特許第6982002号(P6982002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982002フェルトニードル及び少なくとも1つのフェルトニードルを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982002
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】フェルトニードル及び少なくとも1つのフェルトニードルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 18/02 20120101AFI20211206BHJP
【FI】
   D04H18/02
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-559832(P2018-559832)
(86)(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公表番号】特表2019-519689(P2019-519689A)
(43)【公表日】2019年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2017065963
(87)【国際公開番号】WO2018007221
(87)【国際公開日】20180111
【審査請求日】2020年4月7日
(31)【優先権主張番号】16177989.7
(32)【優先日】2016年7月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500131561
【氏名又は名称】グロッツ−ベッケルト・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュレイエック, ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】ウェバー, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィゼマン, グスタフ
(72)【発明者】
【氏名】シック, ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス, ユルゲン
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03983611(US,A)
【文献】 米国特許第04156305(US,A)
【文献】 米国特許第03224067(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウント(10)から作動端(16)まで長さ方向(z)に延び、フェルトニードル(1)の長手方向(z)の一部に沿ってフェルトニードル(1)の長さ方向(z)に延びる作動部分(15)を有するフェルトニードル(1)であって、
・フェルトニードル(1)の径方向(r)および円周方向(φ)に延び、作動部分(15)の長さの大部分にわたって断面領域(24−29)を形成する、断面領域(24−29)と、
・作動部分(15)に切欠かれ、作動部分(15)の外側表面からフェルトニードル(1)の内部に向かって延びる切欠きによって形成される少なくとも一つのバーブ(2)であって、該バーブ(2)の開口の、フェルトニードル(1)の長さ方向(z)の一方の縁部から該バーブ(2)の開口の外方に延び、かつフェルトニードル(1)の径方向(r)にフェルトニードル(1)の作動部分(15)の周面から突出するバーブビード(3)を備える、バーブ(2)と、
を備えており、さらに、
・フェルトニードル(1)の径方向(r)に、フェルトニードル(1)の作動部分(15)の周面から突出する、少なくともつのバルジ(7)を備え、
・バルジ(7)は、フェルトニードル(1)の長さ方向(z)に、作動部分(15)の長さの一部のみに沿って前記方向(Z)に延びており
・バーブ(2)の開口のバーブビード(3)側の縁部は、バルジ(7)にフェルトニードル(1)の長さ方向(z)に隣接しており、
・バルジ(7)は、バーブ(2)のバーブビード(3)に属さない体積成分を有し、
・少なくとも1つのバルジ(7)は、バーブビード(3)の体積成分を含む、
ことを特徴とするフェルトニードル(1)。
【請求項2】
少なくとも1つのバルジ(7)の、ニードル軸(34)から径方向(r)に測定される高さ(H)が、バルジ(7)の、フェルトニードル(1)の長さ方向(z)の長さ(30)に沿って変化することを特徴とする請求項1に記載のフェルトニードル。
【請求項3】
少なくとも1つのバルジ(7)の、ニードル軸(34)から径方向(r)に測定される高さ(H)が、フェルトニードル(1)の長さ方向(z)の長さ(30)に沿って少なくとも1つの局部的な最大部(21)を有しており、前記最大部は、フェルトニードル(1)の長さ方向(z)に、バーブ(2)の開口のバルジ(7)に最も近い縁部(18)から、バルジ(7)の全体の長さ方向の長さ(30)の少なくとも25%の長さで間隔があけられていることを特徴とする請求項に記載のフェルトニードル。
【請求項4】
ニードルの周方向(φ)における少なくとも一つのバルジ(7)の幅は、径方向(r)に高さ(H)が増加するにつれて先細になることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のフェルトニードル。
【請求項5】
なくとも1つのバルジ(7)の、少なくとも1つのバーブ(2)の開口のフェルトニードルの長さ方向(z)における一方の縁部が、該少なくとも1つのバルジ(7)の外側表面に隣接する側に、バーブ(2)の開口の、フェルトニードル(1)の長さ方向(z)における長さ(32)と少なくとも対応する距離(33)にわたって少なくとも1つのバーブ(2)と周方向(φ)に重なるさらなるバルジ(7)は、フェルトニードル(1)の長さ方向(z)に配置されないことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のフェルトニードル。
【請求項6】
マウント(10)からその作動端(16)まで長さ方向(z)に延びるフェルトニードル(1)の製造方法であって、
−フェルトニードルのブランクを用意するステップ
−フェルトニードル(1)の径方向(r)および周方向(φ)に延びる断面領域(24−29)を有する作動部分(15)を成形して、その長さ方向(z)の大部分にわたって断面領域(24−29)を形成するステップおよび
動部分(15)の外面から作動部分(15)に入り込み、フェルトニードル(1)の内部に向かって延びる切欠き(2)によって形成されるバーブ(2)であって、該バーブ(2)の開口の、フェルトニードル(1)の長さ方向(z)の一方の縁部から該バーブ(2)の開口の外方に延び、かつフェルトニードル(1)の径方向(r)にフェルトニードル(1)の作動部分(15)の周面から突出するバーブビード(3)を備える、バーブ(2)を打刻するステップ、を備えており、
ェルトニードル(1)の作動部分(15)の周面を超えてニードルの径方向に突出し、少なくとも1つのフェルトニードル(1)の作動部分(15)の長さ(z)の一部のみに延びる少なくとも1つのバルジ(7)成形され
−バーブ(2)とバルジ(7)の位置は、バーブ(2)の開口のフェルトニードルの長さ方向(z)における一方の縁部がバルジ(7)の外側表面とフェルトニードル(1)の長さ方向(z)に隣接するよう選択され、
−バルジ(7)は、バーブ(2)のバーブビード(3)に属さない体積成分を有し、
−少なくとも1つのバルジ(7)は、バーブビード(3)の体積成分を含む、
ことを特徴とするフェルトニードル(1)の製造方法。
【請求項7】
バルジ(7)は、バーブ(2)の打刻の前または後に形成されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
バルジ(7)がバーブ(2)の打刻の前に形成される場合、バーブ(2)を打刻する際に、バーブ成形工具は、バルジ(7)の一部も変位させることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
断面領域(24−29)の形状が作動部(15)の長さの大部分にわたって延びる少なくとも1つの角部またはエッジ(6)を有するように作動部分(15)が形成され、
−少なくとも1つのバルジ(7)が前記1つの角部またはエッジ(6)の長手方向(z)の一部に形成される
ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのバルジ(7)の成形は、スエージ加工により行われることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのバルジ(7)の成形は、ニードル(1)の径方向(r)に少なくとも主として反対方向に作用する少なくとも2つのプレス工具を用いて行われることを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ニードル(1)の径方向(r)に少なくとも主としてバルジ(7)を制限するバルジ(7)の境界表面(36)は、ニードル(1)の径方向(r)に少なくとも主として作動する少なくとも1つのダイ(7)によって形成されることを特徴とする請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
・少なくとも1つの径方向(r)に作動するダイ(7)が、バルジ(7)の形成中または後にニードル(1)の径方向(r)に移動するか、
・または、ニードル(1)の径方向(r)に作するダイ(7)が、バルジ(7)の形成中にニードルに対して径方向に移動することなく、バルジの材料を停止させ、
・それによって、バルジ(7)を少なくとも主にニードル(1)の径方向(r)に制限する、バルジ(7)の境界表面(36)を形成する
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも主として周方向(φ)に作動する作動表面も有しており、バルジ(7)の成形にも使用される、径方向に作動する少なくとも1つのダイ(7)が用いられることを特徴とする請求項1113のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルトニードル及び少なくとも1つのフェルトニードルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェルトニードル(felting needles)及びその製造方法は公知である。フェルトニードルは、ランダムに配向された繊維の密度を変えるために使用される。ほとんどの場合、繊維は圧縮されて不織布物を形成する。この目的のために、フェルトニードルは、マウント(mounting:しばしば「フット(foot)」と呼ばれ、ニードルシャンク(needle shank)の曲がった部分からなる)によって、ニードルボード(needle board)から吊り下げられる。これらのフットを除いて、フェルトニードルは、しばしばそれらの作動端部(繊維に近いニードルの端部)が尖った、しばしば細長い針である。
【0003】
ニードルの前述した長手方向の一部は、一般にニードルの先端に隣接した作動部分によって占有される。一般に、この作動部分は、特別に形成された断面領域を有する(通常、三角形または四角形のような多角形が使用される)。しかしながら、これらの断面領域については、涙滴(teardrops)のような、丸い形状も知られている。作動部分は、作動部分の断面領域の外側の輪郭からその内部方向に延びるバーブ(barbs)を有する。これらのバーブは、しばしば、バービング(barbing)として知られているカッティング加工(cutting action)によって成形される。フェルトニードルのバービングは、他の刊行物、たとえば米国特許第3,224,067号明細書および米国特許第2,495,926号明細書などに記載されている。特にこれらの刊行物の図面から、バービングプロセスは、以下に概説されたバーブの動作モードにとって重要なバーブビード(barbing beads)を生成することが明らかである。上記のバーブは、布繊維に対して移動するニードルボードの作動サイクル中に、布繊維を保持する。したがって、バーブは、フェルトの製造に重要である。バーブビードは、上述したバーブの保持機能を高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニードルボードは、フェルトの製造中に単位時間あたり多くの作動サイクルを実行する。フェルトニードルが、特に原料繊維と接触する結果として高荷重にさらされることは、驚くべきことではない。したがって、フェルトニードルの耐久性または耐用年数を増加させることは、専門家が長年取り組んできた課題の1つである。この問題を解決するために、米国特許第2,678,484号明細書には、ニードルの長さ方向に複数の連続したバーブを有しており、バーブのニードル先端の最も近くに先導バーブが配置されたフェルトニードルを提供することが示唆されているが、この先導バーブはニードル先端から離れたバーブよりも顕著ではなく、突出量が小さいバーブビードも有している。米国特許第2,495,926号明細書には、異なる形でこの問題を解決しようと試みることが開示されている。すなわち、バービング工具の特別な形成により、バーブビードがより広くなり、したがって、より長い時間にわたって布繊維の連続する摩擦に耐えることができる。
【0005】
米国特許第3,224,067号明細書には、異なる問題に基づいて技術的教示が言及されている。すなわち、細かい布を効率的で損傷なくニードリングすることを可能にするために、ニードルの作動部分の断面プロファイルに作動部分の長手方向の全範囲にわたって延びる隆起部(ridges)を設けることによって、バーブとそのバーブビードの幅を調整している。上記公報の隆起部またはエッジは、スエージ加工によって形成される。その後、バーブおよびそのビードがニードルの周方向の幅を有するように、バーブがこれらの隆起部に打刻される。線条の隆起部(filigree ridges)がむき出しであるため、バーブとそのビードの耐用年数は上述の方法では増加しそうもない。
【0006】
本発明は、フェルトニードルの耐用年数を長くすることを目的とする。本発明は、上記の公報のうちの最後のものに基づいており、請求項1および8の特徴を組み合わせることによって目的を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
既に述べたように、ほとんどのフェルトニードルは、フェルトニードルの径方向(r)および周方向(φ)に延在する断面領域を有する作動部分を有し、この断面領域は、作動部分の長手方向の大部分にわたって断面プロファイルによって境界を付けられている。ここで、「作動部分の長手方向の大部分」とは、一般に、この作動部分が、ニードルのシャンクおよび/またはニードルの作動端の端部(一般的には先端部)に隣接する領域と、バーブおよびバーブビードの領域と、を除いた部分のみであることを意味する。このことは、フェルトニードルの作動部分は繊維に刺し込まれる、特にバーブ、および場合によってはバーブビードが繊維に係合するものであるので、有利である。したがって、バーブおよび場合によってはバーブビードが主にまたは専ら、作動部分の断面プロファイルに入り込んだり作動部分の断面プロファイルから外れる。
【0008】
作動部分には、少なくとも1つのバーブが断面プロファイルに入り込む。この場合のバーブは、断面プロファイルから、フェルトニードルの内側方向、またはニードルの軸方向に延びる切欠き(incut)によって形成される。フェルトニードルのバーブは、一般に、断面プロファイルの外側輪郭から内側に、また場合によってはフェルトニードルの対称軸に向かって径方向と軸方向とに延びていると言うこともできる。
【0009】
また、既に言及したように、ほとんどのフェルトニードルは、バーブの領域にバーブを形成するときの材料の変位によって形成されるバーブビードを有する。これらのバーブビードは、上述したニードルの輪郭を越えて径方向に突出する。このことは、フェルトの製造に実質的に貢献する。
【0010】
一般的に上述の特徴を有する従来のフェルトニードルは、以下の特徴によって本発明に従って改良される。
・少なくとも1つのバルジ(bulge)は、前記フェルトニードルの作動部分の円周表面を越えて前記ニードルの径方向(r)に突出し、
・前記バルジは、フェルトニードルの長さ方向(z)における前記作動部分の範囲の一部に沿ってのみ、前記長さ方向(z)に延在し、
・前記バルジは、バーブのバーブビードに属さない体積成分を有し、
・前記バーブは、バルジの外面とフェルトニードルの長さ方向に隣接する
【0011】
少なくとも1つのバルジは、作動部分の成形中に設けることができる。しかしながら、連続的な製造プロセスによってバルジを有利に生成することもできる。バルジは、フェルトニードルの長手方向における作動部分の範囲の一部のみにおいて、断面プロファイルを越えて径方向に突出する。したがって、バルジは、作動部分の大部分にわたって、また、作動部分の全体にわたっても一定の断面プロファイルの一部ではない。バルジは、さらに、ニードルの構成要素も、作動部分全体に沿って延びている米国特許第3,224,067号明細書の意味するエッジまたは隆起部ではない。
【0012】
バルジは、バーブビードに属さない体積成分を少なくとも有する、すなわちバーブ成形プロセス中の体積変位の結果として生成されるのではない。しかしながら、一般に、バーブビードによってバルジが補強され、有益である。
【0013】
バーブがバルジの外面とフェルトニードルの長さ方向に隣接する場合には、特に有利である。このようなバーブは、フェルトの製造中にニードルの前方方向に見て、バーブがバルジの前方または後方に配置されることにより、構成することができる。バルジがバーブよりも先に形成されている場合、バルジが始まる前方に直接バーブを打刻するにしても、バーブが(新しい)バルジの外面に直接隣接するが、バルジの残りの部分がバーブの反対側に残らないようにバーブを打刻するにしても、いずれでも有利である。バーブがバルジの元々の外面に有利に入り込むことができるとも言える。バーブとバルジとの間に小さなギャップ(例えば、ニードルの長手方向(z)におけるバーブの長さよりも小さく、より好ましくは、長手方向(z)におけるバーブの長さの半分よりも小さいか、また、より有利には、ニードルの長手方向(z)におけるバーブの開口の長さの1/4よりも小さい)を形成することもできる。バーブとバルジは周方向に同じ位置で、及び/又は、エッジに配置されていることが有利である。
【0014】
上述したニードルの径方向(r)は、「高さ方向」とも呼ばれることが多い。少なくとも1つのバルジの高さがニードルの長さ方向に変化すると、有利である。例えば、ニードルの長手方向に広がり径方向によって形成される平面において、バルジが(ニードルの対称軸から見て)凸状の輪郭を有すると、有利である。角張ったプロファイルも有利である。いずれの場合でも、バルジの高さが局部的な最大値を有すると有利である。バルジは、バーブの屈曲点から最大高さ部まで、バルジの長手方向の全範囲の少なくとも25%、またはさらに好ましくは少なくとも30%の距離を有すると、有利である。バルジを非マシニングプロセス(例えば、スエージングプロセス)によって製造すること、または少なくとも部分的にそのようなプロセスによってバルジを製造することが有利である。この状況では、ダイまたは少なくとも1つのダイが、ニードルの主に周方向および/または径方向に移動されると有利である。しかしながら、少なくとも1つのバルジは、作動部分の断面プロファイルが形成される成形プロセス中に、またはブランクの製造中に作成されてもよい。
【0015】
バルジの高さ(=ニードルの軸からの径方向の距離)を増大するようバルジテーパの少なくとも一部を増加すると有利である。フェルトニードルの適用のタイプに応じて、第1のバーブが第1のバルジのニードルの長さ方向のニードル先端に近い側に配置されていると有利である。しかしながら、ニードルには、バーブがニードルの先端からニードルの長さ方向(z)に、離れる側に向かって有利に配置された逆バーブニードルまたはU−ニードルと呼ばれるものもある。
【0016】
この方向(第1のバルジから見たときの第1のバーブの方向)において、所定の距離(例えば、バーブの縁部から測定される)にわたってニードルの長さ方向にバルジをさらに配置しなければ、有利である。これは、バーブと周方向(φ)に重なるバルジに特に当てはまる。
【0017】
そのような有利な最小の距離の例には、以下のものがある。
a)少なくともフェルトニードルの長さ方向におけるバーブ開口の長さに相当する距離
b)しかしながら、有利には、フェルトニードルの長さ方向のバーブ開口の長さの2倍に相当する距離、
c)しかしながら、有利には、フェルトニードルの長さ方向のバーブ開口の長さの4倍に相当する距離、
d)フェルトニードルの長さ方向(z)に配置された第1のバーブと周方向に重なるバルジがもはやそれ以上ない場合。
【0018】
バルジは、既に存在する(例えば、既にニードルのブランクにある)か、またはバーブを打刻する前に形成されることが有利である。バーブを打刻する際に、バーブ成形工具がまたバルジの一部を変位させ、それにより、ニードルの径方向および/または周方向にバルジのサイズを増大させる(バルジの領域にバーブビードを再び形成して、補強する)ように、バーブを位置決めすることがさらに有利である。この効果は、バーブ成形工具をバルジのすぐ近くに当てることによって、または接触させることによっても、達成することができる。
【0019】
作動部分の断面プロファイルの境界がニードルの軸から特に離れているニードル表面上に、少なくとも1つのバルジが配置されていると、有利である。これは、エッジまたは角部の領域の場合である。この設計原理が遵守される場合、少なくとも1つのバルジは、既に露出したエッジまたは露出した角部を越えて突出しているので、フェルトの製造中に繊維と非常に強く接触する。
【0020】
バルジがスエージ加工されたバルジである限り、少なくとも2つのプレス工具を使用してバルジを作成することが有利である。これらの2つのプレス工具は、少なくとも主にニードルの周方向に作用する。しかしながら、一般に、作用方向にはニードルの径方向の成分も含まれる。2つのプレス工具は、反対方向に作用し、同じ量または異なる量だけ動くことができる。ここで、他方の工具(単数または複数)を動かしている間、一方の工具を単に静止させるよう動作させることも可能である。
【0021】
バルジがニードルの径方向に明確に形成された境界面を備えていると有利である。ニードルの径方向における境界面の成形は、バルジを設定した高さに成形するまで行うことができる。したがって、この方法は、本明細書に開示され、特許請求されるニードルのすべての実施形態において有利である。成形は、少なくとも主にニードルの径方向に作用するダイを用いて行うことができる。少なくとも主に径方向に作用するダイは、主に径方向に作用する作用面を有する。ダイは主に径方向に移動することができる。しかしながら、それはまた、バルジが径方向にさらに成長するのを防止する停止部としても機能することができる。例えば、例:この種の径方向に作用する停止部は、プレス工具が主に周方向に作用し、従ってバルジの材料を径方向に変位させるスエージ加工に起因してバルジがさらに成長するのを防止する。この場合、径方向に作用するダイは、バルジの変位した材料のための停止部として機能する。径方向に作用する停止部またはダイは、主にニードルの径方向に作用するプレス工具の少なくとも1つ(場合によっては一体的に)に構造的に接続されて、スエージ加工されたバルジの場合に、バルジを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下の図は、本発明のさらなる実施形態を示す。
図1】従来技術のニードルの一部を示した側面図である。
図2】バルジ7が既に設けられているニードルの一部を示した側面図である。
図3】バルジ7とバーブ2を備えたニードル1の一部を示した側面図である。
図4】いわゆる標準三角ニードルの作動部の断面を示した側面図である。
図5】いわゆるクロススターニードルの作動部の断面を示した側面図である。
図6】いわゆるドロップフォーミングニードルの作動部の断面を示した側面図である。
図7図7は、いわゆるピンチブレードニードルの作動部分の横断面を示した側面図である。
図8】いわゆるトライスターニードルの作動部の断面を示した側面図である。
図9】いわゆるエコスターニードルの作動部の断面を示した側面図である。
図10】フェルトニードル1の斜視図である。
図11図3の詳細を示した側面図である。
図12】さらなる用語を明確にするためにニードルの部分領域を示した側面図である。
図13】ニードルの作動部分の断面領域を再び示した図である。
図14】異なる材料からなるバルジを有するニードルの作動部分の断面領域を再び示した図である。
図15】異なる材料からなるバルジを有するニードルの作動部分の断面領域を再び示した図である。
図16】バルジ7のさらなる実施形態を有するニードル1の一部を示した側面図である。
図17】バルジ7のさらなる実施形態を有するニードル1の一部を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、バービング作用によって形成されたバーブ2とバーブビード3を備えた従来の技術のフェルトニードル1の側面図を示したものである。バーブ2はバーブ深さ5を有する。バーブ2の下部境界はバーブ底9である。また、バーブ前部20の端部である屈曲点18で、バーブ前部20が(径方向の)高さを増加していることも重要である。バーブビードは、バーブ突出4(=バーブビード3の最大高さ部19とバーブ前部の屈曲点18との間の径方向の距離)により定量化されることが多い。
【0024】
図1に示されたニードル1は、図4に示されるように、標準的な三角形の断面形状24を有する。図2および図3に示すフェルトニードル1もこの断面形状24を有する。したがって、観察平面17(図4参照)から、エッジ6(この種のエッジはしばしばベベルと呼ばれる)も認識することができる。
【0025】
図2には、上述した特徴に加えて、その最大高さ部21を有するバルジ7が記載されている。このようなバルジは、すでに述べたように、様々な方法で製造することができる。図2による実施の形態では、ダイのインプリント8を認識することができ、スタンピング加工によって成形されたことを示したバルジ7を含んでいる。 バーブ2は、図2に示されていない。
【0026】
最後に、図3は、バルジに加えて、バーブ2も有するフェルトニードル1の側面図である。したがって、バーブ底部9とバーブ前部20が見える。 図3に示されたバーブ2とバルジ7の形状は、すでに存在するバルジ7の表面に打刻した切欠き(incut)によって形成することができる。
【0027】
図4図9は、例として、フェルトニードルの作動部分15の異なる断面形状24−29を示したものである。これらの断面形状または領域は、各フェルトニードル1の径方向(r)および周方向(φ)によって形成される平面内で延びている。これらの作動部分15は利点であるが、本発明は、他の断面形状も拡張して使用することができる。
【0028】
図4は、3つのエッジ6を備えた作動部分15の標準的な三角形の断面形状24を示している。 図1−3、11−12、および16−の観察平面17は既に述べたとおりである。図5は、多くの場合、クロススター25という商品名で販売されており、4つのエッジ6を有する作動部分15の断面形状を示している。図6の断面形状26は、しばしば専門家にティアドロップ形状と呼ばれる。図7に示した断面形状27は、しばしば当該技術分野でピンチブレードと呼ばれる。図8および9に示した断面形状は、トリスター(Tristar)28またはエコスター(EcoStar)29と呼ばれる。言及した全ての断面形状は、ニードルの作動部分15において、径方向(r)および周方向(φ)に延びており、作動部分の長手方向の大部分の断面形状を形成するという共通点を有する。この点での例外は、しばしば、バーブ2、バーブビード3およびバルジ7によってのみ作られる。本願明細書等に記載された断面形状は、一例である。本発明は、既知および将来の全ての断面形状の有利な発展に適している。異なるバーブの形状についても同様である。
【0029】
図10は、フェルトニードル1を示しており、本願明細書等に使用されているいくつかの用語を明確にしている。多くのフェルトニードルと同様に、このニードル1は、ニードル板に取り付けるためのフット10を有している。90°の曲げの後、フェルトニードルのシャンク11が始まり、これは上方の円錐部12の後に縮小したシャンク13に移行する。言うまでもなく、1本のシャフト11と1本の縮小したシャフト12ではなく、均一な直径の1本のシャフトだけを有するフェルトニードルは公知である。下方の円錐部14は、バーブ2が見られる作動部分15への移行部を形成する。フェルトニードル1は、先端16で終わっている。勿論、この「先端」16またはその作用端部が従来のニードルとは異なる輪郭を有する構造のニードルも知られている。本発明は、あらゆる種類のフェルトニードルに有利に用いることができる。
【0030】
図11は、図3の拡大した詳細を示している。この図では、特にいくつかの長さ30、31、および32を説明している。
・バルジ7の長手方向の長さ30は、バルジの始端35からバーブ前部20の屈曲点18に至るz方向における延長部の長さである。
・長手方向(z)における長さ31は、バルジ7の最大高さ部21とバーブ前部の屈曲点18との間である。
・バーブ開口部の長手方向の長さ32は、ニードル1の長手方向(z)におけるバーブ開口部の長さ32である。
【0031】
図12は、図3および図11と同じ観察平面17から見たニードル1のより長い部分を示したもので、2つのバーブ2と2つのバルジ7が示されている。バーブ2とバルジ7は、周方向(φ)に同じ位置に配置されている。ニードル1の長手方向(z)のバーブ開口部の長さ32と、バーブ開口部の縁部から次のバルジ7の始まりまでの距離33も、示されている。既に言及したように、これらの2つの長さまたは距離32、33の一方が他方に対して一定の比率で与えられ、特定の最小距離33を遵守すると、有利である。
【0032】
図13−15は、ニードルの径方向(r)および周方向(φ)によって形成される平面に沿って延びる、フェルトニードル1の作動部分の断面領域27−29を再度示したものである。バルジ7がエッジ6に配置されることは、決して不可欠ではないが、有利である。このようなバルジを作り出すには、いくつかの有利な方法がある。例:
・作動部分15の断面領域24−29を成形する際に、
・スタンピングプロセスによって、図13に矢印22で象徴されるように、このプロセスで2つまたは1つのスタンピングダイまたは工具を動かすことができる。
図14に示すように、異なる材料23を挿入することによって。バルジをエッジに配置することが意図されている場合、および、断面形状27のように、互いに周方向に約180°オフセットされたエッジ6を作動部分の断面形状24−29が有する場合、ニードルをこのような異なる材料23の本体で突き刺してこれをニードルに押し込み、あるいは、ドリル加工または同様のプロセスによって形成した適当な孔に異なる材料23の本体を圧入して貫通させる(図15)ことも、可能である。
【0033】
図12において、破線は、ニードルのニードル軸34の位置を示している。図6図8も、このニードル軸の位置を参照符号34によって明確に示している。ニードル1の断面を示す他の図の断面においても、この位置は十字で示されている。ニードル軸34は、ニードルの長さ方向に延びる部分の中心である(図10のシャンク11、上方の円錐部12、縮小したシャンク13、下方の円錐部14、作動部分15、場合によっては先端16)。また、ニードル軸34は、フットを除くニードルの主対称軸であると言うこともできる。
【0034】
図16および図17は、バルジ7の特別な形状の境界表面36が径方向(r)に設けられた、バルジ7のさらなる実施形態を有する2つのニードル1の一部の側面図を示したものである。境界表面36のこの成形は、径方向に動作するダイ37で行うことができる。両矢印38は、このダイの作動する方向を示す。この場合、作動する方向とは、ダイ37もこの方向(r)に移動することを必ずしも意味するものではない。ダイ37は、例えば、ニードル1に対して静止するとともに、バルジ7の成形中にバルジ7のさらなる成長に対抗する場合に、この方向にも作用することが可能である。境界面36の上述した成形プロセスは、図示のニードルの全ての実施形態において有利である。バルジの高さ、すなわち、ニードル軸34から境界表面36までの径方向の距離を正確に設定することができる。境界表面36の位置を他の空間上の方向に設定することも、もちろん可能である。これは、図16図17に示した実施の形態の間の差異によって強調される。すなわち、図16の実施の態では、バルジ7の最大高さ部21とバーブの前部の屈曲点18との間に距離31がある。バルジ7が最大高さ部21に達すると境界表面36が始まる。図17による実施の形態では、距離31は「ゼロ」に縮められている。この結果は、境界表面36(図17参照)を成形する際に、径方向に作用するダイ37をニードル1に対して長手方向(z)の異なる位置に配置することによって得ることができる。この例もまた、記載された方法を使用して非常に多数のフェルトニードルの変形を作り出すことを明らかにする。
【符号の説明】
【0035】
1:フェルトニードル、 2:バーブ、 3:バーブビード、 4:バーブの突出部、 5:バーブの深さ、 6:エッジ、 7:バルジ、 8:ダイのインプリント、 9:バーブの底部、 10:フェルトニードルのフット、 11:フェルトニードルのシャンク、 12:上方の円錐部、 13:フェルトニードルの縮小したシャンク、 14:下方の円錐部、 15:作動部分、 16:ニードルの先端、 17:観察平面、 18:バーブの前部の屈曲点、 19:バーブビードの最大高さ部、 20:バーブの前部、 21:バルジの最大高さ部、 22:ピンチング(pinching)ダイの動きを示す矢印、 23:異なる材料、 24:標準的な三角形、 25:クロススター、 26:ティアドロップ、 27:ピンチブレード、 28:トリスター、 29:エコスター、 30:バルジ7の長手方向の延長部(z)、 31:バルジの最大高さ部21とバーブの前部の屈曲点18との間の長手方向の距離、 32:バーブ開口部2の長手方向(z)の長さ/バーブ開口部のニードル1の長手方向長さ、 33:第1バーブ3とさらにバルジ7との間の長手方向の距離、 34:ニードル軸、フットのないニードルの対称軸、 35:バルジの始まり(ここでは、バーブから遠い方の端部において、バルジは、作動部分の断面プロファイルの円周表面を超えて隆起し始める。)、 36:バルジの径方向の境界表面、 37:径方向に作用するダイ、 38:ダイが作用する方向を示した方向の矢印、 z:ニードルの長手方向の座標、 r:ニードルの径方向の座標、 φ:ニードルの周方向の座標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17