【文献】
OCASIO, C. A. et al.,Design and Characterization of a Thyroid Hormone Receptor α(TRα)-Specific Agonist,ACS Chemical Biology,2006年,1(9),pp. 585-593
【文献】
VALADARES, N. F. et al.,Role of Halogen Bonds in Thyroid Hormone Receptor Selectivity: Pharmacophore-Based 3D-QSSR Studies,Journal of Chemical Information and Modeling,2009年,49(11),pp. 2606-2616
【文献】
BAXI, E. G. et al.,A Selective Thyroid Hormone β Receptor Agonist Enhances Human and Rodent Oligodendrocyte Differentiation,GLIA,2014年,62,pp. 1513-1529
【文献】
TANCEVSKI, I. et al.,The resurgence of thyromimetics as lipid-modifying agents,Current Opinion in Investigational Drugs,2009年,10(9),pp. 912-918
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
I.定義
特に別様に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語は、当技術分野で理解されるような通常の意味を有する。以下の用語及び方法の説明は、本発明の化合物、組成物及び方法をより良く説明し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。本開示において使用される用語は、特定の実施形態及び実施例のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0010】
本明細書で使用する場合、単数の用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」は、文脈が別様であることを明白に示さない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または」という語は、文脈が別様であることを明白に示さない限り、「及び」を含むことが意図される。また、本明細書で使用する場合、用語「含む(comprise)」は、「含む(include)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む」とは、A、BまたはA及びBを含むことを意味する。
【0011】
Rなどの変数が本開示を通じて使用される場合、その全ての下位変数(R
1、R
2など)を含み、逆のことが明記されない限り、先に定義したものと同じ変数である。
【0012】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は、それ自体または別の置換基の一部として、示された炭素原子数を有する直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族基を指す。アルキルは、C
1〜2、C
1〜3、C
1〜4、C
1〜5、C
1〜6、C
1〜7、C
1〜8、C
1〜9、C
1〜10、C
2〜3、C
2〜4、C
2〜5、C
2〜6、C
3〜4、C
3〜5、C
3〜6、C
4〜5、C
4〜6及びC
5〜6などの任意の炭素数を含むことができる。例えば、C
1〜6アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどを含むが、これらに限定されない。アルキルはまた、例えばヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどに限定されない最大20個の炭素原子を含むアルキル基を指すことができる。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「急性散在性脳脊髄炎」及び「ADEM」は、中枢神経系の免疫介在性脱髄疾患を指す。ADEMは通常、ウイルス感染後に起こるが、ワクチン接種後または細菌感染もしくは寄生虫感染後に出現することもある。場合により、ADEMは自然発症する。この疾患は、多発性硬化症に類似した自己免疫性脱髄を含むため、多発性硬化症の境界疾患と考えられている。ADEMは、脳及び脊髄の、とりわけ白質において、多発性の炎症性病変を生じる。病変は典型的には、皮質下及び中央の白質ならびに大脳半球、小脳、脳幹及び脊髄の皮質灰白質接合部において見出されるが、脳室周囲白質及び皮質、視床及び基底核の灰白質も関与している可能性がある。患者が1回以上の脱髄性症状を患う場合、この疾患は、再発性散在性脳脊髄炎または多相性散在性脳脊髄炎と呼ばれる。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「急性出血性白質脳炎」、「AHL」及び「AHLE」は、超急性及び高頻度の致命的な形態のADEMを指す。この疾患は、急性壊死性脳症(ANE)、急性出血性脳脊髄炎(AHEM)、急性壊死性出血性白質脳炎(ANHLE)、ウエストン−ハースト(Weston−Hurst)症候群、またはハースト病としても知られている。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「投与」は、本明細書に記載の化合物、化合物のプロドラッグ、または化合物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を提供することを指す。化合物または組成物は、別の人によって対象に投与され得るか、または対象によって自己投与され得る。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「成人レフサム病」は、細胞及び組織におけるフィタン酸の過剰蓄積に関連する常染色体劣性神経疾患を指す。成人レフサム病は、成人レフサム病1と成人レフサム病2のサブタイプに分類される。レフサム病患者は、神経学的損傷、小脳変性、及び末梢神経障害を呈している。発症は段階的経過を伴う小児期/思春期で最も一般的であるが、停滞または寛解の期間が生じる。症状には、運動失調、鱗状皮膚(魚鱗癬)、難聴、及び白内障及び夜盲症を含む眼の問題も含まれる。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「アレキサンダー病」は、非常に稀な先天性脱髄疾患を指す。この疾患は主に幼児及び小児に影響を及ぼし、発達遅延及び身体的特徴の変化をもたらす。アレキサンダー病は、白質ジストロフィーの一種である。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「アルツハイマー病」は、最も一般的な型の認知症を指す。アルツハイマー病の症状には、記憶喪失、混乱、過敏性、攻撃性、気分変動、言語障害が含まれる。この疾患は、大脳皮質及び特定の皮質下領域におけるニューロン及びシナプスの喪失を特徴とする。この喪失により、側頭葉ならびに前頭皮質及び帯状回の部分の変性を含む影響を受けた領域の著しい萎縮が生じる。アミロイド斑及び神経原線維変化は、この疾患に罹患した人々の脳において、顕微鏡で見ることができる。アルツハイマー病の原因は不明であるが、この疾患には、年齢に関連した脳のミエリン分解によって引き起こされるということを含む、いくつかの仮説が存在する。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「バロー同心性硬化症」は、標準的な多発性硬化症に類似した脱髄疾患を指すが、脱髄した組織が同心円状の層を形成するという特殊性を有する。この疾患の患者は生存することができ、及び/または自然寛解を有することができる。通常、臨床経過は原発性進行性であるが、再発寛解の経過が報告されている。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「カナバン病」は、脳の神経細胞に進行性の損傷を引き起こす常染色体劣性変性疾患を指す。カナバン病は、白質ジストロフィーであり、乳児期の最も一般的な変性性脳疾患の1つである。この疾患は、カナバン−ファン・ボーゲル−ベルトラン(Canavan−Van Bogaert−Bertrand)病、アスパルトアシラーゼ欠損症及びアミノアシラーゼ2欠損症とも呼ばれる。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「橋中心髄鞘崩壊症」及び「CPM」は、脳幹における神経細胞のミエリン鞘、より正確には橋と呼ばれる領域の重度な損傷によって引き起こされる神経疾患を指す。最も一般的な原因は、低い血中ナトリウム濃度(低ナトリウム血症)の急速な矯正である。この疾患で頻繁に観察される症状は、急激な不全対麻痺または四肢不全麻痺、嚥下困難、構音障害、複視及び意識喪失である。患者は、認知機能は損なわれていないが、目の瞬きを除くすべての筋肉が麻痺する、閉じ込め症候群になることもある。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「脳性麻痺」は、身体的障害を引き起こす永続的で非進行性の運動障害の群を指す。脳性麻痺は、発達中の脳の運動中枢に対する損傷によって引き起こされ、妊娠中、出産中、または生後約3歳までに起こり得る。脳性麻痺の患者は、ミエリン鞘に損傷を示す。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「脳腱黄色腫症」は、脳及び他の組織におけるコレステロール(コレスタノール)の一種の蓄積に関連し、血漿中のコレステロールレベルは上昇を伴うが、正常な総コレステロールレベルを有する、遺伝性疾患を指す。これは、思春期後に始まる進行性小脳性運動失調ならびに、若年性白内障、若年期または乳児期に発症する慢性下痢、小児期の神経障害、および腱黄色腫または結節性黄色腫を特徴とする。この疾患は、常染色体劣性型の黄色腫症である。これは、白質ジストロフィーと呼ばれる遺伝性疾患の群の中に入る。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー」及び「CIDP」は、末梢神経系の後天性免疫介在性炎症性疾患を指す。この疾患は、慢性再発性多発ニューロパチー(CRP)または慢性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチー(神経根を伴うため)と呼ばれることもある。CIDPはギラン−バレー症候群と密接に関連しており、それはその急性疾患の慢性的な疾患と考えられている。その症状は、進行性炎症性ニューロパチーとも類似している。CIDPの非対称性の変種は、ルイス−サムナー症候群として知られる。疾患の病理学的特徴はミエリン鞘の喪失である。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「脱髄疾患」は、ミエリンが損傷もしくは喪失している、またはミエリン鞘の成長もしくは発達が障害されている神経系の疾患を指す。脱髄は、冒された神経においてシグナルの伝達を阻害し、これにより感覚、運動、認知、または神経が関与する他の機能に障害が生じる。脱髄疾患は、多くの異なる原因を有し、遺伝性または後天性であり得る。場合によって、脱髄疾患は、感染因子、自己免疫応答、毒性物質または外傷によって引き起こされる。他の場合において、脱髄疾患の原因は不明であり(「特発性」)、または複数の因子の組み合わせにより発症する。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「誘導体」は、親化合物に由来するか、または親化合物から理論的に誘導可能である化合物または化合物の部分を指す。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「デビック症候群」は、ヒトの免疫系が視神経及び脊髄を攻撃することにより視神経の炎症(視神経炎)及び脊髄の炎症(脊髄炎)が結果として起こる、自己免疫性炎症性疾患を指す。脊髄病変は、脚または腕の様々な程度の衰弱または麻痺、感覚の喪失、及び/または膀胱及び腸の機能不全をもたらす。炎症は脳にも影響するが、病変はMSで観察される病変とは異なる。デビック症候群は、身体の免疫系が神経細胞を囲むミエリンを攻撃するという点でMSと類似している。標準的なMSとは異なり、この攻撃は免疫系のT細胞によって媒介されるのではなく、むしろNMO−IgGと呼ばれる抗体によって媒介されると考えられている。これらの抗体は、星状細胞の細胞膜中のアクアポリン4と呼ばれるタンパク質(細胞膜を横切る水の輸送のためのチャネルとして作用する)を標的とする。デビック症候群は、デビック症候群または視神経脊髄炎(NMO)としても知られている。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「びまん性髄鞘破壊硬化症(diffuse myelinoclastic sclerosis)」は、偽腫瘍脱髄病変として臨床的に存在する、珍しい神経変性疾患を指す。それは通常5歳から14歳の子供に影響を与える小児期に始まるが、大人の場合もあり得る。この疾患は、MSの境界型の1つと考えられ、時にはシルダー病と呼ばれる。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、その薬剤で処置される対象において所望の効果を達成するのに十分な特定の薬剤の量を指す。理想的には、薬剤の有効量とは、対象において実質的な毒性をもたらすことなく疾患を抑制または治療するのに十分な量である。薬剤の有効量は、処置される対象、疾患の重症度、及び医薬組成物の投与方法に依存され得る。対象において所望の効果を達成するのに十分な開示化合物の有効量を決定する方法は、本開示を踏まえて当業者に理解されるであろう。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「脳脊髄炎」という用語は、脳及び脊髄の炎症を指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「実験的自己免疫性脳脊髄炎」及び「EAE」は、MSの動物モデルを指す(例えば、Gold et al.Brain129,1953−1971(2006)を参照)。EAE動物は、中枢神経系の至るところに散在する組織傷害の特徴的なプラークを示す。プラークは、脳及び脊髄における神経細胞軸索を囲むミエリン鞘の破壊を引き起こすリンパ球、形質細胞、及びマクロファージによる神経組織の浸潤を示す。いくつかの場合、EAEは、ミエリンまたはミエリンの種々の成分のいずれかでの、感受性動物(例えば、マウス、ラット、モルモットまたはヒト以外の霊長類)の免疫化によって誘導される。例えば、EAEは、ミエリン塩基性タンパク質、プロテオリピドタンパク質、またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)などのミエリン鞘の成分での免疫化によって誘導することができる。EAEは、自己免疫性CNS組織傷害のメカニズムを研究するため、そしてMSに対する有望な治療法を試験するために有用であり、広く受け入れられているモデルである。EAEはまた、ドナー動物において同じ様式で誘導される「受動的EAE」も含むが、ドナー動物のリンパ節から回収された活性化T細胞の、未処置の被移植動物への移植を含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「ギラン−バレー症候群」は、末梢神経系に影響を与える疾患である、急性多発ニューロパチーを指す。上行性麻痺、足と手から始まり体幹に移行する衰弱が最も典型的な症状であり、一部のサブタイプは感覚または痛みの変化ならびに自律神経系の機能不全を引き起こす。特に呼吸筋が冒されている場合、または自律神経系が関与している場合、命に関わる合併症を引き起こす可能性がある。この病気は、通常、感染によって引き起こされる。急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(AIDP)は、この疾患の最も一般的なサブタイプである。ギラン−バレー症候群の他のサブタイプには、Miller Fisher症候群、急性運動性軸索型ニューロパチー(Chinese paralytic syndrome)、急性運動感覚性軸索型ニューロパチー、急性全自律神経ニューロパチー(acute panautonomic neuropathy)、及びビッカースタッフ脳幹脳炎が含まれる。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「出血」は、血管から出血すること、または血管からの血液の漏出を指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「低酸素症」は、身体の組織への、正常レベル未満の酸素供給不足を指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「特発性炎症性脱髄疾患」及び「IIDD」は、通常、臨床所見、画像所見、検査所見及び病理所見に基づいて区別され得る広範囲の中枢神経系障害を指す。特発性炎症性脱髄疾患は、時に、多発性硬化症の境界型として知られる。IIDDは、一般的に視神経脊髄型MS、デビック病、ADEM、急性出血性白質脳炎、バロー同心性硬化症、シルダー病、マールブルグ多発性硬化症、腫瘤様多発性硬化症(tumefactive multiple sclerosis)及び単発性硬化症(solitary sclerosis)を含むが、これらに限定されない多発性硬化症の変種の疾患の集合を指す。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「乳児型レフサム病」は、極長鎖脂肪酸及び分枝鎖脂肪酸(フィタン酸など)ならびにプラスマロゲン生合成の異化の欠損に関連するペルオキシソーム形成異常症を指す。乳児型レフサム病は、稀な常染色体劣性先天性疾患であり、ペルオキシソーム形成異常症のツェルウェーガースペクトラムに属する、3つのペルオキシソーム形成異常症の1つである。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「傷害」は、細胞、組織または身体に対する任意の種類の物理的損傷を指す。いくつかの場合において、神経系(例えば、CNSまたはPNS)の傷害により、脱髄及び/または脱髄疾患が生じる。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「虚血」とは、例えば、1つ以上の血管の狭窄または閉塞によって、身体の器官、組織または部分への血液供給の低下が引き起こされる血管現象を指す。虚血は、時には血管収縮、血栓症または塞栓症により生じる。虚血は、直接的な虚血傷害、減少した酸素供給によって引き起こされる細胞死による組織損傷をもたらす可能性がある。場合によっては、虚血により脱髄がもたらされ得る。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「クラッベ病」は、神経系のミエリン鞘に影響を及ぼす、稀で多くの場合に致命的な変性疾患を指す。それはスフィンゴ脂質の機能障害性の代謝を伴うので、スフィンゴリピドーシスの一種である。この病状は、常染色体劣性様式で遺伝する。クラッベ病は、グロボイド細胞白質ジストロフィーまたはガラクトシルセラミドリピドーシスとしても知られる。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「レーバー遺伝性視神経障害」は、ミトコンドリアに遺伝した(母から子孫に伝達される)急性または亜急性の中心視の喪失につながる網膜神経節細胞(RGC)及びその軸索の変性を指し、これは若年成人男性に主に影響を与える。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「白質ジストロフィー」は、ミエリン鞘の成長または発達に影響を及ぼす疾患群を指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「白質脳症」は、脳の白質に影響を及ぼす任意の疾患群を指し、例えば、「白質の消失を伴う白質脳症」及び「中毒性白質脳症」を含むいくつかの疾患を具体的に指すことができる。白質脳症は、白質ジストロフィー様の疾患である。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「マールブルグ多発性硬化症」は、中枢神経系が、標準的な多発性硬化症に対して非典型的な特徴を伴う、複数の脱髄病変を有する病態を指す。この疾患は、多発性硬化症の境界型であり、腫瘤様多発性硬化症(tumefactive multiple sclerosis)または劇症型多発性硬化症(fulminant multiple sclerosis)としても知られる。病変は「腫瘤様」であり、臨床的に、放射線学的に、そして時には病理学的に腫瘤に似ているため、腫瘤様と呼ばれる。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「マルキアファーヴァ−ビニャミ病」は、脳梁脱髄及び壊死ならびにその後の萎縮を特徴とする進行性の神経疾患を指す。これは典型的に慢性アルコール依存症に関連している。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「異染性白質ジストロフィー」及び「MLD」は、白質ジストロフィーのファミリーに加えて、スフィンゴ脂質の代謝に影響を及ぼすようなスフィンゴリピドーシスに一般に列挙される、リソソーム蓄積症を指す。MLDは、酵素のアリールスルファターゼAの欠損によって直接的に引き起こされる。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「多巣性運動ニューロパチー」及び「MMN」は、四肢の筋肉が徐々に弱くなり、徐々に悪化していく病態を指す。この疾患(運動ニューロパチー症候群)は、特に筋肉の繊維束性収縮が存在する場合、臨床像における類似性のために、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と時に誤認されることがある。MMNは通常非対称であり、自己免疫性であると考えられている。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「多発性硬化症」及び「MS」は、脳及び脊髄における脱髄の散在性の斑によって特徴付けられる緩徐進行型のCNS疾患を指し、通常は寛解及び悪化を伴う複数の様々な神経学的症状及び徴候を生じる。MSの原因は不明であるが、免疫学的異常が疑われる。家族発生率の増加は遺伝的感受性を示唆し、女性は男性よりもいくらか多く影響を受けやすい。MSの症状には、衰弱、協調運動障害、感覚異常、言語障害、及び視覚障害(最も一般的には複視)が含まれる。より具体的な徴候及び症状は、病変の場所ならびに炎症及び硬化の過程の重症度及び破壊性に依存する。再発寛解型多発性硬化症(RRMS)は、明確に定義された、発症の間に完全または部分的な回復を伴い、及び発症の間の疾患の進行がない急性発症を特徴とする、MSの臨床経過である。二次進行型多発性硬化症(SPMS)は、当初は再発寛解型であり、次に時々の再発と軽度の寛解を伴って、様々な速度で進行性になるMSの臨床経過である。一次進行型多発性硬化症(PPMS)は、最初に進行型で現れる。臨床的に特定された症候群は、CNSの1つ以上の部位の炎症/脱髄によって引き起こされる、最初の神経症状である。進行性再発性多発性硬化症(PRMS)は、急な再発であるが寛解を伴わずに発症からの病状が徐々に悪化することを特徴とする、稀な形態のMS(約5%)である。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「ミエリン」は、ある特定の神経線維の軸索の周りに鞘(ミエリン鞘として知られる)を形成する脂質の物質を指す。ミエリンは、神経線維の神経インパルスの伝導を速めるのに役立つ電気絶縁体である。「ミエリン化」(「髄鞘化」も)は、神経線維周囲のミエリン鞘を発達または形成させることを指す。同様に、「再ミエリン化」(「再髄鞘化」も)は、傷害、毒性物質への曝露、または炎症反応などのミエリン鞘の修復または再形成、または脱髄疾患の経過中のミエリン鞘の修復または再形成を指す。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「神経変性疾患」は、神経系の進行性の悪化を特徴とする任意の型の疾患を指す。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「ニューロパチー」は、末梢神経系における機能障害または病理学的変化を指す。軸索型ニューロパチーは、軸索の正常な機能を妨害する疾患を指す。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「パラプロテイン血症性脱髄性多発ニューロパチー(paraproteinemic demyelinating polyneuropathy)」は、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)に対する自己抗体を特徴とする一種の末梢神経障害を指す。 抗MAG抗体は、ミエリンの産生を阻害することによってニューロパチーを引き起こす。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「ペリツェウス−メルツバッハ病」及び「PMD」は、協調、運動機能及び知的機能が可変範囲に対して遅滞している稀な中枢神経系障害を指す。この疾患は、総じて白質ジストロフィーとして知られる、一連の遺伝性疾患群の1つである。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「腓骨筋萎縮」及び「PMA」は、身体の様々な部分にわたる筋組織及び触覚の進行性喪失を特徴とする、末梢神経系の遺伝的及び臨床的に異種の群の遺伝性疾患を指す。この疾患は、シャルコー−マリー−トゥース病(CMT)、シャルコー−マリー−トゥースニューロパチー及び遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN)としても知られる。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」は、薬学的に許容される担体と共に製剤化された、本明細書に記載の1つ以上の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物を指し、これには他の添加物を含めることも可能であり、そして哺乳動物おける疾患の治療のための治療レジメンの一部として、政府規制機関の承認により製造または販売される。医薬組成物は、例えば、単位剤形での経口投与用(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルキャップまたはシロップ)、局所投与用(例えば、クリーム、ゲル、ローション、または軟膏として)、静脈内投与用(例えば、塞栓性の粒子を含まない滅菌溶液として、及び静脈内使用に適した溶媒系で)、または本明細書に記載される任意の他の製剤に製剤化することができる。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」は、開示される化合物以外の任意の成分、またはその薬学的に許容される塩を指し(例えば、活性化合物を懸濁または溶解することができる担体)、患者において非毒性かつ非炎症性であるという特性を有する。賦形剤には、例えば、固結防止剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮助剤、崩壊剤、染料(着色剤)、軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、フィルム形成剤またはフィルムコーティング剤、着香剤、芳香剤、滑剤(流動促進剤)、潤滑剤、防腐剤、印刷インク、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味料、または水和水(waters of hydration)が含まれ得る。例示的な賦形剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファー化デンプン、プロピルパラベン、レチニルパルミテート、セラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、ステアリン酸、精製白糖、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトールが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、従来の方法によって調製される塩を指す。これらには、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、及びマンデル酸などの無機酸及び有機酸の塩基性塩が含まれるが、これらに限定されない。現在開示されている化合物の「薬学的に許容される塩」には、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛などのカチオンから、ならびにアンモニア、エチレンジアミン、N−メチル−グルタミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N、N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及び水酸化テトラメチルアンモニウムのような塩基から形成される化合物も含まれる。これらの塩は、標準的な手順、例えば、遊離酸と適切な有機塩基または無機塩基との反応によって調製され得る。あるいは、本明細書に列挙された任意の化合物は、その薬学的に許容される塩として投与され得る。薬学的に許容される塩には、開示される化合物の遊離の酸、塩基、及び両性イオン形態も含まれる。例示的な薬学的に許容される塩についての説明は、Stahl and Wermuth,Eds.,Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties, Selection and Use,Wiley VCH(2008)に見出すことができる。本明細書に開示される化合物がカルボキシ基などの酸性基を含む場合、カルボキシ基のための適切な薬学的に許容されるカチオン対は、当業者によく知られており、これにはアルカリ、アルカリ土類、アンモニウム及び第4級アンモニウムカチオンが含まれるが、これらに限定されない。このような塩は、当業者に知られている。同様に、本明細書に開示される化合物がアミノ基のような塩基性基を含む場合、塩基性基の適切な薬学的に許容されるアニオン対は同様によく知られており、これにはハロゲン化物、水酸化物、過ハロゲン酸塩(perhalate)、亜ハロゲン酸塩(halite)、次亜ハロゲン酸塩(hypohalite)、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及び当業者に公知の他のものが挙げられる。薬学的に許容される塩のさらなる例については、Berge et al.J.Pharm.Sci.66,1(1977)を参照されたい。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「進行性多巣性白質脳症」及び「PML」は、複数の場所における脳の白質の進行性損傷または炎症を特徴とする、稀で通常は致命的なウイルス性疾患を指す。PMLは、ほぼ例外なく、重度の免疫不全を有する人々に生じる。PMLの原因は、JCウイルスと呼ばれるポリオーマウイルスの一種である。このウイルスは広範に行き渡っており、一般人口の86%が抗体を提示しているが、通常は不顕性のままであり、免疫システムが著しく弱まった場合にしか発症しない。PMLは脱髄疾患であり、神経細胞の軸索を覆うミエリン鞘が徐々に破壊されると、神経インパルスの伝達は損なわれる。この疾患は、免疫抑制薬を受けている移植患者または特定の種類の薬物療法を受けている移植患者のような、重篤な免疫不全を有する対象(例えば、ヒト)で起こり得る。例えば、PMLはリツキシマブ(多発性硬化症の治療における適応外使用)の投与に使用されている。それは大部分が脳の最外部(皮質)からの軸索で構成される白質に影響を及ぼす。症状としては、衰弱または麻痺、失明、言語障害、及び認知力低下が挙げられる。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「ソベチロム」は、高コレステロール血症の有望な治療薬として臨床的に検討された合成ジアリールメタン誘導体を指す(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,883,294号を参照)。文献及び規制当局への申請書に記載されているソベチロムの他の名称には、QRX−431及びGC−1が含まれる。ソベチロムは本明細書において、化合物1とも呼ばれる。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)を指す。本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、脱髄、不十分な髄鞘形成、またはミエリン鞘の形成不全を伴う神経変性疾患と診断された対象、例えば多発性硬化症または脳性麻痺と診断された対象、またはその病状を発症するリスクのある対象であり得る。診断は、当分野で公知の任意の方法または技術によって実施され得る。当業者は、本開示に従って治療される対象は、病気もしくは病態に関連する1つ以上の危険因子の存在によりリスクのある対象の場合、標準的な試験に供されても良く、または検査をせずに特定されても良いことを理解するであろう。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「横断性脊髄炎」は、脊髄の灰質及び白質の炎症過程によって引き起こされる神経疾患を指し、軸索の脱髄をもたらす。脱髄は、感染もしくはワクチン接種後、または多発性硬化症により特発的に起こる。症状には、四肢の衰弱及び麻痺、ならびに運動障害、感覚障害、及び括約筋障害が挙げられる。重篤な背部痛は、疾患の発症時に一部の患者で生じ得る。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「治療」は、疾患または病的状態の徴候または症状を改善させる介入を指す。本明細書で使用する場合、疾患、病的状態または症状に関して「治療(treatment)」、「治療する(treat)」及び「治療(treating)」という用語は、治療の観察可能で有益なあらゆる効果も指す。有益な効果は、例えば、感受性対象における疾患の臨床症状の発症の遅延、疾患のいくつかまたは全ての臨床症状の重症度の低下、疾患の進行の緩徐化、疾患の再発回数の減少、対象の全体的な健康状態または幸福の向上、または特定の疾患に特異的である当技術分野で周知の他のパラメータによって証明され得る。予防的処置は、疾患の徴候を示さない、または早期の徴候のみを示す対象に、病状を発症するリスクを減少させる目的で施される処置である。治療的処置は、疾患の徴候及び症状が発現した後に対象に施される処置である。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「熱帯性痙攣不全対麻痺」及び「TSP」は、不全対麻痺、脚の衰弱をもたらすヒトTリンパ好性ウイルスによる脊髄感染を指す。TSPは、HTLV関連ミエロパシーまたは慢性進行性ミエロパシーとしても知られる。名前が示すように、この疾患はカリブ海やアフリカを含む熱帯地域で最も一般的である。
【0063】
本明細書で使用する場合、用語「ファン・デル・ナップ(Van der Knaap)病」は、遺伝性CNS脱髄疾患の一形態を指す。この病気は一種の白質ジストロフィーであり、皮質下嚢胞を伴う大頭型白質脳症(MLC)としても知られる。
【0064】
本明細書で使用する場合、用語「X連鎖性副腎白質ジストロフィー」、「X−ALD」、「ALD」及び「X連鎖性ALD」は、進行性脳損傷、精神機能低下、副腎不全、筋痙攣、失明及び最終的には死に至る、稀で遺伝性代謝異常を指す。ALDは、白質ジストロフィーと呼ばれる遺伝性疾患群のうちの1つの疾患である。副腎白質ジストロフィーにより、徐々にミエリンは損傷を受ける。X連鎖性ALDの男性患者は、7つの表現型、すなわち小児大脳(植物状態につながる進行性の神経変性衰弱)、思春期(小児大脳型に類似しているが、進行が遅い)、副腎脊髄ニューロパチー(進行性神経障害、不全対麻痺により脳合併症へと進行し得る)、成人大脳(認知症、小児大脳型と同様の進行)、オリーブ橋小脳(脳及び脳幹の合併症)、アジソン病(副腎不全)、無症状(臨床症状なし、無症候性副腎不全、またはAMN表現型)に分けられ得る。X連鎖ALD女性患者は、5つの表現型、すなわち無症候(神経または副腎の合併症がない)、軽度のミエロパシー、中等度〜重度のミエロパシー(男性AMN表現型と類似)、大脳(進行性認知症及び衰弱)、及び副腎(原発性副腎皮質機能不全)に分類され得る。X連鎖ALD患者は、1つの表現型から別の表現型へ、その生涯にわたって進行し得る。ALDはアジソン−シルダー病またはシーメリング−クロイツフェルト(Siemerling−Creutzfeldt)病としても知られている。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「ツェルウェーガー症候群」は、個体の細胞における機能性ペルオキシソームの減少または欠損を特徴とする稀な先天性疾患を指す。この疾患は、白質ジストロフィーとして分類され、そしてこれはペルオキシソーム形成異常症のツェルウェーガースペクトラムに属する3つのペルオキシソーム形成異常症の1つである。
【0066】
II.ソベチロム誘導体
第1の態様において、本発明は式Iに記載の化合物、
またはその任意の薬学的に許容される塩を提供し、
式中、
R
1及びR
2は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードからなる群から独立して選択され、ならびに
R
3は、−OH及び−NR
3aR
3bからなる群から独立して選択され、
R
3aは、水素及びC
1〜6アルキルからなる群から独立して選択され、ならびに
R
3bはC
1〜6アルキルである。
【0067】
いくつかの実施形態において、R
1はフルオロであり、かつR
2はクロロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
1はクロロであり、かつR
2はフルオロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
1はブロモであり、かつR
2はフルオロ、クロロ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
1はヨードであり、かつR
2はフルオロ、クロロ、及びブロモからなる群から選択される。
【0068】
いくつかの実施形態において、R
2はフルオロであり、かつR
1はクロロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
2はクロロであり、かつR
1はフルオロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
2はブロモであり、かつR
1はフルオロ、クロロ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
2はヨードであり、かつR
1はフルオロ、クロロ、及びブロモからなる群から選択される。
【0069】
いくつかの実施形態において、R
3は−OHであり、R
1はフルオロであり、かつR
2はクロロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−OHであり、R
1はクロロであり、かつR
2はフルオロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−OHであり、R
1はブロモであり、かつR
2はフルオロ、クロロ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−OHであり、R
1はヨードであり、かつR
2はフルオロ、クロロ、及びブロモからなる群から選択される。
【0070】
いくつかの実施形態において、R
3は−OHであり、R
2はフルオロであり、かつR
1はクロロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−OHであり、R
2はクロロであり、かつR
1はフルオロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−OHであり、R
2はブロモであり、かつR
1はフルオロ、クロロ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−OHであり、R
2はヨードであり、かつR
1はフルオロ、クロロ、及びブロモからなる群から選択される。
【0071】
いくつかの実施形態において、R
3は−NHR
3bであり、R
1はフルオロであり、かつR
2はクロロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−NHR
3bであり、R
1はクロロであり、かつR
2はフルオロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−NHR
3bであり、R
1はブロモであり、かつR
2はフルオロ、クロロ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−NHR
3bであり、R
1はヨードであり、かつR
2はフルオロ、クロロ、及びブロモからなる群から選択される。いくつかのそのような実施形態において、R
3bはC
1〜6アルキルである。R
3bは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、分枝ペンチル、n−ヘキシルまたは分枝ヘキシルであり得る。いくつかの実施形態において、R
3bはメチルである。
【0072】
いくつかの実施形態において、R
3は−NHR
3bであり、R
2はフルオロであり、かつR
1はクロロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−NHR
3bであり、R
2はクロロであり、かつR
1はフルオロ、ブロモ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−NHR
3bであり、R
2はブロモであり、かつR
1はフルオロ、クロロ、及びヨードからなる群から選択され、またはR
3は−NHR
3bであり、R
2はヨードであり、かつR
1はフルオロ、クロロ、及びブロモからなる群から選択される。いくつかのそのような実施形態において、R
3bはC
1〜6アルキルである。R
3bは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、分枝ペンチル、n−ヘキシルまたは分枝ヘキシルであり得る。いくつかの実施形態において、R
3bはメチルである。
【0073】
いくつかの実施形態において、R
1及びR
2は、クロロ及びブロモからなる群から独立して選択される。
【0074】
いくつかの実施形態において、R
1及びR
2は、ともにブロモである。いくつかの実施形態において、R
1及びR
2は、ともにブロモであり、かつR
3は−OHである。
【0075】
いくつかの実施形態において、R
1及びR
2はともにブロモであり、R
3は−NHR
3bであり、かつR
3bはC
1〜6アルキルである。R
3bは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、分枝ペンチル、n−ヘキシルまたは分枝ヘキシルであり得る。いくつかの実施形態において、R
3bはメチルである。
【0076】
いくつかの実施形態において、R
1及びR
2は、ともにクロロである。いくつかの実施形態において、R
1及びR
2は、ともにクロロであり、かつR
3は−OHである。
【0077】
いくつかの実施形態において、R
1及びR
2は、ともにクロロであり、R
3は−NHR
3b、かつR
3bはC
1〜6アルキルである。R
3bは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、分枝ペンチル、n−ヘキシルまたは分枝ヘキシルであり得る。いくつかの実施形態において、R
3bはメチルである。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明は以下の構造の化合物、
またはその薬学的に許容される塩を提供し、ここでR
1及びR
2は、ともにハロ(フルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨードを含む)である。いくつかの実施形態において、R
1及びR
2は、ともにブロモである。いくつかの実施形態において、R
1及びR
2は、ともにクロロである。いくつかの実施形態において、R
1はブロモ、かつR
2はクロロである。いくつかの実施形態において、R
1はクロロ、かつR
2はブロモである。
【0079】
GC−1は、肝臓でTRβを活性化することによる高コレステロール血症のための心臓温存治療として設計されたが、最近の研究では、多発性硬化症(Baxi EG et al.Glia62,1513−1529(2014)、参照により本明細書に組み込まれる)からX連鎖性副腎白質ジストロフィー(Hartley,M.D.et al.Endocrinology158,1328−1338(2017)、Genin EC et al.J Steroid Biochem Mol Biol 116,37−43(2009)、これらの両方が参照によって本明細書に組み込まれる)に及ぶ脱髄疾患において、その可能性が実証されている。これらの有望な結果にもかかわらず、脱髄の治療におけるGC−1の有効性は、低い脳取り込みによって潜在的に制限され(Trost et al.200(前掲))、そして甲状腺ホルモンT3(すなわち、トリヨードチロニン、(2S)−2−アミノ−3−[4−(4−ヒドロキシ−3−ヨード−フェノキシ)−3,5−ジヨード−フェニル]プロパン酸)と比較して受容体活性化が低下した。GC−1の構造的特徴の多くは、その結合親和性及び受容体選択性にとって重要であるが、(Yoshihara et al.2003、前掲)、3,5−ジメチル成分は最適ではない。数多くの構造−活性相関及び定量的構造−活性相関データが存在し、内環メチル置換を有する甲状腺ホルモン様物質は、内環ハロゲン置換を有する構造的に類似の類似体と比較して、有意に低下した活性を有することを示している。
【0080】
ヨードを含まない類似体の3’−イソプロピル−3,5−ジブロモ−L−チロニン(DIBIT)は、ラットの心拍上昇及び抗甲状腺腫アッセイにおいて、L−T4よりも2〜7倍強力であった(Taylor RE et al.Endocrinology80,1143−1147(1967)、参照により本明細書に組み込まれる)が、ハロゲンを含まない類似体3’−イソプロピル−3,5−ジメチル−DL−チロニン(DIMIT)は、同じアッセイにおいて、僅かな測定可能な活性を有していた(Jorgensen EC and Wright J,J Med Chem13,745−747(1970)、参照により本明細書に組み込まれる)。TRα選択的化合物CO22及びCO24については、内環メチル基の臭素による置換が、結合親和性を15倍向上させた(Ocasio CA and Scanlan TS、ACS Chem Biol1,585−593(2006)及びOcasio CA and Scanlan TS、Bioorg Med Chem16、762−770(2008)、これらの両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。
【0081】
スキーム1.TRアゴニストの化学構造
【0082】
甲状腺ホルモン類似体のQSSR研究から、これらの知見に対する機構、すなわち内環ハロゲンがTRリガンド結合ドメインの主鎖カルボニルと双極子相互作用を形成することで結合親和性及び選択性に影響を及ぼすことが示唆された(Valadares NF et al.J Chem Inf Model49,2606−2616(2009)、参照により本明細書に組み込まれる)。これらのデータから、GC−1は、内環メチル基をハロゲンで置換した新しい類似体を合成することによって改善され得ることが示唆される。
【0083】
GC−1の内環メチル基をハロゲンで置換するには、新しい合成アプローチが必要であった。参照により本明細書に組み込まれる、Dabrowski M et al.Tetrahedron Letters46,4175−4178(2005)に記載される研究では、リチウムアミド試薬を用いてシリル保護された3,5−ジハロフェノールの4位を選択的に脱プロトン化することによって、必要な4−ヒドロキシ−2,6−ジハロベンズアルデヒド中間体を生成するための鋳型がもたらされた。この方法は、Dabrowskiによって使用されたメチルエーテル及びトリメチルシリルエーテル保護基を、より立体的で嵩高いトリエチルシリルエーテル保護基で置き換えることによって改善され、これは脱プロトン化の選択性を有意に改善した。これらの中間体は、参照により本明細書に組み込まれる、Placzek AT and Scanlan TS,Tetrahedron71,5946−5951(2015)で報告されたGC−1合成を僅かに改変したバージョンで使用された。4−ヒドロキシ−2,6−ジハロベンズアルデヒド中間体は、フェノールの求核性を低下させるハロゲン置換のために、標準的な炭酸セシウム/DMF条件を使用してクロロ酢酸tertブチルでアルキル化することができなかった。しかし、in situでフィンケルシュタイン反応を介して塩化アルキルをヨウ化アルキルに変換した後、その反応を完了し、そして良好な収率となった。
【0084】
スキーム2.JD−20(9a)及びJD−21(9b)の合成
試薬及び条件:(a)トリエチルシリルクロリド、イミダゾール、DCM、0℃、95%、(b)(i)nBuLi、DIA/TMP、THF、−78℃(ii)DMF、56〜67%、(c)tertクロロアセテート、NaI、Cs2CO3、アセトン、60〜65℃、84〜88%、(d)NaI、NaOH、NaOCl、MeOH、H
2O、87%(e)MOMCl、TBAI、NaOH、DCM、H2O、81%、(f)(i)iPMgCl、THF、0℃〜RT(ii)4、−78℃、54〜79%、(g)TFA、トリエチルシラン、DCM、0℃〜RT、58〜69%。
【0085】
tert−ブチルオキシアセテート中間体を形成した後、炭素−炭素結合形成は、ベンズアルデヒドを攻撃してカルビノール中間体を形成する7を用いてアリールマグネシウムを形成することにより、GC−1を用いた場合と同様の様式で行われた。アリールマグネシウム求核剤は、極低温でアリールクロリドまたはブロミドと置換されにくく、tert−ブチルエステル保護基と適合する。カルビノールの還元及びtert−ブチルエステル保護基及びメトキシメチルエーテル保護基の脱保護は、ジクロロメタン中TFA及びトリエチルシランを用いて同時に行った。ジブロモ類似体のJD−20は27%の全収率で合成され、ジクロロ類似体のJD−21は17%の収率で合成され、ともに5工程であった。
【0086】
III.医薬組成物
本明細書中に開示される化合物は、典型的には1種以上の薬学的に許容される担体(ビヒクルと同じ意味合いで知られる)及び任意選択で他の治療成分とともに組み合わされて医薬組成物(治療用及び予防用製剤を含む)に含めることができる。
【0087】
そのような医薬組成物は、経口、直腸、鼻腔内、肺内、硝子体内、もしくは経皮送達を含む様々な粘膜投与様式、または眼を含む他の表面への局所送達によって対象に投与するために製剤化することができる。任意選択で、組成物は、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹腔内、髄腔内、脳室内、または非経口経路を含む非粘膜経路によって投与することができる。別の実施例において、化合物は、対象に由来する細胞、組織または器官への直接的な曝露によってex vivoで投与することができる。
【0088】
医薬組成物を製剤化するために、化合物は、種々の薬学的に許容される添加剤と組み合わせることができる。所望の添加剤としては、アルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン、塩酸、クエン酸などのpH調整剤が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、局所麻酔薬(例えば、ベンジルアルコール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール)、吸着阻害剤(例えば、Tween(登録商標)−80)、溶解促進剤(例えば、シクロデキストリン及びその誘導体)、安定化剤(例えば、血清アルブミン)、及び還元剤(例えば、グルタチオン)を含めることができる。
【0089】
組成物が液体である場合、製剤の張度は、0.9%(w/v)の生理食塩水の張度を基準にして決定され、典型的には、投与部位で誘導され得る実質的に不可逆的な組織損傷が生じない値に調整される。一般に、溶液の張度は、約0.3〜約3.0、例えば約0.5〜約2.0、または約0.8〜約1.7の値に調整される。化合物は、任意の薬学的に許容される担体中に分散させることができ、これは化合物を分散させる能力を有する親水性化合物及び任意の所望の添加物を含めることができる。担体は、幅広い適切な化合物から選択することができ、ポリカルボン酸またはその塩のコポリマー、他のモノマー(例えば、メチル(メタ)アクリレート、アクリル酸など)とのカルボン酸無水物(例えば、無水マレイン酸)、親水性ビニルポリマー、例えばポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど、キトサン、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒアルロン酸、及びそれらの非毒性金属塩などの天然ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。多くの場合、生分解性ポリマーは、例えばポリ乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマー、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸グリコール酸)コポリマー及びそれらの混合物が担体として選択される。
【0090】
代替的または追加的に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの合成脂肪酸エステルを担体として使用することができる。親水性ポリマー及び他のビヒクルは、単独でまたは組み合わせて使用することができ、強化された構造的完全性が部分的結晶化、イオン結合、架橋などによってビヒクルに付与され得る。担体は、粘膜表面への直接的な塗布のために、流体または粘性溶液、ゲル、ペースト、粉末、マイクロスフェア、及びフィルムを含む様々な形態で提供され得る。
【0091】
化合物は、様々な方法に従って担体と組み合わせることができ、化合物の放出は、拡散、ビヒクルの崩壊、または関連する水路の形成によることができる。場合により、化合物は適切なポリマー、例えば、5−イソブチル2−シアノアクリレート(例えば、Michael et al.J.Pharmacy Pharmacol.43,1‐5,(1991)を参照)から調製されたマイクロカプセル(マイクロスフェア)またはナノ粒子に分散され、そして生体適合性の分散媒体中に分散されて、長期間にわたって持続的な送達及び生物学的活性をもたらす。
【0092】
化合物を投与するための医薬組成物は、高濃度の有効成分に適した溶液、マイクロエマルジョン、または他の秩序構造として製剤化することもできる。ビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)及びそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であってもよい。溶液のための適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散性製剤の場合には、所望の粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール及びソルビトールのようなポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが望ましいであろう。吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含めることにより、化合物の長期の吸収がもたらされる。
【0093】
ある特定の実施形態において、化合物は、例えば組成物に徐放性ポリマーを含む徐放性製剤で投与することができる。これらの組成物は、急速な放出を防ぐビヒクル、例えばポリマー、マイクロカプセル化送達システムまたは生体接着性ゲルなどの徐放性ビヒクルを用いて調製することができる。本開示の様々な組成物の長期の送達は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムヒドロゲル及びゼラチンを組成物に含めることによって、もたらされ得る。徐放性製剤が所望される場合、本開示に従う使用に適した徐放性結合剤は、活性物質に対して不活性であり、化合物及び/または他の生物学的活性物質を組み込むことができる任意の生体適合性の徐放性材料を含む。多くのそのような材料が当技術分野で公知である。有用な徐放性結合剤は、それらの送達後の生理学的条件下で(例えば、粘膜表面で、または体液の存在下で)緩やかに代謝される物質である。適切な結合剤には、徐放性製剤に使用するための当分野で公知の生体適合性ポリマー及びコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。そのような生体適合性化合物は、毒性がなく周囲の組織に対して不活性であり、鼻の刺激、免疫応答、炎症などの著しく有害な副作用を引き起こさない。それらは代謝産物へと代謝され、これらは生体適合性で体から容易に除去される。
【0094】
本開示における使用のための例示的なポリマー材料には、加水分解可能なエステル結合を有するコポリマーポリエステル及びホモポリマーポリエステルから誘導されたポリマーマトリックスが含まれるが、これに限定されない。これらの多くは生分解性であり、毒性がないかまたは低い毒性を有する分解産物を生じることが当分野で公知である。例示的なポリマーには、ポリグリコール酸及びポリ乳酸、ポリ(DL−乳酸co−グリコール酸)、ポリ(D−乳酸−co−グリコール酸)及びポリ(L−乳酸−coグリコール酸)が含まれる。他の有用な生分解性または生体浸食性ポリマーには、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ε−アプロラクトン(aprolactone)−co−乳酸)、ポリ(ε−アプロラクトン−co−グリコール酸)、ポリ(ベタヒドロキシ酪酸)、ポリ(アルキル−2−シアノアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)などのヒドロゲル、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)(例えば、L−ロイシン、グルタミン酸、L−アスパラギン酸など)、ポリ(エステル尿素)、ポリ(2−ヒドロキシエチルDL−アスパルトアミド)、ポリアセタールポリマー、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリマレイミド、多糖類、などのポリマー、及びこれらのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。そのような製剤を調製するための多くの方法が、当業者によく知られている(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,NewYork,1978を参照)。他の有用な製剤には、徐放性マイクロカプセル(米国特許第4,652,441号及び第4,917,893号)、マイクロカプセル及び他の製剤の製造に有用な乳酸−グリコール酸コポリマー(米国特許第4,677,191号及び第4,728,721号)及び水溶性ペプチドの徐放性組成物(米国特許第4,675,189号)が挙げられる。
【0095】
本開示の医薬組成物は、典型的には滅菌されており、製造、貯蔵及び使用の条件下で、安定である。滅菌溶液は、必要に応じて1つまたは組合せの本明細書に列挙した成分とともに、必要な量の化合物を適切な溶媒中に混合し、その後濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒及び本明細書に列挙した成分の中から必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中に、当化合物及び/または他の生物学的活性物質を混合させることによって調製される。滅菌粉末の場合、調製方法には真空乾燥及び凍結乾燥が含まれ、これにより予め滅菌濾過したその溶液に由来する化合物と任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。微生物活動の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。
【0096】
IV.神経変性疾患を治療するための方法
1つ以上の開示化合物の投与を介して、神経変性疾患を有する対象を治療する方法が、本明細書中で開示される。化合物は、経口的投与、非経口的投与、または局所的投与を含む、任意の適切な経路によって投与され得る。特定の実施例において、ソベチロムまたはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。ある特定の実施例において、ソベチロムまたはその薬学的に許容される塩は、非経口的に投与される。いくつかの実施形態において、ソベチロムまたはその薬学的に許容される塩は、口腔内、舌下、口唇下、または吸入によって投与される。別の実施形態において、ソベチロムまたはその薬学的に許容される塩は、舌下投与される。さらに別の実施形態において、ソベチロムまたはその薬学的に許容される塩は、非経口的に投与される。特定の実施形態において、ソベチロムまたはその薬学的に許容される塩は、動脈内、静脈内、脳室内、筋肉内、皮下、脊髄内、眼窩内、頭蓋内または髄腔内投与される。
【0097】
開示された化合物を含む医薬組成物の投与は、予防目的または治療目的のためのものであり得る。予防及び治療目的のために、治療薬は単回のボーラス送達で、長期間にわたる連続的な送達(例えば、連続的な経皮、粘膜または静脈内送達)を介して、または反復投与プロトコル(例えば、1時間ごと、毎日または毎週の反復投与プロトコル)で、対象に投与することができる。ウイルス感染のための治療有効量の治療薬は、神経変性疾患に関連する1つ以上の症状または検出可能な症状を緩和する、臨床的に有意な転帰をもたらす長期の予防または治療レジメンの範囲内で、反復投与として提供され得る。
【0098】
開示される化合物の有効量または濃度は、単独または1つ以上のさらなる治療薬と一緒である組成物の任意の量であってもよく、対象において所望の効果を達成するのに十分な量である。薬剤の有効量は、治療される対象及び治療組成物の投与様式を含む、いくつかの因子に依存し得るが、これらに限定されない。一実施例において、治療有効量または治療有効濃度は、疾病の進行を防ぐため、進行を遅らせるため、もしくは退行を引き起こすために十分なものであり、または神経変性疾患を含む任意の疾患によって引き起こされる症状を軽減することができるものである。
【0099】
一実施例において、所望の効果は神経変性疾患に関連する1つ以上の症状を軽減または抑制することである。組成物が有効となるために、1つ以上の症状が完全に排除される必要はない。例えば、組成物は所望の量により、例えば、組成物の非存在下で徴候もしく症状がどの程度進行したかと比較して、または現在利用可能な治療薬と比較して、例えば少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、あるいは少なくとも100%の徴候または症状を減少させることができる。
【0100】
実際の有効量は、予防される/治療的に処置される神経疾患の種類及び対象の特定の状態(例えば、対象の年齢、大きさ、健康状態、症状の程度、感受性因子など)、投与の時間及び経路、同時に投与される他の薬物または治療薬、ならびに対象において所望の活性または生物学的応答を誘発するウイルス感染用治療薬の特定の薬理学などの要素に応じて変動する。投与レジメンは、最適な予防的または治療的応答を生じるように調整することができる。
【0101】
有効量とはまた、臨床用語において、治療的に有益な効果が、化合物及び/または他の生物学的活性物質の任意の毒性または有害な副作用を上回る量である。本開示の方法及び製剤の範囲内での、ウイルス感染に対する治療有効量の非限定的な範囲は、1用量につき約0.0001μg/kg体重〜約10mg/kg体重、例えば1用量につき約0.0001μg/kg体重〜約0.001μg/kg体重、1用量につき約0.001μg/kg体重〜約0.01μg/kg体重、1用量につき約0.01μg/kg体重〜約0.1μg/kg体重、1用量につき約0.1μg/kg〜約10μg/kg体重、1用量につき約1μg/kg体重〜約100μg/kg体重、1用量につき約100μg/kg体重〜約500μg/kg体重、1用量につき約500μg/kg体重〜1用量につき約1000μg/kg体重、または1用量につき約1.0mg/kg体重〜約10mg/kg体重である。
【0102】
有効量の決定は、典型的には、動物モデル試験に続いて行われるヒトの臨床試験に基づいており、対象における標的疾患症状または病態の発生または重症度を有意に低下させる投与プロトコルによって誘導される。これに関して、適切なモデルには、例えば、多発性硬化症のEAEモデルを含む、マウス、ラット、ブタ、ネコ、ヒト以外の霊長類、及び当分野で公知の他の容認された動物モデル対象が含まれる。このようなモデルを使用することで、ウイルス感染に対する治療有効量(例えば、神経変性疾患の1つまたは複数の症状を緩和するために有効な量)を投与するのに適切な濃度及び用量を決定するために、通常の計算及び調整だけが必要となる。
【実施例】
【0103】
V.実施例
以下の実施例は、説明のためだけのものである。本開示の見地から、当業者は、これらの実施例の変形形態及び開示された本発明の別の実施例が過度な実験をすることなくできることを理解するであろう。
【0104】
実施例1.材料及び方法
トランス活性化アッセイ。10%ウシ胎仔血清、50単位/mLペニシリン及び50μg/mLストレプトマイシンを含有するDubelcco改変イーグル4.5g/Lグルコース培地(高グルコースDMEM)において、ヒト上皮腎臓細胞(HEK293)を80%コンフルエントになるまで増殖させた。細胞を0.25%トリプシンでトリプシン処理し、次いで高グルコースDMEMで5x10
5細胞/mLに希釈した。細胞を5x104細胞/ウェルでCostar3917の96ウェルプレートに添加し、次いで37℃で24時間インキュベートした。TR発現ベクター(全長TRα−CMVまたはTRβ−CMV)を1.5μg、ホタルルシフェラーゼコード配列に連結された最小チミジンキナーゼプロモーターの上流にクローン化された4ヌクレオチド(AGGTCAcaggAGGTCA)により間隔の空いたDR4甲状腺ホルモン応答エレメント(TRE)直列反復配列を含有するレポータープラスミドを1.5μg、及びpRL−SV40構成Renillaルシフェラーゼレポータープラスミド0.75μgを、540μlのOptiMEMに希釈した。27μLのリポフェクタミン試薬を540μLのOptiMEMに希釈した。プラスミド及びリポフェクタミン希釈液を合わせ、次いで室温で10分間インキュベートした。次いで、その混合物を4.29mLのOptiMEMに希釈した。プレートは、1ウェル当たりマグネシウムまたは塩化カルシウムを含まないpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)100μLで洗浄した。トランスフェクション混合物を1ウェル当たり50μLで添加し、次いで37℃で4時間インキュベートした。15mMのHEPES及び重炭酸塩、5mMのL−グルタミン、チャコール処理済みFBS、50単位/mLペニシリン及び50μg/mLストレプトマイシンを含有するフェノールレッド不含の改変DME/F−12ハム培地を50μL/ウェルで添加し、次いでプレートを37℃で20時間インキュベートした。薬剤ストックをDMSO中10mMで作製し、次いでDME/F−12ハムで1X濃度まで連続希釈した。1ウェル当たり100μLのPBS(pH7.2)でプレートを洗浄した。100μLの各薬剤ストックを3連でウェルに添加し、次いでプレートを37℃で24時間インキュベートした。
【0105】
細胞は、Promega DualGloキットを用いてルシフェラーゼ活性についてアッセイされた。1ウェル当たり50μlのルシフェラーゼ試薬を添加し、プレートを室温で15分間揺らした後に、ホタルルシフェラーゼ活性についてプレートを読み取った。1ウェル当たり50μl容量のStop&Glo Reagentを添加し、次いでRenillaルシフェラーゼ活性についてプレートを読み取った。Renilla内部標準に対して標準化したデータを、シグモイド用量反応モデルを用いてGraphPad Prism v.4aで解析し、EC
50値±SEMを生成した。
【0106】
動物試験。実験プロトコルは、実験動物のケア及び使用のための国立衛生研究所のガイドラインに準拠しており、オレゴン保健科学大学機関動物用ケア及び使用委員会によって承認された。8〜10週齢の野生型雄C57BL/6Jマウスを、気温湿度が制御された部屋で12時間の明暗サイクルにて飼育し、食物及び水を自由に摂取させた。
【0107】
分布試験。マウスに、9.14μmol/kgのGC−1、及び0.914、9.14、及び30.5μmol/kgの類似体を腹腔内(ip)に単回注射した。1時間あたり1用量につき3匹のマウスに対して安楽死を行い、組織及び血液を回収した。組織は直ちに凍結させ、そして血液は氷上で最低30分間維持してから7,500×Gで15分間遠心沈殿させた。血清(100μL)を採取し、試料が処理されるまで−80℃で組織と共に保存した。
【0108】
血清の処理。血清サンプルを室温まで温め、2.99μMの内部標準(D6−GC−1)10μLをそれに添加した。アセトニトリル(500μL)を加え、試料を20秒間ボルテックスした。次いで、試料を4℃で15分間、10,000×Gで遠心分離した。次に、上清の90%をガラス試験管に移し、speedvacを用いて45℃で1.5時間濃縮した。乾燥した試料を400μLの50:50のACN:H2Oに溶解させ、20秒間ボルテックスした。得られた混合物をエッペンドルフチューブに移し、10,000×Gで15分間遠心した。上清を0.22μMの遠心フィルターで濾過し、LCMS/MS分析に供した。検量線は、T3、GC−1または類似体を注射していない8〜10週齢のマウスの血清100μLを用いて作成した。濾過後、試料を6つのバイアルに分けた以外は、全く同じ処理を行った。GC−1、JD−20及びJD−21は、(0.1pg/μL、1pg/μL、10pg/μL、100pg/μL、及び1000pg/μL)の各化合物の最終濃度/マトリックスを作製するために、6つのバイアルのうちの5つに加えた。
【0109】
脳の処理。脳試料を室温に温め、5GoldSpec1/8クロム鋼球(Applied Industrial Technologies)とともにホモジナイザーチューブに移した。得られたチューブを秤量し、次いで1mLのH
2Oを添加し、続いて10μLの2.99μMの内部標準(D6−ソベチロム)を添加した。チューブをBead Bugで30秒間ホモジナイズし、次いで3mLのACNを含むFalcon(登録商標)チューブに移した。1ml容量のACNを用いてホモジナイザーチューブを洗浄した。次いで、その溶液をFalcon(登録商標)チューブに戻した。サンプルを45℃で4時間スピードバックを用いてガラス管に濃縮した以外は、上記の血清処理と同じ方法を用いてサンプルを処理した。
【0110】
遺伝子活性化。マウスにビヒクル(1:1食塩水/DMSO)、0.305μmol/kgのT3、9.14μmol/kgのGC−1、及び0.914、9.14、及び30.5μmol/kgの類似体を腹腔内(ip)に単回注射した。2時間で1用量につき3匹のマウスに対して安楽死を行い、組織を回収した。qPCR分析のために採取された脳組織を、Trizol試薬及びPureLink RNAミニキットを用いたRNA抽出のためのプロトコルに従って、オプションのDNase処理工程中にQiagen RNase−free DNaseキットを用いて処理した。1μgの抽出RNAを用いて、Qiagen QuantiTect Reverse Transcriptionキットを使用した逆転写(RT)反応によりcDNAを合成した。RT酵素を添加せずに1つの試料を複製することにより、DNA混入を管理した。Hairless(Hr)遺伝子の発現は、QiagenのQuantiTect SYBR green PCRキットを用いてQPCRにより測定した。Hairlessのプライマー配列
は、Barca−Mayo19により以前に記載された。鋳型cDNAを、qPCR反応におけるRT試薬の干渉を最小限にするために2倍希釈した。グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)は、試料間の標準化に使用されるハウスキーピング遺伝子であった。Hr遺伝子発現の相対的差異を調べるために、比較CT法を用いて、単回投与試験のデータ解析を行った。用量反応試験のためのデータ解析は、EC
50値±SEMを生成するためにシグモイド用量反応モデルを用いてGraphPad Prism v.4aを用いて行った。
【0111】
一般化学。
1H NMRは、Bruker400で行った。全ての
1H NMRは、NMR溶媒の参照ピーク(D6−アセトン、CDCl3)に対して校正した。無水テトラヒドロフラン(THF)及びジメチルホルムアミド(DMF)は、Seca Solvent Systemから入手した。使用した他の溶媒はすべてSigma−AldrichまたはFisherから購入した。最終化合物の純度分析では、HPLCにより>95%であると決定された。HPLC分析は、Agilent Eclipse Plus C18 5μMカラム(4.6×250mm)を用いたVarian ProStar HPLC上で、15分間にわたって10%〜95%アセトニトリル(0.1%TFA)の勾配で行った。
【0112】
実施例2.(3,5−ジブロモフェノキシ)トリエチルシラン(2a)の調製
1a(5.04g、20mmol)及びイミダゾール(4.09g、60mmol)を80mLのDCMに溶解した。溶液を0℃に冷却し、次いでトリエチルシリルクロリド(5.03mL、30mmol)を加え、次いで反応物を0℃で30分間撹拌した。反応物を160mLのEt2Oで希釈し、50mLのH2Oで2回、50mLのブラインで2回洗浄してからMgSO
4で脱水させ、濾過し、濃縮して定量的収率で2aを得、これを精製せずに使用した。
1H NMR (400 MHZ, CDCl3): δ 7.37 (t, 1H), 7.10 (d, 2H), 1.02 (t, 9H), 0.82 (q, 6H)。
【0113】
実施例3.4−ヒドロキシ−2,6−ジブロモベンズアルデヒド(3a)の調製
フラスコにモレキュラーシーブを入れ、次いで真空下で火炎乾燥させた。アルゴン下で冷却した後、2a(5.49g、15mmol)を添加し、次いでフラスコを密閉して脱気し、そしてアルゴンを流した。30mLの脱水THFを添加して脱気した後、溶液を−78℃に冷却した。第2のフラスコにモレキュラーシーブを入れて、真空下で火炎乾燥させた。アルゴン下で冷却した後、ジイソプロピルアミン(4.6mL、33mmol)、続いて脱水THF60mLを加えてから溶液を脱気し、−78℃に冷却した。ヘキサン中2.5Mのn−ブチルリチウム溶液(12mL、30mmol)を添加し、次いで溶液を−78℃で1時間撹拌した。リチウムジイソプロピルアミド溶液を、カニューレを介して2a溶液に滴下して移し、次いで脱プロトンを−78℃で1時間撹拌した。5.8mLの脱水DMF(75mmol)を加え、次いで反応物を−78℃で1時間撹拌した。反応物を50mLの1N HCl水溶液にデカントした。水層を90mLのEt
2Oで3回抽出した。有機画分を合わせ、50mLのブラインで2回洗浄し、次いでMgSO
4で脱水させ、濾過、濃縮して粗生成物を得、これを−78℃にてヘキサンで沈殿させて、2.8gの3aを得た(収率67%)。
1H NMR (400 MHz, d6−アセトン) δ 10.16 (s, 1H), 7.27 (s, 2H)。
【0114】
実施例4.tert−ブチル2−(3,5−ジブロモ−4−ホルミルフェノキシ)アセテート(4a)の調製
3a(2.8g、10mmol)、ヨウ化ナトリウム(3g、20mmol)及び炭酸セシウム(3.24g、10mmol)を40mLのアセトンに溶解させた。クロロ酢酸tert−ブチル2.86mL(20mmol)を加え、次いで反応物を65℃で2時間還流した。反応物を80mLのEt
2Oで希釈し、30mLの水で2回、30mLのブラインで2回洗浄し、次いでMgSO
4で脱水させ、濾過し、そして濃縮した。生成物をヘキサンで沈殿させ、濾過により回収してから真空下で乾燥させて、3.49gの4aを得た(収率88%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 10.23 (s, 1H), 7.19 (s, 2H), 4.59 (s, 2H), 1.52 (s, 9H)。
【0115】
実施例5.(3,5−ジクロロフェノキシ)トリエチルシラン(2b)の調製
1b(6.54g、40mmol)及びイミダゾール(8.18g、120mmol)を160mLのDCMに溶解させた。溶液を0℃に冷却し、次いでトリエチルシリルクロリド(10mL、60mmol)を加えてから反応物を0℃で30分間撹拌した。反応物を320mLのEt
2Oで希釈し、100mLのH2Oで2回、75mLのブラインで2回洗浄し、次いでMgSO
4で脱水させ、濾過し、濃縮して2bを得、これを精製せずに使用し、乾燥後に秤量した(10.58g、収率95%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 6.98 (t, 1H), 6.76 (d, 2H), 1.02 (t, 9H), 0.77 (q, 6H)。
【0116】
実施例6.4−ヒドロキシ−2,6−ジクロロベンズアルデヒド(3b)の調製
フラスコにモレキュラーシーブを入れ、次いで真空下で火炎乾燥させた。アルゴン下で冷却した後、2b(3.6g、13mmol)を入れ、次いでフラスコを密閉し、排気し、アルゴンを流した。13mLの脱水THFを添加して脱気した後、溶液を−78℃に冷却した。第2のフラスコにモレキュラーシーブを入れて、真空下で火炎乾燥させた。アルゴン下で冷却した後、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(1.84g、13mmol)、続いて13mLの脱水THFを加え、次いで溶液を脱気し、−78℃に冷却した。2.5Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(5.2mL、13mmol)を加えてから、溶液を0℃で20分間撹拌した。リチウムTMP溶液を、カニューレを介して2b溶液に滴下して移し、次いで脱プロトンでは−78℃で30分間撹拌した。5mLの脱水DMF(65mmol)を加え、次いで反応物は−78℃で30分間撹拌した。反応物を15mLの1N HCl水溶液にデカントした。水層を15mLのEtOAcで3回抽出した。有機画分を合わせ、15mLのブラインで2回洗浄し、次いでMgSO4で脱水させ、濾過、濃縮して粗生成物を得、これを−20℃にてヘキサンで再結晶させて、1.39gの3bを得た(収率56%)。
1H NMR (400 MHz, d6−アセトン) δ 10.37 (s, 1H), 7.01 (s, 2H)。
【0117】
実施例7.tert−ブチル2−(3,5−ジクロロ−4−ホルミルフェノキシ)アセテート(4b)の調製
3b(1.15g、6mmol)、ヨウ化ナトリウム(1.8g、12mmol)及び炭酸セシウム(1.94g、6mmol)を24mLのアセトンに溶解させた。クロロ酢酸tert−ブチル1.72mL(12mmol)を加え、次いで反応物を60℃で24時間還流した。反応物を30mLのEt
2Oで希釈し、10mLの水で2回、そして10mLのブラインで2回洗浄し、次いでMgSO4で脱水させ、濾過して濃縮した。粗製油状物を最小量のEt
2Oに再溶解させ、次いで−78℃で激しく撹拌しているヘキサン100mLに滴下した。沈殿物を濾過により回収し、真空下で乾燥して、1.545gの4b(収率84%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 10.43 (s, 1H), 6.92 (s, 2H), 4.59 (s, 2H), 1.52 (s, 9H)。
【0118】
実施例8.4−ヨード−2−イソプロピルフェノール(6)の調製
5(6.8g、50mmol)及びNaI(7.5g、50mmol)を70mLのMeOHに溶解させた。10MのNaOH水溶液(5mL、50mmol)を加え、次いで溶液を0℃に冷却した。6.25%w/vのNaOCl水溶液(62.5mL、50mmol)を0℃で24時間かけて滴下した。反応物を12NのHCl水溶液でpH7に酸性化し、次いで10mLの飽和Na
2S
2O
3水溶液で反応停止した。水層をEt
2Oで3回抽出した。有機画分を合わせ、ブラインで2回洗浄し、次いでMgSO
4で脱水させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル、1〜20%)で精製して赤色の油状物として11.35gの6(収率87%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.47 (d, 1H), 7.36 (dd, 1H), 6.54 (d, 1H), 3.16 (m, 1H), 1.25 (d, 6H)。
【0119】
実施例9.4−ヨード−2−イソプロピル−1−(メトキシメトキシ)ベンゼン(7)の調製
6(2.62g、10mmol)及びテトラブチルアンモニウムヨージド(369mg、1mmol)を100mLのDCMに溶解させた。10MのNaOH水溶液を10mL加え、続いて5mLの6Mクロロメチルメチルエーテル/MeOAcを添加した。反応物を室温で30分間撹拌し、次いで200mLのEt
2Oで希釈した。有機層を100mLのH
2Oで2回、100mLのブラインで2回洗浄し、次いでMgSO
4で脱水させ、濾過、濃縮して粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル、1〜20%)で精製して、2.48gの7を得た(収率81%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.47 (d, 1H), 7.42 (dd, 1H), 6.83 (d, 1H), 5.18 (s, 2H), 3.47 (s, 3H), 3.27 (m, 1H), 1.20 (d, 6H)。
【0120】
実施例10.tert−ブチル2−(3,5−ジブロモ−4−(ヒドロキシ(3−イソプロピル−4−(メトキシメトキシ)フェニル)メチル)フェノキシ)アセテート(8a)の調製
フラスコに4Åモレキュラーシーブを入れ、真空下で火炎乾燥させた。7(1.47g、4.8mmol)を入れ、フラスコを密閉し、排気し、アルゴンを流した。24mLの脱水THFを添加し、脱気してから溶液を0℃に冷却した。イソプロピルマグネシウムクロリド(2M THF、5.5mL、7.2mmol)を加え、次いで反応物を室温で2時間撹拌した。第2のフラスコに4Åモレキュラーシーブを入れ、真空下で火炎乾燥させた。4a(946mg、2.4mmol)を入れ、フラスコを密閉し、排気し、アルゴンを流した。12mLの脱水THFを添加し、脱気した。アリールマグネシウム溶液を−78℃に冷却し、次いで4a溶液を、カニューレを介して滴下して添加し、反応物を−78℃で1時間攪拌した。反応を1N HCl水溶液10mLで停止させた。水層を10mLのEtOAcで3回抽出した。有機画分を合わせ、10mLのブラインで2回洗浄した。有機層をMgSO
4で脱水させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc4〜40%)で精製して1.089gの8a(収率79%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.24 (d, 1H), 7.17 (s, 2H), 7.00 (d, 1H), 6.90 (dd, 1H), 6.51 (d, 1H), 5.21 (s, 2H), 4.53 (s, 2H), 3.49 (s, 3H), 3.34 (m, 3H), 1.52 (s, 9H), 1.21 (t, 6H)。
【0121】
実施例11.2−(3,5−ジブロモ−4−((3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)−フェノキシ)酢酸(9a)の調製
8a(1.089g、1.9mmol)を19mLのDCMに1.21mLのトリエチルシラン(7.58mmol)と共に溶解させた。溶液を0℃に冷却してから4.35mLのトリフルオロ酢酸(56.9mmol)を加え、反応物を0℃で30分間、次いで室温で2時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、次いで生成物をヘキサンの添加により沈殿させ、そして濾過により回収した。固形物を真空乾燥させて505mgのJD−20(9a)を得た(収率58%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19 (s, 2H), 7.10 (d, 1H), 6.82 (dd, 1H), 6.64 (d, 1H), 4.68 (s, 2H), 4.28 (s, 2H), 3.18 (m, 1H), 1.24 (d, 6H)。
【0122】
実施例12.tert−ブチル2−(3,5−ジクロロ−4−(ヒドロキシ(3−イソプロピル−4−(メトキシメトキシ)フェニル)メチル)フェノキシ)アセテート(8b)の調製
フラスコに4Åモレキュラーシーブを入れ、真空下で火炎乾燥させた。7(459mg、1.5mmol)を入れ、フラスコを密閉し、排気し、アルゴンを流した。6mLの脱水THFを添加し、脱気してから溶液を0℃に冷却した。イソプロピルマグネシウムクロリド(2M THF、1.125mL、2.25mmol)を加え、次いで反応物を室温で2時間撹拌した。第2のフラスコに4Åモレキュラーシーブを入れ、真空下で火炎乾燥させた。4b(305mg、1mmol)を入れ、フラスコを密閉し、排気し、そしてアルゴンを流した。4mLの脱水THFを添加して脱気した。アリールマグネシウム溶液を−78℃に冷却し、次いで4b溶液を、カニューレを介して滴下して添加し、反応物を−78℃で1時間攪拌した。反応を1N HCl水溶液5mLで停止させた。水層を5mLのEtOAcで3回抽出した。有機画分を合わせ、5mLのブラインで2回洗浄した。有機層をMgSO
4で脱水させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc2〜20%)で精製して260mgの8b(収率54%)を得た。
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 7.26 (d, 1H), 6.99 (dd, 1H), 6.94 (d, 1H), 6.93 (s, 2H), 6.50 (d, 1H), 5.21 (s, 2H), 4.53 (s, 2H), 3.50 (s, 3H), 3.33 (m, 1H), 3.23 (d, 1H), 1.52 (s, 9H), 1.21 (t, 6H)。
【0123】
実施例13.2−(3,5−ジクロロ−4−((3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)−フェノキシ)酢酸(9b)の調製
8b(260mg、0.54mmol)を5.4mLのDCMに0.345mLのトリエチルシラン(2.16mmol)と共に溶解させた。溶液を0℃に冷却してから1.24mLのトリフルオロ酢酸(16.2mmol)を加え、反応物を0℃で30分間、次いで室温で2時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、次いで生成物をヘキサンの添加により沈殿させ、そして濾過により回収した。固形物を真空乾燥させて137mgのJD−21(9b)を得た(収率69%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.12 (d, 1H), 6.95 (s, 2H), 6.86 (dd, 1H), 6.64 (d, 1H), 4.68 (s, 2H), 4.18 (s, 2H), 3.17 (m, 1H), 1.24 (d, 6H)。
【0124】
実施例14.ハロゲン化化合物の生物活性
細胞をベースにしたin vitroトランス活性化アッセイは、JD−20及びJD−21が親GC−1と比較して改善された力価を有することを示す(
図1)。TRαの力価の増加は中程度であったが、TRβではT3のEC50にほぼ一致する、さらなる改善が見られた(表1)。
【0125】
(表1)TRE駆動デュアルルシフェラーゼトランス活性化アッセイからのEC50値から測定されたサブタイプ選択性
【0126】
分布試験はC57BL/6Jマウスで行い、腹腔内(ip)投与後の脳及び血清中の濃度を決定した。マウスに、9.14μmol/kg用量のGC−1、JD−20またはJD−21を単回投与した。組織及び血液を注射の1時間後に収集し、薬物の濃度をLC−MS/MS分析で測定した(
図2)。JD−21はGC−1と比較してほぼ同等の脳取り込みを示したが、JD−20は幾分低かった。JD−20及びJD−21の血清濃度はいずれもGC−1より有意に低く、これらを組み合わせると、JD−21はGC−1より高い脳:血清比率であるが、JD−20はGC−1と同等の脳:血清比率を有した。
【0127】
脳におけるTR標的遺伝子のHairless(Hr)の誘導によるmRNA発現を、qPCRにより決定し、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNAに対して標準化した(
図3)。陰性対照としてビヒクル(1:1の食塩水/DMSO)を用い、飽和用量のT3(0.305μmol/kg)及びGC−1(9.14μmol/kg)を陽性対照として使用した。9.14μmol/kgのJD−21(2.4倍)は、9.14μmol/kgのGC−1(1.6倍)と比較して有意(p<0.05)に高いHr発現の誘導を有していた。0.914μmol/kgのJD−20及びJD−21は、同一の用量でGC−1と同等のHr誘導を有することから、GC−1より約10倍高い力価が示唆される。
【0128】
GC−1、JD−20及びJD−21による、GAPDH mRNA発現に対して標準化した脳におけるHr mRNA誘導のEC
50値(
図4)を、同じ実験プロトコルを用いて決定した。GC−1のEC50は8.20±12.65μmol/kgであり、JD−20のEC50は1.49±1.08μmol/kgであり、そしてJD−21のEC50は1.21±1.75μmol/kgであり、ハロゲン化類似体は、脳でHr mRNA発現を誘導することにおいて、GC−1より約6倍強力である。
【0129】
GC−1は当分野で標準的なTRβ選択的甲状腺ホルモン様物質の1つとなっているが、本試験では内環メチル基をハロゲンで置換することにより、親化合物の重要な特性を保持し、著しく改善された化合物を生成することを明らかにする。GC−1のTRβ選択性及びCNS浸透は、JD−20及びJD−21で保存されており、それらがCNS適応症において有効であることを示唆している。
【0130】
JD−20及びJD−21の改善された力価は、3,5位のハロゲンを有する類似体が、その位置にメチル基を有する類似の類似体と比較して、優れた活性を有することを発見した、多数の甲状腺ホルモン様物質のSAR研究と一致する。この場合、ほとんどの測定値で驚くべきことは、JD−20とJD−21が非常に似た特性を有しているように思われることである。以前の甲状腺ホルモン様物質のSAR研究では、ハロゲンの変化により、多くの場合、力価と選択性の両方において劇的な変化が生じた。この骨格における唯一の主な違いは、JD−20がGC−1及びJD−21と比較して減少した取り込みを有する、脳の取り込みにおいて見出される。
【0131】
実施例15.2−(3,5−ジブロモ−4−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルベンジル)フェノキシ)−N−メチルアセトアミド(MA−JD20、10a)の調製
密閉管の中で2−(3,5−ジブロモ−4−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルベンジル)フェノキシ)酢酸(100mg、0.22mmol)をメタノール(4mL)に溶解させ、濃硫酸1滴をこれに加えた。密閉した反応混合物を1時間攪拌しながら65℃まで加熱した。次いでこれを室温まで冷却し、そしてTLC(酢酸エチル:ヘキサンは1:1)により対応するメチルエステルへの完全な変換が示された。この溶液に、水中40%メチルアミン(285μl、3.3mmol、15当量)を添加し、再び密閉状態で1時間65℃まで加熱した。これを冷却し、生成物への完全な変換をTLCによって観察した。水酸化ナトリウム(0.5N、10ml)をこれに加え、生成物をジクロロメタン(3×50ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水Mg
2SO
4で脱水させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(50%ヘキサン/酢酸エチル)で精製した。ヘキサンとジクロロメタンの混合物からの再結晶で、最終化合物を得た(70mg、0.15mmol、68%)。
1HNMR (400MHz, MeOH−d
4): δ=7.35 (s, 2H), 6.98 (d, 1H, J=2.3Hz), 6.74 (dd, 1H, J=8.3 Hz, 2.3Hz), 6.62 (d, 1H, J=8.2Hz), 4.55 (s, 2H), 4.26 (s, 2H), 3.24 (septet, 1H, J=6.9 Hz), 2.84 (s, 3H), 1.17 (d, 6H, J=6.98Hz)。C
19H
21Br
2NO
3[M+H]
+:m/z471.99416に対するHRMSの計算精密質量は、m/z471.99446であった。
【0132】
実施例16.2−(3,5−ジクロロ−4−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルベンジル)フェノキシ)−N−メチルアセトアミド(MA−JD21、10b)の調製
密閉管の中で2−(3,5−ジクロロ−4−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルベンジル)フェノキシ)酢酸(100mg、0.27mmol、1当量)をメタノール(5mL)に溶解させた。硫酸(1滴)をこれに加え、反応物を密閉し、攪拌しながら1時間65℃まで加熱した。それを室温まで冷却し、TLC分析(酢酸エチル:ヘキサン1:1)により、中間体メチルエステルへの完全な変換が示された。次に、これに水中40%メチルアミン(320μl、4mmol、15当量)を添加した。反応物は、再密閉して、65℃まで1時間加熱した。反応フラスコを室温まで冷却し、水酸化ナトリウム(0.5N、10mL)をそれに加えた。反応生成物をジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。有機層を合わせ、無水Mg
2SO
4で脱水させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(50%ヘキサン/酢酸エチル)で精製して、白色固体として生成物を得た(65mg、0.17mmol、63%)。
1H NMR (400 MHz, MeOH−d
4): δ=7.12 (s, 2H), 7.01 (d, 1H, J=1.98Hz), 6.77 (dd, 1H, J=8.21Hz, 2.26Hz), 6.62 (d, 1H, J=8.21Hz), 4.56 (s, 2H), 4.15 (s, 2H), 3.23 (septet, 1H, J=7.14Hz), 2.85 (s, 3H), 1.17 (d, 6H, J= 6.93Hz)。C
19H
21Cl
2NO
3[M+H]
+:m/z384.09455についてのHRMSの計算精密質量は、m/z384.09473であった。
【0133】
実施例17.ハロゲン化アミドの生物活性
動物試験。8〜10週齢の野生型雄C57Bl/6マウスを、気温湿度が制御された部屋にて12時間の明暗サイクルで飼育し、食物及び水を自由に摂取させた。アミドMA−JD20から生成したJD−20に対するJD−20、及びアミドMA−JD−21から生成されたJD−21に対するJD−21の単一時点の薬物分布を比較するために、JD−20、JD−21、MA−JD20及びMA−JD21を腹腔内及び経口の両方で3.05μmol/kg(1用量につき3匹のマウス)の用量を投与することによって親薬物の濃度をマウスの脳及び血清で分析した。化合物を50:50のDMSO及び0.9%の塩化ナトリウム静菌溶液の混合物に溶解させた。500μlインスリン注射器(Covidien LLC MA、USA)に接続したプラスチック供給管(20ga×38mm、Instech Laboratories Inc.、PA、USA)を用いて経口投与を行った。両方の実験において、薬物投与1時間後にマウスを安楽死させた。
【0134】
単一時点の試験の追跡調査として、アミドであるMA−JD20及びMA−JD21について、経口投与による24時間の経時変化試験を実施し、対応するJD−20またはJD−21濃度をマウスの脳及び血液で測定した。これらの分析から薬物動態の経時変化曲線を作成し、脳及び血液の曲線下面積(AUC)値を得た。
【0135】
組織は、以下のように処理した。脳は、3つのGold Spec1/8クロム鋼球(Applied Industrial Technologies)の入った、予め秤量したホモジナイザーチューブに回収し、直ちに−80℃で凍結させた。血液サンプルは、氷上で30分間保持し、次いで4℃で15分間、5400×Gで遠心沈殿させた。血清(100μl)を上部から回収し、試料が処理されるまで−80℃で保存した。
【0136】
血清の処理:血清試料は、室温まで温めた。アセトニトリル(500μl)及び内部標準d
6−ソベチロム(2.99μM、10μl)を各試料に添加し、20秒間ボルテックスした。次にそれらを4℃で15分間、10,000×Gで遠心分離した。ラベルした13×100mmホウケイ酸ガラス管のセットに上清を移し、speedvac濃縮装置において45℃で2時間濃縮させた。次いで、乾燥試料をアセトニトリルと水が50:50の混合物400μlに溶解させて、20秒間ボルテックスした。得られた混合物をエッペンドルフチューブに移し、4℃で10,000×Gで15分間遠心分離した。このように調製した血清サンプルをLC−MS/MS分析に供して、遊離のJD−20またはJD−21の量を定量した。
【0137】
標準曲線は、ビヒクルのみ(DMSO及び0.9%の塩化ナトリウム静菌溶液の50:50の混合物)を注射された8〜10週齢のC57Bl/6マウスから採取した100μlの血清で作成した。血清サンプルは、最後の遠心分離の後にサンプルを6つのバイアルに分けたことを除き、全く同じ方法で処理した。これらの6つのバイアルのうち5つにJD−20及びJD−21の混合物を添加して、媒体中各化合物の濃度を(0.1pg/μl、1.0pg/μl、10pg/μl、/100pg/μl及び1000pg/μl)にした。
【0138】
脳の処理:脳試料は、室温まで温め、秤量した。水(1ml)及び内部標準d
6−ソベチロム(2.99μM、10μl)を各試料に添加し、20秒間ボルテックスした。それらをOmni Bead ruptor24で1分間ホモジナイズし、次いでそれぞれ3mlのアセトニトリルを含むラベルした15mlのFalconチューブに移した。1ml容量のアセトニトリルを用いてホモジナイザーチューブを洗浄し、その洗浄液をファルコンチューブに添加した。チューブを20秒間ボルテックスし、4℃で10,000×Gの速度で遠心分離した。これらのチューブの上清を、ラベルした13×100mmホウケイ酸ガラス管のセットに注意深くデカントし、45℃にて4時間、speedvacで濃縮した。次に、LC−MS/MS分析のための血清処理法を用いて試料を処理した。
【0139】
結果。アミドのMA−JD20及びMA−JD21は、どちらも
図5Aに示すように、等モルの腹腔内用量の3.05μmol/kgの非修飾JD−20またはJD−21と比較して、より多くの親薬物をCNSに送達する。
【0140】
両アミドは、どちらも
図5Bに示すように、対応する親薬物の末梢曝露を減少させることも観察された。この減少した血清濃度から、これらのアミドによって対応する親薬物のCNS分布がかなり改善されたという事実も支持される。非修飾化合物に対するアミドの血清に対する脳の比率を比較することにより、アミドが血清中の親薬物の末梢曝露を4倍以上減少させることが観察された(
図5C)。同じ用量、すなわち3.05μmol/kgを用いた経口投与でも同様の結果が観察された(
図6)。
【0141】
単一時点の薬物分布評価の後、アミドの薬物動態特性をさらに理解するために、マウスに9.14μmol/kgのMA−JD20の経口用量を投与することによって24時間の経時変化試験を行った。脳及び血液において生成されたJD−20濃度を解析して脳及び血清の曲線下面積(AUC)値を得た(
図7)。アミドMA−JD−20に対するAUC
脳/AUC
血清比率は、0.89と認められた。C
最大値及びT
最大値は、脳組織では約2時間であるようだが、血液では、C
最大値及びT
最大値は、最初の30〜45分の時点の間に生じた。この事実から、アミドの加水分解速度は一旦CNSに達すると、加水分解速度が緩やかであることが示唆される。単一時点の薬物分布から得られた結果は、AUC解析によって確証された。
【0142】
アミドのMA−JD20及びMA−JD21は、腹腔内投与及び経口投与により、どちらもより多くの親薬物をCNSに送達することが示されたので、本発明者らは次に、アミドが対応する未修飾化合物よりも高い程度まで甲状腺反応性Hairless(Hr)遺伝子を上方制御させるかどうかを評価した。マウスに3.05μmol/kg(1用量あたり3匹のマウス)の用量のJD−20、JD−21、MA−JD20及びMA−JD21ならびにビヒクル(1:1の生理食塩水/DMSO)を経口投与した。回収した脳組織を、Trizol試薬及びPureLink RNAミニキットを用いたRNA抽出プロトコルに従って処理し、Qiagen QuantiTect Reverse Transcriptionキットを使用してcDNAを作製し、そして前述のようにQiagenのQuantiTect SYBR green PCRキットを用いてHairless(Hr)遺伝子の発現をqPCRで測定した。グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)は、試料間の標準化に使用されるハウスキーピング遺伝子であった。データ解析は、比較C
T法を用いてHr遺伝子発現の相対差をモニターすることによって行った。結果は
図8に示される。このデータは、薬物分布試験から得られた結果と一致する。
【0143】
実施例18.ハロゲン化アミドは、脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)の基質である
材料。ソベチロム及びd
6−ソベチロムは、上述したように合成した。(Placzek and Scanlan.Tetrahedron2015,71(35),5946−5951)。 アナンダミドはCaymanから購入した(90050)。アラキドン酸はSignmaから購入した(23401)。d
11−アラキドン酸は、Avantiから購入した(861810E)。溶媒は、FisherのHPLCグレードである。pcDNA4バックボーンのヒトFAAH cDNAは、Martin Kaczocha教授(Stony Brook)により、快く提供して頂いた。C末端FLAG配列は、プライマー
を用いてPCRにより挿入された。Kpn1/Xho1消化断片はpcDNA4に再挿入された。得られたpcDNA4−FAAH−FLAG構築物を配列決定により確認した。
【0144】
LC/MS−MS。化合物の定量化は、上述したように変更を伴ったLC−MS/MSにより行われた(Ferrara,and Scanlan, et al.Biorg.Med.Chem.2017,25(10)2743−2753)。クロマトグラフィーは、Betabasicプレカラム(Thermo)を装着したHamilitonのPRP−C18カラム(5μm、2.1x50mm、100Å)で行った。勾配移動相は0.5mL/分の流速で送達し、2つの溶媒のA:10mMの蟻酸アンモニウム/水及びB:10mMの蟻酸アンモニウム/90%のアセトニトリルと10%の水から成る。勾配は以下のように、0〜0.5分は10%Bを保持、0.5〜5.1分は10〜98%B、5.1〜7分は98%Bを保持、7〜7.1分は98〜10%B、7.1〜8分は10%を保持、とした。分析物は、親イオンm/z及び遷移に最適化したエネルギーで第2の転移を生じる最も強いピークを主に用いた多重反応モニタリング(MRM)でのnegativeモードで同定された。
【0145】
細胞ホモジネートにおけるFAAH活性。COS−7細胞(ATCC CRL−1651)を、10%FBS、ペニシリン(100単位/L)、及びストレプトマイシン(100μg/L)を添加したダルベッコ改変イーグル培地で培養した。細胞(800,000/ウェル)を6ウェルプレート(Falcon353046)に播種し、一晩接着させた。細胞を、製造元のプロトコルに従って、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いてpcDNA4−FAAH−FLAGでトランスフェクションした。模擬トランスフェクション対照は、DNAなしのトランスフェクション試薬で行った。細胞は、トランスフェクションの4日後に冷PBSで洗浄し、TE緩衝液(125mMトリス、1mM EDTA、pH9)に掻き取り、超音波処理(10秒、60Sonic Dismembrator、Fisher)した。細胞ホモジネートは、−80℃で保存し、タンパク質濃度はBCA(Pierce)で測定した。細胞ホモジネートは0.1%BSA(脂肪酸不含)(Alfa Aesar)を含むTE緩衝液に希釈した。基質はDMSO中50xストックとして、ホモジネートのアリコート50μLに、100μMの最終濃度まで添加した。反応は、31.25μg/mLのホモジネートタンパク質を用いて37℃で15分間行った。100μLのアセトニトリルで反応を停止させ、20秒間ボルテックスした。遠心分離(10,000rpm、15分間、4℃)により試料を清澄化した。上清は、300nMのd
11−アラキドン酸及び30nMのd
6−ソベチロムを含有する2:1のMeCN:H
2Oに50倍希釈した。試料を、再度遠心分離した(13,200rpm、15分、4℃)。生成物は、模擬試料で作成した標準曲線を用いてLC/MS−MSによって定量化した。実測速度は、生成物(nmol)/タンパク質ホモジネート(mg)/分として表される。
【0146】
図9は、アミドMA−JD20及びMA−JD21が脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)の基質であることを示す。上記のようにFAAHをCOS−7細胞で過剰発現させ、細胞ホモジネートを使用して基質切断の実測速度を測定し、典型的な内因性FAAHの基質アナンダミド(AEA)と比較した。基質はすべて100μMで試験した。AEAと比較して、甲状腺ホルモン様アミドのMA−GC1(9倍),MA−JD20(31倍)、及びMA−JD21(20倍)は、低減した速度を示す。しかし、これらの低減した実測速度は、FAAHの他の既知の内在性基質に匹敵し(Boger,et al.Bioorg.Med.Chem.Lett.2000,10(23),2613−2616、Cravatt,etal.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2001,98(16),9371−6)、そしてハロゲン化誘導体はソベチロムアミドの活性に近い。実測速度は、産物(nmol)/ホモジネートタンパク質(mg)/分として表される。
【0147】
前述のことは、明瞭さと理解のために例示及び実施例によって幾分詳細に記載されているが、当業者は、添付の特許請求の範囲内で特定の変更及び改変が実施可能であることを理解するであろう。さらに、本明細書で提供される各参照は、各参照がそれぞれ参照により組み込まれるように、その全体が同程度に参照により本明細書に組み込まれる。