【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明1は、熱可塑性樹脂、金属に配位する構造を有する芳香族化合物及び酸化防止剤を含む合わせガラス用中間膜であって、前記酸化防止剤は、フェノール系化合物、リン酸系化合物及び硫黄系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の酸化防止剤である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明1を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、サリチル酸系化合物やベンゾフェノン系化合物等の芳香族化合物を含有する合わせガラス用中間膜が着色する原因が、これらの芳香族化合物と金属との反応によることを見出した。合わせガラス用中間膜中には、原料となる熱可塑性樹脂中の不純物に由来する金属や、接着力調整剤として加える金属塩に由来する金属が含まれる。サリチル酸系化合物やベンゾフェノン系化合物等の芳香族化合物は、いずれも金属に配位する構造を有するものであることから、芳香族化合物と金属とが反応して着色するものと思われた。このような着色は、加熱によって促進される。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、特定の酸化防止剤を組み合わせることにより、このような着色を抑制できることを見出し、本発明1を完成した。
【0010】
本発明1の合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含む。本発明1において熱可塑樹脂は、バインダー樹脂としての役割を果たす。
上記熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでもポリビニルアセタールが好適である。
【0011】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールであれば特に限定されないが、ポリビニルブチラールが好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
【0012】
上記ポリビニルアセタールは、水酸基量の好ましい下限が15モル%、好ましい上限が35モル%である。水酸基量が15モル%以上であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。水酸基量が35モル%以下であると、合わせガラス用中間膜の取り扱いが容易になる。
なお、上記アセタール化度及び水酸基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0013】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が500以上であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記ポリビニルアルコールの重合度が4000以下であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
【0014】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0015】
本発明1の合わせガラス用中間膜は、金属に配位する構造を有する芳香族化合物を含む。
上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物は、発光材料としての役割を有するもののほか、紫外線吸収剤や酸化防止剤等としての役割を有するものも含まれる。
なお、本明細書において金属に配位する構造を有する芳香族化合物とは、ヒドロキシル基やカルボキシ基等の非共有電子対を有する置換基を有し、該置換基により金属を捕捉することができる芳香族化合物を意味する。
【0016】
上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物が発光材料である場合、具体的には例えば、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物や下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0017】
【化1】
【0018】
上記一般式(1)中、R
1は有機基を表し、xは1、2、3又は4である。合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなることから、xは1又は2であることが好ましく、ベンゼン環の2位又は5位に水酸基を有することがより好ましく、ベンゼン環の2位及び5位に水酸基を有することが更に好ましい。
上記R
1の有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1〜5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1〜3の炭化水素基であることが特に好ましい。上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。
【0019】
上記一般式(1)で表される構造を有する化合物として、例えば、ジエチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート、ジメチル−2、5−ジヒドロキシテレフタレート等が挙げられる。
【0020】
上記一般式(2)中、R
2は有機基を表し、R
3及びR
4は水素原子又は有機基を表し、yは1、2、3又は4である。
上記R
2の有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1〜5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1〜3の炭化水素基であることが特に好ましい。上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(2)中、NR
3R
4はアミノ基である。R
3及びR
4は、水素原子であることが好ましい。上記一般式(2)で表される構造を有する化合物のベンゼン環の水素原子のうち、一つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、二つの水素原子が上記アミノであってもよく、三つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、四つの水素原子が上記アミノ基であってもよい。
【0021】
上記一般式(2)で表される構造を有する化合物として、例えば、ジエチル−2,5−ジアミノテレフタレート等が挙げられる。
【0022】
上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物の含有量は特に限定されないが、例えば発光材料として用いる場合には、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限は0.001重量部、好ましい上限は10重量部である。上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物の含有量が0.001重量部以上であると、光線が照射されることにより、コントラストがより一層高い画像を表示することができる。上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物の含有量が10重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなる。上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物の含有量のより好ましい下限は0.005重量部、より好ましい上限は5重量部、更に好ましい下限は0.01重量部、更に好ましい上限は2重量部、特に好ましい下限は0.1重量部、特に好ましい上限は1.5重量部である。
【0023】
本発明1の合わせガラス用中間膜は、フェノール系化合物、リン酸系化合物及び硫黄系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の酸化防止剤を含む。これらの酸化防止剤を配合することにより、着色のない合わせガラス用中間膜を得ることができる。
【0024】
上記フェノール系化合物は、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。
【0025】
上記リン酸系化合物は、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト、2−エチル−2−ブチルプロピレン−4,6−トリ第三ブチルフェノールホスファイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、トリス[2−第三ブチル−4−(3−第三ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル]ホスファイト等が挙げられる。
【0026】
上記硫黄系化合物は、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類や、ペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル等が挙げられる。
【0027】
上記酸化防止剤のなかでも、着色の抑制力が高いことから、フェノール系化合物が好適である。
【0028】
本発明1の合わせガラス用中間膜において、上記金属と配位する構造を有する芳香族化合物1重量部に対する上記酸化防止剤の配合量の好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は400重量部である。上記酸化防止剤の含有量がこの範囲であると、合わせガラス用中間膜の着色を確実に防止することができる。
【0029】
本発明1の合わせガラス用中間膜は、接着力調整剤としてカリウム塩を含むことが好ましい。
一般的に、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性を調整するために、合わせガラス用中間膜は、接着力調整剤としてマグネシウム元素を含む化合物を含有する。しかしながら、上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物とマグネシウム元素を含む化合物とを併用すると、合わせガラス用中間膜が変色してしまうことがある。これに対して、カリウム塩を用いることにより、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力を容易に制御することができるだけでなく、合わせガラス用中間膜が変色することも抑制することができる。
【0030】
上記カリウム塩は特に限定されないが、炭素数1〜16の有機酸のカリウム塩であることが好ましく、炭素数2〜16の有機酸のカリウム塩であることがより好ましく、炭素数1〜16のカルボン酸のカリウム塩であることが更に好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩であることが特に好ましい。上記炭素数1〜16のカルボン酸のカリウム塩としては特に限定されないが、例えば、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられ、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸カリウム、又は、2−エチルヘキサン酸カリウムであってもよい。上記炭素数1〜16のカルボン酸は、炭素数12以下のカルボン酸であることが好ましく、炭素数10以下のカルボン酸であることがより好ましく、炭素数8以下のカルボン酸であることが更に好ましい。
【0031】
上記カリウム塩の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が0.001重量部、好ましい上限が0.5重量部である。上記カリウム塩の含有量が0.001重量部以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記カリウム塩の含有量が0.5重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記カリウム塩の含有量のより好ましい下限は0.015重量部、より好ましい上限は0.25重量部、更に好ましい下限は0.02重量部、更に好ましい上限は0.2重量部、特に好ましい下限は0.025重量部、特に好ましい上限は0.1重量部である。
本発明1の合わせガラス用中間膜の変色をより一層防止できることから、カリウム元素の含有量は400ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、250ppm以下であることが更に好ましく、200ppm以下であることが特に好ましく、180ppm以下であることが最も好ましい。得られる合わせガラス用中間膜の耐湿性が高くなることから、カリウム元素の含有量は100ppm以下であることが最も好ましい。上記カリウム元素は、カリウム塩に由来するカリウムとして含んでもよく、ポリビニルアセタール等の熱可塑性樹脂を合成する際に用いる中和剤に由来するカリウムとして含んでもよい。本発明1の合わせガラス用中間膜中のカリウム元素の含有量の好ましい下限は30ppm、より好ましい下限は40ppm、更に好ましい下限は80ppm、特に好ましい下限は120ppmである。
【0032】
本発明1の合わせガラス用中間膜は、本発明1の課題の解決を阻害しない範囲であれば、接着力調整剤としてマグネシウム塩を含んでもよい。上記マグネシウム塩を含むことにより、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力をより一層容易に制御することができる。上記マグネシウム塩は特に限定されないが、炭素数2〜16の有機酸のマグネシウム塩であることが好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩であることがより好ましい。上記炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム等が挙げられる。合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力をより一層容易に制御することができることから、上記炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩は、酢酸マグネシウムであることが好ましい。
【0033】
上記マグネシウム塩の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が0.02重量部、好ましい上限が0.5重量部である。上記マグネシウム塩の含有量が0.02重量部以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記マグネシウム塩の含有量が0.5重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記マグネシウム塩の含有量のより好ましい下限は0.03重量部、より好ましい上限は0.2重量部、更に好ましい下限は0.04重量部、更に好ましい上限は0.1重量部である。
本発明1の合わせガラス用中間膜の接着性をより一層容易に制御でき、変色をより一層抑制できることから、マグネシウム元素の含有量は80ppm以下であることが好ましい。上記マグネシウム元素は、マグネシウム塩に由来するマグネシウムとして含んでもよく、ポリビニルアセタール等の熱可塑性樹脂を合成する際に用いる中和剤に由来するマグネシウムとして含んでもよい。合わせガラス用中間膜中のマグネシウム元素の含有量の好ましい下限は0ppm、より好ましい上限は75ppm、より好ましい下限は20ppm、更に好ましい上限は70ppm、更に好ましい下限は30ppmである。なお、上記カリウム元素や上記マグネシウム元素の含有量は、ICP発光分析装置(島津製作所社製「ICPE−9000」)により測定することができる。
【0034】
合わせガラス用中間膜の変色をより一層抑制できることから、本発明1の合わせガラス用中間膜のリチウム元素の濃度は25ppm以下であることが好ましい。合わせガラス用中間膜中のリチウム元素の濃度のより好ましい下限は0ppm、より好ましい上限は20ppm、更に好ましい下限は1ppm、更に好ましい上限は10ppm以下である。
【0035】
本発明1の合わせガラス用中間膜は、更に分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することにより、上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物の凝集を抑制でき、これを発光材料としたときにより均一な発光が得られる。上記分散剤は、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸構造を有する化合物や、ジエステル化合物、リシノール酸アルキルエステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、リン酸エステル等のエステル構造を有する化合物や、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールやアルキルフェニル−ポリオキシエチレン−エーテル等のエーテル構造を有する化合物や、ポリカルボン酸等のカルボン酸構造を有する化合物や、ラウリルアミン、ジメチルラウリルアミン、オレイルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンの2級アミン、ポリオキシエチレンの3級アミン、ポリオキシエチレンのジアミン等のアミン構造を有する化合物や、ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド等のポリアミン構造を有する化合物や、オレイン酸ジエタノールアミド、アルカノール脂肪酸アミド等のアミド構造を有する化合物や、ポリビニルピロリドン、ポリエステル酸アマイドアミン塩等の高分子量型アミド構造を有する化合物等の分散剤を用いることができる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)や高分子ポリカルボン酸、縮合リシノール酸エステル等の高分子量分散剤を用いてもよい。なお、高分子量分散剤とは、その分子量が1万以上である分散剤と定義される。
【0036】
上記分散剤を配合する場合に、合わせガラス用中間膜中における上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物100重量部に対する上記分散剤の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部である。上記分散剤の含有量がこの範囲内であると、上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物を合わせガラス用中間膜中に均一に分散させることができる。上記分散剤の含有量のより好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は30重量部であり、更に好ましい下限は5重量部、更に好ましい上限は25重量部である。
【0037】
本発明1の合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、更に可塑剤を含有してもよい。上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0038】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキシル酸エステル等が好適である。
【0039】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0040】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、アジピン酸エステル、炭素数4〜9のアルキルアルコール及び炭素数4〜9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等の炭素数6〜8のアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0041】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0042】
上記可塑剤のなかでも、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
更に、上記可塑剤として、加水分解を起こしにくいため、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)を含有することが好ましく、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を含有することがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含有することが更に好ましい。
【0044】
本発明1の合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が20重量部、好ましい上限が80重量部である。上記可塑剤の含有量が20重量部以上であると、合わせガラス用中間膜の溶融粘度が低くなるため、合わせガラス用中間膜を容易に成形できる。上記可塑剤の含有量が80重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は70重量部、更に好ましい下限は35重量部、更に好ましい上限は63重量部である。
【0045】
本発明1の合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、青色顔料、青色染料、緑色顔料、緑色染料等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0046】
上記紫外線吸収剤は、例えば、マロン酸エステル構造を有する化合物、シュウ酸アニリド構造を有する化合物、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、ベンゾフェノン構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、ベンゾエート構造を有する化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0047】
なかでも、本発明2にあるように、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用い、上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物1重量部に対する上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量を0.05〜10重量部とすることが好ましい。これにより、本発明1の合わせガラス用中間膜を発光性合わせガラス用中間膜として用いたときに、光線が照射されることにより、輝度が高い画像を表示し、長期間使用しても画像の輝度の低下を抑制することができる。
【0048】
本発明1の合わせガラス用中間膜は、特に発光性合わせガラス用中間膜として用いることが好ましい。本発明1の合わせガラス用中間膜を含む発光性合わせガラス用中間膜もまた、本発明1の1つである。
本発明1の発光性合わせガラス用中間膜は、特定の波長の光線を照射することにより発光する。この性質を利用することにより、高輝度で情報を表示することができる。
上記特定の波長の光線を照射するための装置として、例えば、スポット光源(浜松ホトニクス社製、LC−8)、キセノン・フラッシュランプ(ヘレウス社製、CWランプ)、ブラックライト(井内盛栄堂社製、キャリーハンド)等が挙げられる。
【0049】
本発明1の発光性合わせガラス用中間膜は、単層中間膜であってもよく、本発明1の合わせガラス用中間膜を発光層として、該発光層と該発光層の一方の面に配置されている第1の樹脂層とを有する多層中間膜であってもよい。
【0050】
上記発光層は、本発明1の発光性合わせガラス用中間膜の全面に配置されていてもよく、一部にのみ配置されていてもよく、本発明1の発光性合わせガラス用中間膜の厚み方向とは垂直の面方向の全面に配置されていてもよく、一部にのみ配置されていてもよい。上記発光層が一部にのみ配置されている場合には、該一部を発光エリア、他の部分を非発光エリアとして、発光エリアにおいてのみ情報を表示できるようにすることができる。
【0051】
本発明1の発光性合わせガラス用中間膜は、上記発光層の一方の面に、第1の樹脂層が積層されていてもよい。第1の樹脂層はポリビニルアセタールを含むことが好ましく、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことがより好ましく、ポリビニルアセタールと可塑剤と接着力調整剤とを含むことが更に好ましい。更に、上記発光層及び第1の樹脂層以外に、他の層が積層されていてもよい。上記他の層として、ポリエチレンテレフタレートやポリビニルアセタール等の熱可塑性樹脂を含む層が挙げられる。また、上記他の層は紫外線吸収剤を含有する紫外線遮断層であってもよい。上記紫外線遮断層に用いる紫外線吸収剤として、上述の発光層に用いる紫外線吸収剤を用いることができる。
【0052】
第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタールとして、上記発光層に含まれるポリビニルアセタールを用いることができる。第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタールと上記発光層に含まれるポリビニルアセタールとは同一であってもよく、異なっていてもよい。第1の樹脂層に含まれる可塑剤は、上記発光層に可塑剤を含む場合は、上記発光層に含まれる可塑剤と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
第1の樹脂層は接着力調整剤を含むことが好ましい。上記接着力調整剤は特に限定されず、金属塩であることが好ましく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びマグネシウム塩からなる群から選択された少なくとも1種の金属塩であることが好ましい。上記金属塩は、カリウム及びマグネシウムの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。上記金属塩は、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩又は炭素数2〜16の有機酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩又は炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩であることが更に好ましい。上記炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩及び上記炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0054】
上記接着力調整剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限が0.0005重量部、好ましい上限が0.05重量部である。上記接着力調整剤の含有量が0.0005重量部以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記接着力調整剤の含有量が0.05重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記接着力調整剤の含有量のより好ましい下限は0.002重量部、より好ましい上限は0.02重量部である。
第1の樹脂層の耐湿性が高くなることから、第1の樹脂層中のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムの含有量の合計は300ppm以下であることが好ましい。例えば、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムは、上記接着力調整剤に由来する金属として含んでもよく、ポリビニルアセタールを合成する際に用いる中和剤に由来する金属として含んでもよい。第1の樹脂層中のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムの含有量の合計は200ppm以下であることがより好ましく、150ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。
【0055】
本発明1の発光性合わせガラス用中間膜に遮熱性が要求される場合には、上記発光層、第1の樹脂層のいずれか1層、又は、すべての層に熱線吸収剤を含有させてもよい。あるいは、上記発光層、第1の樹脂層以外に、更に、熱線吸収剤を含有する熱線遮蔽層を積層してもよい。
【0056】
上記熱線吸収剤は、赤外線を遮蔽する性能を有すれば特に限定されないが、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)粒子、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子、6ホウ化ランタン粒子及び6ホウ化セリウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
【0057】
本発明1の発光性合わせガラス用中間膜は、遮音性能を向上させる目的で、更に、遮音層を有してもよい。上記発光層、第1の樹脂層のいずれか1層に遮音性を付与し、遮音層としてもよく、上記発光層、第1の樹脂層以外に、更に、遮音層を積層してもよい。
上記遮音層は、例えば、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して上記可塑剤を50〜80重量部含む層等が挙げられる。上記遮音層はポリビニルアセタールを含むことが好ましく、ポリビニルブチラールを含むことがより好ましい。上記遮音層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、水酸基量が20〜28モル%の範囲内であることが好ましい。上記遮音層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、アセチル基量が8〜30モル%であるポリビニルアセタールA、アセチル基量が0モル%を超え5モル%未満、かつアセタール化度が70〜85モル%であるポリビニルアセタールB、又は、アセチル基量が5モル%以上8モル%未満、かつアセタール化度が65〜80モル%であるポリビニルアセタールCであってもよい。
【0058】
本発明1の発光性合わせガラス用中間膜は、例えば、上記発光層(表面層)と第1の樹脂層(中間層)と上記発光層(表面層)とがこの順に積層されていることが好ましい。発光性合わせガラス用中間膜の表面層として、上記発光層を用いることにより、コントラストが高い画像を表示し、変色を抑制しながら、接着性を制御できる合わせガラス用中間膜が得られる。更に、第1の樹脂層に遮音性能を付与することにより、発光性合わせガラス用中間膜の遮音性が向上する。
【0059】
本発明1の発光性合わせガラス用中間膜に遮音性能を付与するために、上記第1の樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対する上記第1の樹脂層に含まれる可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)は、上記発光層に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対する上記発光層に含まれる可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)よりも多いことが好ましい。上記含有量Xは上記含有量Yよりも5重量部以上多いことが好ましく、10重量部以上多いことがより好ましく、15重量部以上多いことが更に好ましい。合わせガラス用中間膜の耐貫通性がより一層高くなることから、上記含有量Xと上記含有量Yとの差は、50重量部以下であることが好ましく、40重量部以下であることがより好ましく、35重量部以下であることが更に好ましい。なお、上記含有量Xと上記含有量Yとの差は、(上記含有量Xと上記含有量Yとの差)=(上記含有量X−上記含有量Y)により算出される。
【0060】
上記発光層及び第1の樹脂層が上記ポリビニルアセタール及び上記可塑剤を含み、かつ発光層が上記第1の樹脂層の一方の面と、上記第1の樹脂層の一方の面とは反対側の他方の面に積層されている場合、上記第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタールの水酸基量(以下、水酸基量Xともいう。)は、発光層に含まれるポリビニルアセタールの水酸基量(以下、水酸基量Yともいう。)よりも低いことが好ましい。上記水酸基量Xが上記水酸基量Yよりも低いと、上記第1の樹脂層に含まれる可塑剤が発光層に移行することを抑制できる。結果として、合わせガラス用中間膜の遮音性を高くすることができる。
【0061】
上記水酸基量Xは上記水酸基量Yより1モル%以上低いことがより好ましく、3モル%以上低いことが更に好ましく、5モル%以上低いことが特に好ましい。合わせガラス用中間膜の成形が容易になることから、上記水酸基量Xと上記水酸基量Yとの差の好ましい上限は20モル%、より好ましい上限は15モル%、更に好ましい上限は12モル%、特に好ましい上限は10モル%である。なお、上記水酸基量Xと上記水酸基量Yとの差は、(上記水酸基量Xと上記水酸基量Yとの差)=(上記水酸基量Y−上記水酸基量X)により算出される。
【0062】
上記第1の樹脂層から発光層への可塑剤の移行を抑制したり、発光層から第1の樹脂層への金属に配位する構造を有する芳香族化合物の移行を抑制したりするために、上記発光層と第1の樹脂層との間に、可塑剤や金属に配位する構造を有する芳香族化合物の移行を防止する層を積層してもよい。上記移行を防止する層として、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートを含む樹脂層が挙げられる。
【0063】
上記水酸基量Xの好ましい下限は10モル%、より好ましい下限は15モル%、更に好ましい下限は18モル%、特に好ましい下限は20モル%である。上記水酸基量Xの好ましい上限は32モル%、より好ましい上限は30モル%、更に好ましい上限は28モル%、特に好ましい上限は25モル%である。上記水酸基量Xが上記下限以上であると、発光性合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなり、上記上限以下であると、第1の樹脂層の成形が容易になる。上記水酸基量Yの好ましい下限は26モル%、より好ましい下限は28モル%、更に好ましい下限は30モル%、好ましい上限は40モル%、より好ましい上限は36モル%、更に好ましい上限は34モル%、特に好ましい上限は32モル%である。上記水酸基量Yが上記下限以上であると、発光性合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなり、上記上限以下であると、発光層の成形が容易になる。
【0064】
本発明1の合わせガラス用中間膜又は発光性合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記可塑剤と上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物と上記酸化防止剤とを混合した可塑剤溶液、及び、上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて、合わせガラス用中間膜を製造する方法等が挙げられる。得られた上記樹脂組成物を押出機を用いて十分に混合し押出することにより、合わせガラス用中間膜又は発光性合わせガラス用中間膜を製造することが好ましい。また、上記可塑剤と上記金属に配位する構造を有する芳香族化合物と上記酸化防止剤とを混合した可塑剤溶液、及び、上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物と、上記熱可塑性樹脂と上記可塑剤とを含む樹脂組成物とを共押出し、発光層と第1の樹脂層と発光層とを有する多層中間膜を製造してもよい。
【0065】
本発明1の合わせガラス用中間膜又は発光性合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明1の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができるが、特定の波長の光線を照射する側とは反対のガラス板として用いることが好ましい。更に、上記ガラス板として、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明1の合わせガラス用中間膜又は発光性合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【0066】
本発明2は、熱可塑性樹脂、テレフタル酸エステル構造を有する発光材料及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含む発光層を有する合わせガラス用中間膜であって、前記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料1重量部に対する前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が0.05〜10重量部である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明2を詳述する。
【0067】
本発明者らは、鋭意検討の結果、熱可塑性樹脂とテレフタル酸エステル構造を有する発光材料とを含む発光層を有する合わせガラス用中間膜をHUDとして用いた場合の輝度の低下の原因が、紫外線にあることを見出した。合わせガラス用中間膜は、その用途上、強力な太陽光下に長時間晒され続ける。この際、紫外線によりテレフタル酸エステル構造を有する発光材料が変性したり分解したりすることが、輝度の低下の原因となっていたものと思われた。
このような紫外線による影響を抑制する方法としては、紫外線吸収剤の併用が考えられる。しかしながら、発光層に紫外線吸収剤を配合した場合には、かえって初期の輝度低下をもたらしてしまうことがあった。本発明者らは、更に鋭意検討の結果、テレフタル酸エステル構造を有する発光材料に対して、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を特定の配合比で配合した場合にのみ、初期の輝度を損なうことなく、経時での輝度の低下を抑制できることを見出し、本発明2を完成した。
【0068】
本発明2の合わせガラス用中間膜は、上記発光層のみを含む単層中間膜であってもよく、上記発光層と上記発光層の一方の面に配置されている第1の樹脂層とを有する多層中間膜であってもよい。
【0069】
上記発光層は、熱可塑性樹脂を含む。本発明2において熱可塑樹脂は、バインダー樹脂としての役割を果たす。
上記熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでもポリビニルアセタールが好適である。
【0070】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールであれば特に限定されないが、ポリビニルブチラールが好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
【0071】
上記ポリビニルアセタールは、水酸基量の好ましい下限が15モル%、好ましい上限が35モル%である。水酸基量が15モル%以上であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。水酸基量が35モル%以下であると、合わせガラス用中間膜の取り扱いが容易になる。
なお、上記アセタール化度及び水酸基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0072】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が500以上であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記ポリビニルアルコールの重合度が4000以下であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
【0073】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0074】
上記発光層は、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料を含む。
上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料は、光線が照射されることにより発光する。上記光線はテレフタル酸エステル構造を有する発光材料を励起し発光させることができれば特に限定されず、例えば、紫外線や赤外線等が挙げられる。
【0075】
上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料は、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物や下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0076】
【化2】
【0077】
上記一般式(1)中、R
1は有機基を表し、xは1、2、3又は4である。合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなることから、xは1又は2であることが好ましく、ベンゼン環の2位又は5位に水酸基を有することがより好ましく、ベンゼン環の2位及び5位に水酸基を有することが更に好ましい。
上記R
1の有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1〜5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1〜3の炭化水素基であることが特に好ましい。上記炭化水素基の炭素数が10以下であると、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料を合わせガラス用中間膜に容易に分散させることができる。上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。
【0078】
上記一般式(1)で表される構造を有する化合物として、例えば、ジエチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート、ジメチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート等が挙げられる。なかでも、コントラストがより一層高い画像を表示できることから、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物はジエチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート(Aldrich社製「2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル」)であることが好ましい。
【0079】
上記一般式(2)中、R
2は有機基を表し、R
3及びR
4は水素原子又は有機基を表し、yは1、2、3又は4である。
上記R
2の有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1〜5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1〜3の炭化水素基であることが特に好ましい。上記炭化水素基の炭素数が上記上限以下であると、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料を合わせガラス用中間膜に容易に分散させることができる。上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(2)中、NR
3R
4はアミノ基である。R
3及びR
4は、水素原子であることが好ましい。上記一般式(2)で表される構造を有する化合物のベンゼン環の水素原子のうち、一つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、二つの水素原子が上記アミノであってもよく、三つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、四つの水素原子が上記アミノ基であってもよい。
【0080】
上記一般式(2)で表される構造を有する化合物として、コントラストがより一層高い画像を表示できることから、ジエチル−2,5−ジアミノテレフタレート(Aldrich社製)が好ましい。
【0081】
上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限は0.001重量部、好ましい上限は5重量部である。上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量が0.001重量部以上であると、光線が照射されることにより、コントラストがより一層高い画像を表示することができる。上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量が5重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなる。上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量のより好ましい下限は0.005重量部、より好ましい上限は2重量部、更に好ましい下限は0.01重量部、更に好ましい上限は1.5重量部、特に好ましい下限は0.1重量部、特に好ましい上限は1重量部である。
【0082】
上記発光層は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含む。上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料に対して一定範囲のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を配合することにより、初期の輝度を損なうことなく、経時での輝度の低下を抑制できる。
【0083】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−(2H−Benzotriazol−2−yl)−4−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol、2−(2H−Benzotriazol−2−yl)−p−cresol、2−(5−chloro−2H−benzotriazol−2−yl)−6−tert−butyl−4−methylphenol等が挙げられる。
【0084】
上記発光層において、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料1重量部に対するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量の下限は0.05重量部、上限は10重量部である。上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量がこの範囲であると、初期の輝度を損なうことなく、経時による輝度の低下を抑制することができる。上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量の好ましい下限は0.4重量部、好ましい上限は2重量部である。
【0085】
上記発光層は、HALS化合物を含むことが好ましい。HALS化合物を含むことにより、初期の輝度を損なうことなく、経時での輝度の低下を抑制できる。
なお、本明細書においてHALS化合物とはヒンダードアミン系光安定剤を意味し、具体的には例えば、Tetrakis(1,2,2,6,6−pentamethyl−4−piperidyl)butane−1,2,3,4−tetracarboxylate、Tetrakis(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidyl)butane−1,2,3,4−tetracarboxylate、Bis(1−undecanoxy−2,2,6,6−tetramethylpiperidin−4−yl)carbonate等が挙げられる。
【0086】
上記HALS化合物の含有量は特に限定されないが、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料1重量部に対するHALSの含有量の下限は0.05重量部、上限は5重量部である。
【0087】
上記発光層は、接着力調整剤としてカリウム塩を含むことが好ましい。
一般的に、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性を調整するために、合わせガラス用中間膜は、接着力調整剤としてマグネシウム元素を含む化合物を含有する。しかしながら、テレフタル酸エステル構造を有する発光材料とマグネシウム元素を含む化合物とを併用すると、合わせガラス用中間膜が変色してしまうことがある。これに対して、カリウム塩を用いることにより、発光層とガラスとの接着力を容易に制御することができるだけでなく、上記発光層が変色することも抑制することができる。
【0088】
上記カリウム塩は特に限定されないが、炭素数1〜16の有機酸のカリウム塩であることが好ましく、炭素数2〜16の有機酸のカリウム塩であることがより好ましく、炭素数1〜16のカルボン酸のカリウム塩であることが更に好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩であることが特に好ましい。上記炭素数1〜16のカルボン酸のカリウム塩としては特に限定されないが、例えば、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられ、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸カリウム、又は、2−エチルヘキサン酸カリウムであってもよい。上記炭素数1〜16のカルボン酸は、炭素数12以下のカルボン酸であることが好ましく、炭素数10以下のカルボン酸であることがより好ましく、炭素数8以下のカルボン酸であることが更に好ましい。
【0089】
上記カリウム塩の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が0.001重量部、好ましい上限が0.5重量部である。上記カリウム塩の含有量が0.001重量部以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記カリウム塩の含有量が0.5重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記カリウム塩の含有量のより好ましい下限は0.015重量部、より好ましい上限は0.25重量部、更に好ましい下限は0.02重量部、更に好ましい上限は0.2重量部、特に好ましい下限は0.025重量部、特に好ましい上限は0.1重量部である。
上記発光層の変色をより一層防止できることから、上記発光層中のカリウム元素の含有量は400ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、250ppm以下であることが更に好ましく、200ppm以下であることが特に好ましく、180ppm以下であることが最も好ましい。上記発光層の耐湿性が高くなることから、上記発光層中のカリウム元素の含有量は100ppm以下であることが最も好ましい。上記カリウム元素は、カリウム塩に由来するカリウムとして含んでもよく、ポリビニルアセタール等の熱可塑性樹脂を合成する際に用いる中和剤に由来するカリウムとして含んでもよい。上記発光層中のカリウム元素の含有量の好ましい下限は30ppm、より好ましい下限は40ppm、更に好ましい下限は80ppm、特に好ましい下限は120ppmである。
【0090】
上記発光層は、本発明2の課題の解決を阻害しない範囲であれば、接着力調整剤としてマグネシウム塩を含んでもよい。上記マグネシウム塩を含むことにより、発光層とガラスとの接着力をより一層容易に制御することができる。上記マグネシウム塩は特に限定されないが、炭素数2〜16の有機酸のマグネシウム塩であることが好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩であることがより好ましい。上記炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム等が挙げられる。上記発光層とガラスとの接着力をより一層容易に制御することができることから、上記炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩は、酢酸マグネシウムであることが好ましい。
【0091】
上記マグネシウム塩の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が0.02重量部、好ましい上限が0.5重量部である。上記マグネシウム塩の含有量が0.02重量部以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記マグネシウム塩の含有量が0.5重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記マグネシウム塩の含有量のより好ましい下限は0.03重量部、より好ましい上限は0.2重量部、更に好ましい下限は0.04重量部、更に好ましい上限は0.1重量部である。
本発明2の合わせガラス用中間膜の接着性をより一層容易に制御でき、変色をより一層抑制できることから、上記発光層中のマグネシウム元素の含有量は80ppm以下であることが好ましい。上記マグネシウム元素は、マグネシウム塩に由来するマグネシウムとして含んでもよく、ポリビニルアセタール等の熱可塑性樹脂を合成する際に用いる中和剤に由来するマグネシウムとして含んでもよい。上記発光層中のマグネシウム元素の含有量の好ましい下限は0ppm、より好ましい上限は75ppm、より好ましい下限は20ppm、更に好ましい上限は70ppm、更に好ましい下限は30ppmである。なお、上記カリウム元素や上記マグネシウム元素の含有量は、ICP発光分析装置(島津製作所社製「ICPE−9000」)により測定することができる。
【0092】
合わせガラス用中間膜の変色をより一層抑制できることから、上記発光層のリチウム元素の濃度は25ppm以下であることが好ましい。上記発光層のリチウム元素の濃度の好ましい下限は0ppm、より好ましい上限は20ppm、より好ましい下限は1ppm、更に好ましい上限は10ppm以下である。
【0093】
上記発光層は、更に分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することにより、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の凝集を抑制でき、より均一な発光が得られる。上記分散剤は、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸構造を有する化合物や、ジエステル化合物、リシノール酸アルキルエステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、リン酸エステル等のエステル構造を有する化合物や、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールやアルキルフェニル−ポリオキシエチレン−エーテル等のエーテル構造を有する化合物や、ポリカルボン酸等のカルボン酸構造を有する化合物や、ラウリルアミン、ジメチルラウリルアミン、オレイルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンの2級アミン、ポリオキシエチレンの3級アミン、ポリオキシエチレンのジアミン等のアミン構造を有する化合物や、ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド等のポリアミン構造を有する化合物や、オレイン酸ジエタノールアミド、アルカノール脂肪酸アミド等のアミド構造を有する化合物や、ポリビニルピロリドン、ポリエステル酸アマイドアミン塩等の高分子量型アミド構造を有する化合物等の分散剤を用いることができる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)や高分子ポリカルボン酸、縮合リシノール酸エステル等の高分子量分散剤を用いてもよい。なお、高分子量分散剤とは、その分子量が1万以上である分散剤と定義される。
【0094】
上記分散剤を配合する場合に、上記発光層中における上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料100重量部に対する上記分散剤の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部である。上記分散剤の含有量がこの範囲内であると、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料を発光層中に均一に分散させることができる。上記分散剤の含有量のより好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は30重量部であり、更に好ましい下限は5重量部、更に好ましい上限は25重量部である。
【0095】
上記発光層は、必要に応じて、更に可塑剤を含有してもよい。上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0096】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキシル酸エステル等が好適である。
【0097】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0098】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、アジピン酸エステル、炭素数4〜9のアルキルアルコール及び炭素数4〜9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等の炭素数6〜8のアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0099】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0100】
上記可塑剤のなかでも、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0101】
更に、上記可塑剤として、加水分解を起こしにくいため、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)を含有することが好ましく、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を含有することがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含有することが更に好ましい。
【0102】
上記発光層における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が20重量部、好ましい上限が80重量部である。上記可塑剤の含有量が20重量部以上であると、合わせガラス用中間膜の溶融粘度が低くなるため、合わせガラス用中間膜を容易に成形できる。上記可塑剤の含有量が80重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は70重量部、更に好ましい下限は35重量部、更に好ましい上限は63重量部である。
【0103】
上記発光層は、優れた耐光性を得ることができることから、酸化防止剤を含有することが好ましい。なかでも、本発明1にあるように、フェノール系化合物、リン酸系化合物及び硫黄系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の酸化防止剤を選択して配合することにより、着色のない合わせガラス用中間膜を得ることができる。これらの酸化防止剤のなかでも、着色の抑制力が高いことから、フェノール系化合物が特に好適である。
【0104】
上記フェノール構造を有する酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記フェノール構造を有する酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。上記酸化防止剤は一種のみでもよく、二種以上を併用しても良い。
【0105】
上記リン酸系化合物は、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト、2−エチル−2−ブチルプロピレン−4,6−トリ第三ブチルフェノールホスファイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、トリス[2−第三ブチル−4−(3−第三ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル]ホスファイト等が挙げられる。
【0106】
上記硫黄系化合物は、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類や、ペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル等が挙げられる。
【0107】
本発明2の合わせガラス用中間膜において、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料1重量部に対する上記酸化防止剤の配合量の好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は400重量部である。上記酸化防止剤の含有量がこの範囲であると、合わせガラス用中間膜の着色を確実に防止することができる。
【0108】
上記発光層は、必要に応じて、光安定剤、帯電防止剤、青色顔料、青色染料、緑色顔料、緑色染料等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0109】
上記発光層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は300μm、好ましい上限は2000μmである。上記発光層の厚さがこの範囲内であると、特定の波長の光線を照射したときに充分にコントラストの高い発光が得られる。上記発光層の厚さのより好ましい下限は350μm、より好ましい上限は1000μmである。
【0110】
上記発光層は、本発明2の合わせガラス用中間膜の全面に配置されていてもよく、一部にのみ配置されていてもよく、本発明2の合わせガラス用中間膜の厚み方向とは垂直の面方向の全面に配置されていてもよく、一部にのみ配置されていてもよい。上記発光層が一部にのみ配置されている場合には、該一部を発光エリア、他の部分を非発光エリアとして、発光エリアにおいてのみ情報を表示できるようにすることができる。
【0111】
本発明2の合わせガラス用中間膜は、上記発光層の一方の面に、第1の樹脂層が積層されていてもよい。第1の樹脂層はポリビニルアセタールを含むことが好ましく、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことがより好ましく、ポリビニルアセタールと可塑剤と接着力調整剤とを含むことが更に好ましい。更に、上記発光層及び第1の樹脂層以外に、他の層が積層されていてもよい。上記他の層として、ポリエチレンテレフタレートやポリビニルアセタール等の熱可塑性樹脂を含む層が挙げられる。また、上記他の層は紫外線吸収剤を含有する紫外線遮断層であってもよい。上記紫外線遮断層に用いる紫外線吸収剤として、上述の発光層に用いる紫外線吸収剤を用いることができる。
【0112】
第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタールとして、上記発光層に含まれるポリビニルアセタールを用いることができる。第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタールと上記発光層に含まれるポリビニルアセタールとは同一であってもよく、異なっていてもよい。第1の樹脂層に含まれる可塑剤は、上記発光層に可塑剤を含む場合は、上記発光層に含まれる可塑剤と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0113】
第1の樹脂層は接着力調整剤を含むことが好ましい。上記接着力調整剤は特に限定されず、金属塩であることが好ましく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びマグネシウム塩からなる群から選択された少なくとも1種の金属塩であることが好ましい。上記金属塩は、カリウム及びマグネシウムの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。上記金属塩は、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩又は炭素数2〜16の有機酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩又は炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩であることが更に好ましい。上記炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩及び上記炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0114】
上記接着力調整剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限が0.0005重量部、好ましい上限が0.05重量部である。上記接着力調整剤の含有量が0.0005重量部以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記接着力調整剤の含有量が0.05重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記接着力調整剤の含有量のより好ましい下限は0.002重量部、より好ましい上限は0.02重量部である。
第1の樹脂層の耐湿性が高くなることから、第1の樹脂層中のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムの含有量の合計は300ppm以下であることが好ましい。例えば、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムは、上記接着力調整剤に由来する金属として含んでもよく、ポリビニルアセタールを合成する際に用いる中和剤に由来する金属として含んでもよい。第1の樹脂層中のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムの含有量の合計は200ppm以下であることがより好ましく、150ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。
【0115】
本発明2の合わせガラス用中間膜に遮熱性が要求される場合には、上記発光層、第1の樹脂層のいずれか1層、又は、すべての層に熱線吸収剤を含有させてもよい。あるいは、上記発光層、第1の樹脂層以外に、更に、熱線吸収剤を含有する熱線遮蔽層を積層してもよい。
【0116】
上記熱線吸収剤は、赤外線を遮蔽する性能を有すれば特に限定されないが、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)粒子、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子、6ホウ化ランタン粒子及び6ホウ化セリウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
【0117】
本発明2の合わせガラス用中間膜は、遮音性能を向上させる目的で、更に、遮音層を有してもよい。上記発光層、第1の樹脂層のいずれか1層に遮音性を付与し、遮音層としてもよく、上記発光層、第1の樹脂層以外に、更に、遮音層を積層してもよい。
上記遮音層は、例えば、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して上記可塑剤を50〜80重量部含む層等が挙げられる。上記遮音層はポリビニルアセタールを含むことが好ましく、ポリビニルブチラールを含むことがより好ましい。上記遮音層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、水酸基量が20〜28モル%の範囲内であることが好ましい。上記遮音層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、アセチル基量が8〜30モル%であるポリビニルアセタールA、アセチル基量が0モル%を超え5モル%未満、かつアセタール化度が70〜85モル%であるポリビニルアセタールB、又は、アセチル基量が5モル%以上8モル%未満、かつアセタール化度が65〜80モル%であるポリビニルアセタールCであってもよい。
【0118】
本発明2の合わせガラス用中間膜は、例えば、上記発光層(表面層)と第1の樹脂層(中間層)と上記発光層(表面層)とがこの順に積層されていることが好ましい。合わせガラス用中間膜の表面層として、上記発光層を用いることにより、コントラストが高い画像を表示し、変色を抑制しながら、接着性を制御できる合わせガラス用中間膜が得られる。更に、第1の樹脂層に遮音性能を付与することにより、合わせガラス用中間膜の遮音性が向上する。
【0119】
本発明2の合わせガラス用中間膜に遮音性能を付与するために、上記第1の樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対する上記第1の樹脂層に含まれる可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)は、上記発光層に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対する上記発光層に含まれる可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)よりも多いことが好ましい。上記含有量Xは上記含有量Yよりも5重量部以上多いことが好ましく、10重量部以上多いことがより好ましく、15重量部以上多いことが更に好ましい。合わせガラス用中間膜の耐貫通性がより一層高くなることから、上記含有量Xと上記含有量Yとの差は、50重量部以下であることが好ましく、40重量部以下であることがより好ましく、35重量部以下であることが更に好ましい。なお、上記含有量Xと上記含有量Yとの差は、(上記含有量Xと上記含有量Yとの差)=(上記含有量X−上記含有量Y)により算出される。
【0120】
上記発光層及び第1の樹脂層が上記ポリビニルアセタール及び上記可塑剤を含み、かつ発光層が上記第1の樹脂層の一方の面と、上記第1の樹脂層の一方の面とは反対側の他方の面に積層されている場合、上記第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタールの水酸基量(以下、水酸基量Xともいう。)は、発光層に含まれるポリビニルアセタールの水酸基量(以下、水酸基量Yともいう。)よりも低いことが好ましい。上記水酸基量Xが上記水酸基量Yよりも低いと、上記第1の樹脂層に含まれる可塑剤が発光層に移行することを抑制できる。結果として、合わせガラス用中間膜の遮音性を高くすることができる。
【0121】
上記水酸基量Xは上記水酸基量Yより1モル%以上低いことがより好ましく、3モル%以上低いことが更に好ましく、5モル%以上低いことが特に好ましい。合わせガラス用中間膜の成形が容易になることから、上記水酸基量Xと上記水酸基量Yとの差の好ましい上限は20モル%、より好ましい上限は15モル%、更に好ましい上限は12モル%、特に好ましい上限は10モル%である。なお、上記水酸基量Xと上記水酸基量Yとの差は、(上記水酸基量Xと上記水酸基量Yとの差)=(上記水酸基量Y−上記水酸基量X)により算出される。
【0122】
上記第1の樹脂層から発光層への可塑剤の移行を抑制したり、発光層から第1の樹脂層へのテレフタル酸エステル構造を有する発光材料の移行を抑制したりするために、上記発光層と第1の樹脂層との間に、可塑剤やテレフタル酸エステル構造を有する発光材料の移行を防止する層を積層してもよい。上記移行を防止する層として、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートを含む樹脂層が挙げられる。
【0123】
上記水酸基量Xの好ましい下限は10モル%、より好ましい下限は15モル%、更に好ましい下限は18モル%、特に好ましい下限は20モル%である。上記水酸基量Xの好ましい上限は32モル%、より好ましい上限は30モル%、更に好ましい上限は28モル%、特に好ましい上限は25モル%である。上記水酸基量Xが上記下限以上であると、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなり、上記上限以下であると、第1の樹脂層の成形が容易になる。上記水酸基量Yの好ましい下限は26モル%、より好ましい下限は28モル%、更に好ましい下限は30モル%、好ましい上限は40モル%、より好ましい上限は36モル%、更に好ましい上限は34モル%、特に好ましい上限は32モル%である。上記水酸基量Yが上記下限以上であると、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなり、上記上限以下であると、発光層の成形が容易になる。
【0124】
本発明2の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記可塑剤と上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料と上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを混合した可塑剤溶液、及び、上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて、合わせガラス用中間膜を製造する方法等が挙げられる。得られた上記樹脂組成物を、押出機を用いて十分に混合し押出することにより、合わせガラス用中間膜を製造することが好ましい。また、上記可塑剤と上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料と上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを混合した可塑剤溶液、及び、上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物と、上記熱可塑性樹脂と上記可塑剤とを含む樹脂組成物とを共押出し、発光層と第1の樹脂層と発光層とを有する多層中間膜を製造してもよい。
【0125】
本発明2の合わせガラス用中間膜は、上記発光層を有することから、特定の波長の光線を照射することにより発光する。この性質を利用することにより、高輝度で情報を表示することができる。
上記特定の波長の光線を照射するための装置として、例えば、スポット光源(浜松ホトニクス社製、LC−8)、キセノン・フラッシュランプ(ヘレウス社製、CWランプ)、ブラックライト(井内盛栄堂社製、キャリーハンド)等が挙げられる。
【0126】
本発明2の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明2の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができるが、特定の波長の光線を照射する側とは反対のガラス板として用いることが好ましい。更に、上記ガラス板として、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明2の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。