、及びp55とp24との間)において。
【0475】
成熟が正常に起こる場合、p24タンパク質は、タンパク質前駆体の状態(p160、p55)又は中間タンパク質前駆体の状態よりも、成熟状態(p24)において多量に検出されるべきである。実際に、ウイルス粒子の成熟は、プロデューサー細胞による粒子の放出後に起こる。換言すれば、それらの産生中に、粒子はプロデューサー細胞の表面で出芽し、次いで未成熟粒子の状態で細胞から放出される。GAG−POL及びGAGタンパク質前駆体が最終タンパク質に成熟するのは、上清中への粒子の放出後のみである。
【0476】
カプシド形成プラスミドとしてのp8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドのみで生産されたHIVに由来するMS2RLP 12X粒子の場合、p24タンパク質は、以下の4つのレベルで検出可能である:
−p172タンパク質前駆体(GAGΔZF−MS2−Coat−POL)において
−p67タンパク質前駆体(GAGΔZF−MS2−Coat)において、
−成熟タンパク質状態(p24)において
−成熟の過程における他の中間タンパク質前駆体(p172とp67との間、及びp67とp24との間)において。
【0477】
このMS2RLP−ZsGreenI 12X粒子において、各前駆体は12kDaよりも重く、これはヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーに挿入されたMS2バクテリオファージのコートタンパク質のサイズに対応する。
【0478】
図XXXXIIIは、トラックILV上に、タンパク質前駆体の異なる形態、p160(GAG−POL)、p55(GAG)並びに完全な成熟p24タンパク質を示す。タンパク質前駆体形態と比較して、成熟p24タンパク質が大部分を占める。カプシド形成プラスミドとしてp8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドのみで生産されたMS2RLP−ZsGreenI 12X粒子に対応する、トラック100/0上には、前駆体/成熟p24タンパク質の割合がILVに対して増加し、MS2バクテリオファージのコートタンパク質の挿入がウイルス粒子の成熟を減少させることを示している。トラック90/10、80/20及び50/50上には、タンパク質前駆体p172及びp67の割合がタンパク質前駆体p160及びp55それぞれの利益に減少し、トラック50/50についての1つの同じ発現レベルに達する。粒子を生産するためのカプシド形成プラスミドとしてのp8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドへのp8.74プラスミドの添加は、成熟p24タンパク質の割合の増加をもたらす(
図XXXXIIIb、15秒の曝露)。この結果は、MS2RLP粒子におけるタンパク質前駆体の成熟を促進することが、粒子を生産するためのカプシド形成プラスミドとしてのp8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドに加えて、少なくとも10%のp8.74プラスミドを添加することが必要であることを示している。
【0479】
結論として、カプシド形成プラスミドとしてのp8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドに加えて少なくとも10%のp8.74プラスミドを用いるMS2RLP粒子の生産は、成熟タンパク質への前駆体の成熟を増大することを可能にするだけでなく、さらに、標的細胞の形質導入後の粒子の機能性を増大することも可能にする。
【0480】
実施例14:RLP粒子によるCRISPRシステムの転移の最適化の観点からの2つの異なるカプシド形成配列(MS2及びPP7)によって指向された非ウイルスRNAの採用(カプシド形成されたRNAのタイプの調節)
I.材料及び方法
1.プラスミド構築
1.1 本発明に係るMS2/PP7(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発1の現プラスミドは、イントロン配列若しくはRNA安定化配列を含むか又は含まない
図XXXVIIIに記載された発現カセットを有する。レンチウイルス粒子にRNAを輸送するために、MS2 RNAのステム−ループモチーフの12回の反復(ctagaaaacatgaggatcacccatgtctgcag、配列番号1)を、
図XXXVIIIに記載された、天然ホタルルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(ZsGreenI)、赤色蛍光タンパク質(mCherry)のような、レポータータンパク質をコードするRNA、あるいは、タンパク質、例えばその野生型(WT)又はその突然変異型(N)におけるCas9タンパク質などのヌクレアーゼをコードするcDNAの、下流の発現カセットに挿入した。使用されたプロモーターはCMV又はEF1プロモーター(
図XXXVIII)であり得るが、他のプロモーターが使用されてもよい。
【0481】
第2の発現プラスミドは、イントロン配列若しくはRNA安定化配列を含むか又は含まない
図XXXIXに記載された、発現カセットを有する。レンチウイルス粒子へとmRNAを輸送するために、PP7 RNAのステム−ループモチーフの2回の反復(ctagaaaggagcagacgatatggcgtcgctccctgcag 配列番号2及びctagaaaccagcagagcatatgggctcgctggctgcag 配列番号4)を、
図XXXIXに記載された、天然ホタルルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(ZsGreenI)、赤色蛍光タンパク質(mCherry)のような、レポータータンパク質をコードするRNA、あるいは、タンパク質、例えばその野生型(WT)又はその突然変異型(N)におけるCas9タンパク質などのヌクレアーゼをコードするcDNAの、下流の発現カセットに挿入した。使用されたプロモーターはCMV又はEF1プロモーター(
図XXXIX)であり得るが、他のプロモーターが使用されてもよい。
【0482】
・カプシド形成プラスミド:
レンチウイルス粒子を、ヌクレオカプシドタンパク質内に、第2のZn fingerドメインの代わりに、MS2又はPP7バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。MS2RLP 12X粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図IIaに示された戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによりMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質によって置換され、p8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドを生成する。これは、
図IIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、MS2RLP 12Xの機能を変更することなく、例えば逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異されてもよい。
【0483】
PP7RLP 2X粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図XXXVIaに示された戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによってPP7バクテリオファージの「コート」タンパク質により置換されて、p8.74ΔZF−PP7−Coatプラスミドを生成する。これは、
図XXXVIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、PP7RLP 2Xの機能を変更することなく、例えば逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異されてもよい。
【0484】
・エンベローププラスミド(pENV):このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0485】
より具体的には、これらプラスミドは、MS2/PP7−RLP−mCherry 12X− ZsGreenI 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0486】
1.2 本発明に係る対照MS2(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、イントロン配列若しくはRNA安定化配列を含むか又は含まない
図XXXVIIIに記載の発現カセットを有する。レンチウイルス粒子にRNAを輸送するために、MS2 RNAのステム−ループモチーフの12回の反復(ctagaaaacatgaggatcacccatgtctgcag、配列番号1)を、
図XXXVIIIに記載されたレポータータンパク質、例えば天然ホタルルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(ZsGreenI)、赤色蛍光タンパク質(mCherry)のRNA、あるいは、タンパク質、例えばその野生型(WT)又はその突然変異型(N)におけるCas9タンパク質などのヌクレアーゼをコードするcDNAの、下流の発現カセットに挿入した。使用されたプロモーターはCMV又はEF1プロモーター(
図XXXVIII)であり得るが、他のプロモーターが使用されてもよい。
【0487】
・カプシド形成プラスミド:レンチウイルス粒子を、第2のZn fingerドメインの代わりに、ヌクレオカプシドタンパク質内にMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。MS2RLP 12X粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図IIaに示された戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによりMS2バクテリオファージの「コート」タンパク質によって置換され、p8.74ΔZF−MS2−Coatプラスミドを生成する。これは、
図IIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、MS2RLP 12Xの機能を変更することなく、例えば逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異されてもよい。
【0488】
・エンベローププラスミド(pENV):このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0489】
より具体的には、これらプラスミドは、MS2RLP−mCherry 12Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0490】
1.3 本発明に係る対照PP7(NC)−RLP 2Xレンチウイルス粒子を生産するためのプラスミド
・目的の配列のための発現プラスミド:
発現プラスミドは、イントロン配列若しくはRNA安定化配列を含むか又は含まない、
図XXXIXに記載の発現カセットを有する。レンチウイルス粒子へとmRNAを輸送するために、PP7 RNAのステム−ループモチーフの2回の反復(ctagaaaggagcagacgatatggcgtcgctccctgcag 配列番号2及びctagaaaccagcagagcatatgggctcgctggctgcag 配列番号4)を、
図XXXIXに記載されたレポータータンパク質、例えば天然ホタルルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(ZsGreenI)、赤色蛍光タンパク質(mCherry)をコードするRNA、あるいは、タンパク質、例えばその野生型(WT)又はその突然変異型(N)におけるCas9タンパク質などのヌクレアーゼをコードするcDNAの、下流の発現カセットに挿入した。使用されたプロモーターはCMV又はEF1プロモーター(
図XXXIX)であり得るが、他のプロモーターが使用されてもよい。
【0491】
・カプシド形成プラスミド:レンチウイルス粒子を、第2のZn fingerドメインの代わりに、ヌクレオカプシドタンパク質内にPP7バクテリオファージ「コート」タンパク質の配列を含むように改変した。PP7RLP 2X粒子の生産のために使用される構造的及び機能的タンパク質をコードする遺伝子(Gag、Pol)を有するp8.74カプシド形成プラスミドを、
図XXXVIaに示された戦略に従って改変する:このp8.74プラスミドは、アセンブリPCRによって、p8.74ΔZFヌクレオカプシドタンパク質の第2のジンクフィンガーを欠いたプラスミドを生成するために使用される。第2のジンクフィンガーは、HpaIクローニングによってPP7バクテリオファージの「コート」タンパク質により置換されて、p8.74ΔZF−PP7−Coatプラスミドを生成する。これは、
図XXXVIbに示されたコンストラクトを与える。Polコーディング配列は、PP7RLP 2Xの機能を変更することなく、例えば逆転写酵素(RT)又はインテグラーゼ(IN)をコードする配列のような特定の機能的エレメントにおいて欠失又は突然変異されてもよい。
【0492】
・エンベローププラスミド(pENV):このプラスミドは、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を有し、これは、水胞性口炎ウイルスのエンベロープタンパク質をコードするVSV−Gであり得る(
図III)。
【0493】
より具体的には、これらプラスミドは、PP7RLP−ZsGreenI 2Xレンチウイルス粒子を生産するために使用される。
【0494】
2.レンチウイルス粒子のバッチの生産
プロデューサー細胞に対するプラスミドのトランスフェクション後に、上清を採取し、粗生成物で使用するか、あるいは、国際公開第2013/014537号の出願に記載された前述の方法P1又はP2の1つに従って濃縮/精製して使用した。
【0495】
2.1 レンチウイルス粒子の生産
5%のCO
2で湿潤雰囲気下、37℃で、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のウルトラグルタミン(PAA)で補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco、Paisley、UK)で培養した、HEK293Tプロデューサー細胞(ATCC、CRL−11268)を用いて10−スタックの細胞TACK(6360cm
2、Corning)で、生産を行う。
【0496】
MS2/PP7(NC)−RLP 12X 2X、好ましくはMS2/PP7−RLP−mCherry 12X− ZsGreenI 2X、レンチウイルス粒子を、以下の5つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−上述の2つの発現プラスミド、これは、単一量で使用されるpcDNA.EF1.mCherry.MS2 12Xプラスミド(その発現カセットは
図XXXVIIIに示されている)(50%)及びpcDNA.EF1.ZsGreenI.PP7 2Xプラスミド(その発現カセットは
図XXXIXに示されている)(50%)を含む;
−p8.74ΔZF−PP7−Coat(50%)、その発現カセットは
図XXXVIbに示されている、及びp8.74ΔZF−MS2−Coat(50%)、その発現カセットは
図IIbに示されている;
−エンベロープVSV−Gを有するpENV、その発現カセットは
図IIIに示されている。
【0497】
MS2/PP7(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子は、実施例1に記載したように、すなわち以下のプラスミドのそれぞれの割合で生産される:40%の発現プラスミド、30%のp8.74プラスミド(又はp8.74ΔZF)、30%のpENVプラスミド。より具体的には、プラスミドのそれぞれの割合は以下の通りである:20%のpcDNA.EF1.mCherry.MS2 12X発現プラスミド、20%のpcDNA.EF1.ZsGreenI.PP7 2X発現プラスミド、30%のp8.74ΔZFプラスミド、30%のpENVプラスミド。
【0498】
完全なCRISPR/Cas9システムを転移させるためのMS2/PP7(NC)−RLP 12X 2X粒子の生産の場合、粒子は、実施例8に記載された方法によって生産される。より具体的には、プラスミドのそれぞれの割合は以下の通りである:33%のガイドをコードする発現プラスミド、17%のCas9をコードする発現プラスミド(ガイドをコードする発現プラスミドの量は、Cas9をコードする発現プラスミドの量に対して二倍である)、25%のp8.74ΔZFプラスミド及び25%のpENVプラスミド。
【0499】
対照MS2(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子、好ましくはMS2−RLP−mCherry 12Xを、以下の3つのプラスミドのトランスフェクションにより生産する:
−上述した発現プラスミドpcDNA.EF1.mCherry.MS2 12X(その発現カセットはXXXVIIIに示されている);
−p8.74ΔZF−MS2−Coat、その発現カセットは
図IIbに示されている;
−エンベロープVSV−Gを有するpENV、その発現カセットは
図IIIに示されている。
【0500】
MS2(NC)−RLP 12Xレンチウイルス粒子は、実施例1に記載したように生産される。
【0501】
対照PP7(NC)−RLP 2Xレンチウイルス粒子、好ましくはPP7−RLP−ZsGreenI 2Xを、以下の3つのプラスミドのトランスフェクションによって生産する:
−上述した発現プラスミドpcDNA.EF1.ZsGreenI.PP7 2X(その発現カセットは
図XXXIXに示されている);
−p8.74ΔZF−PP7−Coat、その発現カセットは
図XXXVIbに示されている;
−エンベロープVSV−Gを有するpENV、その発現カセットは
図IIIに示されている。
【0502】
PP7(NC)−RLP 2Xレンチウイルス粒子は、実施例1に記載したように生産される。
【0503】
リン酸カルシウムによる標準的なトランスフェクションから24時間後に、培養上清を新鮮な未補充DMEM培地で交換する。プロデューサー細胞を、37℃/5%CO
2でインキュベートする。培地の交換後に、上清を4回採取する(トランスフェクション後32時間、48時間、56時間及び72時間)。各回収物を、5分間の3000gでの遠心分離によって清澄化した後に、0.45μmのフィルター(Stericup(登録商標)、Millipore)で精密ろ過する。次に全ての回収物をプールして、粗上清を構成する。
【0504】
2.2 レンチウイルス粒子の濃縮及び精製
レンチウイルス粒子を、実施例1に記載の方法P1に従って濃縮及び精製する。
【0505】
3.レンチウイルス粒子のバッチの滴定
レンチウイルス粒子を実施例1に記載したように滴定する。
【0506】
4.本発明に係るMS2/PP7(NC)−RLP 12X 2Xレンチウイルス粒子による形質導入
本実施例は、MS2/PP7(NC)−RLP 12X 2X粒子を用いて行われ、斯かる粒子は、RNAのいくつかのタイプの転移、従っていくつかの異なるタンパク質(ZsGreenI+mCherry)の発現を可能にする。
【0507】
HCT116標的細胞(ATCC、CCL−247)を24ウェルプレートに播種し、37℃/5%CO
2で24時間インキュベートし、10pg p24/細胞の用量でのMS2/PP7(NC)−RLP 12X 2X粒子によって形質導入した。
【0508】
実施した対照は、以下の通りである:
−それぞれ10pg p24/細胞の用量での、MS2RLP−mCherry 12X及びPP7RLP−ZsGreenI 2Xレンチウイルス粒子による形質導入;
−10pg p24/細胞の用量での、MS2RLP−mCherry 12Xレンチウイルス粒子単独による形質導入;
−10pg p24/細胞の用量での、PP7RLP−ZsGreenI 2Xレンチウイルス粒子単独による形質導入。
【0509】
8μg/mLのPolybrene(登録商標)の存在下でレンチウイルス粒子による形質導入を行う。細胞防御機構阻害剤BX795(Invivogen)、を、MS2/PP7(NC)−RLP 12X 2X、MS2RLP−mCherry 12X及びPP7RLP−ZsGreenI 2X粒子の場合には6μMの濃度で使用する。標的細胞を形質導入後48時間で回収し、ZsGreenI及びmCherryを発現する細胞のパーセンテージを、サイトメトリー(Macs Quant VYB、Miltenyi Biotec)によって定量化する。
【0510】
II.結果
図XXXXIVは、HCT116標的細胞内にバクテリオファージMS2及びPP7に由来するカプシド形成配列によってカプシド形成されたRNAの転移のためのMS2/PP7(NC)−RLP 12X 2X粒子の有効性を示す。図は、二重蛍光細胞の割合が、10pg p24/細胞の用量でのMS2/PP7(NC)−RLP 12X 2X粒子の形質導入後に97%であり、かつ20pg p24/細胞でのMS2RLP−mCherry 12X及びPP7RLP−ZsGreenI 2X粒子の形質導入後に98%であることを示している。従って、同程度の形質導入有効性が、MS2/PP7(NC)−RLP 12X 2Xの半分の用量について、MS2/PP7(NC)−RLP 12X 2X粒子で観察される。
【0511】
MS2RLP−mCherry 12X粒子単独又はPP7RLP−ZsGreenI 2X粒子単独によって標的形質導入された細胞は、単一蛍光タンパク質のためのMS2/PP7(NC)−RLP 12X 2X粒子によって標的細胞の形質導入後に得られたパーセンテージと同様の、形質導入有効性のパーセンテージを有する。従って、結果は、RLP粒子が、標的細胞の単一形質導入における2つの異なるシステム(PP7及びMS2)によってカプシド形成された少なくとも2種のRNAを輸送及び転移させることができることを示している。
【0512】
RLPの1つの同じバッチの単一形質導入における、2つの異なるカプシド形成配列、MS2及びPP7によって指向された異なるタイプのRNAを転移させる能力の実証は、特にCRISPR/Cas9システムの有効な転移のための、カプシド形成されたRNAのタイプの調節に関する有意な利益を表す。蛍光レポーターをコードするRNAを、Cas9ヌクレアーゼをコードするRNA及び非コーディングガイドRNAで置換することによって、この調節は、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集用途の多様化を可能にし得る。